(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180732
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/08 20120101AFI20221130BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221130BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087388
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正憲
(72)【発明者】
【氏名】西澤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 憂
(72)【発明者】
【氏名】大西 慶秀
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA51
3D241BC01
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DD01Z
(57)【要約】
【課題】乗員の姿勢が乗り物酔いしやすい姿勢である場合、車速を変更する際における車両の加速度の絶対値が大きくなることを抑制できるようにすること。
【解決手段】制御装置70は、乗員200の頭部傾斜角を取得する傾斜角取得部72と、頭部傾斜角を基に、車両の加速度の絶対値の上限値を設定する上限値設定部74と、車両の加速度の絶対値が上限値を超えないように、車両の加減速を制御する加減速制御部75とを備える。上限値設定部74は、頭部傾斜角が規定角度範囲に含まれている場合、頭部傾斜角が規定角度範囲に含まれていない場合よりも小さい値を、上限値として設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の頭部の傾斜角である頭部傾斜角を取得する傾斜角取得部と、
前記頭部傾斜角を基に、前記車両の加速度の絶対値の上限値を設定する上限値設定部と、
前記車両の加速度の絶対値が前記上限値を超えないように、前記車両の加減速を制御する加減速制御部と、を備え、
乗り物酔いしやすい前記頭部傾斜角の範囲を規定角度範囲としたとき、
前記上限値設定部は、前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲に含まれている場合、前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲に含まれていない場合よりも小さい値を、前記上限値として設定する
車両の制御装置。
【請求項2】
前記頭部傾斜角は、前記乗員の姿勢が前傾になるほど小さくなり、
前記上限値設定部は、
前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲の上限よりも大きい場合、当該頭部傾斜角が大きいほど大きい値を前記上限値として設定し、
前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲の下限よりも小さい場合、当該頭部傾斜角が小さいほど大きい値を前記上限値として設定するようになっており、
前記傾斜角取得部は、前記車両に複数の前記乗員が搭乗している場合、複数の前記乗員の前記頭部傾斜角を取得し、
前記規定角度範囲の中間値を基準傾斜角としたとき、前記上限値設定部は、前記車両に複数の前記乗員が搭乗している場合、複数の前記乗員の前記頭部傾斜角のうち、前記基準傾斜角に最も近い前記頭部傾斜角に基づいて前記上限値を設定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
自動運転モードで前記車両を走行させる場合、当該車両の加減速を指示する自動運転制御部を備え、
前記自動運転制御部は、前記自動運転モードで走行中の前記車両を減速させる場合、前記車両の減速度の指示値である減速度指示値を導出し、
前記加減速制御部は、前記車両を減速させるに際し、前記減速度指示値の絶対値が前記上限値以下である場合には前記車両の減速度を前記減速度指示値まで増大させる一方、前記減速度指示値の絶対値が前記上限値よりも大きい場合には前記車両の減速度を前記上限値まで増大させるようになっており、
前記加減速制御部は、前記減速度指示値の絶対値が前記上限値以下である場合、前記車両の減速度が前記減速度指示値に達するまでの間における当該車両の減速度の増大速度を、前記減速度指示値の絶対値が前記上限値よりも大きい場合よりも小さくする
請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
所定の減少補正条件が成立しているか否かを判定する条件判定部を備え、
前記条件判定部は、前記乗員が画像を見ていること、及び、前記乗員が読書をしていることの少なくとも一方が成立している場合、前記減少補正条件が成立しているとの判定をなすようになっており、
前記上限値設定部は、前記減少補正条件が成立しているとの判定がなされている場合、前記減少補正条件が成立しているとの判定がなされていない場合よりも小さい値を、前記上限値として設定する
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記上限値設定部は、前記車両が高速道路を走行している場合、前記高速道路以外の道路を前記車両が走行している場合よりも大きい値を、前記上限値として設定する
請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記傾斜角取得部は、前記乗員が着座している前記車両のシートの姿勢を基に、前記頭部傾斜角を取得する
請求項1~請求項5のうち何れか一項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員が乗り物酔いをしている可能性があると推定できる場合には、車両の加速度が大きくなることを抑制する車両の制御装置の一例が記載されている。この制御装置は、乗員の頭部の加速度の周波数を基に、乗員が乗り物酔いをしている可能性があるか否かを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶や電車では、加速度の周波数が特定の周波数帯域に含まれている場合、乗員が乗り物酔いしやすいことが知られている。特定の周波数域とは、0.2Hzである。その一方で、乗用車などの自動車では、船舶や電車と比較し、乗員の頭部の加速度の周波数と、乗り物酔いしやすさとの相関性が低いことも知られている。
【0005】
そのため、乗用車などの自動車では、特許文献1のように頭部の加速度の周波数を用いて乗員が乗り物酔いをしている可能性があるか否かを推定しても、その推定精度が高いとは言いがたい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、車両の乗員の頭部の傾斜角である頭部傾斜角を取得する傾斜角取得部と、前記頭部傾斜角を基に、前記車両の加速度の絶対値の上限値を設定する上限値設定部と、前記車両の加速度の絶対値が前記上限値を超えないように、前記車両の加減速を制御する加減速制御部と、を備えている。乗り物酔いしやすい前記頭部傾斜角の範囲を規定角度範囲としたとき、前記上限値設定部は、前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲に含まれている場合、前記頭部傾斜角が前記規定角度範囲に含まれていない場合よりも小さい値を、前記上限値として設定する。
【0007】
本件発明者は、車速が変化する際における、乗員の姿勢と、乗員の乗り物酔いしやすさとの関係について鋭意研究を行った。その結果、乗員の頭部傾斜角と、乗員の乗り物酔いしやすさとの間にある程度の相関性があるという知見を得た。具体的には、頭部傾斜角が所定の傾斜角範囲に含まれている状態で車速が変更された場合、頭部傾斜角が所定の傾斜角範囲に含まれていない状態で車速が変化される場合と比較し、乗員が乗り物酔いしやすいとの知見を得た。
【0008】
そこで、上記構成によれば、頭部傾斜角が規定角度範囲に含まれている場合、乗員が乗り物酔いしやすいと判断できるため、頭部傾斜角が規定角度範囲に含まれていない場合よりも小さい値が、上記上限値として設定される。規定角度範囲とは、乗員が乗り物酔いしやすい頭部傾斜角の範囲である。そして、車両を減速させたり、加速させたりする場合、車両の加速度の絶対値が上限値を超えないように、車両の加減速が制御される。したがって、乗員の姿勢が乗り物酔いしやすい姿勢である場合、車速を変更する際における車両の加速度の絶対値が大きくなることを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の制御装置を備える車両を示す模式図。
【
図2】車両が備えるシートの概略構成、及び、制御装置の機能構成を示す図。
【
図6】
図5に示した各姿勢と、乗り物酔いしやすさを表す指標との関係を示す図。
【
図7】制御装置が実行する一連の処理を説明するフローチャート。
【
図9】減速度指示値の絶対値が上限値よりも大きい場合の車両の減速度の推移を示す図。
【
図10】減速度指示値の絶対値が上限値以下である場合の車両の減速度の推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両の制御装置の一実施形態を
図1~
図10に従って説明する。
<車両10の構成>
図1には、本実施形態の制御装置70を備える車両10が図示されている。車両10は、複数の車輪11と、車体12とを備えている。車体12の車室には、車両10の乗員200が着座する複数のシート20が設けられている。
図1に示す例では、シート20に着座した乗員200の正面が車両前方Xfとなるように、各シート20が車体12内に設置されている。
【0011】
図1及び
図2に示すようにシート20に着座する乗員200を横方向から見た場合において、乗員200の耳から鼻に向けて延びる仮想直線の延びる方向を、「乗員前方Cf」という。乗員200が上方を向いたり下方を向いたりすると、乗員前方Cfが変わる。そのため、乗員前方Cfは乗員200毎に規定される。
【0012】
図2に示すように、車両10は、駆動装置16と、制動装置17とを備えている。駆動装置16は、車両10の駆動力を調整すべく作動する。駆動装置16は、エンジンや電動モータなどの車両10の動力源を有している。制動装置17は、車両10の制動力を調整すべく作動する。
【0013】
<シート20の構成>
図1及び
図2に示すように、各シート20は、座部21と、シートバック22と、ヘッドレスト23とを備えている。
【0014】
シートバック22のうち、シート20に着座する乗員200の背中が触れる面を、シートバック前面22aという。シートバック22は、座部21に対して回動可能である。すなわち、座部21には、車両10の横方向に延びる回転軸35が設けられている。すなわち、回転軸35は、車両前方Xf及び車両上方Zaの双方と直交する方向に延びている。そして、シートバック22は、回転軸35を中心に回動できる。
図2において、反時計回り方向を前傾方向Rfとし、時計回り方向を後傾方向Rrとする。このとき、シートバック22を前傾方向Rfに回動させることにより、乗員200が前傾するように乗員200の姿勢を変更できる。反対に、シートバック22を後傾方向Rrに回動させることにより、乗員200が後傾するように乗員200の姿勢を変更できる。
【0015】
図2に示すように、各シート20は、シートバック用傾斜装置30を備えている。例えば、シートバック用傾斜装置30は、座部21内に配置されている。シートバック用傾斜装置30は、傾斜用アクチュエータ31を有している。シートバック用傾斜装置30は、傾斜用アクチュエータ31の作動によって、シートバック22を前傾方向Rfに回動させたり、シートバック22を後傾方向Rrに回動させたりすることができる。すなわち、傾斜用アクチュエータ31の作動によって、シート20に着座する乗員200の姿勢を変更できる。
【0016】
<車両10の電気的な構成>
図2に示すように、車両10は、乗員200を監視する乗員監視系51を備えている。乗員監視系51は、乗員200の監視結果に関する情報を制御装置70に送信する。
【0017】
例えば、乗員監視系51は、乗員200を撮像するカメラなどの撮像装置を有している。撮像装置によって撮像された画像を解析することにより、乗員200が読書しているか否かを把握できる。また、画像を解析することにより、乗員200が所有する移動式端末の画面に表示される画像を乗員200が見ているか否かを把握できる。移動式端末として、例えば、スマートフォン及びタブレット端末を挙げることができる。
【0018】
制御装置70には、ナビゲーション装置52から車両10の走行する道路に関する情報である道路情報が入力される。道路情報としては、例えば、車両10の走行している道路が高速道路であるか否かに関する情報を含んでいる。なお、ナビゲーション装置52は、車載のナビゲーション装置であってもよいし、ナビゲーション機能を有する移動式端末であってもよい。
【0019】
制御装置70には、各種のセンサの検出信号が入力される。センサとしては、例えば、前後加速度センサ61及び車速センサ62を挙げることができる。前後加速度センサ61は、車両10の前後加速度Gxを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。車速センサ62は、車両10の走行速度である車速Vsを検出し、検出結果に応じた検出信号を出力する。
【0020】
制御装置70は、CPU、ROM及び記憶装置を備えている。ROMには、CPUが実行する各種の制御プログラムが記憶されている。記憶装置には、CPUの演算結果などが記憶される。
【0021】
制御装置70は、機能部として、シート制御部71を有している。シート制御部71は、各シート20のシートバック用傾斜装置30を制御する。すなわち、シート制御部71は、シートバック用傾斜装置30を制御することにより、座部21に対するシートバック22の傾斜角であるシートバック傾斜角を調整する。
【0022】
制御装置70は、機能部として、傾斜角取得部72を有している。傾斜角取得部72は、乗員200の頭部201の傾斜角である頭部傾斜角θfを取得する。例えば、傾斜角取得部72は、乗員200が着座しているシート20の姿勢を基に、頭部傾斜角θfを取得できる。この場合、傾斜角取得部72は、シートバック傾斜角を基に乗員200の頭部201の傾斜角を推定し、頭部201の傾斜角の推定値を頭部傾斜角θfとして取得するとよい。
【0023】
ここで、
図3及び
図4を参照し、頭部傾斜角θfについて説明する。
図3及び
図4には、基準線Lbが二点鎖線で示されている。基準線Lbは、車両10の走行する路面に対して直交する方向に延びる直線である。基準線Lbに沿う2つの方向のうち、路面に接近する方向を「接近方向Db」としたとき、接近方向Dbと乗員前方Cfとのなす角が、頭部傾斜角θfである。
図3に示すように乗員前方Cfと車両前方Xfとが一致している場合、頭部傾斜角θfは90°である。
図4に示すように乗員200の顔が下方に向いている場合、頭部傾斜角θfは90°よりも小さい。反対に、乗員200の顔が上方に向いている場合、頭部傾斜角θfは90°よりも大きい。すなわち、乗員200の姿勢が前傾になるほど頭部傾斜角θfが小さくなる。
【0024】
したがって、シートバック傾斜角を基に頭部傾斜角θfを取得する場合、傾斜角取得部72は、シートバック22が前傾方向Rfに回動するほど小さい値を頭部傾斜角θfとして取得するとよい。一方、傾斜角取得部72は、シートバック22が後傾方向Rrに回動するほど大きい値を頭部傾斜角θfとして取得するとよい。
【0025】
図2に戻り、制御装置70は、機能部として、条件判定部73を有している。条件判定部73は、所定の減少補正条件が成立しているか否かを判定する。条件判定部73は、以下の条件(A1)及び(A2)の少なくとも一方が成立している場合、減少補正条件が成立しているとの判定をなす。
(A1)乗員200が画像を見ていること。
(A2)乗員200が読書をしていること。
【0026】
例えば、条件判定部73は、乗員監視系51から送信された乗員200の監視結果に関する情報を基に、減少補正条件が成立しているか否かを判定できる。
制御装置70は、機能部として、上限値設定部74を有している。上限値設定部74は、頭部傾斜角θfを基に、車両10の前後加速度Gxの絶対値の上限値GxLを設定する。また、上限値設定部74は、減少補正条件が成立しているとの判定がなされている場合、減少補正条件が成立しているとの判定がなされていない場合よりも小さい値を、上限値GxLとして設定する。
【0027】
制御装置70は、機能部として、加減速制御部75を有している。加減速制御部75は、前後加速度Gxの絶対値が上限値GxLを超えないように、車両10の加減速を制御する。こうした加減速制御部75は、駆動制御部751と、制動制御部752とを含んでいる。
【0028】
駆動制御部751は、駆動装置16を制御する。例えば車両10を加速させる場合、駆動制御部751は、車両10の加速度が上限値GxLを超えないように、駆動装置16を制御する。
【0029】
制動制御部752は、制動装置17を制御する。例えば車両10を減速させる場合、制動制御部752は、車両10の減速度が上限値GxLを超えないように、制動装置17を制御する。
【0030】
制御装置70は、機能部として、自動運転モードで車両10を走行させる場合、車両10の加減速を指示する自動運転制御部76を有している。自動運転モードとは、乗員200がアクセル操作、ブレーキ操作及びステアリング操作を行わなくても車両10を走行させることのできるモードである。自動運転モードで車両10が走行する場合において車両10を自動で加速させる場合、自動運転制御部76は、車両10の加速度の指示値である加速度指示値GxBRを導出する。一方、自動運転モードで車両10が走行する場合において車両10を自動で減速させる場合、自動運転制御部76は、車両10の減速度の指示値である減速度指示値GxARを導出する。
【0031】
<乗員200が乗り物酔いするメカニズム>
車両10の加減速が繰り返されると、乗員200が乗り物酔いすることがある。そこで、車両10に加減速が発生することに起因して乗員200が乗り物酔いするメカニズムについて説明する。
【0032】
乗員200の頭部201に作用する加速度の向きと、乗員200の乗り物酔いしやすさとの関係について、本願発明者は鋭意研究を行った。その結果、頭部201に作用する加速度の向きによって、乗り物酔いしやすさが変わるという知見を得た。
【0033】
次に、こうした知見を得るために行った実験について説明する。車速Vsが10km/hから40km/hの範囲で可変するように車両10の加速及び減速を繰り返す。そして、車両10に搭乗した被験者200Cが、こうした車両10の走行時に感じた気持ち悪さの度合いに応じた評価点を付ける。詳しくは、被験者200Cは、気持ち悪さの度合いが大きいほど値が大きくなるように評価点を付ける。
【0034】
上記のような実験を行うに際し、被験者200Cには
図5に示す複数の姿勢を取って貰う。
(第1姿勢Pos1)被験者200Cに前傾姿勢を取らせ、頭部傾斜角θfを0°とする。
(第2姿勢Pos2)被験者200Cに前傾姿勢を取らせ、頭部傾斜角θfを40°とする。
(第3姿勢Pos3)被験者200Cの姿勢を直立姿勢とし、頭部傾斜角θfを90°とする。
(第4姿勢Pos4)被験者200Cに後傾姿勢を取らせ、頭部傾斜角θfを150°とする。
(第5姿勢Pos5)被験者200Cに後傾姿勢を取らせ、頭部傾斜角θfを180°とする。
【0035】
被験者200Cの姿勢が第1姿勢Pos1である状態で上記のように車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。被験者200Cの姿勢が第2姿勢Pos2である状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。被験者200Cの姿勢が第3姿勢Pos3である状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。被験者200Cの姿勢が第4姿勢Pos4である状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。被験者200Cの姿勢が第5姿勢Pos5である状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。
【0036】
その評価の結果が、
図6に示されている。酔いやすさ指標INDとは、乗り物酔いのしやすさを数値化したものである。上記の評価点が高いほど酔いやすさ指標INDが大きくなる。そのため、酔いやすさ指標INDが大きいほど、乗り物酔いしやすいことになる。
図6からも明らかなように、被験者200Cが第2姿勢Pos2で搭乗した場合、被験者200Cが最も乗り物酔いしやすい。被験者200Cが第3姿勢Pos3で搭乗した場合、被験者200Cが2番目に乗り物酔いしやすい。すなわち、被験者200Cの姿勢が第2姿勢Pos2前後である場合に、被験者200Cが乗り物酔いしやすいということが分かった。
【0037】
さらに詳細に実験を進めると、頭部傾斜角θfが35°以上であって、且つ85°以下の範囲である場合が、被験者200Cが最も乗り物酔いする可能性が高いということが分かった。
【0038】
こうした結果を踏まえ、本実施形態では、乗り物酔いしやすい頭部傾斜角θfの範囲を規定角度範囲Rθfとしたとき、35°から85°までの頭部傾斜角θfの範囲が規定角度範囲Rθfとして設定される。この場合、35°が規定角度範囲Rθfの下限θfb1に対応し、85°が規定角度範囲Rθfの上限θfb2に対応する。
【0039】
<制御装置70で実行される処理の流れ>
図7を参照し、自動運転モードで車両10が走行する場合に制御装置70が実行する一連の処理の流れを説明する。
【0040】
一連の処理において、はじめのステップS11では、制御装置70の傾斜角取得部72は、乗員200の頭部傾斜角θfを取得する。車両10に複数の乗員200が乗車している場合、傾斜角取得部72は、各乗員200の頭部傾斜角θfを取得する。
【0041】
続いて、ステップS13において、制御装置70の上限値設定部74は、上限値GxLを設定する。すなわち、上限値設定部74は、ステップS11で取得された頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれている場合、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていない場合よりも小さい値を、上限値GxLとして設定する。
【0042】
頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていない場合、上限値設定部74は、以下のように設定するとよい。例えば、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfの下限θfb1よりも小さい場合、上限値設定部74は、頭部傾斜角θfが小さいほど大きい値を上限値GxLとして設定する。また例えば、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfの上限θfb2よりも大きい場合、上限値設定部74は、頭部傾斜角θfが大きいほど大きい値を上限値GxLとして設定する。
【0043】
なお、頭部傾斜角θfに基づいて上限値GxLを設定する場合、上限値設定部74は、
図8に示すマップを用いるとよい。
図8には、頭部傾斜角θfと上限値GxLとの関係を示すマップが図示されている。当該マップでは、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfの中間値θfbと等しい場合に、上限値GxLが最小値となる。中間値θfbとは、上限θfb2よりも小さく、且つ下限θfb1よりも大きい頭部傾斜角θfである。例えば、中間値θfbは、規定角度範囲Rθfのど真ん中の頭部傾斜角θfである。
【0044】
図8に示すマップでは、頭部傾斜角θfが中間値θfbよりも小さい場合、頭部傾斜角θfが小さいほど上限値GxLが大きくなる。一方、頭部傾斜角θfが中間値θfbよりも大きい場合、頭部傾斜角θfが所定傾斜角θfa以下であるときには、頭部傾斜角θfが大きいほど上限値GxLが大きくなる。頭部傾斜角θfが所定傾斜角θfaよりも大きいときには、頭部傾斜角θfが大きいほど上限値GxLが小さくなる。
【0045】
ちなみに、所定傾斜角θfaとして、150°以上であり、且つ180°よりも小さい角度が設定されている。例えば、150°を所定傾斜角θfaとして設定するとよい。これは、
図6に示したように頭部傾斜角θfが150°である場合に、酔いやすさ指標INDが最小となるためである。
【0046】
ここで、車両10に複数の乗員200が乗車していることがある。この場合、上限値設定部74は、各乗員200の頭部傾斜角θfのうち、基準傾斜角に最も近い頭部傾斜角θfに応じた値を、上限値GxLとして設定するとよい。基準傾斜角は、中間値θfbである。
【0047】
図7に戻り、ステップS13で上限値GxLを設定すると、制御装置70は、処理をステップS15に移行する。ステップS15において、制御装置70の条件判定部73は、上記の減少補正条件が成立しているか否かを判定する。減少補正条件が成立しているとの判定がなされている場合(S15:YES)、制御装置70は、処理をステップS17に移行する。ステップS17において、制御装置70の上限値設定部74は、ステップS13で設定した上限値GxLを減少補正する。例えば、上限値設定部74は、ステップS13で設定した上限値GxLから補正値αを引いた値を、新たな上限値GxLとして設定する。そして、制御装置70は、処理をステップS19に移行する。この場合、補正値αとして、正の値が設定されている。
【0048】
その一方で、ステップS15において、減少補正条件が成立しているとの判定がなされていない場合(NO)、制御装置70は、処理をステップS19に移行する。すなわち、減少補正条件が成立しているとの判定がなされていない場合は、上限値GxLの減少補正が行われない。したがって、上限値設定部74は、減少補正条件が成立しているとの判定がなされている場合、減少補正条件が成立しているとの判定がなされていない場合よりも小さい値を、上限値GxLとして設定する。
【0049】
ステップS19において、制御装置70は、車両10が所定の道路を走行しているか否かを判定する。例えば、所定の道路は、高速道路である。高速道路を車両10が走行している場合、高速道路以外の道路を車両10が走行している場合と比較し、車速Vsが変化しない。そのため、高速道路を車両10が走行している場合、上限値GxLをあまり小さくしなくてもよい。そこで、車両10が所定の道路を走行している場合(S19:YES)、制御装置70は、処理をステップS21に移行する。
【0050】
ステップS21において、制御装置70の上限値設定部74は、上限値GxLを増大補正する。例えば、上限値設定部74は、上限値GxLと補正値βとの和を、新たな上限値GxLとして設定する。補正値βとして、正の値が設定されている。例えば、補正値βは、上記の補正値αと同じ値であってもよいし、補正値αとは異なる値であってもよい。そして、制御装置70は、処理をステップS23に移行する。
【0051】
その一方で、ステップS19において、車両10が所定の道路を走行していない場合(NO)、制御装置70は、処理をステップS23に移行する。すなわち、高速道路以外の道路(例えば、一般道や山道)を車両10が走行している場合、上限値GxLが増大補正されない。したがって、上限値設定部74は、車両10が高速道路を走行している場合、高速道路以外の道路を車両10が走行している場合よりも大きい値を、上限値GxLとして設定する。
【0052】
ステップS23において、制御装置70の加減速制御部75は、自動運転制御部76から車両10の減速を指示されているか否かを判定する。減速の指示がある場合(S23:YES)、加減速制御部75は、処理をステップS25に移行する。ステップS25において、加減速制御部75の制動制御部752は、制動装置17を作動させて車両10の制動力を制御する制動制御を実施する。
【0053】
減速が指示されている場合、制動制御部752は、自動運転制御部76が導出した減速度指示値GxARと、上限値設定部74が設定した上限値GxLとを基に、車両10の減速度を制御する。すなわち、制動制御部752は、車両10を減速させるに際し、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxL以下である場合には車両10の減速度を減速度指示値GxARまで増大させる。一方、制動制御部752は、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合には車両10の減速度を上限値GxLまで増大させる。
【0054】
なお、乗員200の乗り物酔いを抑制するという観点からすると、車両10の減速度を急に大きくしないようにすることが望ましい。そのため、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxL以下である場合、制動制御部752は、車両10の減速度がゆっくりと増大するように制動装置17を制御するとよい。一方、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合、車両10の減速度を減速度指示値GxARまで増大させることができない。そのため、車両10の減速度を上限値GxLまで速やかに増大させることが望ましい。よって、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合、制動制御部752は、車両10の減速度の増大速度が大きくなるように制動装置17を制御するとよい。これにより、制動制御部752は、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxL以下である場合、車両10の減速度が減速度指示値GxARに達するまでの間における車両10の減速度の増大速度を、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合と比較して小さくできる。
【0055】
制動制御部752は、車速Vsが所望する車速に達するまで制動制御を実施する。制動制御の実施が終了すると、制御装置70は、一連の処理を終了する。
その一方で、ステップS23において、減速の指示がない場合(NO)、加減速制御部75は、処理をステップS27に移行する。ステップS27において、加減速制御部75は、自動運転制御部76から車両10の加速を指示されているか否かを判定する。加速の指示がある場合(S27:YES)、加減速制御部75は、処理をステップS29に移行する。ステップS29において、加減速制御部75の駆動制御部751は、駆動装置16を作動させて車両10の駆動力を制御する駆動制御を実施する。
【0056】
加速が指示されている場合、駆動制御部751は、自動運転制御部76が導出した加速度指示値GxBRと、上限値設定部74が設定した上限値GxLとを基に、車両10の加速度を制御する。すなわち、駆動制御部751は、車両10を加速させるに際し、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxL以下である場合には車両10の加速度を加速度指示値GxBRまで増大させる。一方、駆動制御部751は、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合には車両10の加速度を上限値GxLまで増大させる。
【0057】
なお、乗員200の乗り物酔いを抑制するという観点からすると、車両10の加速度を急に大きくしないようにすることが望ましい。そのため、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxL以下である場合、駆動制御部751は、車両10の加速度がゆっくりと増大するように駆動装置16を制御するとよい。一方、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合、車両10の加速度を加速度指示値GxBRまで増大させることができない。そのため、車両10の加速度を上限値GxLまで速やかに増大させることが望ましい。よって、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合、制動制御部752は、車両10の加速度の増大速度が大きくなるように駆動装置16を制御するとよい。これにより、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxL以下である場合、駆動制御部751は、車両10の加速度が加速度指示値GxBRに達するまでの間における車両10の加速度の増大速度を、加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合と比較して小さくできる。
【0058】
駆動制御部751は、車速Vsが所望する車速に達するまで駆動制御を実施する。駆動制御の実施が終了すると、制御装置70は、一連の処理を終了する。
一方、ステップS27において、加速の指示がない場合(NO)、制御装置70は、ステップS29を実行することなく、一連の処理を終了する。
【0059】
なお、上記のように上限値GxLに基づいた車両10の加減速の制御は、車両10の安全性が担保できていることを前提に実施することは必須である。例えば先行車との衝突の回避を目的とした緊急制動の場合、上限値GxLを考慮することなく制動制御が実施されるのは当然である。
【0060】
<本実施形態における作用及び効果>
頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれている場合、乗員200が乗り物酔いしやすいと判断できる。そのため、こうした場合では、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていない場合よりも小さい値が、上限値GxLとして設定される。そして、車両10を減速させる場合には、車両10の減速度が上限値GxLを越えないように制動装置17が制御される。また、車両10を加速させる場合には、車両10の加速度が上限値GxLを越えないように駆動装置16が制御される。すなわち、乗員200の姿勢が乗り物酔いしやすい姿勢である場合、車速Vsを変化させる場合における車両10の加速度の絶対値が大きくなることを抑制できる。これにより、乗員200が乗り物酔いすることを抑制できる。
【0061】
図9及び
図10には、車両10の減速が指示されている場合における車両10の減速度GxAの推移が示されている。
図9は、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きい場合を示している。
図10は、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxL以下である場合を示している。
【0062】
図9に示す例では、タイミングt11で車両10の減速が指示される。この場合、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きいため、減速度GxAを減速度指示値GxARまで大きくすることはできない。そのため、減速度GxAの増大速度が大きい。その結果、タイミングt12で、減速度GxAが上限値GxLに達する。そして、タイミングt12以降では、減速度GxAが上限値GxLに保持される。タイミングt11からタイミングt12までの時間を、減速制御時間TM1とする。
【0063】
図10に示す例では、タイミングt21で車両10の減速が指示される。この場合、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも小さいため、減速度GxAを減速度指示値GxARまで大きくすることができる。そのため、減速度GxAの増大速度が小さい。その結果、タイミングt22で、減速度GxAが減速度指示値GxARに達する。そして、タイミングt22以降では、減速度GxAが減速度指示値GxARに保持される。タイミングt21からタイミングt22までの時間を、減速制御時間TM2とする。減速制御時間TM2は、減速制御時間TM1よりも長い。
【0064】
すなわち、本実施形態によれば、減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxL以下である場合、減速度GxAが緩やかに増大される。その結果、減速度GxAの急な変化に起因して乗員200が乗り物酔いすることを抑制できる。
【0065】
ちなみに、制動制御や駆動制御が開始されると、当該制御の開始時点の値で上限値GxLは保持される。そのため、制動制御や駆動制御中の上限値GxLは、当該制御の開始時点の乗員200の姿勢に基づいた値で保持される。
【0066】
図9及び
図10を用い、車両10の減速が指示された場合の作用及び効果について説明した。車両10の加速が指示された場合の作用及び効果は、車両10の減速が指示された場合とほぼ同等である。そのため、ここでは、車両10の加速が指示された場合の作用及び効果の説明を割愛する。
【0067】
本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1)本実施形態では、車両10を減速させる場合、減速の開始時の頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていなくても、減速や加速の開始時における頭部傾斜角θfによって上限値GxLが変わる。具体的には、乗員200が乗り物酔いしにくいと推定できるほど、大きい値が上限値GxLとして設定される。上限値GxLが大きいほど、車両10の減速度GxAや加速度に対して制限がかかりにくい。すなわち、乗員200の姿勢が乗り物酔いしにくい姿勢である場合に、車両10の減速度GxAや加速度に対して制限がかかりにくくなる。
【0068】
(2)乗員200が読書をしていたり、乗員200が画像を見ていたりする場合、そうではない場合と比較し、乗員200が乗り物酔いしやすいと推測できる。そのため、本実施形態では、乗員200が読書をしていたり、乗員200が画像を見ていたりする場合、そうではない場合よりも小さい値を上限値GxLとして設定している。これにより、乗員200が読書をしていたり、乗員200が画像を見ていたりする場合に、車両10の減速度GxAや加速度が大きくなることを抑制できる。
【0069】
(3)車両10が高速道路を走行している場合、車速Vsが変化することはあまりないと推測できる。そのため、高速道路以外の道路を車両10が走行している場合よりも大きい値が上限値GxLとして設定される。これにより、車両10が高速道路を走行している場合、必要に応じて車両10の減速度GxAや加速度を大きくできる。
【0070】
(4)車両10に複数の乗員200が搭乗している場合、各乗員200の頭部傾斜角θfのうち、中間値θfbに最も近い頭部傾斜角θfに基づいて上限値GxLが設定される。すなわち、最も乗り物酔いしやすい姿勢の乗員200の頭部傾斜角θfに基づいて上限値GxLが設定される。こうした上限値GxLを基に車両10の加減速を制御することにより、各乗員200が乗り物酔いすることを抑制できる。
【0071】
(5)本実施形態では、シート20の姿勢を基に、乗員200の頭部傾斜角θfが取得される。そのため、頭部傾斜角θfを取得するための専用の検出系を、車両10に設けなくてもよい。
【0072】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0073】
・上記実施形態では、複数の乗員200が車両10に乗車している場合、全ての乗員200の頭部傾斜角θfを取得しているが、これに限らない。例えば、複数の乗員200のうち、一部の乗員200の頭部傾斜角θfのみを取得するようにしてもよい。例えば、運転席以外のシートに着座している乗員200の頭部傾斜角θfを取得し、運転席に着座している乗員200の頭部傾斜角θfを取得しなくてもよい。
【0074】
・乗員200を撮像する撮像装置が車内に設けられている場合、撮像装置が撮像した画像を解析することによって乗員200の頭部傾斜角θfを取得してもよい。
・複数の乗員200の頭部傾斜角θfを取得した場合、基準傾斜角に最も近い頭部傾斜角θfを基に上限値GxLを設定しているが、これに限らない。例えば、基準傾斜角に2番目に近い頭部傾斜角θfを基に上限値GxLを設定してもよい。
【0075】
・山道を走行している場合、乗員200が乗り物酔いしやすいと推測される。そのため、高速道路以外の道路を車両10が走行している場合において、車両10が山道を走行するときには、山道ではない道路を車両10が走行している場合よりも小さい値を上限値GxLとして設定するようにしてもよい。
【0076】
・車両10の走行している道路に応じて上限値GxLを可変させなくてもよい。
・例えば車載のナビゲーション装置でDVDが再生されている場合のようにナビゲーション装置のディスプレイに、地図以外の画像が表示されている場合、当該画像を乗員200が見ている可能性がある。そのため、ナビゲーション装置のディスプレイに、地図以外の画像が表示されている場合、減少補正条件が成立しているとの判定をなすようにしてもよい。
【0077】
・減少補正条件が成立しているか否かの判定結果に応じて上限値GxLを可変させなくてもよい。
・減速度指示値GxARの絶対値が上限値GxLよりも大きいか否かによって、車両10の減速度GxAの増大速度を可変させなくてもよい。
【0078】
・加速度指示値GxBRの絶対値が上限値GxLよりも大きいか否かによって、車両10の加速度の増大速度を可変させなくてもよい。
・上記実施形態では、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれている場合、頭部傾斜角θfによって上限値GxLが変わるようになっているが、これに限らない。頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれている場合、第1値で上限値GxLを固定してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていない場合、頭部傾斜角θfによって上限値GxLが変わるようになっているが、これに限らない。頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれていない場合、第2値で上限値GxLを固定してもよい。
【0080】
・乗員200の頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθfに含まれている状況下で車両10の加速や減速が指示された場合には、頭部傾斜角θfが規定角度範囲Rθf外となるように、シート20のシートバック22を自動的に回動させるようにしてもよい。この場合、車両10の加速や減速が終了すると、シートバック傾斜角を元に戻すことが好ましい。
【0081】
・上限値GxLとして、車両10を減速させる場合用の上限値と、車両10を加速させる場合用の上限値とを別々に設定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、35°から85°までの範囲を規定角度範囲Rθfとしているが、これは一例である。車種、及び、シートの形状やクッション性などが異なれば、乗員200が乗り物酔いしやすい頭部傾斜角θfの範囲は多少変わる可能性がある。
【0082】
・制御装置70は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御装置70は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制御装置70は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記である。FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制御装置70は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0083】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記乗員を横方向から見た場合に当該乗員の耳から鼻に向けて延びる直線の延びる方向を乗員前方とし、前記車両の走行する路面に直交する直線に沿う2つの方向のうち、前記路面に接近する方向を接近方向としたとき、
前記傾斜角取得部は、前記乗員前方と前記接近方向とのなす角を前記頭部傾斜角として取得し、
35°から85°までの前記頭部傾斜角の範囲が、前記規定角度範囲として設定されている。
【符号の説明】
【0084】
10…車両
20…シート
70…制御装置
72…傾斜角取得部
73…条件判定部
74…上限値設定部
75…加減速制御部
751…駆動制御部
752…制動制御部
76…自動運転制御部
200…乗員
201…頭部