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特開2022-180723無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180723
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/32 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G01K7/32 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087364
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 潤
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健二
(72)【発明者】
【氏名】山上 航平
(72)【発明者】
【氏名】西森 年彦
(57)【要約】
【課題】物理量の検知精度を向上させる。
【解決手段】無線計測システムは、物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと、第1反射器がセンサと非接続であり、第2反射器がセンサに接続され、表面弾性波送受信電極がアンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して第1反射器と第2反射器へ送信し、第1反射器で反射された第1反射波と第2反射器で反射された第2反射波を受信してアンテナから電波に変換して送信する表面弾性波素子と、アンテナに対して電波を送信するとともにアンテナが送信した電波を受信する電波送受信部と、電波送受信部の受信信号に含まれる第1反射波に応じた第1受信信号と第2反射波に応じた第2受信信号との比較結果に基づいて物理量を算出する受信信号処理部とを有する無線計測装置とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと、
アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを有し、
前記第1反射器が、前記センサと非接続であり、
前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、
前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信する 表面弾性波素子と、
前記アンテナに対して電波を送信するとともに、前記アンテナが送信した電波を受信する電波送受信部と、
前記電波送受信部の受信信号に含まれる前記第1反射波に応じた第1受信信号と前記第2反射波に応じた第2受信信号との比較結果に基づいて前記物理量を算出する受信信号処理部と
を有する無線計測装置と
を備える無線計測システム。
【請求項2】
前記比較結果は、前記第1受信信号の振幅値と前記第2受信信号の振幅値を比較した結果である
請求項1に記載の無線計測システム。
【請求項3】
前記比較結果は、前記第1受信信号の振幅値と前記第2受信信号の振幅値の比の値である
請求項1に記載の無線計測システム。
【請求項4】
前記表面弾性波素子が、前記圧電結晶上に前記第1距離および前記第2距離とは異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第3距離を有して配置され、かつ、前記センサに非接続の第3反射器をさらに有し、
前記第1距離が前記第2距離より短く、かつ、前記第3距離が前記第2距離より長く、
前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器と前記第3反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波と前記第3反射器で反射された第3反射波とを受信して前記アンテナから電波に変換して送信し、
前記受信信号処理部が、前記受信信号に含まれる前記第3反射波に応じた第3受信信号と前記第1受信信号とを平均化した信号と、前記第2受信信号との比較結果に基づいて、前記物理量を算出する
請求項1に記載の無線計測システム。
【請求項5】
前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極間の最短の伝搬路と、前記第2反射器と前記表面弾性波送受信電極間の最短の伝搬路とが非重複である
請求項1~4のいずれか1項に記載の無線計測システム。
【請求項6】
アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを備え、
前記第1反射器が、所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと非接続であり、
前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、
前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信し、
前記第1反射波と前記第2反射波との比較結果が前記物理量に対応する
表面弾性波素子。
【請求項7】
所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと、
アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを有し、
前記第1反射器が、前記センサと非接続であり、
前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、
前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信する 表面弾性波素子と、
を用いて、
前記アンテナに対して電波を送信するとともに、前記アンテナが送信した電波を受信するステップと、
その受信信号に含まれる前記第1反射波に応じた第1受信信号と前記第2反射波に応じた第2受信信号との比較結果に基づいて前記物理量を算出するステップと
を含む無線計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面弾性素子を用いた次のような無線計測システムが記載されている。すなわち、特許文献1では、表面弾性素子として、圧電基板上にすだれ状の電極を1組作成し、一方の電極を表面弾性波送受信電極、他方を反射器として利用している。また、反射器には、センサ(インピーダンス)が接続されている。そして、外部のホスト装置は、表面弾性素子の表面弾性波送受信電極に対して送信機から電波を送信するとともに、表面弾性素子から送信されてきた電波を受信して、受信した信号に基づき、センサが検知した物理量を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-255706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている無線計測システムは、上述したように、送信機から電波を放射して表面弾性波素子に信号を印加し、表面弾性波素子からの反射信号を電波として受信する無線構成を有している。そのため、送受信間の距離に伴う空間減衰の変化や、送受信機の位置関係で不可避に発生するマルチパスによるフェージング等により、被計測物理量の計測に対する誤差が発生するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、物理量の検知精度を向上させることができる無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る無線計測システムは、所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと、アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを有し、前記第1反射器が、前記センサと非接続であり、前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信する表面弾性波素子と、前記アンテナに対して電波を送信するとともに、前記アンテナが送信した電波を受信する電波送受信部と、前記電波送受信部の受信信号に含まれる前記第1反射波に応じた第1受信信号と前記第2反射波に応じた第2受信信号との比較結果に基づいて前記物理量を算出する受信信号処理部とを有する無線計測装置とを備える。
【0007】
本開示に係る表面弾性波素子は、アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを備え、前記第1反射器が、所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと非接続であり、前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信し、前記第1反射波と前記第2反射波との比較結果が前記物理量に対応する。
【0008】
本開示に係る無線計測方法は、所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサと、アンテナと、圧電結晶と、前記圧電結晶上に配置された第1反射器と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極とを有し、前記第1反射器が、前記センサと非接続であり、前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離を有し、前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波を受信して前記アンテナから電波に変換して送信する表面弾性波素子と、を用いて、前記アンテナに対して電波を送信するとともに、前記アンテナが送信した電波を受信するステップと、その受信信号に含まれる前記第1反射波に応じた第1受信信号と前記第2反射波に応じた第2受信信号との比較結果に基づいて前記物理量を算出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法によれば、物理量の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る無線計測システムの構成例を示す模式図である。
図2】本開示の実施形態に係る無線計測装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る表面弾性波素子の構成例を模式的に示す平面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る受信信号の例を示す波形図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る受信信号の他の例を示す波形図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る無線計測装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】本開示の実施形態に係る無線計測システムの動作例を説明するための模式図である。
図8】本開示の実施形態に係る無線計測システムの動作例を説明するための模式図である。
図9】本開示の実施形態に係る無線計測システムの動作例を説明するための特性図である。
図10】本開示の実施形態に係る無線計測システムに係るシミュレーション結果を示す図である。
図11】本開示の実施形態に係る無線計測システムの比較例に係るシミュレーション結果を示す図である。
図12】本開示の実施形態に係る無線計測システムとその比較例に係るシミュレーション結果を示す図である。
図13】本開示の第2実施形態に係る表面弾性波素子の構成例を模式的に示す平面図である。
図14】本開示の第2実施形態に係る受信信号の例を示す波形図である。
図15】本開示の第2実施形態に係る無線計測装置の動作例を示すフローチャートである。
図16】本開示の第3実施形態に係る表面弾性波素子の構成例を模式的に示す平面図である。
図17】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(無線計測システムの構成例)
以下、本開示の実施形態に係る無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法について、図1図12を参照して説明する。本開示の実施形態(第1実施形態から第3実施形態)に係る無線計測システムの構成例を示す模式図である。図2は、本開示の実施形態(第1実施形態から第3実施形態)に係る無線計測装置の構成例を示すブロック図である。図3は、本開示の第1実施形態に係る表面弾性波素子の構成例を模式的に示す平面図である。図4および図5は、本開示の第1実施形態に係る受信信号の例を示す波形図である。図6は、本開示の第1実施形態に係る無線計測装置の動作例を示すフローチャートである。図7および図8は、本開示の実施形態に係る無線計測システムの動作例を説明するための模式図である。図9は、本開示の実施形態に係る無線計測システムの動作例を説明するための特性図である。図10は、本開示の実施形態に係る無線計測システムに係るシミュレーション結果を示す図である。図11は、本開示の実施形態に係る無線計測システムの比較例に係るシミュレーション結果を示す図である。図12は、本開示の実施形態に係る無線計測システムとその比較例に係るシミュレーション結果を示す図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る無線計測システム100の構成例を模式的に示す。図1に示す無線計測システム100は、ガスタービン50のタービン動翼53における所定の物理量(例えば、温度、振動、歪み等)を検知するシステムとして構成されている。図1に示す例では、ガスタービン50は、ケーシング51と、ロータ52と、タービン動翼53とを備える。ケーシング51は、軸線O回りに回転するロータ52を外周側から覆う筒状の筐体である。ロータ52には、複数のタービン動翼53が軸線Oの周方向に間隔をあけて複数配列させて取り付けられている。
【0013】
無線計測システム100は、表面弾性波素子10と、センサ20と、信号線30と、無線計測装置40とを備える。表面弾性波素子10とセンサ20は、タービン動翼53に設置されている。表面弾性波素子10とセンサ20は、信号線30によって電気的に接続されている。なお、表面弾性波素子10は、センサ20よりも軸線Oよりに設置されている。センサ20は、所定の物理量(例えば、温度、振動、歪み等)に応じてインピーダンスが変化する。なお、以下では、一例として、センサ20が、温度によってインピーダンスが変化する温度センサであるとする。
【0014】
無線計測装置40は、図2に示すように、ハードウェアである構成要素またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成要素として、アンテナ41と、導波管42と、電波送受信部43と、受信信号処理部44と、出力部45とを備える。図1に示すように、アンテナ41は、ケーシング51において、表面弾性波素子10と対面する位置に設置されている。導波管42は、アンテナ41と電波送受信部43との間で高周波信号を伝送する。アンテナ41は、表面弾性波素子10(図3に示すアンテナ11)との間で電波を送受信する。電波送受信部43は、アンテナ41を介して、表面弾性波素子10(アンテナ11)に対して所定の周波数の電波を間欠的に一定時間ずつ送信するとともに、各送信電波に対して表面弾性波素子10(アンテナ11)が送信した反射信号(電波)を受信信号として受信する。なお、受信信号処理部44と、出力部45については、後述する。
【0015】
一方、表面弾性波素子10は、図3に示すように、アンテナ11と、基板として形成された圧電結晶12と、圧電結晶12上に配置された第1反射器13、第2反射器14および表面弾性波送受信電極15とを有する。第2反射器14は、センサ20に信号線30を介して接続されている。また、第1反射器13は、センサ20と非接続である(接続されていない)。
【0016】
表面弾性波送受信電極15は、すだれ状電極(IDT(InterDigital Transducer))であり、アンテナ11が受信した電波を表面弾性波(SAW(Surface Acoustic Wave))W11およびW21に変換して、第1反射器13と第2反射器14へ送信し、第1反射器13で反射された第1反射波W12と第2反射器14で反射された第2反射波W22を受信してアンテナ11から電波に変換して送信する。
【0017】
図2に示す例では、表面弾性波送受信電極15と第1反射器13間の距離L1(第1距離)は、表面弾性波送受信電極15と第2反射器14間の距離L2(第2距離)より短い。すなわち、表面弾性波送受信電極15からみて、第1反射器13は、第2反射器14より手前に配置されている。ただし、第1反射器13と第2反射器14と表面弾性波送受信電極15の位置関係は、図2に示す例に限定されず、距離L1と距離L2が異なっていればよい。例えば、表面弾性波送受信電極15からみて、第2反射器14が、第1反射器13より手前に配置されていてもよい。また、第1反射器13と第2反射器14は、図2において、一方が表面弾性波送受信電極15の左側に、他方が表面弾性波送受信電極15の右側に配置されていてもよい。
【0018】
なお、第2反射器14はセンサ20と接続されているので、第2反射器14による第2反射波W22は、温度等でセンサインピーダンスが変化すると、第2反射波W22の振幅にも相応分の変化が発生し、その振幅値を計測することで温度等の物理量に換算可能なセンサインピーダンスが同定可能となる。
【0019】
第1反射器13と第2反射器14間の距離(距離L1と距離L2の差)(弾性波の伝搬時間)は、アンテナ41を基準としたアンテナ11の移動による距離減衰の変化や、フェージングによる信号振幅変化の時間に対して十分短い時間になるよう設定することが望ましい。すなわち、第1反射器13からの第1反射波W12に対してその時点でのフェージングによる変化を加えた値と、第2反射器14からの第2反射波W22に対してその時点でのフェージングによる変化を加えた値とが、所望の検知精度を達成できる差に収まるように第1反射器13と第2反射器14間の距離を設定しておくことが望ましい。この場合、第1反射器13と第2反射器14からの反射信号振幅が送受信間の位置関係により受ける影響は同じとみなせる。なお、センサ20に接続されていない第1反射器13からの反射信号は、センサ20のインピーダンスに対応する第2反射器14からの反射信号(センサ信号)に対して基準となる参照信号である。
【0020】
図2に示す構成では、表面弾性波送受信電極15は、第1反射器13、第2反射器14の順番に第1反射波W12と第2反射波W22を受信する。この場合、表面弾性波送受信電極15は、第1反射器13で反射された第1反射波W12と第2反射器14で反射された第2反射波W22を、この順番でアンテナ11から電波に変換して送信する。このため、図4および図5に示すように、無線計測装置40において、アンテナ11からアンテナ41を介して電波送受信部43が受信した受信信号SGは、第1反射波W12に応じた第1受信信号SG1と第2反射波W22に応じた第2受信信号SG2を、この順番で含んでいる。
【0021】
なお、図4および図5は、表面弾性波素子10からの反射信号S11(電波送受信部43での受信信号SG)の時間変化を示す。図4はフェージングにより反射信号が小さい場合、図5はフェージングにより反射信号が大きい場合を示す。第1受信信号SG1の振幅A1の絶対値と第2受信信号SG2の振幅A2の絶対値は、フェージングによって変化するが、振幅A1と振幅A2の比の値はフェージングの影響を受けない。ただし、第1受信信号SG1の振幅A1は、第1反射器13がセンサ20に接続されていないため、距離減衰やフェージングの影響のみ受ける。これに対し、第2受信信号SG2の振幅A2は、第2反射器14がセンサ20に接続されているため、センサインピーダンスで変化するとともに、受信信号SG1の振幅A1と同様、距離減衰やフェージングの影響を受ける。
【0022】
そこで、受信信号処理部44は、電波送受信部43の受信信号SGに含まれる第1反射波W12に応じた第1受信信号SG1と第2反射波W22に応じた第2受信信号SG2との比較結果に基づいてセンサ20が検知した物理量を算出する。受信信号処理部44は、例えば、比較結果を、第1受信信号SG1の振幅値A1と第2受信信号SG2の振幅値A2を比較した結果とする。さらに、受信信号処理部44は、例えば、比較結果を、第1受信信号SG1の振幅値A1と第2受信信号SG2の振幅値A2の比の値とする。なお、受信信号処理部44は、例えば、表面弾性波が第1反射器13を透過することによる第2反射波W22への影響を考慮して、比の値を補正する等して物理量を算出してもよい。あるいは、受信信号処理部44は、例えば、第1受信信号SG1の実効値と第2受信信号SG2の実効値を比較した結果に基づいてセンサ20が検知した物理量を算出したり、第1受信信号SG1の振幅値A1と第2受信信号SG2の振幅値A2の差(比較結果)と振幅値A1と振幅値A2のいずれかの絶対値に基づいてセンサ20が検知した物理量を算出したりしてもよい。
【0023】
そして、出力部45は、受信信号処理部44が算出した物理量を、所定の表示装置、上位の制御装置、所定の記憶装置等へ出力する。
【0024】
(無線計測装置の動作例)
図6は、無線計測装置40が、物理量を計測する際の処理の流れを示す。図6に示す処理は、物理量を1回サンプリングする際の処理である。図6に示す処理では、まず、電波送受信部43が、アンテナ41を用いて、アンテナ11との間で所定の電波を送受信する(S11)。次に、受信信号処理部44が、受信信号SGに含まれる第1受信信号SG1(参照信号)の振幅値A1と第2受信信号(センサ信号)SG2の振幅値A2とを計測する(S12)。次に、受信信号処理部44が、第1受信信号SG1の振幅値A1と第2受信信号SG2の振幅値A2との比の値(A1/A2)に基づいて温度を算出する(S13)。次に、出力部45が、算出された温度を出力する(S14)。
【0025】
(作用・効果)
一般に、無線構成では、送受信間の距離に伴う空間減衰の変化や、送受信機の位置関係で不可避に発生するマルチパスによるフェージング(図7図8図9)により、センサインピーダンスが一定でも反射信号の振幅レベルが変化・変動する。この振幅の変化・変動は、センサインピーダンスの変化と区別不能であるため、センサインピーダンス、すなわち被計測物理量の計測に対する非常に大きな誤差となって発現する。なお、図7は、マルチパスの受信状態の例を示す。図8は、マルチパスによる受信信号の位相状態を示す。図9は、横軸を角度、縦軸を受信信号の受電電力として、マルチパスによるフェージングの例を示す。
【0026】
また、一般に、無線構成で必須となるアンテナやケーブルは固有の入出力インピーダンスを有しており、アンテナ・ケーブルと接続される送受信機や表面弾性波素子のインピーダンスと完全に整合(一致)させることは現実的に不可能である。これらの不整合は損失となるため、減衰変動やフェージングと同様に計測誤差となる。この不整合損は、初期校正である程度軽減可能であるが、周囲環境(温湿度)によってインピーダンスが変化するため、初期校正では取り除けない不整合損となり計測誤差に影響を及ぼす。
【0027】
これに対し、本実施形態では、例えば、反射信号(センサ信号)と参照信号との振幅比のみを使用しているため、距離減衰やフェージングによる影響を相殺することが可能であり、計測精度が格段に向上する(図10および図11)。すなわち、本実施形態によれば、物理量の検知精度を向上させることができる。図10は、フェージングによる影響を0dBから60dBまで変化させた際に、設定温度(センサ20のインピーダンス)と受信信号処理部44で算出される計測温度との関係をシミュレーションで求めた結果を示す。図11は、第2受信信号SG2のみに基づいて物理量(温度)を算出した場合(比較例)の設定温度と計測温度(算出した温度)との関係をシミュレーションで求めた結果を示す。
【0028】
さらに、アンテナやケーブルのインピーダンス変化による不整合損が発生しても、本実施形態の効果により計測精度は大幅に向上する(図12)。図12は、設定温度(センサ20のインピーダンス)を変化させた場合の計測誤差のシミュレーション結果を示す。シミュレーション結果によれば、アンテナ等の不整合損が発生しても本実施形態による参照信号を用いたフェージング対策で計測誤差は約100分の1に低減することができる。なお、特性C1は本実施形態においてアンテナやケーブルのインピーダンス変化を10Ωとした場合、特性C2は本実施形態においてアンテナやケーブルのインピーダンス変化を100Ωとした場合である(縦軸は右側)。特性C11は上述した比較例においてアンテナやケーブルのインピーダンス変化を10Ωとした場合、特性C12は比較例においてアンテナやケーブルのインピーダンス変化を100Ωとした場合である(縦軸は左側)。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、計測環境による影響の低減が図れるのみならず、アンテナやケーブルの個体差による影響低減も可能であり、アンテナやケーブルの選択肢が広がり現場運用での可用性が拡大する。た、本実施形態によれば振幅比のみからセンサインピーダンスが求まるため、電源電圧や温度による出力変動の影響を排除することができ、信頼性の高い計測システムの構築が可能である。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法について、図13図15を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、図13に示す表面弾性波素子10a(第1実施形態の表面弾性波素子10に対応)の構成と、図15に示す受信信号処理部44の動作(S12aとS13-1およびS13-2(図6のS12とS13に対応))が異なる。
【0031】
図13は、本開示の第2実施形態に係る表面弾性波素子の構成例を模式的に示す平面図である。図14は、本開示の第2実施形態に係る受信信号の例を示す波形図である。図15は、本開示の第2実施形態に係る無線計測装置40の動作例を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態では、センサ20に接続されている第2反射器14の前後に第1反射器13と第3反射器16を設ける(図13)。また、受信信号処理部44は、物理量(センサインピーダンス)を、第1反射器13、第2反射器14および第3反射器16からの第1反射波W12に応じた第1受信信号SG1と第2反射波W22に応じた第2受信信号SG2と第3反射波W32に応じた第3受信信号SG3とを含む受信信号SGの振幅(反射信号振幅)から算出する(図14)。
【0033】
図13に示す表面弾性波素子10aは、図3に示す表面弾性波素子10に対して、新たに第3反射器16を備えている。第3反射器16は、センサ20と非接続である(接続されていない)。また、第3反射器16は、第1反射器13と同一の反射特性を有する。表面弾性波送受信電極15と第3反射器16間の距離L3(第3距離)は、表面弾性波送受信電極15と第2反射器14間の距離L2(第2距離)より長い。すなわち、表面弾性波送受信電極15からみて、第3反射器16は、第2反射器14より奧に配置されている。
【0034】
表面弾性波送受信電極15は、アンテナ11が受信した電波を表面弾性波W11、W21およびW31に変換して、第1反射器13と第2反射器14と第3反射器16へ送信し、第1反射器13で反射された第1反射波W12と第2反射器14で反射された第2反射波W22と第3反射器16で反射された第3反射波W32を受信してアンテナ11から電波に変換して送信する。
【0035】
図13に示す構成では、表面弾性波送受信電極15は、第1反射器13、第2反射器14、第3反射器16の順番に第1反射波W12と第2反射波W22と第3反射波W32を受信する。この場合、表面弾性波送受信電極15は、第1反射器13で反射された第1反射波W12と第2反射器14で反射された第2反射波W22と第3反射器16で反射された第3反射波W32を、この順番でアンテナ11から電波に変換して送信する。このため、図14に示すように、無線計測装置40において、アンテナ11からアンテナ41を介して電波送受信部43が受信した受信信号SGは、第1反射波W12に応じた第1受信信号SG1と第2反射波W22に応じた第2受信信号SG2と第3反射波W32に応じた第3受信信号SG3を、この順番で含んでいる。なお、図14は、表面弾性波素子10aからの反射信号S11(電波送受信部43での受信信号SG)の時間変化を示す。
【0036】
また、図15に示すように、本実施形態では、まず、電波送受信部43が、アンテナ41を用いて、アンテナ11との間で所定の電波を送受信する(S11)。次に、受信信号処理部44が、受信信号SGに含まれる第1受信信号SG1(参照信号)の振幅値A1と第2受信信号(センサ信号)SG2の振幅値A2と第3受信信号SG3(参照信号)の振幅値(振幅値A3とする)を計測する(S12a)。次に、受信信号処理部44が、第1受信信号(参照信号)の振幅値A1と第3受信信号(参照信号)の振幅値A3との平均値(A13=(A1+A3)/2)を算出する(S13-1)。次に、受信信号処理部44が、平均値A13と第2受信信号SG2の振幅値A2との比の値(A13/A2)に基づいて温度を算出する(S13-2)。次に、出力部45が、算出された温度を出力する(S14)。
【0037】
フェージング変化が表面弾性波の遅延より速い場合、第1実施形態ではフェージングが各反射信号の振幅に及ぼす影響が異なる。このため、フェージング影響を相殺することができず、計測精度が劣化する場合がある。本実施形態では、センサ20に接続されている第2反射器14の前後に第1反射器13と第3反射器16を設けているため、第1反射器13からの反射信号(第1受信信号SG1)と第3反射器16からの反射信号(第3受信信号SG3)との平均化処理を行い、第2反射器14からの反射信号(受信信号SG2)との比を求めることでフェージング影響の低減が可能となる。
【0038】
なお、受信信号処理部44は、第1受信信号SG1と第3受信信号SG3の平均化処理では、単純平均に限らず、例えば、透過係数等を考慮して加重平均を求める平均化処理を行ってもよい。
【0039】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態に係る無線計測システム、表面弾性波素子および無線計測方法について、図16を参照して説明する。第3実施形態は、第1実施形態と比較して、図16に示す表面弾性波素子10b(第1実施形態の表面弾性波素子10に対応)の構成が異なる。また、図16に示す圧電結晶12bおよび表面弾性波送受信電極15bは、図3に示す圧電結晶12および表面弾性波送受信電極15と大きさがそれぞれ異なる。
【0040】
第1実施形態では、複数の反射器が同じ伝搬路上に形成されているため、反射器を通過した信号の振幅は、反射器の透過係数に影響される。さらに、通過した信号が後段の反射器で反射された信号の振幅は、後段反射器の反射係数に影響される。従って、第1実施形態の反射信号(受信信号SG)(図4および図5)は、前段反射器の透過係数と後段反射器の反射係数との積に影響される。このため、反射信号の振幅からセンサインピーダンス(物理量)を求めるアルゴリズムが複雑となり、透過係数や反射係数のバラツキ、変動等の影響で計測精度が低下するおそれがある。
【0041】
本実施形態では、異なった遅延時間となる第1反射器13と第2反射器14を並列の位置に構成する。この構成により、反射信号の振幅は各反射器の反射係数のみで決定されるため、より簡易なアルゴリズムでセンサインピーダンスの同定が可能となる。
【0042】
また、同じ半導体製造環境で作成された反射器の反射係数はほぼ同じになり、現場での測定環境で反射係数が変化しても第1反射器13と第2反射器14は同程度の影響を受けるため、アルゴリズムによって影響が相殺され、正しいセンサインピーダンスを同定することが可能である。
【0043】
本実施形態によれば、フェージング等送受信の位置関係による反射信号振幅の変化が表面弾性波の遅延による変化に対して無視できない場合でも反射信号(第2受信信号SG2)の振幅を推定することが可能となる(ただし、フェージング周期が短く、直線近似できない場合は成り立たない)。
【0044】
なお、図16に示す表面弾性波素子10bは、第1反射器13と表面弾性波送受信電極15b間の最短の伝搬路P1と、第2反射器14と表面弾性波送受信電極15b間の最短の伝搬路P2とが非重複である(重なっていない)。ここで、伝搬路P1は、例えば、第1反射器13の端部131および132と表面弾性波送受信電極15bとを結ぶ最短の線201および202と第1反射器13と表面弾性波送受信電極15bとで囲まれた領域として定義することができる。また、伝搬路P2は、例えば、第2反射器14の端部141および142と表面弾性波送受信電極15bとを結ぶ最短の線203および204と第2反射器14と表面弾性波送受信電極15bとで囲まれた領域として定義することができる。
【0045】
<各実施形態に共通の効果>
表面弾性波デバイスを用いたセンサインピーダンス測定で、複数の反射器を用いて既知の反射器からの信号を基準に、センサの接続された反射器からの信号振幅を測定評価することで、反射信号の変動による誤差を除去可能となる。したがって、物理量の検知精度を向上させることができる。
【0046】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。また、センサ20および表面弾性波素子10、10a、10bは、移動する計測対象に限らず、静止している計測対象に設置されてもよい。
【0047】
<コンピュータ構成>
図17は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の電波送受信部43の一部や、受信信号処理部44と出力部45は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0048】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0049】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載の無線計測システム100は、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る無線計測システム100は、所定の物理量に応じてインピーダンスが変化するセンサ20と、アンテナ11と、圧電結晶12、12bと、前記圧電結晶上に配置された第1反射器13と、前記圧電結晶上に配置された第2反射器14と、前記圧電結晶上に配置された表面弾性波送受信電極15、15bとを有し、前記第1反射器が、前記センサと非接続であり、前記第2反射器が、前記センサに接続され、かつ、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極との間の第1距離L1と異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第2距離L2を有し、前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波W11、W21に変換して前記第1反射器と前記第2反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波W12と前記第2反射器で反射された第2反射波W22を受信して前記アンテナから電波に変換して送信する表面弾性波素子10、10a、10bと、前記アンテナに対して電波を送信するとともに、前記アンテナが送信した電波を受信する電波送受信部43と、前記電波送受信部の受信信号に含まれる前記第1反射波に応じた第1受信信号SG1と前記第2反射波に応じた第2受信信号SG2との比較結果に基づいて前記物理量を算出する受信信号処理部44とを有する無線計測装置40とを備える。本態様および以下の各態様によれば、物理量の検知精度を向上させることができる。
【0052】
(2)第2の態様に係る無線計測システム100は、(1)の無線計測システム100であって、前記比較結果は、前記第1受信信号の振幅値A1と前記第2受信信号の振幅値A2を比較した結果である。
【0053】
(3)第3の態様に係る無線計測システム100は、(1)の無線計測システム100であって、前記比較結果は、前記第1受信信号の振幅値A1と前記第2受信信号の振幅値A2の比の値である。
【0054】
(4)第4の態様に係る無線計測システム100は、(1)の無線計測システム100であって、前記表面弾性波素子10aが、前記圧電結晶上に前記第1距離および前記第2距離とは異なる前記表面弾性波送受信電極に対する第3距離L3を有して配置され、かつ、前記センサに非接続の第3反射器16をさらに有し、前記第1距離が前記第2距離より短く、かつ、前記第3距離が前記第2距離より長く、前記表面弾性波送受信電極が、前記アンテナが受信した電波を表面弾性波W11、W21、W31に変換して前記第1反射器と前記第2反射器と前記第3反射器へ送信し、前記第1反射器で反射された第1反射波と前記第2反射器で反射された第2反射波と前記第3反射器で反射された第3反射波W32とを受信して前記アンテナから電波に変換して送信し、前記受信信号処理部が、前記受信信号に含まれる前記第3反射波に応じた第3受信信号SG3と前記第1受信信号とを平均化した信号と、前記第2受信信号との比較結果に基づいて、前記物理量を算出する。本態様によれば、フェージングの影響の低減が可能となる。
【0055】
(5)第5の態様に係る無線計測システム100は、(1)~(4)の無線計測システム100であって、前記第1反射器と前記表面弾性波送受信電極間の最短の伝搬路P1と、前記第2反射器と前記表面弾性波送受信電極間の最短の伝搬路P2とが非重複である。この構成によれば、反射器の透過係数による影響を低減することがえきる。
【符号の説明】
【0056】
100…無線計測システム
10、10a、10b…表面弾性波素子
11…アンテナ
12、12b…圧電結晶
13…第1反射器
14…第2反射器
15、15b…表面弾性波送受信電極
16…第3反射器
20…センサ
30…信号線
40…無線計測装置
41…アンテナ
42…導波管
43…電波送受信部
44…受信信号処理部
45…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17