(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180739
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】取得処理装置、処理方法、処理プログラム、及び測定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20221130BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20221130BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087400
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】北村 直也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳司
【テーマコード(参考)】
2G028
2G216
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BE04
2G028CG08
2G028DH05
2G028EJ03
2G216BA56
2G216CB15
(57)【要約】
【課題】測定対象となる蓄電デバイスの特性を示す測定結果の取得を可能とすることを目的とする。
【解決手段】取得処理装置14は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する取得処理装置14である。取得処理装置14は、計測装置を用いて所定の周波数帯域において三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得部50を含む。取得処理装置14は、取得部50で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定部51を含む。取得処理装置14は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する算出部52を含む。取得処理装置14は、極値が、予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する確定部54を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスのインピーダンスを取得処理する取得処理装置であって、
所定の周波数帯域において計測装置を用いて三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定手段と、
前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて前記測定対象成分の予測値を算出する算出手段と、
前記極値が、前記予測値と同じ又は前記予測値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、前記極値を前記測定対象成分に関する測定値として確定する確定手段と、
を含む取得処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取得処理装置であって、
前記算出手段は、前記取得手段によって取得された前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を二次関数で表した前記近似式の頂点を前記予測値として算出する、
取得処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の取得処理装置であって、
前記算出手段は、前記取得手段によって取得された前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の各値に基づいて二次曲線を算出し、前記二次曲線が突出方向に最も突出した曲点に基づいて前記予測値を定める、
取得処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の取得処理装置であって、
前記取得手段は、前記予測値が前記極値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、前記周波数帯域のうち前記予測値に対応する予測周波数で測定された追加インピーダンスを取得し、
前記算出手段は、前記追加インピーダンスの実数成分及び虚数成分と前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分とに基づいて前記近似式を求め、当該近似式に基づいて前記測定対象成分の前記予測値を新たに算出し、
前記確定手段は、前記測定対象成分のインピーダンスに最も近い前記極値が、前記算出手段が新たに算出した前記予測値と同じ又は前記予測値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近い場合に、前記極値を前記測定値として確定する、
取得処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の取得処理装置であって、
前記取得手段は、前記予測値の実数成分から求められる実数成分周波数と前記予測値の虚数成分から求められる虚数成分周波数とに基づいて前記予測周波数を算出する、
取得処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の取得処理装置であって、
前記予測周波数は、前記実数成分周波数及び前記虚数成分周波数に、前記三点以上のインピーダンスの前記実数成分の最大値と最小値との差分及び前記虚数成分の最大値と最小値との差分に基づいて重みづけをした加重平均値である、
取得処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の取得処理装置であって、
前記測定対象成分は、溶液抵抗成分を含み、
前記測定対象成分の前記予測値は、前記実数成分の値であり、
前記確定手段は、前記三点以上の前記実数成分の各値のうち最も小さい値を前記極値とし、前記極値が前記予測値と同じ又は前記予測値よりも小さい場合に、前記極値を前記測定値として確定する、
取得処理装置。
【請求項8】
蓄電デバイスのインピーダンスを測定する処理方法であって、
所定の周波数帯域において三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した前記三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定工程と、
前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて前記測定対象成分の予測値を算出する算出工程と、
前記極値が、前記予測値と同じ又は前記予測値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、前記極値を前記測定対象成分に関する測定値として確定する確定工程と、
を含む処理方法。
【請求項9】
プロセッサを、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の取得処理装置の各手段として機能させる処理プログラム。
【請求項10】
蓄電デバイスのインピーダンスを測定するための複数の装置を有する測定システムであって、
所定の周波数帯域において三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定部と、
前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて前記測定対象成分の予測値を算出する算出部と、
前記極値が、前記予測値と同じ又は前記予測値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、前記極値を前記測定対象成分に関する測定値として確定する確定部と、
を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスのインピーダンスを測定する取得処理装置、処理方法、処理プログラム、及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池を測定対象とした等価回路解析装置が開示されている。この等価回路解析装置は、電池の等価回路を用いた等価回路解析を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置において、非線形アルゴリズムで等価回路解析を行う場合、特性を合わせ込む際に、どのパラメータを固定するかによって結果が変わる虞がある。このため、残差値が少なくなったとしても、その値が電池の特性を示すものであることを証明することができない。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、測定対象となる蓄電デバイスの特性を示す測定結果の取得を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の取得処理装置は、蓄電デバイスのインピーダンスを取得処理する取得処理装置である。取得処理装置は、所定の周波数帯域において計測装置を用いて三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得手段を含む。取得処理装置は、前記取得手段で取得した前記三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定手段を含む。取得処理装置は、前記三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて前記測定対象成分の予測値を算出する算出手段を含む。取得処理装置は、前記極値が、前記予測値と同じ又は前記予測値よりも前記測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、前記極値を前記測定対象成分に関する測定値として確定する確定手段を含む。
【発明の効果】
【0007】
この態様において、測定で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する。そして、三点以上の実数成分又は虚数成分の極値が、近似式に基づく予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合に、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する。
【0008】
そして、この測定値は、実際に測定された実測値によって定められており、この実測値は、蓄電デバイスの特性を示す値である。
【0009】
したがって、測定対象となる蓄電デバイスの特性を示す測定結果を測定値として取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る測定システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る測定システムの計測装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る測定システムの取得処理装置を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る取得処理装置を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る測定システムで蓄電デバイスのインピーダンスを測定する状態を示す等価回路である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る測定システムで測定する蓄電デバイスの各周波数でのインピーダンスを複素平面に示したコールコールプロットを示す説明図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る測定システムで測定する蓄電デバイスのコールコールプロットのおける溶液抵抗成分の部分を示す説明図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る測定システムで測定する蓄電デバイスのコールコールプロットにおける電気二重層容量成分の部分を示す説明図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る測定システムで測定する蓄電デバイスのコールコールプロットにおける反応抵抗成分の部分を示す説明図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る測定処理の動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る測定処理で予測値を予測する様子を示す説明図である。
【
図12】
図12は、一実施形態に係る周波数算出処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0012】
<実施形態>
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る測定システム10を示すブロック図である。
図2は、一実施形態に係る測定システム10の計測装置12を示すブロック図である。
図3は、一実施形態に係る測定システム10の取得処理装置14を示すブロック図である。
【0013】
測定システム10は、
図1に示すように、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定するシステムである。
【0014】
ここで、蓄電デバイス16は、充放電可能に構成された蓄電池であり、電気二重層キャパシタなどのコンデンサ型の蓄電素子を含む。蓄電デバイス16は、複数の素電池が並列、直列又は直並列に接続された組電池でもよく、単電池であってもよい。蓄電デバイス16は、内部抵抗を有し、化学反応によって直流電圧を出力する。
【0015】
(ハードウエア構成)
測定システム10は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定するための複数の装置で構成されている。具体的に測定システム10は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する計測装置12と、計測装置12での測定結果を利用して測定対象成分のインピーダンスを求める取得処理装置14とを備えている。
【0016】
計測装置12は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する。取得処理装置14は、計測装置12で測定したインピーダンスを処理して測定対象成分の測定値を確定する。
【0017】
具体的に説明すると取得処理装置14は、計測装置12において、各周波数で測定したインピーダンスの実数成分と虚数成分とを複素平面にプロットしてコールコールプロットを形成する。これにより、取得処理装置14は、計測装置12での測定結果を利用して測定対象成分のインピーダンスを求める。
【0018】
測定対象成分としては、例えば、電解液抵抗を検出できる溶液抵抗成分、及び電気二重層容量を検出できる電気二重層容量成分が挙げられる。
【0019】
[計測装置]
図2に示す計測装置12は、
図1に示す定電流源20と、電圧検出部22と、処理部24と、通信部26とを備える。定電流源20は、交流電流供給部と電流検出部とを備える。
【0020】
通信部26は、取得処理装置14と通信を行い、取得処理装置14から受信した測定条件などを処理部24へ引き渡す。また、通信部26は、処理部24から受けた測定結果などを取得処理装置14に引き渡す。
【0021】
処理部24は、通信部26より受けた測定条件などに従って定電流源20の交流電流供給部を作動する。また、処理部24は、定電流源20の電流検出部で測定した電流値を受け取る。
【0022】
また、処理部24は、定電流源20の交流電流供給部からの出力と、電圧検出部22で検出した電圧の変化と、電流検出部で測定した電流値とに基づいて、インピーダンスを算出する。そして、処理部24は、インピーダンスの虚数成分及び実数成分を測定結果として通信部26に出力する。
【0023】
定電流源20の交流電流供給部は、処理部24からの測定条件に応じた大きさ及び周波数の交流電流を生成する。また、定電流源20の交流電流供給部は、生成した交流電流を蓄電デバイス16の正極端子16A及び負極端子16Bに印加する。定電流源20の電流検出部は、蓄電デバイス16に流れる電流を検出する。
【0024】
電圧検出部22は、定電流源20から蓄電デバイス16に供給した交流電流に応じて蓄電デバイス16の正極端子16A及び負極端子16Bに生ずる電圧を検出する。また、電圧検出部22は、検出した電圧を処理部24へ出力する。
【0025】
[取得処理装置]
取得処理装置14は、
図3に示すように、コンピュータを構成するプロセッサ30を中心に構成されている。プロセッサ30には、通信部32と、記憶部34と、入力部36と、表示部38と、報知部40と、時計部42と、外部通信部44とが接続されている。
【0026】
通信部32は、計測装置12の通信部26と通信を行う。通信は、有線通信又は無線通信で行われる。通信部32は、プロセッサ30から送られた測定条件などを計測装置12の通信部26に送信する。また、通信部32は、計測装置12の通信部26から受けた測定結果などを受信してプロセッサ30に引き渡す。
【0027】
記憶部34は、プロセッサ30によってデータを読み出し可能に記憶する。記憶部34には、取得処理装置14の動作を制御する処理プログラムが格納される。記憶部34は、取得処理装置14の機能を実現する処理プログラムを格納する記憶媒体として機能する。
【0028】
記憶部34は、不揮発性メモリ(ROM:Read Only Memory)、及び揮発性メモリ(RAM:Random Access Memory)などにより構成される。
【0029】
また、記憶部34は、処理プログラムで使用するデータが読み出し可能に記憶される。
【0030】
具体的に説明すると、記憶部34には、測定対象成分のインピーダンスを測定するための周波数帯域を示す情報が記憶されている。また、記憶部34は、測定対象成分の測定を開始する際に入力された周波数、及び測定対象成分の測定値を演算する過程で使用するデータなどを一時的に記憶する。さらに、記憶部34は、測定結果を記憶する。
【0031】
入力部36は、利用者が入力したデータをプロセッサ30に送る。入力部36は、利用者の入力操作を受け付ける入力インターフェースとして機能する。入力部36は、一例として、複数の操作ボタン及び数字ボタン、又はタッチパネルで構成される。
【0032】
表示部38は、プロセッサ30からのデータに従って表示を行う。一例として、表示部38は、測定結果等を表示する。また、取得処理装置14が測定結果に基づいて、蓄電デバイス16をランク分けする機能を有する場合、表示部38は、ランク分けされたランクを表示する。表示するランクとしては、蓄電デバイス16の良不良を示す良否、又は蓄電デバイス16を用途ごとに分類する為の品質が挙げられる。
【0033】
なお、蓄電デバイス16の出力特性の良否は、内部インピーダンスの状態に基づいて判断する。具体的には、内部インピーダンスが所定の基準よりも低いものを良品とする。
【0034】
表示部38を構成する装置としては、発光ダイオード又はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネルが挙げられる。本実施形態の表示部38は、一例として、液晶パネルで構成される。
【0035】
報知部40は、プロセッサ30からのデータに従って報知を行う。報知部40は、案内又は警告音等を利用者に音で報知する。音で報知する装置としては、圧電ブザー又はスピーカなどが挙げられる。本実施形態の報知部40は、一例として、スピーカで構成される。
【0036】
時計部42は、現在の年月日及び時刻を示すととともに時間を測定する。時計部42は、現在の年月日及び時刻をプロセッサ30に出力する。時計部42が示す年月日及び時刻は、一例として、測定対象成分の測定値として確定した値に関連付けられて、記憶部34に記憶される。
【0037】
外部通信部44は、プロセッサ30と外部装置との間でデータの送受信を可能とする。外部通信部44は、データを送受信するためのインターフェースを構成する。外部通信部44は、USB(universal serial bus)、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどを用いて通信を行うハードウエアで構成される。
【0038】
前述した処理プログラムが外部装置から供給される場合、外部通信部44は、外部装置から処理プログラムを受信してプロセッサ30に送る。プロセッサ30は、受信した処理プログラムを記憶部34に格納する。
【0039】
プロセッサ30は、一例として、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成される。プロセッサ30は、記憶部34に格納された処理プログラムを読み出すとともに、読み出した処理プログラムに従って動作する。これにより、プロセッサ30は、取得処理装置14の各部を制御して処理方法を実施する。
【0040】
また、プロセッサ30は、測定結果等を表示部38で表示したり、報知部40から報知したり、外部通信部44を介して外部装置へ送信したりする。
【0041】
(機能ブロック)
図4は、一実施形態に係る取得処理装置14の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0042】
取得処理装置14は、
図4に示すように、取得部50と、決定部51と、算出部52と、確定部54とを備える。取得処理装置14における各部50、51、52、54の機能は、プロセッサ30が記憶部34から処理プログラムとして読み出したソフトウエアプログラムを実行することで実現される。
【0043】
[取得部]
取得手段として機能する取得部50は、測定対象成分のインピーダンスを測定するための所定の周波数帯域において、三点以上の周波数で測定されたインピーダンスを計測装置12から取得する。測定対象成分は、一例として蓄電デバイス16の溶液抵抗成分を含み、測定対象成分についての詳細は後述する。
【0044】
また、取得部50は、算出部52で予測した対象成分の予測値が、計測装置12より取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出するか否かを判断する。そして、予測値が極値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、周波数帯域のうち予測値に対応する予測周波数で測定された追加インピーダンスを取得する。
【0045】
言い換えると、取得部50は、計測装置12より取得した値が、算出部52で予測した測定対象成分の予測値よりも測定対象成分のインピーダンスから遠いか否かを判断する。そして、取得部50は、取得した値が測定対象成分のインピーダンスよりも遠い場合には、上記周波数帯域のうち予測値に対応する周波数である予測周波数で測定した追加インピーダンスを測定結果として新たに取得する。
【0046】
予測値に対応する予測周波数は、予測値の実数成分から求められる実数成分周波数と予測値の虚数成分から求められる虚数成分周波数とに基づいて算出される。
【0047】
この予測周波数は、一例として、取得部50で取得した実数成分の最大値と最小値との差分及び虚数成分の最大値と最小値との差分に基づいて実数成分周波数及び虚数成分周波数に重みづけすることにより得られた値である加重平均値とする。
【0048】
ここで、計測装置12より取得した値が予測値よりも測定対象成分のインピーダンスから遠いか否かは、測定対象成分に基づいて把握することできる。
【0049】
具体例を挙げて説明すると、測定対象成分が電解液抵抗を含む溶液抵抗成分の場合、電解液抵抗は、測定したインピーダンスの実数成分のうち最も小さい値と相関がある。そして、測定したインピーダンスにおいて実数成分の最も小さい値が電解液抵抗を示すことが知られている。
【0050】
このため、測定対象成分が電解液抵抗を含む溶液抵抗成分の場合において、測定したインピーダンスの実数成分が予測値のインピーダンスの実数成分よりも大きいときは、測定した値である極値が予測値よりも測定対象成分のインピーダンスから遠いと判断することができる。また、測定したインピーダンスの実数成分が予測値のインピーダンスの実数成分よりも小さいときは、測定した値である極値が予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近いと判断することができる。
【0051】
[決定部]
決定手段として機能する決定部51は、取得部50で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める。
【0052】
ここで、極値とは、取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の値のうち、測定対象成分のインピーダンスに最も近い値を示す。なお、測定対象成分のインピーダンスに近いか否かは、前述した方法により判断することができる。
【0053】
また、極値は、三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分を複素平面にプロットして曲線を形成した場合、この曲線において、最も曲線の突出方向に位置した値と言い換えることができる。
【0054】
[算出部]
算出手段として機能する算出部52は、取得部50が取得した三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する。一例として、測定対象成分が電解液抵抗を含む溶液抵抗成分の場合、測定対象成分の予測値は、実数成分の値とする。
【0055】
また、算出部52は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を二次関数で表した近似式の頂点を測定対象成分の予測値として算出する。
【0056】
具体的に算出部52は、取得部50で取得したインピーダンスの実数成分及び虚数成分の各値から最小二乗法によって二次曲線を算出し、二次曲線が突出方向に最も突出した曲点に基づいて予測値を定める。
【0057】
算出部52は、取得部50で追加インピーダンスを取得した場合、追加インピーダンスの実数成分及び虚数成分と、追加インピーダンスよりも前に測定した三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分とに基づいて近似式を求める。そして、取得部50は、求めた近似式に基づいて、測定対象成分の予測値を新たに算出する。
【0058】
[確定部]
確定手段である確定部54は、決定部51で求めた極値が、前述の予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する。
【0059】
言い換えると確定部54は、三点以上の実数成分又は虚数成分の各値のうち測定対象成分に最も近い値が、予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分に近い場合に、その値を測定対象成分に関する値、すなわち最終結果として確定する。
【0060】
これにより、測定対象成分のインピーダンスは、蓄電デバイスを測定した値に基づいて定められる。
【0061】
取得部50で取得した追加インピーダンスを用いて測定対象成分の予測値を新たに算出した場合、確定部54は、次のようにして測定対象成分に関する値を確定する。すなわち、確定部54は、測定対象成分に最も近い測定値が、算出部52が新たに算出した予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分に近い場合に、測定対象成分に関する値として測定値を確定する。
【0062】
ここで、測定対象成分に最も近い測定値は、予測周波数で測定された追加インピーダンスを含めた総ての値において、測定対象成分のインピーダンスに最も近い値とする。
【0063】
一例として、測定対象成分が電解液抵抗を含む溶液抵抗成分の場合、測定対象成分の予測値は、実数成分の値とする。この場合、確定部54は、三点以上の実数成分の各値のうち最も小さい値が、予測値と同じ又は予測値よりも小さい場合に、測定対象成分に関する値として測定値を確定する。
【0064】
これにより、電解液抵抗を含む溶液抵抗成分を示す値が測定対象成分に関する値として確定される。
【0065】
ここで、極値が予測値よりも測定対象成分のインピーダンスから遠い場合、インピーダンスの測定、予測値の算出、及び測定した値を加えた極値と予測値との比較を繰り返すが、この繰返回数は、予め指定することも可能である。
【0066】
(等価回路)
図5は、一実施形態に係る測定システム10で蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する状態を示す等価回路60である。
【0067】
計測装置12のケーブルを蓄電デバイス16の各端子16A、16Bに接続した状態での蓄電デバイス16のインピーダンスは、ケーブル抵抗成分62と、溶液抵抗成分64と、反応抵抗成分66とが直列接続された等価回路60によって表すことができる。
【0068】
ケーブル抵抗成分62は、互いに並列接続されたインダクタンスLiと抵抗Riとで示される。インダクタンスLiは、ケーブルが有するインダクタンスを示し、抵抗Riは、ケーブルが有する抵抗を示す。
【0069】
溶液抵抗成分64は、蓄電デバイス16の電極間の電解液の溶液抵抗を示す。溶液抵抗成分64は、蓄電デバイス16の電解液抵抗及び電極のタブの溶接抵抗からなる電解液抵抗Rsolを有する。
【0070】
反応抵抗成分66は、正極の電極で生ずる正極反応抵抗68と、負極の電極で生ずる負極反応抵抗70とで構成される。正極反応抵抗68と負極反応抵抗70とは、等価回路60において直列接続される。
【0071】
正極反応抵抗68は、並列接続された電気二重層容量C1と反応抵抗R1とを有する。電気二重層容量C1は、正極の電極と電荷液との間に生ずる電気容量を示し、反応抵抗R1は、正極の電極と電解液との間に生ずる電荷移動抵抗を示す。
【0072】
負極反応抵抗70は、互いに並列接続された電気二重層容量C2と反応抵抗R2とを有する。電気二重層容量C2は、負極の電極と電荷液との間に生ずる電気容量を示し、反応抵抗R2は、負極の電極と電解液との間に生ずる電荷移動抵抗を示す。
【0073】
図6は、一実施形態に係る測定システム10で測定する蓄電デバイス16の各周波数でのインピーダンスを複素平面に示したコールコールプロット80を示す説明図である。
図7は、一実施形態に係る測定システム10で測定された蓄電デバイス16のコールコールプロット80のおける溶液抵抗成分64の部分を示す説明図である。
【0074】
図8は、一実施形態に係る測定システム10で測定された蓄電デバイス16のコールコールプロット80における電気二重層容量成分72の部分を示す説明図である。
図9は、一実施形態に係る測定システム10で測定する蓄電デバイス16のコールコールプロット80における反応抵抗成分74の部分を示す説明図である。
【0075】
図6に示すように、コールコールプロット80(ナイキストプロットともいう)は、各周波数における蓄電デバイス16のインピーダンスを複素平面にプロットしたものである。複素平面の横軸(R)は、インピーダンスの実数成分を示し、縦軸(X)は、インピーダンスの虚数成分を示す。
【0076】
このコールコールプロット80は、
図6及び
図7に示すように、電解液抵抗Rsolがインピーダンスの主要因となる領域を有する。電解液抵抗Rsolがインピーダンスの主要因となる領域は、第一周波数帯域に現われ、本実施形態の蓄電デバイス16の場合、第一周波数帯域は、一例として、数100Hz以上数10kHz未満の帯域である。
【0077】
また、コールコールプロット80は、
図6及び
図8に示すように、電気二重層容量C1、C2の影響が表れるインピーダンスの領域を有する。電気二重層容量C1、C2の影響が表れるインピーダンスの領域は、第二周波数帯域に現われ、本実施形態の蓄電デバイス16の場合、第二周波数帯域は、一例として、数10Hz以上数100Hz未満の帯域である。
【0078】
さらに、コールコールプロット80は、
図6及び
図9に示すように、反応抵抗R1、R2及び溶液の拡散領域のインピーダンスの領域を有する。反応抵抗R1、R2及び拡散領域のインピーダンスの領域は、第三周波数帯域に現われ、本実施形態の蓄電デバイス16の場合、第三周波数帯域は、一例として、0.01Hz以上数10Hz未満の帯域である。
【0079】
本実施形態において、測定対象成分とは、電解液抵抗Rsolを示す溶液抵抗成分64と、電気二重層容量C1、C2を示す電気二重層容量成分72のことである。
【0080】
ここで、反応抵抗R1、R2及び拡散領域の良否は、一例として、高周波エリアで検出された電解液抵抗Rsolのインピーダンスと低周波エリアの反応抵抗R1、R2のインピーダンスとに基づいて評価することができる。具体的に説明すると、コールコールプロットにおいて、高周波エリアで検出された電解液抵抗Rsolのインピーダンスの位置と低周波エリアの反応抵抗R1、R2のインピーダンスの位置とを結んだ直線の長さ等によって評価することができる。
【0081】
このため、反応抵抗R1、R2及び拡散領域を示す反応抵抗成分74も、測定対象成分のインピーダンスとすることができる。
【0082】
第一周波数帯域は、電解液抵抗Rsolを測定するための周波数帯域を示し、第二周波数帯域は、電気二重層容量C1、C2を測定するための周波数帯域を示す。また、第三周波数帯域は、反応抵抗R1、R2及び拡散領域のインピーダンスを測定するための周波数帯域を示す。
【0083】
(動作説明)
次に、取得処理装置14の動作を、
図10から
図12を用いるとともに、取得処理装置14のプロセッサ30が実行する処理手順に従って説明する。なお、測定システム10は、取得処理装置14の動作に伴って機能する。
【0084】
図10は、取得処理装置14の動作の一例を示すフローチャートである。
図10には、蓄電デバイス16のインピーダンスの測定対象成分を測定するための測定処理が示されている。
【0085】
ここで、この測定処理を実行する前には、測定処理に必要となるパラメータを設定するための設定処理が行われる。この設定処理では、蓄電デバイス16において測定対象とする測定対象成分が利用者によって選択されている。また、設定処理では、選択された測定対象成分に対応する周波数帯域において三点の周波数が利用者によって入力されているものとする。
【0086】
一例を挙げて説明すると、本実施形態に係る蓄電デバイス16において、測定対象成分として電解液抵抗Rsolが選択されている。また、測定する周波数として、第一周波数帯域(数100Hz以上数10kHz未満の帯域)において、三点の周波数が入力されている。ここで、測定対象成分は電解液抵抗Rsolであるため、測定対象成分は、インピーダンスの実数成分の値で示される。
【0087】
なお、本実施形態では、第一周波数帯域の周波数での測定結果を用いて測定対象成分である電解液抵抗Rsolを測定する場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、他の周波数帯域の各周波数での測定結果を用いることで、他の測定対象成分を測定することができる。
【0088】
取得処理装置14のプロセッサ30は、記憶部34に記憶された処理プログラムの測定処理を実行する。すると、プロセッサ30は、測定対象成分を測定するための周波数帯域において、予め入力された三点の周波数で測定されたインピーダンスを取得し、取得した各インピーダンスの実数成分及び虚数成分を得る(ステップS1)。
【0089】
具体的に説明すると、取得処理装置14のプロセッサ30は、通信部32を介して計測装置12と通信する。この通信により、プロセッサ30は、計測装置12に対して、入力された三点の周波数で蓄電デバイス16のインピーダンスの測定を実施させるとともに、測定した各インピーダンスを計測装置12から取得する。
【0090】
そして、プロセッサ30は、計測装置12から各インピーダンスの実数成分及び虚数成分を取得して記憶部34に記憶する。
【0091】
ここで、実施形態では、測定した各インピーダンスの実数成分及び虚数成分を計測装置12から取得する場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、計測装置12から出力されたインピーダンスを、取得処理装置14のプロセッサ30で実数成分と虚数成分とに分解し、その実数成分及び虚数成分を記憶部34に記憶してもよい。
【0092】
図11は、一実施形態に係る測定処理で予測値102を予測する様子を示す説明図である。
図11には、三点の周波数で測定したインピーダンスとして、第一実測インピーダンス90、第二実測インピーダンス92、及び第三実測インピーダンス94が、複素平面に示されている。
【0093】
プロセッサ30は、
図10に示したように、各実測インピーダンス90、92、94の実数成分及び虚数成分の各値のうち測定対象成分に最も近い値を極値とする(ステップS2)。
【0094】
本実施形態において、測定対象成分のインピーダンスは電解液抵抗Rsolである。このため、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94のうち実数成分が最も小さい第二実測インピーダンス92の実数成分を極値として定める。
【0095】
そして、プロセッサ30は、記憶部34に予め設定された「カウンタ」を「0」とし(ステップS2-1)、「カウンタ」がn未満であるか否かを判断する(ステップS2-2)。なお、nは、予め定めらえた値であり、例えば「3」等の数字で構成される。また、このnは、一例として、入力部からの入力によって予め定めてもよい。
【0096】
現時点において、「カウンタ」は、「0」なので、ステップS2-2の判断では、「カウンタ」はn未満であると判断し、ステップS3へ移行する。
【0097】
ステップS3において、プロセッサ30は、取得した各実測インピーダンス90、92、94から二次曲線100を算出する(ステップS3)。これにより、各実測インピーダンス90、92、94の実数成分及び虚数成分の関係が二次関数で表される。
【0098】
具体的に説明すると、プロセッサ30は、
図11に示したように、各実測インピーダンス90、92、94から一例として最小二乗法を用いて二次関数を求め、この二次関数が示す二次曲線100を取得する。なお、最小二乗法以外の近似法を用いて関数を求めてもよい。
【0099】
そして、プロセッサ30は、取得した二次曲線100から測定対象成分の予測値102を算出する(ステップS4)。この二次曲線100は、二次関数を表す近似式を示し、二次関数の頂点が予測値102として算出される。二次関数の頂点は、二次曲線100が突出方向に最も突出した曲点を示し、この曲点に基づいて予測値102が定められる。
【0100】
具体的に説明すると、二次曲線100は、Y=aX2+bX+cの式で示される。この式を変形すると、Y=F(x)=a(X+b/2a)2+(-b2+4ac)/4aとなる。
【0101】
ここで、本実施形態では、測定対象成分として電解液抵抗Rsolが選択されている。このため、この二次曲線100は、便宜上、横軸をリアクタンス、縦軸を抵抗とするとともに、縦軸方向に凸となる曲線を示す式によって表す。
【0102】
この変形した式から頂点に対応する予測値102の虚数成分の値Xtは、Xt=(-b/2a)となる。実数成分の値Rtは、Rt={(-b2+4ac)/4a}となる。実数成分のうち最も小さい値は{(-b2+4ac)/4a}となる。最も小さい実数成分は、頂点を示すので、この値を予測値102とすることができる。
【0103】
このように、虚数成分を変数とする二次関数F(x)の頂点に基づいて予測値102が定められる。
【0104】
なお、本実施形態では、近似式として二次関数を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、四点の周波数でインピーダンスを測定した場合、一方の隣接する二点を結ぶ直線と、他方の隣接する二点を結ぶ直線とを示す二つの近似式を想定する。この場合、二本の直線が交差する点を予測値102とすることができる。
【0105】
そして、プロセッサ30は、
図10に示したように、各実測インピーダンス90、92、94の最小値(極値:以下同じ)が、予測値102よりも大きいか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5において、各実測インピーダンス90、92、94の最小値が予測値102と同じ又は予測値102よりも小さいと判断した場合、各実測インピーダンス90、92、94の最小値を、測定対象成分に関する測定値として確定する(ステップS6)。そして、測定処理を終了する。
【0106】
これにより、ステップS1で取得した各実測インピーダンス90、92、94の実数成分又は虚数成分の各値のうち測定対象成分のインピーダンスに最も近い値が、予測値102と同じ又は予測値102よりも測定対象成分に近い場合に、測定対象成分に関する値として測定値が確定される。
【0107】
具体的に説明すると、測定対象成分は、溶液抵抗成分64を含み、測定対象成分の予測値102は、実数成分の値である。このため、取得した各実測インピーダンス90、92、94の実数成分の各値のうち最も小さい値が予測値102と同じ又は予測値102よりも小さい場合に、測定対象成分に関する値として測定値が確定される。
【0108】
なお、測定対象成分は溶液抵抗成分64を含む。このため、測定対象成分に関する値として確定された測定値は、測定対象成分である溶液抵抗成分64のインピーダンスを示す。
【0109】
なお、取得処理装置14は、他の処理において、確定したインピーダンスを表示部38に表示してもよい。また、取得処理装置14は、確定したインピーダンスを、外部通信部44を介して、他の装置に送信してもよい。
【0110】
また、取得処理装置14は、他の処理において、確定したインピーダンスを用いて蓄電デバイス16の特性を評価してもよい。具体的に説明すると、取得処理装置14は、確定したインピーダンスに基づいて、蓄電デバイス16をランク分けし、その結果を表示部38に表示したり、蓄電デバイス16の品質を表示したりしてもよい。
【0111】
ステップS5において、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94の最小値が予測値102よりも大きいと判断した場合、周波数算出処理を実行する(ステップS7)。
【0112】
このステップS7は、ステップS4で求めた予測値102が最小の値であるか否かの検証に用いたり、信頼度区間などの統計処理に用いたりするために予測値102における予測周波数Faを算出する。
【0113】
図12は、一実施形態に係る周波数算出処理の処理手順を示すフローチャートであり、
図12を用いて周波数算出処理の動作を説明する。
【0114】
周波数算出処理は、予測値102の予測周波数Faを算出する処理である。周波数算出処理において、プロセッサ30は、取得した各実測インピーダンス90、92、94の実数成分の値R1、R2、R3と、各値R1、R2、R3を取得した各周波数F1、F2、F3と、に基づいて一般多項式を算出する。そして、プロセッサ30は、算出した多項式を実数成分多項式とする(ステップSB1)。なお、実数成分多項式の次数は選択可能とする。
【0115】
そして、プロセッサ30は、算出した実数成分多項式に、ステップS4求めた実数成分の値Rtを代入して、実数成分の値Rtとなる実数成分の周波数Frを算出する(ステップSB2)。
【0116】
また、プロセッサ30は、取得した各実測インピーダンス90、92、94の虚数成分の値X1、X2、X3と、各値X1、X2、X3を取得した各周波数F1、F2、F3と、によって一般多項式を算出する。そして、プロセッサ30は、算出した多項式を虚数成分多項式とする(ステップSB3)。なお、虚数成分多項式の次数は選択可能とする。
【0117】
そして、プロセッサ30は、算出した虚数成分多項式に、ステップS3で求めた虚数成分の値Xtを代入して、虚数成分の値Xtとなる虚数成分の周波数Fxを算出する(ステップSB4)。
【0118】
次に、プロセッサ30は、測定した各実測インピーダンス90、92、94の実数成分の値の最大値から最小値を減算して実数成分の差分ΔRを取得する(ステップSB5)。また、プロセッサ30は、測定した各実測インピーダンス90、92、94の虚数成分の値の最大値から最小値を減算して虚数成分の差分ΔXを取得する(ステップSB6)。
【0119】
そして、プロセッサ30は、実数成分の周波数Frに実数成分の差分ΔRを乗算して(F’r=Fr×ΔR)、Frに重みづけを行う(ステップSB7)。また、プロセッサ30は、虚数成分の周波数Fxに虚数成分の差分ΔXを乗算して(F’x=Fx×ΔX)、Fxに重みづけを行う(ステップSB8)。
【0120】
プロセッサ30は、重みづけを行った実数成分の周波数F’rと虚数成分の周波数F’xとの加算値を、実数成分の差分ΔRに虚数成分の差分ΔXを加えた加算値で除算して、加重平均化された予測周波数Faを算出し(ステップSB9)、測定処理へ戻る。予測周波数Faの計算式を次に示す。
【0121】
Fa=(F’r+F’x)/(ΔR+ΔX)
【0122】
これにより、予測値102の実数成分から求められる実数成分の周波数F’rと予測値102の虚数成分から求められる虚数成分の周波数F’xとに基づいて、予測周波数Faが算出される。なお、Faは、FxとFrとの平均値でもよい。
【0123】
予測周波数Faは、実数成分の周波数F’r及び虚数成分の周波数F’xに、ステップS1で取得した実数成分の最大値と最小値との差分ΔR及び虚数成分の最大値と最小値との差分ΔXに基づいて重みづけをした加重平均値である。
【0124】
測定処理において、
図10に示したように、プロセッサ30は、ステップS2で求めた極値の実数成分のR値における周波数と、最小分解能の桁を切り捨て等で処理した予測周波数Faと比較して、実測可能であるか否かを判断する(ステップS8)。
【0125】
ステップS8の判断において、ステップS2で求めた極値の実数成分のR値における周波数と、最小分解能の桁を切り捨て等で処理した予測周波数Faとが等しい場合、新たな値を得られない。このため、現時点における各実測インピーダンス90、92、94の最小値を測定対象成分のインピーダンスとして確定し(ステップS6)、測定処理を終了する。
【0126】
ステップS8の判断において、ステップS2で求めた極値の実数成分のR値における周波数と、最小分解能の桁を切り捨て等で処理した予測周波数Faとが異なる場合、算出した予測周波数Faで新たな値を得ることができる。このため、予測周波数Faで蓄電デバイス16を再度測定して追加インピーダンスを取得する(ステップS9)。なお、インピーダンスの取得方法は、ステップS1と同じ手順で行う。
【0127】
これにより、測定値が予測値102よりも測定対象成分のインピーダンスから遠い場合には、周波数帯域のうち予測値102に対応する予測周波数Faで測定されたインピーダンスが追加インピーダンスとして取得される。
【0128】
そして、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94の最小値が、予測周波数Faで測定した追加インピーダンスよりも大きいか否かを判断する(ステップS10)。
【0129】
ステップS10において、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94の最小値が予測周波数Faで取得した追加インピーダンスと同じ又は追加インピーダンスよりも小さいと判断した場合、ステップS6へ分岐する。ステップS6において、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94の最小値を測定対象成分に関する測定値として確定して測定処理を終了する(ステップS6)。
【0130】
一方、ステップS10において、プロセッサ30は、各実測インピーダンス90、92、94の最小値が、予測周波数Faで測定した追加インピーダンスよりも大きいと判断した場合、追加インピーダンスを最小値とする(ステップS11)。
【0131】
そして、プロセッサ30は、「カウンタ」に「1」を加えて、ステップS2-2へ移行する。
【0132】
ステップS2-2において、プロセッサ30は、「カウンタ」がn未満であるか否かを判断する(ステップS2-2)。ステップS2-2において、プロセッサ30は、「カウンタ」がnであると判断した場合、現時点での全実測インピーダンスの最小値を測定対象成分に関する測定値として確定して測定処理を終了する(ステップS6)。
【0133】
これにより、ステップS3からステップS12の繰り返し回数をn回に制限することができる。
【0134】
一方、ステップS2-2において、プロセッサ30は、「カウンタ」がn未満であると判断した場合、ステップS3へ移行する。
【0135】
ステップS3において、プロセッサ30は、追加インピーダンスが各実測インピーダンス90、92、94に加えられた全実測インピーダンスを用いた前述した方法で二次曲線を算出する(ステップS3)。
【0136】
また、プロセッサ30は、取得した二次曲線から測定対象成分の予測値を新たに算出する(ステップS4)。
【0137】
これにより、追加インピーダンスの実数成分及び虚数成分と各実測インピーダンス90、92、94の実数成分及び虚数成分とに基づいて、近似式である二次曲線を求め、この近似式に基づいて、測定対象成分の予測値を新たに算出する。
【0138】
そして、プロセッサ30は、全実測インピーダンスの最小値が、新たに算出された予測値よりも大きいか否かを判断する(ステップS5)。
【0139】
ステップS5において、全実測インピーダンスの最小値が新たに算出された予測値と同じ又は予測値よりも小さいと判断した場合、全実測インピーダンスの最小値を測定対象成分に関する値として確定して測定処理を終了する(ステップS6)。
【0140】
これにより、全実測インピーダンスのうち測定対象成分に最も近い値が、ステップS4で新たに算出した予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近い場合に、測定対象成分に関する値として測定値が確定される。
【0141】
また、ステップS5において、全実測インピーダンスの最小値が、新たに算出した予測値よりも大きいと判断した場合、ステップS7へ移行し、測定対象成分のインピーダンスが確定するまで、各ステップを繰り返す。
【0142】
(作用及び効果)
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0143】
本実施形態における取得処理装置14は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する取得処理装置14である。取得処理装置14は、所定の周波数帯域において計測装置12を用いて三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得部50を含む。取得処理装置14は、取得部50で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の最小値である極値を求める決定部51を含む。取得処理装置14は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する算出部52を含む。取得処理装置14は、極値が、予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する確定部54を含む。
【0144】
この構成によれば、測定して取得した三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する。そして、三点以上の実数成分又は虚数成分の極値が、近似式に基づく予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合に、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する。
【0145】
そして、この測定値は、実際に測定された実測値によって定められており、この実測値は、蓄電デバイスの特性を示す値である。
【0146】
したがって、測定対象となる蓄電デバイスの特性を示す測定結果を測定値として取得することが可能となる。
【0147】
具体的に説明すると、非線形アルゴリズムで等価回路解析を行う場合、特性を合わせ込む際に、どのパラメータを固定するかによって結果が変わる虞がある。このため、残差値が少なくなったとしても、その値が蓄電デバイスの特性を示すものであることを証明することができない。
【0148】
しかし、本実施形態では、予測値102よりも測定対象成分に近い実測値を、測定対象成分に関する測定値として確定する。このため、実際に測定された値を用いて測定対象成分に関する測定値を定めることができる。
【0149】
また、この構成によれば、取得した三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値102を算出する。そして、取得した実数成分又は虚数成分の各値のうち測定対象成分に最も近い値が予測値102と同じ又は予測値102よりも測定対象成分のインピーダンスに近い場合に、測定対象成分に関する値として測定値を確定する。
【0150】
これにより、少なくとも三点のインピーダンスを処理することで、測定対象成分のインピーダンスを取得することができる。このため、多数の測定結果を演算処理しなければならない場合と比較して、プロセッサ30による演算処理の負担軽減が可能となる。
【0151】
また、多数の測定結果を要する場合と比較して、測定時間を短縮することができる。さらに、多数の測定結果の入力を要する場合と比較して、取得処理装置14への測定結果の入力処理が軽減される。これにより、測定対象成分に関する値を効率よく算出することができる。
【0152】
また、等価回路解析を行う場合のように、高度な技術を要する等価回路の設計及び初期パラメータ値の設定などが不要となる。これにより、熟練を要しないものであっても、測定対象成分の値を安定的に取得することができる。
【0153】
また、本実施形態の処理方法は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定する処理方法である。処理方法は、所定の周波数帯域において三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得工程を含む。処理方法は、取得工程で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定工程を含む。処理方法は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する算出工程を含む。処理方法は、極値が、予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する確定工程を含む。
【0154】
さらに、本実施形態の処理プログラムは、プロセッサ30を取得処理装置14の各手段である各部50、52、54として機能させる。
【0155】
そして、本実施形態の測定システム10は、蓄電デバイス16のインピーダンスを測定するための複数の装置を有する測定システムである。測定システム10は、所定の周波数帯域において三点以上の周波数で測定された測定対象成分のインピーダンスを取得する取得部50と、取得部50で取得した三点以上のインピーダンスの実数成分又は虚数成分の極値を求める決定部51とを備える。測定システム10は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を表した近似式に基づいて測定対象成分の予測値を算出する算出部52を備える。測定システム10は、極値が、予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、極値を測定対象成分に関する測定値として確定する確定部54を備える。
【0156】
これらの処理方法、処理プログラム、及び測定システム10においても、前述した作用効果を奏することができる。
【0157】
また、本実施形態の取得処理装置14において、算出手段である算出部52は、三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分の関係を二次関数で表した近似式の頂点を予測値102として算出する。
【0158】
この構成によれば、予測値102を二次関数の頂点に基づいて算出することができる。このため、予測値102が収束するまで近似式を繰り返し演算しなければならない場合と比較して、プロセッサ30による演算処理の負担をさらに軽減することができる。
【0159】
さらに、本実施形態の取得処理装置14において、算出手段である算出部52は、取得手段である取得部50で取得した実数成分及び虚数成分の各値に基づいて二次曲線を算出し、二次曲線が突出方向に最も突出した曲点に基づいて予測値102を定める。
【0160】
この構成によれば、二次曲線において最も突出した曲点を特定することにより、この関数を頂点として予測値102を正確に定めることができる。
【0161】
また、本実施形態の取得処理装置14において、取得手段である取得部50は、予測値102が極値よりも測定対象成分のインピーダンスに近づくように突出する場合には、周波数帯域のうち予測値102に対応する予測周波数で測定された追加インピーダンスを取得する。算出手段である算出部52は、追加インピーダンスの実数成分及び虚数成分と三点以上のインピーダンスの実数成分及び虚数成分とに基づいて近似式を求め、近似式に基づいて測定対象成分の予測値を新たに算出する。確定手段である確定部54は、測定対象成分のインピーダンスに最も近い極値が、算出部52が新たに算出した予測値と同じ又は予測値よりも測定対象成分のインピーダンスに近い場合に、極値を測定値として確定する。
【0162】
この構成によれば、測定値が予測値102よりも測定対象成分のインピーダンスから遠い場合、予測値102に対応する予測周波数Faで測定された追加インピーダンスを追加して新たな予測値102で測定対象成分に関する値を確定することができる。
【0163】
また、本実施形態の取得処理装置14において、取得手段である取得部50は、予測値102の実数成分から求められる実数成分周波数Frと予測値102の虚数成分から求められる虚数成分周波数Fxとに基づいて予測周波数Faを算出する。
【0164】
この構成によれば、予測値102の実数成分から求められる実数成分周波数Frと予測値102の虚数成分から求められる虚数成分周波数Fxと二つの周波数を用いて予測周波数Faを算出する。このため、一つの周波数を用いる場合と比べて、予測周波数Faの誤差範囲を狭くすることができる。
【0165】
よって、予測周波数Faで測定される追加インピーダンスを、測定対象成分のインピーダンスの真値に近づけることが可能となる。
【0166】
さらに、本実施形態の取得処理装置14において、予測周波数Faは、実数成分周波数Frと虚数成分周波数Fxの加重平均値である。加重平均値は、実数成分周波数Fr及び虚数成分周波数Fxに、取得手段である取得部50で取得した実数成分の最大値と最小値との差分ΔR及び虚数成分の最大値と最小値との差分ΔXに基づいて重みづけした値である。
【0167】
この構成によれば、異なる周波数における実数成分の値の変化量と虚数成分の値の変化量とを考慮して予測周波数Faを求めることで、計測装置12による測定値のばらつきの影響を減らすことが可能となる。
【0168】
一例を挙げて説明すると、電解液抵抗を算出する周波数帯域において、実数成分の差分ΔRよりも虚数成分の差分ΔXが大きくなる。このため、虚数成分の値が実数成分の値よりも正確に測定された可能性が高い。よって、予測周波数Faを、前述した加重平均値とすることで、計測装置12による測定値のばらつきの影響を抑制することが可能となる。
【0169】
また、本実施形態の取得処理装置14において、蓄電デバイス16の測定対象成分は、溶液抵抗成分64を含み、測定対象成分の予測値102は、実数成分の値である。確定手段である確定部54は、三点以上のインピーダンスの実数成分の各値のうち最も小さい測定値が、予測値102と同じ又は予測値102よりも小さい場合には、測定対象成分に関する値として測定値を確定する。
【0170】
この構成によれば、溶液抵抗成分64に関する値を精度よく取得することができる。
【0171】
ここで、溶液抵抗成分64を測定できる領域は、他の領域と比較して、蓄電デバイス16を構成する等価回路において、隣合う回路素子の影響を受けにくい。このため、溶液抵抗成分に関する値の取得に適している。
【0172】
また、測定対象成分に関する値として確定した測定値は、高周波帯で測定している。このため、ケーブル抵抗成分62及び反応抵抗成分66が測定値に与える影響は相対的に小さくなる。これにより、測定対象成分に関する値として確定した測定値が溶液抵抗成分64のインピーダンスである確度は高い。
【0173】
したがって、蓄電デバイス16の電解液の成分及び濃度などの均一性の評価、又は蓄電デバイス16の電極タブの溶接の評価を、より正確に行うことが可能となる。
【0174】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0175】
10 測定システム
12 計測装置
14 取得処理装置
16 蓄電デバイス
30 プロセッサ
34 記憶部
50 取得部
52 算出部
54 確定部
64 溶液抵抗成分
66 反応抵抗成分
72 電気二重層容量成分
92 第二実測インピーダンス
100 二次曲線
102 予測値
C1、C2 電気二重層容量
Fa 予測周波数
Rsol 電解液抵抗
ΔR、ΔX 差分