IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像データ処理装置 図1
  • 特開-画像データ処理装置 図2
  • 特開-画像データ処理装置 図3
  • 特開-画像データ処理装置 図4
  • 特開-画像データ処理装置 図5
  • 特開-画像データ処理装置 図6
  • 特開-画像データ処理装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180776
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】画像データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20221130BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   G06T 3/60 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H04N1/405 512
G06T1/00 510
G06T3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087456
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】稲川 博敬
【テーマコード(参考)】
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
5B057AA11
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD03
5B057CE13
5C077LL03
5C077MP01
5C077MP08
5C077NN07
5C077NN09
5C077TT02
(57)【要約】
【課題】面積階調法においてスクリーン角を持つ網点表現を実施する場合に、設計した網点形状を崩すことなく良好な網点画像を形成する。
【解決手段】クライアント端末14の処理部113は、座標系変換処理において、色変換処理された各色のビットマップ画像の画素の座標系を、色毎の所定の角度である色毎のスクリーン角θによりそれぞれ回転させた回転座標系に変換する。処理部113は、ハーフトーニング処理において、(j,i)座標空間のビットマップ画像における各座標の画素値を、ルックアップテーブルにより取得した各座標に対応する閾値マトリクスの閾値により階調処理する。画像形成装置1の濃度パターン処理部99は、印刷ジョブの印刷データに閾値マトリクスを適用して、xy直交座標系の濃度パターンを生成する。濃度パターン処理部99が行う濃度パターン処理において、ji直交座標系の印刷データ(入力データ)がxy直交座標系に戻される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに対して、所定の角度であるスクリーン角に基づいて生成された閾値マトリクスにより中間調処理を行う画像データ処理装置であって、
前記スクリーン角に基づき前記入力画像データを回転させる座標変換を行い、
前記座標変換後の入力画像データと前記閾値マトリクスに基づいて濃度パターン法によって中間調処理を行い、
前記中間調処理を行うことで、前記入力画像データが前記座標変換前の座標に戻される
ことを特徴とする画像データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーの原画像の階調を面積階調法により表現する場合、色毎の階調画像を重ねて印刷することで印刷画像に生じるモアレを軽減するために、各色の階調画像のスクリーン角を異ならせる手法が用いられる。スクリーン角で回転させた階調画像を得る手法の一例として、特許文献1に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、印刷画像を構成するドット群を、原画像の各画素に対応する行列状の複数のます目に仮想的に区画する。各ます目には共通の基本閾値行列を割り当てる。基本閾値行列は、1つのます目に属する複数のドットに対応する複数の閾値を有している。各ます目の各ドットに基本閾値行列の対応する閾値を割り当てて、原画像に対する回転前の基本閾値マトリクスを構成する。
【0004】
基本閾値マトリクスをスクリーン角で回転させて回転閾値マトリクスとし、回転閾値マトリクスの各閾値を、回転前の各ます目における最寄りのドットに、そのドットの閾値の近似値としてそれぞれ割り当てる。回転前のます目の各ドットに閾値をそれぞれ割り当てたものを閾値マトリクスとして原画像に適用することで、スクリーン角で回転させた原画像の階調画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-239567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術における基本閾値マトリクスと回転閾値マトリクスとでは、ドットの配列方向が異なる。どちらかの閾値マトリクスにおけるドット配列方向を基準にすると、基本閾値マトリクスのドット周期と回転閾値マトリクスのドット周期とは異なる周期となる。回転閾値マトリクスにおける基本閾値行列の境界が、スクリーン角で回転させた階調画像における網点となるドット上に配置されると、階調画像の網点形状がいびつになったり、基本閾値行列(ます目)の単位サイズ由来の周期性が階調画像に現われる懸念が生じる。これらの懸念が現実化すると、良好な網点処理の品質が得られなくなる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、面積階調法においてスクリーン角を持つ網点表現を実施する場合に、設計した網点形状を崩すことなく良好な網点画像を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様による画像データ処理装置は、
入力画像データに対して、所定の角度であるスクリーン角に基づいて生成された閾値マトリクスにより中間調処理を行う画像データ処理装置であって、
前記スクリーン角に基づき前記入力画像データを回転させる座標変換を行い、
前記座標変換後の入力画像データと前記閾値マトリクスに基づいて濃度パターン法によって中間調処理を行い、
前記中間調処理を行うことで、前記入力画像データが前記座標変換前の座標に戻される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面積階調法においてスクリーン角を持つ網点表現を実施する場合に、設計した網点形状を崩すことなく良好な網点画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像データ処理システムの概略構成を模式的に示す説明図である。
図2図2は、原画像の階調を濃度パターン法で表現する場合の階調処理の概要を模式的に示す説明図である。
図3図3は、原画像の階調をディザ法で表現する場合の階調処理の概要を模式的に示す説明図である。
図4図4は、図1のクライアント端末のプリンタドライバの処理部が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図1の画像形成装置のCPUの濃度パターン処理部が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、図1の画像形成装置の濃度パターン処理部が濃度パターン処理を行う際に用いられる閾値マトリクスの一例を示す説明図である。
図7図7は、図1の画像形成装置のプリンタ部が印刷するxy直交座標系の画像上に配列したji直交座標系の濃度パターンの単位閾値マトリクスに関するインデックスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像データ処理システムをプリンタネットワークシステムで構成した場合の、システム全体の概略構成を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のプリンタネットワークシステムは、画像形成装置1とクライアント端末14とを有している。本発明の実施形態に係る、入力画像データに対して閾値マトリクスにより中間調処理を行う画像データ処理装置は、画像形成装置1及びクライアント端末14によって構成することができる。
【0015】
クライアント端末14は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、外部インタフェース部15を介してローカルエリアネットワークLANに接続されている。クライアント端末14は、ROM17に格納された制御プログラムに基づいて各種の処理を実行するCPU16を有している。
【0016】
CPU16には、ワーキングエリアとして機能するRAM18と、キーボードやマウス等から構成される入力部19と、液晶ディスプレイ等から構成される出力部20と、外部記憶装置21とが接続されている。
【0017】
外部記憶装置21は、カラープロファイル記憶部22及びディザマトリクス記憶部23を含んでいる。外部記憶装置21は、例えば、SSD(Solid State Drive )又はHDD(Hard Disk Drive )等を用いて構成することができる。外部記憶装置21の記憶内容は後述する。
【0018】
CPU16は、外部記憶装置21に格納されたアプリケーションプログラムで生成された原稿データの印刷要求が入力部19から入力されると、外部記憶装置21に格納されたプリンタドライバプログラムを起動させてプリンタドライバ110をCPU90に仮想的に構築する。
【0019】
CPU90に構築されたプリンタドライバ110は、後述するリッピング処理部111の機能を実現する。リッピング処理部111は、データ入力部112、処理部113及びリップ(RIP:Raster Image Processor)データ出力部114を含んでいる。リッピング処理部111が行う処理により、プリンタドライバ110は、入力された印刷要求に対応する原稿データの印刷ジョブを生成し、その印刷ジョブを外部インタフェース部15から制御ユニット10の外部インタフェース部11に出力する。リッピング処理部111が行う処理の詳細は後述する。
【0020】
図1に示す画像形成装置1は、スキャナ部101と、プリンタ部102と、各種表示入力用の操作部103と、全体制御用の制御ユニット10とを備えている。
【0021】
スキャナ部101は、例えば、原稿トレーに載せた原稿をオートフィーダによって1枚ずつ取り込み、例えば、CIS(Contact Image Sensor)等の原稿読取部により原稿上の原稿画像を読み取って画像信号を出力することができる。
【0022】
プリンタ部102は、スキャナ部101から出力された画像信号に基づいて制御ユニット10が自ら生成した印刷ジョブ、あるいは、クライアント端末14から入力された印刷ジョブにより、不図示の用紙(所定の媒体)に画像を形成(印刷)することができる。
【0023】
プリンタ部102は、本実施形態では、インクジェット方式のプリンタエンジンを有している。プリンタ部102は、C(シアン)用,K(ブラック)用,M(マゼンタ)用,Y(イエロー)用の各色のインクを印刷剤として用いる各色別のインクジェットヘッドを有している。各色のインクジェットヘッドは、印刷画像に応じたパターンでインク液滴を吐出する複数のノズルを有している。
【0024】
プリンタ部102は、各色のインクジェットヘッドのノズルが吐出する各色のインク液滴により、所定の印刷解像度の印刷画像を用紙上に形成することができる。
【0025】
プリンタ部102は、フルカラー印刷対応のプリンタエンジンに限らず、単色又は多色での印刷に対応したものであってもよい。また、プリンタ部102は、電子写真方式等、インクジェット方式以外の方式によるプリンタエンジンとしてもよい。
【0026】
操作部103は、タッチパネル付きのディスプレイと複数のキーボタンとを有している。ユーザは、ディスプレイに表示されたタッチキーにタッチしたり、キーボタンを押圧操作することによって、各種の入力を行うことができる。
【0027】
制御ユニット10は、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、操作部103のディスプレイから入力設定される内容に応じたスキャナ部101やプリンタ部102の動作を制御する。
【0028】
CPU90には、外部インタフェース部11及びローカルエリアネットワークLANを介して、クライアント端末14の外部インタフェース部15が接続されている。
【0029】
制御ユニット10は、原稿画像の印刷ジョブをクライアント端末14から受け取り、受け取った印刷ジョブによる原稿画像の画像データを印刷用階調データに変換し、これに基づいて、原稿画像の用紙に対する印刷をプリンタ部102において実行させることができる。
【0030】
制御ユニット10には、CPU90のワーキングエリアとして機能するRAM92と、各種ファームウェアやデータの格納に用いられる外部記憶装置93とが設けられている。
【0031】
CPU90は、ROM91に格納されたプログラムを実行することで、CPU90の内部に、記録データ生成部97を仮想的に構築することができる。記録データ生成部97は、リップデータ入力部98、濃度パターン処理部99及び記録データ出力部100を含んでいる。記録データ生成部97が行う処理の詳細は後述する。
【0032】
外部記憶装置93は、濃度パターンマトリクス記憶部94を含んでいる。外部記憶装置93は、例えば、SSD(Solid State Drive )又はHDD(Hard Disk Drive )等を用いて構成することができる。外部記憶装置93の記憶内容は後述する。
【0033】
クライアント端末14が出力する印刷ジョブの原画像の階調を、画像形成装置1のプリンタ部102が閾値マトリクスを用いたハーフトーニング処理により表現して、用紙に画像を印刷する場合、閾値マトリクスを用いたハーフトーニング処理の代表的な方式として、濃度パターン法又はディザ法を用いることができる。図2及び図3に、濃度パターン法及びディザ法による階調処理の概要をそれぞれ示す。図2及び図3では、説明を容易にするため、2値記録の場合を示している。
【0034】
図2の濃度パターン法及び図3のディザ法とも、入力画像の画素値と予め用意しておいた閾値マトリクスの値とを比較して、ドットの有無を決定する方法である。
【0035】
図3のディザ法では、原画像のデータにおける入力画素の1画素は、印刷画像のデータにおける出力画素の1画素に対応する。即ち、入出力画素間での解像度のコンバートは発生しない。
【0036】
一方、図2の濃度パターン法では、原画像のデータにおける入力画素の1画素を、印刷画像のデータにおける複数の出力画素に対応させる。濃度パターン法では、原画像のデータサイズがM×N画素(図2の例では4×4画素)の場合、印刷画像のデータの解像度が、原画像のデータの解像度のM×N倍(図2の例では4×4=16倍)にアップコンバートされる。
【0037】
図2の濃度パターン法を使用することで、図1の画像形成装置1において解像度の高い画像を印刷する場合でも、リッピング処理してクライアント端末14から画像形成装置1に出力する印刷ジョブの画像データの解像度を落とすことができる。印刷ジョブの画像データの解像度を落とすことで、クライアント端末14におけるリッピング処理の負荷と印刷ジョブの送信データ量とを減らす効果が期待できる。
【0038】
但し、画像形成装置1において、入力された印刷ジョブの画像データから階調画像を生成する際、特に、カラー画像の各色の階調画像を重ねて印刷すると、階調画像間のずれによるモアレの発生の懸念がある。本実施形態では、クライアント端末14及び画像形成装置1の双方で、画像データに関する処理に工夫を加えることで、良好な網点画像を印刷画像として得るようにしている。
【0039】
本実施形態では、特に、クライアント端末14のリッピング処理部111と、画像形成装置1の記録データ生成部97とに、画像データに関する処理の工夫が加えられている。以下、加えられた工夫の内容を中心に、クライアント端末14及び画像形成装置1において行われる処理の内容について説明する。
【0040】
例えば、クライアント端末14において、アプリケーションプログラムにより原稿データが生成されると、プリンタドライバ110のリッピング処理部111に入力される。リッピング処理部111では、データ入力部112に入力された原稿データが、処理部113において、ラスタライズ処理、色変換処理、座標系変換処理及びハーフトーニング処理(階調処理)される。
【0041】
処理部113は、ラスタライズ処理、色変換処理、座標系変換処理及びハーフトーニング処理を、例えば、図4のフローチャートに示す手順で行うことができる。但し、図4の手順は一例であり、図4のフローチャートを構成する処理が統合あるいは分割されたり、順番が前後しても、最終的に同様な出力結果が得られるのであれば差し支えない。
【0042】
ステップS11のラスタライズ処理では、処理部113は、データ入力部112に入力された原稿データをラスタイメージに展開し、各色の画素値を8ビット深度としたRGB(赤、緑、青)のビットマップ画像を生成する。処理部113が生成するビットマップ画像の解像度は、後述するハーフトーニング処理による画像記録の際に適用する網点の線数L程度、あるいは、線数L以上の画素密度となる解像度とする。
【0043】
処理部113は、ステップS13の色変換処理を、外部記憶装置21のカラープロファイル記憶部22に記憶された、画像形成装置1の色再現特性に応じたカラープロファイルのルックアップテーブル(LUT)を用いて行う。カラープロファイルのルックアップテーブルは、ROM17又はRAM18に記憶させてもよい。
【0044】
処理部113は、色変換処理において、ラスタライズ処理で生成した8ビット深度のRGBのビットマップ画像を、8ビット深度のCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のビットマップ画像に変換する。
【0045】
ステップS15の座標系変換処理では、処理部113は、所定の角度であるスクリーン角θに基づき、データ入力部112に入力された入力画像データを回転させる座標変換を行う。
【0046】
処理部113は、座標系変換処理において、ステップS13で色変換処理された各色のビットマップ画像の画素の座標系を、色毎の所定の角度である色毎のスクリーン角θによりそれぞれ回転させた回転座標系に変換する。CMYKの各スクリーン角θは、ハーフトーニング後の各色の階調画像を重ねて印刷することで印刷画像に生じるモアレを軽減するために、色別にずらした値にそれぞれ設定することができる。本実施形態では、CMYKの各スクリーン角θを、15°、75°、0°、45゜としている。
【0047】
処理部113は、座標系変換処理において、各色のビットマップ画像の基底となる座標系を、回転前のxy直交座標系からスクリーン角θによる回転後のji直交座標系に変換する。ビットマップ画像は、回転前後の画素密度差等に基づき、必要に応じて、座標系の変換の際に拡大又は縮小する。この座標系変換処理は、クライアント端末14のリッピング処理部111において行う処理の中で工夫を加えた、最も特徴的な処理である。
【0048】
座標系変換処理により、処理部113は、スクリーン角θで回転させたビットマップ画像を生成することができる。スクリーン角θで回転させたビットマップ画像は、ji直交座標系のグリッド(ます目)に沿って配列した画素を有する画像となる。
【0049】
座標系変換処理は、例えば、アフィン変換によるビットマップ画像の回転処理後にリサイズ処理によるビットマップ画像の拡大又は縮小を行うことで、実現することができる。あるいは、ji直交座標系のグリッドを生成して回転前のビットマップ画像に重ね合わせ、公知の画素値の再計算方法を用いてji直交座標系の各画素の画素値をそれぞれ計算することで、座標系変換処理を実現することもできる。画素値の公知の再計算方法としては、例えば、ji直交座標系の各画素の周辺に配置されたxy直交座標系の4つの画素の画素値を平均して、ji直交座標系の各画素の画素値とする4点平均法を用いることができる。
【0050】
処理部113は、ステップS17のハーフトーニング処理を、外部記憶装置21のディザマトリクス記憶部23に記憶された、ディザ法や誤差拡散法等の面積階調制御ロジックで用いる閾値マトリクスのルックアップテーブル(LUT)を用いて行う。閾値マトリクスのルックアップテーブルは、ROM17又はRAM18に記憶させてもよい。
【0051】
ステップS17のハーフトーニング処理では、処理部113は、座標変換後の入力画像データと閾値マトリクスに基づいて、ディザ法又は誤差拡散法等の面積階調制御によって中間調処理を行う。
【0052】
処理部113は、ハーフトーニング処理において、ディザ法や誤差拡散法等の面積階調制御ロジックを(j,i)座標空間に適用する。具体的には、処理部113は、(j,i)座標空間のビットマップ画像における各座標の画素値を、ルックアップテーブルにより取得した各座標に対応する閾値マトリクスの閾値により階調処理する。処理部113は、ハーフトーニング処理を行うことで、各色の回転後のビットマップ画像を、元の階調数(ビットマップ画像の階調数=8ビット=256階調)よりも低い階調数に減色する。
【0053】
減色後の階調数は、{(記録階調数-1)×m^2×n^2}+1階調となる。ここで、記録階調数は、画像形成装置1において用紙に印刷する画像の階調数のことである。m,nは、ハーフトーニング処理に用いる閾値マトリクスの行列数である。行列数m,nは、例えば、次の式(1)でそれぞれ計算することができる。記録解像度Rは、画像形成装置1において用紙に印刷する画像の解像度のことである。
【0054】
【数1】
【0055】
処理部113が各処理を行った後の各色の原稿データは、図1のリップデータ出力部114からリップデータとして出力される。プリンタドライバ110は、リップデータ出力部114が出力した各色の原稿データを含む印刷ジョブを生成する。プリンタドライバ110が生成した印刷ジョブは、外部インタフェース部15がローカルエリアネットワークLANを介して画像形成装置1に送信する。
【0056】
画像形成装置1の外部インタフェース部11が、ローカルエリアネットワークLANを介してクライアント端末14からの印刷ジョブを受信すると、CPU90の記録データ生成部97に入力される。記録データ生成部97では、リップデータ入力部98に入力された印刷ジョブの原稿データが、濃度パターン処理部99において、閾値マトリクス配置処理及び濃度パターン処理される。
【0057】
濃度パターン処理部99は、閾値マトリクス配置処理及び濃度パターン処理を、例えば、図5のフローチャートに示す手順で行うことができる。但し、図5の手順は一例であり、図5のフローチャートを構成する処理が統合あるいは分割されたり、順番が前後しても、最終的に同様な出力結果が得られるのであれば差し支えない。
【0058】
ステップS21の閾値マトリクス配置処理では、濃度パターン処理部99は、原画像を印刷する際にプリンタ部102に出力する印刷データのxy直交座標系のグリッド(ます目)上に、後述する濃度パターン処理において用いるji直交座標系の閾値マトリクスのインデックス(j,i)を対応づける。
【0059】
ji直交座標系の閾値マトリクスは、濃度パターン処理部99が閾値マトリクス配置処理を行う度に、線数Lとスクリーン角θと記録解像度Rの値から計算して作成してもよい。また、ji直交座標系の閾値マトリクスをあらかじめ作成して外部記憶装置93等に登録しておき、濃度パターン処理部99が閾値マトリクス配置処理を行う際に外部記憶装置93等から読み出してもよい。印刷する画像がカラー画像の場合、ji直交座標系の閾値マトリクスは、各色に対応するスクリーン角θの個別の閾値マトリクスとなる。
【0060】
濃度パターン処理部99は、ステップS23の濃度パターン処理を、外部記憶装置93の濃度パターンマトリクス記憶部94に記憶された、画像形成装置1の階調再現特性に応じた閾値マトリクスのルックアップテーブル(LUT)を用いて行う。閾値マトリクスのルックアップテーブルは、ROM91又はRAM92に記憶させてもよい。
【0061】
濃度パターン処理部99は、濃度パターン処理において、濃度パターン処理を実施し、プリンタ部102に出力するxy直交座標系の印刷データを生成する。
【0062】
具体的には、濃度パターン処理部99は、濃度パターン処理において、リップデータ入力部98に入力された印刷ジョブのji直交座標系の印刷データ(入力データ)に、ji直交座標系の閾値マトリクスを適用して、xy直交座標系の濃度パターンを生成する。xy直交座標系の濃度パターンは、CMYKの各色についてそれぞれ生成する。
【0063】
濃度パターン処理部99が行う濃度パターン処理において、中間調処理を行った入力画像データは、前記座標変換前のxy直交座標系に変換される。
【0064】
この座標変換により、濃度パターン処理後にプリンタ部102に印刷データとして出力される濃度パターンは、プリンタ部102において用紙に印刷される画像を構成するxy直交座標系のドットデータとなる。この座標系変換を伴う濃度パターン処理部99の処理は、画像形成装置1の記録データ生成部97において行う処理の中で工夫を加えた、最も特徴的な処理である。
【0065】
濃度パターン処理部99が各処理を行った後の各色の濃度パターンは、図1の記録データ出力部100からプリンタ部102に印刷データとして出力される。
【0066】
記録データ生成部97は、リップデータ入力部98に入力された印刷ジョブの各色の原稿データを一旦全てメモリにロードして、各部98~100に処理をそれぞれ実行させてもよい。記録データ生成部97は、リップデータ入力部98に入力された印刷ジョブの各色の原稿データを、ji直交座標系又はxy直交座標系の任意方向に走査して、各部98~100に処理を逐次実行させてもよい。
【0067】
本実施形態では、プリンタ部102においてカラー画像を印刷する場合について説明したが、プリンタ部102において単色の画像を印刷する場合にも、以上に説明したのと同様の処理を記録データ生成部97に実行させることができる。
【0068】
図6には、濃度パターン処理部99が閾値マトリクス配置処理を行う度に実際に作成した、濃度パターンのji直交座標系の閾値マトリクスの例を示す。この例では、記録解像度R[dpi]を網点の線数L[lpi]の7.5倍とし、網点のスクリーン角θは60゜とした。このマトリクスの中に含まれる記録画素数は、
m^2+n^2=6^2+4^2=52
なので、画像形成装置の記録階調数をg=2とすると、
{(g-1)×m^2+n^2}+1=1×52+1=53[階調]
の濃度表現が、この濃度パターンで可能となる。
【0069】
図7には、図6のji直交座標系の閾値マトリクスで濃度パターン処理されたji直交座標系の濃度パターンの単位閾値マトリクスを、図1のプリンタ部102が用紙に印刷するxy直交座標系の画像(記録画像)上に配列した様子を図示したものである。用紙に印刷される画像のxy直交座標系上に配列された画素が、ji直交座標系のji座標軸方向に連続して配置される濃度パターンの単位閾値マトリクスによって領域分けされる。
【0070】
図7中の鉛直及び水平方向のグリッド線が、プリンタ部102が印刷する画像の画素配列を表し、xy直交座標系で基底がとられている。一方、閾値マトリクスの並びは、xy直交座標系からスクリーン角θだけ回転したji直交座標系が基底にとられている。図中には、閾値マトリクスのインデックス番号(j,i)を示している。
【0071】
xy直交座標系からji直交座標系への変換は、例えば、次の式(2)によって行うことができる。
【0072】
【数2】
【0073】
ji直交座標系からxy直交座標系への変換は、例えば、次の式(3)によって行うことができる。
【0074】
【数3】
【0075】
式(2)及び式(3)におけるx_ji,y_jiは、インデックス番号(j,i)の濃度パターンの左上のピクセル座標(図6で示した閾値マトリクスの例では、閾値52の画素の座標)を表す。
【0076】
xy直交座標系のデータは、xy座標軸方向に沿った矩形領域に配列されたデータとなるが、ji直交座標系のデータは、スクリーン角θが導入されているため、必ずしも矩形形状がji座標軸方向と直交しない。
【0077】
しかしながら、ji座標系のデータの要素数は高々
ceiling{(X/L)+1}×ceiling{(Y/L)+1}
であるので、要素の格納順のルールを定めておけば、これだけの要素数の配列を用意すれば十分である。
【0078】
なお、式中のX,Yは、図1のプリンタ部102が用紙に印刷するxy直交座標系の画像(記録画像)の横方向(X軸方向)及び縦方向(Y軸方向)の画素数を表す。また、ceiling{}は天井関数を表す。
【0079】
以上に説明した本実施形態のプリンタネットワークシステムでは、クライアント端末14が出力する印刷ジョブを画像形成装置1が実行して画像を印刷する一連の流れの中で、入力画像データをスクリーン角θに回転させてから、濃度パターン法によって画像データを基の角度に戻しながら中間調処理する。この処理により、スクリーン角θを持った濃度パターン法を実行することが可能となる。
【0080】
濃度パターン法においてスクリーン角θを持つ網点表現を実施する場合に、設計した網点形状を崩すことなく良好な網点画像を形成できる。濃度パターン法を用いるので画像の中間データ量が抑制され、記録解像度が高いシステムにおいてもハードウェア性能を過剰に引き上げることなく印刷データを高速に処理することができる。
【0081】
なお、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0082】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0083】
即ち、一つの態様の発明として、
入力画像データに対して、所定の角度であるスクリーン角に基づいて生成された閾値マトリクスにより中間調処理を行う画像データ処理装置であって、
前記スクリーン角に基づき前記入力画像データを回転させる座標変換を行い、
前記座標変換後の入力画像データと前記閾値マトリクスに基づいて濃度パターン法によって中間調処理を行い、
前記中間調処理を行うことで、前記入力画像データが前記座標変換前の座標に戻される
ことを特徴とする画像データ処理装置が開示される。
【0084】
そして、上記態様による発明によれば、面積階調法においてスクリーン角を持つ網点表現を実施する場合に、設計した網点形状を崩すことなく良好な網点画像を形成できる。
【符号の説明】
【0085】
1 画像形成装置(画像データ処理装置)
10 制御ユニット
14 クライアント端末(画像データ処理装置)
22 カラープロファイル記憶部
23 ディザマトリクス記憶部
94 濃度パターンマトリクス記憶部
97 記録データ生成部
98 リップデータ入力部
99 濃度パターン処理部
100 記録データ出力部
102 プリンタ部
110 プリンタドライバ
111 リッピング処理部
112 データ入力部
113 処理部
114 リップデータ出力部
θ スクリーン角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7