(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180892
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】タンディッシュ洗浄装置及びこれを用いたタンディッシュの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20221130BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B22D11/10 310Z
B22D11/10 310F
B22D43/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087641
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】間内 良太
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋介
(72)【発明者】
【氏名】河口 和大
(57)【要約】
【課題】スリーブ内に固着した閉塞物の除去効率を高めることが可能なタンディッシュ洗浄装置を提供する。
【解決手段】タンディッシュ洗浄装置10は、溶湯が注入される受湯室2と溶湯を注出する出湯室3とを備えたタンディッシュ1の、受湯室2と出湯室3とを連通する中空筒状のスリーブ6内に固着した地金等の閉塞物9を除去する。タンディッシュ洗浄装置10は、タンディッシュ1を傾動可能に保持する傾動装置80と、スリーブ6の端部開口を臨む位置にバーナーヘッド19を配置するバーナー支持部材12と、を備え、バーナー支持部材12がタンディッシュ1の傾動に対して追従可能に取り付けられている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯が注入される受湯室と前記溶湯を注出する出湯室とを備えたタンディッシュの、前記受湯室と前記出湯室とを連通する中空筒状のスリーブ内に固着した地金等の閉塞物を除去するタンディッシュ洗浄装置であって、
前記タンディッシュを傾動可能に保持する傾動装置と、
前記スリーブの端部開口を臨む位置にバーナーヘッドを配置するバーナー支持部材と、を備え、
前記バーナー支持部材が前記タンディッシュの傾動に対して追従可能に取り付けられている、タンディッシュ洗浄装置。
【請求項2】
前記バーナー支持部材は、
前記タンディッシュの上面に沿って延びる第1部材と、
前記第1部材の一端側に連結され前記第1部材の長手方向と交差する方向に延び、先端部にバーナーヘッドを保持する第2部材と、を備えている、請求項1に記載のタンディッシュ洗浄装置。
【請求項3】
前記タンディッシュと前記第1部材との間に配設されるベース架台であって、前記タンディッシュに接する下取付面と前記第1部材に接する上取付面との傾きを調整可能とする前記ベース架台を更に備える、請求項2に記載のタンディッシュ洗浄装置。
【請求項4】
前記バーナー支持部材の前記第1部材は、
案内レールを備え前記ベース架台に固定される支持部材と、
前記案内レールに沿って長手方向に移動可能な第1部材本体と、を備えている、請求項3に記載のタンディッシュ洗浄装置。
【請求項5】
前記バーナー支持部材の前記第1部材は、
前記第1部材本体に設けられた歯車と、
前記支持部材に設けられ、前記歯車と噛み合うラックと、を有し、
前記歯車と前記ラックとが互いに噛み合った状態で前記歯車が回転することにより、前記第1部材本体が移動可能とされている、請求項4に記載のタンディッシュ洗浄装置。
【請求項6】
前記バーナー支持部材を構成する前記第2部材は、前記第1部材の一端側から突出する回転可能な軸部に連結されるとともに、前記第1部材との連結部から前記バーナーヘッドまでの長さが調整可能とされている、請求項2~5の何れかに記載のタンディッシュ洗浄装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載のタンディッシュ洗浄装置を用いたタンディッシュの洗浄方法であって、
前記タンディッシュを傾動可能な載置板上に載置するステップと、
前記バーナーヘッドが前記スリーブの一方の端部開口を臨むように前記バーナー支持部材を配置し、前記スリーブが前記一方の端部開口から他方の端部開口に向けて下方に傾斜するように前記タンディッシュを傾動させた状態で、前記バーナーヘッドからの火炎で前記スリーブ内に固着した閉塞物を溶融させスリーブ外に流出除去するステップと、
前記バーナーヘッドが前記スリーブの前記他方の端部開口を臨むように前記バーナー支持部材を配置し、前記スリーブが前記他方の端部開口から前記一方の端部開口に向けて下方に傾斜するように前記タンディッシュを傾動させた状態で、前記バーナーヘッドからの火炎で前記スリーブ内に残存する閉塞物を溶融させスリーブ外に流出除去するステップと、
を備える、タンディッシュの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンディッシュのスリーブ内に固着した地金等の閉塞物を除去するためのタンディッシュ洗浄装置及びこれを用いたタンディッシュの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造装置を用いた鋳造工程においては、介在物の除去等を目的として、取鍋と鋳型の間にタンディッシュが用いられる。ここでタンディッシュの一形態として、取鍋から溶湯が注入される受湯室と、溶湯を鋳型に注出する出湯室とを備え、受湯室と出湯室の間を区画する堰に溶鋼を通過させる流路としての中空筒状のスリーブを設けたものがある。
このような形態のタンディッシュでは、継続使用するとスリーブの内面に閉塞物としての地金等が付着してスリーブの断面積が縮小することから、タンディッシュを再利用するためには鋳造終了後にスリーブ内の閉塞物を除去する作業(タンディッシュの洗浄作業)を実施する必要がある。
【0003】
スリーブ内の閉塞物を除去する方法として、スリーブ内の閉塞物を高温燃焼バーナーで溶融除去する方法が用いられている。具体的には、スリーブの片側(受湯室側)からバーナー炎をスリーブ内に噴き込んで、閉塞物を溶かしながら反対側(出湯側)に飛ばしてスリーブ内の閉塞物を除去する正洗浄が実施され、かかる正洗浄で閉塞物が除去しきれない場合には、バーナーをスリーブの反対側(出湯室側)に設置し、スリーブの反対側からバーナー炎をスリーブ内に噴き込む逆洗浄が実施されている。
しかしながら、スリーブは通常、受湯室側から出湯室側に向けて下方に傾斜しているため、上り傾斜となる逆洗浄においては閉塞物がスリーブ内に留まり易く、洗浄効率が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、スリーブ内に固着した閉塞物の除去効率を高めることが可能なタンディッシュ洗浄装置及びこれを用いたタンディッシュの洗浄方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して本発明のタンディッシュ洗浄装置は、溶湯が注入される受湯室と前記溶湯を注出する出湯室とを備えたタンディッシュの、前記受湯室と前記出湯室とを連通する中空筒状のスリーブ内に固着した地金等の閉塞物を除去するタンディッシュ洗浄装置であって、
前記タンディッシュを傾動可能に保持する傾動装置と、前記スリーブの端部開口を臨む位置にバーナーヘッドを配置するバーナー支持部材と、を備え、
前記バーナー支持部材が前記タンディッシュの傾動に対して追従可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
このように規定された本発明のタンディッシュ洗浄装置によれば、傾動装置を利用してタンディッシュを傾動させた際にバーナー支持部材がタンディッシュの傾動に追従するため、スリーブを任意の角度に傾けた状態でタンディッシュの洗浄を行うことができる。このため洗浄時にスリーブが上り傾斜となることによる洗浄効率の低下を回避することができる。
【0008】
ここで本発明では、前記バーナー支持部材を、前記タンディッシュの上面に沿って延びる第1部材と、前記第1部材の一端側に連結され前記第1部材の長手方向と交差する方向に延び、先端部にバーナーヘッドを保持する第2部材と、を備えた構成とすることができる。
【0009】
また本発明では、前記タンディッシュと前記第1部材との間に配設されるベース架台であって、前記タンディッシュに接する下取付面と前記第1部材に接する上取付面との傾きを調整可能とする前記ベース架台を更に備えることができる。
このようにすれは、スリーブ内へのバーナー炎の吹き込み角度を、スリーブの傾斜角度に合わせるように調整することができる。
【0010】
また本発明では、前記バーナー支持部材の前記第1部材が、案内レールを備え前記ベース架台に固定される支持部材と、前記案内レールに沿って長手方向に移動可能な第1部材本体と、を備えるように構成することができる。
このようにすれば、バーナーヘッドの位置をスリーブに対する接近離間方向に調整することができる。
【0011】
ここで本発明では、前記バーナー支持部材の前記第1部材を、前記第1部材本体に設けられた歯車と、前記支持部材に設けられ前記歯車と噛み合うラックと、を有する構成とし、
前記歯車と前記ラックとが互いに噛み合った状態で前記歯車が回転することにより、前記第1部材本体を移動可能とすることができる。
【0012】
本発明ではまた、前記バーナー支持部材を構成する前記第2部材を、前記第1部材の一端側から突出する回転可能な軸部に連結するとともに、前記第1部材との連結部から前記バーナーヘッドまでの長さを調整可能とすることができる。
このようにすれば、第2部材の回転角度の調整およびバーナーヘッドまでの長さの調整により、スリーブの端部開口に対するバーナーヘッドの位置合わせを行うことができる。
【0013】
本発明のタンディッシュの洗浄方法は、上記したタンディッシュ洗浄装置を用いた洗浄方法であって、
前記タンディッシュを傾動可能な載置板上に載置するステップと、
前記バーナーヘッドが前記スリーブの一方の端部開口を臨むように前記バーナー支持部材を配置し、前記スリーブが前記一方の端部開口から他方の端部開口に向けて下方に傾斜するように前記タンディッシュを傾動させた状態で、前記バーナーヘッドからの火炎で前記スリーブ内に固着した閉塞物を溶融させスリーブ外に流出除去するステップと、
前記バーナーヘッドが前記スリーブの前記他方の端部開口を臨むように前記バーナー支持部材を配置し、前記スリーブが前記他方の端部開口から前記一方の端部開口に向けて下方に傾斜するように前記タンディッシュを傾動させた状態で、前記バーナーヘッドからの火炎で前記スリーブ内に残存する閉塞物を溶融させスリーブ外に流出除去するステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
このように規定された本発明のタンディッシュの洗浄方法によれば、バーナーヘッドがスリーブの一方の端部開口を臨む状態で行われる洗浄(正洗浄)、バーナーヘッドがスリーブの他方の端部開口を臨む状態で行われる洗浄(逆洗浄)、いずれの場合もスリーブが下り傾斜の状態で洗浄が行われるため、スリーブが上り傾斜となることによる洗浄効率の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態のタンディッシュ洗浄装置が取り付けられるタンディッシュの一例について、概略を示す斜視図である。
【
図2】同タンディッシュの断面図で、(A)は
図1のA-A断面図、(B)は
図1のB-B断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のタンディッシュ洗浄装置を構成するバーナー支持部材及びベース架台を分離して示した図である。
【
図4】
図3のバーナー支持部材における第1部材と第2部材との連結部分を拡大して示した図である。
【
図7】
図3のバーナー支持部材におけるランスの回転移動可能な範囲を示した図である。
【
図8】(A)は
図3のベース架台を示した図である。(B)は上取付面の傾きを変更した状態のベース架台を示した図である。
【
図9】同実施形態のタンディッシュ洗浄装置を洗浄対象のタンディッシュに取り付けた状態を示した図である。
【
図10】タンディッシュの洗浄方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の一実施形態のタンディッシュ洗浄装置を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び
図2は本実施形態のタンディッシュ洗浄装置が取り付けられるタンディッシュの一例を示した図で、
図1が斜視図、
図2が
図1中のA-A断面およびB-B断面を示している。
【0017】
タンディッシュ1は、受湯室2と出湯室3の2つの空間を有している。受湯室2と出湯室3は堰5によって区画されており、堰5には受湯室2と出湯室3を連通する流路として、2本の中空円筒状のスリーブ6が埋め込まれている。これら2本のスリーブ6は相互に平行に配置されている。スリーブ6の壁面は、絶縁性の耐火物よりなっている。
図2(A)で示すように、これらスリーブ6は受湯室2側から出湯室3側に向けて角度θ1で下方に傾斜している。
【0018】
タンディッシュ1においては、図示しない取鍋から受湯室2に溶鋼Mが注入され、タンディッシュ1内に貯留される。そして、出湯室3の底面に設けられた孔(不図示)を介して、溶鋼Mが流出され、鋳型に注入される。溶鋼Mが、スリーブ6を通過して、受湯室2から出湯室3に移動する過程において、溶鋼M中の介在物等の不純物が分離される。かかる形態のタンディッシュ1は継続的に使用されるとスリーブ6内に不純物や地金等が閉塞物として固着堆積する。このため、タンディッシュ1を再使用するためには定期的にスリーブ6内の閉塞物を除去する必要がある。
【0019】
本発明の一実施形態のタンディッシュ洗浄装置10は、スリーブ6内に固着した閉塞物を除去するために用いるもので、傾動装置80とバーナー支持部材12とベース架台14が主な構成要素とされている。
図3はタンディッシュ洗浄装置10を構成するバーナー支持部材12及びベース架台14を分離して示した図である。バーナー支持部材12はベース架台14を介してタンディッシュ1の上面7、より具体的には堰5の上面7aに取り付けられる。
【0020】
次にバーナー支持部材12について説明する。バーナー支持部材12は、タンディッシュ1の上面7に沿って図中左右方向に延びる第1部材18と、先端部にバーナーヘッド19を保持し第1部材18の長手方向と交差する方向に延びる第2部材20と、を備えている。
【0021】
第2部材20は、タンディッシュ1に取り付けられた状態で上下方向に延びる棒状のランス22を有し、ランス22の先端部にバーナーヘッド19が設けられている。
図3の部分拡大図で示すように、バーナーヘッド19の、スリーブ6と対向する面には、高圧酸素噴出用の大径の孔24が形成されており、この孔24を取り囲むように小径の火炎孔25が複数形成されている。バーナーヘッド19に供給される、燃料ガス、酸素、水及び高圧酸素は、それぞれ、ガス用配管27、酸素用配管28、給水用配管29a,29b及び高圧酸素用配管30を通じてランス22の上方側からバーナーヘッド19へと送られる。
【0022】
ランス22の基端側、第1部材18と連結する部位には長さ調整部32が設けられている。長さ調整部32は第1部材18とランス22との間に位置し、第1部材18側から延び出した軸部47と嵌合する(
図4参照)。また
図3で示すように、長さ調整部32はその側面に上下方向に延びる案内レール34が形成され、ランス22には案内レール34と係合する係合ブロック35が取り付けられており、ランス22は長さ調整部32対して図中上下方向にスライド移動可能とされている。
【0023】
図4で示すように、長さ調整部32の内部には、操作用ハンドル37に接続されたシャフト38がランス22の長手方向と平行に設けられている。シャフト38の外周面には雄ねじ38aが形成され、この雄ねじ38aには、雌ねじが内周面に形成されたナット39が嵌合組付けされている。ナット39はランス22と一体に固定されており、操作用ハンドル37によりシャフト38を回転させると、ねじ送り作用によりナット39はシャフト38の軸方向に沿って移動し、その結果、第1部材18の軸部47からバーナーヘッド19までの長さLが調整される。
【0024】
一方、第1部材18は、
図3で示すように、第2部材20を保持する第1部材本体42と、第1部材本体42の下方に設けられ第1部材本体42をスライド移動可能に支持する支持部材43とを備えている。
【0025】
第1部材本体42は、図中左右方向に平行に延びる2本の角パイプ45を備え、これら角パイプ45がベース板46で連結されている。角パイプ45の図中右側の端部には第2部材20との連結に用いられる軸部47が設けられている(
図4参照)。連結用の軸部47は、角パイプ45上に取り付けられた操作用ハンドル48の操作に基づいて回転する回転軸49とウォーム減速機50を介して連結されており、操作用ハンドル48を回転操作することで、軸部47が回転し、軸部47に連結されている第2部材20(長さ調整部32及びランス22)が軸部47周りに回転可能とされている。本例では、このような第2部材20を回転させる機構に基づいて、
図7で示すように、ランス22先端のバーナーヘッド19を軸部47周りに移動させることができる。このようなバーナーヘッド19の回転移動は、
図2(B)で示すように、タンディッシュ1に2つのスリーブ6,6が設けられており、それぞれのスリーブについて洗浄を行う場合でのバーナーヘッド19の位置合わせ作業を容易なものとすることができる。
【0026】
尚、
図3で示すように、角パイプ45の図中左側の端部には錘材67が設けられおり、また角パイプ45の長手方向の中央部にはクレーンのフックを掛けるリング部材68が設けられている。
【0027】
支持部材43はベース架台14に締結固定される部材である。支持部材43はベース板60の上面(第1部材本体42と対向する面)に案内レール61が取り付けられている。
図6で示すように、案内レール61は2本取り付けられており、第1部材本体42の長手方向に延びる形態で平行に配置されている。一方、第1部材本体42側のベース板46の下面(案内レール61と対向する面)には案内レール61と係合する係合ブロック51が取り付けられており、第1部材本体42は支持部材43に対して
図3における左右方向にスライド移動可能とされている。
【0028】
図6で示すように、第1部材本体42からは軸部54が下向きに延び出しており軸部54の先端には歯車55が設けられている。一方、支持部材43には歯車55と噛み合うラック62が設けられている。軸部54は、角パイプ45上に取り付けられた操作用ハンドル57の操作に基づいて回転する回転軸58とウォーム減速機59を介して連結されており、操作用ハンドル57を回転操作することで、歯車55とラック62とが互いに噛み合った状態で歯車55が回転し、第1部材本体42は支持部材43に対して(即ちベース架台14に対して)相対移動可能とされている。
【0029】
次にベース架台14について説明する。ベース架台14は、タンディッシュ1とバーナー支持部材12の第1部材18との間に配置される部材で、
図3で示すようにベース板70の上面に2つの受け部材71,72が配置されている。受け部材71,72は長手方向に離間して配置され、これら受け部材71,72によって形成された凹部にバーナー支持部材12の支持部材43が収容可能とされている。そして支持部材43は受け部材71,72と締結部材73等によって固定される。
【0030】
図8(A)で示すように、本例では受け部材71とベース板70との間に楔部材75Aを配置して、支持部材43を受ける凹部の底面76の傾き(ベース板70に対する傾き)を、タンディッシュ1に形成されたスリーブ6の傾きθ1と対応するように調整されている。尚、本例のベース板70では
図8(B)で示すように、受け部材71とベース板70との間に楔部材75Bを配置し、受け部材72とベース板70との間に楔部材75Cを配置することで凹部の底面76の傾きをθ2に変更することも可能である。
【0031】
本例では、ベース架台14がタンディッシュ1とボルトで固定されている。これにより、ベース架台14はタンディッシュ1の上面7に一体的に取り付けられ、バーナー支持部材12はかかるベース架台14を介してタンディッシュ1の上面7に取り付けられる。よってタンディッシュ1が傾動した場合には、バーナーヘッド19を含むバーナー支持部材12がタンディッシュ1に追従して傾動する。
【0032】
次にタンディッシュ洗浄装置10を用いたタンディッシュの洗浄方法について説明する。
図9は、タンディッシュ洗浄装置10を洗浄対象のタンディッシュ1に取り付けた状態を示した図である。同図において、傾動装置80は、タンディッシュ1を載置する載置板81と、載置板81を傾動可能に支持する一対の支持軸82と、支持軸82を回転駆動させる駆動機構(不図示)を備えている。
【0033】
タンディッシュの洗浄を行う際には、先ず
図9で示すように載置板81上にタンディッシュ1を載置する。
次に、載置板81上に載置されたタンディッシュ1の上面7に、ベース架台14を取り付け、ベース架台14を介してバーナー支持部材12を取り付ける。このときランス22が受湯室2側となるようにバーナー支持部材12を取り付ける。そしてランス22の先端にあるバーナーヘッド19がスリーブ6の受湯室2側の端部開口を臨む位置となるように位置調整を行う。
【0034】
次に、
図10(I)で示すように、載置板81とともにタンディッシュ1を傾動させる。詳しくはスリーブ6の受湯室2側の端部開口から出湯室3側の端部開口に向けて所定の下向きの傾斜角度となるようにタンディッシュ1を傾動させる。そしてその状態で、バーナーヘッド19からの火炎をスリーブ6内に吹き込む正洗浄を行ない、スリーブ6内に固着した閉塞物9(
図9参照)を溶融させスリーブ外に流出除去する。
【0035】
次にバーナー支持部材12をベース架台14から一旦取り外し、ランス22を出湯室3側に配置する向きでバーナー支持部材12をベース架台14に取り付ける。そしてランス22の先端にあるバーナーヘッド19がスリーブ6の出湯室3側の端部開口を臨む位置となるように位置調整を行う。
【0036】
次に、
図10(II)で示すように、載置板81とともにタンディッシュ1を傾動させる。詳しくはスリーブ6の出湯室3側の端部開口から受湯室2側の端部開口に向けて所定の下向きの傾斜角度となるようにタンディッシュ1を傾動させる。そしてその状態で、バーナーヘッド19からの火炎をスリーブ6内に吹き込む逆洗浄を行うことで、上記正洗浄にて除去しきれなかった閉塞物9を溶融させスリーブ外に流出除去することができる。
【0037】
以上のように本実施形態のタンディッシュ洗浄装置10によれば、傾動装置80を利用してタンディッシュ1を傾動させた際にバーナー支持部材12がタンディッシュ1の傾動に追従するため、洗浄対象のスリーブ6を任意の角度に傾けた状態でタンディッシュ1の洗浄を行うことができる。このため洗浄時に洗浄対象のスリーブ6が上り傾斜となることによる洗浄効率の低下を回避することができる。
【0038】
本実施形態のタンディッシュ洗浄装置10では、タンディッシュ1と第1部材18との間に、タンディッシュ1と接する下取付面77と第1部材18と接する上取付面76との傾きを調整可能とするベース架台14を備えているため、スリーブ6内へのバーナー炎の吹き込み角度を、スリーブ6の傾斜角度θ1に合わせるように調整することができる。
【0039】
本実施形態のタンディッシュ洗浄装置10では、バーナー支持部材12の第1部材18が、案内レール61を備えベース架台14に固定される支持部材43と、案内レール61に沿って長手方向に移動可能な第1部材本体42と、を備えるように構成され、更にバーナー支持部材12の第1部材18が、第1部材本体42に設けられた歯車55と、支持部材43に設けられ歯車55と噛み合うラック62と、を有する構成とされ、歯車55とラック62とが互いに噛み合った状態で歯車55が回転することにより、第1部材本体42を移動させるため、バーナーヘッド19の位置をスリーブ6に対する接近離間方向に調整することができる。
【0040】
本実施形態のタンディッシュ洗浄装置10では、バーナー支持部材12を構成する第2部材20を、第1部材18の一端側から突出する回転可能な軸部47に連結するとともに、第1部材18との連結部からバーナーヘッド19までの長さが調整可能とされているため、第2部材20の回転角度の調整及びバーナーヘッド19までの長さの調整により、スリーブ6の端部開口に対するバーナーヘッド19の位置合わせを行うことができる。
【0041】
また本実施形態のタンディッシュ洗浄装置10を用いたタンディッシュの洗浄方法によれば、バーナーヘッド19がスリーブ6の一方の端部開口を臨む状態で行われる正洗浄、バーナーヘッド19がスリーブ6の他方の端部開口を臨む状態で行われる逆洗浄、いずれの洗浄もスリーブ6が下り傾斜の状態で行われるため、スリーブ6が上り傾斜となることによる洗浄効率の低下を回避することができる。
【0042】
以上本実施形態のタンディッシュ洗浄装置およびタンディッシュの洗浄方法について詳しく説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 タンディッシュ
2 受湯室
3 出湯室
6 スリーブ
9 閉塞物
10 タンディッシュ洗浄装置
12 バーナー支持部材
14 ベース架台
18 第1部材
19 バーナーヘッド
20 第2部材
47 軸部
55 歯車
61 案内レール
62 ラック
76 上取付面(底面)
77 下取付面
80 傾動装置
81 載置板
M 溶鋼