(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180924
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20221130BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F03G7/06 E
H02N11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087686
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】チアゴ バッハ
(57)【要約】
【課題】形状記憶合金を使用したアクチュエータの特徴である高発生力,小型軽量の構造を維持しつつ、形状回復動作を開始するまでにかかる遅延を改善し、さらなる高速化を実現可能なアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】
本発明のアクチュエータ装置10は、形状回復動作により摺動可能なピストン12を収容するシリンダ11と、ピストン12およびピストン12に保持されたロッド13から構成される可動部20と、を備える構成とした。そして、形状記憶合金コイルばね14に対して通電制御を開始するタイミングでシリンダ11内に圧縮空気を供給することによって、形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧により可動部20が移動を開始し、通電制御によって形状回復動作を開始する温度に達した後、可動部20の動力源を空気圧から形状記憶合金コイルばね14による形状回復動作に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金の形状回復動作によって駆動するアクチュエータ装置において、
前記形状回復動作により摺動可能なピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンおよび当該ピストンに保持されたロッドから構成される可動部と、
を備え、
前記ロッドが前記ピストンの摺動に協動して外部に動きを伝える構成とし、
前記形状記憶合金に対して通電制御を開始するタイミングで前記シリンダ内に圧縮空気を供給することによって、前記形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧により前記可動部が移動を開始し、
前記通電制御によって形状回復動作を開始する温度に達した後、前記可動部の動力源を前記空気圧から前記形状記憶合金による形状回復動作に切り替える、
ことを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記ピストンを挟んで形成される前記シリンダ内の2つの空間に、それぞれ配管を設けることとし、
前記配管を介して前記圧縮空気を供給可能とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を使用したアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的なアクチュエータとして、電磁アクチュエータ,油空圧アクチュエータ,圧電アクチュエータ等、各種アクチュエータが様々な分野で用いられているが、その中でも、最も頻繁に用いられているアクチュエータは、磁力を活用した電磁アクチュエータである。たとえば、この電磁アクチュエータは、自動車や鉄道などの主な動力源として、さらには、コピー機やプリンターの紙送りのような補助的な可動部分の動作にも利用されている。
【0003】
また、近年はアクチュエータに対する要求は多様化し、新しいアクチュエータの開発により、これまでにできなかった動きを実現することが望まれている。
【0004】
一方で、上述した一般的なアクチュエータは、たとえば、高出力の要求がある場合には大型化が避けられない、という課題があった。
【0005】
そこで、構造自体が小型であるアクチュエータとして、たとえば、形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)を材料としたアクチュエータが、従来から検討されている。たとえば、現在は、SMAを材料としたアクチュエータを利用した人工筋肉ワイヤ(Artificial Muscle Wire:AMW)を用いたロボットの研究、開発が行われている。この人工筋肉ワイヤは、発生力が大きく、構造自体が小型軽量であるため、ロボットに適している。
【0006】
下記先行文献1には、形状記憶合金を材料とした形状記憶合金アクチュエータの一例が開示されている。この形状記憶合金アクチュエータにおいては、左右の固定板間を移動可能なスライダーを動かすために、そのスライダーの両側に個別に設置された形状記憶合金バネに片方ずつ通電し、両側の形状記憶合金バネを交互に加熱する。たとえば、一方の形状記憶合金バネに通電すると、ジュール熱により、その形状記憶合金バネが縮む方向に動作し、他方の形状記憶合金バネが伸びる方向に動作し、スライダーが縮んだ方に移動する。そして、形状記憶合金バネに対する通電を左右交互に行うことで、スライダーおよびこのスライダーに貫通するスライダー軸が左右に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の形状記憶合金アクチュエータは、形状記憶合金に対する通電制御によって動きを制御している。そして、この通電制御は、可動部分の外部に設けられたコントローラ(制御回路)により行われている。
【0009】
しかしながら、コントローラによる通電制御にかかる遅延や、電流を流し始めてから形状回復動作を開始可能な所定の加熱温度に達するまでの遅延等、形状記憶合金の特性上、形状回復動作に入るまでの初期動作にある程度の時間を要する、という問題があった。
【0010】
本発明は、形状記憶合金を使用したアクチュエータの特徴である高発生力,小型軽量の構造を維持しつつ、形状回復動作を開始するまでにかかる遅延を改善し、さらなる高速化を実現可能なアクチュエータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるアクチュエータ装置は、形状記憶合金の形状回復動作によって駆動するアクチュエータ装置であって、たとえば、形状回復動作により摺動可能なピストンを収容するシリンダと、ピストンおよび当該ピストンに保持されたロッドから構成される可動部と、を備え、ロッドがピストンの摺動に協動して外部に動きを伝える構成とした。そして、形状記憶合金に対して通電制御を開始するタイミングでシリンダ内に圧縮空気を供給することによって、形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧により可動部が移動を開始し、通電制御によって形状回復動作を開始する温度に達した後、可動部の動力源を空気圧から形状記憶合金による形状回復動作に切り替える、ことを特徴とする。
【0012】
これにより、形状記憶合金が形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧によりピストンを動かすことが可能となるため、アクチュエータ装置の初動の遅れの改善、およびアクチュエータ装置の動きのさらなる高速化、を実現することができる。なお、確実にアクチュエータ装置を動かすために、通電制御によって形状回復動作を開始する温度に達した後の一定期間についても、圧縮空気を供給することが好ましい。
【0013】
また、本発明にかかるアクチュエータ装置は、ピストンを挟んで形成されるシリンダ内の2つの空間にそれぞれ配管を設けることとし、これらの配管を介して圧縮空気を供給可能とすることが望ましい。これにより、たとえば、ピストンの移動による各空間の容積の変化に応じた空気の供給および排気が可能となり、さらに、圧縮空気を強制的に供給することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるアクチュエータ装置によれば、形状記憶合金を使用したアクチュエータの特徴である高発生力,小型軽量の構造を維持しつつ、形状回復動作を開始するまでにかかる遅延を改善することができ、これにより、さらなる高速化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態の構成例を示す図であり、(a)はアクチュエータ装置の外観図を示し、(b)はアクチュエータ装置のA-A´断面図を示す。
【
図2】
図2は、可動部の外観の一例を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明にかかるアクチュエータ装置の動作イメージの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかるアクチュエータ装置の状態の一例を示す構成図であり、(a)はアクチュエータ装置の外観図を示し、(b)はアクチュエータ装置のB-B´断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0017】
<実施形態>
本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<構成>
図1は、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態の構成例を示す図であり、(a)はアクチュエータ装置の外観図を示し、(b)はアクチュエータ装置のA-A´断面図を示している。
【0019】
図1において、アクチュエータ装置10は、たとえば円筒形状に設けられたシリンダ11と、シリンダ11内に摺動可能に収容されたピストン12と、ピストン12の移動方向両側に保持されたロッド13(13a,13b)と、ピストン12を押動可能にロッド13a,13bに個別に巻き付けられた形状記憶合金コイルばね14(14a,14b)と、を備える。本実施形態では、上記ピストン12と上記ロッド13によりアクチュエータ装置10の可動部20を構成する。
【0020】
図2は、上記可動部20の外観の一例を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は正面図を示し、(c)は側面図を示す。
【0021】
また、シリンダ11の両端部に形成された円の中央には、それぞれ開口部15a,15bが設けられ、開口部15aにはロッド13aが、開口部15bにはロッド13bが、それぞれ挿入される。ロッド13a,13bは、ピストン12の動きに協働して開口部15a,15b周縁を摺動することによって、アクチュエータ装置10の動きを外部に伝える。また、開口部15aとロッド13aとの接触部分、および開口部15bとロッド13bとの接触部分については、空気の気密を保持可能なシール構造を有する。
【0022】
また、形状記憶合金コイルばね14aは、一方の端部を開口部15a周縁のシリンダ11端部に接合し、他方の端部をピストン12に接合し、たとえば、通電による加熱(ジュール熱による熱駆動)によって予め記憶された形状に回復する。また、形状記憶合金コイルばね14bは、一方の端部を開口部15b周縁のシリンダ11端部に接合し、他方の端部をピストン12に接合し、上記と同様に、加熱によって予め記憶された形状に回復する。すなわち、本実施形態では、それぞれの形状記憶合金コイルばね14a,14bに対して交互に通電する制御を行うことによって交互に形状回復動作が行われ、これにより、ピストン12がシリンダ11の両端方向へ交互に摺動する。本実施形態では、一例として、加熱により伸びる方向に動く形状記憶合金コイルばねを想定する。
【0023】
また、シリンダ11内には、ピストン12を挟んで形成される空間としてチャンバ16a,16bが形成され、さらに、チャンバ16a,16bには、それぞれ制御弁を有する配管17a,17bが設けられ、これらの構成により、たとえば、ピストン12の移動によるチャンバ16a,16bの容積の変化に応じた空気の供給および排気を可能とする。本実施形態では、たとえば、一方のチャンバに空気が供給された場合(容積が増大した場合)には、他方のチャンバでは排気が行われ、これにより、各チャンバ内の気圧が常時一定となるようにシリンダ11内をピストン12が摺動する。
【0024】
なお、本実施形態では、上記のとおり、形状記憶合金コイルばね14(14a,14b)に対する通電制御によりアクチュエータ装置10の動きを制御することとしたが、たとえば、コントローラ(図示せず)による通電制御にかかる遅延や、電流を流し始めてから形状回復動作を開始可能な所定の加熱温度に達するまでにかかる遅延等、形状記憶合金コイルばね14の特性上、形状回復動作に入るまでの初期動作に多少の時間を要する。そこで、これらの遅延を補うため、本実施形態では、各チャンバ16a,16bに対し、制御弁を有する配管17a,17bを介して強制的に所定の圧力の空気(圧縮空気)を供給可能とする。たとえば、形状記憶合金コイルばね14aに対する通電制御を開始するタイミングで、チャンバ16aに設けられた配管17aから強制的に圧縮空気を供給する。または、形状記憶合金コイルばね14bに対する通電制御を開始するタイミングで、チャンバ16bに設けられた配管17bから強制的に圧縮空気を供給する。
【0025】
これにより、形状記憶合金コイルばね14aが形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧によりピストン12を動かすことが可能となり、ひいては、アクチュエータ装置10の初動の遅れの改善、およびアクチュエータ装置10の動きのさらなる高速化、を実現することができる。なお、上記一方のチャンバに設けられた配管から圧縮空気が供給された場合、容積が減少する他方のチャンバに設けられた配管からは、チャンバ内の気圧を一定に保つために排気が行われる。
【0026】
<制御>
つづいて、本実施形態のアクチュエータ装置10の制御の一例を、図面を用いて詳細に説明する。ここでは、便宜上、初期状態のピストン12の位置がシリンダ11の左端側にあるもの(
図1参照)として、アクチュエータ装置10の動きを説明する。
【0027】
ここで、本実施形態において、形状記憶合金コイルばね14a,14bには、図示しないコントローラによる通電制御によって交互に電流が供給される。また、配管17a,17bには、制御弁を介して、所定の圧力の空気(圧縮空気)を噴射可能な圧縮機(図示せず)が接続され、この圧縮機は、図示しないコントローラからの制御でチャンバ16aまたはチャンバ16bへ空気を供給する。
【0028】
図3は、本発明にかかるアクチュエータ装置10の動作イメージの一例を示す図である。
【0029】
たとえば、初期状態(
図1の状態)においてアクチュエータ装置10を駆動する場合、本実施形態においては、まず、コントローラ(図示せず)からの制御によって、形状記憶合金コイルばね14aに対する通電制御の開始と同時に(
図3の通電制御開始タイミング参照)圧縮機が駆動され、圧縮空気が配管17aを介してチャンバ16aへ供給される。このとき、制御弁(図示せず)は配管17a側へ接続されており、たとえば、圧縮機から噴射される圧縮空気は、少なくとも形状記憶合金コイルばね14aが形状回復動作を開始する所定の加熱温度Tに達するまでの間(
図3のT
0→Tに相当)、チャンバ16aへ供給される(
図3のOFF→ON→OFFに相当)。なお、確実にアクチュエータ装置10を動かすために、通電制御によって形状回復動作を開始する加熱温度Tに達した後の一定期間についても、圧縮空気をチャンバ16aへ供給することが好ましい。これにより、形状記憶合金コイルばね14aが形状回復動作を開始するタイミング(
図3の形状回復動作開始タイミング参照)よりも先に、空気圧によりピストン12がシリンダ11内右端方向へ摺動を開始するとともに、ロッド13も協動して右側方向への摺動を開始する。
【0030】
その後、通電により所定の加熱温度Tに達すると、形状記憶合金コイルばね14aが形状回復動作を開始し(
図3の形状回復動作開始タイミング参照)、記憶された状態に回復するまで、形状記憶合金コイルばね14aによるピストン12への押動が継続する。なお、この形状回復動作の期間については、チャンバ16aの容積の増大に伴う空気の供給およびチャンバ16bの容積の減少に伴う排気は行われるが、圧縮機による圧縮空気の噴射は行われない。
【0031】
そして、形状記憶合金コイルばね14aが予め記憶された状態に回復したタイミングでコントローラによる通電制御が終了し、アクチュエータ装置10は、つぎの動作タイミングまで待機となる。
図4は、形状記憶合金コイルばね14aが予め記憶された状態に回復した時点におけるアクチュエータ装置10の状態の一例を示す構成図であり、(a)はアクチュエータ装置の外観図を示し、(b)はアクチュエータ装置のB-B´断面図を示している。ここでは、図示のように、ロッド13bが、右側方向へ移動し開口部15bから大きく突き出した状態となる。
【0032】
一方、上記待機状態(
図4の状態)においてアクチュエータ装置10を逆側へ駆動する場合、本実施形態においては、まず、コントローラからの制御によって、形状記憶合金コイルばね14bに対する通電制御の開始と同時に(
図3の通電制御開始タイミング参照)圧縮機が駆動され、圧縮空気が配管17bを介してチャンバ16bへ供給される。このとき、制御弁は配管17b側へ接続されており、たとえば、圧縮機から噴射される圧縮空気は、少なくとも形状記憶合金コイルばね14bが形状回復動作を開始する所定の加熱温度Tに達するまでの間(
図3のT
0→Tに相当)、チャンバ16bへ供給される(
図3のOFF→ON→OFFに相当)。なお、上記同様、確実にアクチュエータ装置10を動かすために、通電制御によって形状回復動作を開始する加熱温度Tに達した後の一定期間についても、圧縮空気をチャンバ16bへ供給することが好ましい。これにより、形状記憶合金コイルばね14bが形状回復動作を開始するタイミング(
図3の形状回復動作開始タイミング参照)よりも先に、空気圧によりピストン12がシリンダ11内左端方向へ摺動を開始するとともに、ロッド13も協動して左側方向への摺動を開始する。
【0033】
その後、通電により所定の加熱温度Tに達すると、形状記憶合金コイルばね14bが形状回復動作を開始し(
図3の形状回復動作開始タイミング参照)、記憶された状態に回復するまで、形状記憶合金コイルばね14bによるピストン12への押動が継続する。なお、この形状回復動作の期間については、チャンバ16bの容積の増大に伴う空気の供給およびチャンバ16aの容積の減少に伴う排気は行われるが、圧縮機による圧縮空気の噴射は行われない。
【0034】
そして、形状記憶合金コイルばね14bが予め記憶された状態に回復したタイミングでコントローラによる通電制御が終了し、アクチュエータ装置10は、つぎの動作タイミングまで待機となる(
図1の状態)。ここでは、
図1に示すように、ロッド13aが、左側方向へ移動し開口部15aから大きく突き出した状態となる。
【0035】
以降、本実施形態のアクチュエータ装置10は、上記動作の繰り返しによって、可動部20(ピストン12およびロッド13)による直線的な反復動作、すなわち、
図1→
図4→
図1→
図4…の動き、を実現する。
【0036】
このように、本実施形態のアクチュエータ装置10は、形状記憶合金コイルばね14(14a,14b)の形状回復動作によって駆動することとし、たとえば、形状回復動作により摺動可能なピストン12を収容するシリンダ11と、ピストン12およびピストン12に保持されたロッド13から構成される可動部20と、を備え、ロッド13がピストン12の摺動に協動して外部に動きを伝える構成とした。そして、形状記憶合金コイルばね14aまたは形状記憶合金コイルばね14bに対して通電制御を開始するタイミングでシリンダ11内に圧縮空気を供給することによって、形状回復動作を開始するタイミングよりも先に、空気圧により可動部20が移動を開始し、通電制御によって形状回復動作を開始する温度に達した後、可動部20の動力源を空気圧から形状記憶合金コイルばね14による形状回復動作に切り替える。
【0037】
これにより、形状記憶合金を使用したアクチュエータの特徴である高発生力,小型軽量の構造を維持しつつ、アクチュエータ装置10の初動の遅れを改善することができ、さらに、アクチュエータ装置10の動きのさらなる高速化も実現できる。
【0038】
なお、本実施形態では、形状記憶合金の一例として、コイル状に形成されたものを使用することとしたが、これに限るものではなく、たとえば、ワイヤ状のものであってもよく、形状回復動作によりピストン12を摺動可能に設けられたものであれば、形状記憶合金はどのような形状であってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、一例として、加熱により伸びる方向に動く形状記憶合金コイルばね14(14a,14b)を使用することとしたが、これに限るものではなく、熱により縮む方向に動く形状記憶合金コイルばねを使用することとしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、開口部15aにロッド13aを挿入し、開口部15bにロッド13bを挿入することによって、シリンダ11の両側からアクチュエータ装置10の動きを外部に伝えることとしたが、これに限るものではなく、たとえば、開口部を一方だけに設け、シリンダの片側からアクチュエータ装置の動きを外部に伝える構成としてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、圧縮空気を用いてアクチュエータ装置10を駆動可能な構成としたが、圧縮空気のような気体の代わりに、水,油等の流体を適用することとしてもよい。水や油を用いれば、形状記憶合金の冷却効率が向上する。
【符号の説明】
【0042】
10 アクチュエータ装置
11 シリンダ
12 ピストン
13,13a,13b ロッド
14,14a,14b 形状記憶合金コイルばね
15a,15b 開口部
16a,16b チャンバ
17a,17b 配管
20 可動部