(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180797
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】印刷用コーティング剤、並びに該コーティング剤のコーティング層を有する印刷済み基材、容器及び包装材
(51)【国際特許分類】
C09D 127/06 20060101AFI20221130BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20221130BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221130BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20221130BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20221130BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221130BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221130BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C09D127/06
C09D133/00
C09D7/63
C09D191/06
C09D11/106
B32B27/00 E
B41J2/01 121
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087492
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】上田 正幸
(72)【発明者】
【氏名】寺川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】政木 秀夫
【テーマコード(参考)】
2C056
3E086
4F100
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056HA44
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB41
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA35
3E086DA08
4F100AJ11B
4F100AK01A
4F100AK15B
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100CA04B
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4F100HB31B
4F100YY00B
4J038BA212
4J038CD021
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4J038PC08
4J039AD05
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4J039FA02
4J039FA03
4J039GA24
4J039GA25
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、特にデジタル印刷物に対する密着性、基材として使用する塩化ビニル等のプラスチックに対する耐ブロッキング性、更に耐アルコール性に優れた印刷用コーティング剤を提供する。
【解決手段】
本発明の解決手段は、塩化ビニル系共重合樹脂、及びアクリル系樹脂を主バインダー樹脂とし、有機溶剤を含有する印刷用コーティング剤であって、以下を満たすことを特徴とする印刷用コーティング剤に関する。
(1)可塑剤をコーティング剤全固形分に対し1.0~10.0質量%含有する。
(2)キレート化合物をコーティング剤全固形分に対し0.03~10.0質量%含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系共重合樹脂、及びアクリル系樹脂を主バインダー樹脂とし、有機溶剤を含有する印刷用コーティング剤であって、以下を満たすことを特徴とする印刷用コーティング剤。
(1)可塑剤をコーティング剤全固形分に対し1.0~10.0質量%含有する。
(2)キレート化合物をコーティング剤全固形分に対し0.03~10.0質量%含有する。
【請求項2】
前記キレート化合物がチタン系キレート化合物である請求項1に記載の印刷用コーティング剤。
【請求項3】
ワックスをコーティング剤全固形分に対し0.15~10.0質量%含有する請求項1又は2に記載の印刷用コーティング剤。
【請求項4】
デジタル印刷用である請求項1~3のいずれかに記載の印刷用コーティング剤。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の印刷用コーティング剤を印刷済みの基材にコーティングした印刷済み基材。
【請求項6】
請求項1~4の何れかに記載の印刷用コーティング剤をデジタル印刷済みの基材にコーティングした印刷済み基材。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の印刷済み基材を使用した容器、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用コーティング剤および印刷済み基材、容器及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種包装材料に使用される印刷物の光沢向上や印刷物の皮膜保護の目的から、印刷の後に無色透明な印刷用コーティング剤で印刷物をコーティングすることは行われている。
【0003】
各種包装材料の基材となるプラスチックフィルム基材や紙基材に、印刷インキや印刷用コーティング剤を印刷する方法には、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、デジタル印刷方式等が挙げられる。印刷用コーティング剤にはこれらの印刷インキへの密着性、基材として使用する塩化ビニル等のプラスチックに対する耐ブロッキング性、さらには、近年衛生性の観点から必須となった、除菌や消毒のために使用される耐アルコール性(特に包装材料そのものをアルコールで示した布や紙で拭くことに対する耐擦過性)も要求される。
【0004】
特に、デジタル印刷方式に適した印刷用コーティング剤として、特定のポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂およびロジン変性マレイン酸樹脂を含有する印刷用コート剤が知られている(例えば特許文献1参照)。該印刷用コート剤は、耐スクラッチ性、耐テープ接着性、耐熱性、光沢などの諸物性に加え、塩ビシートへの耐ブロッキング性に優れているが、近年要求が高い耐アルコール性については何ら言及されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特にデジタル印刷物に対する密着性、基材として使用する塩化ビニル等のプラスチックに対する耐ブロッキング性、更に耐アルコール性に優れた印刷用コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、塩化ビニル系共重合樹脂及びアクリル系樹脂を主バインダー樹脂とし、有機溶剤を含有する印刷用コーティング剤であって、以下を満たす印刷用コーティング剤を提供する。
(1)可塑剤をコーティング剤全固形分に対し1.0~10.0質量%含有する。
(2)キレート化合物をコーティング剤全固形分に対し0.03~10.0質量%含有する。
【0008】
また本発明は、前記キレート化合物がチタン系キレート化合物である印刷用コーティング剤を提供する。
【0009】
また本発明は、ワックスをコーティング剤全固形分に対し0.15~10.0質量%含有する印刷用コーティング剤を提供する。
【0010】
また本発明は、デジタル印刷用である印刷用コーティング剤を提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載の印刷用コーティング剤を印刷済みの基材にコーティングした印刷済み基材を提供する。
【0012】
また本発明は、前記記載の印刷用コーティング剤をデジタル印刷済みの基材にコーティングした印刷済み基材を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の印刷済み基材を使用した容器、包装材を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、特にデジタル印刷物に対する密着性、基材として使用する塩化ビニル等のプラスチックに対する耐ブロッキング性、更に耐アルコール性に優れた印刷用コーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(言葉の定義)
本発明において「部」とは全て「質量部」を示し、「コーティング剤全量」とは、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだインキの全量を示し、「コーティング剤固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0016】
(バインダー樹脂(A))
本発明で使用するバインダー樹脂は、塩化ビニル系共重合樹脂、及びアクリル系樹脂を主バインダー樹脂とする。
その他、ロジン系樹脂;、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)などセルロース系樹脂等の繊維素系樹脂;、ポリウレタン系樹脂;、ポリエステル樹脂;、塩素化ポリプロピレン樹脂;ビニル系樹脂;等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有してもよい。
【0017】
(塩化ビニル系共重合樹脂)
塩化ビニル系共重合樹脂としては、特に限定なく公知の樹脂を使用できるが、本発明においては塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
本発明で使用する塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造は5~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、被膜物性、耐擦傷性等が良好となる。
また有機溶剤への溶解性の観点からビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものも好ましい。水酸基価としては20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
また塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の添加量としては、コーティング剤固形分中に10.0~40.0質量%含有し、好ましくは15.0~25.0質量%である。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は特に塗膜形成に寄与するのが、特にこの範囲で添加するが効果的である。
【0019】
(塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂)
本発明で使用する塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂は、塩化ビニルとビニルイソブチルエーテルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂の固形分100質量%中、ビニルイソブチルエーテル由来の構造は1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~99質量%であることが好ましい。
塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂の添加量としては、前述の通りコーティング剤固形分に対し10.0~40.0質量%含有するが、好ましくは15.0~23.0質量%である。塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂は特に塗膜形成に寄与するが、特にこの範囲で添加するのが効果的である。
【0020】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特段限定されない。重合性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリル酸アミド誘導体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類の(メタ)アクリル酸のモノまたはジエステル類、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の酸基を有するビニル化合物等が挙げられる。重合法も特に限定なく公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000の範囲である。
また、アクリル系樹脂の添加量としては、コーティング剤固形分に対し50.0~80.0質量%含有し、好ましくは65.0~75.0質量%である。アクリル系樹脂は特に 耐熱性、耐アルコール性に寄与するが、特にこの範囲で添加するのが効果的である。
【0021】
(ロジン系樹脂)
本発明で使用するロジン系樹脂としては、酸価が190mgKOH/g以下であり、且つ軟化点が160℃以下であるロジン系樹脂であれば特に限定なく、印刷インキ用に汎用されるロジン、及び又はロジンの誘導体を使用できる。ロジンまたはロジンの誘導体とは具体的には、ロジン類またはそのカルボキシル基含有誘導体等である。ロジン類は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、水添ロジンまたはこれらの重合物等である。ロジンの誘導体は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸を添加したロジン誘導体等のカルボキシル基含有誘導体等である。
ロジン系樹脂の酸価は、中でも100mgKOH/g以下であることが好ましく50mgKOH/g以下であることがなお好ましい。一方下限は特に限定はないが、20mgKOH/g以上であれば特に限定なく使用することができる。
【0022】
本発明においては、中でもロジンのマレイン酸誘導体であるロジン変性マレイン酸樹脂あるいはロジンのフマル酸誘導体であるロジン変性フマル酸樹脂を使用することが好ましい。本発明で使用するロジン変性マレイン酸樹脂あるいはロジン変性フマル酸樹脂は、特に限定なく公知のロジン変性マレイン酸樹脂あるいはロジン変性フマル酸樹脂を使用することができる。ロジン変性マレイン酸樹脂あるいはロジン変性フマル酸樹脂は、酸価が25mgKOH/g以上320mgKOH/g以下のものが好ましく、特に酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
ロジン系樹脂の添加量は、コーティング剤固形分に対し0.7~4.5質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.5~3.0質量%である。
【0023】
市販のロジン系樹脂としては、荒川化学工業社製マルキードNo.1、2、5、6、8、31、32、33、34、3002等、ハリマ化成社製ハリマックR-80、T-80、R-100、M-453、M-130A、135GN、145P、R-120AH、ハリタック4851、4821、4740、28JA等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、前記アクリル樹脂、前記塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂、前記ロジン系樹脂を所定量配合する以外は特に限定なく、公知のバインダー樹脂を併用することもできる。例えば硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)などセルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。
【0025】
(繊維素系樹脂)
繊維素系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース(硝化綿ともいう)、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。ポリウレタン樹脂の併用では、耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0026】
ニトロセルロース(硝化綿)を使用する事で、顔料への高い分散性が得られる事から、特に表刷り用コーティング剤として使用すれば、印刷インキ塗膜の強度を向上させることができ好適である。前記ニトロセルロース(硝化綿)としては、窒素含有量が10~13質量%、平均重合度30~500が好ましく、より好ましくは窒素含有量が10~13質量%、平均重合度45~290である。
【0027】
ニトロセルロース(硝化綿)の添加量としては、コーティング剤固形分に対し10.0~25.0質量%含有し、好ましくは15.0~20.0質量%である。
【0028】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。ポリオールとしては例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(1)、これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)などが挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
また鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。
また、ポリウレタン樹脂の添加量としては、インキ全量に対し10.0~80.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは15.0~50.0質量%である。
【0032】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特段限定されない。
アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能アルコールが好ましい。
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は500~6000であることが好ましい。さらに好ましくは1400~5500である
また、ポリエステル樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0033】
(塩素化ポリオレフィン樹脂)
本発明で使用する塩素化ポリオレフィン樹脂としては、水素原子の少なくとも一部が塩素原子により置換されたポリオレフィン樹脂であれば特に限定されない。塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、5,000~100,000が好ましく、5,000~70,000であることがなお好ましく、7,000~50,000であることが更に好ましい。また、塩素化ポリオレフィン樹脂は基材への接着性向上するため、その塩素含有率が25~45質量%であることが好ましい。また有機溶剤への溶解性の観点から、塩素含有率は26~43質量%であることが更に好ましい。ここで、塩素含有率とは、塩素化ポリオレフィン樹脂100質量%中の塩素原子の含有質量%をいう。また、耐ブロッキング性とのバランスの観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂はコーティング剤固形分中に1.0~10.0質量%含有し、好ましくは1.5~4.5質量%である。
【0034】
塩素化ポリオレフィン樹脂は、柔軟性を持つアルキル基を分枝構造として有するため、低温下でも柔軟な樹脂であり基材接着性の向上に寄与する。塩素化ポリオレフィン樹脂におけるポリオレフィン樹脂の構造は、特に制限はない。例えば、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィン系不飽和炭化水素の単独重合体又は共重合体を含有する樹脂が好ましい。中でもポリプロピレン構造(すなわち塩素化ポリプロピレン構造)を含む塩素化ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
【0035】
(ビニル系樹脂)
また、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂や塩化ビニル-ビニルイソブチルエーテル共重合樹脂以外のビニル系樹脂を使用してもよい。例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、及びそれら相互のブレンド品或いは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。これら塩化ビニル系樹脂は2種以上の混合物でもよく、他の合成樹脂との混合物でもよい。
【0036】
また酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルモノマー単独または酢酸ビニルモノマーと重合可能な不飽和モノマーとの共重合体である。不飽和モノマーとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに代表される長鎖(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等に代表される水酸基含有(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル等のビニルモノマー、エチレン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0037】
ビニル系樹脂の分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。
ビニル系樹脂の添加量としては、コーティング剤固形分中に5.0~40.0質量%含有し、好ましくは10.0~25.0質量%である。
【0038】
(硬化剤)
また、バインダー樹脂にイソシアネート系等の硬化剤を使用してもよい。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からリキッド印刷コーティング剤固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%であればより好ましい。
バインダー樹脂の合計は、コーティング剤固形分に対して0.15~50質量%の範囲であることが好ましく、1~40質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
【0039】
(可塑剤)
本発明においては、可塑剤をコーティング剤全固形分に対し1.0~10.0質量%含有することが特徴である。可塑剤を含有することで、コーティング剤の増粘が抑制でき、コーティング乾燥皮膜の柔軟性及び可とう性が保持できる。
可塑剤としては、ひまし油の様な脂肪油、ジオクチルフタレートの様なフタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤やセバシン酸エステル系可塑剤の様な脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ化植物油の様なエポキシ系可塑剤、アセチルクエン酸トリブチルの様なクエン酸エステル系可塑剤、N-ブチルベンゼンスルフォンアミドやN-エチルトルエンスルフォンアミドの様なスルホン酸アミド系可塑剤が挙げられる。中でも、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、リン酸エステル系可塑剤及びスルホン酸アミド系可塑剤が好ましい。最も好ましいのはスルホン酸アミド系可塑剤である。
前記可塑剤の配合量は、コーティング剤固形分に対して1.0~10.0質量%の範囲であることが好ましく、3.0~7.0質量%の範囲で使用することが最も好ましい。これら可塑剤は各々単独して使用しても良いし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(キレート化合物)
本発明においては、キレート化合物をコーティング剤固形分に対し0.03~10.0質量%含有することが特徴である。キレート化合物を該範囲で含有することで、バイオマス寄与のために添加するロジン系樹脂とのバランスがとれ、ラミネート強度やインキの裏移り性が改善されたインキとすることができる。
【0041】
キレート化合物は特に特に金属キレート化合物が好ましい。金属キレート化合物としてはチタン系キレート化合物、ジルコニウム系キレート化合物、又はアルミニウム系キレート化合物を使用することが出来る。中でもチタン系キレート化合物が好ましい。
チタン系キレート化合物としては、アルコキシド、アシレート、キレート錯体に分類されるが、本発明で使用するキレート化合物としてはアルコキシドやアシレートよりもキレート錯体がより好ましく、キレート錯体の具体的なものとしてはチタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、リン酸エステルチタン錯体等を挙げる事ができる。前記チタンエチルアセトアセテート、リン酸エステルチタン錯体についてはアセチルアセトンフリーが実現できより安全性が高い。中でもチタンキレート錯体が好ましい。
含有量としては、中でもコーティング剤固形分に対し0.03~10.0質量%含有することがなお好ましく1.5~6.5質量%含有することが最も好ましい。
【0042】
(ワックス)
本発明のコーティング剤は、炭化水素系ワックスを、コーティング剤固形分に対して0.15~10.0質量%含有することが好ましい。
前記炭素ワックスとしては、ポリオレフィンワックスや、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でもポリエチレンワックスが好ましい。
【0043】
(有機溶剤)
本発明のコーティング剤で使用する有機溶剤は、特に限定なく印刷インキ分野で使用される有機溶剤を使用することができる。例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、グリセロール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、リエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル等の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0044】
中でも、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
【0045】
本発明の印刷用コーティング剤は、更に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、着色剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤、更には抗菌抗ウイルス剤なども含むこともできる。
【0046】
(印刷用コーティング剤の製造方法)
本発明の印刷用コーティング剤は、前記バインダー樹脂や前記可塑剤、前記キレート化合物等を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。分散機としては分、一般に使用される分散撹拌機を用いて行われる。
【0047】
本発明の印刷用コーティング剤は、一般的なコーティング方法によりプラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材にコーティング可能である、具体的には、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。中でも工業的観点から、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)を使用することが好ましい。
【0048】
本発明のコーティング剤を、グラビアコーターを用いてコーティングする場合、その粘度が離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて12~30秒であればよく、より好ましくは15~20秒である。
【0049】
本発明のコーティング剤のコーティング層の厚みは、用途や基材の材質により適宜調整できるが、例えば0.5~2μmの範囲が好ましい。
【0050】
(印刷済み基材)
本発明における印刷済み基材とは、紙基材あるいはプラスチック基材などからなる基材上に、印刷インキを印刷して、印刷層を形成し、更にその印刷面に本発明の本発明のコーティング剤をコーティングして保護層を形成することで得ることができる。したがって基材/印刷層/コーティング剤をコーティングした保護層となる。
【0051】
印刷インキとしてはグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、液体トナー、インクジェットインキ等が挙げられ、それらの印刷方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、枚葉印刷方式、デジタル印刷方式等が挙げられる。中でも、デジタル印刷方式によって形成されたデジタル印刷層の多くは、他のグラビアインキ、フレキソインキ、枚葉インキ(オフセットインキ)等により形成された印刷層と比較して脆いため、本発明の印刷用コート剤からなる保護層による効果をより発揮することができる。
【0052】
(デジタル印刷層)
上記デジタル印刷層を形成するインキは、液体トナー、水性インクジェットインキ、紫外線硬化型インクジェットインキ、溶剤型インクジェットインキ等が挙げられ、デジタル印刷できるものであれば特段限定されない。なお、プラスチック基材への印刷を考慮すると液体トナーまたは紫外線硬化型インクジェットインキであることが好ましい。例えば液体トナーとしては、トナー粒子を水及び/又は有機溶剤に分散した一般的なものが挙げられる。液体トナーは、トナー粒子を印字体に固定するためのバインダー樹脂、トナー粒子を可視化するための着色剤、液体トナーの電気的特性を調整するための電荷調整剤等を含有する。
【0053】
バインダー樹脂としては、液体トナーに通常使用される公知の樹脂を使用することができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル酸共重合樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
着色剤としては、液体トナーに色を付与する材料であってよい。例えば顔料および染料、例えばブラック、マゼンタ、シアン、イエロー、およびホワイトのような色をインクに付与するものでよく、顔料としては着色顔料、磁性粒子、アルミナ、シリカ、および/または他のセラミックスまたは有機金属等も使用可能である。
【0055】
電荷調整剤としては、例えば、ナフテン酸、オレイン酸、オクテン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩、ポリオキシエチル化アルキルアミンのような非イオン性界面活性剤、レシチン、アマニ油等の油脂類、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルなどの公知の電荷調整剤を使用することができる。
【0056】
(基材)
本発明で使用する基材は、紙基材またはプラスチック基材である。あるいはこれらの基材に金属箔や金属蒸着層等の金属層を有していてもよいし、無機蒸着層等の無機膜を有していてもよい。
【0057】
(紙基材)
紙基材は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0058】
(プラスチック基材)
プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよい。具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0059】
また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。また該積層体の構成に、金属箔、金属蒸着膜層、無機蒸着膜層、酸素吸収層、アンカーコート層、ニス層等があっても構わない。
【0060】
前記単層の紙基材あるいはプラスチック基材、またはこれらの積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明の印刷用コーティング剤は特に限定なく使用することができる。
【実施例0061】
以下に実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。本発明はもとより、これらの実施例の範囲に限定されるべきものではない。以下、「部」「%」は特に断りのない限り、質量基準である。
【0062】
(実施例1)
(印刷用コーティング剤の製造方法)
塩化ビニル系共重合樹脂として、塩化ビニルービニルイソブチルエーテルの共重合体であるラロフレックス(BASF株式会社製)6部、アクリル系樹脂として、アクリット(大成ファインケミカル株式会社製)19.8部、可塑剤としてトップサイザー(川口薬品株式会社製)1.5部、ポリエチレンワックスAとして分散ワックス(株式会社岐阜セラツク製造所製)0.3部、ポリエチレンワックスBとしてセリダスト(オー・ジー株式会社製)0.2部、キレート化合物としてチタンキレート オルガチックス(マツモトファインケミカル株式会社製)2部、及び酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、メチルケトンを表1に示す配合で加えた総計100部を練肉し、印刷用コーティング剤1を得た。
【0063】
(実施例2~3)
表1の配合に従って、実施例2,3の印刷用コーティング剤2,3を得た。
実施例3については、実施例1の塩化ビニルービニルイソブチルエーテルの共重合体であるラロフレックス(BASF株式会社製)の代わりに、塩化ビニルー酢酸ビニルの共重合体であるソルバイン(日信化学工業株式会社製)を使用した。
【0064】
(比較例1~2)
表1の配合に従って、比較例1,2の印刷用コーティング剤H1、H2を得た。
比較例2については、アクリル系樹脂として、アクリット(大成ファインケミカル株式会社製)の代わりに、パラロイド(ダウインコーポレイテッド製)を使用し、ノルマルプロピルアルコールも使用した。
【0065】
(各種印刷用コーティング剤の印刷方法)
膜厚20μmの延伸ポリプロピレンフィルム (OPP フタムラ化学社製 FOR 膜厚20μm)に印刷されたデジタル印刷物(ヒュ-レットパッカード製Indigo2000使用)の上に、ザーンカップ#3で17秒に希釈した(希釈溶剤:質量比率にて酢酸エチル/ノルマルプロピルアルコール=1/1)した印刷用コーティング剤を、ヘリオ175Lベタ版で印刷し、印刷済み基材を得た。印刷好き基材の、印刷用コーティング塗膜面について、次の評価方法で評価した。
【0066】
(評価方法)
〔基材接着性〕
前記印刷方法で得た印刷用コーティング塗膜面を、24時間放置後、当該塗膜面にセロファンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた後、素早くテープを引き剥がし、塗膜面の状態を目視評価した。評価4以上が実用範囲である。
(評価基準)
5:塗膜面がフィルムから全く剥離しない。
4:塗膜面の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離する。
3:塗膜面の面積比率として、20%以上、50%未満がフィルムから剥離する。
2:塗膜面の面積比率として、50%以上、80%未満がフィルムから剥離する。
1:塗膜の面積比率として、80%以上がフィルムから剥離する。
【0067】
〔耐アルコール適性1〕(カビキラー抗菌スプレー)
前記印刷方法で得た印刷用コーティング塗膜面を、学振型耐摩擦試験機を用いて、除菌スプレーをしみ込ませたあて布(金巾)で200gの荷重下30回摩擦し、塗膜面の変化からアルコール適性を評価した。
評価4以上が実用範囲である。
(評価基準)
5:塗膜面、あて布ともに変化なし。
4:塗膜面に変化はないが、あて布が着色する。
3:塗膜面に筋状の傷が認められる。
2:塗膜面に太く筋状の傷が認められる。
1:塗膜面に面状の傷が認められる。
【0068】
〔耐アルコール適性2〕(75%エタノール)
前記印刷方法で得た印刷用コーティング塗膜面を、75%アルコールを浸した綿棒で、印刷面を30回擦り、インキの取られ具合を評価。 同じ試験を5回行う。
評価4以上が実用範囲である。
(評価基準)
5:塗膜面、綿棒ともに変化なし。
4:塗膜面に変化はないが、綿棒が着色する。
3:塗膜面に僅かにインキ取られが認められる。
2:塗膜面に太く筋状のインキ取られが認められる。
1:塗膜面のインキがほとんど取られる。
【0069】
〔耐塩ビブロッキング性〕
前記印刷方法で得た印刷用コーティング塗膜面を、当該塗膜面と同じ大きさに切った市販の軟質塩化ビニルシート(抗菌クリア、チェック柄、リバーシブル柄(表、裏))と塗膜面とを重ね合わせて、0.5kg/cm2の荷重をかけ、50℃湿度80%の雰囲気下で24時間放置後、塗膜面とポリ塩化ビニルシートを引き剥がし、コーティング剤の剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。なおここで「塩ビ」とは、塩化ビニルのことである。
(評価基準)
5:塗膜が全く剥離しなかったもの。
4:塗膜がフィルムから剥離した面積が20%以上、50%未満のもの。
3:塗膜がフィルムから剥離した面積が50%以上、75%未満のもの。
2:塗膜がフィルムから剥離した面積が75%以上、90%未満のもの。
1:塗膜がフィルムから剥離した面積が90%以上のもの。
【0070】