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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180804
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】高圧散水機
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20221130BHJP
   F04D 9/00 20060101ALI20221130BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20221130BHJP
   B05B 12/08 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F04D13/06 B
F04D9/00 D
F04D29/58 D
B05B12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087502
(22)【出願日】2021-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第30回 NEW環境展 第12回地球温暖化防止展 2021/03/17-2021/03/19 建設・測量生産性向上展 2021/05/12-2021/05/14 自社ホームページ 令和3年5月6日より掲載 https://www.super-ace.co.jp/products/washers/ https://www.super-ace.co.jp/products/washers/sprinkler/ https://www.super-ace.co.jp/products/washers/sprinkler/spw-1050/
(71)【出願人】
【識別番号】503193937
【氏名又は名称】スーパー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】西田 祐宜
(72)【発明者】
【氏名】森永 昌和
【テーマコード(参考)】
3H130
4F035
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB25
3H130AB60
3H130AC01
3H130BA33G
3H130BA87A
3H130BA97A
3H130CA29
3H130DD02X
3H130DD03X
3H130DF03X
3H130DG03X
3H130DG05X
3H130EA03A
4F035AA01
4F035BB21
(57)【要約】
【課題】家庭用電源のAC100Vで使用可能なDCブラシレスモータを採用した小型でかつ工事現場での使用に際して出力も使い勝手も耐久性も満足させることができる高圧散水機を提供する。
【解決手段】高圧散水機1は、台車2上にポンプ4、このポンプ4の上部にDCブラシレスのアウターロータ型のモータ3、このモータ3の上部にファンを配置し、モータ3の回転軸3Aをポンプ4とファン5の作動軸として共用化して設置面に対して垂直となるように配置し、さらに、モータ3とファン5と制御回路部Cを覆って吸送経路を形成するカバー6を備えている。
【効果】高さ方向の小型化が可能となり小回りが利く。また、カバーにより粉塵や飛沫から保護され、劣悪環境下にも耐える。さらに、モータを大型化することなく高回転(高出力)が可能となり、高負荷であってもトラブルが生じにくく安定使用が可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車上に、DCブラシレスモータと、このモータにより作動させて水に高圧を付与するポンプと、前記モータを冷却するファンと、を備えた高圧散水機において、前記ポンプは前記台車の底部の基板上に、前記モータは前記ポンプの上部に、各々配置し、前記モータはアウターロータ型を採用すると共に回転軸を設置面に対して垂直となるように配置し、この回転軸の設置面側の一端を前記ポンプの作動軸とし、かつ設置面側と反対側の他端を前記ファンの駆動軸とし、さらに、前記モータと前記ファンと該モータ駆動用のドライバとを含む制御回路部を覆って該ファンによる吸送経路を形成するカバーを備えた高圧散水機。
【請求項2】
呼水自給のための水タンクを備え、この水タンクから前記ポンプに対して呼び水を供給する請求項1記載の高圧散水機。
【請求項3】
前記ポンプに接続されたエア抜管、前記ポンプに接続された吐出管、前記ポンプに接続された吸水管、の少なくとも1つに渇水抑制用圧力センサを設けた請求項1又は2記載の高圧散水機。
【請求項4】
前記ポンプに接続された吐出管に高圧抑制用圧力センサを設けると共に該ポンプに接続された吐出管に逆止弁を設けた請求項1~3のいずれかに記載の高圧散水機。
【請求項5】
前記ポンプに接続された吐出管の先端部に設けた吐出ノズルに低飛距離抑制用圧力センサを設けると共に、前記ポンプに接続された吐出管先端の吐出ノズルに口径開度調整機構を設けた請求項1~4のいずれかに記載の高圧散水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外の解体現場、工事現場など劣悪環境下で、家庭用電源のAC100Vで使用可能で、十分な散水飛距離を有すると共に小型で小回りが利き、耐久性も十分な高圧散水機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによってポンプを駆動し、そのポンプによって加圧した水を噴射する高圧水噴射機がある。この高圧水噴射機は、従来、可搬性を有する個人使用向きとされるものでは、一般的にはモータの回転数を制御するためのプリント基板などが少なく構成が簡素であることから、家庭用電源(AC100V)で作動するACインダクションモータを使用していることが多い。
【0003】
ところが、このACインダクションモータを使用することは、取り扱いが簡便ではあるものの、電源コードの延長や他の電動工具との併用に伴う電源電圧の低下によって始動不良を生じやすく、また、始動用コンデンサの破損などが発生し、使用にあたっては制限を受けていた。
【0004】
よって、この種の、特に高信頼性を必要とする高圧水噴射機に用いるモータとしては、ACインダクションモータより、DCブラシレスモータを採用することが望ましかった。
【0005】
しかしながら、DCブラシレスモータはACインダクションモータに較べると大型であり、可搬性を要求されるこの種の高圧水噴射機においては不向きとされていた。さらには、DCブラシレスモータはその発熱量がACインダクションモータに較べて大きく、熱によって上記プリント基板を破損する可能性もあり従来は採用されるに至らなかった。
【0006】
また、DCブラシレスモータは、ACインダクションモータに較べると、モータの回転数を制御するためのプリント基板を必要とするため、水を扱う高圧水噴射機においては、噴射する水やその飛沫によってプリント基板の絶縁不良などのトラブルが多発する可能性があり不向きとされていた。
【0007】
以上の点を解消するにしても例えばDCブラシレスモータのプリント基板等の防水性を向上させるとすれば、内部をシールする必要が生じ、このようにシールすると今度は、プリント基板等の放熱を妨げるといった矛盾が生じ、冷却用のファンを発熱部材毎に設けると、その分だけさらに装置が大型化してしまうといった問題が生じていた。
【0008】
そこで、本出願人は、特許文献1(実用新案登録第3098140号公報)において、上記問題、すなわちDCブラシレスモータを用いつつも小型化を図ることができると共に、防水性及び放熱性を矛盾なく向上させることができ、安定して使用することができる高圧水噴射装置を提案した。
【0009】
特許文献1は、モータによってポンプを作動させて供給された水を加圧して噴射する高圧水噴射装置において、全体を覆って内部へ水が侵入することを防止すると共に吸気口と排気口とが形成された外カバーと、前記モータとしてDCブラシレスモータとを備え、このDCブラシレスモータの出力軸の一端が冷却用のファンの回転軸とされると共に、他端が前記ポンプの作動軸とされている構成である。特許文献1は、それまでにあった課題を解決したものであったが、例えばこれを屋外の(解体)工事現場に持ち込んで粉塵を抑制するために用いようとすると次の問題があった。
【0010】
(1)重機が稼働する近くから散水することは危険であるため、ある程度離れた位置から散水することに伴って散水飛距離が十分ではないといった問題がある。また、(2)散水飛距離を満足させるために、DCブラシレスモータを大型化すると、工事現場で小回りが利かず、使い勝手が悪いといった問題がある。さらに、(3)大型化を回避しようとして特許文献1の構成におけるモータ及びファンとポンプの軸を単純に設置面に対して垂直(縦)に配置したとしても、大型化回避と引き換えにモータの高負荷が必須となり排熱(モータ等の冷却)の問題が生じ、例えば上部に放熱する構成であれば工事現場における粉塵や飛沫がかかって故障の原因となるなど安定した使用のための新たな問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3098140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、家庭用電源のAC100Vで使用可能なDCブラシレスモータを採用した小型の特許文献1の高圧水噴射装置を屋外の工事現場で用いようとすると、散水飛距離が十分でない可能性があること、また、散水飛距離を満足させようとしてモータを大型にすると工事現場での小回りが利かないこと、さらには特許文献1の構成を単純に縦配置しただけでは排熱と粉塵及び飛沫の悪影響が生じること、である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、台車上に、DCブラシレスモータと、このモータにより作動させて水に高圧を付与するポンプと、前記モータを冷却するファンと、を備えた高圧散水機において、前記ポンプは前記台車の底部の基板上に、前記モータは前記ポンプの上部に、各々配置し、前記モータはアウターロータ型を採用すると共に回転軸を設置面に対して垂直となるように配置し、この回転軸の設置面側の一端を前記ポンプの作動軸とし、かつ設置面側と反対側の他端を前記ファンの駆動軸とし、さらに、前記モータと前記ファンと該モータ駆動用のドライバとを含む制御回路部を覆って該ファンによる吸送経路を形成するカバーを備えることとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、アウターロータ型のDCブラシレスモータを採用することで、軸方向の短縮化、つまりモータの薄型、小型化が可能となる。そして、このモータの回転軸を接地面に対して垂直となるように配置して、該回転軸の一端をポンプの、他端をファンの、それぞれの作動軸として共用することで、アウターロータ型のDCブラシレスモータを採用することと相まって平面積だけでなく高さ方向にも小型化と、ポンプを台車の下部に配置して重心を低くしたことと相俟って、工事現場での安定した可搬性と小回りが利き、また、カバーによりモータやドライバを覆っているので、粉塵や飛沫がかかりにくくなり、耐久性も向上するといった効果がある。
【0015】
なお、本発明は、モータを高速駆動させるドライバを採用して家庭用電源AC100V:15A以下で1.1kWの出力を実現し、水平吐出した場合の飛距離が約20m(鉛直高さは約9m)に達するようにしているので、工事現場での粉塵抑制のために散水する用途として十分に飛距離を満足させることができる。
【0016】
したがって、本発明は、工事現場で使用するに際して散水飛距離が十分で、また、散水飛距離を満足させようとして大型のモータを用いる必要がなく、また、高出力を目指して大型ではないモータを高負荷駆動する場合の発熱を、熱源となるモータやドライバを放熱が容易な上部に位置させると共に冷却用のファン及びカバーを設けて粉塵や飛沫の影響を受けないようにしつつ、確実かつ速やかに冷却するようにしているので、発熱トラブルを抑制して安定駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の高圧散水機の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の高圧散水機の概略構成を示す右側面方向から見た図である。
図3】本発明の高圧散水機の概略構成を示す後方側から見た図である。
図4】本発明の高圧散水機の概略構成を示す上方から見た図である。
図5】本発明の高圧散水機において、(a)はファン、モータ、ポンプ周辺構成を示す図、(b)はファンとカバーによるモータ及び制御回路図冷却する状況を説明するための図である。
図6】本発明の高圧散水機においてモータの回転軸を示して右側面方向から見た図である。
図7】(a)~(本発明の高圧散水機の操作手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、家庭用電源のAC100Vで使用可能なDCブラシレスモータを採用した小型でかつ工事現場での使用に際して出力も使い勝手も耐久性も満足させることができる高圧散水機を提供するという目的を、ポンプは台車の底部の基板上に、モータはポンプの上部に、各々配置し、モータはアウターロータ型を採用すると共に回転軸を設置面に対して垂直となるように配置し、この回転軸の設置面側の一端をポンプの作動軸とし、かつ設置面側と反対側の他端をファンの駆動軸とし、さらに、モータとファンと該モータ駆動用のドライバとを含む制御回路部を覆って該ファンによる吸送経路を形成するカバーを備えることで達成した。
【0019】
本発明の高圧散水機は、屋外の例えば解体現場や工事現場における粉塵を抑制するために散水するために用いる。つまり、少なくとも水平飛距離で10m程度は散水飛距離がないと、作業員が重機の近くまで寄って散水することになってしまい、非常に危険である。
【0020】
水平飛距離を確保するために、例えばポンプ駆動用モータを大型化し、この大型モータを安定駆動するために大容量電源を要することとすると、まず、モータが大型化して現場での小回りが利かないこと、大容量電源の確保が必要となること、のように新たな別の問題として生じることになる。さらに、モータを大型化しない代わりに高負荷で駆動すると今度は発熱あるいは排熱の問題が生じることになる。
【0021】
そこで、本発明は、高回転が望めるDCブラシレスで、かつアウターロータ型のモータを採用することにした。こうすることで、大型化はせず、むしろ厚み(軸)方向に薄くすることができて高回転が望める。また、このモータの回転軸の両端を、ファンとポンプの作動軸として供用する、つまりファン、モータ、ポンプを一体構成化することで各部をアッセンブルする際に必要になる部品の省略が可能となり、一層の小型化が可能となった。
【0022】
続いて、ファン、モータ、ポンプの小型化が可能となったが、上記のとおりモータを高回転駆動するので、モータ及びモータ駆動用ドライバ周りの発熱が残る問題となる。この発熱については、本発明では、カバーがモータ及び駆動用ドライバを含む制御回路部を、カバーが上方及び側方を覆って、下方から吸気し、下方へ排気するカバーが粉塵や飛沫からこれら部品を保護するとともに効率的な吸送気経路を形成することで解決した。
【0023】
また、本発明は、上記構成において、呼水自給のための水タンクを備え、この水タンクからポンプに対して呼び水を供給するようにしてもよい。このようにすることで、電源だけでなく、呼水とする水源を必要としないので、より一層使い勝手が向上する。
【0024】
さらに、本発明は、上記構成において、前記ポンプに接続されたエア抜管、前記ポンプに接続された吐出管、前記ポンプに接続された吸水管、の少なくとも1つに渇水抑制用圧力センサを設けるようにしてもよい。こうすることで、渇水によるポンプの空運転によるモータ及びポンプの故障トラブルが回避され、安定した使用が可能となる。
【0025】
また、本発明は、上記構成において、前記ポンプに接続された吐出管に高圧抑制用圧力センサを設けると共に該ポンプに接続された吐出管に逆止弁を設けるようにしてもよい。こうすることで、吐出側での高負荷によってポンプが故障するといったトラブルが回避され、安定して使用が可能となる。
【0026】
さらに、本発明は、上記構成において、前記ポンプに接続された吐出管の先端部に設けた吐出ノズルに低飛距離抑制用圧力センサを設けると共に、前記ポンプに接続された吐出管先端の吐出ノズルに口径開度調整機構を設けるようにしてもよい。こうすることで、電圧降下などによって吐出出力が低下した場合であっても水平飛距離を維持することができるので、安定した使用が可能となる。
【実施例0027】
以下に、本発明の高圧散水機の実施例について、図面を参照して説明する。本例の高圧散水機1は、例えば解体現場において、粉塵が発生する箇所に向けて離れた場所から散水するために用いる。高圧散水機1の概略は、台車2上に、DCブラシレスのモータ3と、このモータ3により作動させて水に高圧を付与するポンプ4と、前記モータ3を冷却するファン5と、モータ3とファン4と該モータ3駆動用のドライバを含む制御回路部Cを覆って該ファン5による吸送経路Aを形成するカバー6を備えた構成である。
を備えている。
【0028】
台車2は、移動輪2FR,2FL(前輪)同士、移動輪2BR,2BL(後輪)同士、の輪軸(不図示)を枢支すると共にポンプ4を設ける基板であるシャーシ2A、このシャーシ2Aにおける移動輪2FR,2BR側、移動輪2FL,2BL側の各々に矩形状の底辺部が接続されたフレーム2aR,2aLを有している。台車2はシャーシ2Aが設置面(移動面)と平行となるように、所定の車高で構成されている。
【0029】
さらに、台車2は、フレーム2aR,2aLのそれぞれにおける前側の辺と後ろ側の辺の高さ方向の互いの途中部位を繋いだフレーム2bR,2bLと、フレーム2aR,2aLのそれぞれにおける前側の辺同士の高さ方向の互いの途中部位を繋いだフレーム2cと、フレーム2aR,2aLのそれぞれにおける後側の辺同士の高さ方向の互いの途中部位を繋いで後方に突出状に設けられ、全体を移動させるために使用者が把持する把持杆2Bとを有している。
【0030】
さらに、本例では、フレーム2bR,2bL、及びフレーム2cは高さ方向に同一位置に設けられており、この位置より上部(以下、これを「台車2の上部」という)の前面、両側面、及び上面は保護板2dで覆っている。台車2の上部には、本例では呼水自給用の水タンク6が備えられている。この水タンク6は前面と上面とに設けた蓋6aを開けて予め水を貯留しておき、高圧散水機1の始動時にここからポンプ4に呼水を供給するためのものである。
【0031】
モータ3は、本例では、台車2の上部において、台車2の前後方向に水タンク7と隣接して設けている。本発明において、モータ3は、内周部にコイル、外周部に(永久)磁石でなる回転子となるロータ、を各々設け、該ロータに回転軸3Aが一体的に設けられた、いわゆるアウターロータ型のDCブラシレスのものを採用する。モータ3は、アウターロータ型とすることで、厚み(上下方向)を薄くすることができ、これにより高圧散水機1の全体高さも小型化できる。
【0032】
このモータ3は、回転軸3Aが、設置面と平行となるような車高とされたシャーシ2Aに対して垂直となるように配置し、この回転軸3Aの設置面側の一端がポンプ4の作動軸とし、かつ設置面側と反対側の他端をファン5の駆動軸として共用している。すなわち、本発明は、モータ3の下部にポンプ4が、モータ3の上部にファン5が、回転軸3Aで同軸とされてシャーシ2Aに対して垂直状に並んだ状態とされている。
【0033】
ポンプ4は、シャーシ2A上に載置され、上記のとおり、上部にはモータ3が同軸にて配置される。ポンプ4は、本例では産業用の多段型のタービンポンプを採用している。ポンプ4の作動軸は、上記のとおりモータ3の回転軸3Aの一端と共用とされ、該作動軸(回転軸3A)はシャーシ2Aに対して垂直とされ、吸水と排水は該シャーシ2Aと平行に行うように構成されている。また、ポンプ4は、台車2の、前側に吐出部4Aと、後側に吸水部4Bとが設けられ、この吸水部4Bには呼水供給管4cが設けられている。
【0034】
さらに、吐出部4Aには吐出管4aが接続され、この吐出管4aの先端部には吐出ノズル4Nが接続される。吸水部4Bには吸水管4bの一端が接続され、また、水タンク7の下面に設けられた呼水供給部4Cには呼水供給管4cの一端が、ポンプ4の上部に設けられたエア抜部4Dにはエア抜管4dの一端が、各々接続されている。吸水管4bの他端は水源に接続され、呼水供給管4cの他端は吸水部4Bに接続され、また、エア抜管4dの他端は台車2下部に開放されている。
【0035】
ここで、本例において、上記の吐出管4a、吸水管4b、エア抜管4dに設けた各センサS1~S3と、これら各センサS1~S3に基づいた制御回路部Cによる制御について説明する。さらに、本例では、吐出ノズル4Nに低飛距離抑制用圧力センサS1を設けると共に、低飛距離圧力センサS1が例えば電圧降下によるなどの原因で吐出水圧の低下を検知した場合に、該吐出ノズル4Nの開口を絞る口径開度調整機構3Naを設けている。
【0036】
負荷が一定のときに電源電圧が低下すると、電流値が上昇する。この電流値の上昇を抑制するために制御回路部Cにおいてモータ3の回転数を下げて、ポンプ4の水量及び圧力を減らすことにより負荷を軽減するように制御するが、ポンプ4の水量及び圧力を減らすと散水飛距離が短くなって安定しない。
【0037】
そこで、散水飛距離の低下を補償するために、吐出ノズル4Nに設けた低飛距離抑制用圧力センサS1により水圧低下を検知し、この検知信号を制御回路部Cにより検知した場合に、ポンプ4の水量と圧力から算出して吐出飛距離が最も長くなる吐出圧力となるように該制御回路部Cは口径開度調整機構3Naを制御して吐出ノズル4Nの絞り径を制御する。
【0038】
また、本例では、エア抜管4dに渇水抑制用圧力センサS2を設けている。この渇水抑制用圧力センサS2は、エア抜管4d、吐出管4b、吸水管4bの少なくとも1つに設ければよい。
【0039】
ポンプ4を駆動すると、送水時のポンプ4内において圧力が上昇する。しかし、水源が枯渇しているなどでポンプ4に送水された水により圧力が上昇しないとポンプ4が故障することがある。
【0040】
そこで、エア抜管4d、吐出管4bのいずれか一方又は両方に渇水抑制用圧力センサS2を設けた場合は、ポンプ4の駆動後に、所定時間経過したときのポンプ4によるエア抜管4d、吐出管4b内における圧力を検知し、所定圧力に達していないことを検知した際に、制御回路部Cは渇水と判断し、ポンプ4の駆動を停止し、渇水で停止したことを、例えばランプを点灯させるなどして報知する。
【0041】
また、渇水抑制用圧力センサS2を吸水管4bに設けた場合、ポンプ4、吸水管4b内に水がある場合はポンプ4が吸水して吸水管4b内は真空となるが、この逆にポンプ4、吸水管4b内に水がない場合は吸水できず、吸水管4b内は大気圧のままとなる。
【0042】
そこで、吸水管4bに渇水抑制用圧力センサS2を設けた場合は、ポンプ4の駆動後に、所定時間経過したときの吸水管4b内が前記真空ではない(内圧が大気圧のままである)ことを検知した際に、制御回路部Cは渇水と判断し、ポンプ4の駆動を停止し、渇水で停止したことを、例えばランプを点灯させるなどして報知する。
【0043】
さらに、本例では、吐出管4aに高圧抑制用圧力センサS3を設けると共に吸水管4bに逆止弁4Vを設けている。高圧抑制用圧力センサS3は、ポンプ4駆動後、散水開始前で未だ吐出ノズル4Nを開いていないときの吐出管4aの圧力を検知する。高圧抑制用圧力センサS3が、所定圧力を検知すると、制御回路部Cは所定時間経過後にポンプ4の運転を停止する。ポンプ4の運転を停止しても逆止弁4Vを吸水管4bに設けているので吐出管4a側の高圧による吸水管4b側への水の逆流は阻止される。
【0044】
この後、例えば吐出ノズル4Nを開いて散水を開始するなどして、高圧抑制用圧力センサS3が高圧を検知しなくなった際には、制御回路部Cは、逆止弁4Vを開き、ポンプ4を駆動し、通常運転を開始する。
【0045】
上記の各センサS1~S3等を備えることで、本例の高圧散水機1は、小型で家庭用電源のAC100Vで使用可能なだけでなく、散水飛距離を十分な状態で安定駆動させることができる。
【0046】
ファン5は、いわゆる遠心ファンを採用し、上記のとおり、モータ3の上部に僅かな隙間を介して配置され、該モータ3の上昇する熱気を該ファン5の下面側にて周辺大気と共に速やかに吸引すると同時に該ファン5の周方向に送気する。ファン5は、上記のとおりモータ3の回転軸3Aを共用している。
【0047】
カバー6は、台車2の上部において、モータ3、ファン5、及び制御回路部Cを覆って該ファン5による冷却能力を最大限に発揮できるように吸送経路を形成するものである。なお、制御回路部Cは、ポンプ4とファン5とモータ3の駆動用ドライバを含み、上記した各圧力センサS1~S3の検知結果に基づいて全体を制御するものであり、モータ3同様に、長時間、高負荷駆動することで回路における電子素子が発熱し、この発熱により保護回路が作動して全体が停止することがある。
【0048】
すなわち、カバー6は、モータ3及びファン5の位置する側に設けた壁面Wにおける該モータ3及びファン5が位置する面と反対面に制御回路部Cを設け、モータ3及びファン5、制御回路部Cの全てを上方にて覆うように逆U字状とされ、かつ内部においては壁面Wが内部上面に達しないようにして吸送経路Aを形成している。
【0049】
つまり、カバー6は、図5に示すように、モータ3のポンプ4側からファン5によって吸い込んだ空気により冷却し、この冷却後の気流と吸い込み空気を制御回路部C方向に誘導して送気している。例えば、吸送経路は、上面に開放すれば熱気を開放するうえでは効果が高いが、台車2の上面を開放すると、粉塵や飛沫を被る可能性がある。
【0050】
そこで、本発明では、ファン5として遠心式のものを採用すると共に、カバー6により下方から吸気して、モータ3を冷却して該ファン5の周方向に排気し、これを下方へ送気して制御回路部Cを冷却する吸送経路Aを形成しているので、工事現場などの屋外使用時に、粉塵や飛沫の悪影響を受けることが抑制され、耐久性が向上する。
【0051】
上記構成の本例における高圧散水機1は、次のように操作して散水する。図6及び図7(a)に示すように、駆動前に、水タンク7に水を貯留し、吐出管4aを吐出部4Aに、吸水管4bを吸水部4Bに、呼水供給管4cを水タンク7の呼水供給部4Cに、エア抜管4dをポンプ4の上部のエア抜き栓に接続する。また、吐出管4aの吐出部4A側と反対側端部には吐出ノズル4Nを接続する。
【0052】
続いて、図7(b)に示すように、エア抜管4dに設けた栓を開いてポンプ4内の空気を放出可能な状態とすると共に、呼水供給管4cに設けた栓を開いて水タンク7の自給用の水を吸水部4Bに向けて供給する。この時、吸水管4bの吸水部4Bと反対の他端を水源に接続しておく。その後、ポンプ4(モータ3及びファン5を含めた全体)の電源をオンにする。
【0053】
ポンプ4を駆動し、図7(c)に示すように、水タンク7の呼水がポンプ4内に吸水されるとともに、水源から水が吸水され、ポンプ4内に水源の水が満たされた後に、図7(d)に示すように、エア抜管4dの栓を閉じるとともに、呼水供給管4cの栓を閉じる。
【0054】
そして、図7(e)に示すように、吸水管4bからの水源の水がポンプ4により、高圧化されて、吐出管4aの吐出ノズル4Nから吐出される。この後、吸水管4bが水源に届く範囲内で、かつ、吐出管4aが吸水部4Aに達している範囲で、台車2を屋外の工事現場を移動させたり、吐出ノズル4Nを移動させたりして散水する。
【0055】
このように、本発明は、例えば、水平飛距離が約20m(垂直吐出が約9m)もの出力を得ようとすると、それなりに十分な電源確保と、大型なモータやポンプが必要となっていたが、DCブラシレスでアウターロータ型のモータ3を用いるとともに、ポンプ4、ファン5との作動軸をモータ3の回転軸3Aと共用化しているので、寸法(L×W×H)mmが、725×590×935mmを実現できた。
【0056】
つまり、本例の場合、水タンク7を有した状態での上記サイズであるが、水タンク7を省略したとしても、家庭用電源を使用した高出力(1.1kW)を実現した散水機としては小型で構成となっていることは間違いない。また、カバー6による吸送経路Aを逆U字にして、モータ3と制御回路部Cの冷却効率を改善しているので、工事現場など屋外での劣悪環境下での使用にも十分に耐え得る。
【符号の説明】
【0057】
1 高圧散水機
2 台車
3 モータ
3A 回転軸
4 ポンプ
4a 吐出管
4b 吸水管
4c 呼水供給管
4d エア抜管
4N 吐出ノズル
5 ファン
6 カバー
7 水タンク
S1 低飛距離抑制用圧力センサ
S2 渇水抑制用圧力センサ
S3 高圧抑制用圧力センサ
C 制御回路部
A 吸送経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7