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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180848
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221130BHJP
   G03G 21/06 20060101ALI20221130BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/06
G03G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087570
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】山岸 一成
【テーマコード(参考)】
2H035
2H270
【Fターム(参考)】
2H035AA11
2H035AA15
2H035AA20
2H035AA24
2H035AB01
2H035AB04
2H035AC03
2H035AZ09
2H270KA04
2H270LA02
2H270LA18
2H270LA26
2H270LA28
2H270LA80
2H270LB01
2H270MA29
2H270MC13
2H270MC15
2H270MC26
2H270MC29
2H270MC39
2H270MC47
2H270MD12
2H270MH11
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】像保持手段の寿命への影響を抑制しつつ、像保持手段の表面の電荷に対する除電性能を安定させる。
【解決手段】表面保護層1aを有する感光体からなる像保持手段1上の残留電位を除電するに当たって、像保持手段1上での画像形成を停止するとき、露光手段3を用いて像保持手段1の残留電荷を除電する露光除電手段11と、像保持手段1上での画像形成を停止するとき、少なくとも転写手段5を用いて像保持手段1の残留電荷を除電する転写除電手段12と、像保持手段1の残留電位が露光除電手段11にて除電可能な許容除電レベルの閾値を超えない条件では露光除電手段11により除電を行い、閾値を超える条件では露光除電手段11から転写除電手段12により除電を行う切替手段13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護層を有する感光体からなる像保持手段と、
前記像保持手段の表面を直流電位にて帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段にて帯電した前記像保持手段の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像保持手段上に形成された前記静電潜像を現像する現像手段と、
前記像保持手段上に形成された可視像を転写媒体に静電転写する転写手段と、
前記像保持手段上での画像形成を停止するとき、前記露光手段を用いて前記像保持手段の残留電荷を除電する露光除電手段と、
前記像保持手段上での画像形成を停止するとき、少なくとも前記転写手段を用いて前記像保持手段の残留電荷を除電する転写除電手段と、
前記像保持手段の残留電荷が前記露光除電手段にて除電可能な許容除電レベルの閾値を超えない条件では前記露光除電手段により除電を行い、前記閾値を超える条件では前記露光除電手段から前記転写除電手段により除電を行う切替手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
現像手段は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を作像材料として静電潜像を現像することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記露光除電手段は、前記現像手段に印加される現像電圧を接地電位に低減させ、前記露光手段による除電を実施することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記露光除電手段は、前記現像手段に印加される現像電圧を接地電圧に近づけつつ、前記像保持手段の残留電位が段階的に接地電位に近づくように前記露光手段の光量を段階的に出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記転写除電手段は、前記像保持手段の表面電位が除電後目標電位になるように前記転写手段に除電用電圧を印加して前記像保持手段を除電することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記転写除電手段は、前記像保持手段の表面電位が除電後目標電位を超えるように、前記転写手段に除電用電圧を印加して前記像保持手段を除電した後、前記帯電手段にて前記除電後目標電位になるように前記像保持手段を帯電することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記切替手段は、前記像保持手段の使用条件が認識可能な使用条件認識手段を備え、前記使用条件認識手段による認識結果から前記露光除電手段又は前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記切替手段は、前記像保持手段の周辺の温度及び湿度を含む環境情報が検出可能な環境検出手段を前記使用条件認識手段として備え、前記環境検出手段の検出結果が予め決められた低温低湿環境に属するときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記切替手段は、前記像保持手段に形成される可視像の濃度が検出可能な濃度検出手段を前記使用条件認識手段として備え、前記濃度検出手段にて検出された濃度情報が予め決められた基準濃度よりも薄いときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記切替手段は、前記像保持手段に形成される可視像の平均画像密度が判別可能な画像判別部を前記使用条件認識手段として備え、前記画像判別部にて判別された平均画像密度が予め決められた連続画像形成数における基準画像密度より低いときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記切替手段は、前記像保持手段の回転数が計数可能な計数部を前記使用条件認識手段として備え、前記計数部にて前記像保持手段の回転数が予め決められた基準回転数以上に至ったときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における画像形成装置としては例えば特許文献1,2に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、現像スリーブへのトナー付着が発生しにくい第1モードと、かぶりによる無駄なトナーの消費を抑制できる第2モードとを、トナー帯電量に影響を与える情報に基づいて切り替え、像担持体の表面を除電することで像担持体の電位を強制的に立ち下げる。これにより、特に、直流帯電方式の場合であっても、現像スリーブへのトナー付着の抑制と、無駄なトナーの消費の抑制との両立を図る技術が開示されている。
特許文献2には、画像の形成を停止するときに、現像手段に印加される電位を接地電位に近づけつつ、静電潜像形成手段により像保持体の表面を露光することで像保持体の電位を順次接地電位に近づけ、静電潜像形成手段が像保持体の表面を露光するときの光量を像保持体の電位に基づき順次決定した像保持体の電位を接地電位に近づけるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-206597号公報(発明を実施するための形態,図5
【特許文献2】特開2013-228491号公報(発明を実施するための形態,図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、表面保護層を有する感光体からなる像保持手段を除電するに当たって、像保持手段の寿命への影響を抑制しつつ、像保持手段の表面の電荷に対する除電性能を安定させる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、表面保護層を有する感光体からなる像保持手段と、前記像保持手段の表面を直流電位にて帯電させる帯電手段と、前記帯電手段にて帯電した前記像保持手段の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像保持手段上に形成された前記静電潜像を現像する現像手段と、前記像保持手段上に形成された可視像を転写媒体に静電転写する転写手段と、前記像保持手段上での画像形成を停止するとき、前記露光手段を用いて前記像保持手段の残留電荷を除電する露光除電手段と、前記像保持手段上での画像形成を停止するとき、少なくとも前記転写手段を用いて前記像保持手段の残留電荷を除電する転写除電手段と、前記像保持手段の残留電荷が前記露光除電手段にて除電可能な許容除電レベルの閾値を超えない条件では前記露光除電手段により除電を行い、前記閾値を超える条件では前記露光除電手段から前記転写除電手段により除電を行う切替手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、現像手段は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を作像材料として静電潜像を現像することを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る画像形成装置において、前記露光除電手段は、前記現像手段に印加される現像電圧を接地電位に低減させ、前記露光手段による除電を実施することを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る画像形成装置において、前記露光除電手段は、前記現像手段に印加される現像電圧を接地電圧に近づけつつ、前記像保持手段の残留電位が段階的に接地電位に近づくように前記露光手段の光量を段階的に出力することを特徴とする画像形成装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記転写除電手段は、前記像保持手段の表面電位が除電後目標電位になるように前記転写手段に除電用電圧を印加して前記像保持手段を除電することを特徴とする画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る画像形成装置において、前記転写除電手段は、前記像保持手段の表面電位が除電後目標電位を超えるように、前記転写手段に除電用電圧を印加して前記像保持手段を除電した後、前記帯電手段にて前記除電後目標電位になるように前記像保持手段を帯電することを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る画像形成装置において、前記切替手段は、前記像保持手段の使用条件が認識可能な使用条件認識手段を備え、前記使用条件認識手段による認識結果から前記露光除電手段又は前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、前記切替手段は、前記像保持手段の周辺の温度及び湿度を含む環境情報が検出可能な環境検出手段を前記使用条件認識手段として備え、前記環境検出手段の検出結果が予め決められた低温低湿環境に属するときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置である。
請求項9に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、前記切替手段は、前記像保持手段に形成される可視像の濃度が検出可能な濃度検出手段を前記使用条件認識手段として備え、前記濃度検出手段にて検出された濃度情報が予め決められた基準濃度よりも薄いときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置である。
請求項10に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、前記切替手段は、前記像保持手段に形成される可視像の平均画像密度が判別可能な画像判別部を前記使用条件認識手段として備え、前記画像判別部にて判別された平均画像密度が予め決められた連続画像形成数における基準画像密度より低いときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、前記切替手段は、前記像保持手段の回転数が計数可能な計数部を前記使用条件認識手段として備え、前記計数部にて前記像保持手段の回転数が予め決められた基準回転数以上に至ったときに前記転写除電手段により除電を行うことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、表面保護層を有する感光体からなる像保持手段を除電するに当たって、像保持手段の残留電荷の値によらず除電方法を決定する場合と比較して、像保持手段の寿命への影響を抑制しつつ、像保持手段の表面の電荷に対する除電性能を安定させることができる。
請求項2に係る発明によれば、露光除電のみを実施する場合に比べて、像保持手段の残留電荷に起因する現像手段からのキャリア吐き出しを抑制することができる。
請求項3に係る発明によれば、現像手段による影響を抑えて、像保持手段に対して露光除電を実施することができる。
請求項4に係る発明によれば、露光手段の光量を段階的に出力しない場合に比べて、像保持手段に対する露光除電を効果的に実施することができる。
請求項5に係る発明によれば、転写手段のみを利用して、像保持手段に対する転写除電を実施することができる。
請求項6に係る発明によれば、転写手段のみを利用して転写除電を実施する場合に比べて、像保持手段に対する転写除電を効果的に実施することができる。
請求項7に係る発明によれば、像保持手段の使用条件を認識することで、像保持手段に対する除電方式を適切に切り替えることができる。
請求項8に係る発明によれば、像保持手段の使用条件として環境情報に着目し、像保持手段に対する除電方式を適切に切り替えることができる。
請求項9に係る発明によれば、像保持手段の使用条件として可視像の濃度情報に着目し、像保持手段に対する除電方式を適切に切り替えることができる。
請求項10に係る発明によれば、像保持手段の使用条件として可視像の平均画像密度情報に着目し、像保持手段に対する除電方式を適切に切り替えることができる。
請求項11に係る発明によれば、像保持手段の使用条件として使用履歴情報に着目し、像保持手段に対する除電方式を適切に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】実施の形態1で用いられる画像形成部の詳細及びその駆動制御系を示す説明図である。
図4】(a)は表面保護層を有する感光体と、表面保護層を有しない有機感光体とについて、露光除電についての特性を示す説明図、(b)は表面保護層を有する感光体の表面構造例を示す説明図である。
図5】本実施の形態に係る画像形成装置のサイクルダウン開始時のフローチャートを示す説明図である。
図6】本実施の形態に係る画像形成装置のサイクルダウン開始時の他のフローチャートを示す説明図である。
図7】露光除電処理を実施するためのフローチャートを示す説明図である。
図8】(a)は露光除電処理時における各デバイスの動作過程を示すタイミングチャート、(b)は作像処理時における現像動作を模式的に示す説明図である。
図9】(a)は転写除電処理を実施するためのデバイス群を示す説明図、(b)は転写除電処理の原理を模式的に示す説明図である。
図10】転写除電処理を実施するためのフローチャートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成装置は、表面保護層1aを有する感光体からなる像保持手段1と、像保持手段1の表面を直流電位にて帯電させる帯電手段2と、帯電手段2にて帯電した像保持手段1の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段3と、像保持手段1上に形成された静電潜像を現像する現像手段4と、像保持手段1上に形成された可視像を転写媒体6に静電転写する転写手段5と、像保持手段1上での画像形成を停止するとき、露光手段3を用いて像保持手段1の残留電荷を除電する露光除電手段11と、像保持手段1上での画像形成を停止するとき、少なくとも転写手段5を用いて像保持手段1の残留電荷を除電する転写除電手段12と、像保持手段1の残留電荷が露光除電手段11にて除電可能な許容除電レベルの閾値を超えない条件では露光除電手段11により除電を行い、閾値を超える条件では露光除電手段11から転写除電手段12により除電を行う切替手段13と、を備えたものである。
尚、図1中、符号7は像保持手段1上に残留する残留物を清掃する清掃手段、符号2aは帯電手段2の電源、符号5aは転写手段5の電源である。
【0011】
このような技術的手段において、像保持手段1は表面保護層1aを有する感光体を適用対象とし、表面保護層1aとしては感光体よりも高硬度の保護層であればよく、感光体と別体のものは勿論、感光体の表面を硬化処理したものであってもよい。
ここで、表面保護層1aを有する感光体は、表面保護層1aを有しない有機感光体に比べて、表面保護層1a内または電界輸送層との界面に電荷が蓄積され、露光除電のみでは感光体表面上の残留電荷を除去し難くなる傾向にある。
また、帯電手段2は直流電位にて帯電させるものを適用対象とする。交流帯電方式では帯電性能が高く、感光体表面に放電生成物の発生が活性化し易く、表面保護層1aを有する感光体は耐摩耗性が高く、放電生成物を除去し難い。よって、感光体の表面上に放電生成物がフィルミングし易い。これに対し、直流帯電方式では、感光体表面に与える帯電ストレスが小さく、放電生成物のフィルミングを抑制することが可能である。
更に、露光除電手段11については、例えば特許文献1に示すように、露光レベルを段階的に変化させる段階露光除電が有効なものであるが、露光レベルを段階的に変化させない一律露光除電をも含むものである。
更にまた、転写除電手段12については、転写手段5のみによる除電方式でもよいし、転写手段5と帯電手段2とを組み合わせた態様をも含むものである。
【0012】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の代表的な態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、現像手段4の好ましい態様としては、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を作像材料Gとして静電潜像を現像する態様が挙げられる。これは、例えば像保持手段1が表面保護層1aを有する感光体を備えた態様では、誘電率が高くなり、露光除電手段11による露光除電だけでは感光体上の電荷が残り易くなるが、トナーのかぶり過多以外にキャリアの吐き出しが顕著になり、画質不良が起こり易いことから、本願による除電方式を切り替える方式がより有効に働く点で好ましい。
【0013】
また、露光除電手段11の代表的態様としては、現像手段4に印加される現像電圧を接地電位に低減させ、露光手段3による除電を実施する態様が挙げられる。
この場合、露光除電手段11は、現像手段4に印加される現像電圧を接地電位に近づけつつ、像保持手段1の残留電位が段階的に接地電位に近づくように露光手段3の光量を段階的に出力する態様が除電効率を高める上で好ましい。
更に、転写除電手段12の代表的態様としては、像保持手段1の表面電位が除電後目標電位になるように転写手段5に電源5aから除電用電圧を印加して像保持手段1を除電する態様が挙げられる。
特に、除電効率を高める観点からすれば、転写除電手段12としては、像保持手段1の表面電位が除電後目標電位を超えるように、転写手段5に電源5aから除電用電圧を印加して像保持手段1を除電した後、帯電手段2の電源2aにて除電後目標電位になるように像保持手段1を帯電することが好ましい。
【0014】
また、切替手段13の代表的態様としては、像保持手段1の使用条件が認識可能な使用条件認識手段14を備え、使用条件認識手段14による認識結果から露光除電手段11又は転写除電手段12により除電を行う態様が挙げられる。
ここで、像保持手段1の使用条件とは、環境条件、作像条件(濃度、画像密度)、使用履歴条件(回転数)などを含む。
以下、使用条件認識手段14としての具体的態様を挙げると以下の通りである。
(1)使用条件認識手段14が環境検出手段である態様
本例は、切替手段13が、像保持手段1の周辺の温度及び湿度を含む環境情報が検出可能な環境検出手段を使用条件認識手段14として備え、環境検出手段の検出結果が予め決められた低温低湿環境に属するときに転写除電手段12により除電を行うものである。
(2)使用条件認識手段14が濃度検出手段である態様
本例は、切替手段13が、像保持手段1に形成される可視像の濃度が検出可能な濃度検出手段を使用条件認識手段14として備え、濃度検出手段にて検出された濃度情報が予め決められた基準濃度よりも薄いときに転写除電手段12により除電を行うものである。
(3)使用条件認識手段14が画像判別部である態様
本例は、切替手段13が、像保持手段1に形成される可視像の平均画像密度が判別可能な画像判別部を使用条件認識手段14として備え、画像判別部にて判別された平均画像密度が予め決められた連続画像形成数における基準画像密度より低いときに転写除電手段12により除電を行うものである。
(4)使用条件認識手段14が計数部である態様
本例は、切替手段13が、像保持手段1の回転数が計数可能な計数部を使用条件認識手段14として備え、計数部にて像保持手段1の回転数が予め決められた基準回転数以上に至ったときに転写除電手段12により除電を行うものである。
【0015】
◎実施の形態1
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
-画像形成装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、画像形成装置20は、装置筐体21内に複数の色(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの四色)の画像を形成する作像エンジン30を搭載し、この作像エンジン30の下方には用紙等の記録材が収容される記録材供給装置50を配設すると共に、この記録材供給装置50からの記録材搬送路55を略鉛直方向に配置したものである。
本例において、作像エンジン30は、複数の色の画像を形成する画像形成部31(具体的には31a~31d)を略水平方向に配列し、その上方には画像形成部31の配列方向に沿って循環移動する例えばベルト状の中間転写体45が含まれる転写モジュール40を配設し、各画像形成部31で形成した各色の画像を転写モジュール40を介して記録材に転写するものである。
【0016】
本実施の形態において、各画像形成部31(31a~31d)は、図2及び図3に示すように、中間転写体45の循環方向上流側から順に、例えばイエロ用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、感光体32と、この感光体32を予め帯電する帯電器(本例では帯電ロール)33と、この帯電器33にて帯電された各感光体32に静電潜像を書き込む露光器(本例ではLED書込ヘッド)34と、感光体32上に形成された静電潜像を対応する色成分トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像する現像器35と、感光体32上の残留物を清掃する清掃器36と、を備えている。
本例では、現像器35は、図3に示すように、トナー及びキャリアを含む現像剤が収容され且つ感光体32に対向して開口する現像容器35aを有し、この現像容器35aの開口には現像ロール35bを配設し、当該現像ロール35bに現像剤を保持して感光体32との対向部に現像剤を供給すると共に、現像容器35a内には現像剤を帯電して撹拌搬送するための撹拌搬送部材35c,35dを配設したものである。
また、本例において、清掃器36は、感光体32上の残留物が収容され且つ感光体32に対向し開口する清掃容器36aを有し、この清掃容器36aの開口縁には感光体32上の残留物を掻き取るための板状の清掃部材36bを取付けると共に、清掃容器36a内には収容された残留物を均すように搬送する搬送部材36cを配設したものである。
尚、符号37(具体的には37a~37d)は各現像器35に各色成分トナーを補給するためのトナーカートリッジである。
【0017】
また、本実施の形態において、転写モジュール40は、複数の張架ロール41~44にベルト状の中間転写体45を架け渡したものであり、例えば張架ロール41を駆動ロールとして中間転写体45を循環移動するようにしたものである。そして、各画像形成部31の感光体32に対向した中間転写体45の裏面には一次転写用の転写器(本例では転写ロール)46が配設され、この転写器46にトナーの帯電極性と逆極性の転写電圧を印加することで、感光体32上のトナー像を中間転写体45側に静電転写するようになっている。
更に、中間転写体45の最上流画像形成部31aの上流側にはベルト清掃器47が配設されており、中間転写体45上の残留トナーを除去するようになっている。
【0018】
また、本実施の形態では、中間転写体45の最下流画像形成部31dの下流側の張架ロール42に対向した部位には二次転写器60が配設されており、中間転写体45上の一次転写像を記録材に二次転写(一括転写)するようになっている。
本例では、二次転写器60は、中間転写体45のトナー像保持面側に圧接して配置される二次転写ロール61と、中間転写体45の裏面側に配置されて二次転写ロール61の対向電極をなすバックアップロール(本例では張架ロール42を兼用)とを備えている。そして、例えば二次転写ロール61が接地されており、また、バックアップロール(張架ロール42)にはトナーの帯電極性と同極性の二次転写電圧が印加されている。
【0019】
また、記録材供給装置50には記録材を供給する供給ロール51が設けられ、記録材搬送路55には図示外の搬送ロールが配設されると共に、二次転写部位の直前に位置する記録材搬送路55には記録材を所定のタイミングで二次転写部位へ供給する位置合せロール(レジストレーションロール)56が配設されている。
更に、二次転写部位の下流側に位置する記録材搬送路55には定着器70が設けられ、この定着器70は、例えば図示外の加熱ヒータが内蔵された加熱定着ロール71と、これに圧接して配置されて追従回転する加圧定着ロール72とを備えている。また、定着器70の下流側には装置筐体21内の記録材を排出する排出ロール57が設けられ、記録材を挟持搬送して排出し、装置筐体21の上部に形成された記録材収容受け58に記録材を収容するようになっている。
尚、本例では、図示を省略しているが、記録材の手差し供給装置や、記録材の両面記録を可能とする両面記録モジュールを別途付設してもよいことは勿論である。
【0020】
-画像形成部の制御系-
本実施の形態において、画像形成部31(31a~31d)の制御系は、プロセッサ及びメモリを含む制御装置100を備え、この制御装置100には、各種情報を収集する入力先として、画像形成装置20の作像処理を開始するスタートボタン101、画像形成部31の周辺の環境条件、例えば温度及び湿度条件を検出する環境センサ102、中間転写体45に形成される評価画像の濃度を検出する濃度センサ103、更には、感光体32の回転数(サイクル数)を計数する計数センサ104等が接続され、また、制御信号を送出する出力先として、感光体32の駆動モータ110、帯電器33に帯電電圧VCを印加する帯電電源111、露光器34の露光量を調整する光量調整器112、現像器35の現像ロール35bを駆動する駆動モータ113及び現像ロール35bに現像電圧VDを印加する現像電源114、転写器46に転写電圧VTを印加する転写電源115等が接続されている。尚、ここでいう「プロセッサ」とは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
本例において、制御装置100は、各種入力先からの入力信号を受け、メモリ内に予めインストールしている各種制御プログラム(後述するサイクルダウン開始プログラムを含む)をプロセッサで実行し、各出力先に所定の制御信号を送出する。
【0021】
-表面保護層を有する感光体の特性-
本実施の形態において、感光体32は、図4(b)に示すように、金属製(本例ではアルミニウム製)の基材32a上に有機感光層32bを積層すると共に、有機感光層32bの上には耐摩耗性に優れた表面保護層32cを積層したものである。
ここで、有機感光層32bは、基材32a上に下引き層321、電荷発生層322及び電荷輸送層323を順次積層したものであり、下引き層321は帯電で発生するカウンタ電荷(+)の注入を阻止し、電荷発生層322は光電変換で電荷(+-)を発生し、更に、電荷輸送層323は電荷発生層322で発生した電荷(+)を表面保護層32cまで搬送するものである。また、表面保護層32cは有機感光層32bの摩耗を防止するように高硬度材料で形成されていればよい。
このような表面保護層32cを有する感光体(所謂オーバコート感光体に相当)32にあっては、表面保護層32cのない有機感光体に比べて、表面保護層32c内若しくは電荷輸送層323との界面に電荷が蓄積されることで、露光器34による露光を利用した露光除電方式(詳細は後述)では、感光体32上の残留電荷が除去し得ないことが起こり得る。
【0022】
この点について、図4(a)に示すように、表面保護層32cを有する感光体(図4(a)ではオーバコート感光体と表記)と表面保護層を有しない感光体(図4(a)では有機感光体と表記)とについて、露光除電の露光量を変化させ、残留電位をプロットするという実験を行ったところ、有機感光体については露光量を増加させることで、除電後の感光体32上の残留電位を予め定められた許容除電レベルVHsよりも更に低減させることが可能であるのに対し、オーバコート感光体にあっては、予め決められた高温高湿環境下であれば、露光除電方式の露光量を増加させることで感光体32上の電流電位を許容除電レベルVHsよりも低減することは可能であるものの、予め決められた低温低湿環境下においては、露光除電方式で露光量を増加させたとしても、感光体32上の残留電位を許容除電レベルよりも少なく低減することが困難であった。
本実施の形態では、負極性の感光体32を使用することから、-方向に帯電し、+方向に除電することになる。この場合において、ここでいう「低減」とは、帯電された極性から0Vへ近づく方向へ電位が変化することを指す。
図4(a)においては、環境条件によって露光除電方式が有効に機能しない場合があることが理解される。
尚、オーバコート感光体にあっては、環境条件の場合に限らず、例えば低密度画像の連続走行によりトナーの帯電量が上昇した場合や、経時変化により感光体32の電荷発生量が変わった場合にあっても、感光体32上の残留電位を充分に低減できない状況が起こり得る。
このため、本実施の形態では、画像形成処理終了後に、感光体32の残留電荷を除去するサイクルダウン開始処理を実施するに当たり、露光除電方式で感光体32上の残留電荷を除去可能な状況に対しては露光除電方式を実施し、露光除電方式では感光体32上の残留電荷を除去できない状況に対しては露光除電方式とは異なる転写器46を利用した転写除電方式(詳細は後述)を実施するものである。
ここでいう「サイクルダウン」は、通常の作像サイクルにあった画像形成装置の稼働を停止させるサイクルをいう。
【0023】
-サイクルダウン開始処理-
本例において、制御装置100は、例えば図5又は図6に示すサイクルダウン開始処理を実施する。
<サイクルダウン開始処理I>
図5に示すサイクルダウン処理は、環境条件、平均画像密度条件、感光体サイクル数条件を判別し、感光体32の残留電位を除電する方式として、露光除電方式(本例では「階段露光除電」)又は転写除電方式を切り替えるようにしたものである。
先ず、環境条件の判別処理としては、環境センサ102の検出情報から環境条件が低温低湿条件か否かを判断し、低温低湿環境である場合には「転写除電方式」を実施する。
ここで、低温低湿環境については、本例では、予め決められた温度Tm(例えば15℃)以下で、かつ、予め決められた湿度Hm(例えば30%)以下であることを条件とした。
また、平均画像密度条件の判別処理としては、制御装置100内の画像判別部(画像形成すべき画像データから平均画像密度を演算処理する機能部)において、予め決められたk枚(例えば100枚)走行の平均画像密度が閾値Gm(例えば1%)以下か否かを判断し、Gm以下である場合には「転写除電方式」を実施する。
本例の場合、低密度画像の連続走行によりトナーの帯電量が上昇することから、トナーの帯電量が上昇しない場合に比べて、必要画像電位(現像電圧VDと画像部電位VLとの差分;図8(b)参照)を大きくすることが必要になるが、残留電位が高いと、必要画像電位及び非画像部電位VHが高くなるため、露光除電だけでは除電できなくなることを踏まえたものである。
更に、感光体サイクル数の判別処理としては、感光体32のサイクル数を計数する計数センサ104の情報に基づいて、感光体サイクル数が予め決められた閾値Xm以上か否かを判断し、Xm以上である場合には、経時で露光の繰り返しストレスにより感光体の電荷発生量が変わり、感光体の残留電位が上昇するに至ったものと推測し、「転写除電方式」を実施する。
【0024】
<サイクルダウン開始処理II>
図6に示すサイクルダウン処理は、環境条件及び画像濃度条件を判別し、感光体32の残留電位を除電する方式として、露光除電方式(本例では「階段露光除電」)又は転写除電方式を切り替えるようにしたものである。
本例において、環境条件の判別処理としては、図5に示すサイクルダウン開始処理Iと同様である。
また、画像濃度条件の判別処理としては、図3に示す濃度センサ103で検出した濃度評価用の画像の濃度情報に基づいて基準濃度より薄いか否かを判断し、薄いと判断したときに「転写除電方式」を実施する。
本例の場合、画像濃度が予め決められた基準濃度に至らないと、必要画像電位(現像電圧VDと画像部電位VLとの差分;図8(b)参照)を大きくすることが必要になるが、残留電位が高いと、必要画像電位及び非画像部電位VHが高くなるため、露光除電だけでは除電できなくなることを踏まえたものである。
【0025】
-露光除電方式-
図7は本実施の形態で実施される露光除電処理のフローチャート、図8は露光除電処理時の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図3図7及び図8(a)において、露光除電処理が開始されると、先ず、制御装置100は、現像器35の現像電圧VD(AC)、転写器46の転写電圧VT及び帯電器33の帯電電圧VCをOFFにする。
しかる後、制御装置100は、図示外の電位センサから感光体32の電位を取得し、また、環境センサ102から温度、湿度情報を取得する。
この後、制御装置100は、現像電源114の電位を上げ、現像電圧VD(DC)を立ち下げる。尚、現像ロール35bは、負電位で帯電するため実際には電位は0に向かい上昇するが、図8では、負電位側を図中上方としているため、現像電圧VD(DC)は、図中下方に線形に下がるように図示されている。このとき立ち下げを開始する時間を図8では、Eとして示している。そしてこのEは、露光器34による感光体32の除電が開始された箇所が、現像ロール35bの位置に達した時間である。つまり感光体32は、駆動モータ110により回転しているので、この箇所がE-Dの時間で、現像ロール35bの位置に移動する。そしてこの箇所を起点として現像ロール35bに印加される電位の立ち下げが開始される。
【0026】
また、本実施の形態では、このときに感光体32の表面の電位と現像ロール35bに印加される電位(現像電圧VD(DC))との差(Vcln)を予め定められた範囲内とする。
ここで、図8(b)に示すように、画像形成時における感光体32の表面電位分布を模式的に示すと、非画像部電位がVH(例えば-600V)、画像部電位がVL(例えば-50V)、現像電圧VD(DC)をVDEVE、VHとVDEVEとの差分をVcln、VDEVEとVLとの差分をVcontとすると、Vcontが小さいと濃度不足になり、Vclnは非画像部電位VHへのトナーかぶりやキャリア吐き出しを制御するものである。
これにより感光体32の表面の電位と現像ロール35bの電位との差が予め定められた範囲内となる。Vclnの範囲は、環境条件により変化するが、例えば100±30Vである。そしてVclnがこの範囲を外れると、トナーやキャリアの吐き出しが生じ易くなる。即ちVclnが小さすぎるとトナーが感光体32側に移動し易くなる。またVclnが大きすぎるとキャリアが感光体32側に移動し易くなる。本実施の形態では、Vclnを予め定められた範囲内とすることでトナーやキャリアの吐き出しを抑制する。
【0027】
また、本例では、図7及び図8(a)に示すように、露光器(本例ではLED書込みヘッド)34の光量を段階的に増加させる。これにより感光体32の表面の電位と現像電圧VD(DC)とは共に立ち下がる。そして感光体32の表面の電位と現像電圧VD(DC)との差(Vcln)を予め定められた範囲内とすることができる。図8(a)では、露光器34の光量を段階的に増加させ、これにより感光体32の表面の電位を段階的に立ち下げて接地電位に近づける様子を階段状に図示している。
そして、図7に示すように、現像電圧VD(DC)がほぼ0になった場合、制御装置100は露光器34による感光体32の露光を停止すると共に、駆動モータ110,113に対する制御信号をONからOFFにする。これにより露光器34がOFFとなると共に、駆動モータ110,113が停止して、感光体32及び現像ロール35bが共に停止する。図8ではこの時間をFとして図示している。このFの時点で、画像の形成を停止する際の停止動作が終了する。
【0028】
-転写除電方式-
図9(a)は転写除電処理を実施するデバイス群を模式的に示すもので、帯電器33による帯電位置をPC、現像器35による現像位置をPD、転写器46による転写位置をPTで示す。
また、図9(b)は転写除電処理の原理を模式的に示す説明図である。
図9(b)においては、除電による感光体32の帯電電位の変化が示されている。ここでは、転写器46にトナー像の転写の際に転写電圧VTを印加することにより流れる転写電流よりも大きな電流である除電電流が流れるように除電電圧を印加する。図3に示す転写電源115は、除電前の電位にある感光体32を狙いの電位を超えた過除電帯電電位にまで引き下げるレベルの除電電流を流すことが可能な電流容量の大きな電源であるとする。そして、その除電電流を流すことにより、感光体32を狙いの電位を超えた過除電帯電電位にまで引き下げる。過除電帯電電位にまで引き下げた後、今度は帯電器33に、その過除電帯電電位となった面を除電時の狙いの電位に戻すための除電時帯電電圧を印加し、これにより、その過除電帯電電位となった面を、除電時の狙いの除電時帯電電位に戻す。
【0029】
転写器46の作用により感光体32の帯電電位が過除電帯電電位に遷移した段階では、感光体32の軸方向に電位分布を持つが、その後の帯電器33による帯電により、ほぼ均一な狙いの電位となる。
図9(b)は、感光体32が一周する間に、感光体32の電位を一気に最終の狙いの除電時帯電電位にまで遷移させることを想定したシーケンスである。転写器46による感光体32の帯電能力(除電能力)が十分に高い場合には、図9(b)に示した一気に遷移させるシーケンスを採用してもよい。但し、転写器46による帯電能力(除電能力)に制限がある場合、すなわち、図3に示す転写電源115には、転写器46に、作像時の帯電電位からその帯電電位とは大きく異なる過除電帯電電位へと一気に遷移させるだけの電流を流す余裕がない場合には、感光体32を複数回回転させ1回転毎に徐々に除電するシーケンスを採用してもよい。
【0030】
図10は感光体32を複数回回転させながら、転写除電処理を段階的に実施するフローチャートである。尚、図10において、nは感光体32の回転回数を示し、例えばn=2と仮定する。また、転写除電処理において、帯電器33及び現像器35には、マイナスの電圧[-V]が印加され、転写器46には、感光体32のマイナス帯電を打ち消す向きの電流が流れるようにプラスの電圧[+V]が印加される。
図10において、サイクルダウンが開始されると、先ず、現像器35の回転を停止させ、しかる後、感光体32の1周目の回転動作が行われる。
このとき、制御装置100は、転写器46出力を除電1周目用VT(1)に変更する。ここでの転写器46出力は20Aである。
次いで、転写器46出力が除電1周目用VT(1)に変更されたタイミングで転写器46に対面していた感光体32の転写位置PTが帯電器33に達すると、図9(a)に示すように、感光体32が所定角度回転すると、帯電器33出力が除電1周目用VC(1)に変更される。本例では、ここでの帯電器33出力は-900Vである。
更に、帯電器33出力が除電1周目用VC(1)に変更されたタイミングにおいて帯電器33に対面していた感光体32の帯電位置PCが現像器35に達すると、図9(a)に示すように、現像器35出力が除電1周目用VD(1)に変更される。本例では、ここでの現像器35出力は-170Vである。
【0031】
次に、現像器35出力が除電1周目用VD(1)に変更されたタイミングで現像器35に対面していた感光体32の現像位置PDが転写器46に達すると、すなわち、感光体32がサイクルダウン開始から1周すると、転写器46出力が除電2周目用VT(2)に変更される。但し、本例では、除電2周目の転写器46出力として除電1周目用VT(1)と同じ電流値が採用されている。
そして、転写器46出力が除電2周目用VT(2)に変更されたタイミングで転写器46に対面していた感光体32の転写位置PTが帯電器33に達すると、今度は、帯電器33出力が除電2周目用VC(2)に変更される。本例では、ここでの帯電器33出力は-600Vである。この-600Vの帯電器33出力によって、感光体32は帯電電圧0Vに帯電される。
【0032】
次に、帯電器33出力が除電2周目用VC(2)に変更されたタイミングで帯電器33に対面していた感光体32の帯電位置PCが現像器35に達すると、今度は、現像器35出力が除電2周目用VD(2)に変更される。本例では、ここでの現像器35出力は、0Vである。
次に、現像器35出力が除電2周目用VD(2)に変更されたタイミングで現像器35に対面していた感光体32の現像位置PDが転写器46に達すると、すなわち、感光体32がサイクルダウン開始から2周すると、転写除電処理が終了したものとされ、転写器46出力がオフ(0μA)に変更される。
【0033】
次いで、転写器46出力がオフに変更されたタイミングで転写器46に対面していた感光体32の転写位置PTが帯電器33に達すると、今度は、帯電器33出力がオフに変更される。
更に、帯電器33出力がオフに変更されたタイミングで帯電器33に対面していた感光体32の帯電位置PCが現像器35に達すると、今度は、現像器35出力がオフに変更される。ここで、本例では、現像器35出力は除電2周目において既に0Vであるが、除電2周目における現像器35出力を微調整することがあることを考慮し、ここでは、現像器35出力をオフに変更するステップを置いている。
【0034】
このようにして、転写器46出力、帯電器33出力、および現像器35出力をオフに変更した後、感光体32の回転が停止される。
尚、上述したサイクルダウンのシーケンスでは、サイクルダウンが開始された後、即時に、現像器35の回転を停止させている。現像器35の回転を停止させるのは、現像器35を回転させたままサイクルダウンのシーケンスを実行するよりもトナーかぶりやキャリア転移を抑えることができるからである。但し、トナーかぶりやキャリア転移を抑える目的からすると、現像器35の回転を停止させるのは、サイクルダウンが開始された直後である必要はなく、感光体32の現像器35に対面している現像位置PDが、作像時の帯電電位にある間であればよい。
【0035】
上記のようなシーケンスのサイクルダウンを採用すると、トナーかぶりやキャリア転移を抑えつつ、感光体32を狙った電位にまで除電することができる。また、ここに示した複数段階(本例では2段階)の除電を採用すると、感光体32を狙った電位にまで1段階で一気に除電する場合と比べ、転写器46に流れる電流が抑えられ、電流容量の小さい転写電源115を採用することができる。
但し、転写電源115の電流容量に余裕があるときは、感光体32を狙った電位にまで1段階で一気に除電してもよい。その場合は、例えば図10に示す除電1周目を省き、作像時から除電2周目の電圧等に一気に変更するようにすればよい。
あるいは、転写電源115の電流容量が更に小さいときは、3段階以上に分散して徐々に除電してもよい。
尚、ここでは、中間転写体45を採用した画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明は、例えば、中間転写体45を採用せずに画像形成部が1つだけのモノクロの画像形成装置にも適用することもできる。
【0036】
◎比較の形態1
本実施の形態では、露光除電方式と、転写除電方式とをいずれも実施可能な構成を備え、いずれかに切り替えて実施するものであるが、常に同時に実施するという比較の態様を想定した場合には、常に転写除電を伴うので、表面保護層を有する感光体32であっても、寿命を効果的に長くできない。
【符号の説明】
【0037】
1…像保持手段,1a…表面保護層,2…帯電手段,2a…電源,3…露光手段,4…現像手段,5…転写手段,5a…電源,6…転写媒体,7…清掃手段,11…露光除電手段,12…転写除電手段,13…切替手段,14…使用条件認識手段,G…作像材料
図1
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