(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180792
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】電磁波ノイズ抑制シート
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221130BHJP
D21H 13/50 20060101ALI20221130BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20221130BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20221130BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H05K9/00 M
D21H13/50
D21H27/30 B
B32B7/025
B32B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087480
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】込山 英秋
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AJ04A
4F100BA02
4F100BA22
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG10A
4F100JD08A
4F100JG04A
4F100JG04B
4L055AF03
4L055AF09
4L055AF50
4L055CD30
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA09
4L055EA16
4L055FA11
4L055FA30
4L055GA01
5E321BB25
5E321BB34
5E321BB44
5E321BB60
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】電磁波ノイズの抑制性能が高い電磁波ノイズ抑制シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る電磁波ノイズ抑制シート100は、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層10を含み、フーリエ画像解析によって求められる前記炭素繊維の配向強度は、1.3以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層を含み、
フーリエ画像解析によって求められる前記炭素繊維の配向強度は、1.3以上である、電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項2】
前記炭素繊維の配向強度は、1.8以上である、請求項1に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項3】
前記炭素繊維の配向強度は、2.3以上である、請求項1または2に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項4】
前記第1層における前記炭素繊維の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項5】
前記第1層における前記炭素繊維の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項6】
前記炭素繊維の平均繊維長は、0.04mm以上25mm以下である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項7】
前記炭素繊維の平均繊維長は、1mm以上15mm以下である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項8】
前記第1層の米坪は、20g/m2以上650g/m2である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項9】
前記第1層の米坪は、23g/m2以上200g/m2である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項10】
前記非導電性繊維は、セルロース繊維である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項11】
前記第1層上に設けられた第2層を含み、
前記第2層は、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有し、
フーリエ画像解析によって求められる前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向強度は、1.3以上であり、
前記第1層に含まれる前記炭素繊維の配向方向と、前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向方向とは、互いに交差している、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【請求項12】
前記第1層に含まれる前記炭素繊維の配向方向と、前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向方向とは、45°以上90°以下の角度で互いに交差している、請求項11に記載の電磁波ノイズ抑制シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波ノイズ抑制シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波ノイズを抑制する電磁波ノイズ抑制シートが知られている。このような電磁波ノイズ抑制シートは、例えば、オフィス、実験室、病院などにおいて、無線LAN(Local Area Network)等の電子部品から発せられた電磁波ノイズを抑制するために用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、炭素繊維を含む繊維シートを複数枚積層し、相互に熱融着することによって構成された電磁波吸収体が記載されている。電磁波ノイズ抑制シートでは、電磁波ノイズの抑制性能を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、電磁波ノイズの抑制性能が高い電磁波ノイズ抑制シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁波ノイズ抑制シートの一態様は、
炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層を含み、
フーリエ画像解析によって求められる前記炭素繊維の配向強度は、1.3以上である。
【0007】
前記電磁波ノイズ抑制シートの一態様において、
前記炭素繊維の配向強度は、1.8以上であってもよい。
【0008】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記炭素繊維の配向強度は、2.3以上であってもよい。
【0009】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層における前記炭素繊維の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であってもよい。
【0010】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層における前記炭素繊維の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0011】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記炭素繊維の平均繊維長は、0.04mm以上25mm以下であってもよい。
【0012】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記炭素繊維の平均繊維長は、1mm以上15mm以下であってもよい。
【0013】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層の米坪は、20g/m2以上650g/m2であってもよい。
【0014】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層の米坪は、23g/m2以上200g/m2であってもよい。
【0015】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記非導電性繊維は、セルロース繊維であってもよい。
【0016】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層上に設けられた第2層を含み、
前記第2層は、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有し、
フーリエ画像解析によって求められる前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向強度は、1.3以上であり、
前記第1層に含まれる前記炭素繊維の配向方向と、前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向方向とは、互いに交差していてもよい。
【0017】
前記電磁波ノイズ抑制シートのいずれかの態様において、
前記第1層に含まれる前記炭素繊維の配向方向と、前記第2層に含まれる前記炭素繊維の配向方向とは、45°以上90°以下の角度で互いに交差していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電磁波ノイズ抑制シートは、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層を含み、フーリエ画像解析によって求められる炭素繊維の配向強度は、1.3以上であるため、電磁波ノイズの抑制性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シートを模式的に示す断面図。
【
図2】フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図。
【
図3】フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図。
【
図4】フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図。
【
図5】フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図。
【
図6】フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図。
【
図7】本実施形態の第1変形例に係る電磁波ノイズ抑制シートを模式的に示す断面図。
【
図8】本実施形態の第2変形例に係る電磁波ノイズ抑制シートを模式的に示す断面図。
【
図9】電磁波ノイズ抑制性能の評価方法を説明するための図。
【
図10】混抄紙の炭素繊維の配向強度およびRtpを示す表。
【
図11】混抄紙の炭素繊維の配向強度およびRtpを示す表。
【
図12】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図13】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図14】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図15】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図16】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図17】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図18】混抄紙の炭素繊維の配向強度およびRtpを示す表。
【
図19】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図20】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図21】混抄紙の炭素繊維の配向強度およびRtpを示す表。
【
図22】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【
図23】混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0021】
1. 電磁波ノイズ抑制シート
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シートについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シート100を模式的に示す断面図である。
【0022】
電磁波ノイズ抑制シート100は、
図1に示すように、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層10を含む。
【0023】
1.1.1. 炭素繊維
第1層10に含まれる炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)繊維などの有機繊維を、高温で炭化させて作製された繊維である。炭素繊維は、導電性を有する導電性繊維である。
【0024】
第1層10における炭素繊維の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上5質量%以下である。炭素繊維の含有量が0.1質量%以上であれば、電磁波ノイズ抑制性能を高めることができる。炭素繊維の含有量が20質量%以下であれば、炭素繊維の含有量のばらつきを小さくすることができる。第1層10における炭素繊維の含有量は、「JIS K 7075」に基づく硫酸分解法によって測定することができる。
【0025】
炭素繊維は、チョップドファイバーであってもよいし、ミルドファイバーであってもよい。ただし、炭素繊維の繊維長のばらつきを考慮すると、炭素繊維は、チョップドファイバーであることが好ましい。チョップドファイバーとは、炭素繊維をサイジング剤で収束させ、一定の長さに切断されたものである。ミルドファイバーとは、チョップドファイバーを粉砕させて作製されたものである。
【0026】
第1層10に含まれる炭素繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、例えば、0.04mm以上25mm以下であり、好ましくは1mm以上15mm以下である。炭素繊維の平均繊維長が0.04mm以上であれば、電磁波ノイズ抑制性能を高めることができる。炭素繊維の平均繊維長が25mm以下であれば、均一性の高いスラリーを調整することができる。電磁波ノイズ抑制シート100は、炭素繊維および非導電性繊維を水に分散させてスラリーを調製し、該スラリーを抄くことで製造される。炭素繊維の平均繊維長は、デジタルマイクロスコープ観察により100本の炭素繊維の繊維長を読み取り、該100本の繊維長の数平均によって求めることができる。デジタルマイクロスコープとしては、例
えば、キーエンス社製の「VHX-1000」を用いる。
【0027】
第1層10に含まれる炭素繊維の平均繊維幅は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上50μm以下であり、より好ましくは2μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上10μm以下である。繊維幅は、繊維長と直交する方向の大きさである。繊維幅は、基本的に繊維長と同じ方法によって求めることができる。
【0028】
1.1.2. 非導電性繊維
第1層10に含まれる非導電性繊維は、絶縁体である。非導電性繊維は、例えば、セルロース繊維である。
【0029】
セルロース繊維は、セルロースを原料とする繊維である。セルロース繊維は、綿やパルプから採取される。パルプとしては、例えば、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、NBSP(針葉樹さらしサルファイトパルプ)などの溶解パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ、ケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプが挙げられる。これらは、単独で使用されてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して使用されてもよい。
【0030】
第1層10は、LBKPを含むことが好ましい。第1層10におけるLBKPの含有量は、例えば、70質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。LBKPの含有量が70質量%以上であれば、第1層10の歪みを小さくすることができる。
【0031】
第1層10の米坪が40g/m2以下の場合、第1層10は、NBKPを含むことが好ましい。第1層10におけるNBKPの含有量は、例えば、30質量%以下である。NBKPの含有量が30質量%以下であれば、第1層10の平滑性および強度を保つことができる。
【0032】
第1層10に含まれるセルロース繊維は、微細セルロース繊維(例えば、セルロースナノファイバー)であってもよい。微細セルロース繊維とは、植物由来のセルロース繊維をナノ化処理した微小繊維である。ナノ化処理としては、例えば、機械的な解繊処理、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)による触媒的酸化処理などが挙げられる。微細セルロース繊維の平均繊維長は、数百nmである。微細セルロース繊維の平均繊維幅は、数nm~数十nmである。微細セルロース繊維を用いることにより、透明化、軽量化、および高弾性化を図ることができる。
【0033】
第1層10に含まれる非導電性繊維は、化学合成繊維であってもよい。化学合成繊維は、石油などを原料とした合成高分子化合物を、種々の方法で紡いで繊維状にしたものである。化学合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ウレタン繊維などが挙げられる。これらは、単独で使用されてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して使用されてもよい。
【0034】
第1層10に含まれる非導電性繊維は、ガラス繊維であってもよい。ガラス繊維は、ガラスを融解、牽引して繊維状にしたものである。ガラス繊維としては、例えば、珪酸ガラスやホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)などが挙
げられる。ガラス繊維は、グラスファイバー(長繊維)であってもよいし、グラスウール(短繊維)であってもよい。これらは、単独で使用されてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して使用されてもよい。
【0035】
なお、第1層10に含まれる非導電性繊維は、上述したセルロース繊維、化学合成繊維、およびガラス繊維のうち2種類以上を任意の割合で混合したものであってもよい。
【0036】
第1層10における非導電性繊維の含有量は、特に限定されないが、例えば、70質量%以上99.5質量%以下であり、好ましくは75質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上93質量%以下である。
【0037】
第1層10に含まれる非導電性繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、例えば、1nm以上30mm以下であり、好ましくは0.1mm以上15mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上7mm以下である。
【0038】
1.1.3. 添加剤
第1層10は、必要に応じて、さらに、填料、紙力増強剤、サイズ剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、ピッチコントロール剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。また、第1層10に、カーボンナノチューブ(CNT)が分散されたCNT分散液などの塗料を塗布してもよい。
【0039】
1.2. 形状等
第1層10の形状は、厚さに対して、厚さ方向と直交する方向の大きさが十分に大きいシート状である。第1層10の厚さは、特に限定されないが、例えば、20μm以上5mm以下であり、好ましくは40μm以上3mm以下である。第1層10の厚さが20μm以上であれば、電磁波ノイズ抑制性能を高めることができる。第1層10の厚さが5mm以下であれば、電磁波ノイズ抑制シート100を、容易に製造することができる。第1層10の厚さは、「JIS P 8118」に基づいて測定することができる。
【0040】
第1層10の米坪は、特に限定されないが、例えば、20g/m2以上650g/m2以下であり、好ましくは23g/m2以上200g/m2以下である。第1層10の米坪が20g/m2以上であれば、第1層10の強度を高めることができる。第1層10の米坪が650g/m2以下であれば、地合を良好にすることができる。第1層10の米坪は、「JIS P 8124」に基づいて測定することができる。
【0041】
第1層10の密度は、特に限定されないが、例えば、0.1g/cm3以上2g/cm3以上であり、好ましくは0.2g/cm3以上1g/cm3以上である。第1層10の密度が0.1g/cm3以上であれば、第1層10の強度を高めることができる。第1層10の密度が2g/m3以下であれば、地合を良好にすることができる。第1層10の密度は、「JIS P 8118」に基づいて測定することができる。
【0042】
図示の例では、電磁波ノイズ抑制シート100は、1層の第1層10で構成されている。図示はしないが、電磁波ノイズ抑制シート100は、複数の第1層10が積層されて構成されていてもよい。この場合、複数の第1層10の数は、特に限定されない。
【0043】
1.3. 配向強度
第1層10に含まれる炭素繊維の配向強度は、1.3以上であり、好ましくは1.8以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらにより好ましくは2.3以上であり、さらによりいっそう好ましくは2.5以上である。第1層10に含まれる炭素繊維の配向
強度は、例えば、5以下である。
【0044】
第1層10に含まれる炭素繊維の配向強度は、フーリエ画像解析によって求められる。ここで、
図2~
図6は、フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求める方法を説明するための図である。なお、
図2~
図4では、上側に配向強度が1.1の例を示し、下側に配向強度が2.4の例を示している。
【0045】
フーリエ画像解析によって炭素繊維の配向強度を求めるためには、まず、デジタルマイクロスコープを用いて、第1層10の表面を100倍で撮影する。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス社製の「VHX-1000」を用いる。
【0046】
次に、撮影した画像の任意の1024×1024画素部分を切り出し、
図2に示すように、動的2値化により2値化画像を取得する。2値化画像では、炭素繊維が黒線として反映される。
【0047】
次に、取得した2値化画像をフーリエ変換することにより、
図3に示すように、パワースペクトルを取得する。
【0048】
次に、取得したパワースペクトルに基づいて、
図4に示すように、振幅の角度分布を計算する。具体的には、0°~180°の角度を2048等分して0~2047×180/2048°までの2048個の各角度について距離(中心からの距離)r=2~511までのフーリエ係数の振幅の平均を求める。ただし、xy座標を完全に極座標に変換することはできないので、周囲の4点の振幅から距離で按分した値で計算する。
【0049】
具体的には、
図5に示すように、x軸の正値方向から反時計回り方向にθ°、中心から半径方向に距離rの地点のスペクトル強度P(x,y)であれば、
図6に示すように、P(x,y)の周辺4格子のP(x
n,y
n)、P(x
n+1,y
n)、P(x
n,y
n+1)、P(x
n+1,y
n+1)の値と、x軸、y軸に沿った求値地点までの中途距離d
x、d
yと、から下記式(1)で計算した値を、その地点のスペクトル強度として、振幅の平均(平均スペクトル値)を計算する。
【0050】
【0051】
次に、得られた平均スペクトル値から、
図4に示すように、楕円近似を行う。楕円関数は、3係数値a,b,cからなる下記式(2)で表される。3係数値a,b,cについては、最小二乗法を利用し、楕円関数から外れた偏差量の二乗総和を目的関数とし、さらに下記式(3)の不等式制約条件を満たし、これを最小化する非線形最適化問題(下記式(4))を、勾配法を用いた収束径さで最適解を求める。
【0052】
【0053】
次に、下記式(5),(6)から近似楕円の短軸半径Laと長軸半径Lbとを求め、短軸半径Laと長軸半径Lbとの比Lb/Laを算出する。そして、上述した第1層10の表面の撮影から比Lb/Laの算出までの一連の工程をさらに2回繰り返し、算出した3つの比Lb/Laの平均を配向強度とする。
【0054】
【0055】
なお、角度θは、下記式(7)によって求められる。
【0056】
【0057】
1.4. 電磁波ノイズ抑制性能
電磁波ノイズ抑制シート100は、電磁波ノイズを抑制する電磁波ノイズ抑制性能を有している。電磁波ノイズ抑制性能は、マイクロストリップライン法によって伝送減衰率Rtp[dB]を測定することにより評価される。Rtpが大きいほど、電磁波ノイズ抑制性能が高い。電磁波ノイズ抑制シート100は、例えば、電子部品、壁、床などに貼り付けられて使用される。
【0058】
1.5. 作用効果
電磁波ノイズ抑制シート100では、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有する第1層を含み、フーリエ画像解析によって求められる炭素繊維の配向強度は、1.3以上であり、好ましくは1.8以上であり、より好ましくは2.3以上である。そのため、電磁波ノイズ抑制シート100は、電磁波ノイズの抑制性能が高い。具体的には、電磁波ノイズ抑制シート100は、所定方向に進行する電磁波に対して、電磁波ノイズ抑制性能が高い。より具体的には、後述する実験例のように、マイクロストリップライン法における伝送線路に対して、炭素繊維の配向方向が略垂直となるように電磁波ノイズ抑制シート100を配置することにより、電磁波ノイズ抑制シート100は、より高い電磁波ノイズ抑制性能を有する。なお、炭素繊維の配向方向とは、上述のようにして得られた近似楕円の長軸の方向(長軸の延出方向)である。
【0059】
2. 電磁波ノイズ抑制シートの製造方法
次に、本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シート100の製造方法について、説明する。
【0060】
まず、第1層10を作製するためのスラリーを作製する。第1層10を作製するためのスラリーは、カナダ標準ろ水度(CSF)で、例えば、200ml以上550ml以下、好ましくは250ml以上500ml以下である。CSFは、「JIS P 81821-2」に記載の方法で求められる。
【0061】
次に、作製したスラリーを、配向性抄紙機を用いて抄紙し、第1層10を形成する。配向性抄紙機とは、水壁を持った回転する抄紙金網に、ノズルからスラリーを吹きつけ、紙層をドラム内壁のワイヤー上に形成させるものである。抄紙金網の回転数によって、第1層10の炭素繊維の配向強度を制御することができる。抄紙金網の回転数は、例えば、300m/min以上3000m/min以下であり、好ましくは500m/min以上2500m/min以下であり、より好ましくは650m/min以上2000m/min以下である。抄紙金網の回転数が300m/min以上であれば、第1層10に含まれる炭素繊維の配向強度を大きくすることができる。抄紙金網の回転数が3000m/min以下であれば、省エネルギー化を図ることができる。
【0062】
以上の工程により、電磁波ノイズ抑制シート100を製造することができる。
【0063】
3. 電磁波ノイズ抑制シートの変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る電磁波ノイズ抑制シートについて図面を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態の第1変形例に係る電磁波ノイズ抑制シート200を模式的に示す断面図である。
【0064】
以下、本実施形態の第1変形例に係る電磁波ノイズ抑制シート200において、上述した本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シート100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
電磁波ノイズ抑制シート200では、
図7に示すように、第2層20を含む点において、上述した電磁波ノイズ抑制シート100と異なる。
【0066】
第2層20は、第1層10上に設けられている。第2層20は、第1層10に積層されている。図示はしないが、第2層20は、接着層などの他の層を介して、第1層10上に設けられていてもよい。
【0067】
第2層20は、第1層10と同様に、炭素繊維と、非導電性繊維と、を有している。第2層20の炭素繊維および非導電性繊維については、第1層10の炭素繊維および非導電性繊維についての説明を適用することができる。
【0068】
第1層10に含まれる炭素繊維の配向方向と、第2層20に含まれる炭素繊維の配向方向とは、互いに交差している。第1層10に含まれる炭素繊維の配向方向と、第2層20に含まれる炭素繊維の配向方向とは、好ましくは45°以上90°以下の角度、より好ましくは60°以上90°以下の角度で、互いに交差している。第1層10に含まれる炭素繊維の配向方向と、第2層20に含まれる炭素繊維の配向方向とは、90°の角度で互いに交差していてもよい。第1層10に含まれる炭素繊維のθ(式(7)で求められるθ)と、第2層20に含まれる炭素繊維のθとは、互いに異なる。
【0069】
第1層10と第2層20との接着は、特に限定されず、接着剤を用いてもよいし、第1
層10および第2層20を膨潤および膠化させることによって行ってもよい。
【0070】
電磁波ノイズ抑制シート200では、第1層10に含まれる炭素繊維の配向方向と、第2層20に含まれる炭素繊維の配向方向とは、互いに交差しており、好ましくは、45°以上90°以下の角度で互いに交差している。そのため、電磁波ノイズ抑制シート200では、例えば電磁波ノイズ抑制シート100に比べて、様々な方向に進行する電磁波に対して、高い電磁波ノイズ抑制性能を有することができる。
【0071】
なお、上記では、第1層10および第2層20を有する例について説明したが、電磁波ノイズ抑制シート200は、例えば、さらに、炭素繊維および非導電性繊維を有する第3層を有し、第3層に含まれる炭素繊維の配向方向は、第1層10に含まれる炭素繊維の配向方向、および第2層20に含まれる炭素繊維の配向方向と、交差してもよい。電磁波ノイズ抑制シート200が有する層(炭素繊維および非導電性繊維を有する層)の数は、2層以上であれば、特に限定されない。
【0072】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る電磁波ノイズ抑制シートについて図面を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態の第2変形例に係る電磁波ノイズ抑制シート300を模式的に示す断面図である。
【0073】
以下、本実施形態の第2変形例に係る電磁波ノイズ抑制シート300において、上述した本実施形態に係る電磁波ノイズ抑制シート100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
電磁波ノイズ抑制シート300では、
図8に示すように、第1保護層30と、第2保護層32と、を含む点について、上述した電磁波ノイズ抑制シート100と異なる。
【0075】
第1保護層30および第2保護層32は、第1層10を挟んでいる。第1層10は、第1保護層30と第2保護層32との間に設けられている。図示の例では、第1保護層30は、第1層10の上に設けられ、第2保護層32は、第1層10の下に設けられている。保護層30,32は、非導電性繊維を有する。保護層30,32が有する非導電性繊維については、上述した第1層10の非導電性繊維の説明を適用することができる。
【0076】
第1保護層30および第2保護層32は、第1層10を保護している。保護層30,32は、炭素繊維を含まない。電磁波ノイズ抑制シート300は、炭素繊維を含まない第1保護層30および第2保護層32で第1層10を挟んでいるため、電磁波ノイズ抑制シート300の表面から剛直な炭素繊維が飛び出す可能性が小さく、手触りが良い。
【0077】
第1層10と第1保護層30との接着、および第1層10と第2保護層32との接着は、特に限定されず、接着剤を用いてもよいし、第1層10および保護層30,32を膨潤および膠化させることによって行ってもよい。
【0078】
なお、図示はしないが、電磁波ノイズ抑制シート200に第1保護層30および第2保護層32を適用してもよい。すなわち、第1保護層30と第2保護層32との間に、第1層10および第2層20を設けてもよい。
【0079】
4. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
4.1. 第1実験例
4.1.1. 混抄紙の作製
セルロース繊維としてLBKPと、炭素繊維と、を含むスラリーに、紙力増強剤としてのカチオン澱粉(日本食品化工社製「ネオタック40T」)を固形分に対して0.5質量%添加して、カチオン澱粉を含むスラリーを作製した。LBKPのCSFを300mlに調整した。炭素繊維としては、平均繊維長3mmの三菱ケミカル社製のチョップドファイバーを用いた。LBKPとしては、北越コーポレーション株式会社新潟工場自製品を用いた。
【0081】
作製したスラリーを、配向性抄紙機を用いて抄紙し、混抄紙を作製した。配向性抄紙機としては、熊谷理機工業株式会社製の「実験用配向性抄紙機」を用いた。配向性抄紙機の抄紙金網の回転数を、650m/min、1700m/minと振った。
【0082】
また、作製したスラリーを用いて、TAPPI式標準抄紙法に基づいて、手抄き機で混抄紙を作製した。
【0083】
スラリーにおける炭素繊維の量を調整して、混抄紙の炭素繊維の含有量を振った。また、抄紙機に投入するスラリーの量を調整して、混抄紙の米坪を振った。
【0084】
4.1.2. 評価方法
作製した混抄紙において、上述した「1.3. 配向強度」に基づいて、近似楕円を求め、長軸と短軸との比から炭素繊維の配向強度を求めた。
【0085】
さらに、混抄紙の電磁波ノイズ抑制性能を評価した。電磁波ノイズ抑制性能は、マイクロストリップライン法によって伝送減衰率Rtp(dB)を測定することによって評価した。測定器としては、ROHDE&SCHWARZ社製のネットワークアナライザー「ZVA67」に、KEYCOM社製のテストフィクスチャ「TF-18C」を接続したものを用いた。測定は、「IEC62333」に準拠して行った。測定周波数を、500MHz~18GHzとした。
【0086】
マイクロストリップライン法では、
図9に示すように、伝送線路Tの延出方向に対して、上述した「1.3. 配向強度」で求めた近似楕円の長軸が垂直になるように混抄紙を配置した状態(
図9に示す状態A)と、近似楕円の長軸が平行になるように混抄紙を配置した状態(
図9に示す状態B)と、で評価行った。なお、
図9は、電磁波ノイズ抑制性能の評価方法を説明するための図であり、電磁界の方向を矢印で示している。
【0087】
さらに、作製した混抄紙の米坪、厚さ、および密度を測定した。米坪は、「JIS P
8124」に基づいて測定した。厚さおよび密度は、「JIS P 8118」に基づいて測定した。
【0088】
4.1.3. 評価結果
図10は、炭素繊維の含有量が2質量%である混抄紙の炭素繊維の配向強度(以下、単に「混抄紙の配向強度」ともいう)およびRtpを示す表である。
図11は、炭素繊維の含有量が5質量%である混抄紙の配向強度およびRtpを示す表である。
【0089】
図10および
図11において、「MSL向き」とは、マイクロストリップライン法における伝送線路と、近似楕円の長軸と、の関係を示している。「垂直」は、近似楕円の長軸と伝送線路とが垂直な状態(
図9に示す状態A)である。「平行」は、近似楕円の長軸と伝送線路とが平行な状態(
図9に示す状態B)である。また、「Rtp最大値の差」とは、垂直な状態におけるRtpの最大値と、平行な状態におけるRtpの最大値と、の差で
ある。
【0090】
図12~
図14は、炭素繊維の含有量が2質量%で、米坪が25g/cm
2程度の混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
図12は、配向性抄紙機の抄紙金網の回転数が1700m/minの条件で作製した混抄紙のグラフである。
図13は、配向性抄紙機の抄紙金網の回転数が650m/minの条件で作製した混抄紙のグラフである。
図14は、手抄き機で作製した混抄紙のグラフである。
図10の値は、
図12~
図14の値を読み取ったものである。
【0091】
図15~
図17は、炭素繊維の含有量が5質量%で、米坪が25g/cm
2程度の混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
図15は、配向性抄紙機の抄紙金網の回転数が1700m/minの条件で作製した混抄紙のグラフである。
図16は、配向性抄紙機の抄紙金網の回転数が650m/minの条件で作製した混抄紙のグラフである。
図17は、手抄き機で作製した混抄紙のグラフである。
図11の値は、
図15~
図17の値を読み取ったものである。
【0092】
図10および
図11に示すように、配向性抄紙機の抄紙金網の回転数を1700m/minで作製した混抄紙の配向強度は、2.3以上であった。配向性抄紙機の抄紙金網の回転数を650m/minで作製した混抄紙の配向強度は、1.8以上であった。手抄き機で作製した混抄紙では、炭素繊維はランダムに配置され、炭素繊維の配向強度は、1.0に近く、1.2以下となる。なお、
図10および
図11では、手抄き機で作製した混抄紙の配向強度を「-」で示している。
【0093】
図10および
図11に示すように、炭素繊維の含有量が同じで、米坪が同程度の混抄紙では、配向性抄紙機で作製した混抄紙の「垂直」におけるRtpは、配向性抄紙機で作製した混抄紙の「平行」におけるRtp、手抄き機で作製した混抄紙の「垂直」におけるRtp、および手抄き機で作製した混抄紙の「平行」におけるRtpよりも大きかった。これにより、フーリエ画像解析によって求められる炭素繊維の配向強度が1.8以上である混抄紙は、マイクロストリップライン法における伝送線路に対して、炭素繊維の配向方向が垂直となるように配置されることにより、高い電磁波ノイズ抑制性能を有することが分かった。
【0094】
図10および
図11に示すように、配向強度が大きいほど、「Rtp最大値の差」が大きくなる傾向があった。炭素繊維の含有量が2質量%の混抄紙では、米坪が大きいほど、「Rtp最大値」が大きくなる傾向があった。
【0095】
4.2. 第2実験例
4.2.1. 混抄紙の作製
米坪を変えたこと以外は、基本的に上述した第1実験例と同様に、混抄紙を作製した。
【0096】
4.2.2. 評価方法
上述した第1実験例と同様に、近似楕円を求め、長軸と短軸との比から炭素繊維の配向強度を求めた。そして、伝送線路の延出方向に対して、近似楕円の長軸が垂直になるように混抄紙を配置した状態と、近似楕円の長軸が平行になるように混抄紙を配置した状態と、に加え、伝送線路の延出方向に対して、近似楕円の長軸が45°になるように混抄紙を配置した状態で、Rtpを測定した。
【0097】
4.2.3. 評価結果
図18は、混抄紙の配向強度およびRtpを示す表である。
図19は、配向強度が2.7の混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
図20は、配向強度が2.8の
混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
図18の値は、
図19および
図20の値を読み取ったものである。
【0098】
図18~
図20に示すように、MSL向きが45°の状態におけるRtpは、「平行」の状態におけるRtpよりも大きく、「垂直」の状態におけるRtpよりも小さかった。これにより、伝送線路の延出方向に対する配向方向が90°に近いほど、電磁波シールド抑制性能が高くなることがわかった。さらに、伝送線路の延出方向に対する配向方向の角度を調整することにより、混抄紙の電磁波シールド抑制性能を制御できることがわかった。
【0099】
4.3. 第3実験例
4.3.1. 混抄紙の作製
炭素繊維の含有量および米坪を変え、かつ長網抄紙機を用いて混抄紙を抄紙したこと以外は、基本的に上述した第1実験例と同様に、混抄紙を作製した。
4.3.2. 評価方法
上述した第1実験例と同様に、混抄紙の配向強度およびRtpを評価した。
【0100】
4.3.3. 評価結果
図21は、混抄紙の配向強度およびRtpを示す表である。
図22は、配向強度が1.2の混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
図23は、配向強度が1.3の混抄紙の周波数に対するRtpを示すグラフである。
【0101】
図21~
図23に示すように、配向強度が1.3の混抄紙は、配向強度が1.2の混抄紙に比べて、「垂直」でのRtpが大きく、「Rtp最大値の差」は、10dB以上であった。配向強度が1.2の混抄紙の「Rtp最大値の差」は、6.4dBであり、上述した第1実験例における手抄き機で作製した混抄紙と、同程度であった。これにより、炭素繊維の配向強度が1.3以上の混抄紙は、炭素繊維の配向強度が1.3未満の混抄紙に比べて、「垂直」の状態における電磁波ノイズ抑制性能が高いことがわかった。
【0102】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0104】
10…第1層、20…第2層、30…第1保護層、32…第2保護層、100,200,300…電磁波ノイズ抑制シート