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特開2022-180890荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置
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  • 特開-荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置 図1
  • 特開-荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180890
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20221130BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20221130BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/244
H01J37/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087639
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中里 拓也
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA34
5C101BB03
5C101DD38
5C101GG13
5C101GG15
5C101GG25
5C101GG33
5C101GG42
(57)【要約】
【課題】荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置において、荷電粒子ビームのビーム中心の位置ズレを簡素な構成で且つ短時間で検出する。
【解決手段】荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出方法は、照射部2によって荷電粒子ビームB2を照射することと、この荷電粒子ビームB2を遮蔽する遮蔽部と荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部(例えば、切り欠き5a又は開口部15a,25a)とを有する遮蔽部材5,15,25の非遮蔽部の位置を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に変化させた複数の状態で、荷電粒子ビームB2のエネルギー量を検出器(例えば、電流検出器7)によって検出することと、上記複数の状態における検出結果に基づいて荷電粒子ビームB2のビーム中心C1のズレを取得部(例えば、制御部11)によって取得することとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射部によって荷電粒子ビームを照射することと、
前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有する遮蔽部材の前記非遮蔽部の位置を、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化させた複数の状態で、前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出器によって検出することと、
前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得部によって取得することと
を含むことを特徴とする荷電粒子ビームのビーム中心検出方法。
【請求項2】
前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量を検出することは、取得された前記ビーム中心のズレが閾値を超えた場合、当該ズレに基づいて前記遮蔽部材を前記ビーム中心に直交する方向に移動させた後、再び、前記非遮蔽部の位置を前記中心軸の周方向に変化させた複数の状態で、前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量を前記検出器によって検出する
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビームのビーム中心検出方法。
【請求項3】
前記遮蔽部材の前記非遮蔽部は、前記遮蔽部材に設けられた切り欠き又は開口部であり、
前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量を検出することは、前記遮蔽部材を、前記中心軸を回転中心として回転させることによって、前記切り欠き又は前記開口部の位置を前記周方向に変化させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子のビーム中心検出方法。
【請求項4】
前記遮蔽部材の前記非遮蔽部は、前記遮蔽部材に設けられた切り欠き又は開口部であり、
前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量を検出することは、前記遮蔽部材の前記切り欠き又は前記開口部を開閉可能に塞ぐ開閉部によって、前記非遮蔽部の位置を前記周方向に変化させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子のビーム中心検出方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有し、前記非遮蔽部の位置が、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化した複数の状態をとる遮蔽部材と、
前記遮蔽部によって一部が遮蔽された前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出する検出器と、
前記遮蔽部材の前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得する取得部と
を備えることを特徴とする荷電粒子ビームのビーム中心検出装置。
【請求項6】
荷電粒子ビームを照射する照射部と、
前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有し、前記非遮蔽部の位置が、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化した複数の状態をとる遮蔽部材と、
前記遮蔽部によって一部が遮蔽された前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出する検出器と、
前記遮蔽部材の前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得する取得部と、
前記遮蔽部材及び被加工物を前記ビーム中心に直交する方向に移動させる移動装置と
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームのビーム中心を検出するビーム中心検出方法及びビーム中心検出装置、並びに、荷電粒子ビームを用いて被加工物を加工する荷電粒子ビーム加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオンビームの照射によりファラデーカップに流れるイオン電流値のズレに応じてイオン源の首振りを行うことによって、被写体面の中心位置にイオンビームの重心位置を合わせるイオンビーム打込装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、荷電粒子銃より照射された荷電粒子ビームに、第1のアパーチャで第1の成形を行い、第2のアパーチャのエッジで第2の成形を行い、荷電粒子ビームの電流値を測定し、第2の成形及び電流値の測定を、複数のエッジについて同様に行うことにより得られた各電流値より、荷電粒子ビームの中心位置のズレ情報を取得し、このズレ情報に基づき、荷電粒子ビームのアライメント調整を行う荷電粒子ビーム描画方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、アパーチャ板のアパーチャを通じて得られる荷電ビームの電流を検出し、この電流に基づいて荷電ビームの軸がレンズ手段の光学的中心とアパーチャ板のアパーチャの中心とを通るように設定制御する荷電ビーム照射装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、絞りの複数の開口部のうち1つの開口部を露出させる切欠き部を有する遮蔽部材を備え、絞り制御機構が、絞り又は遮蔽部材を回転させ、複数の開口部のうちの1つの開口部を切欠き部から順次露出させる荷電粒子線装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭55-069371号公報
【特許文献2】特開2010-183004号公報
【特許文献3】特開昭62-234855号公報
【特許文献4】国際公開第2016/120971号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光学機器に搭載されている光学素子は、表面が粗いとフレアの原因となり、面精度が悪いと収差の原因となる。そのため、光学素子や、この光学素子を成形するのに用いられる成形金型には、滑らかな表面粗さ及び高い面精度が要求される。これらの光学素子や成形金型を良好に仕上げる加工手段の一つとして、被加工物表面に荷電粒子ビームを照射して加工を行う超精密研磨技術が挙げられる。
【0008】
この超精密研磨技術は、アパーチャによって径を細く絞った荷電粒子ビームを被加工物表面に照射し、各加工点におけるドーズ量を制御し、その被加工物表面の形状修正研磨を行うものである。
【0009】
上述の超精密研磨を行うためには、電粒子ビームのビーム中心を高精度に検出する必要がある。ファラデーカップによる荷電粒子ビームの電流値の検出結果に基づいて荷電粒子ビームのビーム中心を検出する場合、複雑な構成を要さずに調整を行うことができる。しかしながら、荷電粒子ビームのビーム中心に直交する方向へファラデーカップ等を移動させながら荷電粒子ビームのビーム中心を検出すると、調整作業に時間を要する。
【0010】
本発明の目的は、荷電粒子ビームのビーム中心の位置ズレを簡素な構成で且つ短時間で検出することができる、荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、荷電粒子ビームのビーム中心検出方法は、照射部によって荷電粒子ビームを照射することと、前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有する遮蔽部材の前記非遮蔽部の位置を、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化させた複数の状態で、前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出器によって検出することと、前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得部によって取得することとを含む。
【0012】
他の1つの態様では、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置は、荷電粒子ビームを照射する照射部と、前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有し、前記非遮蔽部の位置が、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化した複数の状態をとる遮蔽部材と、前記遮蔽部によって一部が遮蔽された前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出する検出器と、前記遮蔽部材の前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得する取得部とを備える。
【0013】
他の1つの態様では、荷電粒子ビーム加工装置は、荷電粒子ビームを照射する照射部と、前記荷電粒子ビームを遮蔽する遮蔽部と前記荷電粒子ビームを遮蔽しない非遮蔽部とを有し、前記非遮蔽部の位置が、前記荷電粒子ビームのビーム中心と平行な中心軸の周方向に変化した複数の状態をとる遮蔽部材と、前記遮蔽部によって一部が遮蔽された前記荷電粒子ビームのエネルギー量を検出する検出器と、前記遮蔽部材の前記複数の状態における前記荷電粒子ビームの前記エネルギー量の検出結果に基づいて前記荷電粒子ビームの前記ビーム中心のズレを取得する取得部と、前記遮蔽部材及び被加工物を前記ビーム中心に直交する方向に移動させる移動装置とを備える。
【発明の効果】
【0014】
前記態様によれば、荷電粒子ビームのビーム中心の位置ズレを簡素な構成で且つ短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態に係る荷電粒子ビーム加工装置を示す構成図である。
図2】一実施の形態における遮蔽部材を示す図である。
図3】一実施の形態に係る荷電粒子ビームのビーム中心検出方法を説明するための説明図である。
図4】一実施の形態に係る荷電粒子ビームのビーム中心検出方法を説明するためのフローチャートである。
図5】一実施の形態の第1変形例における遮蔽部材及び開閉部を示す図である。
図6】一実施の形態の第2変形例における遮蔽部材及び開閉部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る、荷電粒子ビームのビーム中心検出方法、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、一実施の形態に係る荷電粒子ビーム加工装置1を示す構成図である。
【0018】
図2は、一実施の形態における遮蔽部材5を示す図である。
【0019】
図1に示すように、イオンビーム加工装置1は、照射部2と、ガス源3と、真空チャンバ4と、遮蔽部材5と、支持部材6と、電流検出器7と、回転装置8,9と、移動装置10と、制御部11とを備える。なお、照射部2、遮蔽部材5、及び制御部11(取得部の一例)を備える装置を、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置とみなすことができる。そのため、荷電粒子ビーム加工装置1は、荷電粒子ビームのビーム中心検出装置と呼ぶこともできる。また、荷電粒子ビーム加工装置1は、照射部2、遮蔽部材5、移動装置10、及び制御部11(取得部の一例)を備えるものであればよい。なお、上記のビーム中心検出装置は、荷電粒子ビーム加工装置1とは異なる用途、すなわち被加工物Wの加工を伴わない用途で用いられてもよい。電流検出器7は、荷電粒子ビームのエネルギー量を検出する検出器の一例である。電流検出器7は、例えばファラデーカップであり、エネルギー量の一例である電流量を電気的な信号や値に変換して計測する機能を有しているものである。上記の検出器は、荷電粒子検出器(SSD:Solid State Detector)などであってもよい。
【0020】
照射部2は、荷電粒子ビームB1,B2を照射する。照射部2の構成は、任意に変更できるが、照射部2は、ノズル2aと、スキマー2bと、タングステンフィラメント2cと、引出電極2dと、加速電極2eとを有する。なお、照射部2は、荷電粒子銃と呼ぶこともできる。また、荷電粒子ビームB1,B2は、ガスクラスターイオンビームと呼ぶこともできる。
【0021】
ノズル2aには、ガス源3から高圧ガスが供給される。この高圧ガスは、ノズル2aを通過するときに断熱膨張によって冷却される。これにより、ガスクラスターが生成される。高圧ガスは、例えば、Ar(アルゴン)ガス、SF6(六フッ化硫黄)ガスである。
【0022】
スキマー2bは、ガスクラスターを通過させることによって、ガスクラスターの径を整え整流しガスクラスタービームを生成する。
【0023】
タングステンフィラメント2cは、発熱することによって熱電子を生じさせる。この熱電子が中性のガスクラスタービームに衝突することによってガスクラスタービームがイオン化され荷電粒子ビームB1を生成する。
【0024】
引出電極2dは、荷電粒子ビームB1を引き出す。
【0025】
加速電極2eは、荷電粒子ビームB1をビーム照射方向に加速させる。なお、荷電粒子ビームB1のビーム中心C1は、Z軸方向と同一である。
【0026】
アパーチャ2fは、荷電粒子ビームB1の一部を遮蔽することによって、荷電粒子ビームB1を荷電粒子ビームB2に成形する。アパーチャ2fの材料は、例えば導体材料であり、荷電粒子ビームB1によって帯電しないように接地されている。
【0027】
真空チャンバ4は、図示しない排気ポンプによって差動排気された真空室である。真空チャンバ4の内部には、照射部2、遮蔽部材5、支持部材6、電流検出器7、回転装置8,9、及び移動装置10が配置されている。
【0028】
遮蔽部材5は、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1と平行な中心軸C2を回転中心として回転可能に配置され、円板形状を呈する。図2に示すように、遮蔽部材5は、中心軸C2から放射状に拡がる扇形の切り欠き5aを有する。この切り欠き5aは、荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部の一例である。この非遮蔽部としては、遮蔽部材5の中央のみに形成された開口部、すなわち遮蔽部材5の周縁に達しない開口部などであってもよい。また、遮蔽部材5の切り欠き5a以外の部分は、荷電粒子ビームB2を遮蔽する遮蔽部の一例である。このように、遮蔽部材5が荷電粒子ビームB2の一部を遮蔽するため、遮蔽部材5は、絞りとして機能するといえる。
【0029】
支持部材6は、遮蔽部材5の中心軸C2を中心とする円筒形状を呈する。支持部材6は、電流検出器7に固定され、遮蔽部材5の周縁において遮蔽部材5を支持する。
【0030】
電流検出器7は、遮蔽部材5によって一部が遮蔽された荷電粒子ビームB2の電流量を検出する。
【0031】
回転装置8は、遮蔽部材5、支持部材6、及び電流検出器7を、中心軸C2を回転中心として回転させる。
【0032】
回転装置9は、中心軸C2と平行なZ軸方向を回転中心として被加工物Wを回転させる。
【0033】
移動装置10は、回転装置8及び回転装置9を、ビーム中心C1(中心軸C2)に直交するXY平面内で一体に移動させる。すなわち、移動装置10は、回転装置8に電流検出器7及び支持部材6を介して固定された遮蔽部材5と、回転装置9に固定された被加工物Wとを、ビーム中心C1に直交する方向に一体に移動させる。
【0034】
制御部11は、演算、加工制御プログラムの作成等を行う制御端末に接続されている。制御部11は、制御端末によって被加工物Wの形状に基づき作成された加工制御プログラムを実行することで、回転装置9及び移動装置10の動作を制御し、被加工物Wを加工する。また、制御部11は、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の中心検出のために、回転装置8及び移動装置10の動作を制御する。制御部11は、例えば、図示しないプロセッサ(例えばマイクロコンピュータ)を備えるNC装置である。詳しくは後述するが、制御部11は、電流検出器7による荷電粒子ビームB2のエネルギー量の検出結果に基づいて荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1のズレを取得する取得部の一例として機能する。なお、制御部11は、照射部2の照射制御なども行うとよい。
【0035】
ここで、被加工物W及び遮蔽部材5がXY平面内で一体に移動するため、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1に対して、遮蔽部材5の中心軸C2を一致させることで、その後、被加工物Wを遮蔽部材5の位置に移動させれば、荷電粒子ビームB2による被加工物Wの加工を高精度に行うことができる。
【0036】
まず、図3を参照しながら、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出方法を説明する。
【0037】
図3の下段に示すように、ビーム中心C1と遮蔽部材5の中心軸C2と一致している場合、遮蔽部材5の回転角度(0°、120°、及び240°)によらず、遮蔽部材5による荷電粒子ビームB2の遮蔽面積は一定となり、電流検出器7により検出される電流量も一定となる。
【0038】
一方、図3の上段に示すように、中心軸C2とビーム中心C1とがずれている場合、遮蔽部材5の回転角度によって、遮蔽部材5により遮蔽される荷電粒子ビームB2の遮蔽面積及び電流検出器7により検出される荷電粒子ビームB2の電流量がばらつく。
【0039】
この場合、ビーム中心C1が切り欠き5aから離れているほど、遮蔽部材5による荷電粒子ビームB2の遮蔽面積が増え、電流量が減る(「120°のときの電流量」<「240°のときの電流量」<「0°のときの電流量」)。この電流量のバラつきに基づいて、ビーム中心C1の中心軸C2に対するズレを判別することができる。
【0040】
次に、図4を参照しながら、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出方法を説明する。
【0041】
まず、制御部11は、遮蔽部材5(切り欠き5a)を通過した荷電粒子ビームB2の電流量を、電流検出器7から取得することによって測定する(ステップS1)。
【0042】
次に、制御部11は、遮蔽部材5を所定の角度回転させるように回転装置8を制御する(ステップS2)。なお、遮蔽部材5の回転角度は、回転装置8の駆動量、或いは、回転装置8に設けられた図示しない角度検知機構から取得することができる。
【0043】
次に、制御部11は、所定回数の電流値の測定処理(ステップS1)が実施されたかを判定する(ステップS3)。この所定回数は、遮蔽部材5の回転処理(ステップS2)での回転角度で360°を等分割した回数(例えば、回転角度が120°であれば3回)となるようにするとよい。
【0044】
所定回数の電流値の測定が実施されていない場合(ステップS3:NO)、制御部11は、電流値の測定処理(ステップS1)を再び行う。なお、上述の遮蔽部材5の回転処理(ステップS2)は、遮蔽部材5を例えば360°回転させながら電流値の測定が連続的に行われる場合や、所定回数の電流値の測定処理(ステップS1)が完了していることが事前に判別できている場合などには、省略可能である。
【0045】
所定回数の電流値の測定が実施されている場合(ステップS3:YES)、制御部11は、各回転角度での電流値の差が所定の誤差以上であるかを判定する(ステップS4)。電流値の差が所定の誤差未満である場合(ステップS4:NO)、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1が遮蔽部材5の中心軸C2に一致するとみなすことができるため、図4に示す処理が終了する。
【0046】
電流値の差が所定の誤差以上である場合(ステップS4:YES)、制御部11は、例えば、荷電粒子ビームB2が遮蔽部材5によって遮蔽されていない場合の電流値を、中心軸C2の周方向に切り欠き5aが設けられている角度/360°で乗じた値に電流値が近づくように、遮蔽部材5のXY平面内での移動量及び移動方向を決定する(ステップS5)。
【0047】
次に、制御部11は、決定した移動量及び移動方向に基づいて遮蔽部材5を移動させるように移動装置10を制御する。その後、制御部11は、電流値の測定処理(ステップS1)から処理を繰り返す。
【0048】
ここで、各回転角度での電流値の差が所定の誤差未満となって(ステップS4:NO)、ビーム中心C1と遮蔽部材5の中心軸C2との位置合わせが完了した後は、被加工物Wの座標系における遮蔽部材5の中心軸C2の位置を算出する必要があるため、この処理について説明する。なお、予め被加工物Wの座標系における遮蔽部材5の中心軸C2の位置が算出できている場合は、本処理を省略してもよい。
【0049】
制御部11は、被加工物Wに荷電粒子ビームB2を照射させるために、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1に被加工物Wの中心軸を一致させるように移動装置10を制御し、この際の移動量を記録しておく。
【0050】
その後、例えば、ユーザは、荷電粒子ビーム加工装置1の外部の測定機を使用し、被加工物Wの照射痕の位置と、被加工物Wの中心軸とのズレを測定する(被加工物Wの座標系の原点は被加工物Wの中心軸とする)。
【0051】
また、制御部11は、このズレと、被加工物Wの上述の移動量とから、被加工物Wの座標系における遮蔽部材5の中心軸C2の位置を算出する。この位置の算出は、遮蔽部材5を着脱した場合などに行われるとよい。
【0052】
被加工物Wを加工する際には、制御部11は、荷電粒子ビームB2を被加工物Wの加工点に照射するために移動装置10により被加工物Wを移動させ、回転装置9により被加工物Wを回転させながら被加工物Wを加工する。
【0053】
なお、上述の例では、遮蔽部材5を回転させることによって切り欠き5a(非遮蔽部の一例)の位置を遮蔽部材5の中心軸C2の周方向に変化させる例について説明したが、図5に示すように、遮蔽部材15の開口部15a(非遮蔽部の一例)を開閉可能に塞ぐ開閉部20によって、非遮蔽部の位置を周方向に変化させてもよい。
【0054】
図5は、第1変形例における遮蔽部材15及び4つの開閉部20を示す図である。
【0055】
遮蔽部材15は、矩形板状を呈し、中央に矩形の開口部15aが設けられている。この開口部15aは、荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部の一例である。この非遮蔽部としては、遮蔽部材15の周縁に亘って設けられた切り欠きなどであってもよい。
【0056】
4つの開閉部20のそれぞれは、可動板21と、ヒンジ22と、ステッピングモータ23とを有する。
【0057】
4つの開閉部20の可動板21は、ヒンジ22の回転によって、図5における開口部15aの左上、右上、左下、及び右下のそれぞれを塞ぐ閉状態と、開口部15aを上述の荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部として機能させるために開口部15aを開放させる開状態とに遷移するように回転する。可動板21は、開口部15a(非遮蔽部)を開閉可能に塞ぐ開閉部材の一例である。
【0058】
ヒンジ22は、ステッピングモータ23の駆動によって回転することで、可動板21を上述の閉状態及び開状態に回転させる。なお、ヒンジ22及びステッピングモータ23は、可動板21(開閉部材の一例)を開閉させる開閉駆動部の一例である。この開閉駆動部としては、可動板21(開閉部材)を回転移動させるものではなく、スライド移動させるものなどであってもよい。
【0059】
本第1変形例では、上述の図2に示す遮蔽部材5を所定角度回転させるのに代えて、4つの開閉部20の中から、可動板21を開状態にする開閉部20を順に切り替える。
【0060】
図6は、第2変形例における遮蔽部材25及び3つの開閉部30を示す図である。
【0061】
遮蔽部材25は、矩形板状を呈し、中央に3つの三角形状の開口部25aが設けられている。この3つの開口部25aは、まとめて1つだけ設けられていてもよい。また、3つの開口部25aは、荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部の一例である。この非遮蔽部としては、遮蔽部材25の周縁に亘って設けられた切り欠きなどであってもよい。
【0062】
3つの開閉部30のそれぞれは、可動板31と、ヒンジ32と、ステッピングモータ33とを有する。また、3つの開閉部30うちの2つの開閉部30は、固定部材34を更に有する。
【0063】
3つの開閉部20の可動板31は、ヒンジ32の回転によって、図6における開口部25aの左上、右上、及び下のそれぞれを塞ぐ閉状態と、開口部25aを上述の荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部として機能させるために開口部25aを開放させる開状態とに遷移する開閉部材の一例である。
【0064】
ヒンジ32は、ステッピングモータ33の駆動によって回転することで、可動板31を上述の閉状態及び開状態に回転させる。ステッピングモータ33は、ヒンジ32を回転させる。なお、ヒンジ32及びステッピングモータ33は、可動板31(開閉部材の一例)を開閉させる開閉駆動部の一例である。この開閉駆動部としては、可動板31(開閉部材)を回転移動させるものではなく、スライド移動させるものなどであってもよい。
【0065】
固定部材34は、ステッピングモータ33を遮蔽部材25の周縁に固定するための部材である。
【0066】
本第2変形例においても、上述の第1変形例と同様に、図2に示す遮蔽部材5を所定角度回転させるのに代えて、3つの開閉部30の中から、可動板31を開状態にする開閉部30を順に切り替える。
【0067】
以上説明した本実施の形態では、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出方法は、照射部2によって荷電粒子ビームB2を照射することと、この荷電粒子ビームB2を遮蔽する遮蔽部と荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部(例えば、切り欠き5a又は開口部15a,25a)とを有する遮蔽部材5,15,25の非遮蔽部の位置を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に変化させた複数の状態で、荷電粒子ビームB2の電流量(エネルギー量一例)を電流検出器7(検出器の一例)によって検出することと、上記複数の状態における荷電粒子ビームB2の電流量の検出結果に基づいて荷電粒子ビームB2のビーム中心C1のズレを取得部(例えば、制御部11)によって取得することとを含む。
【0068】
また、本実施の形態では、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出装置は、荷電粒子ビームB2を照射する照射部2と、荷電粒子ビームB2を遮蔽する遮蔽部と荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部(例えば、切り欠き5a又は開口部15a,25a)とを有し、非遮蔽部の位置が、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に変化した複数の状態をとる遮蔽部材5,15,25と、この遮蔽部5,15,25によって一部が遮蔽された荷電粒子ビームB2の電流量(エネルギー量一例)を検出する電流検出器7(検出器の一例)と、遮蔽部材5,15,25の上記複数の状態における荷電粒子ビームB2の電流量の検出結果に基づいて荷電粒子ビームB2のビーム中心C1のズレを取得する取得部(例えば、制御部11)とを備える。荷電粒子ビーム加工装置1は、更に、遮蔽部材5,15,25及び被加工物Wをビーム中心C1に直交する方向(XY平面)に移動させる移動装置10を備える。
【0069】
上記の荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出方法、荷電粒子ビームB1,B2のビーム中心C1の検出装置、及び荷電粒子ビーム加工装置1では、荷電粒子ビームB2を遮蔽しない非遮蔽部の位置を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に変化させた複数の状態で、荷電粒子ビームB2の電流量を電流検出器7によって検出し、その検出結果に基づいて荷電粒子ビームB2のビーム中心C1のズレを制御部11によって取得する。そのため、荷電粒子ビームB2自体をイメージャ等によって検出する態様と比較して、遮蔽部材5の非遮蔽部の位置を中心軸C2の周方向に変化させ、荷電粒子ビームB2の電流量を検出するための簡素な構成で低コストを実現して調整を行うことができる。更には、遮蔽部材5,15,25を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1に直交する方向へ移動させながら荷電粒子ビームB2の電流量を検出する態様と比較して、非遮蔽部の位置を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に変化させることで荷電粒子ビームB2の電流量を検出することができるため、調整作業を短時間で行うことができる。よって、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1の位置ズレを簡素な構成で且つ短時間で検出することができる。更には、非遮蔽部の位置を、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1と平行な中心軸C2の周方向に細かく変化させるほど、高精度に、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1の位置ズレを検出することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、荷電粒子ビームB2の電流量を検出することは、取得されたビーム中心C1のズレが閾値を超えた場合、このズレに基づいて遮蔽部材5,15,25をビーム中心C1に直交する方向に移動させた後、再び、非遮蔽部の位置を中心軸C2の周方向に変化させた複数の状態で、荷電粒子ビームB2の電流量を電流検出器7によって検出する。これにより、遮蔽部材5の中心軸C2を、ビーム中心C1とのズレが閾値を超えない位置に移動させることができるため、高精度に、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1の位置調整を行うことができる。
【0071】
また、本実施の形態では、遮蔽部材5の非遮蔽部は、遮蔽部材5に設けられた切り欠き5a(又は開口部)であり、荷電粒子ビームB2の電流量を検出することは、遮蔽部材5を、中心軸C2を回転中心として回転させることによって、切り欠き5aの位置を上記周方向に変化させる。そのため、遮蔽部材5を回転させることによって、遮蔽部材5の非遮蔽部の位置を周方向に変化させることができるため、より短時間で、荷電粒子ビームB2のビーム中心C1の位置ズレを検出することができる。
【0072】
また、本実施の形態の第1及び第2変形例では、遮蔽部材15,25の非遮蔽部は、遮蔽部材15,25に設けられた開口部15a,25a(又は切り欠き)であり、荷電粒子ビームB2の電流量を検出することは、遮蔽部材15,25の開口部15a,25を開閉可能に塞ぐ開閉部20,30によって、非遮蔽部の位置を周方向に変化させる。このように、図2に示す遮蔽部材5とは異なり、遮蔽部材15,25を回転させなくとも遮蔽部材15,25の非遮蔽部の位置を周方向に変化させることができる。そのため、遮蔽部材15,25を回転させる図1に示す回転装置8を省略することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 荷電粒子ビーム加工装置
2 照射部
2a ノズル
2b スキマー
2c タングステンフィラメント
2d 引出電極
2e 加速電極
2f アパーチャ
3 ガス源
4 真空チャンバ
5 遮蔽部材
5a 切り欠き
6 支持部材
7 電流検出器
8,9 回転装置
10 移動装置
11 制御部
15 遮蔽部材
15a 開口部
20 開閉部
21 可動板
22 ヒンジ
23 ステッピングモータ
25 遮蔽部材
25a 開口部
30 開閉部
31 可動板
32 ヒンジ
33 ステッピングモータ
34 固定部材
B1,B2 荷電粒子ビーム
C1 ビーム中心
C2 中心軸
W 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6