(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180933
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】クランプ用ソレノイドアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
H01F7/16 Z
H01F7/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087699
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】川島 康聡
(72)【発明者】
【氏名】河原 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松村 壌
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA08
5E048AA10
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】クランプする対象物の大きさによらず、クランプ時のアーマチュアとコアの隙間を常に一定かつ最小とし、アーマチュアの吸引力を維持できるクランプ用ソレノイドアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ100は、コイル104と、固定鉄心であるコア106と、コアに対向して配置され、コイルが励磁されるとコアに向かって移動する中空のアーマチュア108と、アーマチュアの内部に摺動可能に挿通され、対象物102に向かって移動して対象物をクランプするシャフト110と、シャフトに設けられ、シャフトからアーマチュアの内壁128に向かって張り出したフランジ120と、フランジとアーマチュアの底壁132との間に配置された第1の圧縮ばね122と、フランジとコアの間に配置された第2の圧縮ばね126と、アーマチュアがコアに接近し当接する前に、アーマチュアとシャフトの相対移動をロックするロック機構124とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象物をクランプするクランプ用ソレノイドアクチュエータであって、
通電状態で励磁されるコイルと、
固定鉄心であるコアと、
前記コアに対向して配置され、前記コイルが励磁されると該コアに向かって移動する中空のアーマチュアと、
前記アーマチュアの内部に摺動可能に挿通され、前記対象物に向かって移動して該対象物をクランプするシャフトと、
前記シャフトに設けられ、該シャフトから前記アーマチュアの内壁に向かって張り出したフランジと、
前記フランジと前記アーマチュアの底壁との間に配置された第1の圧縮ばねと、
前記フランジと前記コアの間に配置された第2の圧縮ばねと、
前記アーマチュアが前記コアに接近し当接する前に、前記アーマチュアと前記シャフトの相対移動をロックするロック機構と、を備えることを特徴とするクランプ用ソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の圧縮ばねは、前記第2の圧縮ばねよりもバネ荷重が大きいことを特徴とする請求項1に記載のクランプ用ソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記コアの近傍に配置された転動体と、
前記アーマチュアに形成されたテーパ面とを有し、
前記アーマチュアと前記コアの間に所定の隙間を有する位置で、前記転動体が前記テーパ面と前記シャフトに当接し、楔作用によって前記アーマチュアと前記シャフトの相対移動をロックすることを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ用ソレノイドアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の対象物をクランプするシャフトを有するクランプ用ソレノイドアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一例としてソレノイドアクチュエータは、コイルと、固定鉄心(コア)と、可動鉄心(アーマチュア)とを有し、コアとアーマチュアを対向配置して、コイルを励磁すると、アーマチュアがコアに対する吸引力を発生してコアに接近する。アーマチュアの吸引力は磁力によるものであるから、コアとの隙間(ギャップ)が小さいほど大きくなる。
【0003】
特許文献1には、ソレノイドアクチュエータとして電磁弁装置が記載されている。この電磁弁装置は、コイルを埋設したコアと、コアに対設されて電磁力によりコアに着脱されるアーマチュアとを備え、アーマチュアに開閉弁を連結していて、コイルの電磁力によってアーマチュアがコアに接近すると開閉弁が閉じられる。
【0004】
この電磁弁装置では、コアのうちアーマチュアに対面する面を平面に形成し、さらに、アーマチュアのうちコアの平面に形成した面に小さな間隙をおいて対面する面を、凸状の球面または楕円球面に形成することにより、中心部間隙を外縁部間隙に比べて縮小している。
【0005】
特許文献1では、アーマチュアの面が凸状の球面に形成されているので、外縁部間隙は中心部間隙に比べて広くなる。このため、部品精度が低いためにアーマチュアがコアに対して傾いて取り付けられたとしても、アーマチュアがコアと干渉しない。すなわち同じ傾き角に対してアーマチュアがコアと干渉するに至る間隙を小さくすることができ、アーマチュアの吸引力を増大させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の電磁弁装置を、所定の対象物をクランプするシャフトを有するクランプ用ソレノイドアクチュエータに適用する場合、アーマチュアにシャフトを連結するという構成を採用することになる。しかし、このような構成では、対象物の大きさによってクランプ時でのコアとアーマチュアの隙間が異なり、大きな対象物をクランプすると隙間が大きくなるため、アーマチュアの吸引力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、クランプする対象物の大きさによらず、クランプ時のアーマチュアとコアの隙間を常に一定かつ最小とし、アーマチュアの吸引力を維持できるクランプ用ソレノイドアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるクランプ用ソレノイドアクチュエータの代表的な構成は、所定の対象物をクランプするクランプ用ソレノイドアクチュエータであって、通電状態で励磁されるコイルと、固定鉄心であるコアと、コアに対向して配置され、コイルが励磁されるとコアに向かって移動する中空のアーマチュアと、アーマチュアの内部に摺動可能に挿通され、対象物に向かって移動して対象物をクランプするシャフトと、シャフトに設けられ、シャフトからアーマチュアの内壁に向かって張り出したフランジと、フランジとアーマチュアの底壁との間に配置された第1の圧縮ばねと、フランジとコアの間に配置された第2の圧縮ばねと、アーマチュアがコアに接近し当接する前に、アーマチュアとシャフトの相対移動をロックするロック機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、所定の対象物をクランプするシャフトが、コアに対向配置された有底円筒の中空のアーマチュアの内部に摺動可能に挿通されている。さらに中空のアーマチュアの内部には、シャフトのフランジとアーマチュアの底壁との間に第1の圧縮ばねが配置され、フランジとコアとの間に第2の圧縮ばねが配置されている。
【0011】
このためコイルが励磁されると、まず、シャフトが対象物に接触していない状態では、コアとアーマチュアの間の吸引力が第1の圧縮ばねを介してフランジからシャフトに伝わる。そしてシャフトは、第2の圧縮ばねを主に圧縮しながらアーマチュアと一体になって対象物に向かって繰り出される。
【0012】
つぎに、シャフトが対象物に接触すると、シャフトの移動が停止するため、フランジとコアの間に配置された第2の圧縮ばねはそれ以上圧縮されない。しかし、アーマチュアに対してシャフトが摺動可能であり、両部材は互いに一体に固定されていない。このため、アーマチュアのみが第1の圧縮ばねを圧縮しながらコアにさらに接近することができる。つまり、コイルとアーマチュアの間の吸引力が第1の圧縮ばねを介してフランジからシャフトに伝わって、シャフトの押圧力となる。
【0013】
ここでクランプの対象物の大きさが変わるとシャフトのストローク(繰り出し量)が変わることになる。しかし上記構成によれば、対象物の大きさによらず、アーマチュアは常にコアにぎりぎりのところまで接近することができる。このため、対象物をクランプしているときの、アーマチュアとコアの隙間を最少かつ一定にすることができ、アーマチュアの吸引力は最大かつ一定に維持することができる。また上記構成では、ロック機構により、アーマチュアがコアに接近し当接する前に、アーマチュアとシャフトの相対移動をロックすることにより、アーマチュアとコアとの最少の隙間を規定することができる。
【0014】
上記の第1の圧縮ばねは、第2の圧縮ばねよりもバネ荷重が大きいとよい。
【0015】
まず、コイルが励磁され、シャフトが対象物に接触していない状態では、シャフトを対象物に向かって繰り出すだけでよい。このため、第1の圧縮ばねよりもバネ荷重が小さい第2の圧縮ばねを主に圧縮すれば、シャフトをアーマチュアと一体に容易に繰り出すことができる。
【0016】
一方、シャフトが対象物に接触すると、アーマチュアのみが第1の圧縮ばねを圧縮しながらコアにさらに接近する。このとき、コイルとアーマチュアの間の吸引力が第1の圧縮ばねを介してフランジからシャフトに伝わって、シャフトの押圧力となる。このため、第2の圧縮ばねよりもバネ荷重が大きい第1の圧縮ばねを圧縮することで、シャフトの押圧力を高めて対象物を確実にクランプすることができる。
【0017】
上記のロック機構は、コアの近傍に配置された転動体と、アーマチュアに形成されたテーパ面とを有し、アーマチュアとコアの間に所定の隙間を有する位置で、転動体がテーパ面とシャフトに当接し、楔作用によってアーマチュアとシャフトの相対移動をロックするとよい。
【0018】
上記構成では、アーマチュアとコアの間に所定の隙間を有する位置で、転動体がアーマチュアのテーパ面とシャフトに当接する。なお所定の隙間とは、ロック機構によって規定されるアーマチュアとコアとの最少の隙間である。このため、シャフトが対象物に接触した状態で、アーマチュアの吸引力は、第1の圧縮ばねを介してフランジからシャフトに伝わるだけでなく、アーマチュアのテーパ面から転動体を介してシャフトに伝わることになる。
【0019】
つまり上記構成では、アーマチュアの吸引力がこれら2つの経路からシャフトに伝わって、シャフトの押圧力になるため、大きな押圧力で対象物を確実にクランプすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クランプする対象物の大きさによらず、クランプ時のアーマチュアとコアの隙間を常に一定かつ最小とし、アーマチュアの吸引力を維持できるクランプ用ソレノイドアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態におけるクランプ用ソレノイドアクチュエータの全体構成図である。
【
図2】
図1のアクチュエータの動作を説明する図である。
【
図3】
図2(c)のアクチュエータのロック機構の周辺を拡大して示す図である。
【
図4】
図1のアクチュエータのシャフトストロークに対するクランプ時の吸引力を従来品と比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態におけるクランプ用ソレノイドアクチュエータ(以下、アクチュエータ100)の全体構成図である。アクチュエータ100は、所定の対象物102(
図2参照)をクランプする装置であって、円筒状のコイル104と、固定鉄心であるコア106と、アーマチュア108と、シャフト110とを備える。コイル104は、筒状のボディ112内に配置されていて、通電状態で励磁される。図中では、コイル104が非励磁である初期状態を示している。
【0024】
コア106は、シャフト110を挿通する円環状の部材であって、基部114と対向部116とを有する。基部114は、図示のようにボディ112の側壁118に保持され、さらにスリーブ119に固定されている。対向部116は、基部114からコイル104の内側に延長された部位であり、アーマチュア108に対向している。
【0025】
アーマチュア108は、シャフト110を挿通する有底円筒の中空の可動鉄心であって、コア106に対向して配置されている。アクチュエータ100では、コイル104が励磁されると、コア106とアーマチュア108の間の吸引力によって、アーマチュア108がコア106に接近するように可動する。アーマチュア108の吸引力は、磁力によるものであるから、コア106との隙間(ギャップ)が小さいほど大きくなる。
【0026】
シャフト110は、中空のアーマチュア108の内部に摺動可能に挿通されている。つまり、シャフト110とアーマチュア108は、一体に固定されていない。またシャフト110は、対象物102に向かって移動して対象物102をクランプする。このため、クランプの対象物102の大きさが変わると、シャフト110のストローク(繰り出し量)が変わることになる。
【0027】
アクチュエータ100はさらに、フランジ120と、第1の圧縮ばね122と、ロック機構124と、第2の圧縮ばね126とを備える。フランジ120は、シャフト110に設けられ、シャフト110からアーマチュア108の内壁128に向かって張り出している。またシャフト110には、アーマチュア108の底壁132の外側にストッパ130が設けられている。
【0028】
第1の圧縮ばね122は、フランジ120とアーマチュア108の底壁132との間に配置されていて、第2の圧縮ばね126よりもバネ荷重が大きい。ロック機構124は、転動体134と、アーマチュア108の内径側に形成されたテーパ面136とを有し、後述するが、アーマチュア108がコア106に接近し当接する前に、アーマチュア108とシャフト110の相対移動をロックする。
【0029】
転動体134は、スリーブ119にねじ止めされたリテーナ138に保持されている。またリテーナ138とコア106との間には、リング140とばね142が配置されている。転動体134は、ばね142によってリング140を介してアーマチュア108に向かって押圧されている。そしてリング140は、リテーナ138から脱落しないように転動体132を保持している。
【0030】
またリテーナ138の先端部144は、中空のアーマチュア108の内部に位置していて、第2の圧縮ばね126に接している。つまり、第2の圧縮ばね126は、フランジ120とコア106の間であって、より具体的には、フランジ120とリテーナ138の先端部144との間に配置されている。
【0031】
ここでアクチュエータ100は、コイル104が非励磁である
図1の初期状態において、第2の圧縮ばね126の反発力によってアーマチュア108がコア106から離れるように押圧されている。このため、アクチュエータ100は、初期状態でコア106の対向部116とアーマチュア108の端面146との隙間(以下、コア106とアーマチュア108の隙間)が最大寸法Laとなっている。このときストッパ130は、図示のようにアーマチュア108の底壁132とボディ112に接している。
【0032】
図2は、
図1のアクチュエータ100の動作を説明する図である。
図2(a)に示すアクチュエータ100は、
図1と同様にコイル104が非励磁である初期状態であり、コア106とアーマチュア108の隙間が最大寸法Laになっている。またアクチュエータ100では、対象物102をクランプするために、シャフト110のストローク(シャフト110の先端から対象物102までの距離)が寸法Sであるとする。
【0033】
アクチュエータ100は、コイル104が励磁されると、まず、
図2(a)に示すシャフト110が対象物102に接触していない状態では、コア106とアーマチュア108の間の吸引力が第1の圧縮ばね122を介してフランジ120からシャフト110に伝わる。そしてシャフト110は、第1の圧縮ばね122よりもバネ荷重が小さい第2の圧縮ばね126を主に圧縮しながら、アーマチュア108と一体になって対象物102に向かって繰り出される。
【0034】
このようにコイル104が励磁され、シャフト110が対象物102に接触していない状態では、シャフト110を対象物102に向かって繰り出すだけでよい。このため、第1の圧縮ばね122よりもバネ荷重が小さい第2の圧縮ばね126を主に圧縮すれば、シャフト110をアーマチュア108と一体に容易に繰り出すことができる。
【0035】
図2(b)は、シャフト110が繰り出されて対象物102に接触した状態を示している。このとき、シャフト110のストロークは寸法Sであるため、図示のようにシャフト110に設けられたストッパ130とボディ112との距離も寸法Sとなる。そして、コア106とアーマチュア108の隙間は、最大寸法Laより寸法Sだけ小さい寸法Lbとなる。
【0036】
図2(b)に示すようにシャフト110が対象物102に接触すると、シャフト110の移動が停止するため、フランジ120とコア106の間に配置された第2の圧縮ばね126はそれ以上圧縮されない。しかしアクチュエータ100では、アーマチュア108に対してシャフト110が摺動可能であり、両部材は互いに一体に固定されていない。
【0037】
このため、アーマチュア108のみが第1の圧縮ばね122を圧縮しながら、コア106にさらに接近することができる(
図2(c)参照)。つまり、コア106とアーマチュア108の間の吸引力が第1の圧縮ばね122を介してフランジ120からシャフト110に伝わって、シャフト110の押圧力となる。このように、第2の圧縮ばね126よりもバネ荷重が大きい第1の圧縮ばね122を圧縮することで、シャフト110の押圧力を高めて対象物102を確実にクランプすることができる。
【0038】
図2(c)は、シャフト110の押圧力により対象物102をクランプしたクランプ状態を示している。このとき、コア106とアーマチュア108の隙間は、
図2(b)の寸法Lbよりも第1の圧縮ばね122が圧縮した分だけ小さい最小寸法Lcとなる。この隙間の最小寸法Lcは、ロック機構124によって規定されている。
【0039】
図3は、
図2(c)のアクチュエータ100のロック機構124の周辺を拡大して示す図である。ロック機構124では、図示のようにアーマチュア108とコア106の間に所定の隙間すなわち最小寸法Lcの隙間を有する位置で、転動体134がアーマチュア108のテーパ面136とシャフト110に当接する。これにより、ロック機構124は、楔作用によってアーマチュア108とシャフト110の相対移動をロックする。
【0040】
したがって、
図2(c)に示すシャフト110が対象物102をクランプしたクランプ状態において、アーマチュア108の吸引力は、圧縮された第1の圧縮ばね122を介してフランジ120からシャフト110に内圧として伝わるだけでなく、アーマチュア108のテーパ面136から転動体134を介してシャフト110に伝わることになる。
【0041】
つまりアクチュエータ100では、クランプ状態において、アーマチュア108の吸引力がこれら2つの経路からシャフト110に伝わって、シャフト110の押圧力になるため、大きな押圧力で対象物102を確実にクランプすることができる。
【0042】
このようにアクチュエータ100によれば、対象物102の大きさによらず、アーマチュア108は常にコア106にぎりぎりのところまで接近することができる。このため、アクチュエータ100では、対象物102をクランプしているときの、アーマチュア108とコア106の隙間を最少かつ一定にすることができ、アーマチュア108の吸引力を最大かつ一定に維持することができる。
【0043】
また
図3に示すようにロック機構124は、アーマチュア108がコア106に接近し当接する前に、アーマチュア108とシャフト110の相対移動をロックすることにより、アーマチュア108とコア106との最少の隙間を規定することができる。
【0044】
図4は、
図1のアクチュエータ100のシャフトストロークに対するクランプ時の吸引力を従来品と比較した図である。図中、横軸をシャフトストロークとし、縦軸をクランプ時のアーマチュア108の吸引力とした。
【0045】
図中のグラフAは、本実施例のアクチュエータ100を示している。一方、グラフBは、従来品のアクチュエータを示している。従来品は、アーマチュアとシャフトが一体に固定されているものである。このため、クランプの対象物の大きさに応じてシャフトストロークが変わると、従来品では、シャフトストロークに応じてコアとアーマチュアの隙間も変わってしまう。なお横軸のPa、Pbは、シャフトストロークが最大、最少となるときを示している。すると従来品においては、コアとアーマチュアの隙間(ギャップ)が最小、最大となるシャフトストロークを意味している。そしてPaからPbまでの範囲が、使用ストローク範囲となる。
【0046】
まず従来品のグラフBでは、ストロークが大きいPaのときコアとアーマチュアの隙間は小さく、吸引力は大きくなる。逆にストロークが小さいPbのときコアとアーマチュアの隙間は大きく、吸引力は小さくなる。このように従来品は、グラフBに示すように大きな対象物をクランプすると隙間が大きくなるため、磁力による吸引力は距離の二乗に反比例するから、アーマチュアの吸引力が大幅に低下してしまうことが明らかである。
【0047】
一方、本実施例のアクチュエータ100は、上記したように対象物102の大きさによらず、アーマチュア108は常にコア106にぎりぎりのところまで接近することができる(
図2(c)のLc)。その結果、アクチュエータ100では、クランプ時のアーマチュア108とコア106の隙間を最少かつ一定にすることができ、グラフAから明らかなように、アーマチュア108の吸引力を最大かつほぼ一定に維持することができる。ただし、アクチュエータ100では、シャフトストロークが小さいと第1の圧縮ばね122がより圧縮される。このため、第1の圧縮ばね122の反発力によってアーマチュア108がコア106から離れるように押圧され、その結果、アーマチュア108の吸引力がわずかながら減少していく。
【0048】
なおアクチュエータ100では、シャフト110、転動体134およびアーマチュア108に表面処理を施すなどして硬度を上げることにより、ロック機構124による楔の耐久性を高めてもよい。またロック機構124で用いられる転動体134は、3個以上であれば適宜の数であってもよい。さらに転動体134の形状はボールやローラ形状などであってもよい。
【0049】
また第1の圧縮ばね122および第2の圧縮ばね126を小型化して、その分、アーマチュア108の端面146すなわち吸着面積を確保することにより、アーマチュア108の吸引力を高めるようにしてもよい。さらにリテーナ138をねじ止めによりスリーブ119に固定したが、これに限られず、圧入によって位置決めしてもよい。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、所定の対象物をクランプするシャフトを有するクランプ用ソレノイドアクチュエータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…クランプ用ソレノイドアクチュエータ、102…対象物、104…コイル、106…コア、108…アーマチュア、110…シャフト、112…ボディ、114…コアの基部、116…コアの対向部、118…ボディの側壁、119…スリーブ、120…フランジ、122…第1の圧縮ばね、124…ロック機構、126…第2の圧縮ばね、128…アーマチュアの内壁、130…ストッパ、132…アーマチュアの底壁、134…転動体、136…アーマチュアのテーパ面、138…リテーナ、140…リング、142…ばね、144…リテーナの先端部、146…アーマチュアの端面