(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180780
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】溶融ガラス切断装置、及びガラス製品製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 7/10 20060101AFI20221130BHJP
C03B 7/08 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C03B7/10
C03B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087464
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231800
【氏名又は名称】日本耐酸壜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 利信
(57)【要約】
【課題】溶融ガラスを良好に切断できる溶融ガラス切断装置、及びその装置を備えるガラス製品製造装置を提供する。
【解決手段】溶融ガラス切断装置は、一対のシャーブレード30,40と、一対のシャーブレード30,40を近づける側へ相対移動させる制御を行うコントローラ23とを備える。この制御により一対のシャーブレード30,40を相対移動させることによって一対のシャーブレード30,40の先端部が重なり、一対のシャーブレード30,40の刃先による剪断力により、スパウト11の底部に形成されたオリフィス17から押し出された溶融ガラスGmが切断される。コントローラ23は、溶融ガラスGmの中心部がオリフィス17の中心軸線に対してオフセットしている場合、一対の刃先による溶融ガラスGmの切断位置を、中心軸線に対して中心部側にオフセットさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラス(Gm)が溜められるスパウト(11)の下方に配置されて、かつ、ファンネル(20)の上方に配置された一対のシャーブレード(30,40)と、
一対の前記シャーブレードを近づける側へ相対移動させる制御を行う制御部(23)と、
を備え、
前記制御部の制御により一対の前記シャーブレードを相対移動させることによって一対の前記シャーブレードの先端部が重なり、一対の前記シャーブレードの刃先(31a,41a)による剪断力により、前記スパウトの底部に形成されたオリフィス(17)から押し出された溶融ガラスを切断する溶融ガラス切断装置において、
前記制御部は、前記オリフィスから押し出されてから前記ファンネルに到達するまでの所定位置における溶融ガラスの中心部が前記オリフィスの中心軸線(Lct)に対してオフセットしている場合、一対の前記刃先による切断位置を、前記中心軸線に対して前記中心部側にオフセットさせる、溶融ガラス切断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記中心部が前記中心軸線に対して前記シャーブレードの移動方向にオフセットしている場合、一対の前記刃先による切断位置を、前記移動方向において前記中心軸線に対して前記中心部側にオフセットさせる、請求項1に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項3】
一対の前記刃先の輪郭は、前記シャーブレードの幅方向において中央にいくほど前記シャーブレードの基端部側に後退している、請求項2に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記中心軸線に対する前記中心部のオフセット量を算出し、
一対の前記刃先による切断位置を、算出した前記オフセット量だけ前記中心軸線に対してオフセットさせる、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項5】
前記オリフィスから押し出されてから前記ファンネルに到達するまでの所定位置における溶融ガラスを撮像する撮像部(25)を備え、
前記制御部は、前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記オフセット量を算出する、請求項4に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項6】
前記オリフィスは、前記スパウトの底部に複数並んで形成されており、
前記各オリフィスに対応して一対の前記シャーブレードが設けられており、
前記各オリフィスに対応する一対の前記シャーブレードは、共通の方向に相対移動させられ、
前記制御部は、
前記各オリフィスについて、前記中心軸線に対する前記中心部のオフセット量を算出し、
一対の前記刃先による切断位置を、算出した前記各オフセット量の中間値だけ前記中心軸線に対してオフセットさせる、請求項4又は5に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項7】
一対の前記シャーブレードのうち、一方の基端部に取り付けられた第1可動部材(54~57)と、
一対の前記シャーブレードのうち、他方の基端部に取り付けられた第2可動部材(64~67)と、
前記第1可動部材を特定方向において往復動作させる第1モータ(51)と、
前記第2可動部材を前記特定方向において往復動作させる第2モータ(61)と、
を備え、
前記制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータを制御することにより、一対の前記シャーブレードを近づける側へ相対移動させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の溶融ガラス切断装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の溶融ガラス切断装置と、
前記スパウトと、
前記ファンネルと、
を備え、
切断した溶融ガラスであるゴブ(Gb)を用いてガラス製品を製造するガラス製品製造装置(10)において、
前記ファンネルには、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔の内周面が下り勾配の傾斜面とされており、
前記ファンネルの下方に配置され、前記貫通孔の下側開口から落下してきたゴブを、前記ガラス製品を製造するための複数の金型(22)それぞれに所定周期で順次分配する分配装置(21)を備える、ガラス製品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラス切断装置、及びその装置を備えるガラス製品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、溶融ガラスが溜められるスパウトの下方に配置されて、かつ、ファンネルの上方に配置された一対のシャーブレードを備える溶融ガラス切断装置が知られている。この装置では、一対のシャーブレードを近づける側へ相対移動させることにより、一対のシャーブレードの先端部が重なる。その結果、一対のシャーブレードの刃先による剪断力により、スパウトの底部に形成されたオリフィスから押し出された溶融ガラスが切断される。切断された溶融ガラスであるゴブは、ガラス容器などのガラス製品の製造に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のシャーブレードの先端部を重ねる場合、一対のシャーブレードの刃先が、オリフィスから押し出された溶融ガラスに同時に接触するようにしている。これにより、溶融ガラスの切り口を、ガラス製品を製造する上で適正な切り口にする。また、シャーブレードの移動方向に溶融ガラスが大きく揺らされるのを防止し、ゴブの落下位置が適正な位置から大きくずれることを防止する。
【0005】
ところで、オリフィスから押し出されてからファンネルに到達するまでの所定位置における溶融ガラスの中心部が、オリフィスの中心軸線から大きくずれ得る。例えば、スパウトに溜められた溶融ガラスの温度が変化する場合、溶融ガラスの粘度が変化し、溶融ガラスの中心部がオリフィスの中心軸線からずれ得る。この場合、一対のシャーブレードの先端部が重なるときにおいて、一対のシャーブレードの刃先のうち、一方の刃先が他方の刃先よりも早いタイミングで溶融ガラスに接触し始める。その結果、シャーブレードの移動方向に溶融ガラスが大きく揺らされる。この場合、溶融ガラスの切り口が、ガラス製品を製造する上で適正な切り口にならなくなるといった問題が発生し得る。また、ゴブの落下位置が適正な位置から大きくずれるといった問題も発生し得る。このように、溶融ガラスを良好に切断する技術については、未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、溶融ガラスを良好に切断できる溶融ガラス切断装置、及びその装置を備えるガラス製品製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶融ガラスが溜められるスパウトの下方に配置されて、かつ、ファンネルの上方に配置された一対のシャーブレードと、
一対の前記シャーブレードを近づける側へ相対移動させる制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部の制御により一対の前記シャーブレードを相対移動させることによって一対の前記シャーブレードの先端部が重なり、一対の前記シャーブレードの刃先による剪断力により、前記スパウトの底部に形成されたオリフィスから押し出された溶融ガラスを切断する溶融ガラス切断装置において、
前記制御部は、前記オリフィスから押し出されてから前記ファンネルに到達するまでの所定位置における溶融ガラスの中心部が前記オリフィスの中心軸線に対してオフセットしている場合、一対の前記刃先による切断位置を、前記中心軸線に対して前記中心部側にオフセットさせる。
【0008】
オリフィスから押し出されてからファンネルに到達するまでの所定位置における溶融ガラスの中心部がオリフィスの中心軸線に対してオフセットしている場合、本発明の制御部は、一対のシャーブレードの刃先による切断位置を、オリフィスの中心軸線に対して溶融ガラスの中心部側にオフセットさせる。これにより、一対の刃先を溶融ガラスに同時に接触させるようにし、シャーブレードの移動方向に溶融ガラスが大きく揺らされることを防止できる。その結果、溶融ガラスの切り口が、ガラス製品を製造する上で適正な切り口にならなくなったり、ゴブの落下位置が適正な位置から大きくずれたりするといった問題の発生を抑制できる。
【0009】
このように、本発明によれば、溶融ガラスの中心部がオリフィスの中心軸線から大きくずれる場合であっても、溶融ガラスを良好に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るガラス容器の製造装置の全体構成図。
【
図4】(a)は互いに離間したシャーブレードの平面図であり、(b)は先端部が重なったシャーブレードの平面図。
【
図5】(a)は
図4の5A-5A線断面図であり、(b)は
図4の5B-5B線断面図。
【
図6】(a)は溶融ガラスの中心位置がオリフィスの中心軸線と一致した状態を示す図であり、(b)は溶融ガラスの中心位置がオリフィスの中心軸線からオフセットした状態を示す図。
【
図7】(a)は溶融ガラスの中心位置がオリフィスの中心軸線と一致した状態を示す図であり、(b)は溶融ガラスの中心位置がオリフィスの中心軸線からオフセットした状態を示す図。
【
図8】第1,第2刃先が重なり始める位置を、シャーブレードの移動方向において中心軸線に対して溶融ガラスの中心位置側にオフセットさせることを示す図。
【
図9】第2実施形態に係るガラス容器の製造装置の全体構成図。
【
図10】溶融ガラスの切断工程を示すフローチャート。
【
図12】第1,第2刃先が重なり始める位置を、シャーブレードの幅方向において中心軸線に対して溶融ガラスの中心位置側にオフセットさせることを示す図。
【
図13】溶融ガラスの切断工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明のガラス製品製造装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面のうち、便宜上、一部の構成の図示を省略している図もある。
【0012】
図1に示すように、製造装置10は、スパウト11と、スパウト11を保持するスパウトケース12とを備えている。スパウト11には、図示しないガラス溶融炉から供給された溶融ガラスGmが溜められている。
【0013】
製造装置10は、クレイチューブ13と、チューブ駆動部14とを備えている。クレイチューブ13は、筒状をなしている。クレイチューブ13の下端部は、スパウト11内の溶融ガラスGmに浸されている。クレイチューブ13は、チューブ駆動部14により、上下方向に延びる中心軸線まわりに回転可能になっている。これにより、スパウト11内の溶融ガラスGmを攪拌する。また、クレイチューブ13は、チューブ駆動部14により上下方向の位置が調節可能となっている。クレイチューブ13の下端部とスパウト11の底面とによって溶融ガラスGmの通路が形成されている。このため、クレイチューブ13の上下方向の位置を変えることにより、スパウト11の底部に形成された流出孔11a側への溶融ガラスGmの流出量が調整される。スパウト11の底部には、円形状のオリフィス17が形成されている。オリフィス17は、スパウト11の底部のうち、上下方向においてプランジャ15の先端部と対向する位置に形成されている。
【0014】
製造装置10は、プランジャ15と、プランジャ駆動部16とを備えている。プランジャ15は、プランジャ駆動部16により上下方向に往復運動が可能になっている。プランジャ15の下降によりプランジャ15の先端部が流出孔11aに進入すると、溶融ガラスGmがオリフィス17を介してスパウト11の外側へ押出される。これにより、溶融ガラスGmは、円柱状に垂れ下がる。一方、プランジャ15の上昇動作によりプランジャ15の先端部が流出孔11aから離脱すると、垂れ下がった溶融ガラスGmがオリフィス17の方に吸い込まれる。
【0015】
本実施形態では、
図2に示すように、製造装置10がプランジャ15を複数備えている。このため、スパウト11の底部には、各プランジャ15に対応したオリフィス17が一列に並んで形成されている。本実施形態では、プランジャ15が2つ備えられているため、スパウト11の底部にはオリフィス17が2つ形成されている。
【0016】
製造装置10は、溶融ガラス切断装置を備えている。溶融ガラス切断装置は、
図1に示すように、第1シャーブレード30、第2シャーブレード40及び刃駆動部18を備えている。第1,第2シャーブレード30,40は、オリフィス17の下方に配置されている。また、第1,第2シャーブレード30,40は、各オリフィス17に対応して2組設けられている。
【0017】
第1シャーブレード30は、水平方向において第2シャーブレード40に対向して配置されている。第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40は、刃駆動部18により、プランジャ15の上下運動に同期して水平方向に往復運動が可能になっている。第1シャーブレード30の刃先と第2シャーブレード40の刃先との剪断力により、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmが切断される。切断された溶融ガラスGmは、円柱状のゴブGbとなって重力により落下する。
【0018】
製造装置10は、ファンネル20、分配装置21及び複数の金型22を備えている。ファンネル20は、各オリフィス17に対応して個別に設けられ、各オリフィス17の下方に配置されている。詳しくは、ファンネル20には上下方向に延びる貫通孔が形成されている。貫通孔の内周面は、下り勾配の傾斜面20aとされている。すなわち、貫通孔の断面積は、下側開口にいくほど小さくなっている。下側開口の断面積は、ゴブGbの横断面の面積よりも大きい。また、本実施形態では、オリフィス17の中心軸線とファンネル20の貫通孔の中心軸線とが一致している。このため、ゴブGbは、傾斜面20aに落下することなく、下側開口を通過し得る。
【0019】
各ファンネル20の下方には、分配装置21が設けられている。分配装置21は、各ファンネル20に対応して個別に設けられている。ファンネル20の下側開口から落下してきたゴブGbは、分配装置21の入口部に供給される。分配装置21は、下側開口から落下してきたゴブGbを、複数の金型22それぞれに所定周期で順次分配する。各金型22において、ゴブGbを用いて壜などのガラス容器が成形される。
【0020】
製造装置10は、制御部としてのコントローラ23を備えている。コントローラ23は、マイコン及びメモリ等を備え、チューブ駆動部14、プランジャ駆動部16、刃駆動部18及び分配装置21の作動を制御する。
【0021】
製造装置10は、入力部24を備えている。入力部24には、種々の情報が作業者により入力可能となっている。例えば、入力部24はタッチパネルを備え、作業者がタッチパネルを操作することにより種々の情報が入力される。入力部24に入力された情報は、コントローラ23に送信される。
【0022】
続いて、
図3を用いて、刃駆動部18について説明する。
【0023】
刃駆動部18は、第1モータ51、第1ピニオン52、第1ラック53、第1駆動側部材54及び台座部PSを備えている。第1駆動側部材54は、長尺状をなしている。第1駆動側部材54は、特定方向にスライド可能に、長手方向における2箇所が台座部PSに支持されている。具体的には例えば、台座部PSには、軸受孔が形成されており、軸受孔に、第1駆動側部材54をスライド可能に支持する軸受が設けられている。第1駆動側部材54の中間部には、長尺状をなしてかつ第1駆動側部材54の長手方向に延びる第1ラック53が設けられている。第1ラック53には、複数のラック歯が形成され、各ラック歯は、第1駆動側部材54の長手方向に並んで形成されている。
【0024】
第1モータ51は、例えばサーボモータであり、コントローラ23により制御される。第1モータ51の回転軸には、第1ピニオン52が固定されている。第1ピニオン52のピニオン歯と、第1ラック53のラック歯とが噛み合っている。
【0025】
刃駆動部18は、第1中間部材55、第1ブレード側部材56及び第1ベース部57を備えている。第1中間部材55及び第1ブレード側部材56は、長尺状をなしている。第1中間部材55の第1端には、第1駆動側部材54と第1中間部材55とが交差(直交)した状態で、第1駆動側部材54の一端が固定されている。第1中間部材55の第2端には、第1駆動側部材54と第1ブレード側部材56とが平行な状態となるように、第1ブレード側部材56の第1端が固定されている。
【0026】
第1ベース部57は、長尺状をなしている。第1ベース部57の一端には、第1ブレード側部材56と直交した状態で、第1ブレード側部材56の第2端が固定されている。第1ベース部57の上面には、各オリフィス17に対応した第1シャーブレード30の基端部が、第1ベース部57の長手方向に並んで固定されている。本実施形態において、第1シャーブレード30の基端部は、ボルトによって第1ベース部57に固定されている。なお、本実施形態において、第1駆動側部材54、第1中間部材55、第1ブレード側部材56及び第1ベース部57が「第1可動部材」に相当する。
【0027】
刃駆動部18は、第2モータ61、第2ピニオン62、第2ラック63及び第2駆動側部材64を備えている。第2駆動側部材64は、長尺状をなしている。第2駆動側部材64は、特定方向にスライド可能に、長手方向における2箇所が台座部PSに支持されている。第2駆動側部材64は、各第1シャーブレード30が並ぶ方向において、第1駆動側部材54と第1ブレード側部材56との間に配置されている。第2駆動側部材64の中間部には、長尺状をなしてかつ第2駆動側部材64の長手方向に延びる第2ラック63が設けられている。第2ラック63には、複数のラック歯が形成され、各ラック歯は、第2駆動側部材64の長手方向に並んで形成されている。
【0028】
第2モータ61は、例えばサーボモータであり、コントローラ23により制御される。第2モータ61の回転軸には、第2ピニオン62が固定されている。第2ピニオン62のピニオン歯と、第2ラック63のラック歯とが噛み合っている。
【0029】
刃駆動部18は、第2中間部材65、第2ブレード側部材66及び第2ベース部67を備えている。第2中間部材65及び第2ブレード側部材66は、長尺状をなしている。第2中間部材65の第1端には、第2駆動側部材64と第2中間部材65とが直交した状態で、第2駆動側部材64の一端が固定されている。第2中間部材65の第2端には、第2駆動側部材64と第2ブレード側部材66とが平行な状態となるように、第2ブレード側部材66の第1端が固定されている。なお、第2ブレード側部材66、第2駆動側部材64及び第1ブレード側部材56も、第1駆動側部材54と同様に、台座部PSに設けられた軸受によりスライド可能に支持されている。
【0030】
第2ベース部67は、長尺状をなしている。第2ベース部67の一端には、第2ブレード側部材66と直交した状態で、第2ブレード側部材66の第2端が固定されている。第2ベース部67の上面には、各オリフィス17に対応した第2シャーブレード40の基端部が、第2ベース部67の長手方向に並んで固定されている。本実施形態において、第2シャーブレード40の基端部は、ボルトによって第2ベース部67に固定されている。なお、本実施形態において、第2駆動側部材64、第2中間部材65、第2ブレード側部材66及び第2ベース部67が「第2可動部材」に相当する。
【0031】
第1モータ51の回転が制御されることにより、第1ピニオン52と噛み合うラック歯が設けられた第1駆動側部材54は、特定方向において往復動作する。これにより、各第1シャーブレード30が特定方向において往復動作する。一方、第2モータ61の回転が制御されることにより、第2ピニオン62と噛み合うラック歯が設けられた第2駆動側部材64も、特定方向において往復動作する。これにより、各第2シャーブレード40が特定方向において往復動作する。特定方向において第1,第2シャーブレード30,40が互いに近づき、特定方向において第1,第2シャーブレード30,40が離間するように、第1モータ51及び第2モータ61それぞれの回転は同期して制御される。つまり、第1,第2シャーブレード30,40は、共通の方向に相対移動させられる。
【0032】
続いて、
図4及び
図5を用いて、第1,第2シャーブレード30,40について説明する。
【0033】
第1シャーブレード30は、板状材により構成された部材である。第1シャーブレード30は、例えば、セラミック、チタン又はタングステンで構成されている。
【0034】
第1シャーブレード30において長さ方向における先端部の断面形状は、
図5に示すように、上側にいくほど突出した形状となっている。これにより、第1シャーブレード30の先端部には、傾斜面である第1刃面31bが形成されている。第1刃面31bの先端が第1刃先31aとされている。第1シャーブレード30の平面視において、第1刃先31aの輪郭は、幅方向において中央にいくほど第1シャーブレード30の基端部側に後退している。これにより、本実施形態では、第1シャーブレード30の平面視において第1刃先31aの輪郭がU字状をなしている。
【0035】
第1シャーブレード30において、第1刃先31a側の幅方向両側には、第1シャーブレード30の長さ方向に突出する第1突出部32が形成されている。第1突出部32は、斜め下方に傾斜している。第1突出部32は、第1シャーブレード30の長さ方向において先端にいくほど幅方向寸法が小さくなっている。
【0036】
第2シャーブレード40は、板状材により構成された部材である。第2シャーブレード40は、例えば、セラミック、チタン又はタングステンで構成されている。本実施形態において、第2シャーブレード40は、第1シャーブレード30と同じ材料で構成されている。なお、第2シャーブレード40は、第1シャーブレード30と異なる材料で構成されていてもよい。
【0037】
第2シャーブレード40において長さ方向における先端部の断面形状は、
図5に示すように、下側にいくほど突出した形状となっている。これにより、第2シャーブレード40の先端部には、傾斜面である第2刃面41bが形成されている。第2刃面41bの先端が第2刃先41aとされている。第2シャーブレード40の平面視において、第2刃先41aの輪郭は、幅方向において中央にいくほど第2シャーブレード40の基端部側に後退している。これにより、本実施形態では、第2シャーブレード40の平面視において第2刃先41aの輪郭がU字状をなしている。なお、第2刃先41a及び第1刃先31aの輪郭は、U字状ではなく、例えばV字状をなしていてもよい。
【0038】
第2シャーブレード40において、第2刃先41a側の幅方向両側には、第2シャーブレード40の長さ方向に突出する第2突出部42が形成されている。第2突出部42は、斜め上方に傾斜している。第2突出部42は、第2シャーブレード40の長さ方向において先端にいくほど幅方向寸法が小さくなっている。
【0039】
第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40のそれぞれは、幅方向の中央に対して対称の形状をなしている。このため、第1刃先31aの輪郭は、幅方向の中央に対して対称になっている。また、第2刃先41aの輪郭は、幅方向の中央に対して対称になっている。本実施形態において、第1シャーブレード30は、第2シャーブレード40と同じ形状をなしている。
【0040】
上下方向において第2刃先41aが第1刃先31aよりもやや下側に位置するように、第1,第2シャーブレード30,40の基端部が第1,第2ベース部57,67に固定されている。これは、シャーブレードの弾性を利用して、第1,第2シャーブレード30,40の先端部が互いに押圧しながら重なるようにするためである。これにより、第1,第2シャーブレード30,40の刃先側の間に大きな隙間ができるのを防止し、溶融ガラスGmを良好に切断する。
【0041】
続いて、溶融ガラスGmを切断する場合における第1シャーブレード30及び第2シャーブレード40の動作について説明する。
【0042】
図4(a)及び
図5(a)には、第2シャーブレード40と第1シャーブレード30とが離間している状態を示す。コントローラ23により第1,第2モータ61の回転が制御されると、第1ベース部57と第2ベース部67とが互いに近づく側に移動させられ、第1シャーブレード30と第2シャーブレード40とが互いに近づく側に移動させられる。これにより、第1,第2突出部32,42の傾斜部分が互いに当接する。第1,第2突出部32,42は、第1,第2シャーブレード30,40の先端部を重ねる場合におけるガイドの役割を果たす。本実施形態において、コントローラ23は、第1シャーブレード30を第2シャーブレード40側に移動させる速度と、第2シャーブレード40を第1シャーブレード30側に移動させる速度とが等しくなるように、第1モータ51及び第2モータ61の回転を制御する。
【0043】
図4(b)及び
図5(b)に示すように、第2シャーブレード40の下面と第1シャーブレード30の上面とが当接しながら、第1シャーブレード30の先端部と第2シャーブレード40の先端部とが重なる。その結果、第1,第2刃先31a,41aによる剪断力により、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmが切断される。
【0044】
本実施形態では、基本的には、第1,第2刃先31a,41aによる溶融ガラスGmの切断位置を、オリフィス17の中心軸線Lct上にするように、第1,第2モータ61の回転が制御される。この制御は、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置がオリフィス17の中心軸線Lct上にあることを前提とした制御である。溶融ガラスGmの中心位置がオリフィス17の中心軸線Lct上にある場合、
図7(a)に示すように、第1刃先31aの幅方向中央からゴブGbの中心位置までの水平方向距離である第1距離LAと、第2刃先41aの幅方向中央からゴブGbの中心位置までの水平方向距離である第2距離LBとが等しくなる。これにより、
図7(a)に二点鎖線で示すように、第1,第2刃先31a,41aを溶融ガラスGmに同時に接触させるようにする。
図7には、第1距離LA及び第2距離LBの合計を合計距離LTとして示す。
【0045】
これに対し、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、溶融ガラスGmの中心位置が、中心軸線Lctからオフセットすることがある。このオフセットは、例えば、スパウト11に溜められた溶融ガラスGmの温度が変化し、溶融ガラスGmの粘度が変化することにより発生し得る。オリフィス17は円形状をなしているため、中心軸線Lctに対して溶融ガラスGmがどの方向にオフセットするかを予め特定することは難しい。
図6(b)及び
図7(b)には、溶融ガラスGmの中心位置が、第1,第2シャーブレード30,40の移動方向(長さ方向)において中心軸線Lctから第2シャーブレード40側にΔXだけオフセットした例を示す。この場合、第1距離LAが第2距離LBよりも長くなる。その結果、
図7(b)に二点鎖線で示すように、第2刃先41aが第1刃先31aよりも早いタイミングで溶融ガラスGmに接触し始める。これにより、第2シャーブレード40の移動方向に溶融ガラスGmが大きく揺らされる。この場合、溶融ガラスGmの切り口が、ガラス製品を製造する上で適正な切り口にならなくなるといった問題が発生し得る。
【0046】
また、溶融ガラスGmが大きく揺らされると、ゴブGbの落下位置が、ファンネル20の傾斜面20aのうち下側開口から遠い位置になるといった問題も発生し得る。この場合、ゴブGbが傾斜面20aに落下してから下側開口を通過するまでの時間が長くなり得る。その結果、分配装置21から金型22へと次回ゴブGbを分配するまでにファンネル20から分配装置21にゴブGbを供給することができず、分配装置21から各金型22にゴブGbを所定周期で供給できなくなるといった問題も発生し得る。
【0047】
そこで、本実施形態では、コントローラ23は、
図8(a)に示すように、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置が中心軸線Lctに対してシャーブレードの長さ方向にオフセットしている場合、
図8(b)に示すように、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置を、長さ方向において中心軸線Lctに対して溶融ガラスGmの中心位置側にオフセットさせるように、第1モータ51及び第2モータ61の回転を制御する。
図8(b)には、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置を、長さ方向において中心軸線Lctに対してゴブGbの中心位置側にオフセット量ΔXだけオフセットさせた例を示す。コントローラ23は、作業者が入力部24に入力したオフセット量ΔXを用いる。オフセット量ΔXは、例えば、作業者の目視により測定される。切断位置をオフセットさせることにより、
図8(b)に二点鎖線で示すように、第1,第2刃先31a,41aを溶融ガラスGmに同時に接触させるようにする。
【0048】
なお、ゴブGbの中心位置は、中心軸線Lctに対してシャーブレードの長さ方向にオフセットする場合以外にも、中心軸線Lctに対してシャーブレードの幅方向にオフセットする場合もあり得る。ただし、第1,第2刃先31a,41aの輪郭が、シャーブレードの幅方向において中央にいくほどシャーブレードの基端部側に後退しているため、溶融ガラスGmが第1,第2刃先31a,41aで挟みこまれるときに、挟み込まれた溶融ガラスGmの中心位置が幅方向中央側にオフセットさせられる。このため、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置が中心軸線Lctに対してシャーブレードの幅方向にオフセットしている場合であっても、ファンネル20におけるゴブGbの落下位置は、中心軸線Lctに対してシャーブレードの幅方向に大きくオフセットしない。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、シャーブレードの長さ方向に溶融ガラスGmが大きく揺らされることを防止できる。その結果、溶融ガラスGmの切り口が、ガラス製品を製造する上で適正な切り口にならなくなったり、ゴブGbの落下位置が中心軸線Lctから大きくずれたりするといった問題の発生を抑制できる。つまり、溶融ガラスGmを良好に切断することができる。
【0050】
ゴブGbの落下位置が中心軸線Lctから大きくずれないため、ファンネル20の傾斜面20aにおけるゴブGbの落下位置が下側開口から離れた位置になる事態の発生を抑制できる。これにより、分配装置21から各金型22に所定周期でゴブGbを供給できなくなることを防止できる。
【0051】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、コントローラ23は、
図9に示すカメラ25の撮像データに基づいてオフセット量ΔXを算出する。なお、
図9において、先の第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0052】
撮像部としてのカメラ25は、オリフィス17から押し出されてからファンネル20に到達するまでの所定位置における溶融ガラスを撮像し、具体的には例えば、赤外線カメラ又はCCDカメラである。例えば、カメラ25は、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmであって、第1,第2刃先31a,41aにより切断される前の状態における溶融ガラスGmを撮像可能に配置されている。また例えば、カメラ25は、第1,第2刃先31a,41aにより切断されてからファンネル20に落下するまでの経路の所定位置におけるゴブGbを撮像可能に配置されている。さらに例えば、カメラ25は、ファンネル20の傾斜面20aを撮像可能に配置されている。カメラ25は、1つ又は複数配置されている。カメラ25の撮像データは、コントローラ23に入力される。
【0053】
コントローラ23は、撮像データの画像処理結果に基づいて、オリフィス17の中心軸線Lctに対する溶融ガラスGmの中心位置のオフセット量ΔXを算出する。画像処理結果に基づいてオフセット量ΔXを算出できるのは、画像処理結果に基づいて特定される溶融ガラスGmの形状、又は画像処理結果に基づいて特定されるゴブGbの形状や姿勢と、オフセット量ΔXとの間に相関があるためである。コントローラ23は、溶融ガラスGmの形状又はゴブGbの形状や姿勢と関係づけられたオフセット量ΔXのデータが記憶された記憶部(具体的にはメモリ)を備えている。コントローラ23は、画像処理結果に基づいて特定される溶融ガラスGmの形状又はゴブGbの形状や姿勢と、記憶部に記憶されているデータとに基づいて、オフセット量ΔXを算出する。
【0054】
詳しくは、例えば、コントローラ23は、第1,第2刃先31a,41aにより切断される前の状態における溶融ガラスGmの撮像データの画像処理結果に基づいて、オリフィス17から下方に垂れ下がっている溶融ガラスGmの形状を特定する。コントローラ23は、特定した形状と、記憶部に記憶されているデータとに基づいて、オフセット量ΔXを算出する。
【0055】
また例えば、コントローラ23は、落下途中のゴブGbの撮像データの画像処理結果に基づいて、ゴブGbの形状及び姿勢の少なくとも一方を特定する。コントローラ23は、特定した形状及び姿勢の少なくとも一方と、記憶部に記憶されているデータとに基づいて、オフセット量ΔXを算出する。この場合、コントローラ23は、例えば、棒状又は円柱状のゴブGbの姿勢が鉛直方向に対して傾斜しているほど、オフセット量ΔXを大きくしてもよい。
【0056】
さらに例えば、コントローラ23は、ファンネル20の傾斜面20aにおけるゴブGbの撮像データの画像処理結果に基づいて、傾斜面20aにおけるゴブGbの落下位置を特定する。コントローラ23は、特定した落下位置と、記憶部に記憶されているデータとに基づいて、オフセット量ΔXを算出する。ちなみに、コントローラ23は、傾斜面20aにおけるゴブGbの撮像データに基づいて、ゴブGbが傾斜面20aに落下することなくファンネル20の下側開口を通過したと判定した場合、上記オフセット量ΔXを0として算出してもよい。
【0057】
なお、コントローラ23は、以下に説明する方法によってもオフセット量ΔXを算出することができる。例えば、コントローラ23は、第1,第2刃先31a,41aにより切断される前の状態における溶融ガラスGmの撮像データの画像処理結果に基づいて、オリフィス17から下方に垂れ下がっている溶融ガラスGmの形状を特定し、特定した形状に基づいて、溶融ガラスGmの重心位置を算出する。コントローラ23は、算出した重心位置をオリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置とし、その中心位置と、中心軸線Lctとの間のシャーブレードの長さ方向における距離をオフセット量ΔXとして算出する。
【0058】
また例えば、コントローラ23は、落下途中におけるゴブGbの撮像データの画像処理結果に基づいて、ゴブGbの形状を特定し、特定した形状に基づいて、ゴブGbの重心位置を算出する。コントローラ23は、算出した重心位置をオリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置とし、その中心位置と、中心軸線Lctとの間のシャーブレードの長さ方向における距離をオフセット量ΔXとして算出する。
【0059】
さらに例えば、コントローラ23は、ファンネル20の傾斜面20aにおけるゴブGbの撮像データの画像処理結果に基づいて、傾斜面20aにおけるゴブGbの落下位置を特定する。コントローラ23は、特定した落下位置をオリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置とし、その中心位置と、中心軸線Lctとの間のシャーブレードの長さ方向における距離をオフセット量ΔXとして算出する。
【0060】
コントローラ23は、第1,第2刃先31a,41aによる溶融ガラスGmの切断位置を、長さ方向において中心軸線Lctに対して、算出したオフセット量ΔXだけオフセットさせた位置に修正するように、第1,第2モータ51,61の回転を制御する。
【0061】
図10は、コントローラ23により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS10では、第1,第2モータ51,61の回転の制御により、第1,第2シャーブレード30,40を近づける側に移動させる。
【0063】
ステップS11では、オリフィス17から押し出されてからファンネル20に到達するまでの所定位置における溶融ガラスの撮像をカメラ25に対して指示する。なお、カメラ25による撮像は、上述した態様で実施される。
【0064】
ステップS12では、入力されたカメラ25の撮像データを画像処理することにより、上記オフセット量ΔXを算出する。
【0065】
ステップS13では、第1,第2刃先31a,41aによる溶融ガラスGmの切断位置を、長さ方向において中心軸線Lctに対して、算出したオフセット量ΔXだけオフセットさせた位置に修正するように、第1,第2モータ51,61の回転を制御する。ちなみに、オフセット量ΔXが許容値を超えた場合にのみ切断位置をオフセットさせ、オフセット量ΔXが許容値以下の場合、切断位置をオフセットさせなくてもよい。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、中心軸線Lctに対して溶融ガラスGmの中心位置がオフセットする場合において、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置のオフセットを自動化することができる。これにより、作業者の作業負荷を軽減することができる。また、オフセット量ΔXをカメラ25の撮像データに基づいて算出するため、例えば作業者の目視によりオフセット量が把握される場合と比較して、オフセット量ΔXの算出精度を高めることができる。
【0067】
ちなみに、オフセット量が各オリフィス17で異なる場合もあり得る。この場合、コントローラ23は、ステップS12において、各オリフィス17について、シャーブレードの長さ方向において中心軸線Lctに対する溶融ガラスGmの中心位置のオフセット量ΔX1,ΔX2を算出する。コントローラ23は、算出した各オフセット量ΔX1,ΔX2の中間値を指令オフセット量として算出する。指令オフセット量は、例えば、算出した各オフセット量ΔX1,ΔX2の中央値(=(ΔX1+ΔX2)/2)である。指令オフセット量は、上記中央値に限らず、一方のオフセット量ΔX1と他方のオフセット量ΔX2との間であれば、上記中央値からずれた値であってもよい。コントローラ23は、ステップS13において、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置を、算出した指令オフセット量だけ中心軸線Lctに対してオフセットした位置に修正するように、第1,第2モータ51,61の回転を制御する。
【0068】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、中心軸線Lctに対する溶融ガラスGmのシャーブレードの長さ方向におけるオフセットに加え、幅方向におけるオフセットが発生する場合であっても、溶融ガラスGmを良好に切断できる構成が用いられる。その構成の一例を
図11に示す。なお、
図11において、先の
図3に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0069】
刃駆動部18は、各第1シャーブレード30に対応した第1スライド部58を備えている。各第1スライド部58には、各第1シャーブレード30の基端部が固定されている。各第1スライド部58は、水平方向において第1ベース部57の移動方向とは直交する方向にスライド可能に第1ベース部57に支持されている。これにより、各第1シャーブレード30は、幅方向に個別に移動可能とされている。
【0070】
刃駆動部18は、各第2シャーブレード40に対応した第2スライド部68を備えている。各第2スライド部68には、各第2シャーブレード40の基端部が固定されている。各第2スライド部68は、水平方向において第2ベース部67の移動方向とは直交する方向にスライド可能に第2ベース部67に支持されている。これにより、各第2シャーブレード40は、幅方向に個別に移動可能とされている。つまり、本実施形態では、2組の第1,第2シャーブレード30,40それぞれにおいて個別に幅方向の移動量が調整可能となっている。各第1スライド部58及び各第2スライド部68のスライドは、コントローラ23により制御される。
【0071】
図12(a)に示すように、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGmの中心位置が、シャーブレードの幅方向に中心軸線Lctからオフセットすることがある。そこで、本実施形態では、コントローラ23は、
図12(b)に示すように、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置を、幅方向において中心軸線Lctに対して溶融ガラスGmの中心位置側にオフセット量ΔYだけオフセットさせる。これにより、
図12(b)に二点鎖線で示すように、第1,第2刃先31a,41aを溶融ガラスGmに同時に接触させるようにする。なお、
図12には、便宜上、長さ方向のオフセット量ΔXが0の場合を示す。
【0072】
図13は、コントローラ23により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS20では、第1,第2モータ51,61の回転の制御により、第1,第2シャーブレード30,40を近づける側に移動させる。
【0074】
ステップS21では、オリフィス17から押し出されてからファンネル20に到達するまでの所定位置における溶融ガラスの撮像をカメラ25に対して指示する。
【0075】
ステップS22では、カメラ25の撮像データを画像処理することにより、シャーブレードの長さ方向において中心軸線Lctに対する溶融ガラスGmの中心位置のオフセット量ΔXと、シャーブレードの幅方向において中心軸線Lctに対する溶融ガラスGmの中心位置のオフセット量ΔYとを算出する。詳しくは、長さ方向におけるオフセット量ΔXと、幅方向におけるオフセット量ΔYとを、2組のシャーブレード30,40それぞれについて個別に算出する。なお、幅方向におけるオフセット量ΔYは、第2実施形態で説明した長さ方向におけるオフセット量ΔXの算出方法と同様の方法で算出されればよい。
【0076】
ステップS23では、2組のシャーブレード30,40それぞれについて、第1,第2刃先31a,41aによる切断位置を、長さ方向において中心軸線Lctに対して、算出したオフセット量ΔXだけオフセットさせた位置に個別に修正するとともに、幅方向において中心軸線Lctに対して、算出したオフセット量ΔYだけオフセットさせた位置に個別に修正するように、第1,第2モータ51,61の回転、各第1スライド部58のスライド及び各第2スライド部68のスライドを制御する。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、2組のシャーブレード30,40それぞれについて、中心軸線Lctに対して溶融ガラスGmの中心位置が幅方向にオフセットする場合であっても、そのオフセットの影響を抑制することができる。
【0078】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0079】
・オフセット量の算出方法としては、第2,第3実施形態に例示したものに限らない。例えば、コントローラ23は、第1,第2刃先31a,41aによる切断動作が実施されるたびにオフセット量を算出することなく、複数回の切断動作を含む所定の期間における複数の撮像データに基づいて、所定の期間が経過するたびにオフセット量を算出してもよい。この方法は、例えば、溶融ガラスのオフセット量が短時間に大きくならない場合に有効である。
【0080】
・第2,第3実施形態において、オフセット量ΔX,ΔYの算出に用いるデータとしては、カメラ25の撮像データに限らない。例えば、溶融ガラス切断装置が、オリフィス17から押し出された溶融ガラスGm又はゴブGbにレーザを照射可能なレーザセンサを備える場合、コントローラ23は、レーザセンサの検出データに基づいて、オフセット量ΔX,ΔYを算出してもよい。
【0081】
・第2実施形態において、コントローラ23は、シャーブレードの長さ方向における切断位置の現在のオフセット量を、
図10のステップS12で算出したオフセット量ΔXに徐々に近づけるように第1,第2モータ51,61の回転を制御してもよい。この場合、例えば、算出されたオフセット量ΔXが一時的に過度に大きくなるときであっても、算出されたオフセット量ΔXに追従して実際のオフセット量が過度に大きくなることを抑制できる。
【0082】
・第3実施形態において、コントローラ23は、シャーブレードの幅方向における切断位置の現在のオフセット量を、
図13のステップS22で算出したオフセット量ΔYに徐々に近づけるように第1,第2スライド部58,68のスライドを制御してもよい。
【0083】
・第3実施形態において、シャーブレードの長さ方向におけるオフセット及び幅方向におけるオフセットのうち、幅方向におけるオフセットのみ修正してもよい。
【0084】
・第1,第2実施形態では、2組の第1,第2シャーブレード30,40それぞれにおいて、切断位置のオフセット量として共通の値が用いられたがこれに限らない。2組の第1,第2シャーブレード30,40それぞれにおいて個別にオフセット量が調整可能な刃駆動部18が溶融ガラス切断装置に備えられる場合、2組の第1,第2シャーブレード30,40それぞれにおいて個別のオフセット量が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0085】
11…スパウト、17…オリフィス、20…ファンネル、23…コントローラ、30,40…第1,第2シャーブレード。