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特開2022-180849清掃部品及びこれを用いた清掃装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180849
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】清掃部品及びこれを用いた清掃装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221130BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G5/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087571
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】小島 紀章
【テーマコード(参考)】
2H068
2H134
【Fターム(参考)】
2H068AA08
2H068FA03
2H068FC15
2H134GA01
2H134GA06
2H134GB01
2H134HD01
2H134HD02
2H134HD04
2H134HD05
2H134HD11
2H134HD19
2H134KD06
2H134KD07
2H134KD08
2H134KH01
2H134KH11
(57)【要約】
【課題】100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図る。
【解決手段】清掃部品2は、高硬度表面層1aを有する像保持手段1を清掃するものであって、像保持手段1の表面に接触する板状の清掃部材3を有し、清掃部材3のうち像保持手段1の表面に接触する部位の物性として、100%モジュラスが7Mpa以上で、かつ、反発弾性が30%以下であるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品であって、
前記像保持手段の表面に接触する板状の清掃部材を有し、
前記清掃部材のうち前記像保持手段の表面に接触する部位の物性として、100%モジュラスが7Mpa以上で、かつ、反発弾性が30%以下であることを特徴とする清掃部品。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部分を含む接触部材と、前記像保持手段の表面に接触しない部分を含む非接触部材とを有し、前記非接触部材の100%モジュラスを接触部材よりも小さくすることを特徴とする清掃部品。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記接触部材と前記非接触部材とを100%モジュラスの異なる同一材料で構成されていることを特徴とする清掃部品。
【請求項4】
請求項2に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記接触部材と前記非接触部材とを100%モジュラスの異なる別材料で構成されていることを特徴とする清掃部品。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に対し2乃至4(gf/mm)の接触圧で接触することを特徴とする清掃部品。
【請求項6】
請求項1に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのいずれかのゴム材料を用い、予め決められた摩擦係数0.1~1.5に調節されていることを特徴とする清掃部品。
【請求項7】
請求項6に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記ゴム材料の硬度を調整することで摩擦係数を調節することを特徴とする清掃部品。
【請求項8】
請求項6に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記ゴム材料の表面を改質することで摩擦係数を調節することを特徴とする清掃部品。
【請求項9】
請求項1に記載の清掃部品において、
前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴムを用いて構成され、前記100%モジュラス及び前記反発弾性の物性を満たすように、前記ポリウレタンゴムの組成成分であるポリオール成分及びポリイソシアネート成分の種類、モル比並びに硬化成熟条件を選定して得られるものであることを特徴とする清掃部品。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の清掃部品を備えた清掃装置。
【請求項11】
請求項10に記載の清掃装置と、高硬度表面層を有する像保持手段とを備え、画像形成装置筐体に対して着脱可能に装着されるプロセスカートリッジ。
【請求項12】
高硬度表面層を有する像保持手段と、
前記像保持手段に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持手段に形成された前記静電潜像を作像粒子にて可視像化する現像手段と、
前記像保持手段に形成された可視像を転写媒体に転写する転写手段と、
前記像保持手段の作像残粒子を清掃する請求項10に記載の清掃装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成装置において、
前記像保持手段は、10kpv走行後の摩擦係数が0.3乃至0.7であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項12に記載の画像形成装置において、
前記像保持手段の高硬度表面層は、潤滑剤粒子の添加量を調整することで、その摩擦係数を調節することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃部品及びこれを用いた清掃装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における清掃部品としては例えば特許文献1~3に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、有機感光体からなる像担持体表面を清掃するクリーニング装置のクリーニングブレードにつき、好ましい物性(弾性体の硬度、ヤング率、100%モジュラス、反発弾性等)を特定した態様が開示されている。
特許文献2には、像担持体の表面に特定の無機微粉体を供給する構成に対し、クリーニングブレードの好ましい物性(硬度、100%モジュラス、反発弾性等)を特定した態様が開示されている。
特許文献3には、感光体に対し、クリーニングブレードの反発弾性率を特定し、先端部に低摩擦化処理を施した態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-234639号公報(課題を解決するための手段,図2
【特許文献2】特許第4498200号公報(発明を実施するための最良の形態,図5
【特許文献3】特開2010-210879号公報(発明を実施するための形態,図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品について、100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品であって、前記像保持手段の表面に接触する板状の清掃部材を有し、前記清掃部材のうち前記像保持手段の表面に接触する部位の物性として、100%モジュラスが7Mpa以上で、かつ、反発弾性が30%以下であることを特徴とする清掃部品である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部分を含む接触部材と、前記像保持手段の表面に接触しない部分を含む非接触部材とを有し、前記非接触部材の100%モジュラスを接触部材よりも小さくすることを特徴とする清掃部品である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記接触部材と前記非接触部材とを100%モジュラスの異なる同一材料で構成されていることを特徴とする清掃部品である。
請求項4に係る発明は、請求項2に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記接触部材と前記非接触部材とを100%モジュラスの異なる別材料で構成されていることを特徴とする清掃部品である。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に対し2乃至4(gf/mm→9.80665g・m/s)の接触圧で接触することを特徴とする清掃部品である。
請求項6に係る発明は、請求項1に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのいずれかのゴム材料を用い、予め決められた摩擦係数0.1~1.5に調節されていることを特徴とする清掃部品である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記ゴム材料の硬度を調整することで摩擦係数を調節することを特徴とする清掃部品である。
請求項8に係る発明は、請求項6に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記ゴム材料の表面を改質することで摩擦係数を調節することを特徴とする清掃部品である。
請求項9に係る発明は、請求項1に係る清掃部品において、前記清掃部材は、前記像保持手段の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴムを用いて構成され、前記100%モジュラス及び前記反発弾性の物性を満たすように、前記ポリウレタンゴムの組成成分であるポリオール成分及びポリイソシアネート成分の種類、モル比並びに硬化成熟条件を選定して得られるものであることを特徴とする清掃部品である。
【0007】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに係る清掃部品を備えた清掃装置である。
請求項11に係る発明は、請求項10に係る清掃装置と、高硬度表面層を有する像保持手段とを備え、画像形成装置筐体に対して着脱可能に装着されるプロセスカートリッジである。
【0008】
請求項12に係る発明は、高硬度表面層を有する像保持手段と、前記像保持手段に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持手段に形成された前記静電潜像を作像粒子にて可視像化する現像手段と、前記像保持手段に形成された可視像を転写媒体に転写する転写手段と、前記像保持手段の作像残粒子を清掃する請求項10に係る清掃装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項13に係る発明は、請求項12に係る画像形成装置において、前記像保持手段は、10kpv走行後の摩擦係数が0.3乃至0.7であることを特徴とする画像形成装置である。
請求項14に係る発明は、請求項12に係る画像形成装置において、前記像保持手段の高硬度表面層は、潤滑剤粒子の添加量を調整することで、その摩擦係数を調節することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品について、100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、清掃部材を単相構成とする場合に比べて、清掃部材に対して必要な物性を容易に構築することができる。
請求項3に係る発明によれば、同一材料を用いて接触部材と非接触部材とに機能分離した清掃部材を提供することができる。
請求項4に係る発明によれば、非接触部材として接触部材を支持する機能を有する任意の材料を選択することが可能な清掃部材を提供することができる。
請求項5に係る発明によれば、像保持手段の表面に対する清掃部材の接触圧を従前レベルより低減しても、清掃部材による清掃性能を良好に保つことができる。
請求項6に係る発明によれば、像保持手段の表面に接触する清掃部材の接触部について、所定のゴム材料を用いることで摩擦係数を小さく調節することができる。
請求項7に係る発明によれば、像保持手段の表面に接触する清掃部材の接触部について、ゴム材料の硬度を調整することで摩擦係数を小さく調節することができる。
請求項8に係る発明によれば、像保持手段の表面に接触する清掃部材の接触部について、ゴム材料の表面を改質することで摩擦係数を調節することができる。
請求項9に係る発明によれば、像保持手段の表面に接触する清掃部材の接触部について、ポリウレタンゴムを用いることで高モジュラス、低反発弾性の物性を容易に得ることができる。
請求項10に係る発明によれば、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品について、100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図ることが可能な清掃装置を構築することができる。
請求項11に係る発明によれば、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品について、100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図ることが可能な清掃装置を含むプロセスカートリッジを構築することができる。
請求項12に係る発明によれば、高硬度表面層を有する像保持手段を清掃する清掃部品について、100%モジュラスが7Mpaよりも小さい又は反発弾性が30%よりも大きい場合に比べて、像保持手段に対する接触圧を低減した状態で、像保持手段との接触部における振動及び作像残粒子のすり抜けを抑制し、寿命の長期化を図ることが可能な清掃装置を含む画像形成装置を構築することができる。
請求項13に係る発明によれば、像保持手段の表面の摩擦係数を0.1乃至0.2にしなくても、像保持手段の表面に対する清掃性を良好に保つことができる。
請求項14に係る発明によれば、清掃部材との接触抵抗を抑制する上で、像保持手段の表面の摩擦係数を容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明が適用された清掃部品を含む清掃装置、画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す清掃部品の要部を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】(a)は実施の形態1で用いられる清掃装置及びプロセスカートリッジを示す説明図、(b)は(a)に示す清掃部品及び高硬度表面層を有する感光体を示す説明図である。
図4】(a)~(c)は実施の形態1に係る清掃部品の構成例を示す説明図である。
図5】実施例及び比較例1~3に係る清掃部品の適用条件、物性並びに品質特性を示す説明図である。
図6】(a)は図4におけるブレード振動と、モジュラス、反発係数との関係を示す説明図、(b)はブレード振動を模式的に示す説明図である。
図7】実施例及び比較例1~3に係る清掃部品の使用条件と、フィルミングとの関係を示す説明図である。
図8】清掃部品の100%モジュラス、反発弾性とフィルミングとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された清掃部品を含む清掃装置が組み込まれた画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、画像形成装置は、高硬度表面層1aを有する像保持手段1と、像保持手段1に静電潜像を形成する潜像形成手段10と、像保持手段1に形成された静電潜像を作像粒子にて可視像化する現像手段11と、像保持手段1に形成された可視像を転写媒体12に転写する転写手段13と、像保持手段1の作像残粒子w(図1(b)参照)を清掃する清掃装置14と、を備えたものである。
【0012】
このような技術的手段において、清掃装置14による清掃対象は、高硬度表面層1aを有する像保持手段1であればよく、高硬度表面層1aを必要とする感光体等が挙げられる。
ここで、像保持手段1の形態としては、ドラム状、ベルト状を問わず、高硬度表面層1aとしては、例えば感光層の表面を覆う感光体とは別の表面保護層は勿論、感光体の表面を硬化処理して変質した態様も含む。
また、潜像形成手段10については静電潜像を形成するものであればよく、像保持手段1として感光体を用いる態様では、帯電要素と光による書込み要素(レーザやLED書込みヘッド等)とを組み合わせて用いる態様が代表的である。
更に、転写媒体12としては中間転写媒体でもよいし、記録媒体でもよい。
【0013】
本実施の形態において、清掃装置14は、本発明が適用された清掃部品2を備えるものである。尚、清掃装置14は、画像形成装置の構成要素の一つであるが、高硬度表面層1aを有する像保持手段1と共に、画像形成装置筐体に対して着脱可能に装着されるプロセスカートリッジに組み込むようにしてもよい。
ここで、清掃部品2は、図1(b)に示すように、高硬度表面層1aを有する像保持手段1を清掃するものであって、像保持手段1の表面に接触する板状の清掃部材3を有し、清掃部材3のうち像保持手段1の表面に接触する部位の物性として、100%モジュラスが7Mpa以上で、かつ、反発弾性が30%以下であるものである。
本例において、高硬度表面層1aとしては、像保持手段1が例えば感光体である場合には、表面硬化処理などを施していない有機感光体よりは少なくとも硬いものであれば広く含まれる。但し、本願においては、硬度指標となるユニバーサル硬さや弾性変形率等を用いて高硬度表面層1aの硬度を例示しておく。
また、清掃部材3において、100%モジュラス、反発弾性の数値を満たす必要があるが、これらの数値条件は、「清掃部材3のうち像保持手段1の表面に接触する部位」が少なくとも満たしていればよく、他の部分については前述した数値条件を必ずしも満たす必要はない。
【0014】
更に、100%モジュラスが7Mpa以上、かつ、反発弾性が30%以下であることは、高硬度表面層1aを有する像保持手段1に対して使用した結果、いわゆるフィルミングの発生が大きく抑制される領域を指すものである。詳細は実施例にて説明する。
ここで、100%モジュラスの上限値は15MPa、反発弾性の下限値は5%である。100%モジュラスが上限を超えたり反発弾性が下限を超えると、ゴム弾性が低下し感光体との密着性が損なわれてしまい、密着性不良によるすり抜けが発生してしまう。
本例によれば、清掃部材3の振動を抑制する物性と、像保持手段1の表面が硬いこと(高硬度表面層1aを具備)との組合せにより、作像残粒子w(外添剤等)のすり抜けの抑制と凹凸傷を防止でき、フィルミング現象の発生を抑制することが可能である。本例では、清掃部材3の先端エッジは振動が抑制されるため、疲労破壊(摩耗)が少なく、像保持手段1の表面の変化もないことから、これらを組み合わせることで、清掃部材3の接触圧を低減することが可能になり、寿命の長期化につながる。
【0015】
次に、本実施の形態に係る清掃部品の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、清掃部材3の好ましい態様としては、像保持手段1の表面に接触する部分を含む接触部材4と、像保持手段1の表面に接触しない部分を含む非接触部材5とを有し、非接触部材5の100%モジュラスを接触部材4よりも小さくする態様が挙げられる。
本例は、清掃部材3を単相構成とする場合に比べて、清掃部材3に対して必要な物性を容易に構築し易い点で好ましい。また、本例の態様は接触部材4、非接触部材5の板材を積層する複層態様は勿論、大部分の非接触部材5に対し像保持手段1に接触する先端接触部のみを接触部材4とする態様を含む。
【0016】
清掃部材3が接触部材4と非接触部材5とを備えた態様では、接触部材4と非接触部材5とを100%モジュラスの異なる同一材料で構成される態様でもよいし、あるいは、接触部材4と非接触部材5とを100%モジュラスの異なる別材料で構成される態様でもよい。
また、本例の清掃部材3としては、像保持手段1の表面に対し2~4(gf/mm→9.80665g・m/sに相当)の接触圧で接触するようにすればよい。
更に、清掃部材3の好ましい態様としては、像保持手段1の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのいずれかのゴム材料を用い、予め決められた摩擦係数0.1~1.5に調節されている態様が挙げられる。
ここで、摩擦係数の調節方法として、ゴム材料の硬度を調整することで摩擦係数を調節するようにする。あるいは、ゴム材料の表面を改質することで摩擦係数を調節するようにすればよい。尚、表面改質処理としては、紫外線照射処理、イソシアネート含浸処理がある。
【0017】
また、清掃部材3の好ましい構成例としては、像保持手段1の表面に接触する部位が少なくともポリウレタンゴムを用いて構成され、100%モジュラス及び反発弾性の物性を満たすように、ポリウレタンゴムの組成成分であるポリオール成分及びポリイソシアネート成分の種類、モル比並びに硬化成熟条件を選定して得られるものが挙げられる。
更に、このような清掃部品に対して好ましい像保持手段1としては、10kpv走行後の摩擦係数が0.3~0.7である態様が挙げられる。本例は、像保持手段1の表面の摩擦係数を0.1~0.2にしなくても、像保持手段1に対する清掃性を確保する点で好ましい。
また、像保持手段1の表面の摩擦抵抗を調整する手法としては、高硬度表面層1aに対し潤滑剤粒子の添加量を調整するようにすればよい。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
-画像形成装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、画像形成装置20は、装置筐体21内に複数の色(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの四色)の画像を形成する作像エンジン30を搭載し、この作像エンジン30の下方には用紙等の記録材が収容される記録材供給装置50を配設すると共に、この記録材供給装置50からの記録材搬送路55を略鉛直方向に配置したものである。
本例において、作像エンジン30は、複数の色の画像を形成する画像形成部31(具体的には31a~31d)を略水平方向に配列し、その上方には画像形成部31の配列方向に沿って循環移動する例えばベルト状の中間転写体45が含まれる転写モジュール40を配設し、各画像形成部31で形成した各色の画像を転写モジュール40を介して記録材に転写するものである。
【0019】
本実施の形態において、各画像形成部31(31a~31d)は、図2及び図3に示すように、中間転写体45の循環方向上流側から順に、例えばイエロ用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、感光体32と、この感光体32を予め帯電する帯電器(本例では帯電ロール)33と、この帯電器33にて帯電された各感光体32に静電潜像を書き込む露光器(本例ではLED書込ヘッド)34と、感光体32上に形成された静電潜像を対応する色成分トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像する現像器35と、感光体32上の残留物を清掃する清掃器36(図1に示す清掃装置14に相当)と、を備えている。
尚、符号37(具体的には37a~37d)は各現像器35に各色成分トナーを補給するためのトナーカートリッジである。
【0020】
また、本実施の形態において、転写モジュール40は、複数の張架ロール41~44にベルト状の中間転写体45を架け渡したものであり、例えば張架ロール41を駆動ロールとして中間転写体45を循環移動するようにしたものである。そして、各画像形成部31の感光体32に対応した中間転写体45の裏面には一次転写用の転写器(本例では転写ロール)46が配設され、この転写器46にトナーの帯電極性と逆極性の転写電圧を印加することで、感光体32上のトナー像を中間転写体45側に静電転写するようになっている。
更に、中間転写体45の最上流画像形成部31aの上流側にはベルト清掃器47が配設されており、中間転写体45上の残留トナーを除去するようになっている。
【0021】
また、本実施の形態では、中間転写体45の最下流画像形成部31dの下流側の張架ロール42に対応した部位には二次転写器60が配設されており、中間転写体45上の一次転写像を記録材に二次転写(一括転写)するようになっている。
本例では、二次転写器60は、中間転写体45のトナー像保持面側に圧接して配置される二次転写ロール61と、中間転写体45の裏面側に配置されて二次転写ロール61の対向電極をなすバックアップロール(本例では張架ロール42を兼用)とを備えている。そして、例えば二次転写ロール61が接地されており、また、バックアップロール(張架ロール42)にはトナーの帯電極性と同極性の二次転写電圧が印加されている。
【0022】
また、記録材供給装置50には記録材を供給する供給ロール51が設けられ、記録材搬送路55には図示外の搬送ロールが配設されると共に、二次転写部位の直前に位置する記録材搬送路55には記録材を所定のタイミングで二次転写部位へ供給する位置合せロール(レジストレーションロール)56が配設されている。
更に、二次転写部位の下流側に位置する記録材搬送路55には定着器70が設けられ、この定着器70は、例えば図示外の加熱ヒータが内蔵された加熱定着ロール71と、これに圧接して配置されて追従回転する加圧定着ロール72とを備えている。また、定着器70の下流側には装置筐体21内の記録材を排出する排出ロール57が設けられ、記録材を挟持搬送して排出し、装置筐体21の上部に形成された記録材収容受け58に記録材を収容するようになっている。
尚、本例では、図示を省略しているが、記録材の手差し供給装置や、記録材の両面記録を可能とする両面記録モジュールを別途付設してもよいことは勿論である。
【0023】
-画像形成部の構成例-
<感光体>
本例において、感光体32は、図3(a)(b)に示すように、金属製(本例ではアルミニウム製)の基材32a上に感光層(本例では有機感光層)32bを積層すると共に、感光層32bの上には耐摩耗性に優れた高硬度表面層32cを積層したものである。
ここで、感光層32bは、基材32a上に下引き層321、電荷発生層322及び電荷輸送層323を順次積層したものであり、下引き層321は帯電で発生するカウンタ電荷(+)の注入を阻止し、電荷発生層322は光電変換で電荷(+-)を発生し、更に、電荷輸送層323は電荷発生層322で発生した電荷(+)を高硬度表面層32cまで搬送するものである。また、高硬度表面層32cは感光層32bの摩耗を防止するように高硬度材料で形成されていればよい。
尚、高硬度表面層32cの具体例については後述する。
【0024】
<現像器>
本例では、現像器35は、図3(a)に示すように、トナー及びキャリアを含む現像剤が収容され且つ感光体32に対向して開口する現像容器80を有し、この現像容器80の開口には現像ロール81を配設し、当該現像ロール81に現像剤を保持して感光体32との対向部に現像剤を供給すると共に、現像容器80内には現像剤を撹拌して帯電して撹拌搬送するための撹拌搬送部材82,83を配設したものである。
<清掃器>
また、本例において、清掃器36は、感光体32上の残留物が収容され且つ感光体32に対向し開口する清掃容器90を有し、この清掃容器90の開口縁には感光体32上の残留物を掻き取るための板状の清掃部材としての清掃ブレード91を取り付けると共に、清掃容器90内には収容された残留物を均すように搬送する搬送部材92を配設したものである。
【0025】
-清掃ブレードの構成例-
本例において、清掃ブレード91は、図3(b)に示すように、ドラム状の感光体32の軸方向に延びる長尺な薄い板状部材であり、当該板状部材の長手方向に交差する短手方向の感光体32から離れた側を図示外の支持ブラケットで支持し、板状部材の短手方向の感光体32側(先端側)のエッジ部を感光体32に接触して配置するようにしたものである。
本例においては、清掃ブレード91としては、図4(a)に示すように、例えば一枚の板状部材91aからなる単層構造で、一枚の板状部材91aを感光体32に接触する接触部材95として機能させる態様、あるいは、図4(b)に示すように、二枚の板状部材91b,91cを積層し、一方の板状部材91bを感光体32に接触する接触部材95として機能させ、他方の板状部材91cを感光体32に接触しない非接触部材96として機能させるようにした二層構造の態様が挙げられる。尚、後者の態様については、二層構造ではなく、三層以上積層するようにしてもよい。
また、清掃ブレード91の他の構成例としては、図4(c)に示すように、一枚の板状部材91dのうち感光体32に接触する角部を切欠き、当該切欠部分に一枚の板状部材91dとは異なる角部パーツ91eを固着し、当該角部パーツ91eを感光体32に接触する接触部材95として機能させるようにした態様が挙げられる。
【0026】
-清掃ブレードの構成材料-
<接触部材>
本例において、接触部材95は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを少なくとも含むポリウレタンゴムである。ポリウレタンゴムは、必要に応じて、ポリオール成分以外にポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する樹脂を重合したポリウレタンゴムであってもよい。
ここで、ポリオール成分は、高分子ポリオールと低分子ポリオールとが含まれる。高分子ポリオール成分は、数平均分子量が500以上(好ましくは500以上5000以下)のポリオールである。高分子ポリオール成分としては、低分子ポリオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、低分子ポリオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール等の周知のポリオールが挙げられる。また、低分子ポリオール成分は、分子量(数平均分子量)500未満のポリオールである。低分子ポリオール成分として、1,4-ブタンジオール以外に、鎖長延長剤及び架橋剤として周知なジオール(2官能)、トリオール(3官能)、又はテトラオール(4官能)等も挙げられる。低分子ポリオールは、鎖長延長剤、及び架橋剤として機能する材料である。
ポリイソシアネート成分としては、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,6- ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)および3,3-ジメチルビフェニル-4,4-ジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
また、接触部材95については、後述するように、100%モジュラス及び反発弾性の物性を満たすようにすることが必要であり、ポリウレタンゴムの組成成分であるポリオール成分及びポリイソシアネート成分の種類、モル比並びに硬化成熟条件を適宜選定して所望の特性を得るようにすればよい。
【0027】
<非接触部材>
本例において、非接触部材96は、接触部材95を支持する機能を有していれば、特に限定されずに公知の如何なる材料をも用い得る。具体的には、非接触部材96に用いられる材料としては、例えば、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、プロロプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ポリウレタンゴムがよい。ポリウレタンゴムとしては、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタンが挙げられ、特にエステル系ポリウレタンが望ましい。
【0028】
-清掃ブレードの特性-
<100%モジュラス(M100)>
本例において、清掃ブレード91のうち、感光体32の表面(高硬度表面層32c)に接触する部分の100%モジュラスは、7Mpa以上に選定されている。
100%モジュラスは、JIS K6251(2010年)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を用い、引張速度500mm/minで計測し、100%歪み時の応力より求めた。なお、測定装置は、東洋精機(株)製、ストログラフAEエラストマを用いた。
<反発弾性>
本例において、清掃ブレード91のうち、感光体32の表面(高硬度表面層32c)に接触する部分の反発弾性は、30%以下に選定されている。
反発弾性率は、JIS K6255(1996年)に準じて、23℃環境下にてリュプケ式反発弾性試験機を用いて求めた。
【0029】
-清掃ブレードの使用条件-
<清掃ブレードとの当接圧>
本例において、清掃ブレード91は、感光体32に対して2~4(gf/mm:9.80665g・m/s)の当接圧で接触している。
<清掃ブレードの配設姿勢>
本例において、清掃ブレード91と感光体32との接触部における角度W/A(Working Angle)は8°以上14°以下の範囲であることが望ましい。
<清掃ブレードの摩擦係数調整>
清掃ブレード91の摩擦係数を調整するには、例えば接触部材95の硬度を調整し、高硬度側にシフトさせることで、摩擦係数を下げる方向に調整することができる。
また、別の手法としては、接触部材95の材料表面を改質することで、摩擦係数を調整することが可能である。ここで、接触部材95の表面改質方法としては、紫外線照射処理、あるいは、イソシアネート含浸処理が挙げられる。
【0030】
-感光体の表面特性-
<感光体の表面硬度特性>
本例において、感光体32は高硬度表面層32cを有しているが、高硬度表面層32cの具体例としては、以下のような硬度指標で表すことが可能である。
(1)ユニバーサル硬さ
本例における高硬度表面層32cは、ユニバーサル硬さが150N/mm以上220N/mm以下であることが好ましく、170N/mm以上200N/mm以下であることがより好ましく、180N/mm以上200N/mm以下であることが更に好ましい。
また、本例における高硬度表面層32cは、弾性変形率が45%以上65%以下であることが好ましく、45%以上60%以下であることがより好ましく、45%以上55%以下であることがさらに好ましい。
上記ユニバーサル硬さ及び弾性変形率の測定は、具体的には、圧子として対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用し、測定装置として連続的硬さを求められる微小硬さ測定装置フィッシャースコープH-100V(Fischer社製)を用いる。
ユニバーサル硬さHUと弾性変形率を完全に切り離してはとらえられないが、例えば、HUが220N/mmを超え、弾性変形率が44%未満であると、高硬度表面層32cの弾性力が不足し、高硬度表面層32cに深い傷が発生してしまう場合がある。また、HUが220N/mmを超え、弾性変形率が65%より大きい場合、弾性変形率は高くても弾性変形量が小さくなってしまい、同様に高硬度表面層32cに深い傷が発生してしまう場合がある。また、HUが150N/mm未満であり、弾性変形率が65%を超えた場合、塑性変形量も大きくなってしまい、清掃部材や接触式帯電ロールなどにより高硬度表面層32cが削られ、傷が発生してしまう場合がある。
上記ユニバーサル硬さ及び弾性変形率は、特定の電荷輸送性材料、グアナミン化合物、及びメラミン化合物の種類及び含有量、最表面層形成時の乾燥温度及び乾燥時間、並びに最表面層の膜厚等を調整することにより制御される。
例えば、ユニバーサル硬さは、グアナミン化合物及びメラミン化合物の含有量を大きくすること、最表面層形成時の乾燥温度を高くすること、並びに乾燥時間を長くすること等で大きくできる傾向がある。また、弾性変形率は、グアナミン化合物及びメラミン化合物の含有量を大きくすること、並びに最表面層の膜厚を大きくすること等で大きくすることができる傾向がある。
【0031】
(2)表面自由エネルギ
高硬度表面層32cは、表面自由エネルギが10mN/m以上30mN/m以下であることを充足する。
高硬度表面層32cが有する表面自由エネルギは、例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物、脂肪酸金属塩等の添加等により制御しうる。
ここで、表面自由エネルギについて説明する。
トナーを含むトナー母粒子又は外添剤等と、感光体との相互付着力に大きく影響する表面物性として濡れ性があり、感光体表面の濡れ性が低いほど、トナー像を転写した後の電子写真感光体表面に残存するトナーの除去(クリーニング)がし易いということができる。電子写真感光体表面の濡れ性すなわち付着力は、表面自由エネルギ(表面張力と同義)を指標として表すことができる。
【0032】
(3)最表面層と下層との間の弾性変形率、ユニバーサル硬さ
本実施の形態では、高硬度表面層32cの弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であり、高硬度表面層32cと接する下層(電荷輸送層に相当)の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることを充足する。
本例に係る感光体は、高硬度表面層32cが下層から剥がれにくく、キャリア等により高硬度表面層32cに異物痕が残ることが抑制され、高硬度表面層32cが摩耗することも抑制される。詳しくは、高硬度表面層32cの弾性変形率が45%以上55%以下、ユニバーサル硬さが185N/mm以上210N/mm以下であることにより高硬度表面層32cはキャリア等の異物がぶつかっても元の状態に戻ることができ、また、高硬度表面層32cと接する下層の弾性変形率が35%以上45%以下、ユニバーサル硬さが180N/mm以上250N/mm以下であることにより、高硬度表面層32cに異物がぶつかり元の状態に戻る際、高硬度表面層32cが下層から剥れることを防ぐ。よって、異物痕に強く、摩耗に強い感光体が得られる。この効果は、高硬度表面層32cの弾性変形率と下層の弾性変形率との差が、10%以下であることを満たすことにより顕著になる。
【0033】
ここで、高硬度表面層32c及び下層の弾性変形率は、フィッシャースコープH-100(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、25℃/50%RHの条件下で行った。
高硬度表面層32cの弾性変形率は、45%以上55%以下であり、45%以上53%以下であることが望ましく、45%以上51%以下であることがより望ましい。高硬度表面層32cの弾性変形率が45%未満であると、最表面層に異物がぶつかった時、元の形状に戻ることができない。また、55%を超えると、元の形状に戻り易いが下層との弾性変形率の差が大きくなり高硬度表面層32cが下層から剥れてしまう。
また、下層の弾性変形率は、35%以上45%以下であり、35%以上43%以下であることが望ましく、35%以上40%以下であることがより望ましい。高硬度表面層32cの弾性変形率が35%未満であると、最表面層との弾性変形率の差が大きくなり、下層と高硬度表面層32cとの間で剥れが生じる。また、45%を超えると、軟らかくなりすぎてしまう。
【0034】
一方、高硬度表面層32cのユニバーサル硬さは、185N/mm以上210N/mm以下であり、185N/mm以上200N/mm以下であることが望ましく、185N/mm以上190N/mm以下であることがより望ましい。高硬度表面層32cのユニバーサル硬さが185N/mm未満であると、軟らかすぎて、キャリア等の異物で最表面層を傷つけてしまう。また、210N/mmを超えると硬すぎてキャリア等の異物痕が高硬度表面層32cに残ってしまう。
また、下層のユニバーサル硬さは、180N/mm以上250N/mm以下であり、190N/mm以上250N/mm以下であることが望ましく、200N/mm以上250N/mm以下であることがより望ましい。高硬度表面層32cのユニバーサル硬さが180N/mm未満であると、軟らかすぎて、キャリア等の異物で最表面層を傷つけてしまう。
更に、高硬度表面層32cの弾性変形率と下層の弾性変形率との差は、10%以下であることが望ましく、0%以上7%以下であることがより望ましく、0%以上5%以下であることが更に望ましい。高硬度表面層32cの弾性変形率と下層の弾性変形率との差が10%を超えると、高硬度表面層32cに異物がぶつかり、元の形状に戻る時に高硬度表面層32cが下層から剥れてしまう場合がある。
【0035】
(4)摩耗レート
本例において、高硬度表面層32cの摩耗レート(キロサイクル当たりの摩耗量)は、3.5nm/kcycle以下であればよい。
(5)材料による特定
本例において、高硬度表面層32cは、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種と-OH、-OCH、-NH、-SH、及び-COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つ電荷輸送性材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、前記グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種が0.1質量%以上5質量%以下含有され、且つ前記電荷輸送性材料が90質量%以上含有される。
【0036】
<感光体表面の摩擦係数調整>
感光体32の表面における摩擦係数を調整する場合には、高硬度表面層32cに潤滑剤粒子を添加し、潤滑剤粒子の添加量を調整するようにすればよい。潤滑剤粒子としては、例えばフッ素系樹脂粒子が挙げられ、添加量を増加させることで低摩擦係数に調整することが可能である。
【実施例0037】
図5に示すように、以下の実施例1及び比較例1~3について、ブレードの使用条件、ブレードの挙動(ブレード振動)、品質・フィルミングなどを評価する。
◎実施例1
実施例1は、実施の形態1で用いられる清掃ブレードを用いたものであり、当該清掃ブレードは、高モジュラス(100%モジュラスが7Mpa以上)/低反発弾性(反発弾性30%以下)を具備し、清掃対象として高硬度表面層32cを有する感光体32(オーバコート感光体:図5では「オーバコート」と表記)を清掃する ものである。
◎比較例1
比較例1は、実施例1と同様な清掃ブレードを用い、清掃対象として高硬度表面層32cを有しない有機感光体(図5中OPCと表記)を清掃するものである。
◎比較例2
比較例2は、比較的低硬度で高反発弾性の清掃ブレードを用い、清掃対象として高硬度表面層32cを有しない有機感光体(OPC)を清掃するものである。
比較例3は、比較例2と同様な清掃ブレードを用い、清掃対象として高硬度表面層32cを有する感光体32(オーバコート感光体)を清掃するものである。
【0038】
先ず、比較例2については、清掃ブレードの振動が大きく、作像残粒子としての外添剤が清掃ブレードをすり抜ける可能性が高い。この点に補足すると、図6(b)に示すように、清掃ブレード91’は摩擦係数が高いため、清掃ブレード91’の先端角部97が感光体32に押圧されると、当該先端角部97は感光体32の移動に対して摺動しながら、感光体32の移動に追従して引き込まれる動作(スティック&スリップ動作:stick&slip)を繰り返す。このため、本例では、振幅大、周期小のブレード振動が発生する。このような状況において、清掃ブレード91’には比較的高い当接圧が作用する清掃ブレード91’のエッジを外添剤がすり抜ける。このとき、感光体32の表面にはスクラッチ傷が発生し、感光体32の表面凹部には外添剤が蓄積し、フィルミングに至る。また、清掃ブレード91’の振動が大きいため、外添剤のすり抜けは過剰になり、感光体32の表面凹部以外でも外添剤のフィルミングが発生する(図7(b)参照)。更に、清掃ブレード91’の振動により、摩耗による疲労破壊が大きくなるため、経時の清掃性を見越して清掃ブレード91’の当接圧を高める必要があるが、摩擦力も高まり、初期的に清掃ブレード91’の捲れが発生してしまい、限界がある。更には、感光体表面の凹部フィルミングを抑制するために、清掃ブレード91’の当接圧を高める必要があるが、同様の理由で限界がある。従って、感光体32、あるいは、感光体32を含むカートリッジ等のロングライフ化をすることが困難である。
【0039】
また、比較例3にあっては、オーバコート感光体を使用しているため、感光体表面のスクラッチ傷がなくなり、凹部フィルミングの発生が大きく抑制されるが、図6(a)に示すように、清掃ブレード91’の振動は未だ多い(周期小)ため、外添剤のすり抜けが過剰となり、清掃しきれずに、全面フィルミングが発生する(図7(b)参照)。比較例2と同様に、清掃ブレード91’のエッジは振動により疲労破壊(摩耗)が大きくなるため、経時の清掃性を見越して清掃ブレード91’の当接圧を高める必要があるが、摩擦力も高まり初期の清掃ブレード91’の捲れが発生してしまう。従って、感光体32、あるいは、感光体32を含むカートリッジ等のロングライフ化をすることが困難である。
【0040】
これに対し、実施例にあっては、ブレード物性を高モジュラスかつ低反発弾性にすることで、図6(a)に示すように、スティックスリップ振動を抑えることができ(振動の振幅や周期)、外添剤すり抜けを抑制できる。また、オーバコート感光体32のため、感光体32表面のスクラッチ傷が減少し、凹部フィルミングの発生が大きく抑制される。更に、清掃ブレード91からの外添剤すり抜けも少ないため、全面フィルミングの発生も大きく抑制される(図7(a)参照)。
このように、清掃ブレード91のエッジは振動が抑制されるため、疲労破壊(摩耗)も小さく、感光体32表面の変化も無いことから、これらを組み合わせることで初めて清掃ブレード91の当接圧を低めに設定することが可能となる。従って、感光体32、カートリッジのロングライフ化を行うことが可能である。
【0041】
しかしながら、比較例1にあっては、実施例1と同様な高モジュラスかつ低反発弾性の清掃ブレード91と有機感光体との組み合わせであり、図6(a)に示すように、スティックスリップ振動を抑えることができ(振動の振幅や周期)、外添剤すり抜けを抑制できるが、清掃ブレード91の捲れが発生しないように最低限の外添剤すり抜けは起きている。
従って、当接圧の掛かる清掃ブレード91のエッジを外添剤がすり抜ける際に感光体表面はスクラッチ傷が発生し、凹部には外添剤が蓄積してフィルミングが発生する(図7(a)参照)。感光体表面の凹部フィルミングを抑制するために清掃ブレード91の当接圧を高める必要があるが、比較例2と同様の理由で限界がある。従って、感光体、カートリッジのロングライフ化をすることが困難である。
【0042】
-清掃ブレードの特性評価-
本実施例では、清掃ブレード91は、高モジュラス/低反発弾性の特性(7Mpa以上/反発弾性30%以下)を備えているが、この数値限定を裏付ける根拠データを示す。
今、100%モジュラス、反発弾性の特性の異なる清掃ブレードを用意し、夫々の清掃ブレードを用いてフィルミングの発生の有無を目視確認したところ、図8に示す結果が得られた。
図8に示すように、
〔100%モジュラス〕:5,6,7,8,9,10(単位Mpa)
〔反発弾性〕:10,18,30,41,53(単位%)
の組合せにおいて、フィルミングの発生の有無を確認したところ、100%モジュラスが7,8,9,10、反発弾性が10,18,30の組合せにおいては、フィルミングの発生が大きく抑制された。
この結果によれば、清掃ブレード91の特性として、100%モジュラスが7Mpa以上、かつ、反発弾性が30%以下の条件でフィルミングの発生が抑制されることが理解される。
【0043】
-感光体表面の経時摩擦係数の測定-
本例では、感光体32は所謂オーバコート感光体(高硬度表面層32cを有する感光体)を使用しており、測定装置として、ヘイドン社のHEIDONを用い、10kpv走行後の感光体表面の摩擦係数を測定した。
測定条件は以下の通りである。
・針材質 ダイヤモンド
・針先端R 0.1mmR
・移動間隔 10mm
・移動速度 5mm/sec
・荷重 15g
・測定回数 15回
・採用データ 平均
測定結果は、0.3~0.7/10kpv走行後であった。
従前の感光体表面の摩擦係数は0.1~0.2程度であったので、感光体にはフィルミングの発生が大きく抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1…像保持手段,1a…高硬度表面層,2…清掃部品,3…清掃部材,4…接触部材,5…非接触部材,10…潜像形成手段,11…現像手段,12…転写媒体,13…転写手段,14…清掃装置,w…作像残粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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