(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180735
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】近接センサ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221130BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20221130BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F41/12 D
H01F41/12 F
H01F27/02 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087393
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西 謙悟
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044BA01
5E044BB05
5E044BC02
5E044CA09
5E070AB10
5E070BA06
5E070DA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】充填剤の収縮に伴ってフェライトコアに生じる応力を低減でき、感度が安定する近接センサを提供する。
【解決手段】近接センサの検出部31は、円筒状の外周部34及び非開放側面部35を有するフェライトコア33と、コイル20と、キャップ12とを備える。キャップ12の内部は充填剤で満たされる。外周部34と非開放側面部35との間に、これらが互いに分離する分離用空間が形成されている。分離用空間は、外周部34の周方向において少なくとも一部に形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外周部および前記外周部の一端側をシールドする非開放側面部を有するフェライトコアと、
前記外周部の中に収容されたコイルと、
前記フェライトコアを前記外周部の他端側から覆うキャップとを備え、
前記キャップの内部には、充填剤を備え、
前記外周部と前記非開放側面部との間に、これらが互いに分離する分離用空間が形成され、
前記分離用空間は、前記外周部の周方向において少なくとも一部に形成されていることを特徴とする検出部を有する近接センサ。
【請求項2】
請求項1記載の近接センサの検出部において、
前記分離用空間は、前記外周部の周方向において全域に形成され、前記外周部と前記非開放側面部とが分割形成されていることを特徴とする近接センサ。
【請求項3】
請求項2記載の近接センサの検出部において、
前記非開放側面部は、前記コイルの軸心部に挿入される第1の軸を有しているとともに、前記コイルの導線を通す配線口を有していることを特徴とする近接センサ。
【請求項4】
請求項1記載の近接センサの検出部において、
前記分離用空間は、前記非開放側面部の一部が残るように前記外周部の前記一端側に形成された切欠きによって構成され、
前記非開放側面部は、前記外周部とは反対方向に延びる第2の軸と、前記コイルの導線を通す配線口とを有し、
同一形状の二つの前記フェライトコアを、前記非開放側面部どうしが重なるとともに前記第2の軸が前記分離用空間を通って他方の前記外周部の内部に挿入されるように互いに組み合わせて一つのフェライトコア組立体が構成されていることを特徴とする近接センサ。
【請求項5】
請求項4記載の近接センサの検出部において、
前記切欠きは、前記第2の軸の少なくとも一部を挿入することが可能な幅で前記外周部の軸線方向に他端まで延びていることを特徴とする近接センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルとシールド用のフェライトコアとを備えた近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の近接センサの検出部の構造としては、例えば
図16~
図18に示すように構成されたものがある。
図16に示す近接センサの検出部1は、有底円筒状を呈するフェライトコア部2と、フェライトコア部2の中に収容されたコイル部3と、フェライトコア部2を開放側から覆う外部筐体4とを有している。
【0003】
フェライトコア部2は、フェライトコアを有底円筒状に成型して形成されている。フェライトコア部2の外周部2aと底部2b(非開放側面部)とには、二つの切欠き5が形成されている。また、フェライトコア部2の底部2bには円柱状の軸2cが設けられている。この軸2cは、外周部2aと同一軸線上に位置し、コイル部3の中心部に挿入されている。
コイル部3は、コイルボビン3aに導線3bを巻き付けて形成されている。導線3bは、フェライトコア部2の切欠き5に通されている。
【0004】
外部筐体4は、例えばプラスチック材料によって有底円筒状に形成されている。フェライトコア部2は、開放側の端面6が外部筐体4の内側底面7と対向するように外部筐体4の中に挿入されている。外部筐体4の内部は、充填剤8で満たされている。充填剤8は、フェライトコア部2内およびコイル部3内にも浸入している。このように外部筐体4内に充填剤8が充填されることにより、コイル部3への水分浸入が防止されることになる。
【0005】
充填剤は、例えばエポキシ樹脂からなるものを使用することがある。この種の充填剤は、フェライトコア部2やコイル部3を構成する材料と線膨張率が異なっており、しかも、加熱されて硬化する際に硬化収縮を起こすことが知られている。
この近接センサの検出部1は、フェライトコア部2の開放された一端側に導電体が接近したときにこれを検出するようになる。
【0006】
ところで、フェライトコアからなる筒状体の内部にコイル部品が挿入され、充填剤が充填された従来の電子デバイスとして、例えば特許文献1に記載されているトランスがある。特許文献1には、2個のフェライトコアでコイルの全体を覆い、充填剤の線膨張率が異なることにより生じる熱応力を、中央部に隙間を設けることによって緩和する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図16~
図18に示した従来の近接センサの検出部1は、各構成材料の線膨張係数が異なっていることと、充填剤8が加熱硬化する際に硬化収縮することとが原因で各構成部材間に応力が発生する。この応力でフェライトコア部2が変形すると、僅かな変形でもコイル部3の特性が変化し、近接センサの感度が変化してしまう。また、この応力が応力緩和等により経時的に変化すると、それに伴って近接センサの感度も変化してしまう。
【0009】
フェライトコア部2の変形は、相対的に線膨張係数が大きいコイル部3並びに充填剤8が収縮し、外周部2aにこれを内側に引き寄せる方向の力が加えられることが原因であると考えられる。フェライトコア部2の外周部2aの一端側(開放面側)は、底部2b(非開放側面部)に接続されている他端部とは異なり、径方向に対して支えられていない。このため、フェライトコア部2の他端部より一端側(開放面側)が径方向に多く収縮するようになり、外周部2aと底部2b(非開放側面部)との接続部に大きな応力が発生してしまう。
【0010】
また、フェライトコア部2の外周部2aには、コイル部3の導線3bを通す二つの切欠き5,5が形成されているために、周方向において二つに分割されている。このため、
図18に示すように、外周部2aの切欠き5どうしの間に形成された相対的に幅が狭い板状部分9と底部2b(非開放側面部)との接続部10は、応力がより一層大きく発生する部分になっている。
【0011】
本発明の目的は、充填剤の収縮に伴ってフェライトコアに生じる応力を低減でき、感度が安定する近接センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために本発明に係る近接センサは、円筒状の外周部および前記外周部の一端側をシールドする非開放側面部を有するフェライトコアと、前記外周部の中に収容されたコイルと、前記フェライトコアを前記外周部の他端側から覆うキャップとを備え、前記キャップの内部には、充填剤を備え、前記外周部と前記非開放側面部との間に、これらが互いに分離する分離用空間が形成され、前記分離用空間は、前記外周部の周方向において少なくとも一部に形成されている検出部を有しているものである。
【0013】
本発明は、前記近接センサの検出部において、前記分離用空間は、前記外周部の周方向において全域に形成され、前記外周部と前記非開放側面部とが分割形成されていてもよい。
【0014】
本発明は、前記近接センサの検出部において、前記非開放側面部は、前記コイルの軸心部に挿入される第1の軸を有しているとともに、前記コイルの導線を通す配線口を有していてもよい。
【0015】
本発明は、前記近接センサの検出部において、前記分離用空間は、前記非開放側面部の一部が残るように前記外周部の前記一端側に形成された切欠きによって構成され、前記非開放側面部は、前記外周部とは反対方向に延びる第2の軸と、前記コイルの導線を通す配線口とを有し、同一形状の二つの前記フェライトコアを、前記非開放側面部どうしが重なるとともに前記第2の軸が前記分離用空間を通って他方の前記外周部の内部に挿入されるように互いに組み合わせて一つのフェライトコア組立体が構成されていてもよい。
【0016】
本発明は、前記近接センサの検出部において、前記切欠きは、前記第2の軸の少なくとも一部を挿入することが可能な幅で前記外周部の軸線方向に他端まで延びていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充填剤の収縮に伴ってフェライトコアに生じる応力を低減でき、感度が安定する近接センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態による近接センサの検出部の断面図である。
【
図2】
図2は、フェライトコア組立体の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態によるフェライトコア組立体の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第3の実施の形態による近接センサの検出部の断面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施の形態による近接センサの検出部の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、二つのフェライトコアを分離させた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、二つのフェライトコアの断面図である。
【
図9】
図9は、フェライトコアを組み合わせる手順を説明するための図である。
【
図10】
図10は、フェライトコアを組み合わせる手順を説明するための図である。
【
図11】
図11は、フェライトコアを組み合わせる手順を説明するための側面図である。
【
図14】
図14は、第4の実施の形態による二つのフェライトコアの斜視図である。
【
図15】
図15は、第4の実施の形態によるフェライトコアの軸の挿入手順を説明するための正面図である。
【
図16】
図16は、従来の近接センサの検出部の断面図である。
【
図17】
図17は、従来の近接センサの検出部の分解斜視図である。
【
図18】
図18は、従来の近接センサの検出部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る近接センサの一実施の形態を
図1~
図3を参照して詳細に説明する。この実施の形態による近接センサは、
図1に示す検出部11を有しているものである。
図1に示す近接センサの検出部11は、有底円筒状に形成されたキャップ12の内部にフェライトコア組立体13を組み込み、さらに封止用の充填剤14を注入、固化させて形成されている。キャップ12は、例えばプラスチック材料によって形成されており、図示していないセンサボディの先端部に取付けられる。
【0020】
フェライトコア組立体13は、
図2に示すように、外周部15と非開放側面部16とからなるフェライトコア17と、コイルボビン18に導線19を巻き付けて形成されたコイル20とによって構成されている。
フェライトコア17の外周部15は、円筒状に形成されている。外周部15の中にコイル20が収容されている。
【0021】
非開放側面部16は、外周部15の一端側(
図1においては左側)をシールドするためのもので、円板16aと軸16bとによって形成されている。円板16aは、外周部15の一端部15aと外径が等しくなるように形成され、外周部15と軸線方向に並べられている。この実施の形態においては、
図3に示すように、外周部15と非開放側面部16(円板)との間には、これらが互いに分離する分離用空間Sが形成されている。この実施の形態においては、外周部15と非開放側面部16とが分割形成されているために、上述した分離用空間Sは外周部15の周方向において全域に形成されている。
【0022】
軸16bは、円板16aの中心部に垂直に立設されており、コイルボビン18の中空部内に挿入されて外周部15内を一端部15aから他端部15bまで延びている。この実施の形態においては、軸16bが本発明でいう「第1の軸」に相当する。
円板16aの軸16bを挟んで径方向の両側には、コイル20の導線19を通すために二つの貫通孔21が形成されている。この実施の形態においては、これらの貫通孔21が本発明でいう「配線口」に相当する。
【0023】
このように構成された近接センサの検出部11を組立てるためには、先ず、フェライトコア17の非開放側面部16と、コイル20とを外周部15内に挿入し、フェライトコア組立体13を形成する。このとき、コイル20の導線19を非開放側面部16の貫通孔21に通しておく。次に、キャップ12の中に所定量の充填剤14を注入し、充填剤14の中にフェライトコア組立体13を浸す。このようにキャップ12の内部にフェライトコア組立体13を挿入することにより、フェライトコア17が外周部15の他端側からキャップ12によって覆われる。充填剤14は、例えばエポキシ樹脂からなるものを用いることができる。充填剤14中にフェライトコア組立体13を浸すことにより、フェライトコア組立体13とキャップ12との間の隙間と、外周部15と非開放側面部16との間の分離用空間Sと、フェライトコア17とコイル20との間の隙間が充填剤14で満たされる。
【0024】
しかる後、フェライトコア組立体13が挿入されたキャップ12を例えば図示していない加熱炉に投入して加熱し、充填剤14を硬化させる。
フェライトコア17と、キャップ12、充填剤14およびコイル20は、それぞれ線膨張率が異なっている。また、充填剤14は硬化時に収縮する。この実施の形態による近接センサの検出部11においては、充填剤14が硬化するときに外周部15が充填剤14によって径方向の内側に引かれるようになり、外周部15に力の方向が径方向となるように応力が生じる。外周部15と非開放側面部16との間には分離用空間Sが形成されているため、このときに外周部15の変形が非開放側面部16によって規制されることはない。
【0025】
このため、外周部15は、非開放側面部16に干渉されることなく軸線方向の全域において均等に変形するようになる。すなわち、充填剤14の硬化収縮に起因して外周部15の一端側に生じる応力と、他端側に生じる応力とに差がほとんど無くなる。
したがって、この実施の形態によれば、充填剤の収縮に伴ってフェライトコアに生じる応力を低減でき、感度が安定する近接センサを提供することができる。
【0026】
この実施の形態においては、外周部15と非開放側面部16との間の分離用空間Sが外周部15の周方向において全域に形成され、外周部15と非開放側面部16とが分割形成されている。
このため、充填剤14の硬化収縮に伴って外周部15の全域が均等に変形するから、設計通りの特性を有する近接センサを実現することができる。
【0027】
この実施の形態による非開放側面部16は、コイル20の軸心部に挿入される軸16b(第1の軸)を有しているとともに、コイル20の導線19を通す貫通孔21(配線口)を有している。
このため、外周部15の変形に影響を及ぼすことなくコイル20の導線19を導出させることができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
非開放側面部に形成する配線口は
図4に示すように構成することができる。
図4において、
図1~
図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0029】
図4に示す非開放側面部16は、径方向の両端にそれぞれ凹部22が形成されている。凹部22は、非開放側面部16の円板16aの外周面から円板16aの中心に向けて延びるように形成されている。この実施の形態においては、凹部22が本発明でいう「配線口」に相当する。
このように配線口を凹部22によって構成することより、コイル20の導線19を円板16aの径方向の外側から近接させるだけで凹部22の中に入れることができるから、コイル20を非開放側面部16と組み合わせる作業を容易に行うことができる。この実施の形態を採ることにより、導線19に予め例えばコネクタ(図示せず)が接続されているような場合であっても、導線19を配線口に通すことが可能になる。
【0030】
(第3の実施の形態)
本発明に係る近接センサの検出部は
図5~
図13に示すように構成することができる。これらの図において、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図5に示す近接センサの検出部31のフェライトコア組立体32は、二つのフェライトコア33,33と、一方のフェライトコア33に組付けられた一つのコイル20とによって構成されている。コイル20は、第1および第2の実施の形態を採る場合に用いるものと同等のものである。
【0031】
この実施の形態による二つのフェライトコア33は、同一形状のフェライトコア33を二つ形成し、後述するように互いに組み合わせて一体化されている。
フェライトコア33は、
図7に示すように、円筒状の外周部34と、外周部34の一端側をシールドするための非開放側面部35と、非開放側面部35から外周部34とは反対方向に突設された円柱状の軸36とを備えている。この実施の形態においては、軸36が本発明でいう「第2の軸」に相当する。
【0032】
外周部34と非開放側面部35との間には、非開放側面部35の一部と軸36とが残るように切欠き41が形成されており、外周部34と非開放側面部35とが互いに分離する分離用空間S(
図8参照)が形成されている。
図7に示すように、外周部34の軸線方向における切欠き41の形成幅W1は、非開放側面部35の厚み方向の幅W2より広い。このため、軸36の基端部36aが切欠き41内に露出するようになる。切欠き41によって外周部34と非開放側面部35との間に形成された分離用空間Sは、外周部34の周方向において約1/2の範囲に形成されている。
【0033】
非開放側面部35は、コイル20の導線19を通すために二つの凹部42を有している。これらの凹部42は、上述した切欠き41に連なり、分離用空間Sに向けて開くように形成されている。この実施の形態においては、これらの凹部42が本発明でいう「配線口」に相当する。
【0034】
この実施の形態によるフェライトコア組立体32を組立てるためには、先ず、一対のフェライトコア33,33を互いに組み合わせる。このときは、
図9(A),(B)に示すように、軸36の先端が他方のフェライトコア33の切欠き41に向かうように二つのフェライトコア33を並べ、
図10(A),(B)に示すように、軸36が切欠き41の中に挿入されるようにフェライトコア33どうしを互いに接近させる。
【0035】
軸36の挿入は、
図11(A)~(B)に示すように、非開放側面部35が他方のフェライトコア33の外周部34に当接するまで行う。その後、一方のフェライトコア33を他方のフェライトコア33に対して外周部34の径方向に移動させる。この径方向への移動は、切欠き41内に突出している軸36の基端部36aが他方のフェライトコア33の軸36の基端部36aと軸線方向において重なるように行う。この径方向への移動が行われることにより、外周部34と非開放側面部35との間の分離用空間Sに他方のフェライトコア33の非開放側面部35が挿入される。
【0036】
この径方向への移動は、
図11(C)に示すように、一方のフェライトコア33の切欠き41と他方のフェライトコア33の切欠き41とが重なるまで行われる。このように切欠き41どうしが重なることにより、二つのフェライトコア33が一体化される。この一体化した状態においては、
図5および
図12に示すように一方のフェライトコア33の非開放側面部35と他方のフェライトコア33の非開放側面部35とが外周部34の軸線方向に重なる。このとき、
図13に示すように、両方のフェライトコア33の非開放側面部35に形成されている凹部42どうしが外周部34の軸線方向に並び、二つの非開放側面部35を貫通する貫通穴43が形成される。
また、二つのフェライトコア33が一体化した状態においては、
図6に示すように、一方のフェライトコア33の外周部34と他方のフェライトコア33の外周部34とが径方向において重なる。
【0037】
しかる後、一方のフェライトコア33の外周部34にコイル20を挿入することによりフェライトコア組立体32が完成する。コイル20の導線19は、凹部42によって形成された貫通穴43と他方の外周部34の中とを通してフェライトコア組立体32の外に導出される。
【0038】
フェライトコア組立体32は、第1の実施の形態を採るときと同様に、充填剤14が注入されたキャップ12の中に挿入される。このときは、コイル20を有する一方のフェライトコア33が充填剤14の中に浸される。その後、加熱工程を経て充填剤14が硬化することにより、近接センサの検出部31の組立が終了する。
【0039】
充填剤14は、硬化するときに硬化収縮を起こす。この硬化収縮が発生するときには、コイル20を囲む外周部34にこれを内側に引っ張るような力が作用する。この外周部34の他端側(開放側)は径方向内側への変形が規制されていない。一方、この外周部34の一端側は、非開放側面部35に接続された一部において径方向内側への変形が規制されるが、その他の部分は径方向内側への変形が規制されることがない。
このため、充填剤14の硬化収縮に起因して外周部34の一端側に生じる応力と、他端側に生じる応力との差は、従来のフェライトコアと較べると小さくなる。
【0040】
この実施の形態においては、外周部34と非開放側面部35との間に形成された分離用空間Sに他方のフェライトコア33の非開放側面部35が挿入されるから、分離用空間Sが形成されているにもかかわらず外周部34の一端側を非開放側面部35でシールドすることができる。
したがって、この実施の形態においても、充填剤14の収縮に伴ってフェライトコア33に生じる応力を低減でき、感度が安定する近接センサを提供することができる。
【0041】
この実施の形態においては、同一形状の二つのフェライトコア33を組み合わせて一つのフェライトコア組立体32が構成されている。このため、フェライトコア33を作成するために使用する金型は1種類でよいから、この実施の形態を採ることにより、第1の実施の形態を採る場合と較べて製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0042】
(第4の実施の形態)
同一形状の二つのフェライトコアを組み合わせて使用する場合のフェライトコアは、
図14および
図15に示すように構成することができる。
図14および
図15において、
図1~
図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0043】
図14に示すフェライトコア51は、
図5~
図13に示すフェライトコア33とは3箇所で異なり、その他は同一となるように形成されている。3箇所の相違点のうち、第1の相違点は、軸36の外径である。この実施の形態による軸36は、
図5~
図13に示した軸36より太くなるように形成されている。
【0044】
第2の相違点は、外周部34と非開放側面部35とを分断する切欠き41の形状である。この切欠き41は、外周部34の軸線方向に外周部34の他端まで延びている。以下においては、切欠き41の外周部34を軸線方向に延びる部分を延長部41aという。この延長部41aの幅(外周部34の周方向の幅)は、
図15に示すように、軸36の径方向の一部を挿入することが可能な幅である。なお、この幅は、軸36の径方向の全体を挿入できるように形成することができる。すなわち、この幅は、軸36の少なくとも一部を挿入することが可能な幅である。
【0045】
この第2の相違点の構成を採ることにより、外周部34の内径を拡げることなく、軸36の外径を太くすることができる。第3の実施の形態を採る場合、軸36の外径は、軸36を切欠き41から外周部34内に挿入するために、外周部34の内径の1/3より細くする必要があった。しかし、この実施の形態においては、外周部34の内径を変えることなく(外周部34が大型化することなく)、太い軸36を切欠き41から外周部34内に挿入することができる。軸36を太く形成することができると、コイル20の磁束を増やすことが可能になり、近接センサの性能向上を図ることが可能になる。
【0046】
第3の相違点は、上述した切欠き41の延長部41aとは軸36を挟んで径方向の反対側に形成された切欠き44である。切欠き44は、外周部34の他端から非開放側面部35の近傍まで一定の幅で延びるように形成されている。
外周部34は、この切欠き44と、切欠き41の延長部41aとによって、周方向において二つに分割されている。このため、外周部34に切欠き41の延長部41aが形成されているにもかかわらず、外周部34の周方向において応力の発生状況に偏りが生じることがなくなるから、近接センサの感度を高く保つことができる。
【符号の説明】
【0047】
11,31…近接センサの検出部、12…キャップ、13,32…フェライトコア組立体、14…充填剤、15,34…外周部、16,35…非開放側面部、16b…軸(第1の軸)、17,33,51…フェライトコア、20…コイル、36…軸(第2の軸)、41…切欠き、41a…延長部、42…凹部(配線口)、S…分離用空間。