(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180878
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20221130BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20221130BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G21/32 B
E04G5/00 301E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087615
(22)【出願日】2021-05-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】503258867
【氏名又は名称】株式会社ナベカヰ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰啓
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD64
(57)【要約】
【課題】解体の対象構造物の対向する外壁の外側に設けた垂直支持構造体と、対向する垂直支持構造体の最上部間に架け渡す上部支持体とで構成する飛散防止養生体支持体で飛散防止養生体を支持することにより、比較的軽量で盛り替えも容易な飛散防止養生システム及び構造物解体方法を提供する。
【解決手段】本発明による飛散防止養生システムは、解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材を備える基本構造体を垂直方向に複数積み上げて形成した少なくとも一対の垂直支持構造体と、少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に架け渡され、対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体とを備える飛散防止養生体支持体と、飛散防止養生体支持体の一部を一時的に吊り下げる吊り下げ手段と、飛散防止養生体とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材を備える基本構造体を垂直方向に複数積み上げて形成した少なくとも一対の垂直支持構造体と、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に架け渡され、前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体とを備える飛散防止養生体支持体と、
前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を一時的に吊り下げる吊り下げ手段と、
前記飛散防止養生体とを有することを特徴とする飛散防止養生システム。
【請求項2】
前記飛散防止養生体支持体が複数ある場合、少なくとも一対の隣接する前記飛散防止養生体支持体の間は所定の距離だけ離隔して設置されることを特徴とする請求項1に記載の飛散防止養生システム。
【請求項3】
前記垂直支持構造体は地上から対象構造物の最上階より高く前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されるか、又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上から前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されること特徴とする請求項1又は2に記載の飛散防止養生システム。
【請求項4】
前記吊り下げ手段は、前記対象構造物の最上階の解体後、前記飛散防止養生体支持体の中間高さの基本構造体を除去するか、前記中間支持体の下層階への盛り替えの間に一時的に前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を吊り下げるものであることを特徴とする請求項3に記載の飛散防止養生システム。
【請求項5】
解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材からなる基本構造体を垂直方向に複数積み上げて少なくとも一対の垂直支持構造体を形成した後、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体を架け渡して飛散防止養生体支持体を形成する段階と、
前記飛散防止養生体支持体の上方から前記飛散防止養生体で前記対象構造物の最上階を覆う段階と、
前記対象構造物の最上階を解体する段階と、
前記飛散防止養生体支持体を下層に盛り替える段階と、を有し、
前記垂直支持構造体は地上から積み上げられるか又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上に積み上げられ、
地上から積み上げられた場合は、中間部から上の前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で中間部の下側の数段分の前記基本構造体を除去した後、一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行い、
前記中間支持体の上に積み上げられた場合は、前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で前記中間支持体を下層階に盛り替えてから一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行うことを特徴とする構造物解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法に関し、特に解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に積み上げて設けた垂直支持構造体と、対向する垂直支持構造体の最上部間に架け渡す上部支持体とで構成する飛散防止養生体支持体で飛散防止養生体を支持することにより、比較的軽量で盛り替えも容易な飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに建築されてきた高層ビルも、老朽化や、耐用年数はあるものの使用環境の変化、再開発などの要因により建て替えのために解体するニーズが起こりつつある。
高層ビルなどの対象構造物を解体する場合、解体作業中の周辺の安全性確保のため、対象構造物の周囲及び上部をシートやネットなどの飛散防止養生体で覆い、解体の際に発生する破片などの飛散を防止することが行われる。高層ビルなどの対象構造物の解体は、通常解体用の重機を最上階に吊り上げて設置し、上層階から順に解体を進めていく。これに伴い、解体された上層階の外壁周囲に構築された足場の解体や飛散防止養生体の撤去などが行われるが、対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体については撤去することができないため、対象構造物の解体状況に応じて順次下層に下降させていく必要がある。
【0003】
対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体は、対象構造物の周囲に設置した足場に被せるように取付けられれば、足場の解体に伴い飛散防止養生体の高さも下がっていくため、解体工事の管理運営が容易となる。しかし対象構造物より自立して高く設置する足場の高さは2段までとの制約があり、一般的な高さ1.8mの足場の場合、2段でも高さは3.6mとなり、最上階に設置する重機の作業空間を確保するには高さが足りない。このため大型の対象構造物の解体には、足場とは別に飛散防止養生体を支持するトラスなどの構築物を設置し、その上から飛散防止養生体を覆うような工法が行われる。このため飛散防止養生体を対象構造物の解体状況に応じて順次下層階に下降させていくのは、重量のあるトラスを下降させる作業を伴うため容易ではないという課題がある。
【0004】
特許文献1には、解体される建屋の外壁の外側に建屋の外壁より高く突設された作業足場と、作業足場に作業足場より高く突設されるように固定された養生シート支持柱と、養生シート支持柱に張架具合を調整可能に係留された飛散防止養生シートと、を備え、上層階から下層階への解体の進行に対応して作業足場が上方から漸次に撤去される場合に、養生シート支持柱を作業足場に沿って下方に移動させる上方飛散防止養生システムが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、足場よりも高く突設される養生シート支持柱により、足場より高い位置に飛散防止養生体を設置できるが、一方で、対象構造物の上部には飛散防止養生体を支持するものがないため、対象構造物の中央部分での飛散防止養生体の撓みが避けられないことや、着雪や強風などの影響を受けやすく、養生シート支持柱を介して足場に想定外の負荷がかかりやすいなどの課題が残る。
【0006】
特許文献2には、ガイドレールと昇降載置台からなり、高層ビルの両側面に設置され、地上から屋上に伸びる工事用エレベータと、所定長さのトラス鋼材からなり、連結されて、高層ビルの屋上に架け渡され、工事用エレベータの昇降載置台に取り付けられる複数の屋根トラスと、屋根トラスに取り付けられる飛散防止ネット及びシートとを備え、クレーンで揚重され、屋上に投入された重機により、地上に向かって高層ビルを解体する際、フロア解体の進行に合わせて屋根トラスが工事用エレベータにより下降される飛散防止養生システムが開示されている。
【0007】
特許文献2によれば、屋根トラスに取り付けられる飛散防止ネット及びシートは、工事用エレベータにより屋根トラスとともに容易に下降できるため非常に効率的に解体工事を進めることができる。しかし少なくとも対象構造物全体をカバーできる複数の屋根トラスを支える複数の工事用エレベータを設置する必要があり、設置の手間がかかるとともにシステムの費用がかさむという課題がある。
そこで足場とは別に強度を有し、比較的簡単に設置でき、飛散防止養生体を確実に支持するとともに、解体工事の進展に従い、飛散防止養生体を下降させるのも比較的容易に行える飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-190142号公報
【特許文献2】特開2019-167813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に積み上げて設けた垂直支持構造体と、対向する垂直支持構造体の最上部間に架け渡す上部支持体とで構成する飛散防止養生体支持体で飛散防止養生体を支持することにより、比較的軽量で盛り替えも容易な飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による飛散防止養生システムは、解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材を備える基本構造体を垂直方向に複数積み上げて形成した少なくとも一対の垂直支持構造体と、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に架け渡され、前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体とを備える飛散防止養生体支持体と、前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を一時的に吊り下げる吊り下げ手段と、前記飛散防止養生体とを有することを特徴とする。
【0011】
前記飛散防止養生体支持体が複数ある場合、少なくとも一対の隣接する前記飛散防止養生体支持体の間は所定の距離だけ離隔して設置されることが好ましい。
前記垂直支持構造体は地上から対象構造物の最上階より高く前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されるか、又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上から前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されることが好ましい。
【0012】
前記吊り下げ手段は、前記対象構造物の最上階の解体後、前記飛散防止養生体支持体の中間高さの基本構造体を除去するか、前記中間支持体の下層階への盛り替えの間に一時的に前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を吊り下げるものであることが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法は、解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材からなる基本構造体を垂直方向に複数積み上げて少なくとも一対の垂直支持構造体を形成した後、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体を架け渡して飛散防止養生体支持体を形成する段階と、前記飛散防止養生体支持体の上方から前記飛散防止養生体で前記対象構造物の最上階を覆う段階と、前記対象構造物の最上階を解体する段階と、前記飛散防止養生体支持体を下層に盛り替える段階と、を有し、前記垂直支持構造体は地上から積み上げられるか又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上に積み上げられ、地上から積み上げられた場合は、中間部から上の前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で中間部の下側の数段分の前記基本構造体を除去した後、一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行い、前記中間支持体の上に積み上げられた場合は、前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で前記中間支持体を下層階に盛り替えてから一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法によれば、対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できるように飛散防止養生体を設置するのに、必要な部分のみに飛散防止養生体支持体を設置するため、必要な部材も少なくて済み、その分飛散防止養生体支持体を軽量に作製することができるので、盛り替えも工事用エレベータなどを使用せず、クレーン又はチェーンブロック等の簡単な吊り下げ手段を使用して一時的に吊り下げることで容易に行うことが可能である。
【0015】
本発明に係る飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法によれば、飛散防止養生体支持体は対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直支持構造体が位置するように設置され、対象構造物の最上階全体の上を覆うわけではなく、飛散防止養生体支持体が複数設けられるとしても、隣接する飛散防止養生体支持体の間は所定の距離離隔するように設けられるので、必要に応じ飛散防止養生体を部分的にスライドさせるなどして隣接する飛散防止養生体支持体の間を開口させ、開口させた部分を通して別に設けたクレーンなどを使用して解体用物資や機材の搬入搬出を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による飛散防止養生システムの構成を正面及び側面より概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による飛散防止養生システムの構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態による飛散防止養生システムの地上付近の構造を拡大して示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による飛散防止養生システムの中間高さ部分を拡大して示す平面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムの構成を正面及び側面より概略的に示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムの外壁開口部付近を拡大して示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による飛散防止養生体を下降させる方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る飛散防止養生システム及びそれを用いた構造物解体方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による飛散防止養生システムの構成を正面及び側面より概略的に示す図であり、
図2は、本発明の実施形態による飛散防止養生システムの構成を概略的に示す平面図である。
図1において、
図1(a)は解体の対象構造物の正面側から見た図であり、
図1(b)は側面側から見た図である。尚、
図1(a)、
図1(b)において、それぞれ手前側に位置する対象構造物の外壁や、足場、防音パネルなどは省略して示す。また
図2では上部を覆う飛散防止養生体は、図を見やすくするため一部のみを記載する。
【0018】
図1、2を参照すると、本発明の実施形態による飛散防止養生システム1は、解体の対象構造物100の対向する外壁101の所定部分の外側に形成した対をなす垂直支持構造体14と、対をなす垂直支持構造体14の最上部に架け渡される上部支持体15とを備える飛散防止養生体支持体10と、飛散防止養生体支持体10の上部から対象構造物100の上部を覆うように設けられる飛散防止養生体20とを有する。また対象構造物100の周囲には、外壁101及び垂直支持構造体14の外周を囲むように構成する足場50と、足場50の外周側に取り付ける防音パネル25とを備える。
【0019】
対象構造物100を解体する際、解体作業中の周辺の安全性確保のため、対象構造物100の周囲及び上部をシートやネットなどの飛散防止養生体20で覆う必要があり、周囲に関しては対象構造物100を上層階から解体するのに合わせて、足場50及び防音パネル25を順次撤去していけばよい。しかし、対象構造物100の上部を覆う飛散防止養生体20については、対象構造物100の解体に合わせて順次下降させていく必要がある。そのため、
図1、2には示さないが、本発明の実施形態による飛散防止養生システム1は、対象構造物100の解体に伴って飛散防止養生体20を下降させる際、一時的に飛散防止養生体支持体10を吊り下げるための吊り下げ手段をさらに備える。
【0020】
本発明の実施形態による飛散防止養生システム1は、吊り下げ手段を使用することにより、飛散防止養生体20を下降させるための工事用エレベータを設置することがなく、比較的軽量で安価な構成で、盛り替えも容易な構造物解体方法を実現可能とする。盛り替えについては
図7を参照して後述する。
【0021】
図1の飛散防止養生システム1は、垂直支持構造体14を地上から構築する実施形態を示す。垂直支持構造体14は、垂直方向に複数立設される柱状部材11と、複数の柱状部材11同士を水平方向に連結する複数の水平部材12を備える基本構造体13を、垂直方向に複数積み上げて形成する。実施形態では水平部材12に加えて柱状部材11同士を斜め方向に連結する筋交いを含め、4本の柱状部材11により全体的に四角柱状に組み合わされた基本構造体13を使用する。このような基本構造体13はボックストラスとも称され、長さの異なる定型化されたものが販売またはレンタル部材として流通しており、基本構造体13は、こうした流通されるボックストラスを使用してもよい。基本構造体13を垂直方向に複数積み上げて形成する垂直支持構造体14は、1種類の基本構造体13を積み上げてもよいが、一実施形態では長さの異なる基本構造体13を組み合わせて使用する。
【0022】
積み上げた基本構造体13同士は、それぞれの柱状部材11の端部に備えるフランジ部をボルト、ナットで締結することにより互いに連結される。垂直支持構造体14の最下端となる地上に設置する基本構造体13は、ジャッキベースなどを使用して複数の柱状部材11がすべて地上にきちんと接地するように調整して固定する。
【0023】
垂直支持構造体14は、対象構造物100の外壁101に沿って垂直に形成するが、対象構造物100が高階層の場合など垂直支持構造体14の高さが高くなる場合は、対象構造物100の外壁101に取り付け垂直支持構造体14を支持する補強部材を設けてもよい。
【0024】
図2に示すように対象構造物100の外周には足場50が設置され、足場50の外周にはさらに防音パネル25が設置される。防音パネル25は解体作業中の騒音が外部に漏洩するのを防止するとともに、解体に伴い発生するコンクリート片などの解体物や粉じんが、外部に飛散するのを防止する。
図1、2では防音パネル25を使用するとしたが、防音パネル25の代わりに防音シートを使用してもよい。対象構造物100の対向する外壁101の所定部分の外側には垂直支持構造体14が設置されるため、垂直支持構造体14のさらに外側に足場50を設けると、足場50と外壁101の間の距離が開きすぎて作業性が低下する上、安全面でも好ましくない。また垂直支持構造体14が設置される部分だけ外側に回避するように突出させて足場50を設けてもよいが、足場50の構造が複雑になる上、防音パネル25の設置にも支障が出る。
【0025】
そこで本発明の実施形態による飛散防止養生システム1では、足場50は対象構造物100の外壁101に沿って外壁101から一定の離隔距離で設置し、垂直支持構造体14が設置される部分では
図4を参照して後述するように、足場50の鋼製布板の設置幅を狭めることで通路を確保しつつ、足場50が部分的に外側に突出することを回避する。
【0026】
図1(a)では対象構造物100の手前側と奥側で対となるようにして6対の垂直支持構造体14が設置された状態を示す。それぞれの対となる手前側と奥側の垂直支持構造体14の最上部には
図1(b)に示すように上部支持体15が架け渡される。1対の垂直支持構造体14と上部支持体15により1つの飛散防止養生体支持体10が形成される。上部支持体15は、一体の構造体としてもよいが、実施形態では垂直支持構造体14と同様に基本構造体13を連結して構成する。上部支持体15も流通している様々な寸法のボックストラスを組み合わせて使用してもよい。
図1(b)では上部支持体15は水平な梁状の形状であるように示したが、上部支持体15は飛散防止養生体20を支持する役割を果たすためのものであり、切妻屋根の様な山型の形状のものとしてもよい。
【0027】
飛散防止養生体支持体10を複数設置する場合、それぞれの飛散防止養生体支持体10は独立して設置してもよいが、一実施形態では隣接する飛散防止養生体支持体10同士を連結部材16で連結し、4つの垂直支持構造体14で支持される組み合わせ構造とすることで水平方向の外力に対して耐性のある構造とする。
【0028】
また、飛散防止養生体支持体10を複数設置する場合、少なくとも一対の隣接する飛散防止養生体支持体10の間は所定の距離Lだけ離隔して設置する。これは対象構造物100を解体するのに必要な重機60や機材を、図示しないクレーンなどで屋上に揚重したり、大型の解体部材を撤去したりするのに必要な作業空間を確保するためである。一実施形態では所定の距離Lは12mである。但し、所定の距離Lは解体する対象構造物100の大きさや使用する重機60の種類などによって適宜変更可能であり、12mより大きくても小さくても構わない。
【0029】
更に、一実施形態では、上部支持体15の上に飛散防止養生体20用のガイドレールやガイドワイヤを架け渡し、ガイドレールやガイドワイヤに沿って飛散防止養生体20がスライドし、全体若しくは部分的に開閉するように構成し、解体作業中は、飛散防止養生体20を閉じて解体時に発生する破片等の飛散を防止し、揚重や搬出などの必要な場合のみ飛散防止養生体20を開いて作業を行う。
【0030】
対象構造物100は、重機60などを使用して上層階から順番に下層階に向かって解体を進めていくので、解体の際、重機60の稼働エリアを確保するため、垂直支持構造体14は対象構造物100の最上階より高く、対象構造物100の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成される。一実施形態では、垂直支持構造体14は、重機60が作業する階の床面から約9mの高さの作業空間を確保するように形成される。
【0031】
図3は、本発明の実施形態による飛散防止養生システムの地上付近の構造を拡大して示す図である。
図3を参照すると、対象構造物100の外壁101に沿って地上から基本構造体13を積み上げた垂直支持構造体14が形成され、垂直支持構造体14の外側には足場50が形成されるが、外壁101に沿って水平方向から見ると垂直支持構造体14と足場50とは部分的に重複する。このような構成とすることで足場50と外壁101との間隔を抑制することができる。一実施形態では外壁101から垂直支持構造体14の内側の柱状部材11の中心までの距離は100mm、外壁101から外側の柱状部材11の中心までの距離は600mmであり、外壁101から足場50までの間隔は400mmである。
【0032】
足場50は、建枠51の間をブレース53で連結し、2つの建枠51に鋼製布板52を架け渡して組み上げる一般的な建枠足場50を使用する。建枠51の外周側の脚部に養生クランプ55を介して防音パネル25が取り付けられる。実施形態では、垂直支持構造体14の設置される部分に設けられる足場50については、2つの建枠51に架け渡す鋼製布板52を設置する幅を、他の部分より狭くすることにより、足場50と垂直支持構造体14との干渉を防止する。
【0033】
図4は本発明の実施形態による飛散防止養生システムの中間高さ部分を拡大して示す平面図である。
図4を参照すると、垂直支持構造体14は柱状部材11が正方形の4隅に立設する正四角柱で構成される。足場50は、垂直支持構造体14が設けられない部分では、通常の組み立て方で、隣接する建枠51の両側にそれぞれブレース53を取り付け、建枠51の上面に鋼製布板52を設置する。垂直支持構造体14の設置される部分では、垂直支持構造体14を挟む建枠51の外周側は通常にブレース53を取り付けるが、内周側については垂直支持構造体14の内部を通すようにしてブレース53を取り付ける。しかし垂直支持構造体14を構成する基本構造体13には水平部材12と筋交いが備えられているため、場所によっては水平部材12や筋交いが干渉してブレース53を設置できない。そのような場合は、隣接する建枠51を斜めに連結するブレース53に代わり、隣接する建枠51の上部同士を水平につなぐ補強材を設置する。しかし、ブレース53も水平につなぐ補強材も設置できない場合は、後述する足場壁つなぎを設置して補強し、これらを省略してもよい。
【0034】
また少なくとも垂直支持構造体14の設置される部分では、他の部分の足場50より鋼製布板52の設置幅を低減させる。具体的には、他の部分より幅の狭い鋼製布板52を使用するか、鋼製布板52を複数枚で構成する場合は他の部分より設置する枚数を減らすことで足場50と垂直支持構造体14との干渉を防止する。しかし、鋼製布板52の設置幅が狭いとはいえ、
図4のような配置では通路幅としては約2/3が残っており十分に通行できる幅となっている。足場50と垂直支持構造体14とは互いに干渉しないように設置されることにより、それぞれが独立していることから、飛散防止養生体20を下降させる際、後述するように足場50にあまり手を加えることなく基本構造体13を部分的に撤去するのが容易となる。
【0035】
このように垂直支持構造体14が設置される部分に対応する足場50では、ブレース53が部分的に設置できないことがあることや鋼製布板52の設置幅が少ないことから、他の部分に比べて強度が低下する。そこで実施形態では垂直支持構造体14に隣接する建枠51の少なくとも一方には外壁101に固定して足場50を補強する足場壁つなぎ54を設置する。足場壁つなぎ54は1段ごとに建枠51に固定してもよいし、建枠51の数段ごとに設けてもよい。
【0036】
図5は、本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムの構成を正面及び側面より概略的に示す図である。
図5(a)は解体の対象構造物の正面側から見た図であり、
図5(b)は側面側から見た図である。
図5(a)、
図5(b)において、それぞれ手前側に位置する足場、防音パネルなどは省略して示す。また手前側に位置する外壁も開口部の位置のみを示す。
【0037】
図5を参照すると、本発明の他の実施形態による飛散防止養生システム2は、解体の対象構造物100の対向する外壁101の所定部分の外側に形成した対をなす垂直支持構造体14と、対をなす垂直支持構造体14の最上部に架け渡される上部支持体15とを備える飛散防止養生体支持体10と、飛散防止養生体支持体10の上部から対象構造物100の上部を覆うように設けられた飛散防止養生体20とを有する。この点において飛散防止養生システム2は、
図1に示す飛散防止養生システム1と同様である。飛散防止養生システム2が飛散防止養生システム1と相違するのは、飛散防止養生システム1では垂直支持構造体14が地上から構築されているのに対し、飛散防止養生システム2は中間階から上部にのみ形成されている点である。このため、飛散防止養生システム2は対象構造物100の中間階の開口部に、開口部を介して外壁101の外に張り出す中間支持体30を備える。
【0038】
図5に示す実施形態では、重機60が作業する最上階の下の階に中間支持体30が設置され、垂直支持構造体14は、中間支持体30の上から対象構造物100の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成される。
中間支持体30の上に積み上げられた垂直支持構造体14に関しては
図1に示す飛散防止養生システム1と変わらず、少なくとも一対の隣接する飛散防止養生体支持体10の間に所定の距離Lだけ離隔するなどの構成も変わらないため飛散防止養生システム1で説明した内容と重複する説明は省略する。
【0039】
図6は、本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムの外壁開口部付近を拡大して示す図である。
図6(a)は解体の対象構造物の正面側から見た図であり、
図6(b)は側面側から見た図である。
図6を参照すると、中間支持体30は、外壁101を挟み込むようにして外壁101に直交する方向の位置を固定する壁固定部材31、外壁101の開口部の左右の壁に突き当たるように水平方向に設置され、外壁101に平行する方向の位置を固定する開口枠固定部材32、及び外壁101の外に張り出す張り出し支持部材33を備える。
【0040】
垂直支持構造体14は張り出し支持部材33の上に取り付けられる。垂直支持構造体14の外側には足場50が形成される。足場50は地上から構築され、この場合も
図3に示す飛散防止養生システム1と同様、外壁101に沿って水平方向から見ると垂直支持構造体14と足場50とは部分的に重複する。そこで飛散防止養生システム2でも垂直支持構造体14の設けられる位置に対応する足場50では、飛散防止養生システム1と同様、垂直支持構造体14を構成する基本構造体13の水平部材12や筋交いが干渉して設置が困難な場合は内周側のブレース53を省略し、鋼製布板52の設置幅を狭くするとともに足場壁つなぎ54を設置して補強する。
【0041】
一方、飛散防止養生システム2では、中間支持体30の下方には垂直支持構造体14がないので、中間支持体30の下方に位置する足場50については、垂直支持構造体14がない部分の足場50と同様に形成してもよい。しかし対象構造物100の解体に伴い、盛り替えによって垂直支持構造体14が順次下方に下降してくるため、一実施形態では垂直支持構造体14が下降してくる部分の足場50については、鋼製布板52は複数構成とし、足場50の内周側のブレース53は省略するとともに、足場壁つなぎ54を設置して補強する。このような構成にすることにより、垂直支持構造体14の盛り替えの際は、垂直支持構造体14と干渉する内周側の鋼製布板52を取り外すだけで盛り替え作業を進めることができる。
【0042】
図7は、本発明の実施形態による飛散防止養生体を下降させる方法を説明するための図であり、垂直支持構造体14を地上から構築する飛散防止養生システム1についての説明図である。
図7(a)は最上階の壁倒しの状態を示す図であり、
図7(b)は重機を下階に降ろして中抜き解体を行う状態を示す図であり、
図7(c)は壁倒し前に飛散防止養生体20を盛り変える状態を示す図である。
【0043】
図7(a)を参照すると、重機60は、対象構造物100の9階の床上に設置され、屋上部分の解体と9階部分の中抜き解体が終了し、9階部分の外壁101の壁倒しを行う状態が示される。足場50は屋上から2段分が上方に突出する高さまで設けられ、足場50の外周には防音パネル25が設置される。また足場50と外壁101の間には、飛散防止養生体支持体10が足場50より高く設置されて飛散防止養生体20を支持している。解体作業中は防音パネル25と飛散防止養生体20とにより対象構造物100の周辺へのコンクリート片や粉じんの飛散を防止する。
【0044】
9階部分の外壁101の壁倒しが終了すると、
図7(b)に示すように重機60は、下層階である8階の床上におろされ、9階の床の解体と8階部分の中抜き解体が進められる。9階部分の外壁101の壁倒しに伴い、足場50の上段部分の撤去が行われるが、飛散防止養生体支持体10と飛散防止養生体20はそのまま維持される。
【0045】
図7(c)を参照すると、8階部分の外壁101の壁倒し前に吊り下げ手段40であるクレーン41により、飛散防止養生体支持体10の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を一時的に吊り下げ、盛り替えを行う。垂直支持構造体14を地上から構築する飛散防止養生システム1の場合、飛散防止養生体20を下降させるためには、垂直支持構造体14を構成する基本構造体13のいずれかを取り除く必要がある。そこで例えば
図7(c)の矢印Aで示すように基本構造体13を取り除く場合、飛散防止養生体支持体10の少なくとも最上部から取り除く基本構造体13の直上の基本構造体13の部分までを一時的に支持した状態で基本構造体13を取り除く。次いでクレーン41により、吊り下げた飛散防止養生体支持体10を下降させ、地上から立設される垂直支持構造体14の最上部の基本構造体13と連結してからクレーン41による吊り下げを解除する。
【0046】
このように吊り下げ手段40は、盛り替えの間だけ一時的に使用する。吊り下げ手段40としてのクレーン41は、対象構造物100の外側に設置したものでもよいし、対象構造物100の床面を貫通して設ける支柱の上に設置するものでもよい。また吊り下げ手段40には、チェーンブロックを使用してもよい。対象構造物100の周囲に設置する足場50は、飛散防止養生体支持体10を常時支持するには強度的に不足することが懸念されるが、一時的に支持することは可能である。そこで足場50にチェーンブロックを取り付け、盛り替えの間だけ飛散防止養生体支持体10を支持するようにしてもよい。
【0047】
盛り替えの際、取り除く基本構造体13はどの高さのものでも構わないが、地上階に近い程一時的に支持する飛散防止養生体支持体10の重量が大きくなるので、解体中の作業階に近い高さの基本構造体13を取り除くことが好ましい。また対象構造物100の1階分の高さと基本構造体13の高さが揃っていれば、1つの階の解体に伴い基本構造体13を1段分取り除いて盛り変えればよいが、両者の高さが異なる場合、解体が下層階に進むにつれて、対象構造物100と飛散防止養生体支持体10の高さの関係が次第にずれていってしまう。そこで一実施形態では対象構造物100の1階分の高さと近くなるように長さの異なる基本構造体13を組み合わせて積み上げた垂直支持構造体14を使用し、盛り替え時の対象構造物100と飛散防止養生体支持体10の高さの関係が一定の範囲内に留まるように調整する。
【0048】
図7(a)~(c)のような作業を繰り返し、上層階から地上階までの解体作業を進めることにより、コンクリート片などの解体物や粉じんが、外部に飛散するのを防止しながら対象構造物100の解体を行うことができる。
【0049】
垂直支持構造体14が中間階から上部にのみ形成されている飛散防止養生システム2の場合は、中間支持体30の上から形成された飛散防止養生体支持体10を吊り下げ手段40で一時的に支持し、中間支持体30を下層階に移設した後飛散防止養生体支持体10を下降させて、再び中間支持体30に固定することで盛り替えが行われる。この場合も吊り下げ手段40としては、クレーン41又はチェーンブロックを使用することができる。
【0050】
図8は本発明の実施形態による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法を説明するためのフローチャートであり、
図1に示す飛散防止養生システム1における構造物解体方法を説明するための図である。
図8を参照すると、段階S800にて解体の対象構造物100の対向する外壁101の所定部分の外側に、垂直方向に複数立設される柱状部材11と複数の柱状部材11同士を水平方向に連結する複数の水平部材12からなる基本構造体13を垂直方向に複数積み上げて少なくとも一対の垂直支持構造体14を形成した後、少なくとも一対の垂直支持構造体14の最上部に対象構造物100の上部を覆う飛散防止養生体20を支持する上部支持体15を架け渡して飛散防止養生体支持体10を形成する。
【0051】
垂直支持構造体14は、地上から対象構造物100の最上階より高く対象構造物100の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成される。また、飛散防止養生体支持体10を複数形成する場合、重機60や機材の揚重や解体部材の撤去などが行えるよう、少なくとも一対の隣接する飛散防止養生体支持体10の間は所定の距離だけ離隔して設置する。
【0052】
飛散防止養生体支持体10の設置後、段階S810にて飛散防止養生体支持体10の上方から飛散防止養生体20で対象構造物100の最上階を覆う。飛散防止養生体20はシート又はネット、或はこれらの組み合わせ構造を備える。飛散防止養生体20は飛散防止養生体支持体10の上から対象構造物100の上部を覆うが、所定の距離だけ離隔して設置した飛散防止養生体支持体10の部分では、重機60や機材の揚重や解体部材の撤去の際に開閉しやすいように、開閉のためのガイドレールなどを設けたり、部分的に開閉可能な窓を設けたりするのが好ましい。
【0053】
段階S820にて対象構造物100の最上階の解体を行う。ここで、最上階とは9階建ての9階のような固定された最上階の意味ではなく、解体の進捗により対象構造物100は高さが低くなっていくが、その時々で最上部に位置する階のことである。このとき例えば
図6(a)、
図6(b)のように9階建ての屋上の解体や9階の中抜き解体をするときは、重機60は9階の床面上に設置し、9階の床面の解体や8階の中抜き解体するときは、重機60は8階の床面上に設置する。
【0054】
最上階の中抜き解体が終了後、盛り替えのため、段階S830にて吊り下げ手段40により中間部から上の飛散防止養生体支持体10を吊り下げる。より細かく記載すると、飛散防止養生体支持体10の垂直支持構造体14は、地上から積み上がって固定されているため、吊り下げ手段40により中間部から上の飛散防止養生体支持体10を支持した上で、取り除く基本構造体13の上側のボルト、ナットを外して固定を解除することにより、取り除く基本構造体13より上方にある飛散防止養生体支持体10が吊り下げられる形となる。
【0055】
段階S840にて中間部から下の数段の基本構造体13を撤去する。盛り替えのために撤去する基本構造体13は、対象構造物100の1階分の高さと同等である場合は、1段分だけ撤去すればよいが、基本構造体13の高さが対象構造物100の1階分の高さより低い場合は、対象構造物100の1階分の高さと同等となる数段分を撤去する。除去する基本構造体13に、外壁101に取り付けて垂直支持構造体14を支持する補強部材が連結されている場合は補強部材も併せて撤去する。
【0056】
次に段階S850にて、吊り下げている中間部から上の飛散防止養生体支持体10を下降させ、地上から立設される垂直支持構造体14の最上部の基本構造体13と連結してから吊り下げを解除する。
段階S860の判定結果に基づき、上記の段階S820から段階S850までを地上階に至るまで繰り返し、段階S860で地上階までの解体が終了すると対象構造物100の解体が終了する。
【0057】
以上、飛散防止養生体支持体10及び飛散防止養生体20の設置と、解体作業の進捗に合わせて飛散防止養生体20を下降させながら盛り変える点に焦点を当てて構造物解体方法を説明したが、実施形態では、段階S800と並行して対象構造物100及び垂直支持構造体14の外周を囲むように足場50と防音パネル25を設置する。このとき垂直支持構造体14を設置した部分では、足場50のブレース53を一部省略し、鋼製布板52の設置幅を狭めたり、足場壁つなぎ54を設置したりすることは
図4を参照して説明したとおりである。
また実施形態では、段階S820と、段階S830との間で解体が終了した最上階の周囲に設置されていた足場50及び防音パネル25の撤去を行う。
【0058】
図9は、本発明の他の実施形態による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法を説明するためのフローチャートであり、
図5に示す飛散防止養生システム2における構造物解体方法を説明するための図である。
図9を参照すると、段階S900にて対象構造物100の中間階の外壁101の開口部に中間支持体30を設置する。中間支持体30は外壁101の外に張り出す張り出し支持部材33を備える。
【0059】
段階S910にて、中間支持体30の上に一対の垂直支持構造体14を形成した後、垂直支持構造体14の最上部に上部支持体15を架け渡して飛散防止養生体支持体10を形成する。
図8の段階S810において形成する飛散防止養生体支持体10は地上から構築するのに対し、
図9の段階S910で形成する飛散防止養生体支持体10は中間階に設置した中間支持体30の上に形成する点が相違するのみで、中間階から上側については形成方法も構造も変わらない。
飛散防止養生体支持体10を形成した後に、段階S920にて飛散防止養生体支持体10の上方から飛散防止養生体20で対象構造物100の最上階を覆う。
【0060】
段階S930で対象構造物100の最上階の解体を行ってから、段階S940にて吊り下げ手段40により中間支持体30の上の飛散防止養生体支持体10を吊り下げる。これについても、より詳細には、吊り下げ手段40により中間支持体30の上の飛散防止養生体支持体10を支持した上で、中間支持体30との連結部のボルト、ナットを外して固定を解除することにより、飛散防止養生体支持体10を吊り下げる。このときの吊り下げ手段40も、クレーン41でもよいし、チェーンブロックでもよい。
【0061】
吊り下げ手段40により飛散防止養生体支持体10を一時的に吊り下げている間に、段階S950にて中間支持体30を取り外して下層階に盛り替えを行う。一実施形態では中間支持体30を複数用意し、予め新たな中間支持体30を下層階に設置しておくことで、飛散防止養生体支持体10を一時的に吊り下げておく時間を短縮する。
【0062】
次いで段階S960にて、吊り下げている飛散防止養生体支持体10を下降させ、盛り変えた中間支持体30に再度固定する。
段階S970の判定結果に基づき、上記の段階S930から段階S960までを繰り返し、中間支持体30が地上まで到達すると段階S980にて対象構造物100の残りの階を地上階まで解体して対象構造物100の解体が終了する。
【0063】
図9の場合もフローチャート上には示していないが、段階S910と並行して足場50及び防音パネル25を構築する点、対象構造物100の解体に伴い解体終了部分の周囲に位置する足場50及び防音パネル25を順次撤去する点などは
図8で説明した構造物解体方法と同様である。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、2 飛散防止養生システム
10 飛散防止養生体支持体
11 柱状部材
12 水平部材
13 基本構造体
14 垂直支持構造体
15 上部支持体
16 連結部材
20 飛散防止養生体
25 防音パネル
30 中間支持体
31 壁固定部材
32 開口枠固定部材
33 張り出し支持部材
40 吊り下げ手段
41 クレーン
50 足場
51 建枠
52 鋼製布板
53 ブレース
54 足場壁つなぎ
55 養生クランプ
60 重機
100 対象構造物
101 外壁
【手続補正書】
【提出日】2021-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体の対象構造物の最上階に解体用の重機を揚重して重機による作業空間を確保しつつ前記対象構造物の解体を進める構造物の解体に適用する飛散防止養生システムであって、
前記解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材を備える基本構造体を垂直方向に複数積み上げて形成した少なくとも一対の垂直支持構造体と、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に架け渡され、前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体とを備える飛散防止養生体支持体と、
前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を一時的に吊り下げる吊り下げ手段と、
前記飛散防止養生体と、
前記対象構造物の外壁及び前記垂直支持構造体の外周を囲むように構成する足場とを有し、
前記飛散防止養生体支持体は前記足場とは別に独立して前記足場より高く設けられることを特徴とする飛散防止養生システム。
【請求項2】
前記飛散防止養生体支持体が複数ある場合、少なくとも一対の隣接する前記飛散防止養生体支持体の間は所定の距離だけ離隔して設置されることを特徴とする請求項1に記載の飛散防止養生システム。
【請求項3】
前記垂直支持構造体は地上から対象構造物の最上階より高く前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されるか、又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上から前記対象構造物の最上階の解体に必要な作業空間を確保できる高さまで積み上げられて形成されること特徴とする請求項1又は2に記載の飛散防止養生システム。
【請求項4】
前記吊り下げ手段は、前記対象構造物の最上階の解体後、前記飛散防止養生体支持体の中間高さの基本構造体を除去するか、前記中間支持体の下層階への盛り替えの間に一時的に前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を吊り下げるものであることを特徴とする請求項3に記載の飛散防止養生システム。
【請求項5】
解体の対象構造物の最上階に解体用の重機を揚重して重機による作業空間を確保しつつ前記対象構造物の解体を進める構造物解体方法であって、
前記解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材からなる基本構造体を垂直方向に複数積み上げて少なくとも一対の垂直支持構造体を形成した後、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体を架け渡して飛散防止養生体支持体を形成する段階と、
前記対象構造物及び前記垂直支持構造体の外周を囲むように足場を設置する段階と、
前記飛散防止養生体支持体の上方から前記飛散防止養生体で前記対象構造物の最上階を覆う段階と、
前記対象構造物の最上階を解体する段階と、
前記飛散防止養生体支持体を下層に盛り替える段階と、を有し、
前記飛散防止養生体支持体は前記足場とは別に独立して前記足場より高く設けられ、
前記垂直支持構造体は地上から積み上げられるか又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上に積み上げられ、
地上から積み上げられた場合は、中間部から上の前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で中間部の下側の数段分の前記基本構造体を除去した後、一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行い、
前記中間支持体の上に積み上げられた場合は、前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で前記中間支持体を下層階に盛り替えてから一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行うことを特徴とする構造物解体方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による飛散防止養生システムは、解体の対象構造物の最上階に解体用の重機を揚重して重機による作業空間を確保しつつ前記対象構造物の解体を進める構造物の解体に適用する飛散防止養生システムであって、前記解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材を備える基本構造体を垂直方向に複数積み上げて形成した少なくとも一対の垂直支持構造体と、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に架け渡され、前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体とを備える飛散防止養生体支持体と、前記飛散防止養生体支持体の少なくとも最上部から所定の高さまでの部分を一時的に吊り下げる吊り下げ手段と、前記飛散防止養生体と、前記対象構造物の外壁及び前記垂直支持構造体の外周を囲むように構成する足場とを有し、前記飛散防止養生体支持体は前記足場とは別に独立して前記足場より高く設けられることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明による飛散防止養生システムを用いた構造物解体方法は、解体の対象構造物の最上階に解体用の重機を揚重して重機による作業空間を確保しつつ前記対象構造物の解体を進める構造物解体方法であって、前記解体の対象構造物の対向する外壁の所定部分の外側に垂直方向に複数立設される柱状部材と複数の柱状部材同士を水平方向に連結する複数の水平部材からなる基本構造体を垂直方向に複数積み上げて少なくとも一対の垂直支持構造体を形成した後、前記少なくとも一対の垂直支持構造体の最上部に前記対象構造物の上部を覆う飛散防止養生体を支持する上部支持体を架け渡して飛散防止養生体支持体を形成する段階と、前記対象構造物及び前記垂直支持構造体の外周を囲むように足場を設置する段階と、前記飛散防止養生体支持体の上方から前記飛散防止養生体で前記対象構造物の最上階を覆う段階と、前記対象構造物の最上階を解体する段階と、前記飛散防止養生体支持体を下層に盛り替える段階と、を有し、前記飛散防止養生体支持体は前記足場とは別に独立して前記足場より高く設けられ、前記垂直支持構造体は地上から積み上げられるか又は前記対象構造物の中間階の外壁の開口部を介して前記対象構造物の中間階の外壁の外に張り出す中間支持体の上に積み上げられ、地上から積み上げられた場合は、中間部から上の前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で中間部の下側の数段分の前記基本構造体を除去した後、一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行い、前記中間支持体の上に積み上げられた場合は、前記飛散防止養生体支持体を吊り下げ手段で一時的に吊り下げた状態で前記中間支持体を下層階に盛り替えてから一時的に吊り下げた前記飛散防止養生体支持体を下降させることで盛り替えを行うことを特徴とする。