(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180904
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ガラス曲面形状の計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087664
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆士
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065BB22
2F065DD03
2F065DD04
2F065FF41
2F065GG04
2F065MM11
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】ガラス形状を正確に測定することができるガラス曲面形状の計測方法を提供する。
【解決手段】ガラス曲面形状の計測方法は、ガラス部材10の表面10aの周縁11に沿って、透明以外の色の彩色領域である周縁彩色領域101を設ける周縁彩色領域形成工程と、ガラス部材10の表面10aの周縁11以外の箇所に、透明以外の色の彩色領域である表面彩色領域102,103を設ける表面彩色領域形成工程と、周縁彩色領域101及び表面彩色領域102,103を含む測定範囲210を表面10aに向き合う所定方向Dから3次元スキャナ200で測定する3次元測定工程と、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の測定値から周縁11の形状を計測する周縁形状計測工程と、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の測定値から表面10aの形状を計測する表面形状計測工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス部材の表面の周縁に沿って、透明以外の色の彩色領域である周縁彩色領域を設ける周縁彩色領域形成工程と、
前記ガラス部材の表面の周縁以外の箇所に、透明以外の色の彩色領域である表面彩色領域を設ける表面彩色領域形成工程と、
前記周縁彩色領域及び前記表面彩色領域を含む測定範囲を前記表面に向き合う所定方向から3次元スキャナで測定する3次元測定工程と、
前記3次元スキャナで測定した前記測定範囲の3次元座標の測定値から前記周縁の形状を計測する周縁形状計測工程と、
前記3次元スキャナで測定した前記測定範囲の3次元座標の測定値から前記表面の形状を計測する表面形状計測工程と、を備えるガラス曲面形状の計測方法。
【請求項2】
前記周縁彩色領域形成工程において、
前記周縁に沿って前記表面に、所定幅を有し、透明以外の色のテープ材を貼ることによって、前記表面に前記周縁彩色領域を設ける請求項1に記載のガラス曲面形状の計測方法。
【請求項3】
前記表面彩色領域形成工程において、
前記表面に縦方向及び横方向に、所定幅を有し、透明以外の色のテープ材を貼ることによって、前記表面に前記表面彩色領域を設ける請求項1または2に記載のガラス曲面形状の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス曲面形状の計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、曲面形状のガラスファサードデザインが増加している。特に、3次元の曲げ加工ガラスを外装として使用する場合(下記の特許文献1参照)、曲げガラスの製作精度は平板のガラスに比べて悪いため、現場での取付け手間が増加し、場合によっては現場で取付ファスナーを後加工し取付位置を調整する必要が出てくる。また、ガラス間目地寸法が図面通りに確保されていないと、耐震性及び水密性など性能上の問題が生じるだけでなく、外観が悪くなるという問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製作精度の確認は、曲げガラスのエッジ形状を管理するため、原寸大図面にガラスエッジを立てて合わせ、定規で誤差を計測する方法で行われているが、計測精度上問題があるだけでなく、計測作業が大がかりとなり時間が掛かる。また、曲げガラス内側の形状の精度確認についてもガラス数点の計測を行い、図面との誤差を確認する程度であり十分な品質管理とは言えない状況である。
【0005】
以上のような問題を解決するためには、現場施工の前に、ガラス製作段階において曲げガラスの正確な形状を把握し、現場の取付けファスナーの位置、孔あけ位置、ルーズホールの確認及び調整を行えるようにデータを共有する工程が必要になる。
【0006】
一方、3Dスキャナを用いて3次元座標データを取得しガラス形状を面的に計測しようとした場合、ガラスが計測レーザーを透過してしまうことからガラス表面の座標データを取得できず、そのままでは形状計測は難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガラス形状を正確に測定することができるガラス曲面形状の計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るガラス曲面形状の計測方法は、ガラス部材の表面の周縁に沿って、透明以外の色の彩色領域である周縁彩色領域を設ける周縁彩色領域形成工程と、前記ガラス部材の表面の周縁以外の箇所に、透明以外の色の彩色領域である表面彩色領域を設ける表面彩色領域形成工程と、前記周縁彩色領域及び前記表面彩色領域を含む測定範囲を前記表面に向き合う所定方向から3次元スキャナで測定する3次元測定工程と、前記3次元スキャナで測定した前記測定範囲の3次元座標の測定値から前記周縁の形状を計測する周縁形状計測工程と、前記3次元スキャナで測定した前記測定範囲の3次元座標の測定値から前記表面の形状を計測する表面形状計測工程と、を備える。
【0009】
このように構成されたガラス曲面形状の計測方法では、周縁彩色領域形成工程においてガラス部材の周縁に周縁彩色領域を設け、表面彩色領域形成工程においてガラス部材の表面の周縁以外の箇所に表面彩色領域を設ける。これによって、ガラス部材が可視波長域の光に対して透明なガラス部材からの3次元スキャナへの反射光が極めて弱くても、3次元測定工程において周縁彩色領域及び表面彩色領域からの反射光を3次元スキャナで受光し、周縁彩色領域及び表面彩色領域を含む測定範囲の3次元座標の測定値を取得できる。周縁形状計測工程では、周縁彩色領域の3次元座標の測定値から、周縁に関する寸法を計測できる。表面形状計測工程では、表面彩色領域の3次元座標の測定値から、表面に関する寸法を計測できる。したがって、上述のガラス曲面形状の計測方法によれば、ガラス部材の形状を容易に、且つ3次元スキャナの空間分解能に応じて高精度に計測できる。また、上述のガラス曲面形状の計測方法によれば、測定範囲内を3次元スキャナで一括して取得できるため、ガラス部材の周縁及び表面に関する寸法、及びガラス部材の品質を良好に管理できる。
【0010】
また、本発明に係るガラス曲面形状の計測方法は、前記周縁彩色領域形成工程において、前記周縁に沿って前記表面に、所定幅を有し、透明以外の色のテープ材を貼ることによって、前記表面に前記周縁彩色領域を設けてもよい。
【0011】
このように構成されたガラス曲面形状の計測方法では、透明以外の色のテープ材をガラス部材の周縁に沿って貼ることによって、ガラス部材に対して容易に周縁彩色領域を設けることができる。
【0012】
また、本発明に係るガラス曲面形状の計測方法は、前記表面彩色領域形成工程において、前記表面に縦方向及び横方向に、所定幅を有し、透明以外の色のテープ材を貼ることによって、前記表面に前記表面彩色領域を設けてもよい。
【0013】
このように構成されたガラス曲面形状の計測方法では、透明以外の色のテープ材をガラス部材の表面に縦方向及び横方向に貼ることによって、ガラス部材に対して容易に表面彩色領域を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガラス曲面形状の計測方法によれば、ガラス形状を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態のガラス曲面形状の計測方法の計測対象である曲げガラスの斜視図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態のガラス曲面形状の計測方法を説明する図である。
【
図3】
図2のA部において、周縁形状計測工程を説明する図である。
【
図4】
図2のB部において、表面形状計測工程を説明する図である。
【
図5】
図2のB部において、表面形状計測工程において、形状管理を説明する図である。
【
図6】本発明に係る一実施形態のガラス曲面形状の計測方法の検証を説明する図である。
【
図7】本発明に係る一実施形態のガラス曲面形状の計測方法の検証結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るガラス曲面形状の計測方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のガラス曲面形状の計測方法は、ガラス部材(曲げガラス)10に関する寸法を計測する方法である。ガラス部材10は、例えば建物の外装の一部として設置されている。ガラス部材10が設置された状態で、水平方向をX方向とし、鉛直方向をY方向とする。X方向及びY方向に直交する奥行き方向をZ方向とする。ガラス部材10は、例えば強化ガラス等で形成され、可視波長域の光を略透過する。ガラス部材10の表面10aは、Z方向に膨らんだりへこんだり湾曲している。
【0018】
ガラス部材10の表面10aに対して、Z方向に沿う方向を測定方向Dと称する。測定方向Dから見て、ガラス部材10は、略矩形状である。測定方向Dから見て、ガラス部材10の表面10aの周縁11は、上端部11a、右端部11b、下端部11c及び左端部11dになる。ガラス部材10の表面10aの周縁11に、透明以外の色の彩色領域である周縁彩色領域101が設けられている。
【0019】
ガラス部材10の表面10aの周縁11以外の箇所、本実施形態では縦方向及び横方向に、透明以外の色の彩色領域である第一表面彩色領域(表面彩色領域)102が設けられている。縦方向に沿う第一表面彩色領域102は、Y方向に延び、X方向に間隔を有して複数設けられている。横方向に沿う第一表面彩色領域102は、X方向に延び、Y方向に間隔を有して複数設けられている。
【0020】
周縁彩色領域101及び第一表面彩色領域102の色は、例えば白色、又は青色、黄色、赤色等有彩色であり、艶無しである。
【0021】
周縁彩色領域101及び第一表面彩色領域102は、所定幅100Rを有する。所定幅100Rは、後述する3次元スキャナ200で測定された際に複数の点像データで示される必要があるため、3次元スキャナ200の受光位置205と測定範囲210の中心位置(基準位置)215との離間距離LLにおいて3次元スキャナ200によって見分けられる最小寸法の4倍以上であることが好ましい。即ち、所定幅100Rは、離間距離LLにおける3次元スキャナ200の空間分解能の少なくとも2倍以上、且つ好ましくは4倍以上であることが好ましい。所定幅100Rは、測定方向Dにおける離間距離LL及び3次元スキャナ200の空間分解能によって適切に設定される。一例として、市販の3次元スキャナ(製品名;FocusS Plus150、製造元;FARO社)を用いて離間距離LLが10mである場合、所定幅100Rは24mm以上であることが好ましい。
【0022】
周縁彩色領域101及び第一表面彩色領域102は、所定幅100Rを有するテープ材110によって形成されている。テープ材110は、例えばフィルム、マスキングテープ、養生テープ、ガムテープ等であるが、ガラス部材10に着脱可能であって、剥がした際にガラス部材10の意匠性を劣化させないテープ材であれば、特に限定されない。
【0023】
ガラス部材10の表面10aに、透明以外の色の彩色領域である第二表面彩色領域(表面彩色領域)103が設けられている。第二表面彩色領域103は、ドット状である。第二表面彩色領域103の形状は、円形、楕円、三角形や四角形等多角形等、形状は適宜設定可能である。第二表面彩色領域103は、所定の大きさ111Rを有する。所定の大きさ111Rは、約50mm以上であることが好ましい。
【0024】
第二表面彩色領域103は、ガラス部材10の表面10aの周縁11以外の箇所に設けられ、ガラス部材10の変曲点(面外方向への最大曲げ位置)やジョイント金物の設置位置など重要管理項目となる位置に設けることが好ましい。
【0025】
第二表面彩色領域103の色は、例えば白色、又は青色、黄色、赤色等有彩色であり、艶無しである。
【0026】
第二表面彩色領域103は、所定の大きさ111Rを有するテープ材111によって形成されている。テープ材111は、例えばフィルム、マスキングテープ、養生テープ、ガムテープ等であるが、ガラス部材10に着脱可能であって、剥がした際にガラス部材10の意匠性を劣化させないテープ材であれば、特に限定されない。
【0027】
本実施形態のガラス曲面形状の計測方法は、周縁彩色領域形成工程と、表面彩色領域形成工程と、3次元測定工程と、周縁形状計測工程と、表面形状計測工程と、を備える。
【0028】
周縁彩色領域形成工程では、ガラス部材10の表面10aに、周縁11に対して所定幅100Rを有する周縁彩色領域101を設ける。
【0029】
表面彩色領域形成工程では、ガラス部材10の表面10aに、縦方向及び横方向に所定幅100Rを有する第一表面彩色領域102が設け、所定の大きさ111Rを有する第二表面彩色領域103を設ける。
【0030】
次に、3次元測定工程では、ガラス部材10の測定範囲210のX方向、Y方向及びZ方向を軸とする3次元座標の各座標について得られた測定値(3次元座標の測定値、以下単に3次元座標の値という場合がある)を測定方向D(即ち、ガラス部材10から屋外側に所定の距離離れた位置から測定範囲210の略中心に向かう方向)から3次元スキャナ200で測定する。3次元スキャナ200の受光位置205と測定範囲210の中心位置215との離間距離LLは、現場の状況やガラス部材10を備える建物の大きさ等を勘案して適宜設定すればよい。測定範囲210は、周縁彩色領域101、第一表面彩色領域102及び第二表面彩色領域103を含む領域である。
【0031】
なお、測定範囲210の基準位置として中心位置215を例示しているが、基準位置は本実施形態のガラス曲面形状の計測方法において基準となり得る位置であればよい。本実施形態のガラス曲面形状の計測方法では、測定範囲210の3次元座標の値を1回のスキャンで測定してもよく、測定範囲210を分割して複数回のスキャンで測定してもよい。スキャンの回数は、3次元スキャナ200の撮影可能範囲及び空間分解能等を勘案して適宜設定できる。
【0032】
3次元スキャナ200は、不図示の支持機構に支持されている。3次元スキャナ200は、例えば直接操作可能又は遠隔操作可能な自走式移動ロボット、クレーン装置等に設けられていてもよい。ガラス部材10が曲線状や複雑な形状で形成されていて複数回のスキャンを行う場合は、前述のように3次元スキャナ200が自走式移動ロボット、クレーン装置等に設けられていると、3次元スキャナ200を用いた測定を円滑に進めることができる。
【0033】
次に、周縁形状計測工程では、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の値からガラス部材10の表面10aの周縁11に関する寸法を計測する。周縁11に関する寸法とは、周縁11の深さ(Z方向の寸法)、周縁11のX方向の傾斜、周縁11のY方向の傾斜等、周縁11に関する寸法を全て含む。
【0034】
次に、表面形状計測工程では、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の値からガラス部材10の表面10aに関する寸法を計測する。表面10aに関する寸法とは、表面10aのZ方向の膨らみ寸法、Z方向のへこみ寸法等、表面10aに関する寸法を全て含む。
【0035】
3次元スキャナ200は、ケーブル202又は無線によってパーソナルコンピュータ等の計算機220に接続されている。なお、計算機220は、3次元スキャナ200に内蔵されていてもよい。3次元スキャナ200で取得された測定範囲210の3次元座標の値は、計算機220に出力される。計算機220は、入力された値に基づいて、次に説明する処理及び計算を行い、周縁11に関する寸法を計測する。
【0036】
3次元スキャナ200で取得した値には、3次元座標、即ちX方向、Y方向、Z方向の各座標値におけるガラス部材10及びテープ材110の値が3次元データとして含まれている。3次元座標の値には、各座標値における光の3原色のRGBの各色の測定値及び輝度の測定値(以下、RGB値及び輝度値と記載する)が含まれる。
【0037】
図2は、ガラス曲面形状の計測方法を説明する図である。
図3は、
図2のA部において、周縁形状計測工程を説明する図である。
図2及び
図3に示すように、周縁形状計測工程では、3次元座標の値において彩色であることを示すデータ範囲を周縁彩色領域101即ちテープ材110の領域として抽出する。テープ材110の3次元座標の値に基づいてテープ材110の表面の近似曲線(又は近似直線、以下まとめて近似曲線と記載する)を求める。近似曲線は、3次元座標の点群データ(値)から例えば線形近似、対数近似、多項式近似、累計近似、或いは指数近似等から適切な近似を採用して決定できる。例えば、テープ材110の点群データとレーザー反射率のデータから、ガラス部材10の表面10aの周縁11の位置を決定することができる。ガラス部材10の表面10aの周縁11の形状と図面データとを照合することで、製作上の重要管理項目であるガラス部材10の表面10aの周縁11の形状(ガラスエッジの形状)の製作誤差を算出することができる。
【0038】
例えば、レーザー反射強度は、3次元スキャナ200から測定用に出射され、測定範囲210内のガラス部材10に当たり且つガラス部材10から反射した後に3次元スキャナ200で受光されるレーザー光の強度を表す。なお、このような場合を含め、上述のガラス曲面形状の計測方法では、少なくとも3次元測定工程を行う前に、使用する3Dスキャナで予めカラーキャリブレーションを行い、RGB値及びレーザー反射強度の閾値を算出しておく。
【0039】
図4は、
図2のB部において、表面形状計測工程を説明する図である。
図2(
図2では、第二表面彩色領域103の図示を省略している)及び
図4に示すように、表面形状計測工程では、3次元座標の値において彩色であることを示すデータ範囲を第一表面彩色領域102即ちテープ材110の領域として抽出する。テープ材110の3次元座標の値に基づいてテープ材110の表面の近似曲線(又は近似直線、以下まとめて近似曲線と記載する)を求める。例えば、形状管理したい位置を、ガラス部材10の表面10aの周縁11からX方向に750mm離間した位置とする。X=750を挟む2点の点群データA1,A2を用いて直線近似により座標B1を求めることができる。
図5に示すように、求めた座標データと図面データとを照合することで、ガラス部材10の精度管理をすることができる。また、同様に、第二表面彩色領域103において座標データを求めて、座標データと図面データとを照合することで、金物取付位置の精度を計測することができる。
【0040】
次に、本実施形態のガラス曲面形状の計測方法の検証結果について説明する。
図6に示すように、左右に2枚のガラス部材10を配置している。左側のガラス部材10には、周縁彩色領域101及び第一表面彩色領域102を設けている。右側のガラス部材10には、周縁彩色領域101を設けている。
【0041】
図7に示すように、右側のガラス部材10に関しては、右上部隅角部のエッジ部分の精度が悪く、図面と比べて15mm程度の大きな誤差が生じていることがわかる。したがって、この部分の取付ファスナーの調整量を修正する必要があることがわかる。また、左側のガラス部材10に関しては、メッシュ状に設けられた第一表面彩色領域102の座標データからガラス内側の曲げ加工精度を確認することができ、±4mm程度の精度であることがわかる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のガラス曲面形状の計測方法は、少なくとも周縁彩色領域形成工程と、表面彩色領域形成工程と、3次元測定工程と、周縁形状計測工程と、表面形状計測工程と、を備える。周縁彩色領域形成工程では、ガラス部材10の表面10aに、周縁11に対して所定幅100Rを有する周縁彩色領域101を設ける。表面彩色領域形成工程では、ガラス部材10の表面10aに、縦方向及び横方向に所定幅100Rを有する第一表面彩色領域102が設け、周縁11以外の箇所に、所定の大きさ111Rを有する第二表面彩色領域103を設ける。3次元測定工程では、測定範囲210の3次元座標の値をガラス部材10の表面10aに向き合う測定方向Dから3次元スキャナ200で測定する。周縁形状計測工程では、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の値から周縁11に関する寸法を計測する。表面形状計測工程では、3次元スキャナ200で測定した測定範囲210の3次元座標の値から表面10aに関する寸法を計測する。
【0043】
上述のガラス曲面形状の計測方法によれば、周縁彩色領域形成工程においてガラス部材10の周縁11に周縁彩色領域101を設け、表面彩色領域形成工程においてガラス部材10の表面の周縁11以外の箇所に第一表面彩色領域102及び第二表面彩色領域103を設ける。これによって、ガラス部材10が可視波長域の光に対して透明なガラス部材10からの3次元スキャナへの反射光が極めて弱くても、3次元測定工程において周縁彩色領域101、第一表面彩色領域102及び第二表面彩色領域103からの反射光を3次元スキャナで受光し、周縁彩色領域101、第一表面彩色領域102及び第二表面彩色領域103を含む測定範囲210の3次元座標の測定値を取得できる。周縁形状計測工程では、周縁彩色領域101の3次元座標の測定値から、周縁11に関する寸法を計測できる。表面形状計測工程では、第一表面彩色領域102及び第二表面彩色領域103の3次元座標の測定値から、表面10aに関する寸法を計測できる。したがって、上述のガラス曲面形状の計測方法によれば、ガラス部材10の形状を容易に、且つ3次元スキャナの空間分解能に応じて高精度に計測できる。また、上述のガラス曲面形状の計測方法によれば、測定範囲210内を3次元スキャナで一括して取得できるため、ガラス部材10の周縁11及び表面10aに関する寸法、及びガラス部材10の品質を良好に管理できる。
【0044】
また、透明以外の色のテープ材110をガラス部材10の周縁11に沿って貼ることによって、ガラス部材10に対して容易に周縁彩色領域101を設けることができる。
【0045】
また、透明以外の色のテープ材110をガラス部材10の表面10aに縦方向及び横方向に貼ることによって、ガラス部材10に対して容易に第一表面彩色領域102を設けることができる。
【0046】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について詳述した。本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 ガラス部材
10a 表面
11 周縁
100R 所定幅
101 周縁彩色領域
102 第一表面彩色領域(表面彩色領域)
103 第二表面彩色領域(表面彩色領域)
110 テープ材
200 3次元スキャナ
210 測定範囲
D 測定方向(所定方向)