(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180779
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】三次元測量システム及びその基準器
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G01C15/00 105R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087461
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】521176743
【氏名又は名称】有限会社フリースケール
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩一
(57)【要約】
【課題】 使い勝手を高め、測量対象物に最適となるシステム構成を柔軟に構築するとともに、全体の小型コンパクト化及び省スペース化、更には低コスト化を実現する。
【解決手段】 三次元レーザスキャナー2と、この三次元レーザスキャナー2を車両ボディCbに固定可能な車両固定部3と、車両ボディCbに着脱式に固定可能な着脱部(4c…)…を有する着脱固定部4…,三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部5…を配した内側を中空に形成した半球状部6sを有するターゲット6…,及びこのターゲット6…を支持するとともに、着脱固定部4…により支持される支持ポール部7…を有する複数の基準器B…を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元レーザスキャナーとこの三次元レーザスキャナーによりスキャニングされる複数の基準器を備える三次元測量システムにおいて、三次元レーザスキャナーと、この三次元レーザスキャナーを車両ボディに固定可能な車両固定部と、前記車両ボディに着脱式に固定可能な着脱部を有する着脱固定部,前記三次元レーザスキャナーにスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部を配した内側を中空に形成した半球状部を有するターゲット,及びこのターゲットを支持するとともに、前記着脱固定部により支持される支持ポール部を有する複数の基準器を備えることを特徴とする三次元測量システム。
【請求項2】
前記車両固定部は、車両ルーフに取付けるルーフキャリアを用いることを特徴とする請求項1記載の三次元測量システム。
【請求項3】
前記着脱部は、少なくとも一つのマグネットを備えることを特徴とする請求項1記載の三次元測量システム。
【請求項4】
三次元レーザスキャナーによりスキャニングされる三次元測量システムの基準器において、車両ボディに着脱式に固定可能な着脱部を有する着脱固定部,前記三次元レーザスキャナーにスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部を配した内側を中空に形成した半球状部を有するターゲット,及びこのターゲットを支持するとともに、前記着脱固定部により支持される支持ポール部を備えてなることを特徴とする三次元測量システムの基準器。
【請求項5】
前記着脱部は、少なくとも一つのマグネットを備えることを特徴とする請求項4記載の三次元測量システムの基準器。
【請求項6】
前記ターゲットは、前記半球状部における、球面側を背面にし、かつ開口側を正面にするとともに、当該半球状部の上面部と下面部を正面方向へ突出形成し、前記上面部と前記下面部を通る球面中心線上に配する前記支持ポール部により、前記下面部に形成した軸受孔部と前記上面部に設けた軸受凹部により回動可能に支持してなることを特徴とする請求項4又は5記載の三次元測量システムの基準器。
【請求項7】
前記着脱固定部は、前記支持ポール部の高さ位置を調整可能な高さ調整機構部を備えることを特徴とする請求項4,5又は6記載の三次元測量システムの基準器。
【請求項8】
前記着脱固定部は、前記支持ポール部の角度を調整可能な角度調整機構部を備えることを特徴とする請求項4-7のいずれかに記載の三次元測量システムの基準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元レーザスキャナーとこの三次元レーザスキャナーによりスキャニングされる複数の基準器を備える三次元測量システム及びその基準器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元レーザスキャナーとこの三次元レーザスキャナーによりスキャニングされる複数の基準器を備える三次元測量システムは普及しており、この種の測量システムとしては、特許文献1に記載される三次元計測システム及び特許文献2に記載される地形計測装置が知られている。
【0003】
特許文献1の三次元計測システムは、誤差を極めて小さい値とすることができる三次元計測システムの提供を目的としたものであり、具体的には、三次元レーザスキャナと、三次元レーザスキャナによって観測される少なくとも2つの既知の座標点上に設置されるターゲットであって、円形気泡管と筒状気泡管とを有する整準台上に設置されるターゲットと、を備える三次元計測システムであり、使用時に、三次元レーザスキャナと2つのターゲットの距離が、それぞれ10m以上120m以下となるように、かつ、三次元レーザスキャナと2つのターゲットのなす内角が、それぞれ30度以上150度以下.ヒなるようにターゲットを設置するようにしたものである。また、特許文献2の地形計測装置は、三次元レーザスキャナーを用いた地形計測で、計測位置の移動を容易にして、地形計測作業の作業性を向上させることを目的とするものであり、具体的には、三次元レーザスキャナーの走査領域に位置し、計測のための基準点を構成する少なくとも3個のターゲットを該三次元レーザスキャナーと一体に配置し、各ターゲットと一体にGPSアンテナを配置するとともに、GPSアンテナで受信した衛星波に基づいて、各ターゲットの現地座標を演算し、三次元レーザスキャナーで取得した計測点の計測データを、現地座標に基づき現地座標データに変換すると共に、各現地座標データを合成して、レンダリング画像を生成するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-054396号公報
【特許文献2】特開2004-125452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における三次元測量システム及び基準器は、次のような問題点があった。
【0006】
即ち、特許文献1に記載されるような基本的な計測システムは、三次元レーザスキャナーと複数のターゲット(基準器)を組合わせて使用する。使用時には、地面上に三次元レーザスキャナーを三脚等により設置し、その周辺に所定間隔をおいて、複数のターゲットを三脚等により設置する方法が採用される。この結果、計測時には、その都度、三次元レーザスキャナーや複数のターゲットを設置する必要があるとともに、この手法は、データの取れ高が少なくなるため、機材の設置回数も多くなり、かなりの時間と労力が費やされる。また、計測とは別に、基準点測量(X軸,Y軸,Z軸の測量)が必要になるため、設置時の調整等を含めた場合の更なる時間と労力が無視できない。加えて、舗装されていない地面などの場合には、安定した設置を行うことができない。
【0007】
一方、この課題に鑑み、特許文献2は、三次元レーザスキャナーと複数のターゲットをフレームに取付けることにより全体をユニットとして構成し、このユニットを車両に固定することにより移動を容易にしたものであるが、フレームを含む全体をユニットとして構成するため、ユニット全体が大型化するとともに、使い勝手に難がある。しかも、GPSアンテナを配置することによりGPSを用いたシステム構成となるため、ターゲットを含むシステム全体のコストアップも無視できない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した三次元測量システム及びその基準器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る三次元測量システムAは、上述した課題を解決するため、三次元レーザスキャナー2とこの三次元レーザスキャナー2によりスキャニングされる複数の基準器B(Ba,Bb,Bc…)を備える測量システムを構成するに際して、三次元レーザスキャナー2と、この三次元レーザスキャナー2を車両ボディCbに固定可能な車両固定部3と、車両ボディCbに着脱式に固定可能な着脱部(4c…)…を有する着脱固定部4…,三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部5…を配した内側を中空に形成した半球状部6s…を有するターゲット6…,及びこのターゲット6…を支持するとともに、着脱固定部4…により支持される支持ポール部7…を有する複数の基準器B…を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る基準器Bは、上述した課題を解決するため、三次元レーザスキャナー2によりスキャニングされる三次元測量システムの基準器Bを構成するに際して、車両ボディCbに着脱式に固定可能な着脱部4c…を有する着脱固定部4,三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部5を配した内側を中空に形成した半球状部6sを有するターゲット6,及びこのターゲット6を支持するとともに、着脱固定部4により支持される支持ポール部7を備えてなることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、三次元測量システムAにおいて、車両固定部3は、車両ルーフCrに取付けるルーフキャリアCcを用いることができる。一方、基準器Bにおいて、着脱部4c…は、少なくとも一つのマグネット4mc…を設けて構成できる。さらに、ターゲット6は、半球状部6sにおける、球面側を背面部6rにし、かつ開口側を正面部6fにするとともに、当該半球状部6sの上面部6uと下面部6dを正面方向Ffへ突出形成し、上面部6uと下面部6dを通る球面中心線Lc上に配する支持ポール部7により、下面部6dに形成した軸受孔部12と上面部6uに設けた軸受凹部13により回動可能に支持することにより構成できる。なお、着脱固定部4には、支持ポール部7の高さ位置を調整可能な高さ調整機構部15及び/又は支持ポール部6の角度を調整可能な角度調整機構部16を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る三次元測量システムA及びその基準器Bによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 三次元測量システムAを設置するに際して、一台の車両における車両ボディCb全体を利用して、三次元レーザスキャナー2及び各基準器B…を自在に配置できるため、使い勝手を高めることができるとともに、測量対象物に最適となるシステム構成を柔軟に構築することができる。
【0014】
(2) 三次元測量システムAの設置に際し、三次元レーザスキャナー2と必要数の基準器B…を用意すれば足り、フレーム等のユニット化(一体化)する部材が不要となるため、全体の小型化及び省スペース化を図ることができる。しかも、基準器B…により、X軸,Y軸,Z軸の測量も容易に行うことができるため、GPS等の他の測量手段が不要となり、小型コンパクト化及び低コスト化を実現できるとともに、携帯性,保管性及び取扱性にも優れる。
【0015】
(3) 好適な態様により、三次元測量システムAに用いる車両固定部3として、車両ルーフCrに取付けるルーフキャリアCcを用いれば、このルーフキャリアCcに直接取付けたり、或いは支持台(支持プレート)等を介して取付けることもできるため、三次元レーザスキャナー2の取付けを、容易,確実かつ安定に取付けることができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、着脱固定部4の着脱部4c…として、少なくとも一つのマグネット4mc…を設けて構成すれば、車両ボディCbへの着脱手段として最も扱い易いマグネット4mc…を利用できるため、着脱部4c…を構成する最適な形態として実施することができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、基準器Bのターゲット6として、半球状部6sにおける、球面側を背面部6rにし、かつ開口側を正面部6fにするとともに、当該半球状部6sの上面部6uと下面部6dを正面方向Ffへ突出形成し、上面部6uと下面部6dを通る球面中心線Lc上に配する支持ポール部7により、下面部6dに形成した軸受孔部12と上面部6uに設けた軸受凹部13により回動可能に支持するように構成すれば、測量時に使用する三次元レーザスキャナー2のターゲット6として利用できることに加え、X軸,Y軸,Z軸の基準点の計測に使用する他の基準点計測器(他の三次元レーザスキャナー)等のターゲットとしても兼用して利用することができるなどの利便性に優れる。
【0018】
(6) 好適な態様により、基準器Bの着脱固定部4に、支持ポール部7の高さ位置を調整可能な高さ調整機構部15を設ければ、車両ボディCbにおける様々な位置に対応して、ターゲット6の高さを調整できるため、最適な高さ設定を行うことができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、基準器Bの着脱固定部4に、支持ポール部6の角度を調整可能な角度調整機構部16を設ければ、車両ボディCbにおける様々な位置に対応して、ターゲット6の角度を調整できるため、最適な角度設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る三次元測量システムを車両ボディに設置した状態を示す正面図、
【
図2】本発明の好適実施形態に係る基準器の正面図、
【
図6】同三次元測量システムを含むシステム全体のデータ処理系統図、
【
図7】同三次元測量システムの使用時における処理手順を順を追って説明するためのフローチャート、
【
図8】同三次元測量システムの測量時の原理説明図、
【
図9】同三次元測量システムの基準点計測時の原理説明図、測量時の説明図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る三次元測量システムAを構成する主要機材について、
図1-
図6を参照して説明する。
【0023】
三次元測量システムAは、基本的なシステム構成として、
図1に示すように、三次元レーザスキャナー2,及び三つの基準器B…(Ba,Bb,Bc)を備えるとともに、これらの機材を設置する車両Cを備える。車両Cとしては、特定の車両Cに限定するものではないが、少なくとも、車両ルーフCr及び前方に突出したボンネットChを有する車両ボディCbを備える車両Cが望ましい。
【0024】
三次元レーザスキャナー2は、レーザ光を360゜にわたって高速で照射し、反射光を受光することにより形状を認識する三次元レーザスキャナーであれば、市販されている各種の三次元レーザスキャナー2を利用することができる。また、この三次元レーザスキャナー2を車両ボディCbに固定可能な車両固定部3を備える。車両固定部3には、車両ルーフCrに取付けるルーフキャリアCcを用いることができ、例示の場合、
図1に示すように、ルーフキャリアCcの上に平坦な上面を有する支持台(支持プレート)21を設置した。
【0025】
このように、三次元測量システムAに用いる車両固定部3として、車両ルーフCrに取付けるルーフキャリアCcを用いれば、このルーフキャリアCcに直接取付けたり、或いは支持台(支持プレート)等を介して取付けることもできるため、三次元レーザスキャナー2の取付けを、容易,確実かつ安定に取付けることができる。
【0026】
三つの基準器B…(Ba,Bb,Bc)には、同一の基準器Bを用いることができる。したがって、同一の基準器Bを三台用意し、各基準器B…を、第一の基準器Ba,第二の基準器Bb,第三の基準器Bcとして使用する。
【0027】
基準器Bは、
図2-
図5に示すように、車両ボディCbに着脱式に固定可能な着脱部4c…を有する着脱固定部4,三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部(ピンポールプリズム部)5を配した内側を中空に形成した半球状部6sを有するターゲット6,及びこのターゲット6を支持するとともに、着脱固定部4により支持される支持ポール部7を備えて構成する。
【0028】
この場合、着脱固定部4は、
図2-
図4に示すように、上側に配した上プレート31と下側に配した下プレート32を備える。上プレート31と下プレート32は、
図3に示すように、それぞれ平面視を正三角形状に形成し、三つの角部付近に形成した孔部を、三本の全ねじロッドを用いた支持シャフト33,34,35により連結する。この際、上プレート31の孔部には、各支持シャフト33…の上端部を、上下に配した一対のナットにより固定するとともに、下プレート32の孔部には、各支持シャフト33…の中間位置を挿通させ、上下に配した一対の調整ナット36uと36d…により、各支持シャフト33…を固定する。
【0029】
各支持シャフト33…の下部は、下プレート32の下方へ突出させ、
図4に示すように、下端を、自在継手37…の上端側にネジ結合部38…を介して結合するとともに、自在継手37…の下端側は、下端にマグネット4mc…を有する脚部39…として構成する。
この場合、マグネット4mc…には、できるだけ強力なマグネットを選定するとともに、脚部39…の下端は横方へズレないように処理又は摩擦材等を取付けることが望ましい。これにより、支持シャフト33…の下端位置の高さはネジ結合部38…により調整できるとともに、各脚部39…は、自在継手37…の上端側に対し、仮想線で示す脚部39のように、自在に角度調整できる。
【0030】
三本の脚部39…の下端に設けられる三つのマグネット4mc…は、着脱固定部4の着脱部4c…を構成する。このように、着脱固定部4の着脱部4c…として、少なくとも一つのマグネット4mc…を設けて構成すれば、車両ボディCbへの着脱手段として最も扱い易いマグネット4mc…を利用できるため、着脱部4c…を構成する最適な形態として実施することができる。これにより、着脱固定部4が構成される。
【0031】
さらに、上プレート31と下プレート32の各中心位置には、
図3及び
図4に示すように、支持ポール部7を支持する支持孔31c,32cを形成する。そして、支持ポール部7の中間位置は上プレート31の支持孔31cに挿通させるとともに、支持ポール部7の下端は、下プレート32の支持孔32cに固定する。
【0032】
このように構成する着脱固定部4は、一対の調整ナット36uと36d…の位置を調整することにより、下プレート32の高さ、即ち、支持ポール部7の高さ位置を調整できるため、一対の調整ナット36uと36d…は高さ調整機構部15を構成する。このように、基準器Bの着脱固定部4に、支持ポール部7の高さ位置を調整可能な高さ調整機構部15を設ければ、車両ボディCbにおける様々な位置に対応して、ターゲット6の高さを調整できるため、最適な高さ設定を行うことができる。また、ネジ結合部38…により、支持シャフト33…の下端位置の高さを調整できるとともに、各脚部39…は、自在継手37…の一端側(上端側)に対して自在に角度調整できるため、ネジ結合部38…及び自在継手37…は、支持ポール部6の角度を調整可能な角度調整機構部16を構成する。このように、基準器Bの着脱固定部4に、支持ポール部6の角度を調整可能な角度調整機構部16を設ければ、車両ボディCbにおける様々な位置に対応して、ターゲット6の角度を調整できるため、最適な角度設定を行うことができる。
【0033】
ターゲット6は、三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にピンポールミラー部(以下、ミラー部)5を配した内側を中空に形成した半球状部6sを有し、上述した支持ポール部7の上端により支持される。即ち、
図5に示すように、ターゲット6は、半球状部6sにおける、球面側を背面部6rにし、かつ開口側を正面部6fにするとともに、当該半球状部6sの上面部6uと下面部6dを正面方向Ffへ突出形成する。これにより、
図4に示すように、側面方向から半球状部6sを見た場合のカット面形状は、球面中心線Lcに対して上下部が正面方向Ffへ突出したくの字形となる。
【0034】
そして、ターゲット6の上面部6uと下面部6dを通る球面中心線Lc上における下面部6dに軸受孔部12を形成し、かつ上面部6uの内面に軸受凹部13を設ける。これにより、
図5に示すように、支持ポール部7の上端を、軸受孔部12に挿入した後、軸受凹部13に係合させれば、支持ポール部7によりターゲット6を回動可能に支持することができる。
【0035】
さらに、ターゲット6の内部に位置する支持ポール部7の上下方向中央位置には、正面方向Ff(開口側)に向けたミラー部5をホルダ41を介して取付ける。このミラー部5には、レーザ光の反射機能を有するプリズム等の各種の反射光学部品が含まれる。このように構成すれば、測量時に使用する三次元レーザスキャナー2のターゲット6として利用できることに加え、X軸,Y軸,Z軸の基準点の計測に使用する他の基準点計測器(他の三次元レーザスキャナー)等のターゲットとしても兼用して利用することができるなどの利便性に優れる。
【0036】
なお、
図6は、三次元測量システムAを含むシステム全体のデータ処理系統Mの一例を示す。データ処理系統Mにおいて、2は測量に使用する三次元レーザスキャナー、51は三次元レーザスキャナー2を操作する操作リモコン、52はX軸,Y軸,Z軸の基準点の計測に使用する基準点計測器(例示は、他の三次元レーザスキャナー)、53は三次元レーザスキャナー52の操作リモコン、54は三次元レーザスキャナー2及び52から得られたデータを取込む処理コンピュータ、55は各種データ処理を行うデータ処理部、56はプリンタ及びディスプレイ等の周辺機器を示す。
【0037】
次に、本実施形態に係る三次元測量システムAの使用方法について、
図1-
図9を参照し、主に
図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0038】
最初に、
図1に示すように、各機材を車両ボディCbに設置する。まず、車両ルーフCrに取付けたルーフキャリアCcの上に平坦な上面を有する支持台21を設置する(ステップS1)。そして、この支持台21の上面に三脚22の脚部下端をそれぞれ固定し、この三脚22の上端における取付ベース22cに三次元レーザスキャナー2を取付ける(ステップS2)。
【0039】
次いで、三つの基準器B…(Ba,Bb,Bc)を用意し、各基準器B…を、第一の基準器Ba,第二の基準器Bb,第三の基準器Bcとして設置する(ステップS3)。この場合、
図1に示すように、第一の基準器Baは、車両ボディCbにおける車両ルーフCrの前端付近であって車両Cの右端付近の位置に設置する。設置に際しては、脚部39…における着脱部4c…を構成するマグネット4mc…を車両ルーフCrに吸着させて固定する。この際、支持ポール部7が鉛直方向になるように、高さ調整機構部15及び角度調整機構部16により調整する。また、第二の基準器Bbは、車両ボディCbにおける車両ルーフCrの前端付近であって車両Cの左端付近の位置に同様に設置する。さらに、第三の基準器Bcは、車両ボディCbにおけるボンネットChの上面における左寄り位置に同様に設置する。このように設置すれば、三つの基準器Ba,Bb,Bcは、車両Cを移動させる際に運転者の視界の邪魔にならない位置に設置することができる。
【0040】
以上により、機材の設置が終了するため、車両Cを測量場所(第一の測量場所)へ移動させる(ステップS4,S5)。そして、目的の測量場所に着いたなら、ターゲット6…における球面側となる背面部6r…が後方に向いているか等の確認や必要に応じた微調整を行った後、測量処理を行うことができる。
図8は平面方向から見た測量処理時のイメージを示している。
【0041】
測量に際しては、操作リモコン51等における開始スイッチをONすることにより、測量処理が自動的に行われる(ステップS6,S7)。即ち、三次元レーザスキャナー2からのレーザ光Rは、360゜にわたって高速で照射され、測量対象物がスキャニングされるとともに、その反射光を受光することにより、前述したデータ処理系統Mにより、形状を認識するためのデータ処理を行う。なお、データ処理は、リアルタイムで行ってもよいし、三次元レーザスキャナー2から得るサンプリングデータ(スキャニングデータ)をメモリ手段に書き込み、時と場所を変えてデータ処理部55に転送してもよい。
【0042】
一方、測量処理が終了したなら、
図9に示すように、基準点計測器(他の三次元レーザスキャナー)52を使用して、X軸,Y軸,Z軸の基準点の計測処理を行う(ステップS8,S9)。この場合、
図9に示すように、車両Cの前方(正面方向Ff)に三次元レーザスキャナー52を三脚等により設置し、各基準器Ba,Bb,Bcにおけるターゲット6…の開口側となる正面部6f…からミラー部5…をスキャニングできるように設定(調整)し、上述した測量処理と同様に計測処理を行うことができる。
【0043】
これにより、X軸,Y軸,Z軸の基準点が計測され、第一の測量場所における一連の測量処理が終了するため、車両Cを次の測量場所(第二の測量場所)へ移動させる(ステップS10,S11,S5)。そして、目的の測量場所(第二の測量場所)に着いたなら上述した計測処理を含む一連の測量処理を行う(ステップS6-S9)。この後、第二の測量場所における一連の測量処理が終了し、次の測量場所が予定されている場合には、同様に、車両Cを次の測量場所(第nの測量場所)へ移動させて一連の測量処理を同様に行う(ステップS10-S11,S5-S9)。他方、全ての測量場所における測量処理及び計測処理が終了したなら全測量作業を終了させる(ステップS11)。
【0044】
よって、このような本実施形態に係る三次元測量システムAによれば、基本構成として、三次元レーザスキャナー2と、この三次元レーザスキャナー2を車両ボディCbに固定可能な車両固定部3と、車両ボディCbに着脱式に固定可能な着脱部(4c…)…を有する着脱固定部4…,三次元レーザスキャナー2にスキャニングされ、かつ内方にミラー部5…を配した内側を中空に形成した半球状部6sを有するターゲット6…,及びこのターゲット6…を支持するとともに、着脱固定部4…により支持される支持ポール部7…を有する複数の基準器B…を備えるため、一台の車両における車両ボディCb全体を利用して、三次元レーザスキャナー2及び各基準器B…を自在に配置することができる。これにより、使い勝手を高めることができるとともに、測量対象物に最適となるシステム構成を柔軟に構築することができる。しかも、三次元測量システムAの設置に際しては、三次元レーザスキャナー2と必要数の基準器B…を用意すれば足り、フレーム等のユニット化(一体化)する部材が不要となるため、全体の小型化及び省スペース化を図ることができる。さらに、基準器B…により、X軸,Y軸,Z軸の測量も容易に行うことができるため、GPS等の他の測量手段が不要となり、小型コンパクト化及び低コスト化を実現できるとともに、携帯性,保管性及び取扱性にも優れる。
【0045】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0046】
例えば、車両固定部3は、車両ルーフCrに取付けるルーフキャリアCcに支持台21を設置して構成し、この支持台21に三次元レーザスキャナー2を固定した例を示したが、三次元レーザスキャナー2は、ルーフキャリアCcに直接固定してもよいし、車両ルーフCrに、基準器B…と同様に、マグネットを用いて直接固定してもよく、各種固定手段を用いることができる。また、基準器Bにおいて、着脱部4c…は、少なくとも一つのマグネット4mc…を設けて構成することが望ましいが、その他、例えば、車両ボディCbに貫通孔を形成し、基準器Bを使用する際に、当該貫通孔にボルト・ナットにより固定するとともに、使用しないときは、貫通孔をキャップ等により閉塞する場合を排除するものではない。さらに、ターゲット6は、開口部を側面視がくの字形にカットした例を示したが、湾曲形状にカットするなど、同一の機能を有する各種形状(デザイン形状)により置換可能である。なお、着脱固定部4に、支持ポール部7の高さ位置を調整可能な高さ調整機構部15及び/又は支持ポール部6の角度を調整可能な角度調整機構部16を設けることが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。例えば、別途の基準器設置台を設け、この基準器設置台に高さ及び/又は角度の調整機構を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る三次元測量システム及びその基準器は、三次元レーザスキャナーを用いて各種の建造物や地形等の被測量対象を三次元測量する際に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
2:三次元レーザスキャナー,3:車両固定部,4:着脱固定部,4c:着脱部,4mc:のマグネット,5:ピンポールミラー部,6:ターゲット,6s:半球状部,6r:背面部,6f:正面部,6u:上面部,6d:下面部,7:支持ポール部,12:軸受孔部,13:軸受凹部,15:高さ調整機構部,16:角度調整機構部,A:三次元測量システム,B(Ba,Bb,Bc…):基準器,Cb:車両ボディ,Cr:車両ルーフ,Cc:ルーフキャリア,Ff:正面方向,Lc:球面中心線