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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018082
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】熟成肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20220119BHJP
【FI】
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102470
(22)【出願日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020120560
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516147981
【氏名又は名称】伊藤ハム米久ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姑射 誠佳
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AC06
4B042AD02
4B042AD39
4B042AG02
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK03
4B042AK04
4B042AP02
4B042AP30
4B042AW10
(57)【要約】
【課題】微生物の増殖を抑制して、かつ、高い歩留まりを維持しながらも、ドライエイジングに由来する良好な風味、呈味を有する熟成肉を製造することが可能な、熟成肉の製造方法を提供する。
【解決手段】食肉を、ドライエイジング処理、静菌剤処理、ウェットエイジング処理の順で各種処理を行い、熟成させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)~(iii)の工程を備える、熟成肉の製造方法。
(i)食肉にドライエイジング処理を行う工程;
(ii)工程(i)後の前記食肉の表面に静菌剤を接触させる工程;及び
(iii)工程(ii)後の前記食肉にウェットエイジング処理を行う工程。
【請求項2】
前記静菌剤は、過酢酸製剤、アルコール製剤、乳酸ナトリウム溶液からなる群より選択される少なくとも1つを成分として含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記静菌剤が過酢酸製剤を成分として含み、前記静菌剤の過酢酸濃度が400~1800ppmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
熟成時間が400~1600時間である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記熟成時間のうち、ドライエイジング処理時間が、24~240時間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の方法で製造された熟成肉。
【請求項7】
100gあたりの総遊離アミノ酸量が、100mg以上である、請求項6に記載の熟成肉。
【請求項8】
100gあたりの総遊離アミノ酸量が、イノシン酸量の4~150倍である、請求項6又は7に記載の熟成肉。
【請求項9】
1gあたりの一般生菌数が、1×10cfu以下である、請求項6~8のいずれか1項に記載の熟成肉。
【請求項10】
1cmの厚さにカットして、180℃のホットプレートで内部温度が70℃になるまで加熱調理した後、縦1cm×横2cmにカットした場合に、その破断強度が1000gf以下である、請求項6~9のいずれか1項に記載の熟成肉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟成肉を製造する方法、及び当該方法により製造される熟成肉に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産動物をと畜した直後の食肉は軟らかく、保水性(ジューシー感)は高いが、味や香りは乏しい。また、と畜からしばらく経つと死後硬直を起こして硬くなり、組織中に水を保持しにくくなり、保水性は低くなる。しかし、これを更に低温で貯蔵することで、再度軟らかくなり、保水性も回復して、味や香りがよくなる。このような、死後硬直より後の貯蔵によって、食肉の食感及び味を向上させる工程を熟成という。熟成のメカニズムとしては、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)等が食肉中の筋原線維に作用することで起こり、そのことによる構造の変化によって、保水性も回復すると考えられている。味が向上するのは、プロテアーゼが食肉タンパク質を分解することで、うま味などを持つペプチドやアミノ酸を増加させるためである。ペプチドやアミノ酸は、食肉を加熱した時に発生する香りの素でもあるので、それらが増加することは調理肉の香りが向上する要因の1つにもなっている。
【0003】
食肉の熟成方法は、大きく、「ウェットエイジング法」と「ドライエイジング法」の2種に分けることができる。ドライエイジング法は、枝肉をそのまま、あるいは分割したものを空気に接触させた状態で行う熟成方法である。この方法は表面の乾燥によりうま味成分等の濃縮が起こるなど、嗜好性を大きく向上させることが期待できる。しかし、この方法による熟成を行った場合、表面の乾燥部分やカビなどの微生物が増殖した部分を除去(トリミング)する必要がある。このため、下記のウェットエイジング法に比べると、高コストの熟成方法である。一方、ウェットエイジング法は、食肉をある程度分割した肉塊にした後に、真空包装あるいはガス置換包装をして、低温下で貯蔵する方法である。熟成中は空気との接触が遮断されるため、乾燥や微生物汚染を抑えることができ、衛生的な熟成法である。しかし、上記のドライエイジング法に比べ、嗜好性の向上の点においては効果が劣る。
【0004】
風味及び呈味性を向上させ、かつ、衛生的に熟成処理を行う技術として、例えば、特許文献1には、急速凍結した食肉を解凍し、ドリップを拭き取った後に、芳香を含むアルコールを添加して、包装材でパッキングした後、4℃で3~4週間冷蔵保存する方法が開示されている。特許文献2には、浸透圧による脱水作用で食肉を乾燥する工程と、乾燥後又は乾燥中の食肉を脱酸素環境下で保存する工程によって、ドリップの流出を防いでうま味を増大させ、かつ、菌の増殖や変敗を防ぐことができる熟成肉の製造方法が開示されている。特許文献3には、ウェットエイジング法とドライエイジング法を組み合わせる食肉の熟成法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-210579
【特許文献2】特開2018-153115
【特許文献3】特開2018-124064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1又は2の記載の方法は、ドライエイジング処理を行っていないため、ドライエイジングを施したような著しい風味、呈味性の向上には至らないといえる。また、特許文献3には、ウェットエイジングとドライエイジングの組み合わせによる熟成技術も開示されているが、その目的は、血圧降下ペプチド等の生理活性ペプチドを生成することであり、ドライエイジングの課題である熟成工程における乾燥や微生物発生の制御については、特に対処がなされていない。
【0007】
そこで、本発明では、微生物の増殖を抑制して、かつ、高い歩留まりを維持しながらも、ドライエイジングに由来する良好な風味、呈味を有する熟成肉を製造することが可能な、熟成肉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供するものである。
(1)以下の(i)~(iii)の工程を備える、熟成肉の製造方法。
(i)食肉にドライエイジング処理を行う工程;
(ii)工程(i)後の前記食肉の表面に静菌剤を接触させる工程;及び
(iii)工程(ii)後の前記食肉にウェットエイジング処理を行う工程。
(2)前記静菌剤は、過酢酸製剤、アルコール製剤、乳酸ナトリウム溶液からなる群より選択される少なくとも1つを成分として含む、(1)の方法。
(3)前記静菌剤が過酢酸製剤を成分として含み、前記静菌剤の過酢酸濃度が400~1800ppmである、(1)又は(2)の方法。
(4)熟成時間が400~1600時間である、(1)~(3)のいずれかの方法。
(5)前記熟成時間のうち、ドライエイジング処理時間が、24~240時間である、(4)の方法。
(6)(1)~(5)のうちいずれかの方法で製造された熟成肉。
(7)100gあたりの総遊離アミノ酸量が、100mg以上である、(6)の熟成肉。(8)100gあたりの総遊離アミノ酸量が、イノシン酸量の4~150倍である、(6)又は(7)の熟成肉。
(9)1gあたりの一般生菌数が、1×10cfu以下である、(6)~(8)のいずれかの熟成肉。
(10)1cmの厚さにカットして、180℃のホットプレートで内部温度が70℃になるまで加熱調理した後、縦1cm×横2cmにカットした場合に、その破断強度が1000gf以下である、(6)~(9)のいずれかの熟成肉。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微生物の増殖を抑制して、かつ、高い歩留まりを維持しながらも、ドライエイジングに由来する良好な風味、呈味を有する熟成肉を製造することが可能な、熟成肉の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各種静菌剤を使用して熟成した熟成肉における、熟成開始2日後、17日後、31日後の微生物試験の結果を示す。図1(A)は、各種静菌剤を使用して熟成した熟成肉における一般生菌数の推移を示す。図1(B)は、各種静菌剤を使用して熟成した熟成肉における大腸菌群数の推移を示す。
図2】各種静菌剤を使用して熟成した熟成肉における、熟成開始17日後、31日後の総遊離アミノ酸量を示す。図中のエラーバーはn=3の標準偏差を示す。
図3】各濃度の過酢酸を含む静菌剤を使用して熟成した熟成肉における、熟成開始3日後、18日後、33日後の微生物試験の結果を示す。図3(A)は、各濃度の過酢酸を含む静菌剤を使用して熟成した熟成肉における一般生菌数の推移を示す。図3(B)は、各濃度の過酢酸を含む静菌剤を使用して熟成した熟成肉における大腸菌群数の推移を示す。
図4】各濃度の過酢酸を含む静菌剤を使用して熟成した熟成肉における、熟成開始18日後、33日後の総遊離アミノ酸量を示す。図中のエラーバーはn=3の標準偏差を示す。
図5】交雑種の各熟成肉の微生物試験の結果を示すグラフである。図5(A)は、一般生菌数の推移を示す。図5(B)は、大腸菌群数の推移を示す。
図6】ホルスタイン種の各熟成肉の微生物試験の結果を示すグラフである。図6(A)は、一般生菌数の推移を示す。図6(B)は、大腸菌群数の推移を示す。
図7】各熟成肉の官能試験の結果を示すチャートである。図7(A)は、交雑種の熟成肉の官能試験の結果である。図7(B)は、ホルスタイン種の熟成肉の官能試験の結果である。
図8】各熟成肉の総遊離アミノ酸量を示すグラフである。図8(A)は交雑種の総遊離アミノ酸量を示す。図8(B)は、ホルスタイン種の総遊離アミノ酸量を示す。
図9】各熟成肉のイノシン酸量を示すグラフである。図9(A)は交雑種のイノシン酸量を示す。図9(B)は、ホルスタイン種のイノシン酸量を示す。
図10】各熟成肉の破断強度を示すグラフである。図中のエラーバーは、それぞれn=52(D6W24、2試料)、n=59(D10W20、2試料)、n=48(W30、2試料)の標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.熟成肉の製造方法
本発明の熟成肉の製造方法は、以下の(i)~(iii)の工程を備えることを特徴とする。
(i)食肉にドライエイジング処理を行う工程;
(ii)工程(i)後の前記食肉に静菌剤を添加する工程;及び
(iii)工程(ii)後の前記食肉にウェットエイジング処理を行う工程。
【0012】
本発明の方法は、トリミングを要しない比較的短期間のドライエイジング処理と、さらに熟成を進めるためのウェットエイジング処理を組み合わせることで、高い歩留まりを維持しつつ、ドライエイジングに由来する風味を有し、かつ、十分に熟成された熟成肉を得ることを可能とする。ドライエイジング処理を先に行うことで、食肉のうま味成分を流出させることなく、熟成を進めることができる。なお、ウェットエイジング処理を先に行った場合、ドリップ流出によるうま味成分の減少を防ぐことができず、その後にドライエイジング処理を行ったとしても、所望の風味、呈味を有する熟成肉を得ることは困難となり得る。
【0013】
さらに、本発明の方法は、ドライエイジング処理とウェットエイジングの間に静菌処理を行うことで、ドライエイジング処理時に食肉の表面に付着した微生物を除去又は低減し、衛生的な熟成を可能とする。ウェットエイジング処理前に微生物が除去又は低減されるため、従来のウェットエイジングと同様に比較的長期間の熟成が可能となる。
【0014】
本明細書において、「食肉」とは、ヒトが喫食可能な脊椎動物の筋肉組織部分を指す。喫食可能であれば、由来生物は特に限定されないが、通常喫食される牛肉、豚肉、鶏肉及び羊肉が好ましく、特に牛肉が好ましい。食肉の部位は、筋肉組織からなる部位であれば特に限定されず、ロース、バラ、肩ロース等をいずれも使用できる。また、食肉には、骨が付属していてもよい。
【0015】
本明細書において、「熟成肉」は、部分肉を少なくとも12時間、低温下で保管された肉を指すものとする。ここでいう「低温」とは、0~10℃を指す。特に0~5℃が好適である。
【0016】
本明細書において、「歩留まり」とは、熟成前の原料肉の重量に対する、製造された熟成肉の重量の割合を指す。
【0017】
<工程(i)ドライエイジング処理>
以下、本発明の方法の各工程について説明する。
本発明の方法の工程(i)は、食肉をドライエイジング処理する工程である。本明細書において、「ドライエイジング」とは、食肉を空気に接した状態で低温下で保管することをいう。空気と接した状態で熟成が行われていれば、その他の条件は制限されるものではないが、周囲への微生物拡散を抑制するために専用の熟成庫を使用することが好ましい。また、熟成をより進ませるために、食肉に風が当たるようにすることが好ましい。食肉表面が空気に触れる状態であれば、食肉が不織布等で覆われていてもよい。
【0018】
ドライエイジング処理に供する食肉の大きさは、枝肉等の塊肉であっても、数~数十cm程度の厚みにカットしたものであってもよい。ドライエイジング処理の時間は、特に限定されないが、24~240時間とすることが好ましく、さらに48~120時間とすることが好ましい。240時間を超えてドライエイジング処理を行うと、乾燥部分や微生物が増殖した部分をトリミングする必要性が生じ得るため、製造コストの観点から、その前に次の工程に移ることが好ましい。
【0019】
ドライエイジング処理時の食肉の周囲環境の湿度は、特に限定されるものではないが、40~100%、特に60~97%、さらには80~95%とすることが好ましい。
本明細書において「湿度」とは、相対湿度を指し、具体的には下記式で求められる湿度をいう。
湿度(%)=実際の水蒸気量/飽和水蒸気量
【0020】
ドライエイジングにより、食肉表面から水分が蒸発するため、トリミングを行わなくても歩留まりは100%より下がる。歩留まりは、85%以上、特に88~94%とすることが好ましい。
【0021】
<工程(ii)静菌剤処理>
本発明の方法の工程(ii)は、工程(i)後の前記食肉の表面に静菌剤を接触させる工程である。本明細書において「静菌剤」とは、食肉の腐敗に関与する微生物の増殖を抑制し得る成分であり、かつ、食品表面除菌用の食品添加物として使用可能な成分を含む水溶液を指す。静菌剤としては、特に、食肉の風味や呈味に影響を及ぼさない成分、または風味や呈味への影響の少ない成分を含むものが好ましい。このような成分としては、例えば、過酢酸製剤、アルコール系製剤、乳酸ナトリウム溶液等から選択することができる。本明細書において、「過酢酸製剤」とは、過酢酸、酢酸、過酸化水素を主成分として含む食品添加物製剤をいう。本明細書において、「アルコール製剤」とは、エタノールを主剤とした食品添加物製剤をいう。本明細書において、「乳酸ナトリウム溶液」は、食品添加物製剤として流通する乳酸ナトリウムを50~60重量%程度の濃度で含む水溶液をいう。本発明における静菌剤としては、これらの中でも、特に、食肉の風味への影響が少ないことから、過酢酸製剤を好適に使用することができる。
【0022】
食肉に静菌剤を接触させることで、静菌剤を食肉に付与することが可能である。食肉へ静菌剤を接触させる手段は、食肉表面に万遍なく静菌剤が接触すれば特に限定はされないが、例えば、浸漬、塗布、噴霧等の手段をとり得る。中でも、浸漬が、より確実に静菌剤成分を食肉に付与することができるため、好ましい。浸漬を行う場合、例えば、食肉全体が浸るように静菌剤に入れ、30秒間~2分間程度の浸漬を行うことができる。その際の静菌剤の温度は、0~25℃、特に0~10℃とすることが好ましい。
【0023】
静菌剤成分として過酢酸製剤を使用する場合、静菌剤の過酢酸濃度は、400~1800ppm、特に1000~1500ppmとすることが好ましい。過酢酸濃度を前記範囲内とすることで、食肉表面の菌数を確実に減少させ、かつ、過酢酸の食肉の風味等への影響を抑えることができる。
【0024】
<工程(iii)ウェットエイジング処理>
本明細書において、「ウェットエイジング処理」とは、食肉に真空包装又はガス置換包装を施して空気との接触を遮断した状態として、低温下で保管することをいう。本明細書において、「真空包装」及び「ガス置換包装」は、密封包装用の袋に食肉を入れ、内部の空気の除去(真空包装)、又は窒素ガスへの置換(ガス置換包装)を行った後、密封する包装をいう。特に真空包装とすることが好ましい。密封包装の材料としては、ガスバリア性を備え、かつ、上記の空気除去時に食肉の形状に沿って変形可能な可撓性を備えるフィルム状のものであれば、いずれも使用可能である。
【0025】
ウェットエイジング処理の時間は、160~1576時間、特に360~720時間とすることが好ましい。ドライエイジング処理の時間と合わせて、熟成時間は、400~1600時間、特に、408~792時間とすることが好ましい。しかし、熟成時の温度、湿度、時間等の条件は、熟成を行う食肉の状態に応じて適宜変更可能であり、ここに示した条件に限定されるものではない。
【0026】
<その他の工程>
本発明の方法は、ドライエイジング前の食肉材料について、表面の異物等を除去するための洗浄工程を備えていてもよい。洗浄は、例えば、生理食塩水、アルコール製剤等で行うことができる。この場合、食肉のうま味成分の流出を防ぐため、長時間の洗浄を避けることが望まれる。
【0027】
本発明の方法において、ドライエイジング処理後の食肉に、意図せず過乾燥が生じたり、表面にカビが発生したりした場合には、適宜トリミング工程を追加してもよい。
【0028】
本発明の方法は、ウェットエイジング後の熟成肉について、真空包装等から取り出し、カット及び商品包装を行う工程を含んでいてもよい。
【0029】
2.熟成肉
本発明の熟成肉は、上記の本発明の方法によって製造されたことを特徴とする。本発明の熟成肉は、本発明の方法により製造されることで、熟成が進んだ、良好な風味を有する熟成肉である。熟成の進み具合の一つの指標として、総遊離アミノ酸量が挙げられるが、本発明の熟成肉は、100gあたりの総遊離アミノ酸量が、好ましくは100mg以上、150mg以上、200mg以上又は250mg以上である。また、好ましくは、100gあたりの総遊離アミノ酸量が、イノシン酸量の4~150倍である。
【0030】
本発明の熟成肉の1gあたりの一般生菌数は、1×10cfu以下であることが好ましい。また、本発明の熟成肉の1gあたりの大腸菌群数は、1×10cfu以下、特に1×10cfu以下であることが好ましい。本明細書において「一般生菌数」とは、以下の方法で測定される菌数を指す。所定重量の熟成肉を9倍重量のPBSに浸漬して1分間ストマッカー処理を行い試料原液とする。この試料原液を段階希釈して標準寒天培地に混釈し、35℃、48時間培養し、プレートに生育したコロニー数を計測して、熟成肉1gあたりのコロニー数を算出し、一般生菌数(cfu/g)とする。本明細書において「大腸菌群数」とは、以下の方法で測定される菌数を指す。所定重量の熟成肉を9倍重量のPBSに浸漬して1分間ストマッカー処理を行い試料原液とする。この試料原液を段階希釈してクロモカルトコリフォーム寒天培地(ES-UPA:アメリカ合衆国環境保護庁承認)に混釈し、35℃、24時間培養する。プレートに生育したコロニー数を計測して、熟成肉1gあたりのコロニー数を算出し、大腸菌群数(cfu/g)とする。
【0031】
本発明の熟成肉は、1cmの厚さにカットして、180℃のホットプレートで内部温度が70℃になるまで加熱調理した後、縦1cm×横2cmにカットした試料について、その破断強度が1000gf以下、特に900gf以下、さらに800gf以下となることが好ましい。本明細書において「破断強度」とは、「破断荷重」とも称される、破断強度測定試験において破断を引き起こす荷重を指す。破断強度測定試験は、特に限定されないが、例えば、クリープメータを使用して実施することができる。具体的には、クリープメータのプランジャーにカッター刃を使用して、測定速度1.0mm/秒、歪率150%の条件で試料の筋繊維方向に垂直に貫入させる。その際、得られた応力-歪曲線から破断荷重値を算出することができる。
【実施例0032】
以下に本発明の実施例を掲載して、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1:各種静菌剤の比較>
原料肉としての冷凍牛肉(部位はサーロイン)2500~3500gを解凍し、2%食塩水で洗浄し、厚さ5cmとなるようカットした。冷蔵庫に静置し、ドライエイジング処理を施した。ドライエイジング処理は48時間行い、その間の冷蔵庫内の温度は0.2~4.0℃、湿度は63.2~89.1%であった。ドライエイジング処理後の牛肉の歩留まりは91%であった。ドライエイジング処理後の牛肉を、過酢酸製剤(パーサンMP2-J(エンビロテックジャパン株式会社)、水で過酢酸濃度400ppmに希釈)、アルコール製剤(キルバクト59(株式会社ウエノフーズ)、エタノール59%、原液)、乳酸ナトリウム溶液(コービオンジャパン株式会社、60%原液)に、それぞれ30秒間浸漬した。コントロールとして、これらの静菌剤に浸漬しない食肉も準備した。浸漬後の食肉の表面の水分を拭き取った後、真空包装を行った。真空包装後の牛肉を冷蔵庫内に静置し、15日間及び29日間ウェットエイジング処理を行った。冷蔵庫内の温度は、0.6~4.3℃であった。各条件の牛肉中の一般生菌数と大腸菌群数の確認(微生物試験)、風味、呈味に影響を及ぼす遊離アミノ酸の測定を行った。上記の熟成試験は三重試験として実施し(n=3)、各測定値の平均値を測定結果として表示した。
【0034】
一般生菌数検査は以下の方法で行った。牛肉25gに225mLのPBSを加えて、1分間ストマッカー処理を行い試料原液とした。この試料原液および適宜段階希釈した液を標準寒天培地に混釈し、35℃、48時間培養した。プレートに生育したコロニー数を計測して、一般生菌数とした。
【0035】
大腸菌群数検査は以下の方法で行った。牛肉25gに225mLのPBSを加えて、1分間ストマッカー処理を行い試料原液とした。この試料原液および適宜段階希釈した液をクロモカルトコリフォーム寒天培地(ES-UPA:アメリカ合衆国環境保護庁承認)に混釈し、35℃、24時間培養した。プレートに生育したコロニー数を計測して、大腸菌群数とした。
【0036】
各条件の熟成肉における、熟成開始2日後、17日後、31日後の微生物試験の結果を図1に示す。(A)が一般生菌数、(B)が大腸菌群数の推移を示す。静菌剤を使用しないものと比較して、いずれの静菌剤を使用した熟成肉においても、一般生菌数、大腸菌群数ともに顕著に減少することが確認された。
【0037】
遊離アミノ酸の測定は、以下の方法で行った。検体の2倍量の過塩素酸溶液を加えて、ホモジナイズを行った。遠心分離を行い、上澄みを濾過して不溶物を取り除いた。水酸化カリウムで中和した濾液を試料原液とした。試料原液を4倍希釈し、HPLC(島津製作所社製SHIMADZU Nexera)で分析を行った。使用したカラムはAgilent社製InfinityLab Poro-Shell HPH-C18(3.0mmID×100mm)である。総遊離アミノ酸として17種類のアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、プロリン、スレオニン、ヒスチジン、アルギニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、システイン、リシン、チロシン、セリン)を測定した。
【0038】
各条件の熟成肉における、熟成開始17日後、31日後の総遊離アミノ酸量を図2に示す。併せて熟成なしの食肉の総遊離アミノ酸量を示す。いずれの静菌剤を使用した熟成肉においても、静菌剤を使用しない熟成肉と総遊離アミノ酸量に大きな差異はなく、静菌剤が熟成に負の影響を与える可能性は低いことが示された。
【0039】
熟成による嗜好性の変化を確認するために官能評価を行った。牛肉を1cmのステーキ様にカットし、真空包装を行い80℃で10分間湯煎調理を行った。熟練した4人のパネラーにより熟成期間31日(ドライエイジング2日+ウェットエイジング29日)の、静菌剤処理なしの熟成肉、過酢酸製剤、アルコール製剤、乳酸ナトリウム溶液をそれぞれ含む静菌剤で処理した熟成肉について、異味異臭を含めた風味への影響を評価した。その結果、過酢酸製剤を使用した熟成肉で、静菌剤の風味への影響が最も小さいことが確認された。
【0040】
<実施例2:静菌剤の濃度検討>
牛肉5000~6000gを厚さ5cmにカットした。冷蔵庫に静置し、ドライエイジング処理を施した。ドライエイジング処理は72時間行い、その間の冷蔵庫内の温度は0.6~3.6℃、湿度は75.5~96.9%であった。ドライエイジング処理後の牛肉の歩留まりは89%であった。ドライエイジング処理後の牛肉を、過酢酸濃度1000ppm及び1500ppmの過酢酸製剤(パーサンMP2-Jを水で希釈したもの)に、それぞれ30秒間浸漬した。コントロールとして、これらの静菌剤に浸漬しない食肉も準備した。浸漬後の食肉の表面の水分を拭き取った後、真空包装を行った。真空包装後の牛肉を冷蔵庫内に静置し、15日間及び30日間ウェットエイジング処理を行った。上記の熟成試験は三重試験として実施し(n=3)、各測定値の平均値を測定結果として表示した。
【0041】
各牛肉中の一般生菌数と大腸菌群数の確認、総遊離アミノ酸の測定を実施例1と同様に行った。また、併せてイノシン酸の測定を行った。各条件の熟成肉における、熟成開始3日後、18日後、33日後の微生物試験の結果を図3に示す。特に大腸菌群数において、1500ppmの過酢酸を含む静菌剤が菌数の抑制に有効であることが示された。(A)が一般生菌数、(B)が大腸菌群数の推移を示す。また、各条件の熟成肉における、熟成開始18日後、33日後の総遊離アミノ酸量を図4に示す。併せて熟成なしの食肉の総遊離アミノ酸量を示す。過酢酸濃度を高くしても総遊離アミノ酸量に大きな影響はなく、静菌剤が熟成に負の影響を与える可能性は低いことが示された。
【0042】
イノシン酸の測定は、以下の方法で行った。検体の2倍量の過塩素酸溶液を加えて、ホモジナイズを行った。遠心分離を行い、上澄みを濾過して不溶物を取り除いた。水酸化カリウムで中和した濾液を試料原液とし、HPLC(島津製作所社製SHIMAZU UFLC)で分析を行った。使用したカラムは島津製作所社製Shim-pack CLC-ODS(6.0mmID×150mm)である。
各熟成肉における、総遊離アミノ酸量(mg/100g)/イノシン酸量(mg/100g)比を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
熟成による嗜好性の変化を確認するために官能評価を行った。牛肉を1cmのステーキ様にカットし、真空包装を行い80℃で10分間湯煎調理を行った。まず熟練した6人のパネラーにより熟成期間33日(ドライエイジング3日+ウェットエイジング30日)の、静菌剤処理なしの熟成肉、過酢酸濃度1000ppm、過酢酸濃度1500ppmの各静菌剤で処理した熟成肉について異味異臭を含めた風味への影響を評価した。その結果、すべての試験区において静菌剤の風味への影響や熟成による異味異臭はほとんど感じられないと評価された。またこの時、静菌剤の有無による物性の変化が生じていないことも確認された。
【0045】
次に熟練した5人のパネラーによる熟成肉の食感の評価を行った。解凍直後の食肉、及び熟成期間33日の熟成肉(静菌剤なし)で各パネラーが2サンプルずつ実食して評価を行った(n=10)。評価項目は、「やわらかさ」及び「うま味」とし、評価基準は、熟成なしの食肉を「0」として、以下のように設定した。
・やわらかさ
+3:非常にやわらかい; +2:やわらかい; +1:少しやわらかい; -1:少しかたい; -2:かたい; -3非常にかたい
・うま味
+3:強いうま味を感じる; +2:うま味が優れる; +1:うま味が少し優れる; -1:うま味が少し劣る; -2:うま味が劣る; -3:うま味がほとんど感じられない。
【0046】
各パネラーの評価の平均値は、「やわらかさ」が1.25、「うま味」が0.8であった。熟成により、明らかに食感が向上したことが示された。
【0047】
<実施例3:ドライエイジング期間の検討>
(1)試料(牛肉)の準備
試料として、交雑種(去勢)及びホルスタイン種(去勢)のサーロインを各3本使用した。1本あたりの重量は、交雑種が約12~14kg、ホルスタイン種が約8~9kgであった。
【0048】
(2)熟成(ドライエイジング+ウェットエイジング)
試料を7分割し、2%食塩水で洗浄した後、冷蔵庫内に静置し、ドライエイジング処理を施した。ドライエイジング処理は、6日間又は10日間行った。その間の冷蔵庫内の湿度は80.7±3.2%であった。ドライエイジング処理後の試料を、過酢酸製剤(パーサンMP2-J(エンビロテックジャパン株式会社)、水で過酢酸濃度1500ppmに希釈)に30秒間浸漬した。浸漬後の試料の表面の水分を拭き取った後、それぞれ真空包装を行った。真空包装後の試料を冷蔵庫内に静置し、ウェットエイジング処理を行った。熟成期間は、ドライエイジングとウェットエイジングの合計で15日間又は30日間とした。上記の熟成時間において、冷蔵庫内の温度は2.1±0.2℃であった。以下、ドライエイジングを「D」、ウェットエイジングを「W」と表記し、例えば、ドライエイジング処理を6日間とウェットエイジング処理を24日間行った場合、当該エイジング処理を併せて「D6W24」と表記する。
【0049】
(3)熟成(ウェットエイジングのみ)
比較対象として、以下の手順で、同試料をウェットエイジング法のみで熟成した。7分割にした試料を過酢酸製剤(パーサンMP2-J(エンビロテックジャパン株式会社)、水で過酢酸濃度1500ppmに希釈)に30秒間浸漬した。浸漬後の試料の表面の水分を拭き取った後、真空包装を行った。真空包装後の試料を冷蔵庫内に静置し、15日間又は30日間ウェットエイジング処理を行った。上記の熟成期間において、冷蔵庫内の温度は2.1±0.2℃であった。
【0050】
(4)歩留まり及び外観
表2に、各種試料の歩留まりを測定した結果を示す。表2に示す通り、ドライエイジングを10日間行った試料の歩留まりは、交雑種で90.4%、ホルスタイン種で85.8%となった。その後、過酢酸製剤への浸漬を行い、ウェットエイジングを行ったが、特に重量増加がなかったこと、熟成後のドリップの発生もほとんど見られなかったことから、過酢酸の吸着は少ないと推察された。
【0051】
【表2】
【0052】
外観については、特に、ドライエイジングを10日間行った試料で、交雑種とホルスタイン種の両方で表面の固化と褐変が見られた。しかし、その後のウェットエイジングにより、表面が保水され、褐変が改善されることが確認された。
【0053】
(5)微生物試験
各試料について、一般生菌数と大腸菌群数の確認(微生物試験)を実施例1と同様に行った。図5及び図6に、交雑種及びホルスタイン種の微生物試験の結果をそれぞれ示す。それぞれ、(A)は一般生菌数、(B)は大腸菌群数を示す。いずれの種においても、ドライエイジング期間中に生菌数の増加がみられた。しかし、ドライエイジング期間後に静菌剤による処理を行うことで生菌数が大幅に減少された。そして、その後ウェットエイジングを行った試料における生菌数は、合計熟成期間30日の段階で、ウェットエイジングのみを30日間行った試料と比較して大きな差異は見られなかった。
【0054】
(6)官能評価
交雑種、ホルスタイン種をD6W24、D10W20及びW30で熟成した試料を、1cmの厚さにカットして180℃のホットプレートで内部温度が70℃に達するまで加熱調理した後、2cmの幅にカットしたものを準備した。調理済みの各試料について、14名のパネラーが喫食して、やわらかさ、うま味、味の強さ、香りの強さ、過酢酸臭の有無の項目の評価を行った。やわらかさ、うま味、味の強さ、香りの強さの評価基準は、W30の試料の評価を「0」として、下記の通りとした。
【0055】
<やわらかさ> 3:非常にやわらかい; 2:やわらかい; 1:やややわらかい; 0:差異なし; -1:ややかたい; -2:かたい; -3:非常にかたい。
<うま味> 3:非常に強い; 2:強い; 1:やや強い; 0:差異なし; -1:やや弱い; -2:弱い; -3:非常に弱い。
<味の強さ> 3:非常に強い; 2:強い; 1:やや強い; 0:差異なし; -1:やや弱い; -2:弱い; -3:非常に弱い。
<香りの強さ> 3:非常に強い; 2:強い; 1:やや強い; 0:差異なし; -1:やや弱い; -2:弱い; -3:非常に弱い。
【0056】
交雑種及びホルスタイン種における各評価項目の評価結果を図7に示す。(A)が交雑種、(B)がホルスタイン種である。交雑種において、W30と比較して、D6W24は、やわらかさ、味の強さ、香りの強さで有意に高値を示した(p<0.01、t検定)。また、D10W20は、やわらかさ、うま味、味の強さ、香りの強さの4項目すべてで有意に高値を示した(p<0.01、t検定)。ホルスタイン種において、W30と比較して、D6W24及びD10W20は、やわらかさ、うま味、味の強さ、香りの強さの4項目すべてで有意に高値を示した(p<0.05、t検定)。
【0057】
上記試料とは別に、交雑種、ホルスタイン種をD6W9、D10W5で熟成した試料についても同様に官能評価を行ったところ、この段階で味の強さがW30よりも強い、と評価するパネラーが多かった(図示せず)。
【0058】
過酢酸臭の有無については、下記の基準で評価した。
4:風味への影響はほとんどない; 3:影響はあるが許容範囲; 2:影響がありやや許容できない; 1:影響が大きく食べられない。
【0059】
表3に、各試料の過酢酸臭の有無の評価結果を示す。過酢酸臭に関して、いずれの試料においても風味への影響がほとんどないことが確認された。
【0060】
【表3】
【0061】
(7)遊離アミノ酸測定
ドライエイジング期間6日及び10日の試料、及びウェットエイジングのみを行った試料について、合計熟成期間15、30日での遊離アミノ酸量を測定した。遊離アミノ酸の測定は、実施例1と同様の条件で行った。各試料の遊離アミノ酸量を図8に示す。(A)が交雑種、(B)がホルスタイン種の遊離アミノ酸量を示す。6日間及び10日間のドライエイジングを行った試料について、ウェットエイジングのみを行った試料と比較して遊離アミノ酸量が高いことが確認された。
【0062】
(8)イノシン酸測定
ドライエイジング期間6日及び10日の試料、及びウェットエイジングのみを行った試料について、合計熟成期間15、30日でのイノシン酸含有量を測定した。イノシン酸の測定は、実施例1と同様の条件で行った。各試料のイノシン酸量を図9に示す。(A)が交雑種、(B)がホルスタイン種のイノシン酸量を示す。6日間及び10日間のドライエイジングを行った試料の熟成によるイノシン酸の減少は、ウェットエイジングのみを行った試料と比較して大きな差異はないことが確認された。
【0063】
(9)破断強度試験
交雑種のD6W24、D10W20及びW30の試料を1cmの厚さにカットして、180℃のホットプレートで内部温度が70℃に達するまで加熱調理した後、縦1cm×横2cmにカットした。調理済みの各試料を、クリープメータ((株)山電、RE2-33005B)に供し、破断荷重(破断強度)値を測定した。クリープメータのプランジャーにカッター刃を使用して、測定速度1.0mm/秒、歪率150%の条件で試料の筋繊維方向に垂直に貫入させ、得られた応力-歪曲線から破断荷重値を算出した。試験回数は、D6W24、D10W20及びW30について、いずれも2試料を使用して、それぞれ、計52回、59回、48回とした。各試料の破断荷重値を図10に示す。図10に示す通り、ドライエイジングを行った試料において、ウェットエイジングのみを行った試料と比較して、破断荷重値が有意に低くなることが確認された(p<0.01、t検定)。
【0064】
以上の試験結果より、ドライエイジング処理とウェットエイジング処理を組み合わせる熟成肉の製造方法において、ドライエイジングの期間が6日間及び10日間のいずれであっても、一般生菌数及び大腸菌群数が十分に低く、食感がやわらかく、味・香り・うま味の強い熟成肉を取得可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、食品の製造方法及び食品に関連し、食品製造販売の産業分野において利用可能である。
図1
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