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特開2022-180811半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180811
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/024 20060101AFI20221130BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20221130BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/22
H01S5/042 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087515
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 政治
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭平
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AB62
5F173AD04
5F173AG05
5F173AH08
5F173AK21
5F173AL04
5F173AP33
5F173AP42
5F173AR68
5F173AR72
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】光が出射される端面側の放熱性の低下を抑制しつつ、光が出射される端面側のリッジを保護する。
【解決手段】一態様に係る半導体発光素子によれば、第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上に位置し、互いに平行な第1端面と第2端面を有する活性層と、前記活性層上に位置する第2導電型半導体層と、前記第1端面から前記第2端面にかけて前記第2導電型半導体層に設けられ、前記第1端面側に近い位置の幅が前記第1端面側から遠い位置の幅より広い領域を有するリッジと、前記リッジの幅方向に前記リッジと間隔を空けて前記第2導電型半導体層に凸状に設けられたバンクと、前記第2端面側よりも前記第1端面側に近い位置に設けられ、熱伝導率が前記バンクの熱伝導率よりも高い熱伝導部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層上に位置し、互いに平行な第1端面と第2端面を有する活性層と、
前記活性層上に位置する第2導電型半導体層と、
前記第1端面から前記第2端面にかけて前記第2導電型半導体層に設けられ、前記第1端面側に近い位置の幅が前記第1端面側から遠い位置の幅より広い領域を有するリッジと、
前記リッジの幅方向に前記リッジと間隔を空けて前記第2導電型半導体層に凸状に設けられたバンクと、
前記第2端面側よりも前記第1端面側に近い位置に設けられ、熱伝導率が前記バンクの熱伝導率よりも高い熱伝導部とを備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記リッジの最も幅の広い領域は、前記第1端面側および前記後端面側に位置し、前記第1端面側と前記第2端面側との間により幅の狭い領域が位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記リッジの高さと前記バンクの高さは互いに等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記熱伝導部は、第1溝を有し、
前記第1溝は、前記バンクの上面よりも底面が低い位置にあり、前記リッジの幅方向に延びており、
前記第1溝内に埋め込まれ、熱伝導率が前記バンクの熱伝導率よりも高い金属を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記バンクは、前記第1溝を介して離間する前記第1端面側の第1バンクと前記第2端面側の第2バンクを備えることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記リッジと前記バンクは、前記第1溝と同一の深さで前記第1端面から前記第2端面にかけて延びる第2溝にて隔てられていることを特徴とする請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1溝は、前記活性層を厚さ方向に貫通することを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記熱伝導部は、金属から成り、前記リッジを介して前記活性層に電流を注入する電極の一部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記リッジは、前記活性層に電流を注入する電流注入領域を備え、
前記熱伝導部は、前記電流注入領域よりも前記第1端面の近くに位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記バンクの長さは、前記第1端面側の前記リッジの幅以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記バンクは前記リッジの両側に設けられ、前記リッジは前記バンクの間に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
半導体基板上に第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層とを順次形成する工程と、
前記第2導電型半導体層をパターニングすることにより、第1端面に相当する位置に近い位置の幅が前記第1端面に相当する位置から遠い位置の幅より広い領域を有するリッジと、前記リッジと高さが等しい前記第1端面側の第1バンクと、前記第1バンクと離間され前記リッジと高さが等しい前記第2端面側の第2バンクを形成する工程と、
前記第1バンクと前記第2バンクとの間に絶縁膜を介して金属を埋め込む工程とを備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1バンクと前記第2バンクとの間に絶縁膜を介して金属を埋め込む工程は、
前記リッジ、前記第1バンクおよび前記第2バンクの表面が覆われるように前記第2導電型半導体層上に前記絶縁膜を形成する工程と、
電流注入領域となる開口部を前記リッジ上の前記絶縁膜に形成する工程と、
前記第1バンクと前記第2バンクとの間に埋め込まれるとともに、前記開口部を介して前記第2導電型半導体層と導通する電極を前記絶縁膜上に形成する工程とを備えることを特徴とする請求項12に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端面発光型の半導体レーザ素子の高出力化に伴って、半導体レーザが動作時に高温化し、キンクおよびCOD( catastrophic optical damage)が発生する。このとき、半導体レーザ素子内部の温度は光密度分布および放熱経路(光を出射する端面からの経路)の関係から、特にレーザ光が出射される前端面の温度が高くなる。その結果、特許文献1に開示されているように、導波路近傍における半導体層に屈折率分布が生じ、導波路によるレーザ光の閉じ込め作用が局所的に低下し、キンクが発生する。また、前端面の温度が上昇すると、前端面近傍の禁制帯幅が減少し、光吸収がますます起こりやすくなるという正帰還が生じ、CODが発生する
【0003】
特許文献2には、共振器の軸方向に延びるリッジが共振器の上面に形成され、リッジは、出射側端部と、非出射側端部と、出射側端部から非出射側端部に向けてリッジの幅をテーパ状に減少させるテーパ部と、非出射側端部に対して出射側端部側に設けられ、リッジの幅を段差状に変化させるステップ部とを含む半導体レーザ装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ストライプ状のリッジと、リッジの一方の側に存在する第1の溝及び他方の側に存在する第2の溝をそれぞれ挟んで設けられたウイング領域とを有するp型クラッド層とを備え、リッジは、前端面側から後端面側に向かって幅が減少する領域を含む半導体レーザ装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、クラッド層の上部は、前端面と後端面とを結ぶ方向に延びるリッジ部と、リッジ部の両側方に配置されたウイング部とを構成し、前端面側領域におけるリッジ部の幅は、前端面側領域を除く領域におけるリッジ部の幅よりも大きく、前端面側領域におけるリッジ部とウイング部との間隔は、前端面側領域を除く領域におけるリッジ部とウイング部との最小間隔よりも大きい半導体レーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4573882号公報
【特許文献2】特許第4657337号公報
【特許文献3】特開2009-295680号公報
【特許文献4】特開2013-4855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された構成では、ジャンクションダウンで半導体レーザ素子の実装を行う場合、リッジへのダメージおよび直立させたときに姿勢維持が不安定になるといった問題を引き起こすことがある。
また、特許文献3に開示された構成では、前端面側において、ストライプ状のリッジとウイング領域との間の間隔が狭くなると、前端面側の放熱性が低下し、CODを引き起こしやすくなる。
また、特許文献4に開示された構成では、前端面側において、ストライプ状のリッジとウイング領域との間の間隔が広いため、製造工程やレーザの取り扱い時にリッジを工具などで直接触れ欠損等を引きおこす可能性が高くなり、ウイング領域による前端面側でのリッジの保護性能が低下する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、光が出射される端面側の放熱性の低下を抑制しつつ、光が出射される端面側のリッジを保護することが可能な半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上に位置し、互いに平行な第1端面と第2端面を有する活性層と、前記活性層上に位置する第2導電型半導体層と、前記第1端面から前記第2端面にかけて前記第2導電型半導体層に設けられ、前記第1端面側に近い位置の幅が前記第1端面側から遠い位置の幅より広い領域を有するリッジと、前記リッジの幅方向に前記リッジと間隔を空けて前記第2導電型半導体層に凸状に設けられたバンクと、前記第2端面側よりも前記第1端面側に近い位置に設けられ、熱伝導率が前記バンクの熱伝導率よりも高い熱伝導部とを備える。
【0010】
ここで、リッジの幅方向にリッジと間隔を空けて第2導電型半導体層に凸状にバンクを設けることにより、リッジへの衝撃をバンクで受け止めることが可能となり、リッジへのダメージを軽減することが可能となるとともに、ジャンクションダウン実装時の安定性を向上させることができる。
また、熱伝導率がバンクの熱伝導率よりも高い熱伝導部を第1端面側に設けることにより、第1端面側の放熱性を向上させることができる。この高い熱伝導部は、バンクによるリッジの保護性能を向上させるためにリッジとバンクの間隔を狭めた場合においても、高出力を図りつつ第1端面側の発熱を抑制することが可能となる。
さらに、第1端面側に近い位置のリッジの幅を大きくすることで、第1端面側でのしきい値電流密度、直列抵抗および熱抵抗を低下させることができ、高出力化を図りつつ第1端面側の発熱を抑制することが可能となるとともに、第1端面側から遠い位置のリッジの幅を小さくすることで、横モードを安定化させ、キンクの発生を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記リッジの最も幅の広い領域は、前記第1端面側および前記第2端面側に位置し、前記第1端面側と前記第2端面側との間により幅の狭い領域が位置する。
【0012】
ここで、ウェハの劈開位置を跨るリッジの幅が劈開位置近傍で変わらない(最も幅の広い領域が一定の長さ続く)ようにリッジ形状を形成しておけば、劈開位置にズレが生じても一定のリッジ幅を確保できる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記リッジの高さと前記バンクの高さは互いに等しい。
【0014】
これにより、活性層上に位置する第2導電型半導体層のエッチングでリッジとバンクを一括して形成することができる。このため、リッジを形成するための工程とは別個にバンクを形成するための工程を設ける必要がなくなり、工程数の増大を抑制しつつ、バンクを形成することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記熱伝導部(例えば、図3に示すM3の部分や、図11に示すM3´)は、第1溝を有し、前記第1溝は、前記バンクの上面よりも底面が低い位置にあり、前記リッジの幅方向に延びており、前記第1溝内に埋め込まれ、熱伝導率が前記バンクの熱伝導率よりも高い金属を備える。
【0016】
これにより、リッジからの放熱がバンクによって妨げられる位置に、熱伝導率がバンクの熱伝導率よりも高い金属を配置することができる。このため、リッジとバンクの間隔を狭めつつ、第1端面側の放熱性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記バンクは、前記第1溝を介して離間する前記第1端面側の第1バンクと前記第2端面側の第2バンクを備える。
【0018】
これにより、第1端面側の放熱性を向上させつつ、第1端面側のリッジを第1バンクにて保護することが可能となるとともに、ジャンクションダウン実装時の直立安定性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記リッジと前記バンクは、前記第1溝と同一の深さで前記第1端面から前記第2端面にかけて延びる第2溝にて隔てられている。
【0020】
これにより、活性層上に位置する第2導電型半導体層のエッチングで第1溝および第2溝を一括して形成することができる。このため、リッジおよびバンクを形成するための工程とは別個に第1溝を形成するための工程を設ける必要がなくなり、工程数の増大を抑制しつつ、バンクを形成することが可能となるとともに、第1端面側の放熱性を向上させることが可能となる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記第1溝は、前記活性層を厚さ方向に貫通する。
【0022】
これにより、第1溝に埋め込まれる金属を活性層の位置より深い位置に到達させることでき、第1端面側の活性層からの熱の放熱性をより一層向上させることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記熱伝導部は、金属から成り、前記リッジを介して前記活性層に電流を注入する電極の一部である。
【0024】
これにより、第2導電型半導体層上に電極を形成する際に第1溝に金属を埋め込むことができる。このために、第2導電型半導体層上に電極を形成する工程と別個に第1溝に金属を埋め込む工程を設ける必要がなくなり、工程数の増大を抑制しつつ、第1端面側の放熱性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記リッジは、前記活性層に電流を注入する電流注入領域を備え、前記熱伝導部は、前記電流注入領域よりも前記第1端面の近くに位置する。
【0026】
これにより、電流注入領域からの電流注入による第1端面側の発熱を抑制しつつ、第1端面側の放熱性を向上させることができ、第1端面側の温度上昇によるCODを防止することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記バンクの長さは、前記第1端面側の前記リッジの幅以上である。
【0028】
これにより、リッジの強度と同等以上の強度をバンクに持たせることが可能となり、バンクが倒壊しにくくすることが可能となることから、バンクによってリッジを有効に保護させることができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記バンクは前記リッジの両側に設けられ、前記リッジは前記バンクの間に複数設けられている。
【0030】
これにより、単一チップから出射されるレーザ光のマルチビーム化を図りつつ、第1端面側の放熱性を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、半導体基板上に第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層とを順次形成する工程と、前記第2導電型半導体層をパターニングすることにより、第1端面側に近い位置の幅が第1端面側から遠い位置の幅より広い領域を有するリッジと、前記リッジと高さが等しい第1端面側の第1バンクと、前記第1バンクと離間され前記リッジと高さが等しい前記第2端面側の第2バンクを形成する工程と、前記第1バンクと前記第2バンクとの間に絶縁膜を介して金属を埋め込む工程とを備える。
【0032】
これにより、第2導電型半導体層のエッチングでリッジ、第1バンクおよび第2バンクを一括して形成することができる。このため、リッジを形成するための工程とは別個に第1バンクおよび第2バンクを形成するための工程を設ける必要がなくなり、工程数の増大を抑制しつつ、第1バンクおよび第2バンクを形成することが可能となるとともに、第1端面側の放熱性を向上させることが可能となる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、前記第1バンクと前記第2バンクとの間に絶縁膜を介して金属を埋め込む工程を備える。更には、前記リッジ、前記第1バンクおよび前記第2バンクの表面が覆われるように前記第2導電型半導体層上に前記絶縁膜を形成する工程と、電流注入領域となる開口部を前記リッジ上の前記絶縁膜に形成する工程と、前記第1バンクと前記第2バンクとの間に埋め込まれるとともに、前記開口部を介して前記第2導電型半導体層と導通する電極を前記絶縁膜上に形成する工程とを備える。
【0034】
これにより、第2導電型半導体層上に電極を形成する際に前記第1バンクと前記第2バンクとの間に金属を埋め込むことができる。このために、第2導電型半導体層上に電極を形成する工程と別個に前記第1バンクと前記第2バンクとの間に金属を埋め込む工程を設ける必要がなくなり、工程数の増大を抑制しつつ、第1端面側の放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様においては、光が出射される端面側の放熱性の低下を抑制しつつ、光が出射される端面側のリッジを保護する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図2A図1のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図2B図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図2C図1のC-C線に沿って切断して示す断面図である。
図3】第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図4図3のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図5】第3実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図6】第4実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図7】第5実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図8】第6実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図9A図8のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図9B図8のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図9C図8のC-C線に沿って切断して示す断面図である。
図10A】第7実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図10B】第9実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図11】第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図12図11のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図13A1】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図13B1】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図13A2】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図13B2】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図13A3】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図13B3】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
図13A4】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
図13B4】第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0038】
図1は、第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図2Aは、図1のA-A線に沿って切断して示す断面図、図2Bは、図1のB-B線に沿って切断して示す断面図、図2Cは、図1のC-C線に沿って切断して示す断面図である。
【0039】
なお、以下の説明では、半導体発光素子として端面発光型半導体レーザ素子を例にとる。この半導体レーザ素子は、波長780nm帯の赤外レーザを出射可能なAlGaAs系半導体レーザ素子であってもよいし、波長650nm帯の赤色レーザを出射可能なAlGaInP系半導体レーザ素子であってもよいし、波長405nm帯の青色レーザを出射可能なAlGaInN系半導体レーザ素子であってもよい。
【0040】
図1および図2Aから図2Cにおいて、半導体レーザ素子Z1は、n型半導体層2、活性層3およびp型半導体層4を備える。n型半導体層2、活性層3およびp型半導体層4は、n型半導体基板1上に順次積層されている。
【0041】
例えば、半導体レーザ素子Z1がAlGaInP系半導体レーザ素子であるものとする。このとき、n型半導体層2として、例えば、n型GaAsバッファ層2Aおよびn型AlGaInPクラッド層2Bの積層構造を用いることができる。活性層3として、例えば、AlGaInP/GaInP多重量子井戸(MQW:Multi Quantμm Well)活性層を用いることができる。p型半導体層4として、例えば、p型AlGaInP第1クラッド層4A、p型GaInPエッチストップ層4B、p型AlGaInP第2クラッド層4C、p型GaInP界面層4Dおよびp型GaAsコンタクト層4Eの積層構造を用いることができる。
【0042】
活性層3は、互いに平行な前端面(第1端面)EAおよび後端面(第2端面)EBを備える。このとき、半導体レーザ素子Z1は、活性層3の前端面EAと後端面EB間で共振器を構成することができる。前端面EAは、半導体レーザ素子Z1からレーザ光を出射させる光出射面として用いることができる。このとき、前端面EA側は、後端面EB側に比べて光反射率を低くすることができる。前端面EA側の光反射率および後端面EB側の光反射率は、端面コーティングにて調整することができる。
【0043】
p型半導体層4には、リッジRJおよびバンクBK1、BK2が凸状に形成されている。このとき、リッジRJおよびバンクBK1、BK2は、p型AlGaInP第2クラッド層4Cに設けることができる。リッジRJは、活性層3の光導波方向に沿ってn型半導体層2に設けることができる。リッジRJは、前端面EA側に近い位置の幅Wfが前端面EA側から遠い位置の幅Wrより広い領域を有する。また、リッジRJの最も幅の広い領域は、前端面EA側および後端面EB側に位置し、前端面EA側と後端面EB側との間により幅の狭い領域が位置する。リッジRJ上には、リッジRJを介して活性層3に電流を注入する電流注入領域RNが設けられている。
【0044】
バンクBK1、BK2は、リッジRJの幅方向にリッジRJと間隔を空けてp型半導体層4に凸状に設けられている。例えば、バンクBK1、BK2は、p型半導体層4にテラス状またはスタッド状に設けてもよい。このとき、リッジRJと間隔を空けてバンクBK1、BK2をp型半導体層4に形成するために、リッジRJと各バンクBK1、BK2との間に光導波方向に沿って溝M2を設けることができる。
【0045】
バンクBK1は、前端面EA側に位置し、バンクBK2は、後端面EB側に位置する。バンクBK1、BK2間には、リッジRJの幅方向に延びる溝M1が設けられている。溝M1は、電流注入領域RNよりも前端面EAの近くに位置することができる。このとき、前端面EAから電流注入領域RNまでの距離をWc、バンクBK1の長さをWa、溝M1の幅をWhとすると、Wa+Wh<Wcとすることができる。また、バンクBK1の長さWaは、前端面EA側のリッジRJの幅Wf以上であるのが好ましい。
【0046】
リッジRJの高さHrとバンクBK1、BK2の高さHbは互いに等しくすることができる。このとき、リッジRJの高さHrとバンクBK1、BK2の高さHbは、p型AlGaInP第2クラッド層4Cの厚みと等しくすることができる。また、溝M1、M2の底の位置は、p型GaInPエッチストップ層4Bの位置に設定することができる。
【0047】
p型半導体層4上には、リッジRJおよびバンクBK1、BK2の表面を覆うように絶縁層5が形成されている。絶縁層5は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜である。図2Cに示すように、絶縁層5には、電流注入領域RNとなる開口部7が形成されている。
【0048】
絶縁層5上には、リッジRJおよびバンクBK1、BK2が覆われるように電極6が形成されている。電極6の熱伝導率は、バンクBK1、BK2の熱伝導率より大きくすることができる。例えば、電極6は、Auなどの金属膜で構成することができる。このとき、溝M1、M2には、電極6が埋め込まれる。ここで、電極6が埋め込まれた溝M1は、熱伝導率がバンクBK1、BK2の熱伝導率よりも高い熱伝導部として用いることができる。
【0049】
なお、熱伝導率がバンクBK1、BK2の熱伝導率よりも高い熱伝導部として、電極6が埋め込まれた溝M1を設けた例を示したが、熱伝導率がバンクBK1、BK2の熱伝導率よりも高い絶縁体を溝M1に埋め込むようにしてもよい。熱伝導率がバンクBK1、BK2の熱伝導率よりも高い絶縁体としては、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素を用いることができる。このとき、溝M1内の絶縁層5を除去することができ、溝M1内の絶縁層5による熱伝導率の低下を防止することができる。
【0050】
ここで、リッジRJの幅方向にリッジRJと間隔を空けてバンクBK1、BK2を設けることにより、リッジRJへの衝撃をバンクBK1、BK2で受け止めることが可能となり、リッジRJへのダメージを軽減することが可能となるとともに、ジャンクションダウン実装時の直立安定性を向上させることができる。
【0051】
また、前端面EAに近い位置でバンクBK1、BK2が分離されるように電極6が埋め込まれた溝M1を設けることにより、前端面EA側の放熱性を向上させることができる。このため、バンクBK1、BK2によるリッジRJの保護性能を向上させるために、リッジRJとバンクBK1、BK2の間隔を狭めた場合においても、高出力を図りつつ前端面EA側の発熱を抑制することが可能となり、CODを抑制することができる。このとき、バンクBK1、BK2が分離されるように溝M1を設け、電極6で埋めることにより、バンクBK1が前端面EAから後退するのを防止することができ、前端面EA側でのリッジRJへのダメージを軽減することができる。例えば、図2Aおよび図2Cに示すように、発熱源RHからの放熱経路KHにおいて、バンクBK1、BK2の位置で電極6への放熱が妨げられるが、図2Bに示すように、電極6が埋め込まれた溝M1の位置ではバンクBK1、BK2による放熱が妨げられることなく、発熱源RHからの熱を電極6へ放熱させることができる。発熱源RHは、主として、前端面EA側のリッジRJ下の活性層3である。
【0052】
さらに、前端面EA側に近い位置のリッジの幅Wfを大きくすることで、前端面EA側でのしきい値電流密度、直列抵抗および熱抵抗を低下させることができ、高出力化を図りつつ前端面EA側の発熱を抑制することが可能となるとともに、前端面EA側から遠い位置のリッジの幅Wrを小さくすることで、横モードを安定化させ、キンクの発生を抑制することができる。
このとき、誘導放出により活性層3で消費されるキャリアの数が多い前端面EA側では後端面EB側と比較して電流注入量を増大させることができる。このため、光導波方向に対する活性層3でのキャリア密度の大きさを一定にすることが可能となり、後端面EB側での無効電流を減らすことが可能となる。これにより、活性層3に注入されたキャリアを誘導放出による発光再結合によって効率よく消費させることができ、電流-光出力特性における外部微分量子効率(スロープ効率)を向上させることができる。スロープ効率を向上させることにより、動作電流を低減させることができ、温度特性を向上させることができる。
【0053】
ここで、前端面EA側に近い位置の幅Wfについて前端面EA側から遠い位置の幅Wrより広い領域をリッジRJに持たせるために、ストライプ状のリッジRJにテーパ形状を持たせることができる。このとき、リッジRJは、光導波方向に4個の領域Wd、We、Wg、Wiに区分することができる。領域Wdは、前端面EAに接する位置に設けられ、一定の幅Wfに設定される。領域Wiは、後端面EBに接する位置に設けられ、一定の幅Wfに設定される。領域Weは、領域Wdに接続し、領域Wdに向かって徐々に幅が広がる。領域Wgは、領域We、Wi間に位置し、一定の幅Wrに設定される。幅Wfは、リッジRJの最も広い幅に設定し、幅Wrは、リッジRJの最も狭い幅に設定することができる。
【0054】
幅Wrは、1~3μm程度であるのが望ましい。1μm以下のストライプ幅は安定して製造することが難しく、ストライプ幅が3μmを超えると、横モードが不安定化し、キンクが発生しやすくなる。
幅Wfは、幅Wrの1.1倍~3倍が望ましい。幅Wfが幅Wrの1.1倍より小さいと、領域Wdの面積増加によるしきい値電流密度、直列抵抗および熱抵抗の低減効果が得られにくくなる。幅Wfが幅Wrの3倍より大きいと、横モードが不安定化し、キンクが発生しやすくなる。
【0055】
また、領域Wgを設けることにより、領域Wgがない場合に比べ、横モードを安定化させ、キンクを発生しにくくすることができる。領域Wgの長さは、共振器長(Wd+We+Wg+Wi)に対して1割以上あることが望ましい。領域Wg、Weの長さの比は、面積が1.1~2倍となる長さであることが望ましい。面積が1.1倍より小さい場合は、しきい値電流密度、直列抵抗および熱抵抗の低減効果が得られにくくなる。面積が2倍を超えると、しきい値電流の増加が顕著になり、動作電流が上昇する。
【0056】
バンクBK1の長さWaは、リッジRJの幅Wf以上であるのが望ましい。これにより、リッジRJの強度と同等以上のバンクBK1の強度を確保することが可能となり、バンクBK1が倒壊しにくくすることが可能となることから、バンクBK1によってリッジRJを有効に保護させることができる。このとき、バンクBK1の長さWaは、バンクBK1の自立性を確保するため、1.1μm以上であることが望ましく、好ましくは5μm以上とするのがよい。溝M1の幅Whは、前端面EA側の熱を放熱するのに十分な幅が得られるように、5μm以上であることが望ましい。溝M2の幅W1は、リッジRJの保護の有効性を確保するために、幅Wfより狭くてもよい。
【0057】
実施例として、例えば、共振器長(Wd+We+Wg+Wi)=2000μm、Wf=3μm、Wr=2μm、Wd=Wi=50μm、Wg=500μm、We=140μm、W1=10μm、Wh=20μm、Wa=10μm、Wc=40μmとすることができる。
【0058】
図3は、第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図4は、図3のB-B線に沿って切断して示す断面図である。なお、以下の説明では、図1および図2Aから図2Cの構成と異なる部分について説明し、図1および図2Aから図2Cの構成と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図3および図4において、半導体レーザ素子Z2は、図1の半導体レーザ素子Z1に溝M3が追加されている。溝M3は、溝M1の幅方向の内側に位置し、溝M3の深さは溝M1の深さより深い。例えば、図4に示すように、溝M3は活性層3を厚さ方向に貫通し、n型半導体層2に達することができる。このとき、絶縁層5は、リッジRJおよびバンクBK1、BK2の表面を覆うとともに、溝M1、M3の内面を覆うことができる。電極6は、溝M1だけでなく、溝M3にも埋め込まれる。
【0060】
このとき、発熱源RHからの放熱経路KHにおいて、電極6が埋め込まれた溝M3の位置では、バンクBK1、BK2によって放熱が妨げられるのを防止できるだけでなく、n型半導体層2によって放熱が妨げられるのを防止でき、発熱源RHから電極6への放熱性をより一層向上させることができる。
【0061】
なお、図3および図4の構成では、溝M1の幅方向の内側に溝M3を設けた例を示したが、活性層3を厚さ方向に貫通するように溝M1自体の深さを設定してもよい。
【0062】
図5は、第3実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図5において、半導体レーザ素子Z3は、図1の半導体レーザ素子Z1のバンクBK1、BK2および溝M1の代わりにバンクBK3および溝M4を備える。バンクBK3は、リッジRJの幅方向にリッジRJと間隔を空けて前端面EA側から後端面EB側にかけて連続して設けられている。溝M1は、バンクBK1、BK2を分離するようにリッジRJの幅方向に設けられていたが、溝M4は、リッジRJ側で開口するようにバンクBK3に凹状に設けられている。このような構成でも、前端面EA側の放熱性を向上させることができる。
【0063】
図6は、第4実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図6において、半導体レーザ素子Z4は、図1の半導体レーザ素子Z1のバンクBK2の代わりにバンクBK4、BK5および溝M5を備える。バンクBK4、BK5は、リッジRJの幅方向にリッジRJと間隔を空けてp型半導体層4に凸状に設けられている。バンクBK5は、後端面EB側に位置し、バンクBK4は、バンクBK1、BK5間に位置する。バンクBK4、BK5間には、リッジRJの幅方向に延びる溝M5が設けられている。溝M5は、バンクBK4、BK5を分離する。溝M5には電極6が埋め込まれる。このとき、電極6が埋め込まれた溝M5は、熱伝導率がバンクBK1、BK4、BK5の熱伝導率よりも高い熱伝導部として用いることができる。
【0064】
ここで、後端面EB側の近い位置に電極6が埋め込まれた溝M5を設けることにより、後端面EB側の放熱性を向上させることができ、後端面EB側のCODを防止することができる。
【0065】
図7は、第5実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図7において、半導体レーザ素子Z5は、図1の半導体レーザ素子Z1のリッジRJの代わりにリッジRJ1、RJ2を備える。リッジRJ1、RJ2は、幅方向に並列に配置されている。各リッジRJ1、RJ2は、リッジRJと同様に構成することができる。
【0066】
また、各リッジRJ1、RJ2の前端面EA1、EA2側には、リッジRJ1、RJ2を挟む位置にバンクBK6が設けられ、後端面EB1、EB2側には、リッジRJ1、RJ2を挟む位置にバンクBK7が設けられている。リッジRJ1、RJ2は、溝M7にて分離され、リッジRJ1とバンクBK6、BK7は、溝M8にて分離され、リッジRJ2とバンクBK6、BK7は、溝M9にて分離されている。バンクBK6、BK7間には、溝M6が設けられている。溝M6は、バンクBK6、BK7を分離するようにリッジRJ1、RJ2の幅方向に設けられている。溝M6~M9には、電極6が埋め込まれる。このとき、電極6が埋め込まれた溝M6は、熱伝導率がバンクBK6、BK7の熱伝導率よりも高い熱伝導部として用いることができる。
【0067】
これにより、各前端面EA1、EA2側のリッジRJ1、RJ2下の活性層3からの熱の放熱性を向上させることができ、単一チップから出射されるレーザ光のマルチビーム化および高出力化を図りつつ、CODを抑制することができる。
【0068】
なお、図7では、半導体レーザ素子Z5は、2つのリッジRJ1、RJ2を備えた例を示したが、3つ以上のリッジを備えてもよい。
【0069】
図8は、第6実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図9Aは、図8のA-A線に沿って切断して示す断面図、図9Bは、図8のB-B線に沿って切断して示す断面図、図9Cは、図8のC-C線に沿って切断して示す断面図である。
【0070】
図8および図9Aから図9Cにおいて、半導体レーザ素子Z6は、図1の半導体レーザ素子Z1の電流注入領域RNの代わりに電流注入領域RN´を備える。このとき、図9Bおよび図9Cに示すように、絶縁層5には、電流注入領域RN´となる開口部7´が形成される。それ以外の点は、図1の半導体レーザ素子Z1の構成と同様である。ここで、電流注入領域RN´の前端面EA側の端部は、溝M1よりも前端面EAの近くに位置することができる。このとき、Wa>Wcとすることができる。
【0071】
この構成では、リッジRJの幅方向に溝M2を介して電流注入領域RN´が隣接するように溝M1を配置することができる。このため、電流注入領域RN´を介して注入される電流による熱を、溝M1を介して効率的に逃がすことができる。
【0072】
図10Aは、第7実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図10Aにおいて、半導体レーザ素子Z7は、図1の半導体レーザ素子Z1のバンクBK1、BK2および溝M1の代わりにバンクBK1´、BK2´および溝M1´を備える。それ以外の点は、図1の半導体レーザ素子Z1の構成と同様である。
【0073】
ここで、図1の半導体レーザ素子Z1では、溝M1がバンクBK1、BK2を分離するようにリッジRJの幅方向に平行で、且つストレート状に延びる。これに対して、図10Aの半導体レーザ素子Z7では、溝M1´がバンクBK1´、BK2´を分離するようにリッジRJの幅方向と斜めの方向にストレート状に延びる。溝M1´には電極6が埋め込まれる。このとき、電極6が埋め込まれた溝M1´は、熱伝導率がバンクBK1´、BK2´の熱伝導率よりも高い熱伝導部として用いることができる。
【0074】
ここで、リッジRJの幅方向と斜めの方向に延びるように電極6が埋め込まれた溝M1´を設けることにより、バンクBK1´、BK2´によるリッジRJの保護性能を低下させることなく、電極6が埋め込まれた溝M1´の面積を増大させることができ、前端面EA側の放熱性を向上させることができる。
【0075】
図10Bは、第8実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
図10Bにおいて、半導体レーザ素子Z8は、図1の半導体レーザ素子Z1のバンクBK1、BK2および溝M1の代わりにバンクBK1´´、BK2´´および溝M1´´を備える。それ以外の点は、図1の半導体レーザ素子Z1の構成と同様である。
【0076】
ここで、図1の半導体レーザ素子Z1では、溝M1がバンクBK1、BK2を分離するようにリッジRJの幅方向に平行で、且つストレート状に延びる。これに対して、図10Bの半導体レーザ素子Z8では、溝M1´´がバンクBK1´´、BK2´´を分離するように凹凸形状を伴ってリッジRJの幅方向に延びる。溝M1´´には電極6が埋め込まれる。このとき、電極6が埋め込まれた溝M1´´は、熱伝導率がバンクBK1´´、BK2´´の熱伝導率よりも高い熱伝導部として用いることができる。
【0077】
ここで、凹凸形状を伴ってリッジRJの幅方向に延びるように電極6が埋め込まれた溝M1´´を設けることにより、バンクBK1´´、BK2´´によるリッジRJの保護性能を低下させることなく、電極6が埋め込まれた溝M1´´の面積を増大させることができ、前端面EA側の放熱性を向上させることができる。
【0078】
図11は、第9実施形態に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図12は、図11のA-A線に沿って切断して示す断面図である。
【0079】
図11および図12において、半導体レーザ素子Z9は、図3の半導体レーザ素子Z2に溝M3´が追加されている。溝M3´は、溝M2の前端面EA側の内側に位置し、溝M3´の深さは溝M2の深さより深い。例えば、図12に示すように、溝M3´は活性層3を厚さ方向に貫通し、n型半導体層2に達することができる。このとき、溝M3、M3´の深さは同一とすることができる。絶縁層5は、リッジRJおよびバンクBK1、BK2の表面を覆うとともに、溝M1、M3、M3´の内面を覆うことができる。電極6は、溝M1だけでなく、溝M3、M3´にも埋め込まれる。
【0080】
このとき、電極6が埋め込まれた溝M3´の位置では、溝M3´に埋め込まれた電極6を介して発熱源RHからの熱を放熱させることができ、発熱源RHから電極6への放熱性をより一層向上させることができる。
【0081】
なお、図11および図12の構成では、溝M3´は、溝M2の前端面EA側の内側に位置する例を示したが、前端面EAに到達するように形成してもよいし、前端面EAから後端面EBにかけて形成してもよい。
【0082】
図13A1から図13A4は、第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のA-A線に沿って切断して示す断面図、図13B1から図13B4は、第10実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を図1のB-B線に沿って切断して示す断面図である。
【0083】
図13A1および図13B1において、エピタキシャル成長を行うことにより、n型半導体層2、活性層3およびp型半導体層4をn型半導体基板1上に順次積層する。なお、p型半導体層4には、p型AlGaInP第1クラッド層4A、p型GaInPエッチストップ層4Bおよびp型AlGaInP第2クラッド層4Cを形成することができる。p型GaInPエッチストップ層4Bは、p型AlGaInP第1クラッド層4Aおよびp型AlGaInP第2クラッド層4Cよりもエッチングレートが小さい。
【0084】
次に、図13A2および図13B2に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いることにより、p型AlGaInP第2クラッド層4Cをパターニングし、リッジRJおよびバンクBK1、BK2をp型AlGaInP第1クラッド層4A上に形成する。このとき、p型AlGaInP第2クラッド層4Cの深さ方向のエッチングは、p型GaInPエッチストップ層4Bの位置でストップさせることができ、リッジRJおよびバンクBK1、BK2の高さをp型AlGaInP第2クラッド層4Cの厚みで規定することができる。
ここで、リッジRJとバンクBK1、BK2との間の溝M2を形成するためのp型AlGaInP第2クラッド層4Cのエッチング時に、図1の溝M1を形成することができ、工程数の増大を防止することができる。
【0085】
次に、図13A3および図13B3に示すように、CVD(Chemical Vaper Deposition)などの方法により、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などからなる絶縁層5をリッジRJおよびバンクBK1、BK2の表面およびp型GaInPエッチストップ層4B上に形成する。
【0086】
次に、図13A4および図13B4に示すように、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いることにより絶縁層5をパターニングし、図2Cの開口部7を絶縁層5に形成する。そして、スパッタまたは蒸着などの方法を用いることにより、開口部7を介してリッジRJに接続されるとともに、溝M1、M2に埋め込まれた電極6を絶縁層5上に形成する。
このとき、絶縁層5上に電極6を堆積させることで、開口部7を介して電極6をリッジRJに接続させることが可能となるとともに、溝M1、M2に電極6を埋め込むことができ、工程数の増大を防止することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 n型半導体基板
2 n型半導体層
3 活性層
4 p型半導体層
5 絶縁層
6 電極
RJ リッジ
RN 電流注入領域
BK1、BK2 バンク
M1、M2 溝
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13A1
図13B1
図13A2
図13B2
図13A3
図13B3
図13A4
図13B4