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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180812
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】中和ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20221130BHJP
   C02F 1/66 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
A61M1/16 185
C02F1/66 510L
C02F1/66 510R
C02F1/66 521X
C02F1/66 522R
C02F1/66 530C
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
C02F1/66 530P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087516
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】内山 俊之
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE04
4C077GG13
4C077HH06
4C077HH12
4C077HH15
4C077JJ05
4C077JJ08
4C077JJ16
(57)【要約】
【課題】容易に設置でき、大掛かりな工事も必要とせず、専門性を有する設置作業が不要で、さらに中和剤を用いることなく下水道基準の範囲内となるように透析システムの排液を中和処理できる中和ユニットを提供する。
【解決手段】 個々の透析装置の洗浄工程において排出される洗浄排液の中和ユニットであって、一台の透析装置の、一回の洗浄工程で排出される洗浄排液の1~2倍の容積を有する貯留槽と、前記貯留槽の上流で前記透析装置から排出される前記洗浄排液または透析排液の種類を判定する判定手段と、前記貯留槽から前記洗浄排液を放流するための放流ラインと、前記貯留槽を介さずに前記洗浄排液または前記透析排液を放流するためのバイパス弁を含むバイパスラインと、前記貯留槽内に貯留された前記洗浄排液を、前記バイパスラインに注入する注入手段と、を備えていることを特徴とする中和ユニット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の透析装置の洗浄工程において排出される洗浄排液の中和ユニットであって、
一台の透析装置の、一回の洗浄工程で排出される洗浄排液の1~2倍の容積を有する貯留槽と、
前記貯留槽の上流で前記透析装置から排出される前記洗浄排液または透析排液の種類を判定する判定手段と、
前記貯留槽から前記洗浄排液を放流するための放流ラインと、
前記貯留槽を介さずに前記洗浄排液または前記透析排液を放流するためのバイパス弁を含むバイパスラインと、
前記貯留槽内に貯留された前記洗浄排液を、前記バイパスラインに注入する注入手段と、を備えていることを特徴とする中和ユニット。
【請求項2】
前記判定手段により判定された前記洗浄排液および/または前記透析排液の種類に応じて、前記注入手段の注入比率と注入タイミングを制御する制御手段を備えている、請求項1に記載の中和ユニット。
【請求項3】
前記注入比率が、前記貯留槽から前記バイパスラインに注入される前記洗浄排液の種類と、前記バイパスラインから放流される前記洗浄排液または前記透析排液の種類との組み合わせに応じてあらかじめ定められている、請求項2に記載の中和ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置の排液を中和するユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療には、塩化ナトリウムや塩化カリウム等が含有される透析液が使用される。また、透析治療後に透析装置を洗浄するために、酢酸(濃度約1%、pH約3.5)や次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)が使用される。これらの液体は使用後に、下水道基準で定められたpH5を超え9未満の範囲に中和処理してから、下水道に排出する必要があるが、透析医療機関からの酸性排液が原因で、コンクリート製の下水道管を破損させたという事例(令和2年12月28日付の東京都下水局「透析医療機関の皆様へ」等)が報告されており、下水道基準を全ての透析医療機関が満たせていない状況にある。下水道管に損傷が発生した場合、下水への排水ができなくなるとともに、道路陥没を引き起こし、日常生活に影響を及ぼす恐れがあり、下水道法第18条に基づき、下水道管損傷の原因者は、現状復旧費用の負担が必要になる場合もある。このような状況から近年、下水道基準を満たすように排水の中和設備を設置することが透析医療機関に求められている。
【0003】
下水道基準を満たすための中和槽としては、例えば特許文献1にて開示されているが、施設で使用される透析装置の台数に比例して、中和処理する排液の量が増加するため、中和槽を大型化する必要がある。そのため、貸しビルに診療所を開院しているような透析医療機関等においては、中和槽の新設のために拡張工事を伴う増改築やそれに伴う各種許可申請が必要となる可能性があり、容易に設置できない。また、排液の中和に用いる中和剤は苛性ソーダや硫酸等の劇物であり、大量の中和剤を保管する場合、その管理面からも注意が必要となる。
【0004】
このような問題を解決すべく、特許文献2にて、前述の中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができる透析排液処理システムが開示されている。本システムでは、複数台の透析装置から排出された排液の内、pHセンサで判別した酸性排液だけを酸液貯留タンクに貯留しておき、pH5.5以上の排液を下水へ排出する前に、ミキシングタンクで酸性排液とpH5.5以上の排液を混合、中和させている。このシステムを用いることによって、透析装置から排出された酸性の排液を用いて、その他の排液を中和できることから、前述の中和剤が不要になるという利点がある。また、透析装置からの排液の内、酸性の排液のみを貯留すれば良いことから、タンクの大きさを特許文献1と比較して、小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-38495号公報
【特許文献2】特開2021-3262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で開示された透析排液処理システムにおいても、施設で使用される透析装置の台数に比例して、酸性排液の量が増加するため、酸液貯留タンクも大きくする必要があり、また、中和処理を行うミキシングタンク等も大型化することから、既存の透析医療機関に容易に新設できないという懸念は払拭されない。
【0007】
さらに、同透析排液処理システムを設置した後で透析装置の台数が増減し、処理する排液の量が変化した場合に、システムの各タンク類の拡張や縮小が容易に行えないことも懸念される。特に透析装置の台数が増加することで、中和処理の能力が不足した場合、大型化した貯留タンクへの換装等の大掛かりな工事が必要になる恐れがある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、既存の透析医療機関に容易に設置できるほどに小型化し、且つ、大掛かりな工事も必要とせず、専門性を有する設置作業が不要で、さらに中和剤を用いることなく下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内となるように透析システムの排液を中和処理できる中和ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る中和ユニットは、個々の透析装置の洗浄工程において排出される洗浄排液の中和ユニットであって、
一台の透析装置の、一回の洗浄工程で排出される洗浄排液の1~2倍の容積を有する貯留槽と、
前記貯留槽の上流で前記透析装置から排出される前記洗浄排液または透析排液の種類を判定する判定手段と、
前記貯留槽から前記洗浄排液を放流するための放流ラインと、
前記貯留槽を介さずに前記洗浄排液または前記透析排液を放流するためのバイパス弁を含むバイパスラインと、
前記貯留槽内に貯留された前記洗浄排液を、前記バイパスラインに注入する注入手段と、を備えていることを特徴とするものからなる。
【0010】
このような本発明の中和ユニットによれば、中和剤を用いなくても下水道基準の範囲内となるように洗浄排液を簡便に中和処理することができる。特に、一台の透析装置に対して本発明の中和ユニットを一台設置すれば、必要最小限の容量を有する貯留槽を簡便に設置することが可能となる。
【0011】
本発明の中和ユニットは、さらに、前記判定手段により判定された前記洗浄排液および/または前記透析排液の種類に応じて、前記注入手段の注入比率と注入タイミングを制御する制御手段を備えていることが好ましい。具体的には、前記注入比率が、前記貯留槽から前記バイパスラインに注入される前記洗浄排液の種類と、前記バイパスラインから放流される前記洗浄排液または前記透析排液の種類との組み合わせに応じてあらかじめ定められていることが好ましい。このような制御手段によれば、あらかじめ定められた数通りの注入比率のうちから、放流される洗浄排液や透析排液の種類に応じて適切な注入比率を選択することができるので、中和ユニットが透析装置から工程信号を受けなくても、独立して注入手段の動作を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る中和ユニットによれば、簡素な装置構成にて洗浄排液を簡便に中和処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施態様に係る中和ユニットを示すフロー図である。
図2】本発明の他の実施態様に係る中和ユニットを示すフロー図である。
図3】本発明のさらに他の実施態様に係る中和ユニットを示すフロー図である。
図4】本発明のさらに他の実施態様に係る中和ユニットを示すフロー図である。
図5】透析装置の洗浄パターンと中和ユニットの動作例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る透析装置の排液を中和するユニットの望ましい部品構成および動作を、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
(中和ユニットの部品構成)
図1、2、3、4のフロー図を用いて、透析装置の排液を中和するユニットの部品構成について説明する。透析装置(図示せず)から透析液の排液や酢酸(濃度約1%、pH約3.5)を用いた酸洗浄の酸性排液、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)と次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約20ppm、pH約8.6)を用いた薬液洗浄のアルカリ性排液が、排液ラインL1に排出される。排液ラインL1はバイパス弁9と接続されており、流路が貯留ラインL2とバイパスラインL3の二つの流路に分岐される。ここでバイパス弁9について、図1のフロー図においては三方弁で図示しているが、図2に示すように、三方弁の代わりに二方弁からなるバイパス弁9a、9bを設置することで流路を分岐させても良い。
【0016】
図1のフロー図において、排液ラインL1の途中には、排液を判別するためのセンサ2が設置されている。排液の判別にpHを利用する場合は、センサ2にはpH計を用いる。排液を判別する別の手段として、センサ2に電導度計を用いてもよい。透析で用いられる液は限られており、事前に各液の電導度の情報を把握しておくことによって、電導度計で排液の判別が可能となる。例えば中和処理が必要な酢酸(濃度約1%、pH約3.5)における電導度は約0.6mS/cmで、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)における電導度は約1.5mS/cmとなるため、これらの電導度の値から排液を判別する。一般的なpH計に用いられるガラス電極には、pH測定に必要な内部液(KCl溶液)が入っており、少量ずつ流出される構造となっている。そのため、定期的な内部液の補充が必要であり、コストの面から、センサ2には電導度計を用いる方が好ましい。
【0017】
また排液ラインL1の途中には、フロースイッチ3が設置されている。フロースイッチ3にて、排液ラインL1に排液が流れているかどうかを判別する。図1ではセンサ2の下流側にフロースイッチ3を設置しているが、上流側に設置しても問題ない。
【0018】
貯留ラインL2には中和に用いるための排液(酸洗浄の酸性排液もしくは薬液洗浄のアルカリ性排液)が流され、貯留槽4と接続されている。この貯留槽4は、透析装置1台分の1回の酸洗浄もしくは薬液洗浄で排出される排液の全量を貯留することが可能で、10L程度の容量を有しており、例えば透析装置の背面部に設置することができる。
【0019】
バイパスラインL3には中和される排液(酸洗浄の酸性排液以外)が流され、下水管に排出される前に、貯留槽4から中和に用いるための排液が注入される。
【0020】
貯留槽4には、パイパスラインを流れる排液の量に対して、特定の比率で貯留した排液を注入して放流する第1放流ラインL4aと第2放流ラインL4b、第3放流ラインL4cが接続されている。それぞれの放流ラインには流路の開閉を制御するための電磁弁5a、5b、5cが設置されており、バイパスラインL3とはベンチュリー管6で接続される。各放流ラインに設置されているキャピラリー7a、7b、7cの個数や寸法を変更することで、ベンチュリー効果でバイパスラインL3に吸引される際の放流ラインを流れる排液の流量を調節することができる。ここで、放流ラインを流れる排液の流量の調節方法の別手段として、図3に示す通り、キャピラリーの代わりに流量を制御できる流量制御バルブ10を用いても良い。更なる放流ラインを流れる排液の流量の調節方法の別手段として、図4に示す通り、流量制御ポンプ11を設置して流量を調節しても良く、容積式と非容積式のどちらのポンプを用いても良い。バルブやポンプを用いて流量を制御する場合は、放流ラインL4は一つで良い。各電磁弁や流量調節に用いるポンプ等は、透析装置からの信号は用いずに、センサ2およびフロースイッチ3からの信号のみを受信、処理する制御手段8にて制御を行う。これにより、上流の装置からの信号を受けずに独立した中和動作が行えるようになり、異なるメーカの透析装置が混在する様な施設においても、容易に設置が可能となる。
【0021】
以上の部品構成とすることで、従来の中和ユニットでは、透析装置の台数に比例して大型化していた排液を貯留するタンクが、一つ当たりの容量が10L程度と持ち運び可能な大きさまで小型化することができ、大掛かりな工事も必要とせず、専門性を有する設置作業が不要で、既存の透析医療機関に容易に設置できる。また、透析装置1台に対して一つの中和ユニットを用いることで、中和ユニット設置後の透析装置の台数の増減に合わせて、容易に対応が可能となる。
【0022】
(中和ユニットの動作)
中和ユニットの動作について、図5の工程図を用いて、月・水・金に次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)を用いた1回目の薬液洗浄と次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約20ppm、pH約8.6)を用いた2回目の薬液洗浄を行い、火・木・土に酢酸(濃度約1%、pH約3.5)を用いた酸洗浄を行った後に、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)を用いた薬液洗浄と次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約20ppm、pH約8.6)を用いた2回目の薬液洗浄を行うという一般的な洗浄パターンを例にして説明する。
【0023】
月曜日の透析治療終了後に水洗工程を経て、殺菌洗浄を目的とした1回目の薬液洗浄が実施される。ここで排出される薬液洗浄のアルカリ性排液はpH約10.5であり、下水道基準の上限値を上回るために処理が必要になる。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液を貯留ラインL2に流すようにバイパス弁9を操作し、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液の全量を貯留槽4に貯留する。1回目の薬液洗浄は流量0.5L/minで20分間実施されることから排液の量は10Lとなる。貯留槽4に排液を貯めている間は、電磁弁5は閉じた状態とする。
【0024】
続いて1回目の薬液洗浄の後に、2回目の薬液洗浄が行われる。ここで排出される2回目の薬液洗浄のアルカリ性排液はpH約8.6であり、下水道基準内の範囲内であり、処理は不要となる。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、2回目の薬液洗浄のアルカリ性排液をバイパスラインL3に流すようにバイパス弁9を操作し、そのまま下水道に排出される。1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液は貯留槽4に貯留されたままである。
【0025】
翌日の火曜日になると透析治療が行われる。ここで透析治療中に発生するpH約7の透析液の排液に、月曜日に貯留したpH約10.5の1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液を少量ずつ注入する。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、透析液の排液をバイパスラインL3に流すようにバイパス弁9を操作するとともに、第1放流ラインL4aで1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液を注入して放流するように電磁弁5aを開く。ここで、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液と透析液の排液の比率が1:2となるように、第1放流ラインL4aに設置されたキャピラリーの個数等を調整しておく。透析液の排液の流量0.5L/minに対して、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液の流量を0.25L/minで注入することで、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液をpH約8.5まで低下させることができ、下水道基準内に収めることができる。1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液を流量0.25L/minで注入した場合、約40分間で全量の10Lを処理することができる。透析治療に要する時間は一般的に1回当たり4時間程度となるため、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液の全量を注入する時間は透析時間と比較して短時間であり、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液を問題なく処理することができる。1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液のpHが高い場合は、アルカリ性排液の注入量を減らして処理時間を延長するようにしても良い。
【0026】
火曜日の透析治療完了後に水洗工程を経て、炭酸カルシウム等の付着物除去を目的とした酢酸を用いた酸洗浄が行われる。ここで排出される酸洗浄の酸性排液はpH約3.5であり、下水道基準の下限値を下回るために処理が必要になる。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、酸洗浄の酸性排液を貯留ラインL2に流すようにバイパス弁9を操作し、酸洗浄の酸性排液の全量を貯留槽4に貯留する。酸洗浄の酸性排液は流量0.5L/minで20分間実施されることから排液の量は10Lとなる。貯留槽4に排液を貯めている間は、電磁弁5は閉じた状態とする。
【0027】
酢酸を用いた酸洗浄の後に水洗工程を経て、1回目の薬液洗浄が実施される。ここで排出される薬液洗浄のアルカリ性排液はpH約10.5であり、下水道基準の上限値を上回るために処理が必要になる。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液をバイパスラインL3に流すようにバイパス弁9を操作するとともに、第2放流ラインL4bで酸洗浄の酸性排液を注入して放流するように電磁弁5bを開く。ここで、通常、酸とアルカリ液の混合においては、毒性の強い塩素ガスの発生の危険があるが、それぞれの原液を十分に希釈した洗浄液を酸洗浄の酸性排液と1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液の比率が1:9となるように、第2放流ラインL4bに設置されたキャピラリーの個数等を調整しておくことで塩素ガスの発生を抑制できる。1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液の流量0.5L/minに対して、酸洗浄の酸性排液の流量を0.055L/minで注入することで、1回目の薬液洗浄のアルカリ性排液をpH約8.5まで低下させることができ、下水道基準内に収めることができる。また、通常、酸とアルカリ液の混合においては、毒性の強い塩素ガスの発生の危険があるが、それぞれの原液を十分に希釈した洗浄液をこのように少量ずつ中和処理することにより、塩素ガスの発生を抑制することができる。酸洗浄の酸性排液の流量を0.055L/minで注入した場合、20分間の1回目の薬液洗浄の間に約1.1Lの酸性排液を消費することになる。
【0028】
続いて、2回目の薬液洗浄が行われる。ここで排出される2回目の薬液洗浄のアルカリ性排液はpH約8.6であり、下水道基準内の範囲内であり、処理は不要となる。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、2回目の薬液洗浄のアルカリ性排液をバイパスラインL3に流すようにバイパス弁9を操作し、そのまま下水道に排出される。酸洗浄の酸性排液は貯留槽4に貯留されたままである。
【0029】
翌日の水曜日になると透析治療が行われる。ここで透析治療中に発生するpH約7の透析液の排液に、火曜日に貯留した残りの8.9LのpH約3.5の酸洗浄の酸性排液を少量ずつ注入する。センサ2とフロースイッチ3の信号を受信した制御手段8は、透析液の排液をバイパスラインL3に流すようにバイパス弁9を操作するとともに、第3放流ラインL4cで酸洗浄の酸性排液を注入して放流するように電磁弁5cを開く。ここで、酸洗浄の酸性排液と透析液の排液の比率が1:5となるように、第3放流ラインL4cに設置されたキャピラリーの個数等を調整しておく。透析液の排液の流量0.5L/minに対して、酸洗浄の酸性排液の流量を0.1L/minで注入することで、酸洗浄の酸性排液をpH5.5まで上昇させることができ、下水道基準内に収めることができる。酸洗浄の酸性排液を流量0.1L/minで注入した場合、約89分間で残りの8.9Lを処理することができる。透析治療に要する時間は一般的に1回当たり4時間程度となるため、酸洗浄の酸性排液の残量を注入する時間は透析時間と比較して短時間であり、酸洗浄の酸性排液を問題なく処理することができる。酸洗浄の酸性排液のpHが低い場合は、酸性排液の注入量を減らして処理時間を延長するようにしても良い。
【0030】
以上の動作を繰り返すことによって、中和剤を用いることなく下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内となるように排液を中和処理することができる。
【0031】
これらの中和ユニットの動作は、透析中の透析液の排液が停止してから、水洗用の精製水をユニットが認識したときに「透析終了」と判断し、次に流される排液を貯留タンクに取り込み、取り込んだ排液の種類を判別して、貯留槽内の液体を流す注入手段と、注入するタイミングとを上流の装置からの工程信号等を受けることなく制御される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、透析装置排液用の中和ユニットを、既設の透析装置に対しても簡便な設置作業で導入することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1、21、31、41 中和ユニット
2 センサ
3 フロースイッチ
4 貯留槽
5、5a、5b、5c 電磁弁
6 ベンチュリー管
7a、7b、7c キャピラリー
8 制御手段
9、9a、9b バイパス弁
10 流量制御バルブ
11 流量制御ポンプ
L1 排液ライン
L2 貯留ライン
L3 バイパスライン
L4、L4a、L4b、L4c 放流ライン
図1
図2
図3
図4
図5