(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180842
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】撚線導体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/10 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
H01B5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087561
(22)【出願日】2021-05-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】395005169
【氏名又は名称】三洲電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 俊文
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307EA01
5G307EF09
5G307EF10
(57)【要約】
【課題】圧縮することなく、若しくは、低い圧縮率で、撚線導体の断面形状を真円状に近い形状に製造できる撚線導体を提供する。
【解決手段】
中心部に3本以上5本以下の第1内層線11を周方向に配設して構成した内層2を有する撚線導体1であって、該内層2の外側に、前記第1内層線11の本数と同じ本数の第1細径線12と、前記第1内層線11の本数と同じで、かつ、前記第1細径線12の直径より太い第1太径線13で構成した第1外層3を配設し、周方向に隣接する第1内層線11,11間で形成される谷間部15の外側に前記第1太径線13を配設し、周方向に隣り合う第1太径線13,13間に1本の第1細径線12を配設した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設し、
前記第1外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第2細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第2細径線の直径より太い第2太径線で構成した第2外層を配設し、
前記第2細径線の中心が、前記撚線導体の中心と、前記第1太径線を結ぶ線上に位置するように配置し、周方向に隣り合う第2細径線間に2本の第2太径線を周方向に配設し、
前記第1細径線と前記第1太径線との間で形成される谷間部の外側に第2太径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項3】
中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設し、
前記第1外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第2細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第2細径線の直径より太い第2太径線で構成した第2外層を配設し、
前記第2細径線の中心が、前記撚線導体の中心と、前記第1太径線を結ぶ線上に位置するように配置し、周方向に隣り合う第2細径線間に2本の第2太径線を周方向に配設し、
前記第1細径線と前記第1太径線との間で形成される谷間部の外側に第2太径線を配設し、
前記第2外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第3細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第3細径線の直径より太い第3中径線と、第1内層線の本数と同じ本数で、かつ、前記第3中径線の直径より太い第3太径線で構成した第3外層を配設し、
周方向に隣接する第2太径線間で形成される谷間部の外側に前記第3太径線を配設し、周方向に隣接する第3太径線間に、2本の第3中径線を離間して配設し、周方向に隣接する第3中径線間に、1本の第3細径線を配設したことを特徴とする撚線導体。
【請求項4】
前記撚線導体の中心から、径方向の最も外側に位置する層を構成する素線のうち最も太い素線の外縁端までの距離と、
前記撚線導体の中心から、径方向の最も外側に位置する層を構成する素線のうち最も細い素線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の撚線導体。
【請求項5】
径方向の最も外側に位置する層を構成する素線は、外側から圧縮変形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撚線導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線導体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等に使用される撚線導体を構成する各々の素線は、一般的に、全て断面円形の丸線で、かつ、同一径である。この素線として銅線が主として用いられ、その銅線に、錫、ニッケル、銀、或いはアルミ、各種合金をメッキしたものが使用されている。
【0003】
例えば、同心撚り構成で、かつ、19本の素線で構成される撚線導体は、一般的に、
図10に示すように、撚線導体101における中心の1本の素線102を核として、その周囲を6本の素線103が覆い囲んで内層を形成し、更に、その外周を12本の素線104が覆い囲んで外層を形成し、それを同一方向に撚ることで形成されている。
【0004】
素線102、103、104が全て、断面円形で、かつ、同一径であることから、素線102、103、104を標準心線配列で配列して撚線導体101を形成すると、その外周形状は、
図10に示すように、六角形状に近似した形状となり、丸形状に近似した形状とはならない。以下、これを従来技術1とする。
【0005】
また、一般的に、撚線導体101は、
図10に示すように、外周部に絶縁材106が被覆されて、電線(被覆線)等107として使用される。絶縁材106の減量化は、資源の有効活用の観点から重要であり、そのために、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれる。
【0006】
しかし、同じ径の素線で、かつ、同心撚り配列で撚線導体を構成すると、例えば、
図10に示すように、撚線導体101の断面形状の外形は、六角形となり、被覆線107の厚みは、頂点部の近傍は薄く、頂点部から辺部に至るほど厚くなり、絶縁材106の厚みは不均一となる。また、耐圧不良を防止するためには、撚線導体101の外周部に略均一に被覆されることが好ましい。この点からも、撚線導体の断面形状は真円であることが望まれる。
【0007】
また、撚線導体101の断面形状が六角形である場合、被覆線の端末加工等において、絶縁材106をストリップする際に撚線導体101を傷つける虞があるという問題がある。
【0008】
また、同心撚り配列以外の一括集合撚線においても、同様に、撚線導体の断面形状が真円であることが望まれている。
【0009】
撚線導体の断面形状を真円とする方法として、例えば、特許文献1記載のように、断面円形で、かつ、全て同一径の素線202を、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通すことにより、
図11に示すように、撚線導体201の断面形状を略真円とする方法が提案されている。以下、これを従来技術2とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記、従来技術2の撚線導体201は、素線202を圧縮ダイスに通す時に、外層素線が、圧縮変形されることにより、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損なわれるという問題がある。
【0012】
また、従来技術2の撚線導体201は、一方向に撚りながら圧縮ダイスを通す必要があるため、従来技術1の撚線導体101と比較して、圧縮ダイスが余分に必要であり、この圧縮ダイスは撚線導体201の製造時に摩耗損傷が生じるため、定期交換が必要でありコストが高くなるという問題がある。
【0013】
また、圧縮後の撚線を略真円状にするためには、製造機械(撚線機)の回転数を一定値以下にし、かつ、回転数を安定させる必要があるため、従来技術1の撚線導体101よりも生産効率が悪くなるという問題もある。
【0014】
そこで、本発明は、圧縮することなく、若しくは、上記従来技術2よりも低い圧縮率で素線を圧縮加工することで、撚線導体の断面形状をより真円形状に近い形状とすることができる撚線導体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項2記載の発明は、中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設し、
前記第1外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第2細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第2細径線の直径より太い第2太径線で構成した第2外層を配設し、
前記第2細径線の中心が、前記撚線導体の中心と、前記第1太径線を結ぶ線上に位置するように配置し、周方向に隣り合う第2細径線間に2本の第2太径線を周方向に配設し、
前記第1細径線と前記第1太径線との間で形成される谷間部の外側に第2太径線を配設したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を有する撚線導体であって、
該内層の外側に、前記第1内層線の本数と同じ本数の第1細径線と、前記第1内層線の本数と同じで、かつ、前記第1細径線の直径より太い第1太径線で構成した第1外層を配設し、
周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設し、
前記第1外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第2細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第2細径線の直径より太い第2太径線で構成した第2外層を配設し、
前記第2細径線の中心が、前記撚線導体の中心と、前記第1太径線を結ぶ線上に位置するように配置し、周方向に隣り合う第2細径線間に2本の第2太径線を周方向に配設し、
前記第1細径線と前記第1太径線との間で形成される谷間部の外側に第2太径線を配設し、
前記第2外層の外側に、第1内層線の本数と同じ本数の第3細径線と、第1内層線の本数の2倍の本数で、かつ、前記第3細径線の直径より太い第3中径線と、第1内層線の本数と同じ本数で、かつ、前記第3中径線の直径より太い第3太径線で構成した第3外層を配設し、
周方向に隣接する第2太径線間で形成される谷間部の外側に前記第3太径線を配設し、周方向に隣接する第3太径線間に、2本の第3中径線を離間して配設し、周方向に隣接する第3中径線間に、1本の第3細径線を配設したことを特徴とするものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記撚線導体の中心から、径方向の最も外側に位置する層を構成する素線のうち最も太い素線の外縁端までの距離と、
前記撚線導体の中心から、径方向の最も外側に位置する層を構成する素線のうち最も細い素線の外縁端までの距離が同じであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、径方向の最も外側に位置する層を構成する素線は、外側から圧縮変形されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中心部に3本以上5本以下の第1内層線を周方向に配設して構成した内層を構成し、周方向に隣接する第1内層線間で形成される谷間部の外側に前記第1太径線を配設し、周方向に隣り合う第1太径線間に1本の第1細径線を配設して第1外層を構成したことにより、撚線導体の断面形状は略真円形状とし、撚線導体の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【0021】
また、第2細径線の中心が、撚線導体の中心と、前記第1太径線を結ぶ線上に位置するように配置し、周方向に隣接する第2細径線間に2本の第2太径線を周方向に配設し、第1細径線と前記第1太径線との間で形成される谷間部の外側に第2太径線を配設して構成した第2外層を、第1外層の外側に構成することによっても、撚線導体の断面形状は略真円形状とすることができる。
【0022】
また、周方向に隣接する第2太径線間で形成される谷間部の外側に第3太径線を配設し、周方向に隣接する第3太径線間に、2本の第3中径線を離間して配設し、周方向に隣接する第3中径線間に、1本の第3細径線を配設して構成した第3外層を、第2外層の外側に構成することによっても、撚線導体の断面形状は略真円形状とすることができる。
【0023】
また、本発明の撚線導体は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体の外形を略真円形状とすることができるために、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性を損うことなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1に係る撚線導体の横断面図。
【
図2】本発明の実施例3に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
【
図3】本発明の実施例3に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
【
図4】本発明の実施例4に係る撚線導体の横断面図。
【
図5】本発明の実施例5に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
【
図6】本発明の実施例5に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
【
図7】本発明の実施例6に係る撚線導体の横断面図。
【
図8】本発明の実施例7に係る撚線導体の一例を示す横断面図。
【
図9】本発明の実施例7に係る撚線導体の他例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0026】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撚線導体1の軸方向と直交する方向に切断した横断面図で、その各素線の断面を示す斜線は、図の煩雑を避けるために省略した。
【0027】
撚線導体1は、内層2と、内層2の外側に設けられた第1外層3を有する。第1外層3で、外層6を構成する。内層2は、3本の第1内層線(素線)11を周方向に配列して構成されている。
【0028】
第1外層3は、
図1に示すように、3本の第1細径線(素線)12と、3本の第1太径線(素線)13の計6本の素線12,13で、内層2を覆い囲むように構成されている。第1内層線11と第1細径線12と第1太径線13は、夫々、同じ本数である3本で構成されている。
【0029】
第1太径線13は、内層2を構成し、かつ、周方向に隣接する第1内層線11,11との間に形成される谷間部15の外側に、第1内層線11に当接するように配置され、周方向に隣り合う第1太径線13と13は、相互に離間して配設されている。
【0030】
第1細径線12は、周方向に隣り合う第1太径線13と13との間に、1本配設され、周方向に隣り合う第1細径線12は、相互に離間して配設されている。
【0031】
なお、本実施例では、内層2の内側に素線を配設していないが、内層2の内側に1本又は複数本の素線を配設してもよく、素線の本数、配置、構成等は任意に設定することができる。
【0032】
各素線11,12,13の基となる線材としては、裸銅線、無酸素銅線、線形結晶無酸素銅線、単結晶状高純度無酸素銅線等の銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、リッツ線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができる。各素線11,12,13の素材は、同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いてもよい。
【0033】
第1内層線11の直径d1は、第1細径線12の直径d2より小さく、第1細径線12の直径d2は、第1太径線13の直径d3より小さく設定されている。
【0034】
本実施例1では、d2=1.595×d1、d3=1.97×d1の関係が成立する各素線11,12,13を用いた。
【0035】
また、撚線導体1の断面形状が、略真円形状、つまり、撚線導体1の中心Aから、径方向の最も外側に位置する層である第1外層3を構成する素線のうち最も太い素線である第1太径線13の最外縁端Bまでの距離L1と、中心Aから、径方向の最も外側に位置する層である第1外層3を構成する素線のうち最も細い素線である第1細径線12の最外縁端Cまでの距離L2が同一となるように形成されている。
【0036】
本願発明の撚線導体1は、上記の構造を有しているために、次のような作用、効果を奏する。
【0037】
撚線導体1の断面形状は略真円形状とし、かつ、各素線11,12,13が隣接する全ての素線11,12,13に当接することができるために、撚形態が安定するとともに撚線導体1の導体密度を高くすることができ、撚線導体1の細径化、軽量化、柔軟性の向上を図ることができる。
【0038】
撚線導体1の外形が略真円形状で、かつ、上述のように、従来技術1の撚線導体101よりも細径化できることにより、絶縁材の被覆の厚みを薄くでき、かつ、略均一化することができるため、絶縁材を減量でき、コストを低減することができる。
【0039】
また、撚線導体1は、従来技術2の撚線導体201のように、素線を圧縮ダイスに通すことなく、撚線導体1の外形を略真円形状とすることができるため、のび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性が損われることがなく、素線の物理特性を維持することができ、信頼性の高い品質を得ることができ、自動車用電線分野や、音響電線分野等において有効に活用することができる。
【0040】
[実施例2]
上記実施例1において、第1細径線12の直径d2が、第1太径線13の直径d3より小さくなる素線11,12,13を用いて撚線導体1を構成すれば、上記実施例1に記載の径を有する素線以外にも任意の素線を用いて撚線導体1を構成することができる。また、その第1外層3の外周部から圧縮ダイス等により、圧縮してもよい。
【0041】
この圧縮により、径方向の最も外側に位置する第1外層3を構成する素線12,13の外周部は、圧縮変形され、撚線導体の外形形状をより真円形状に近づけることができる。圧縮ダイス等による圧縮は、撚線導体1を製造する際に行っても良いし、撚線導体1を製造した後に行っても良い。なお、圧縮率に関しては、任意に設定する。
【0042】
その他の構造は、上記実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0043】
本実施例2においても、上記実施例1と同様の作用効果を発揮することができる。
【0044】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、第1内層線11と、第1細径線12と、第1太径線13の本数を、夫々3本としたが、第1外層3を構成する第1細径線12と第1太径線13の夫々の本数を、内層2を構成する第1内層線11の本数と同じで、かつ、第1内層線11の本数が3本以上5本以下であれば、夫々任意の本数に設定することができる。
【0045】
本実施例3においても、上記実施例1と同様に、第1太径線13は、内層2を構成し、かつ、周方向に隣接する第1内層線11,11との間に形成される谷間部15の外側に配置され、第1細径線12は、周方向に隣り合う第1太径線13と13との間に、1本配設されている。
【0046】
例えば、
図2に示すように、内層2Aの第1内層線11を4本、第1外層3Aを構成する第1細径線12と第1太径線13を各4本とした撚線導体17の場合には、d2=1.155×d1,d3=1.47×d1、の関係が成立する各素線11,12,13の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体17の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13が隣接する全ての素線11,12,13と当接することができる。
【0047】
例えば、
図3に示すように、内層2Bの第1内層線11を5本、第1外層3Bを構成する第1細径線12と第1太径線13を各5本とした撚線導体18の場合には、d2=0.95×d1,d3=1.23×d1、の関係が成立する各素線11,12,13の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体17の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13が隣接する全ての素線11,12,13と当接することができる。
【0048】
その他の構造は、上記実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0049】
本実施例3においても、上記実施例1,2と同様の作用効果を発揮することができる。
【0050】
[実施例4]
本実施例4の撚線導体21は、
図4に示すように、第1外層3の外側に第2外層4を設け、第1外層3と第2外層4の2層で外層22を構成する。本実施例4の内層2と第1外層3は上記実施例1、2の内層2と第1外層3と同様に構成されている。
【0051】
第2外層4は、
図4に示すように、3本の第2細径線(素線)23と、6本の第2太径線(素線)24の計9本の素線23,24で、第1外層3を覆い囲むように構成されている。第2細径線23の本数は、第1内層線11の本数と同じに、第2太径線24の本数は、第1内層線11の本数の2倍で構成されている。
【0052】
第2細径線23の中心は、撚線導体21の中心と、第1太径線13を結ぶ線上に位置するように配置し、好ましくは、撚線導体21の中心と、第1太径線13の中心を結ぶ線上に位置するように配置され、周方向に隣り合う第2細径線23は、相互に離間して配設されている。
【0053】
第2太径線24は、周方向に隣り合う第2細径線23と23との間に、周方向に2本配設されるとともに、第1外層3を構成し、かつ、周方向に隣接する第1細径線12と第1太径線13との間に形成される谷間部25の外側に、第1細径線12と第1太径線13に当接するように配設されている。
【0054】
第2細径線23の直径d4は、第2太径線24の直径d5より小さく設定されている。
【0055】
本実施例4では、d2=1.45×d1、d3=2.16×d1、d4=2.21×d1、d5=2.80×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24を用いることで、撚線導体21の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13,23,24が隣接する全ての素線11,12,13,23,24と当接することができる。
【0056】
また、撚線導体21の断面形状が、略真円形状、つまり、撚線導体21の中心A1から、径方向の最も外側に位置する層である第2外層4を構成する素線のうち最も太い素線である第2太径線24の最外縁端B1までの距離L11と、中心A1から、径方向の最も外側に位置する層である第2外層4を構成する素線のうち最も細い素線である第2細径線23の最外縁端C1までの距離L21が同一となるように形成されている。
【0057】
なお、第1細径線12の直径d2は、第1太径線13の直径d3より小さく、第2細径線23の直径d4は、第2太径線24の直径d5より小さくなる素線11,12,13,23,24を用いて撚線導体21を構成すれば、上記実施例1,2,4に記載の径を有する素線以外にも任意の素線を用いて撚線導体21を構成することができる。
【0058】
また、本実施例では、内層2の内側に素線を配設していないが、内層2の内側に1本又は複数本の素線を配設してもよく、素線の本数、配置、構成等は任意に設定することができる。
【0059】
その他の構造は、上記実施例1,2と同様であるため説明を省略する。
【0060】
本実施例4においても、上記実施例1,2と同様の作用効果を発揮することができる。
【0061】
[実施例5]
上記実施例4においては、
図4に示すように、第1内層線11と、第1細径線12と、第1太径線13と、第2細径線23の本数を、夫々3本、第2太径線24の本数を6本としたが、第1外層3を構成する第1細径線12と第1太径線13の夫々の本数と、第2外層4を構成する第2細径線23の本数を、内層2を構成する第1内層線11の本数と同じとするとともに、第2外層4を構成する第2太径線24の本数を、内層2を構成する第1内層線11の本数の2倍とし、かつ、第1内層線11の本数が3本以上5本以下であれば、夫々任意の本数に設定することができる。
【0062】
本実施例5においても、上記実施例4と同様に、第1太径線13は、内層2を構成し、かつ、周方向に隣接する第1内層線11,11との間に形成される谷間部15の外側に配置され、第1細径線12は、周方向に隣り合う第1太径線13と13との間に、1本配設されている。
【0063】
また、本実施例5においても、上記実施例4と同様に、第2細径線23の中心は、撚線導体21の中心と、第1太径線13を結ぶ線上に位置するように配置し、好ましくは、撚線導体21の中心と、第1太径線13の中心を結ぶ線上に位置するように配置されている。また、第2太径線24は、周方向に隣り合う第2細径線23と23との間に、周方向に2本配設されるとともに、第1外層3を構成し、かつ、周方向に隣接する第1細径線12と第1太径線13との間に形成される谷間部25の外側に配設されている。
【0064】
例えば、
図5に示すように、第1外層3Aの外側に第2外層4Aを設け、内層2Aの第1内層線11を4本、第1外層3Aを構成する第1細径線12と第1太径線13と、第2外層4Aを構成する第2細径線23を各4本、第2外層4Aを構成する第2太径線24を8本とした撚線導体27の場合には、d2=1.02×d1,d3=1.56×d1、d4=1.29×d1、d5=1.69×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体27の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13,23,24が隣接する全ての素線11,12,13,23,24と当接することができる。
【0065】
例えば、
図6に示すように、第1外層3Bの外側に第2外層4Bを設け、内層2Bの第1内層線11を5本、第1外層3Bを構成する第1細径線12と第1太径線13と、第2外層4Bを構成する第2細径線23を各5本、第2外層4Bを構成する第2太径線24を10本とした撚線導体28の場合には、d2=0.855×d1,d3=1.33×d1、d4=0.94×d1、d5=1.275×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体28の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13,23,24が隣接する全ての素線11,12,13,23,24と当接することができる。
【0066】
その他の構造は、上記実施例1~4と同様であるため説明を省略する。
【0067】
本実施例5においても、上記実施例1~4と同様の作用効果を発揮することができる。
【0068】
[実施例6]
本実施例6の撚線導体31は、
図7に示すように、第2外層4の外側に第3外層5を設け、第1外層3と第2外層4と第3外層5の3層で外層32を構成する。本実施例6の内層2と第1外層3と第2外層4は上記実施例1、2、4の内層2と第1外層3と第2外層4と同様に構成されている。
【0069】
第3外層5は、
図7に示すように、3本の第3細径線(素線)33と、6本の第3中径線(素線)34と、3本の第3太径線(素線)35の計12本の素線33,34,35で、第2外層4を覆い囲むように構成されている。第3細径線33の本数は、第1内層線11の本数と同じに、第3中径線34の本数は、第1内層線11の本数の2倍で、第3太径線35の本数は、第1内層線11の本数と同じに構成されている。
【0070】
第3細径線33の直径d6は、第3中径線34の直径d7より小さく、第3中径線34の直径d7は、第3太径線35の直径d8より小さく設定されている。
【0071】
第3太径線35は、第2外層4を構成し、かつ、周方向に隣接する第2太径線24と第2太径線24との間に形成される谷間部36の外側に、第2太径線24に当接するように配設され、周方向に隣り合う第3太径線35は、相互に離間して配設されている。
【0072】
第3中径線34は、第3外層5を構成し、かつ、周方向に隣り合う第3太径線35と第3太径線35の間に、周方向に相互に離間するように2本配設されている。
【0073】
第3細径線33は、第3外層5を構成し、かつ、周方向に隣り合う第3中径線34と第3中径線34の間に、1本配設され、周方向に隣り合う第3細径線33は、相互に離間して配設されている。
【0074】
本実施例6では、d2=1.45×d1、d3=2.16×d1、d4=2.21×d1、d5=2.80×d1、d6=3.21×d1、d7=3.30×d1、d8=3.80×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24,33,34,35を用いることで、撚線導体31の断面形状を略真円形状とするとともに、各素線11,12,13,23,24,33,34,35が隣接する全ての素線11,12,13,23,24,33,34,35と当接することができる。
【0075】
また、撚線導体31の断面形状が、略真円形状、つまり、撚線導体31の中心A2から、径方向の最も外側に位置する層である第3外層5を構成する素線のうち最も太い素線である第3太径線35の最外縁端B2までの距離L21と、中心A2から、径方向の最も外側に位置する層である第3外層5を構成する素線のうち最も細い素線である第3細径線33の最外縁端C2までの距離L22が同一となるように形成されている。
【0076】
なお、第1細径線12の直径d2は、第1太径線13の直径d3より小さく、第2細径線23の直径d4は、第2太径線24の直径d5より小さく、第3細径線33の直径d6は、第3中径線34の直径d7より小さく、第3中径線34の直径d7は、第3太径線35の直径d8より小さくなる素線11,12,13,23,24,33,34,35を用いて撚線導体31を構成すれば、上記実施例1,2,4,6に記載の径を有する素線以外にも任意の素線を用いて撚線導体31を構成することができる。
【0077】
また、本実施例では、内層2の内側に素線を配設していないが、内層2の内側に1本又は複数本の素線を配設してもよく、素線の本数、配置、構成等は任意に設定することができる。
【0078】
その他の構造は、上記実施例1,2,4と同様であるため説明を省略する。
【0079】
本実施例6においても、上記実施例1,2,4と同様の作用効果を発揮することができる。
【0080】
[実施例7]
上記実施例6においては、第1内層線11と、第1細径線12と、第1太径線13と、第2細径線23と、第3細径線33と、第3太径線35の本数を、夫々3本、第2太径線24と第3中径線34の本数を6本としたが、第1外層3を構成する第1細径線12と第1太径線13の夫々の本数と、第2外層4を構成する第2細径線23の本数を、第3外層5を構成する第3細径線33の本数と第3太径線35の本数を、内層2を構成する第1内層線11の本数と同じとするとともに、第2外層4を構成する第2太径線24の本数と、第3外層5を構成する第3中径線34の本数を、内層2を構成する第1内層線11の本数の2倍とし、かつ、第1内層線11の本数が3本以上5本以下であれば、夫々任意の本数に設定することができる。
【0081】
本実施例7においても、上記実施例6と同様に、第1太径線13は、内層2を構成し、かつ、周方向に隣接する第1内層線11,11との間に形成される谷間部15の外側に配置され、第1細径線12は、周方向に隣り合う第1太径線13と13との間に、1本配設されている。
【0082】
また、本実施例7においても、上記実施例6と同様に、第2細径線23の中心は、撚線導体21の中心と、第1太径線13を結ぶ線上に位置するように配置し、好ましくは、撚線導体21の中心と、第1太径線13の中心を結ぶ線上に位置するように配置されている。また、第2太径線24は、周方向に隣り合う第2細径線23と23との間に、周方向に2本配設されるとともに、第1外層3を構成し、かつ、周方向に隣接する第1細径線12と第1太径線13との間に形成される谷間部25の外側に配設されている。
【0083】
また、本実施例7においても、上記実施例6と同様に、第3太径線35は、第2外層4を構成し、かつ、周方向に隣接する第2太径線24と第2太径線24との間に形成される谷間部36の外側に配設されている。第3中径線34は、第3外層5を構成し、かつ、周方向に隣り合う第3太径線35と第3太径線35の間に、周方向に相互に離間するように2本配設されている。第3細径線33は、第3外層5を構成し、かつ、周方向に隣り合う第3中径線34と第3中径線34の間に、1本配設されている。
【0084】
例えば、
図8に示すように、第2外層4Aの外側に第3外層5Aを設け、内層2Aの第1内層線11を4本、第1外層3Aを構成する第1細径線12と第1太径線13と、第2外層4Aを構成する第2細径線23と、第3外層5Aを構成する第3細径線33と第3太径線35の本数を各4本、第2外層4Aを構成する第2太径線24と、第3外層5Aを構成する第3中径線34の本数を各8本とした撚線導体37の場合には、d2=1.02×d1、d3=1.56×d1、d4=1.29×d1、d5=1.69×d1、d6=1.66×d1、d7=1.69×d1、d8=1.99×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24,33,34,35の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体37の断面形状を略真円形状とするとともに、全ての素線11,12,13,23,24,33,34,35が隣接する全ての素線11,12,13,23,24,33,34,35と当接することができる。
【0085】
例えば、
図9に示すように、第2外層4Bの外側に第3外層5Bを設け、内層2Bの第1内層線11を5本、第1外層3Bを構成する第1細径線12と第1太径線13と、第2外層4Bを構成する第2細径線23と、第3外層5Bを構成する第3細径線33と第3太径線35の本数を各5本、第2外層4Bを構成する第2太径線24と、第3外層5Bを構成する第3中径線34の本数を各10本とした撚線導体38の場合には、d2=0.855×d1、d3=1.33×d1、d4=0.94×d1、d5=1.275×d1、d6=1.13×d1、d7=1.18×d1、d8=1.37×d1の関係が成立する各素線11,12,13,23,24,33,34,35の基となる線材を用いることで、非圧縮若しくは低い圧縮率で、撚線導体37の断面形状を略真円形状とするとともに、全ての素線11,12,13,23,24,33,34,35が隣接する全ての素線11,12,13,23,24,33,34,35と当接することができる。
【0086】
その他の構造は、上記実施例1~6と同様であるため説明を省略する。
【0087】
本実施例7においても、上記実施例1~6と同様の作用効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,17,18,21,27,28,31,37,38 撚線導体
2,2A,2B 内層
3,3A,3B 第1外層
4,4A,4B 第2外層
5,5A,5B 第3外層
11 第1内層線
12 第1細径線
13 第1太径線
23 第2細径線
24 第2太径線
33 第3細径線
34 第3中径線
35 第3太径線
【手続補正書】
【提出日】2021-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】