(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180726
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】装飾体
(51)【国際特許分類】
G09F 7/18 20060101AFI20221130BHJP
G09F 7/22 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G09F7/18 D
G09F7/22 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087370
(22)【出願日】2021-05-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521227067
【氏名又は名称】株式会社高山
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】宮地 敦士
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物の壁面から離間させて吊下げた板体が、風により前後方向及び左右方向に揺動されても、金属衝突音や金属が擦る音が発生せず、外光を反射させて煌めいた状態を呈させると共に、板体の表面に映り込んだ反射模様が変化にとんだものとなる耐久性が高い装飾体を提供すること。
【解決手段】複数の金属の板体10を重ならないように配列させ、該板体10の夫々を複数の吊下げ孔11に軸体20の樹脂製管体40を通して遊嵌させ、前後方向及び左右方向に揺動可能に吊下げ、該吊下げ孔11の大きさを、該板体10が揺動されても装着部材と衝突しない大きさとし、表面に映り込んだ反射模様が変化にとむと共に耐久性の高い装飾体であっても、金属部が異音を発生させないようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の外面に固定された装着部材から離間されて配設される装飾体であって、
前記外面に沿って重ならないように配列される板体と、前記板体を軸支させる軸体と、異音発生防止手段とからなり、
前記軸体は、抜止頭部と胴部と固着部とからなり、
前記板体は、金属板体からなり、上方に水平に並んだ複数の吊下げ孔を備え、各々の吊下げ孔に前記軸体が挿し込まれ、
前記抜止頭部が、前記胴部よりも拡幅されて前記板体を抜け止めし、
前記胴部が所定の長さとされると共に、前記胴部の外周と前記吊下げ孔の内周との間に前記板体を遊嵌させる隙間を備え、前記板体が、前記装着部材に対して前後方向及び左右方向に揺動可能とされ、
前記異音発生防止手段として、前記胴部の周面が滑らかな状態とされていると共に、前記隙間の大きさが前記板体を前後方向及び左右方向に揺動させた状態で、前記板体が前記装着部材に衝突されない寸法とされている、
ことを特徴とする装飾体。
【請求項2】
前記異音発生防止手段に、一対の樹脂材が含まれ、
前記板体が、前記一対の樹脂材に挟まれた状態で、前記胴部に装着される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
前記異音発生防止手段に、摺動手段が含まれ、
前記摺動手段が、前記吊下げ孔の内周面と前記胴部の外周面との間に装着される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装飾体。
【請求項4】
前記摺動手段が、樹脂製管体からなっている、
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾体。
【請求項5】
前記隙間の水平方向の寸法が垂直方向の寸法よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の装飾体。
【請求項6】
前記板体が、大きさが異なる複数の種類の中から選択され、大きさが異なる板体が混在した状態で配設される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面に配設される装飾体に関する。具体的には、構造物の壁面から離間させて吊下げた板体が風により揺動されても不快な金属音を発生させず、板体の表面からの反射模様が変化にとんだものとなると共に耐久性が高い装飾体に関する。
【0002】
具体的には、風により垂直面に対して回転されないように、板体を複数の箇所で吊下げ、前後方向及び左右方向に揺動可能とさせると共に異音発生防止手段を備えさせた装飾体に関する。詳細には、板体と軸体等とによる金属衝突音や金属が擦る音等の異音の発生が防止され、外光を煌めいた状態で反射させ、周囲の物、例えば植栽等の反射像を映し出し、広さが限られた屋上庭園等において、空間の広さや植栽面積を錯誤させる効果をも呈する装飾体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、円形状又は矩形形状の板体を装飾板として壁面に吊下げて、広告媒体として機能させる技術がある。特許文献1には、筋状に溝を入れた樹脂基板に、溝の区画を単位として円形状の装飾板を吊下げて、板体の色調の変化がある広告媒体とさせるとする装飾板の技術が開示されている。
【0004】
基板も装飾板自体も樹脂製とされ、基板に筋状の溝が備えられているため、容易に溝で折り曲げて切断することができ、装飾板の形状を任意に決めることが容易であるとされている。円形状の装飾板の上部に一つの孔をあけ、基板から突出された基軸の軸孔に、装飾板の孔に通したリベットを挿し込んで、装飾板を取り付けるとされている。
【0005】
この技術によれば、基板も装飾板も樹脂体とされているため、例え垂直面に対して回転しても異音は発生しにくいが、屋外における耐久性が低い。装飾体に光を反射させる塗装又はめっき処理をしたとしても、耐久性が長期にわたって維持しにくく、反射効果を長期にわたって維持できないという課題があった。
【0006】
特許文献2には、板体をなす反射プレートの反射面を凹面鏡、凸面鏡等とした装飾用反射プレートの技術が開示されている。この技術によれば、太陽光があたる反射面を湾曲形状とすることにより、眩惑による交通の危険を防止できると共に、乱反射の効果により広く反射させることができ、揺動を広角度としなくてもよく、揺動による騒音の発生を抑止しやすいとされている。
【0007】
しかし、この技術によれば各々の板体を凹面鏡又は凸面鏡とするために手間がかかると共に、板体の上部を一点で吊下げているだけなので、風が強いときには板体が回転して、板体同士が衝突しやすく、板体の脱落や破損が発生しやすいという課題があった。
【0008】
特許文献3には、装飾体を壁面体に突き当たるまでの一定の間隔以上に動作できなくした装飾板の組立て器具の技術が開示されている。この技術によれば、折り曲げた細幅板体を基材として、基材の一方の側縁から、装飾板に穿孔させた孔に貫通させる一対の細幅の爪板を装飾板のピッチで突き出させた基材と、上部に2か所の孔をあけた装飾板の組立て器具とされている。
【0009】
この技術によれば、装飾板の孔に爪板を挿し込ませた状態で、爪板の突出部を折曲器で円筒状に折り曲げて、抜け止めとさせている。この技術によれば折り曲げた円筒状の部分が、爪板を基材の側縁に押し当てて、前後方向しか揺動できないようにしている。そのため左右方向に揺動することによる反射効果が得られず、変化にとんだ装飾効果が得られないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭51-106589号公報
【特許文献2】実開昭59-077196号公報
【特許文献3】実開昭48-037797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、構造物の壁面から離間させて吊下げた板体が、風により前後方向及び左右方向に揺動されても、金属衝突音や金属が擦る音が発生せず、外光を反射させて煌めいた状態を呈させると共に、板体の表面に映り込んだ反射模様が変化にとんだものとなる耐久性が高い装飾体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の発明は、構造物の外面に固定された装着部材から離間されて配設される装飾体であって、前記外面に沿って重ならないように配列される板体と、前記板体を軸支させる軸体と、異音発生防止手段とからなり、前記軸体は、抜止頭部と胴部と固着部とからなり、前記板体は、金属板体からなり、上部に水平に複数の吊下げ孔が並列され、各々の吊下げ孔に前記軸体が挿し込まれ、前記抜止頭部が、前記胴部よりも拡幅されて前記板体を抜け止めし、前記胴部が所定の長さとされると共に、前記胴部の外周と前記吊下げ孔の内周との間に前記板体を遊嵌させる隙間を備え、前記板体が、前記装着部材に対して前後方向及び左右方向に揺動可能とされ、前記異音発生防止手段として、前記胴部の周面が滑らかな状態とされていると共に、前記隙間の大きさが前記板体を前後方向及び左右方向に揺動させた状態で、前記板体が前記装着部材に衝突されない寸法とされていることを特徴としている。
【0013】
装飾体をなす板体が構造物の外面から離間されて配設されているため、板体の裏面に風が通過する通風空間が設けられ、板体が前後方向及び左右方向に揺動されても構造物の外面に衝突することはない。板体は、屋外使用に好適であるように耐候性のある金属板体からなっているが、平面体に限定されず、重ならないように配設されればよい。
【0014】
金属板体の材質、大きさ、色、隣り合う隙間の幅は限定されないが、材質は耐候性の高いステンレス材が好適である。金属板体は、孔あき板であってもよく、屈曲させた板体であってもよく、表面の仕上は、鏡面仕上でも、エッチング仕上でも、ヘアライン仕上でもよく限定されないことは勿論のことである。また、無垢の金属板に限定されず、樹脂を挟み込んだ金属板であってもよく、コーティングされた金属板であってもよい。
【0015】
重ならないように配列されるとは、隣の板体との間隔が均等でなくてもよい。板体を矩形形状とし隙間の幅を等しくすると、無風状態では、あたかも施釉したタイル壁の美観を呈する。隣の板体との間隔を不均一にしておけば、裏面の通風空間と外面との間に流出入する空気流が変化しやすく、微風でも板体に、さざ波状の揺動を生じさせやすい。
【0016】
板体の上部には、水平に複数の吊下げ孔が並列され、夫々の吊下げ孔には、軸体が挿し込まれている。複数の軸体の胴部に、一枚の板体が吊下げられているため、板体は回転することがなく、前後方向及び左右方向に揺動されるに留まる。板体は、抜止頭部に抜け止めされ、胴部の長さで前後方向に移動可能とされる。胴部の外周部と、吊下げ孔の内周部との間には、隙間があけられている。
【0017】
胴部の長さは、約5mmから10mmが好適であり、隙間の幅は約1mmから2mmが好適であるが夫々限定されない。板体は、吊下げ孔を中心とする前後に傾く前後方向の揺動と共に、前後方向へのスライドに加えて左右に傾く左右方向の揺動とが組み合されて、外光をさざ波のように反射させる。
【0018】
また、前記隙間の幅は、板体を前後方向及び左右方向に揺動させた状態で、前記板体が前記装着部材に衝突されない寸法とされている。これにより、構造物は勿論のこと、例えば装着部材が金属であっても、板体と装着部材との衝突による異音が発生せず、板体の表面に映り込んだ反射模様が変化にとんだものとなる耐久性が高い装飾体とすることができるという有利な効果を奏する。
【0019】
本発明の第2の発明は、第1の発明の装飾体であって、前記異音発生防止手段に、一対の樹脂材が含まれ、前記板体が、前記一対の樹脂材に挟まれた状態で、前記胴部に装着されることを特徴としている。
【0020】
異音発生防止手段をなす樹脂材の材質は限定されず、耐候性の高い樹脂、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等であればよい。樹脂材に挟まれたとは、円環状の樹脂材で挟むことに限定されず、例えば上下左右の箇所に樹脂材を貼着させた状態としてもよい。第2の発明によれば、板材が樹脂材に挟まれた状態で胴部に装着されているため、板材が抜止頭部や固着部に直接衝突されないため、耳障りな金属衝突音を発生させないという効果を奏する。
【0021】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の装飾体であって、前記異音発生防止手段に、摺動手段が含まれ、前記摺動手段が、前記吊下げ孔の内周面と前記胴部の外周面との接触位置に付設されることを特徴としている。
【0022】
摺動手段の材質は、動摩擦係数0.45以下の樹脂、例えばフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等のほか、セラミックスでもよく、フッ素樹脂等のコーティングでもよい。接触位置とは、周囲全面であってもよく、常時接触している胴部の天面のみでもよい。異音発生防止手段に、軸体と板体との接触位置に装着される摺動手段が含まれているため、金属部同士が擦る音の発生が防止されるという効果を奏する。
【0023】
本発明の第4の発明は、第3の発明の装飾体であって、前記摺動手段が、樹脂製管体からなり、前記胴部を囲っていることを特徴としている。第4の発明によれば、摺動手段を樹脂製管体としている。摺動部材が樹脂製管体であると、軸体の胴部を囲むように、樹脂製管体に胴部を挿し込めばよく、異音発生防止手段の装着が容易である。
【0024】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の装飾体であって、前記隙間の水平方向の寸法が垂直方向の寸法よりも大きいことを特徴としている。第5の発明によれば、吊下げ孔と胴部との隙間の水平方向の寸法が垂直方向の寸法よりも大きいため、板体を吊下げている複数の軸体の平行の精度が長期間の間に悪くなっても、水平方向に揺動されやすく、より変化にとんだ煌めく状態を維持させやすい。
【0025】
本発明の第6の発明は、第1から第5の発明の装飾体であって、前記板体が、形状又は大きさが異なる複数の種類の中から選択され、形状又は大きさが異なる板体が混在した状態で配設されることを特徴としている。
【0026】
第6の発明によれば、板体は重ならないように配設されればよく、円形状、正方形、長方形等の形状の大きさの異なる板体が散りばめられたように配設されると、広告宣伝効果を発揮させやすい。例えば、社名の文字部分だけ小さな円形の板体とし、その周囲に大きな正方形の板体を配列させるとよい。
【0027】
そうすると、風が無いときには、太陽光が全面で一様に反射されるのに対して、風があるときには、一部だけの揺らぎを小さく、その周囲の部分の揺らぎを大きくさせ、一部だけの煌めきを変化させることができるという従来にない効果を奏する。このため、太陽光の反射により文字部分を周囲から浮き出させて広告効果を高くすることもできる。
【発明の効果】
【0028】
・本発明の第1の発明によれば、構造物は勿論のこと、例えば装着部材が金属であっても、板体と装着部材との衝突による異音が発生せず、板体の表面に映り込んだ反射模様が変化にとんだものとなる耐久性が高い装飾体とすることができるという有利な効果を奏する。
・本発明の第2の発明によれば、板材が樹脂材に挟まれた状態で胴部に装着されているため、板材が抜止頭部や固着部に直接衝突されないため、耳障りな金属衝突音を発生させないという効果を奏する。
【0029】
・本発明の第3の発明によれば、金属部同士が擦る音の発生が防止されるという効果を奏する。
・本発明の第4の発明によれば、摺動部材が樹脂製管体であると、軸体の胴部を囲むように、樹脂製管体に胴部を挿し込めばよく、異音発生防止手段の装着が容易である。
【0030】
・本発明の第5の発明によれば、板体を吊下げている複数の軸体の平行の精度が長期間の間に悪くなっても、水平方向に揺動されやすく、より変化にとんだ煌めく状態を維持させやすい。
・本発明の第6の発明によれば、風が無いときには、太陽光が全面で一様に反射されるのに対して、風があるときには、一部だけの揺らぎを小さく、その周囲の部分の揺らぎを大きくさせ、一部だけの煌めきを変化させることができるという従来にない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【発明を実施するための形態】
【0032】
複数の金属板体を重ならないように配列させ、その夫々を複数の吊下げ孔から軸体を通して、軸体の所定の長さの滑らかな胴部に遊嵌させ、前後方向及び左右方向に揺動可能に吊下げ、吊下げ孔の大きさを、板体が揺動されても装着部材と衝突しない大きさとし、表面に映り込んだ反射模様が変化にとむと共に耐久性の高い装飾体であっても、金属部が異音を発生させないようにした。
【実施例0033】
実施例1として、板体が平坦な金属板体とされた装飾体1を、
図1から
図5を参照して説明する。
図1(A)図は装飾体を構成する部材の分解斜視図を示し、
図1(B)図は部材を組み立てた状態を示している。
図2は吊下げて配列させた装飾体1の正面図を示し、
図3は組み立てた状態の斜視図を示している。
図4は平面図により吊下げた装飾体の揺動状態を示している。
図5は側面図により吊下げた装飾体の揺動状態を示している。
【0034】
装着部材は、構造物の壁面に沿って垂直方向にハット型断面形状をなす垂直下地部材100と、垂直下地部材に交差する方向に配列された溝型断面形状をなす水平部材200とからなっている。垂直下地部材100は、構造物の壁面に所定の間隔でボルト300により固定され、水平部材200は予め所定の間隔で装飾体を吊下げた状態とされて、垂直下地部材100に溶接して固着される。垂直下地部材100と水平部材200とが格子状の装着部材とされる(
図4、
図5参照)。
【0035】
装飾体1は、表面が平滑に仕上げられた、一辺が10cmの矩形形状のステンレス板からなる板体10と、抜止頭部と胴部と固着部をなす軸体20と、異音発生防止手段をなす一対の樹脂製円板30と樹脂製管体40とを備えている。板体の上方部には、上縁から1cm内方と、左縁と右縁の夫々から1cm内方との交差位置に、外径3.5mmの吊下げ孔11,11が穿孔されている。
【0036】
直径が約3mmの螺子軸体50とナット60と細筒体70とが固着部をなし、螺子頭部51が抜止頭部とされ、螺子頭部の内端面から所定の長さの範囲が滑らかな外周面とされた胴部52とされている。胴部の長さは5mmから10mmが好適である。胴部において、装着された板体10が前後にスライド可能とされ、板体10が前後方向及び左右方向に揺動される。螺子軸体の胴部52の滑らかな外周面が、異音発生防止手段の一つとされている。胴部に、外周が滑らかな部材を装着するのであれば、胴部の内部は螺子としてもよい。
【0037】
軸体の胴部52の先方の周面には螺旋螺子部53が形成され、螺旋螺子部53が長く伸び、その先端部が装着部材をなす水平部材200に固着される。螺旋螺子部53の長さは限定されず、少なくとも水平部材200に螺子軸体50が固着される長さであればよい。実施例1においては、円断面形状の軸体の先方の外周面に螺旋溝を形成させている。一方、全長に螺旋溝が形成された螺子軸体を、その螺子頭部の内端から外周面の螺旋溝を削って滑らかな胴部とさせてもよい。螺旋螺子部の長さは70mmとされ、螺子軸体の頭部には、回転工具に装着される被装着部が形成されている。
【0038】
細筒体70には、螺子軸体の螺旋螺子部53が挿嵌される。細筒体の両側の位置の螺旋螺子部にナット60,60が締め込まれて、螺旋軸体50と細筒体70と両側のナット60,60とが一体化されて、変形されにくい高い剛性の軸体の固着部をなす。軸体の固着部の端から突出された螺旋螺子部53が水平部材200に形成された螺子孔に螺合され、水平部材200を挟んだ状態で、反対側から外れ止めナット61(
図4,
図5参照)が締め込まれて、水平部材200と装飾体1とが一体化される。
【0039】
異音発生防止手段をなす摺動手段としての樹脂製管体40は、ポリアセタール樹脂製とされる。装飾体1においては、樹脂製管体40の中に外周面が滑らかな胴部52が挿嵌されている。吊下げ孔11の内径に応じて、樹脂製管体40が嵌められた状態又は外周面が滑らかな胴部52の状態で、吊下げ孔11の中に挿し込まれればよい。異音発生防止手段をなす樹脂製円板30は、外径5mm厚さ1mmのポリカーボネート樹脂材からなり、中央部に前記胴部52又は樹脂製管体40が貫通される孔が穿孔されている。
【0040】
板体の吊下げ孔11に、一方から樹脂製円板30の孔を通して螺子軸体50が挿入され、板体10を挟むように、板体の裏面側から樹脂製管体40、他方の樹脂製円板30が螺子軸体50に嵌められ、螺旋螺子部53の胴部側までナット60が螺合され、表面側から順に、螺子頭部51、樹脂製円板30、樹脂製管体40、樹脂製円板30が配列され、板体10が樹脂製管体40に沿って前後方向に遊嵌される。板体の他方の吊下げ孔にも、同様に軸体が装着されて、装飾体1が水平部材200に固着される前の状態とされる。
【0041】
多数の固着前の状態とされた装飾体1が、上下方向及び左右方向に同一の間隔をあけて配列された状態とされる(
図2参照)。板体10の表面が平滑に仕上げられて、等間隔の隙間400をあけて配列されるため、風がなく板体が揺動されない状態では、隙間400が、施釉タイル張壁の目地部と同様な美観を呈する。この隙間400から空気が裏面に出入りする際に、板体10が揺動され、板体10に映り込んだ外景が、さざ波のように揺れた状態となる。
【0042】
ここで板体の揺動について、詳細に説明する。吊下げ孔11の内周と胴部40(52)の外周との間には、板体を遊嵌させる隙間410があけられている。この隙間410の幅は、孔の中で胴部を偏在させた状態で、水平方向及び垂直方向とも約1.0mmから2.0mmとされる。
【0043】
胴部40(52)が所定の長さとされているため、板体10は胴部の長さの範囲で前後方向にスライド(
図3A矢印参照)される。それに加えて、吊下げ孔11と胴部40(52)との間には前記隙間410があいているため、板体の左側位置と右側位置とは相対的に異なる前後の位置、換言すれば平面視で左右に傾いた状態となりやすい(
図3B矢印参照)。
【0044】
胴部に遊嵌された板体が、前後にスライドしながら、左右に傾くため、板体は胴部と板体との接触位置を支点にして左右方向に揺動される(
図4C矢印参照)。また、吊下げられた板体10は、胴部と板体との接触位置を支点にして、前後方向にも揺動される(
図5D矢印参照)。左右方向の揺動(
図4C矢印参照)と前後方向の揺動(
図5D矢印参照)とが重ね合わされ、全体として、さざ波のような揺動状態が発生される(
図4、
図5参照)。
【0045】
板体を胴部に吊下げた状態で、板体の前後方向の揺動と左右方向の揺動とを重ねた状態で、板体を大きく傾けた状態としても、板体の縁部が、壁面の前方に固着された装着部材をなす垂直下地部材100、水平部材200に衝突しないように、胴部の外径と吊下げ孔の内径が決定される。換言すれば胴部と吊下げ孔の隙間410の幅が制限されているため、板体が装着部材と衝突して、不快な高音の金属音が発生されない。
【0046】
実施例1の装飾体を、例えば屋上広場の植栽帯や花壇の背面上部に配設させると、風が凪いだ状態では、板体に植栽帯や花壇が映り込んでいるため、あたかも植栽帯や花壇が広がったかのように錯誤させ、屋上広場が広がりを感じさせる空間となる。また微風がある状態では、板体に映り込んだ植栽帯や花壇が、さざ波のように揺れ動き、華やいだ雰囲気が呈される。仮に、風が強い状態でも、異音発生防止手段を有しているため、金属が擦る音や衝突する音が発生せず、滞在者に不安や不快な思いをさせない。
吊下げ孔11の中には、外周に樹脂製管体40を装着させた螺子軸体50が胴部として挿し込まれている。板体10は、上下方向は上部のみで支持されているため、上下方向の胴部と吊下げ孔の隙間が小さくても揺動されやすい。一方、左右方向については、水平部材に2本の軸体を平行に並べて植立させているため、施工当初は平行であっても、台風等に晒されて、長期間の間に軸体が傾いて平行でなくなった場合には水平方向に揺動されにくくなる。