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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180856
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】変成器の製造方法及び変成器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20221130BHJP
   H01F 41/061 20160101ALI20221130BHJP
【FI】
H01F30/10 U
H01F30/10 E
H01F30/10 C
H01F41/061
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087586
(22)【出願日】2021-05-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】下村 好亮
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
【テーマコード(参考)】
5E002
【Fターム(参考)】
5E002AA05
5E002AA08
(57)【要約】
【課題】コイルを簡易に積層することができる変成器の製造方法及び変成器を提供する。
【解決手段】環状の枠体の外周における前記枠体の軸長方向の端部からガイド柱が立ち上がっている前記枠体を、軸心を中心に回転させることにより、例えば前記外周に第1のコイルを形成し、該第1のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ、前記第1のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線を、前記ガイド柱の周面の周方向の一部に接触させつつ前記枠体の外部に引き出し、前記枠体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を、前記枠体の外部にある部材に巻き掛け、該部材への巻き掛け後、前記枠体を回転させつつ、前記導線を前記ガイド柱の周面の周方向の他部に接触させつつ前記枠体に引き込み、前記導線の引き込み後、前記枠体を回転させることにより、前記第1のコイルの外周に第2のコイルを形成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の枠体と、
導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に積層されている複数のコイルと
を備える変成器を製造する方法であって、
前記外周における前記枠体の軸長方向の端部からガイド柱が立ち上がっている前記枠体を、軸心を中心に回転させることにより、前記外周又は前記枠体に形成されているコイルの外周に第1のコイルを形成し、
該第1のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体の外部に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記第1のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線を、前記ガイド柱の周面の周方向の一部に接触させつつ前記枠体の外部に引き出し、
前記枠体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を、前記枠体の外部にある部材に巻き掛け、
該部材への巻き掛け後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記導線を前記ガイド柱の周面の周方向の他部に接触させつつ前記枠体に引き込み、
前記導線の引き込み後、前記枠体を回転させることにより、前記第1のコイルの外周に第2のコイルを形成することを特徴とする変成器の製造方法。
【請求項2】
前記枠体を支持する支持体と共に前記枠体を回転させ、
前記枠体及び前記支持体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を、前記支持体に巻き掛けることを特徴とする請求項1に記載の変成器の製造方法。
【請求項3】
複数本の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されている前記枠体を回転させ、
前記第2のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体の外部に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記第2のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線を、前記第2のコイルの巻き始め部分から延びる前記導線が接触している前記ガイド柱とは異なる他のガイド柱の周面の周方向の一部に接触させつつ前記枠体の外部に引き出し、
前記枠体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を前記部材に巻き掛け、
該部材への巻き掛け後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記導線を前記他のガイド柱の周面の周方向の他部に接触させつつ前記枠体に引き込み、
前記導線の引き込み後、前記枠体を回転させることにより、前記第2のコイルの外周に第3のコイルを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の変成器の製造方法。
【請求項4】
環状の枠体と、
導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に積層されている複数のコイルと
を備える変成器において、
前記外周における前記枠体の軸長方向の端部からガイド柱が立ち上がっており、
各コイルの巻き始め部分及び巻き終わり部分夫々から前記導線が引き出されており、
一のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線は、前記ガイド柱の周面の周方向の一部に、前記導線の前記枠体への巻き付け方向の上流側から接触しており、該一部に接触している部分は、前記巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜しており、
前記一のコイルの外周に積層されている他のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線は、前記ガイド柱の周面の周方向の他部に、前記導線の前記枠体への巻き付け方向の上流側から接触しており、該他部に接触している部分は、前記巻き始め部分に対して鈍角に傾斜していることを特徴とする変成器。
【請求項5】
前記ガイド柱の前記一部は前記導線の巻き付け方向の上流側から前記導線の引き出し側に向けて前記枠体の周方向に対して傾斜する一の傾斜面であり、
前記ガイド柱の前記他部は前記導線の巻き付け方向の上流側から前記導線の引き出し側の逆側に向けて前記枠体の周方向に対して傾斜する他の傾斜面であることを特徴とする請求項4に記載の変成器。
【請求項6】
前記枠体の外周に3つ以上の前記コイルが積層されており、
複数本の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されており、
互いに積層されている3つの前記コイルの内の最も枠体に近い第1のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線及び前記第1のコイルの外周に積層されている第2のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線が接触している前記ガイド柱と、前記第2のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線及び前記第2のコイルの外周に積層されている第3のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線が接触している前記ガイド柱とが互いに異なることを特徴とする請求項4又は5に記載の変成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変成器の製造方法及び変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧又は変流を目的として、変成器が用いられている。
変成器は、環状の枠体と枠体の外周に形成されたコイルとを備えることがある。このコイルは枠体に導線が巻き付けられることによって形成されている。コイルの巻き始め部分及び巻き終わり部分夫々からは導線が引き出されている。この種の変成器は例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-188213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
枠体には複数のコイルが積層される場合がある。まず、導線供給用のリールに巻き掛けられている導線の始端部分が、枠体の外部にある第1の治具に一時的に固定される。枠体が回転することにより、始端部分が固定された導線が枠体の外周に巻き付けられる。この結果、枠体の外周に第1のコイルが形成される。
第1のコイルの形成後、枠体の回転が止められ、第1のコイルの巻き終わり部分から延びる導線が、リールに巻き掛けられている導線から切り離される。切り離された導線は、枠体の外部にある第2の治具に一時的に固定される。
【0005】
次に、リールに巻き掛けられている導線の始端部分が、枠体の外部にある第3の治具に一時的に固定される。再び枠体が回転することにより、第1のコイルの外周に第2のコイルが形成される。
このように、第1のコイルの巻き終わりと第2のコイルの巻き始めとの間に、枠体の回転を止めて導線を切り離す作業と、2つの治具夫々に導線を一時的に固定する作業を行なう必要がある。このようなコイルの積層手順は煩雑である。
【0006】
本開示の目的は、コイルを簡易に積層することができる変成器の製造方法及び変成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る変成器の製造方法は、環状の枠体と、導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に積層されている複数のコイルとを備える変成器を製造する方法であって、前記外周における前記枠体の軸長方向の端部からガイド柱が立ち上がっている前記枠体を、軸心を中心に回転させることにより、前記外周又は前記枠体に形成されているコイルの外周に第1のコイルを形成し、該第1のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体の外部に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記第1のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線を、前記ガイド柱の周面の周方向の一部に接触させつつ前記枠体の外部に引き出し、前記枠体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を、前記枠体の外部にある部材に巻き掛け、該部材への巻き掛け後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記導線を前記ガイド柱の周面の周方向の他部に接触させつつ前記枠体に引き込み、前記導線の引き込み後、前記枠体を回転させることにより、前記第1のコイルの外周に第2のコイルを形成することを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、第1のコイルの形成後、第1のコイルの巻き終わり部分から延びる導線が枠体の外部に引き出される。引き出された導線は、枠体の外部にある部材に巻き掛けられる。部材に巻き掛けられた導線は、枠体に引き込まれる。枠体に引き込まれた導線により、第2のコイルが形成される。第1のコイルの形成開始から第2のコイルの形成終了までの間、枠体は回転し続ける。
即ち、第1のコイルの巻き終わりと第2のコイルの巻き始めとの間に、枠体の回転を止める必要も、導線を切り離す必要もない。また、導線の一時的な固定は1回だけ行なえばよい。
以上の結果、コイルを簡易に積層することができる。
【0009】
導線の引き出しはガイド柱の周面の周方向の一部に案内され、導線の引き込みはガイド柱の周面の周方向の他部に案内される。故に、導線の引き出し及び引き込みが夫々円滑に行なわれる。また、ガイド柱の周面のどこに接触しているかが分かれば、枠体から引き出された導線(即ち第1のコイルの巻き終わり部分から延びる導線)と枠体に引き込まれる導線(即ち第2のコイルの巻き始め部分から延びる導線)とを容易に区別することができる。
【0010】
導線の引き出し及び引き込みは枠体の回転中に行なわれるので、枠体の回転方向に回転移動するガイド柱に導線を接触させる必要上、導線は枠体の回転方向の下流側(即ち、導線の枠体への巻き付け方向の上流側)からガイド柱に接触する。
【0011】
本開示に係る変成器の製造方法は、前記枠体を支持する支持体と共に前記枠体を回転させ、前記枠体及び前記支持体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を、前記支持体に巻き掛けることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、枠体の外部に引き出した導線を巻き掛ける部材として、枠体を支持して枠体と共に回転する支持体が用いられる。故に、導線を巻き掛けるための部材を別途用いる必要がないので、変成器を製造する装置の構成を簡略化することができる。
【0013】
本開示に係る変成器の製造方法は、複数本の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されている前記枠体を回転させ、前記第2のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体の外部に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記第2のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線を、前記第2のコイルの巻き始め部分から延びる前記導線が接触している前記ガイド柱とは異なる他のガイド柱の周面の周方向の一部に接触させつつ前記枠体の外部に引き出し、前記枠体の回転を継続させながら、前記枠体の外部に引き出した前記導線を前記部材に巻き掛け、該部材への巻き掛け後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記枠体に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記導線を前記他のガイド柱の周面の周方向の他部に接触させつつ前記枠体に引き込み、前記導線の引き込み後、前記枠体を回転させることにより、前記第2のコイルの外周に第3のコイルを形成することを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、第2のコイルの形成後、第2のコイルの巻き終わり部分から延びる導線が枠体の外部に引き出される。引き出された導線は、枠体の外部にある部材に巻き掛けられる。このとき導線が巻き掛けられる部材は、第1のコイルの巻き終わり部分から引き出された導線が巻き掛けられている部材である。即ち、導線の巻き掛け毎に異なる部材を用いる必要がないので、変成器を製造する装置の構成を簡略化することができる。
【0015】
部材に巻き掛けられた導線は、枠体に引き込まれる。枠体に引き込まれた導線により、第3のコイルが形成される。第2のコイルの形成開始から第3のコイルの形成終了までの間、枠体は回転し続ける。
即ち、第2のコイルの巻き終わりと第3のコイルの巻き始めとの間に、枠体の回転を止める必要も、導線を切り離す必要もない。また、導線の一時的な固定は1回だけ行なえばよい。
以上の結果、コイルを簡易に積層することができる。
【0016】
導線の引き出しはガイド柱の周面の周方向の一部に案内され、導線の引き込みはガイド柱の周面の周方向の他部に案内される。故に、導線の引き出し及び引き込みが夫々円滑に行なわれる。また、ガイド柱の周面のどこに接触しているかが分かれば、枠体から引き出された導線(即ち第2のコイルの巻き終わり部分から延びる導線)と枠体に引き込まれる導線(即ち第3のコイルの巻き始め部分から延びる導線)とを容易に区別することができる。
【0017】
第1のコイルの巻き終わり部分及び第2のコイルの巻き始め部分夫々から延びる導線が接触するガイド柱と、第2のコイルの巻き終わり部分及び第3のコイルの巻き始め部分夫々から延びる導線が接触するガイド柱とは互いに異なる。故に、どのガイド柱に接触しているかが分かれば、どのコイルのどの部分から延びる導線なのかを容易に区別することができる。
【0018】
[付記]
本開示に係る変成器の製造方法は、全周にわたる溝が外周に設けられており、前記溝の側壁に、頂部から底部に向けて切り欠いたような形状の窓部が設けられており、該窓部の底部に3本以上の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されている前記枠体を回転させ、前記窓部を通して前記導線を前記溝から引き出すか前記溝に引き込み、引き込んだ前記導線の最初の1巻き目が前記側壁の内面に接するようにし、前記導線の巻き付け方向の最下流の前記ガイド柱に接触させつつ前記導線を前記溝に引き込む場合、前記最下流の前記ガイド柱よりも該ガイド柱に隣り合うガイド柱に近い位置を通して前記導線を引き込み、前記複数のコイルを前記溝の底面に積層することを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、枠体の外周に設けられた溝の底面に複数のコイルが積層される。溝の側壁には切り欠き状の窓部が設けられており、窓部を通して導線が溝から引き出されるか、又は溝に引き込まれる。
【0020】
導線の整列巻きのために、最初の1巻き目については導線が溝の側壁の内面に接することが望ましい。ところが、導線の引き込みの勢いにより、溝に引き込まれた導線には引き込み方向に膨らむような湾曲が生じやすい。湾曲が生じたままの導線が溝の側壁の内面に接した場合、導線の湾曲部分が2巻き目の導線に干渉して整列巻きを阻害する虞がある。
しかしながら、導線が溝に引き込まれる位置が、導線が溝の側壁の内面に接触する位置から、導線の巻き付け方向の上流側に適宜に離れていれば、導線が溝の側壁の内面に接する前に、導線に対して枠体の周方向に加わる外力によって導線の湾曲が解消される。
【0021】
最下流のガイド柱に案内されて溝に引き込まれるべき導線は、最下流のガイド柱よりも、このガイド柱に隣り合うガイド柱に近い位置を通して溝に引き込まれる。即ち、導線が溝に引き込まれる位置は、導線が溝の側壁の内面に接触する位置から、導線の巻き付け方向の上流側に離れている。故に、導線が溝の側壁の内面に接する前に、導線に対して枠体の周方向に加わる外力によって導線の湾曲が解消される。
【0022】
本開示に係る変成器は、環状の枠体と、導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に積層されている複数のコイルとを備える変成器において、前記外周における前記枠体の軸長方向の端部からガイド柱が立ち上がっており、各コイルの巻き始め部分及び巻き終わり部分夫々から前記導線が引き出されており、一のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線は、前記ガイド柱の周面の周方向の一部に、前記導線の前記枠体への巻き付け方向の上流側から接触しており、該一部に接触している部分は、前記巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜しており、前記一のコイルの外周に積層されている他のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線は、前記ガイド柱の周面の周方向の他部に、前記導線の前記枠体への巻き付け方向の上流側から接触しており、該他部に接触している部分は、前記巻き始め部分に対して鈍角に傾斜していることを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、本開示に係る変成器の製造方法により製造される。
一のコイルの巻き終わり部分から引き出されている導線の、ガイド柱の周面に案内されている部分は、一のコイルの巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜している。他のコイルの巻き始め部分から引き出されている導線の、ガイド柱の周面に案内されている部分は、他のコイルの巻き始め部分に対して鈍角に傾斜している。導線が緩やかに屈曲しているので、導線の屈曲部分に加わる応力を低減して破断を防止することができる。
また、ガイド柱の周面のどこに接触しているかが分かれば、一のコイルの巻き終わり部分から延びる導線と他のコイルの巻き始め部分から延びる導線とを容易に区別することができる。
【0024】
本開示に係る変成器は、前記ガイド柱の前記一部は前記導線の巻き付け方向の上流側から前記導線の引き出し側に向けて前記枠体の周方向に対して傾斜する一の傾斜面であり、前記ガイド柱の前記他部は前記導線の巻き付け方向の上流側から前記導線の引き出し側の逆側に向けて前記枠体の周方向に対して傾斜する他の傾斜面であることを特徴とする。
【0025】
本開示にあっては、ガイド柱の周方向の一部が一の傾斜面であり、ガイド柱の周方向の他部が他の傾斜面である。
一のコイルの巻き終わり部分から引き出されている導線は一の傾斜面に接触している。導線の引き出し時に一の傾斜面に案内されることにより、導線の一の傾斜面に接触している部分は、一のコイルの巻き終わり部分に対して安定的に鈍角に傾斜することができる。
他のコイルの巻き始め部分から引き出されている導線は他の傾斜面に接触している。導線の引き込み時に他の傾斜面に案内されることにより、導線の他の傾斜面に接触している部分は、他のコイルの巻き始め部分に対して安定的に鈍角に傾斜することができる。
【0026】
本開示に係る変成器は、前記枠体の外周に3つ以上の前記コイルが積層されており、複数本の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されており、互いに積層されている3つの前記コイルの内の最も枠体に近い第1のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線及び前記第1のコイルの外周に積層されている第2のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線が接触している前記ガイド柱と、前記第2のコイルの巻き終わり部分から引き出されている前記導線及び前記第2のコイルの外周に積層されている第3のコイルの巻き始め部分から引き出されている前記導線が接触している前記ガイド柱とが互いに異なることを特徴とする。
【0027】
本開示にあっては、第1のコイルの巻き終わり部分及び第2のコイルの巻き始め部分夫々から引き出されている導線が接触するガイド柱と、第2のコイルの巻き終わり部分及び第3のコイルの巻き始め部分夫々から引き出されている導線が接触するガイド柱とは互いに異なる。故に、どのガイド柱に接触しているかが分かれば、どのコイルのどの部分から引き出されている導線なのかを容易に区別することができる。
【0028】
[付記]
本開示に係る変成器は、前記枠体の外周に、全周にわたる溝が設けられており、該溝の側壁に、頂部から底部に向けて切り欠いたような形状の窓部が設けられており、前記窓部の底部に3本以上の前記ガイド柱が前記枠体の周方向に並設されており、前記導線の巻き付け方向の最下流の前記ガイド柱から該ガイド柱に隣り合うガイド柱までの前記枠体の周方向の長さは、前記導線の巻き付け方向の最上流の前記ガイド柱から該ガイド柱に隣り合うガイド柱までの前記枠体の周方向の長さよりも長く、前記複数のコイルは前記溝の底面に積層されており、前記窓部を通して前記導線が引き出されていることを特徴とする。
【0029】
本開示にあっては、枠体の外周に設けられた溝の底面に複数のコイルが積層される。溝の側壁には切り欠き状の窓部が設けられており、窓部を通して導線が溝から引き出されている。
【0030】
窓部の底部に3本以上のガイド柱が枠体の周方向に不等間隔で並設されている。具体的には、導線の巻き付け方向の最下流のガイド柱とこのガイド柱に隣り合うガイド柱との間の間隔は、導線の巻き付け方向の最上流のガイド柱とこのガイド柱に隣り合うガイド柱との間の間隔よりも広い。
故に、この枠体は、最下流のガイド柱に案内されて溝に引き込まれるべき導線を、導線が溝の側壁の内面に接触する位置から導線の巻き付け方向の上流側にできるだけ離れた位置で溝に引き込む場合に好適である。
【発明の効果】
【0031】
本開示の変成器の製造方法及び変成器によれば、コイルを簡易に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施の形態に係る変成器の分解斜視図である。
図2】枠体の上辺部の斜視図である。
図3】コイルボビンの拡大斜視図である。
図4】コイルボビンの拡大平面図である。
図5】コイル形成装置の要部を示す模式図である。
図6】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図7】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図8】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図9】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図10】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図11】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
図12】一次コイルの形成手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0034】
図1は、実施の形態に係る変成器の分解斜視図である。
図中1は変成器であり、変成器1はコイルボビン11、2つの二次コイル12,13、カバー14、及び図示しない2つの巻鉄心を備える。
コイルボビン11は枠体2と一次コイル3,4,5,6とを備える。
【0035】
枠体2は矩形環状をなす。枠体2の四隅は円弧形に湾曲している。枠体2は絶縁体であり、例えば合成樹脂製である。
枠体2の左辺部及び右辺部は枠体2の2つの長辺部であり、枠体2の上辺部及び下辺部は枠体2の2つの短辺部である。枠体2の長辺部に平行な方向は上下方向に対応し、枠体2の短辺部に平行な方向は左右方向に対応する。枠体2の軸長方向は前後方向に対応する。以下では、枠体2の周方向を外周方向という。
【0036】
図2は、枠体2の上辺部の斜視図である。
図1及び図2に示すように、枠体2の外周には溝21が設けられている。溝21は枠体2の全周にわたる。
枠体2の上辺部において、溝21の前側壁21a(側壁)には窓部22が設けられている。窓部22は、前側壁21aを頂部から底部に向けて切り欠いたような矩形状をなす。
【0037】
溝21の前側壁21aと後側壁21bとの間には3つの絶縁壁23が前後方向に並設されている。各絶縁壁23は枠体2の全周にわたり、溝21の底面から枠体2の径方向の外向きに立ち上がっている。
図1に示すように一次コイル3~6は溝21の内側にあり、前から後に向けてこの順に並んでいる。一次コイル3~6夫々は、導線が溝21の底面に外周方向に巻き付けられることによって形成されている。一次コイル3~6夫々を構成する導線は整列巻きされている。
【0038】
一次コイル3は溝21の前側壁21aと最前の絶縁壁23との間に配されている(後述する図3参照)。一次コイル3と一次コイル4との間には最前の絶縁壁23が介在している。一次コイル4と一次コイル5との間には中央の絶縁壁23が介在している。一次コイル5と一次コイル6との間には最後の絶縁壁23が介在している。一次コイル6は溝21の後側壁21bと最後の絶縁壁23との間に配されている。
【0039】
二次コイル12は矩形環状をなし、コイルボビン11の径方向の内側に収められる。二次コイル13は矩形環状をなす。二次コイル13の径方向の内側にコイルボビン11が収められる。二次コイル12,13夫々は、例えば平角線を折り曲げることによって形成されている。
【0040】
カバー14は2つのカバー部材141を備える。各カバー部材141は、互いに左右に隣り合う2つの半円筒を一体に有し、各半円筒の軸長方向は上下に延びる。2つのカバー部材141を組み合わせることによって、2つの円筒を有するカバー14が形成される。
カバー14の左側の円筒は、二次コイル12の内側を通るようにしてコイルボビン11及び二次コイル12,13夫々の左辺部を覆う。同様に、カバー14の右側の円筒は、コイルボビン11及び二次コイル12,13夫々の右辺部を覆う。
カバー14の2つの円筒夫々の外周面に、円筒状の巻鉄心(不図示)が設けられる。
【0041】
図3は、コイルボビン11の拡大斜視図である。図4は、コイルボビン11の拡大平面図である。図3及び図4には枠体2の窓部22の近傍が示されている。図4には変成器1が備える複数の接続端子15がブロック図で示されている。
【0042】
ここで、一次コイル3の構成について詳述する。
一次コイル3は4つのコイル31,32,33,34を備える。コイル31~34は、この順に溝21の底面に積層されている。
【0043】
コイル31の巻き始め部分から窓部22を通して溝21の外部に導線31aが引き出されている。コイル31の巻き終わり部分から窓部22を通して溝21の外部に導線31bが引き出されている。同様に、コイル32~34の巻き始め部分からは導線32a~34aが引き出されている。コイル32~34の巻き終わり部分からは導線32b~34bが引き出されている。
導線31a~34a及び導線31b~34bは、相異なる接続端子15に接続されている。
【0044】
導線31a~34a及び導線31b~34bは、接続端子15を介して図示しない電源回路に接続されるか、又は互いに接続される。例えば導線31a,31bが電源回路に接続された場合、コイル31の巻数と同数の巻き数を有する一次コイル3が電源回路に接続される。導線31a,32bが電源回路に接続され、且つ、導線31b,32aが互いに接続された場合、コイル31,32の巻数の和と同数の巻き数を有する一次コイル3が電源回路に接続される。
【0045】
このように、接続端子15の適切な接続により、所望の巻数の一次コイル3を電源回路に接続することができる。故に、接続端子15の接続状況の変更(いわゆるタップ切り換え)により、一次コイル3~6と二次コイル12,13との巻数比を変更することができる。一次コイル3~4への入力電圧が変動した場合にタップ切り換えを行なうことにより、二次コイル12,13からの出力電圧を一定に保つことができる。
【0046】
図5は、コイル形成装置の要部を示す模式図である。図5には平面視の枠体2が示されている。
図中7はコイル形成装置であり、コイル形成装置7は、回転軸71、回転台72、2つの挟持片73、リール74、及びトラバース75を備える。
回転軸71は前後方向に延び、図示しない軸受により回転可能に支持されている。回転軸71は、図示しないモータに駆動されることにより、軸心を中心に回転する。
【0047】
回転台72は回転軸71の一端部に設けられており、回転軸71と一体的に回転する。回転台72は支持軸721(支持体)を備える。支持軸721は、回転台72の後面から後向きに突出している。
挟持片73夫々は上下左右に延びる板状部材である。2つの挟持片73は、互いに前後に向かい合い、枠体2を前側及び後側から挟み持つ。前側の挟持片73は支持軸721に直接的に支持されており、回転台72と一体的に回転する。後側の挟持片73は、枠体2の内側を通して前側の挟持片73に連結される。
【0048】
2つの挟持片73に挟み持たれた枠体2は回転軸71と同軸に配され、回転軸71の回転に伴って回転する。
ここで、枠体2の上面、左面、下面、及び右面をA面、B面、C面、及びD面と呼ぶ。回転軸71が正面視時計回りに回転することにより、枠体2は、A面、B面、C面、D面、A面…がこの順に上向きになるようにして回転する。
【0049】
リール74は、枠体2に巻き付けるべき導線30を供給する。作業者は、リール74から導線30を引き出し、枠体2の溝21の前側壁21aと最前の絶縁壁23との間の空間に導き入れる。次いで、作業者は、導線30を前側壁21aの後面に接触させ、窓部22を通して導線30を溝21の外部に引き出す。更に、作業者は、溝21から引き出した導線30の始端部分を、前側の挟持片73が備える図示しない治具に一時的に固定する。なお、コイル形成装置7は導線30が挟持片73に一時的に固定される構成に限定されず、例えば導線30が回転台72に設けられている治具に一時的に固定される構成でもよい。
【0050】
導線30の挟持片73への固定後、枠体2が回転することにより、導線30は、挟持片73及び枠体2から外力を受けてリール74から連続的に引き出される。リール74から引き出された導線30は、A面、B面、C面、D面、A面、…の順に外周方向に巻き付けられる。
以下では、導線30の枠体2への巻き付け方向の上流側/下流側を、単に上流側/下流側という。A面における上流側/下流側は、D面側/B面側である。
【0051】
トラバース75は、軸長方向が前後に向くローラであり、前後方向に往復移動可能に設けられている。トラバース75の周面には全周にわたる係合溝751が設けられており、トラバース75の係合溝751が、リール74と枠体2との間に位置している導線30に係合している。係合溝751が枠体2の外周に対向した状態でトラバース75が前後方向に往復移動することにより、導線30が枠体2に巻き付く位置が前後方向に調整される。
本実施の形態のトラバース75は、係合溝751が枠体2よりも前側に適長離隔する位置まで移動することが可能である。
トラバース75の動作は、コイル形成装置7が備える図示しない制御部によって制御される。
【0052】
図2図4に示すように、枠体2は3本のガイド柱24,25,26を備える。
ガイド柱24~26夫々は、窓部22の底部から枠体2の径方向の外向きに立ち上がっている。ガイド柱24~26は外周方向に並設されている。窓部22の左縁部とガイド柱24~26と窓部22の右縁部とが、下流側から上流側にこの順に一列に並んでいる。
窓部22の左縁部とガイド柱24との間隔は最も狭く、ガイド柱24とガイド柱25との間隔が最も広い。ガイド柱25とガイド柱26との間隔、及びガイド柱26と窓部22の右縁部との間隔は同程度である。
【0053】
ガイド柱24は凧形の断面形状を有する。ガイド柱24の断面の2つの対角線の内、長い方は外周方向に沿い、短い方は外周方向に直交する。ガイド柱24の断面の2つの長辺は上流側に配されている。
以下では、ガイド柱24の4つの側面の内、上流側且つ前側にある側面を側面24aといい、上流側且つ後側にある側面を側面24bという。
側面24aは上流側から前側に向けて外周方向に対して傾斜する傾斜面である。側面24bは上流側から後側に向けて外周方向に対して傾斜する傾斜面である。
【0054】
ガイド柱25は菱形の断面形状を有する。ガイド柱25の断面の2つの対角線の内、長い方は外周方向に沿い、短い方は外周方向に直交する。ガイド柱25は、ガイド柱24の側面24a,24bに対応する側面25a,25bを有する。
ガイド柱26の構成はガイド柱25の構成と同様であり、ガイド柱26は側面26a,26bを有する。
【0055】
ここで、一次コイル3の形成手順について説明する。
図6図12は、一次コイル3の形成手順を説明するための模式図である。図6図12には枠体2の窓部22近傍が平面視で示されている。
【0056】
上述したように、作業者は、リール74から引き出した導線30を溝21の前側壁21aと最前の絶縁壁23との間の空間に導き入れ、前側壁21aの後面に接触させ、窓部22を通して溝21の外部に引き出す(図5及び図6に示す記号A参照)。このとき、作業者は導線30が窓部22の左縁部と最下流のガイド柱24との間を通るようにする。
溝21から引き出した導線30の始端部分を前側の挟持片73に一時的に固定した後、作業者は回転軸71を駆動するモータを作動させる。この結果、枠体2が回転を始める。
【0057】
枠体2の回転により、まず、導線30の1巻き目が前側壁21aに隣接する位置に配される。枠体2が1回転した場合、トラバース75は導線30の直径に等しい長さだけ後側に移動する。この結果、導線30の2巻き目は導線30の1巻き目の後側に隣接する位置に配される。
導線30が最前の絶縁壁23の前面に隣接するまでトラバース75は枠体2の1回転毎に後側に移動する。導線30が最前の絶縁壁23の前面に隣接するようにして1巻きされた後、トラバース75は導線30が前側壁21aに隣接するまで枠体2の1回転毎に前側に移動する。このようにトラバース75が前後方向に往復移動することにより、導線30が整列巻きされる。
【0058】
以上のようにして、溝21の底面に導線30が所定回巻き付けられてコイル31が形成される。コイル31の巻き始め部分及び巻き終わり部分夫々は前側壁21aの後面に隣接して外周方向に沿って延びる。
【0059】
コイル31の形成後、図6に示すように、トラバース75は、係合溝751が支持軸721に対向する位置まで前側に移動することにより、窓部22を通して導線30を溝21の外部に引き出す(記号B参照)。このとき、トラバース75は、導線30がガイド柱24,25間を通るようにする。
枠体2は回転し続けているので、ガイド柱24,25間を通って引き出された導線30は、ガイド柱24の側面24aに上流側から接触しつつ支持軸721に巻き掛けられる。
【0060】
導線30の引き出し後、枠体2が1回転した場合、図7に示すように、トラバース75は、係合溝751が枠体2の前側壁21aよりも後側の部分に対向する位置まで後側に移動することにより、窓部22を通して導線30を溝21に引き込む(記号C参照)。このとき、トラバース75は、導線30がガイド柱24,25間のガイド柱24よりもガイド柱25に近い位置を通るようにする。
枠体2は回転し続けているので、ガイド柱24,25間を通って引き込まれた導線30は、図8に示すように、ガイド柱24の側面24bに上流側から接触しつつコイル31の外周に巻き付く。
【0061】
導線30が引き込まれた後、枠体2の回転及びトラバース75の往復移動により、コイル31の外周に導線30が所定回巻き付けられてコイル32が形成される。コイル31の場合と同様に、コイル32の巻き始め部分及び巻き終わり部分夫々は前側壁21aの後面に隣接して外周方向に沿って延びる。
【0062】
コイル32の形成後、図9に示すように、トラバース75は、前側への移動により、窓部22を通して導線30を溝21の外部に引き出す(記号D参照)。このとき、トラバース75は、導線30がガイド柱25,26間を通るようにする。
枠体2は回転し続けているので、ガイド柱25,26間を通って引き出された導線30は、ガイド柱25の側面25aに上流側から接触しつつ支持軸721に巻き掛けられる。
【0063】
導線30の引き出し後、枠体2が1回転した場合、図10に示すように、トラバース75は、後側への移動により、窓部22を通して導線30を溝21に引き込む(記号E参照)。このとき、トラバース75は、導線30がガイド柱25,26間を通るようにする。
枠体2は回転し続けているので、ガイド柱25,26間を通って引き込まれた導線30は、ガイド柱25の側面25bに上流側から接触しつつコイル32の外周に巻き付く。
【0064】
同様にして、コイル32の外周に導線30が所定回巻き付けられてコイル33が形成される。
コイル33の形成後、図11に示すように、トラバース75は、ガイド柱26と窓部22の右縁部との間を通して導線30を溝21の外部に引き出す(記号F参照)。トラバース75は、引き出した導線30を、ガイド柱26の側面26aに上流側から接触させつつ支持軸721に巻き掛ける。
導線30の引き出し後、枠体2が1回転した場合、トラバース75は、ガイド柱26と窓部22の右縁部との間を通して導線30を溝21に引き込む(記号G参照)。トラバース75は、引き込まれた導線30を、ガイド柱26の側面26bに上流側から接触させつつコイル33の外周に巻き付ける。
【0065】
同様にして、コイル33の外周に導線30が所定回巻き付けられてコイル34が形成される。以上の結果、前側壁21aと最前の絶縁壁23との間にて溝21の底面にコイル31~34が積層される。即ち、一次コイル3が形成される。
コイル34の形成後、図12に示すように、トラバース75は、ガイド柱26と窓部22の右縁部との間を通して導線30を溝21の外部に引き出す(記号H参照)。導線30の引き出し後、引き出された導線30を支持軸721に巻き掛けることなく、枠体2の回転が停止する。
【0066】
枠体2の回転の停止後、作業者は、ガイド柱26と窓部22の右縁部との間を通して最後に引き出された導線30をリール74から切り離す。
このとき切り離された導線30(図12に示す記号H参照)は、コイル34の巻き終わり部分から引き出されている導線34bである(図3及び図4参照)。作業者は、導線34bが窓部22の右縁部に接触するようにして、導線34bを、例えば図示しない粘着テープを用いて枠体2の適宜の箇所に一時的に固定する。
挟持片73に固定してある導線30(図12に示す記号A参照)は、コイル31の巻き始め部分から引き出されている導線31aである(図3及び図4参照)。
【0067】
作業者は、ガイド柱24,25間から引き出されて支持軸721に巻き掛けられている導線30(図8に示す記号B,C参照)を適宜の位置で切断する。この結果、コイル31の巻き終わり部分から引き出された導線31bとコイル32の巻き始め部分から引き出された導線32aとが得られる(図3及び図4参照)。作業者は、導線31b,32aがガイド柱24の側面24a,24bから離れないようにして、導線31b,32aを例えば図示しない粘着テープを用いて枠体2の適宜の箇所に一時的に固定する。
【0068】
また、作業者は、ガイド柱25,26間から引き出されて支持軸721に巻き掛けられている導線30(図10に示す記号D,E参照)を適宜の位置で切断する。この結果、コイル32の巻き終わり部分から引き出された導線32bとコイル33の巻き始め部分から引き出された導線33aとが得られる(図3及び図4参照)。作業者は、導線32b,33aがガイド柱25の側面25a,25bから離れないようにして、導線32b,33aを導線31b,32aの場合と同様に枠体2に一時的に固定する。
【0069】
更に、作業者は、ガイド柱26と窓部22の右縁部との間から引き出されて支持軸721に巻き掛けられている導線30(図11に示す記号F,G参照)を適宜の位置で切断する。この結果、コイル33の巻き終わり部分から引き出された導線33bとコイル34の巻き始め部分から引き出されてた導線34aとが得られる(図3及び図4参照)。作業者は、導線33b,34aがガイド柱26の側面26a,26bから離れないようにして、導線33b,34aを導線31b,32aの場合と同様に枠体2に一時的に固定する。
【0070】
導線32a~34a及び導線31b~34bの固定後、再び枠体2が回転して枠体2に一次コイル4~6が順次形成される。一次コイル4~6の形成後、作業者は枠体2をコイル形成装置7から取り外す。以上の結果、コイルボビン11が得られる。
なお、一次コイル4~6の形成は、導線34bの固定後、導線32a~34a及び導線31b~33bの固定の前に行なわれてもよい。或いは、一次コイル4~6の形成後に一次コイル3が形成されてもよい。
【0071】
作業者は、変成器1の組み立て時に、導線31a~34a及び導線31b~34b夫々を相異なる所定の接続端子15に接続する。
窓部22の左縁部にはコイル31の導線31aが接触しており、ガイド柱24の側面24aにはコイル31の導線31bが接触している。また、ガイド柱24の側面24bにはコイル32の導線32aが接触しており、ガイド柱25の側面25aにはコイル32の導線32bが接触している。このように、導線31a~34a及び導線31b~34b夫々が枠体2の相異なる所定の部位に接触しているので、作業者は、導線31a~34a及び導線31b~34b夫々を容易に区別することができる。故に、導線31a~34a及び導線31b~34b夫々を正しい接続端子15に接続することができる。
【0072】
接続端子15との接続後も、導線32a~34a及び導線31b~33b夫々はガイド柱24~26の相異なる所定の部位に接触している。
コイル31の巻き終わり部分から引き出されている導線31bは、コイル31の巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜している。コイル32の巻き始め部分から引き出されている導線32aは、コイル32の巻き始め部分に対して鈍角に傾斜している。導線32aが緩やかに屈曲しているので、導線32aの屈曲部分に加わる応力を低減して破断を防止することができる。
【0073】
同様に、コイル32の巻き終わり部分から引き出されている導線32bは、コイル32の巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜している。コイル33の巻き始め部分から引き出されている導線33aは、コイル33の巻き始め部分に対して鈍角に傾斜している。コイル33の巻き終わり部分から引き出されている導線33bは、コイル33の巻き終わり部分に対して鈍角に傾斜している。コイル34の巻き始め部分から引き出されている導線34aは、コイル34の巻き始め部分に対して鈍角に傾斜している。
故に、導線33a,34a及び導線32b,33b夫々の屈曲部分に加わる応力を低減して破断を防止することができる。
【0074】
以上のような変成器1の製造方法によれば、コイル31の形成開始からコイル34の形成終了までの間、枠体2が回転し続ける。
故に、コイル31の巻き終わりとコイル32の巻き始めとの間に、枠体2の回転を止める必要がない。また、導線30を支持軸721に巻き掛けることで導線30が一時的に固定されるので、導線30を切断して導線31b,32aを設け、設けた導線31b,32aを個別に一時的に固定する必要がない。
【0075】
コイル32の巻き終わりとコイル33の巻き始めとの間、及びコイル33の巻き終わりとコイル34の巻き始めとの間についても、枠体2の回転を止める必要がなく、導線30を切り離す必要がない。また、導線30の一時的な固定を1回ずつ行なえばよい。
以上の結果、コイル31~34を簡易に積層することができる。
【0076】
ガイド柱24~26の側面24a~26aは導線30の引き出しを案内し、ガイド柱24~26の側面24b~26bは導線30の引き込みを案内する。故に、導線30の引き出し及び引き込みが夫々円滑に行なわれる。
溝21の外部に引き出した導線30を巻き掛ける部材として支持軸721が用いられ、導線32a~34a及び導線31b~33b夫々を固定する相異なる部材を別途備える必要がない。故に、コイル形成装置7の構成を簡略化することができる。
【0077】
ところで、導線30の引き込みの勢いにより、溝21に引き込まれた導線30には後側に膨らむような湾曲が生じやすい。しかしながら、導線30が溝21に引き込まれる位置が、窓部22の左縁部から外周方向の上流側に適宜に離れていれば、導線30が前側壁21aの内面に接する前に、導線30に対して外周方向に加わる外力によって導線30の湾曲が解消される。
【0078】
図7に示すように、最下流のガイド柱24に案内されて溝21に引き込まれるべき導線30は、ガイド柱24よりもガイド柱25に近い位置を通して溝21に引き込まれる。しかも、ガイド柱24とガイド柱25との間隔が広い。従って、導線30が溝21に引き込まれる位置は、窓部22の左縁部から外周方向の上流側に十分に離れている。故に、導線30の湾曲が解消してから、導線30が前側壁21aの内面に接触することができる。
以上の結果、導線30の湾曲が導線30の整列巻きを阻害する虞がない。
【0079】
なお、一次コイル3において、下層/上層のコイルから延びる導線は下流/上層のガイド柱に接触しているが、これに限定されない。例えば、下層/上層のコイルから延びる導線が下流/上流のガイド柱に接触してもよい。
ガイド柱24~26夫々は四角柱であるが、これに限定されない。例えば、ガイド柱24は側面24a,24bを有する三角柱又は五角柱等の多角柱でもよい。ガイド柱24は多角柱に限定されず、例えば楕円柱でもよいが、側面24a,24bを有することが望ましい。導線31b,32aが側面24a,24bに接触することにより、導線31b,32aを外周方向に対して安定的に傾斜させることができる。以上のことは、ガイド柱25,26夫々についても同様である。
【0080】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 変成器; 11 コイルボビン; 12,13 二次コイル; 14 カバー; 141 カバー部材; 15 接続端子; 2 枠体; 21 溝; 21a 前側壁(側壁); 21b 後側壁; 22 窓部; 23 絶縁壁; 24,25,26 ガイド柱; 24a,24b,25a,25b,26a,26b 側面(周面); 3 一次コイル; 30 導線; 31,32,33,34 コイル; 31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b 導線; 4,5,6 一次コイル; 7 コイル形成装置; 71 回転軸; 72 回転台; 721 支持軸(枠体の外部にある部材,支持体); 73 挟持片; 74 リール; 75 トラバース; 751 係合溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12