(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180932
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】推定装置、および推定方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087697
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 隆生
(72)【発明者】
【氏名】奥富 忠相
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朝明
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 瑞穂
(57)【要約】
【課題】地中の農作物の生育状況を把握すること。
【解決手段】推定装置は、一端が地中に埋め込まれ、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜の周囲に設置された複数の測定用マーカを所定時間ごとに撮像するカメラ部と、カメラ部で撮像された映像データに基づき、それぞれの測定用マーカの位置を測定し、マーカ位置データとして取得するマーカ位置データ取得部と、測定用マーカの位置の測定時刻とマーカ位置データから測定用マーカそれぞれの時間の経過に伴う測定用マーカの位置の変化である複数の変位ベクトルを求める変位ベクトル算出部と、複数の変位ベクトルの変化に基づいて根菜の地中部分の成長を推定する成長推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が地中に埋め込まれ、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜の周囲に設置された複数の前記測定用マーカを所定時間ごとに撮像するカメラ部と、
前記カメラ部で撮像された映像データに基づき、それぞれの前記測定用マーカの位置を測定し、マーカ位置データとして取得するマーカ位置データ取得部と、
前記測定用マーカの位置の測定時刻と前記マーカ位置データから前記測定用マーカそれぞれの時間の経過に伴う前記測定用マーカの位置の変化である複数の変位ベクトルを求める変位ベクトル算出部と、
複数の前記変位ベクトルの変化に基づいて前記根菜の地中部分の成長を推定する成長推定部と、
を備える、推定装置。
【請求項2】
前記カメラ部を複数備え、
前記マーカ位置データ取得部は、複数の前記カメラ部で撮像された映像データに基づき、前記測定用マーカの3次元空間での位置を測定し、
前記変位ベクトル算出部は、前記マーカ位置データ取得部が取得した前記マーカ位置データから前記測定用マーカそれぞれの3次元空間での変位ベクトルを求める、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記成長推定部は、前記変位ベクトルの単位時間当たりのベクトル量の変化が予め設定された第1閾値以上で、予め設定された第1期間以上連続する第1状態を成長期と推定し、前記第1状態の後に前記ベクトル量の変化が予め設定された第2閾値以下で、予め設定された第2期間以上連続する第2状態を収穫期として推定する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記根菜周辺の気候に関する気候データをセンサ部から取得するセンサデータ取得部と、
日照時間を測定する天候測定部をさらに備え、
前記成長推定部は、前記日照時間と前記気候データとが根菜の成長を阻害する予め設定された値の範囲であった場合に、前記変位ベクトル算出部で求めた変位ベクトルを推定に使用しない、
請求項1から3のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
一端が地中に埋め込まれ、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜の周囲に設置された複数の前記測定用マーカを所定時間ごとに撮像するステップと、
撮像された映像データに基づき、それぞれの前記測定用マーカの位置を測定し、マーカ位置データとして取得するステップと、
前記測定用マーカの位置の測定時刻と前記マーカ位置データから前記測定用マーカそれぞれの時間の経過に伴う前記測定用マーカの位置の変化である複数の変位ベクトルを求めるステップと、
複数の前記変位ベクトルの変化に基づいて前記根菜の地中部分の成長を推定するステップと、
を含む、推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、および推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の成長と環境条件との因果関係を把握するために、農作物の成長に伴う変化の情報を取得する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作物の地上での生育状況は、農作物を撮像した映像データに基づいて判定することができる。しかしながら、根菜などの地中の農作物を撮像して、根菜の生育状況を判定することは困難である。
【0005】
本発明は、地中の農作物の生育状況を把握することのできる推定装置、および推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る推定装置は、一端が地中に埋め込まれ、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜の周囲に設置された複数の前記測定用マーカを所定時間ごとに撮像するカメラ部と、前記カメラ部で撮像された映像データに基づき、それぞれの前記測定用マーカの位置を測定し、マーカ位置データとして取得するマーカ位置データ取得部と、前記測定用マーカの位置の測定時刻と前記マーカ位置データから前記測定用マーカそれぞれの時間の経過に伴う前記測定用マーカの位置の変化である複数の変位ベクトルを求める変位ベクトル算出部と、複数の前記変位ベクトルの変化に基づいて前記根菜の地中部分の成長を推定する成長推定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る推定方法は、一端が地中に埋め込まれ、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜の周囲に設置された複数の前記測定用マーカを所定時間ごとに撮像するステップと、撮像された映像データに基づき、それぞれの前記測定用マーカの位置を測定し、マーカ位置データとして取得するステップと、前記測定用マーカの位置の測定時刻と前記マーカ位置データから前記測定用マーカそれぞれの時間の経過に伴う前記測定用マーカの位置の変化である複数の変位ベクトルを求めるステップと、複数の前記変位ベクトルの変化に基づいて前記根菜の地中部分の成長を推定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地中の農作物の生育状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る推定システムの構成性を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るマーカの設置例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るマーカの測定用マーカの変位を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るマーカの測定用マーカの変位を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る位置に関する情報の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
(推定システム)
図1を用いて、第1実施形態に係る推定システムの構成例について説明する。
図1は、第1実施形態に係る推定システムの構成性を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、推定システム1は、カメラ部10と、センサ部12と、推定装置14と、を備える。推定システム1は、根菜を地中から抜くことなく、地中の根菜の成長度合いを推定することのできるシステムである。以降の説明では、植物の全体を根菜食物と表現し、地中に埋まっている部分を根菜と表現する。
【0013】
カメラ部10は、対象物を撮像する。カメラ部10は、根菜の周囲に設置されたマーカを撮像する。
図2は、第1実施形態に係るマーカの設置例を示す図である。
図2に示すように、根菜食物100の周囲には、例えば、マーカM1と、マーカM2と、マーカM3と、マーカM4とが設置されている。根菜食物100は、例えば、大根、人参、および芋などが例示されるが、これらに限定されない。具体的には、マーカM1からマーカM4は、測定用マーカが付された他端が地上に露出し、根菜食物100の根菜110の周囲に設置されている。測定用マーカは、地上に露出した他端部に付された印であってもよいし、頂点部を測定用マーカとしてもよい。マーカM1からマーカM4は、棒状に構成されていてもよいし、T字状に構成されていてもよいし、L字状に構成されていてもよい。すなわち、マーカM1からマーカM4の形状は任意であってよい。
図2に示す例では、根菜食物100の根菜110の周囲には、4つのマーカが設置されているが、本発明はこれに限定されない。根菜食物100の根菜110の周囲には、複数のマーカが設置されていてもよい。
【0014】
図2に示す例では、カメラ部10は、マーカM1からマーカM4を撮像する。カメラ部10は、マーカM1からマーカM4を撮像することで、根菜110が成長に伴うマーカM1からマーカM4の位置を測定する。カメラ部10は、可視光を検出するカメラから構成されていてもよいし、赤外光を検出するカメラから構成されていてもよい。カメラ部10は、例えば、複数のカメラから構成されていてもよい。カメラ部10が複数のカメラから構成されている場合には、例えば、マーカM1からM4の3次元方向の位置の動きを測定できるように、マーカM1からM4を囲むように設置されているとよい。
【0015】
センサ部12は、根菜食物100の周辺の各種の気候を検出する。センサ部12は、例えば、根菜食物100の周辺の温度を検出する温度センサ、根菜食物100の周辺の湿度を検出する湿度センサなどを含む。センサ部12は、その他のセンサを含んでいてもよい。
【0016】
(推定装置)
図1に示すように、推定装置14は、入力部20と、表示部22と、記憶部24と、通信部26と、制御部28と、を備える。推定装置14は、カメラ部10が撮像することで測定したマーカM1からマーカM4の位置の測定結果に基づいて、地中の根菜の成長を推定する。
【0017】
入力部20は、推定装置14に対する各種の入力操作を受け付ける入力装置である。入力部20は、例えば、ボタン、タッチパネル等を含む。
【0018】
表示部22は、各種映像を表示する。表示部22は、例えば、根菜食物100の根菜110の成長度合いの推定結果を表示する。表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含むディスプレイを含む。なお、タッチパネル等を用いて、入力部20と、表示部22とを一体に構成してもよい。
【0019】
記憶部24は、各種の情報を記憶するメモリである。記憶部24は、例えば、制御部28の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部24は、変位量記憶部24aを有する。
【0020】
変位量記憶部24aは、マーカM1からマーカM4に関する情報を記憶する。変位量記憶部24aは、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの初期位置と、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの位置に関する情報と、マーカM1からマーカM4の測定用マーカ測定時刻とを関連付けて記憶している。変位量記憶部24aが記憶している情報の詳細は、後述する。
【0021】
通信部26は、推定装置14と、外部装置との間で各種の情報を送受信する通信装置である。通信部26は、カメラ部10と、推定装置14との間で情報の送受信を実行する。通信部26は、例えば、カメラ部10からマーカM1からマーカM4の測定用マーカを撮像した映像データを受信する。通信部26は、例えば、センサ部12から根菜食物100の周辺の温度や湿度の測定結果に関する情報を受信する。
【0022】
制御部28は、推定装置14の各部の動作を制御する。制御部28は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部24等に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部28は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部28は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0023】
制御部28は、マーカ位置データ取得部30と、センサデータ取得部32と、記憶制御部34と、変位ベクトル算出部36と、変位量判定部38と、成長推定部40と、天候測定部42と、を備える。
【0024】
マーカ位置データ取得部30は、カメラ部10が撮像した映像データからマーカM1からマーカM4の測定用マーカの位置の測定結果に関する情報を取得する。マーカ位置データ取得部30は、例えば、カメラ部10が撮像した映像データからマーカM1からマーカM4の測定用マーカの初期位置に関する情報を取得する。マーカ位置データ取得部30は、例えば、所定時間間隔ごとにマーカM1からマーカM4の測定用マーカの位置に関する情報を取得する。所定時間間隔は、例えば、1日であるが、これに限定されない。
【0025】
図3と、
図4とを用いて、第1実施形態に係るマーカの測定用マーカの変位について説明する。
図3と、
図4とは、第1実施形態に係るマーカの測定用マーカの変位を説明するための図である。
【0026】
図3は、根菜食物100の中期の成長段階を示す図である。
図3に示すように、根菜110が成長すると、根菜110の周囲の土が移動することで、マーカM2と、マーカM3との位置が変位する。一方、マーカM2と、マーカM3との外側に設置されたマーカM1と、マーカM4の位置はほとんど変位しない。マーカ位置データ取得部30は、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの位置に関する情報をカメラ部10が撮像した映像データから取得する。
【0027】
図4は、根菜食物100の後期の成長段階を示す図である。
図4に示すように、根菜110が
図3に示す状態から更に成長すると、根菜110の周囲の土が更に移動することで、マーカM2と、マーカM3との位置が更に変位する。根菜110の周囲の土が更に移動することで、マーカM2と、マーカM3との外側に設置されたマーカM1と、マーカM4も位置が変位する。この場合、マーカ位置データ取得部30は、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの位置に関する情報をカメラ部10が撮像した映像データから取得する。
【0028】
図1に戻る。センサデータ取得部32は、センサ部12から根菜食物100の周辺の温度や湿度の測定結果に関する情報を取得する。
【0029】
変位ベクトル算出部36は、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの予め設定された単位時間の変位の量と方向とを示す変位ベクトルを算出する。予め設定された単位時間は、例えば1日であるが、これに限定されない。変位ベクトル算出部36は、例えば、マーカ位置データ取得部30が今回取得した位置に関する情報と、マーカ位置データ取得部30が前回取得した位置に関する情報とに基づいて、変位ベクトルを算出する。変位ベクトルは、例えば、今回取得した位置に関する情報と前回取得した位置に関する情報の差分である。位置に関する情報は、例えば、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの高さ、マーカM1からマーカM4の地表面に対する傾き、マーカ間の距離を含む。位置に関する情報は、例えば、3次元空間における座標値であってもよく、これに限定されない。
【0030】
記憶制御部34は、各種情報を記憶部24に記憶させる。記憶制御部34は、例えば、マーカM1からマーカM4の初期位置データと、位置に関する情報と、測定時刻とを対応付けて変位量記憶部24aに記憶させる。記憶制御部34は、例えば、センサデータ取得部32が取得した根菜食物100の周辺の温度および湿度などを関連付けて変位量記憶部24aに記憶させる。
【0031】
変位量判定部38は、マーカM1からマーカM4の状態が正常であるか否かを判定する。変位量判定部38は、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの高さ、マーカM1からマーカM4の地表面に対する傾き、およびマーカ間の距離などが正常であるか否かを判定する。変位量判定部38は、例えば、変位量記憶部24aに記憶されたデータに基づいて、マーカM1からマーカM4の測定用マーカの高さ、マーカM1からマーカM4の地表面に対する傾き、およびマーカ間の距離などが正常であるか否かを判定する。
【0032】
図5を用いて、第1実施形態に係るマーカの位置に関する情報に基づいた根菜の成長を推定する方法について説明する。
図5は、第1実施形態に係る変位量記憶部24aに記憶されたマーカM1からマーカM4の位置に関する情報の構成を示す図である。
【0033】
図5に示すように、マーカデータ50は、「日付」と、「マーカの高さ」、「マーカの傾き」、「マーカ間の距離」、「日照時間」、「気温」、「湿度」、および「判定」といった項目を含む。
【0034】
「日付」は、各項目を、測定した日時を示す。
図5に示す例では、「2021年4月1日」、「2021年4月2日」など1日ごとの日付が示されているが、これに限定されない。
【0035】
「マーカの高さ」は、マーカM1からマーカM4の地表面からの高さ(mm)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日のマーカM1からマーカM4の高さは、それぞれ、h11、h21、h31、h41と概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0036】
「マーカの傾き」は、マーカM1からマーカM4の地表面に対する角度(度)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日のマーカM1からマーカM4の角度は、それぞれ、θ11、θ21、θ31、θ41と概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0037】
「マーカ間の距離」は、マーカ間の距離(mm)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日のマーカM1と、マーカM2との間の距離は、L11と示されている。マーカM2と、マーカM3との間の距離は、L21と示されている。マーカM3と、マーカM4との間の距離は、L31と示されている。マーカM4と、マーカM1との間の距離は、L41と示されている。
図5に示す例では、マーカ間の距離は、L11、L12、L13、L14と概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0038】
「日照時間」は、太陽の日に照らされていた時間(h)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日の日照時間は、t1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0039】
「気温」は、一日の平均気温(℃)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日の気温は、T1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0040】
「湿度」は、一日の平均湿度(%)を示す。
図5に示す例では、例えば、2021年4月1日に湿度は、H1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な数値で示される。
【0041】
変位量判定部38は、マーカデータ50のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とに基づいて、マーカの状態を判定する。変位量判定部38は、例えば、2021年4月1日のデータが最初のデータである場合には、2021年4月1日のデータを「初期データ」と判定する。
【0042】
変位量判定部38は、今回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とが、前回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とからの変化量がそれぞれの閾値以内である場合に、「正常」と判定する。具体的には、変位量判定部38は、2021年4月2日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離と、2021年4月1日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離との差が通常の根菜の成長に伴うそれぞれの変化量の範囲として予め設定された閾値以内の場合に、「正常」と判定する。
【0043】
変位量判定部38は、今回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とが、前回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とからの変化量がそれぞれの閾値以上である場合に、「マーカ倒れ」と判定する。具体的には、変位量判定部38は、2021年4月3日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離と、2021年4月2日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離との差が通常の根菜の成長に伴うそれぞれの変化量の範囲として予め設定された閾値以上である場合に、「マーカ倒れ」と判定する。
【0044】
変位量判定部38は、今回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とが、前回記憶時のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とからの変化量が通常の根菜の成長に伴うそれぞれの変化量の範囲として予め設定された閾値以内であっても、前回の判定結果が「マーカ倒れ」である場合に、「マーカ倒れ」と判定する。具体的には、変位量判定部38は、2021年4月4日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離と、2021年4月3日のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離との差が閾値以内であっても2021年4月3日の判定結果が「マーカ倒れ」である場合には、2021年4月4日も「マーカ倒れ」と判定する。
【0045】
変位量判定部38が「マーカ倒れ」と判定した場合に、測定者がマーカを手修正した場合には、入力部20を用いて、「マーカ倒れ」を「手修正」に修正することができる。2021年4月4日の判定結果は「手修正」となり、以降通常の判定を行う。
【0046】
成長推定部40は、根菜食物100の根菜110の成長の度合いを推定する。成長推定部40は、例えば、
図5に示すマーカデータ50に基づいて、根菜食物100の根菜110の成長の度合いを推定する。成長推定部40は、例えば、今回の判定結果が「正常」のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離と、前回の判定結果が「正常」のマーカの高さと、マーカの傾きと、マーカ間の距離とに基づいて、根菜食物100の根菜110の成長の判定結果を推定する。
【0047】
天候測定部42は、根菜食物100周辺の日照時間を測定する。天候測定部42は、例えば、カメラ部10が撮像した映像データの根菜食物100周辺の状況に基づいて、根菜食物100周辺の日照時間を測定する。
【0048】
(推定処理)
図6を用いて、第1実施形態に係る推定処理の流れについて説明する。
図6は、第1実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
マーカ位置データ取得部30は、各マーカの位置に関する情報を取得する(ステップS10)。具体的には、マーカ位置データ取得部30は、通信部26を介して取得されるカメラ部10が撮像した映像データから各マーカの位置に関する情報を取得する。そして、ステップS12に進む。
【0050】
記憶制御部34は、位置に関する情報を記憶させる(ステップS12)。具体的には、記憶制御部34は、マーカ位置データ取得部30が取得した位置に関する情報と、測定日時とを対応付けて変位量記憶部24aに記憶させる。そして、ステップS14に進む。
【0051】
変位ベクトル算出部36は、変位ベクトルを算出する(ステップS14)。具体的には、変位ベクトル算出部36は、変位量記憶部24aに記憶されているデータに基づいて、各マーカの地表面からの高さと、地表面に対する角度と、隣接するマーカ間の距離とについて、測定日時間の変化量を示す変位ベクトルを算出する。そして、ステップS16に進む。
【0052】
成長推定部40は、根菜110の成長を推定する(ステップS16)。具体的には、成長推定部40は、変位ベクトル算出部36が算出した変位ベクトルの算出結果に基づいて、地中の根菜の成長を推定する。成長推定部40は、変位量判定部38が「正常」と判定した変位量のデータに基づいて、根菜110の成長の度合いを推定する。より具体的には、成長推定部40は、前回および今回の変位量判定部38による判定結果が「正常」と判定されたデータ間の変位ベクトルに基づいて、成長推定部40の成長の度合いを推定する。そして、ステップS18に進む。
【0053】
成長推定部40は、根菜110の成長の度合いの推定結果を表示部22に表示させる(ステップS18)。具体的には、成長推定部40は、根菜110の成長の度合いの推定結果をグラフィカルに表示部22に表示する。より具体的には、成長推定部40は、根菜110の根菜110の成長の度合いが視覚的または直感的に把握できるように根菜110の成長の度合いをグラフィカルに表示する。そして、ステップS20に進む。
【0054】
制御部28は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS20)。具体的には、制御部28は、電源をオフにする操作を受け付けた場合や、処理を終了する操作を受け付けた場合に、処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS20;Yes)、
図6の処理を終了する。処理を終了すると判定されなかった場合(ステップS20;No)、ステップS10に進む。
【0055】
上述のとおり、第1実施形態は、根菜の周囲にマーカを設置し、地中の根菜が成長したことによるマーカの変化量に基づいて、根菜の成長度合いを推定する。これにより、第1実施形態は、根菜を地中から抜くことなく、根菜の成長度合いを把握することができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る推定システムの構成は、
図1に示す推定システム1の構成と同一なので説明を省略する。
【0057】
(推定処理)
図7を用いて、第2実施形態に係る推定処理の流れについて説明する。
図7は、第2実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。第2実施形態では、根菜の収穫期を判定する処理を実行する点で、第1実施形態とは異なる。
【0058】
ステップS30は、
図6に示すステップS10と同一の処理なので、説明を省略する。
【0059】
ステップS30の後、制御部28は、根菜食物100の周辺の環境情報を取得する(ステップS32)。具体的には、センサデータ取得部32は、例えば、根菜食物100の周辺に設置されたセンサ部12から、根菜食物100の周辺の温度情報および湿度情報などを取得する。天候測定部42は、例えば、カメラ部10から根菜食物100の周辺を撮像した映像データに基づいて、日照時間を測定する。センサデータ取得部32は、例えば、通信部26を介して、外部のサーバ装置などから根菜食物100が植えられている地域の温度情報および湿度情報を取得してもよい。天候測定部42は、例えば、通信部26を介して、外部のサーバ装置などから根菜食物100が植えられている地域の日照時間に関する情報を取得してもよい。環境情報には、気温、湿度、日照時間以外の情報が含まれていてもよい。
【0060】
記憶制御部34は、位置に関する情報を記憶させる(ステップS34)。具体的には、記憶制御部34は、マーカ位置データ取得部30が取得した位置に関する情報と、センサデータ取得部32および天候測定部42が取得した環境情報と、測定日時とを対応付けて変位量記憶部24aに記憶させる。そして、ステップS36に進む。
【0061】
ステップS36およびステップS38の処理は、それぞれ、ステップS14およびステップS16の処理と同一なので、説明を省略する。
【0062】
ステップS38の後、成長推定部40は、根菜110が収穫期であるか否かを判定する(ステップS40)。具体的には、成長推定部40は、例えば、変位ベクトルの単位時間当たりのベクトル量の変化が、予め設定されたベクトル量である第1閾値以上で、予め設定された第1期間以上連続する第1状態を成長期として推定する。成長推定部40は、例えば、第1状態の後にベクトル量の変化が予め設定されたベクトル量である第2閾値以下で、予め設定された第2期間以上連続する第2状態を収穫期として推定する。これは、成長期では根菜110は日々成長するため変位ベクトルの変化が大きくなり、収穫が近づくと根菜110の成長速度が遅くなり変位ベクトルの変化が小さくなるためである。第1閾値、第1期間、第1状態、第2閾値、第2期間、および第2状態は、それぞれ、根菜110の種類に応じて設定してよい。例えば、成長推定部40は、日付(n)のマーカ間の距離(M2-M3)=X(n)と、マーカ間の距離(M4-M1)=Y(n)とで構成される2次元の値L=(X(n),Y(n))について、前日からの差分を変位ベクトルΔL=(X(n)-X(n-1),Y(n)-Y(n-1))として、変位ベクトルの長さ|ΔL|について、第1閾値=0.5として|ΔL|≧0.5が第1期間である30日間以上であった第1状態の成長期の後に、第2閾値=0.5として|ΔL|≦0.5が第2期間である5日間以上であった第2状態を収穫期とする。また、根菜110の成長の度合いについて、例えば、成長推定部40は、マーカM1からマーカM4のそれぞれが50mm間隔で設置されている場合、4つのマーカの全てにおいて初期データから閾値を超す変化を観測した場合、根菜110の横幅は200mm程度に成長していると推定する。例えば、成長推定部40は、マーカM1からマーカM4のそれぞれが50mm間隔で設置された4つのマーカについて初期データの高さからの変化量がそれぞれ20mm、30mm、30mm、および20mmとなった場合、根菜110は円形または楕円形で、高さは30mm程度に成長していると推定する。収穫期であると判定された場合(ステップS40;Yes)、ステップS42に進む。収穫期であると判定されなかった場合(ステップS40;No)、ステップS44に進む。
【0063】
なお、ステップS40において、成長推定部40は、根菜食物100の周辺の環境情報を加味して根菜110が収穫期であるか否かを判定してもよい。例えば、成長推定部40は、変位ベクトルのベクトル量の変化が小さく、かつ日照時間が所定時間よりも少ないまたは気温が適温ではない場合には、変位ベクトルの変化量が小さいのは収穫期が近いからではなく、環境が悪いためであると推定してもよい。言い換えれば、成長推定部40は、根菜周辺の日照時間や気候(気温、湿度)などの環境情報に基づいて、根菜110の成長の度合いを推定するために使用する変位ベクトルと、使用しない変位ベクトルとを選別してもよい。
【0064】
ステップS40でYesと判定された場合、成長推定部40は、根菜110が収穫期であることを通知する(ステップS42)。具体的には、成長推定部40は、根菜110が収穫期である旨の情報を表示部22に表示させるとともに、根菜110の成長の度合いの推定結果をグラフィカルに表示部22に表示させる。そして、ステップS46に進む。
【0065】
ステップS44およびステップS46の処理は、それぞれ、
図6に示すステップS18およびステップS20の処理と同一なので、説明を省略する。
【0066】
上述のとおり、第2実施形態では、根菜の周囲にマーカを設置し、地中の根菜が成長したことによるマーカの位置の変位に基づいて、根菜が収穫期であるか否かを判定する。これにより、第2実施形態は、根菜を地中から抜くことなく、根菜が収穫期であるか否かを判定することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 推定システム
10 カメラ部
12 センサ部
14 推定装置
20 入力部
22 表示部
24 記憶部
24a 変位量記憶部
26 通信部
28 制御部
30 マーカ位置データ取得部
32 センサデータ取得部
34 記憶制御部
36 変位ベクトル算出部
38 変位量判定部
40 成長推定部
42 天候測定部
100 根菜食物
110 根菜