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  • 特開-汚染土壌浄化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180829
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】汚染土壌浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
B09B3/00 E
B09C1/10 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087541
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 純一
(72)【発明者】
【氏名】和田 忠輔
(72)【発明者】
【氏名】上沢 進
(72)【発明者】
【氏名】高柳 克也
(72)【発明者】
【氏名】島田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】石川 憲俊
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 達也
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB05
4D004AC05
4D004CA15
4D004CA18
4D004CA50
4D004CB03
4D004CB42
4D004CB50
4D004CC07
(57)【要約】
【課題】水素等の分子拡散によって土壌を浄化する場合の作業効率を向上させる。
【解決手段】汚染土壌浄化方法は、 ボーリング孔303を形成するボーリング孔形成工程と、ボーリング孔303に噴射装置102を挿入して回転させながら所定の浄化剤を噴射して土壌を面状に切削し、土壌と浄化剤とが混合された混合領域301、および混合領域301の周囲に所定の気体が分子拡散する拡散領域302を形成する領域形成工程とを有し、上記領域形成工程は、形成される複数の拡散領域302が非円弧状の境界を介して隣り合うように行われる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された土壌を浄化する汚染土壌浄化方法であって、
ボーリング孔を形成するボーリング孔形成工程と、
上記ボーリング孔に噴射装置を挿入して回転させながら水を高圧で噴射して土壌の面状でスリット状の領域を切削し、浄化剤を圧入・充填することにより、土壌と浄化剤とが混合された混合領域、および上記混合領域の周囲に所定の物質が分子拡散する拡散領域を形成する領域形成工程と、
を有し、
上記領域形成工程は、形成される複数の拡散領域が非円弧状の境界を有し、互いに接し、または重なり合って隣り合うように行われることを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項2】
請求項1の汚染土壌浄化方法であって、
上記混合領域は、矩形状の領域であることを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の汚染土壌浄化方法であって、
上記浄化剤は、地中に存在する微生物の生分解反応により水素を発生させる微生物活性剤であり、上記拡散領域は、発生した水素が分子拡散する領域であることを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項4】
請求項3の汚染土壌浄化方法であって、
上記ボーリング孔の中心から上記拡散領域の境界までの距離が、予め浄化対象の土壌を用いた上記生分解反応の活性化程度の計測に基づいて推定され、推定された距離に基づいて、ボーリング孔の配置ピッチが決定されることを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項の汚染土壌浄化方法であって、
上記ボーリング孔の中心から所定の距離の位置に、上記浄化剤の到達の有無を検出する検出手段を配置して、上記浄化剤の噴射による土壌の切削を行うことを特徴とする汚染土壌浄化方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項の汚染土壌浄化方法であって、
上記混合領域は、土壌の浄化対象領域を越えないとともに、上記拡散領域は、土壌の浄化対象領域以上に形成されることを特徴とする汚染土壌浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば揮発性有機化合物(VOC)などの有害化学物質で汚染された土壌を浄化する汚染土壌浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄化剤を注入しても拡散しにくいような透水性の低い土壌を浄化する技術として、水素を分子拡散によって浸透させ、脱塩素菌の還元的脱塩素化反応により、有害化学物質を生分解する技術が知られている。より詳しくは、例えば、汚染された土壌に形成したボーリング孔に、先端に噴射装置を設けたロッドを挿入し、微生物活性剤を噴射して土壌を切削し、土壌と微生物活性剤が混合された円板状や円錐面状などの混合領域を形成することによって、微生物活性剤の生分解反応により水素を発生させる。発生した水素が分子拡散によって浸透すると、脱塩素菌の還元的脱塩素化反応によって有害化学物質を生分解することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-071126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにボーリング、および混合領域の形成によって広い面積の土壌を浄化する場合、円板状などの混合領域を複数形成する必要がある。そして、浄化しようとする領域全域に亘って水素を拡散させるためには、必然的に、複数の円板状などの混合領域による水素の拡散領域が重複する領域が生じることになる。それゆえ、ボーリング、および混合領域の数を低減するなどして作業効率を向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、水素等の分子拡散によって土壌を浄化する場合の作業効率を向上させ得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
汚染された土壌を浄化する汚染土壌浄化方法であって、
ボーリング孔を形成するボーリング孔形成工程と、
上記ボーリング孔に噴射装置を挿入して回転させながら水を高圧で噴射して土壌における面状でスリット状の領域を切削し、浄化剤を圧入・充填することにより、土壌と浄化剤とが混合された混合領域、および上記混合領域の周囲に所定の物質が分子拡散する拡散領域を形成する領域形成工程と、
を有し、
上記領域形成工程は、形成される複数の拡散領域が非円弧状の境界を有し、互いに接し、または重なり合って隣り合うように行われることを特徴とする。
【0007】
これにより、隣り合う拡散領域の重なり代を小さく抑え、ボーリングの回数を低減したり領域形成工程の効率を向上させたりすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、水素等の分子拡散によって土壌を浄化する場合の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】噴射装置の例を模式的に示す斜視図である。
図2】敷地内の単位浄化区画の例を示す説明図である。
図3】単位浄化区画内のボーリングごとの浄化領域の形状および配置の例を示す説明図である。
図4】混合領域の検出の例を示す説明図である。
図5】単位浄化区画内を複数の円板状の浄化領域によって浄化する場合の浄化領域の配置の例を示す対比例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(噴射装置102の概略構成)
まず、図1を参照して、汚染土壌の浄化に用いられる噴射装置102の概略構成について説明する。噴射装置102には、噴射装置102の中心軸に対して点対称となる1対の放射方向に噴流Jを噴射するノズル102aが設けられている。この噴射装置102は、ボーリングロッド101の先端に取り付けられて、予め削孔されたボーリング孔に挿入され、定速で回転させながら、水を高圧で噴射させることにより、土壌における例えば円板Sのように面状でスリット状の領域を切削し、微生物活性剤(浄化剤)を該スリットに圧入・充填することで、土壌と浄化剤とが混合された混合領域を形成し得るようになっている。また、回転速度を回転角に応じて所定に制御したり、高圧水の噴射速度や、噴射圧力、噴射流量を変化させたりすることにより、例えば特許5649052号公報の図12、およびその関連箇所に記載されているように正方形に近い平面形状などの混合領域を形成することもできるようになっている。ここで、上記「面」は、数学におけるように厚さが0である面を意味するのではなく、広がりの大きさに対して厚さが十分に薄い形状であることを意味する。また、上記回転は、回転速度を回転角に応じて変化させながら回転させることや、間欠的な回転、正逆回転を繰り返す回転など、中心軸回りに回る動きを伴う動作を含み得る。
【0012】
(浄化処理の概要)
水素等の分子拡散による土壌の浄化について説明する。
【0013】
上記のような噴射装置102を用い、浄化剤としての微生物活性剤を噴射して、土壌と混合された混合領域を形成することにより、地中に存在する微生物を活性化し、微生物活性剤の生分解反応により水素を発生させることができる。そのような微生物活性剤としては、例えば、窒素、リン、ビタミンB12(コバラミン)の少なくとも1つや、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン、大豆油、水などを含むものを用いることができる。
【0014】
発生した水素は分子拡散により難透水層であっても比較的容易に透過し、上記混合領域の周囲に浸透して拡散領域が形成される。そこで、土壌中に存在して有害化学物質(例えば有機塩素化合物)を生分解する性質を有する微生物、例えばデハロ菌(Dehalococcoides属細菌)等の脱塩素菌が活性化して、増殖し、還元的脱塩素化反応により有害化学物質(有機塩素化合物等)が生分解され、土壌が浄化される。
【0015】
(浄化領域の具体例)
浄化処理は、具体的には、例えば、図2に示すような浄化対象敷地境界201内において、10m区画ライン202によって区画される10m四方の単位浄化区画ごとに汚染の有無や程度などが判別され、汚染土壌エリア203とされた領域に対して浄化処理が行われる。各汚染土壌エリア203は、それぞれ、例えば図3に示すように16本のボーリング孔303を形成するボーリング孔形成工程と、土壌と浄化剤とが混合された混合領域301、および上記混合領域の周囲に所定の気体が分子拡散する拡散領域302を形成する領域形成工程とが行われることにより浄化される。
【0016】
上記混合領域301は、ボーリング孔303を中心とした正方形状などの矩形状に形成され、縦横に配置される。また、そのような混合領域301の周囲に水素等が分子拡散することによって、拡散領域302も概ね正方形状に形成される。ここで、上記混合領域301や拡散領域302の正方形状の意義は、必ずしも幾何学的に正確な正方形を意味するのではなく、例えば上記特許5649052号公報の図12等に示されるように各辺が非円弧状、すなわち円弧よりも直線に近い形状であることを意味し、これによって、複数の拡散領域302が図3に2点鎖線で示すように非円弧状の境界を介して隣り合うようになり、拡散領域の境界が円弧状となる場合よりも重なり代を小さく抑え、領域形成工程の効率を容易に向上させることができる。また、汚染土壌エリア203の外側に混合領域301が広がるのを防止、または低減することが容易にできる。
【0017】
ここで、幾何学的に、互いに隣接する4つの混合領域301の頂点の間の部分には、各頂点からの距離が、各混合領域301の辺と拡散領域302の辺との間の距離よりも長くなることから、この各頂点からの距離を分子拡散の距離と考える。この場合、各混合領域301の辺と拡散領域302の辺との間においては水素等の分子拡散範囲は計画領域を超えることとなるが汚染を拡散させることとならず、汚染土壌エリア203内の全域に亘って、拡散領域302による浄化を十分、適切に行わせることができると考えられる。
【0018】
また、例えば図5に示すように混合領域を円形混合領域501として形成する場合には、各円形混合領域501の面積は混合領域301よりも大きいが、例えば隣り合う円形混合領域501の中心を結ぶ線上の部分などで円形拡散領域502の重なり代が大きくなりがちであるうえ、汚染土壌エリア203から外方にはみ出す円形混合領域501の領域も大きくなるため、ボーリング孔503の数(ボーリングの回数)も多くなり、浄化剤の使用量も多くなりがちである。
【0019】
これに対して、上記のように混合領域301が正方形状など直線状(非円弧状)の境界で区画されるように形成されることにより、汚染土壌エリア203内のボーリングなどの回数を少なく抑えることが容易にでき、浄化の効率も高めることが容易にできる。しかも、汚染土壌エリア203に隣接するエリアが汚染土壌エリアでない場合には、そのような隣接エリアに対して不用意に土壌の切削や浄化剤の混合が行われるのを抑制することもできる。
【0020】
(その他の事項)
上記のような混合領域の形成が行われる場合、その領域の範囲の精度を高くするためには、予め浄化対象の土壌を用いて生分解反応や脱塩素化反応の活性化程度などを計測して、所定時間内におけるボーリング孔の中心から拡散領域の境界までの距離などを推定し、推定された距離に基づいて、ボーリング孔の配置ピッチなどを決定するようにしてもよい。
【0021】
また、上記のような推定に代えて、または推定とともに、混合領域の範囲をモニタしながら混合領域の形成をするようにしてもよい。具体的には、例えば図4に示すように、目標とする拡散領域302や混合領域301の外縁部、より詳しくは各領域の頂点部分や辺部分に、計測管と振動センサやマイクロフォンなどから構成される拡散領域外縁検出部401や混合領域外縁検出部402を設け、混合領域が混合領域外縁検出部402の位置まで達し、かつ、拡散領域外縁検出部401の位置までは達しないことを確認するようにしてもよい。また、そのような検出結果をフィードバックして自動的に拡散領域の形成が制御されるようにしてもよい。
【0022】
上記のように、水素などの気体が分子拡散した拡散領域が形成されて土壌の浄化が行われる浄化処理において、複数の拡散領域が非円弧状の境界を有し、互いに接し、または重なり合って隣り合うように、特に各混合領域が正方形状や矩形状になるように混合領域や拡散領域の形成が行われることにより、拡散領域が非円弧状の境界を介して隣り合うようになり、拡散領域の境界が円弧状となる場合よりも拡散領域の重なり代を小さく抑え、ボーリングの回数を低減したり領域形成工程の効率を向上させたりすることが容易にできる。また、汚染土壌エリア203の外側に混合領域301が広がる(浄化対象領域を越える)のを防止するとともに、拡散領域302は、汚染土壌エリア203の範囲内では十分に形成されるように(土壌の浄化対象領域以上に形成されるように)することが容易にできる。
【0023】
なお、上記のような拡散領域が形成される浄化方法としては、微生物を利用して水素を発生するものに限らず、浄化剤そのものやその成分、反応生成物などの気体や液体などの物質が分子拡散する場合でも、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
101 ボーリングロッド
102 噴射装置
102a ノズル
201 浄化対象敷地境界
202 10m区画ライン
203 汚染土壌エリア
301 混合領域
302 拡散領域
303 ボーリング孔
401 拡散領域外縁検出部
402 混合領域外縁検出部
501 円形混合領域
502 円形拡散領域
503 ボーリング孔
図1
図2
図3
図4
図5