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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180937
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】コンクリート切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 7/02 20060101AFI20221130BHJP
   B28D 1/04 20060101ALI20221130BHJP
   E01C 23/09 20060101ALI20221130BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B28D7/02
B28D1/04 B
B28D1/04 A
E01C23/09 A
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087714
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592207142
【氏名又は名称】仲山鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 武志
(72)【発明者】
【氏名】川端 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 武志
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】仲山 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】高梨 和哉
【テーマコード(参考)】
2D053
2D059
3C069
【Fターム(参考)】
2D053AA26
2D053AB02
2D053AB09
2D053DA03
2D059AA14
2D059GG41
3C069AA01
3C069BA01
3C069BB01
3C069BC02
3C069BC05
3C069CA09
3C069CA10
3C069DA05
3C069DA06
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】コンクリート切断装置における汚濁水の回収効率を向上させる。
【解決手段】コンクリート切断装置100は、電動モータ60によって回転駆動されるカッターブレード5と、カッターブレード5の側面及び外周面を部分的に覆うカッターカバー30と、カッターブレード5に冷却水を供給する液体供給部70と、カッターブレード5に供給された冷却水を回収する液体回収部80と、を備え、カッターカバー30は、カッターブレード5の側面を部分的に覆う第1側面カバー部31及び第2側面カバー部32と、第1側面カバー部31と第2側面カバー部32とを連結するように設けられカッターブレード5の外周面を部分的に覆う外周面カバー部33と、を有し、外周面カバー部33の内壁面33aは、第1側面カバー部31から第2側面カバー部32に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に設置された動力源と、
前記動力源によって回転軸を中心に回転駆動される円盤状のカッターと、
前記カッターの側面及び外周面を部分的に覆うカッターカバーと、
前記カッターに冷却液を供給する液体供給部と、
前記カッターに供給された前記冷却液を吸引して回収する液体回収部と、を備え、
前記カッターカバーは、
前記カッターを挟んで対向して設けられ、前記カッターの側面を部分的に覆う第1側面カバー部及び第2側面カバー部と、
前記第1側面カバー部と前記第2側面カバー部とを連結するように設けられ、前記カッターの外周面を部分的に覆う外周面カバー部と、を有し、
前記外周面カバー部の内壁面は、前記第1側面カバー部から前記第2側面カバー部に向かうにつれて前記カッターから離れる方向に傾斜している、
コンクリート切断装置。
【請求項2】
前記第2側面カバー部の内壁面には、当該内壁面に沿って流れ落ちる前記冷却液を受け入れ前記外周面カバー部側へと導くように形成された冷却液ガイド部が設けられる
請求項1に記載のコンクリート切断装置。
【請求項3】
前記液体回収部は、
前記カッターの外周面に沿って設けられた前記外周面カバー部の長手方向一端側において前記冷却液を吸引する第1吸引部と、
前記外周面カバー部の長手方向他端側において前記冷却液を吸引する第2吸引部と、を有し、
前記冷却液ガイド部は、
前記第1吸引部に前記冷却液を導くように前記第1吸引部に向かって傾斜して形成された第1ガイド部と、
前記第2吸引部に前記冷却液を導くように前記第2吸引部に向かって傾斜した形成された第2ガイド部と、を有する、
請求項2に記載のコンクリート切断装置。
【請求項4】
前記回転軸は、
筒状に形成された回転部と、
前記回転部の外周に設けられ、前記カッターの内周側端部を保持する円環状のフランジ部と、を有し、
前記液体供給部は、
前記回転部内に配置され、回転しないように固定支持された冷却液供給管と、
前記回転部及び前記フランジ部に放射状に複数形成され、前記冷却液供給管内の供給通路を流れる前記冷却液を前記カッターの側面へと導く冷却液ガイド通路と、を有し、
前記冷却液供給管には、前記カッターが回転駆動される際に前記供給通路と前記冷却液ガイド通路とを断続的に連通する連通路が設けられ、
前記連通路は、前記カッターカバーから前記カッターが露出する領域に対して開口している、
請求項1から3の何れか1つに記載のコンクリート切断装置。
【請求項5】
複数の前記冷却液ガイド通路は、それぞれ、一端が前記回転部の内周面において開口し、他端が前記フランジ部の外周面において開口している、
請求項4に記載のコンクリート切断装置。
【請求項6】
前記冷却液ガイド通路の流路面積は、前記一端から前記他端に向かうにつれて大きくなる、
請求項5に記載のコンクリート切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸を中心に回転駆動されるカッターと、カッターの一部を覆うカッターカバーと、カッターに冷却液を供給する液体供給部と、冷却液を吸引して回収する液体回収部と、を備えたコンクリート切断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-107314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコンクリート切断装置のように冷却液が用いられる湿式の切断装置では、冷却液とコンクリート粉とが混ざり合った汚濁水が生じる。特許文献1に記載のコンクリート切断装置は、カッターによりコンクリートを切断すると同時に汚濁水を吸引して回収する機構を備えているが、汚濁水はカッターの回転によってあらゆる方向へと勢いよく飛散することから、切断と同時に行われる回収だけでは十分に汚濁水を回収することができず、切断作業後に改めて汚濁水を回収ないし除去する作業を行う必要が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、汚濁水の回収効率を向上させたコンクリート切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート切断装置であって、台車に設置された動力源と、前記動力源によって回転軸を中心に回転駆動される円盤状のカッターと、前記カッターの側面及び外周面を部分的に覆うカッターカバーと、前記カッターに冷却液を供給する液体供給部と、前記カッターに供給された前記冷却液を吸引して回収する液体回収部と、を備え、前記カッターカバーは、前記カッターを挟んで対向して設けられ、前記カッターの側面を部分的に覆う第1側面カバー部及び第2側面カバー部と、前記第1側面カバー部と前記第2側面カバー部とを連結するように設けられ、前記カッターの外周面を部分的に覆う外周面カバー部と、を有し、前記外周面カバー部の内壁面は、前記第1側面カバー部から前記第2側面カバー部に向かうにつれて前記カッターから離れる方向に傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンクリート切断装置における汚濁水の回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート切断装置の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンクリート切断装置の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンクリート切断装置の正面図であり、カッターが傾けられた状態を示す図である。
図4図1のA-A線に沿う断面を示した断面図である。
図5図4のB-B線に沿う断面を示した断面図である。
図6図4のC-C線に沿う断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るコンクリート切断装置について説明する。
【0010】
コンクリート切断装置100は、道路やコンクリート床版を切断する際に用いられるものであり、特に本実施形態に係るコンクリート切断装置100は、切断箇所における発熱を抑制するために冷却水等の冷却液を供給する湿式の切断装置である。以下では、コンクリート切断装置100がコンクリート造建築物の解体に用いられる場合について説明する。
【0011】
まず、図1~3を参照して、コンクリート切断装置100の構成について説明する。図1は、切断進行方向を前方とした場合にコンクリート切断装置100を右側方から見た右側面図であり、図2は、コンクリート切断装置100を正面から見た正面図であり、図3は、後述のカッターブレード5が切断面に対して傾けられた状態を示す正面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、コンクリート切断装置100は、前輪2及び後輪3が設けられた台車1に、コンクリート床版Fを切断する円盤状のカッターブレード5(カッター)が取り付けられた装置であり、カッターブレード5を回転駆動するカッター駆動部10と、台車1を前後進させる走行部50と、カッターブレード5に冷却液を供給する液体供給部70と、カッターブレード5に供給された冷却液を吸引して回収する液体回収部80と、これら各部の動力源となる電動モータ60(動力源)と、電動モータ60以外の電装品に電力を供給するバッテリ62と、オペレータの操作に応じてこれら各部の作動を制御する制御部64と、備える。これら各部は台車1の図示しないフレームに取り付けられる。なお、電動モータ60への電力は、例えば、3相400V仕様の発電機といった図示しない外部電源から供給される。
【0013】
カッター駆動部10は、電動モータ60の出力をカッターブレード5の回転駆動力へと変換する機構であり、電動モータ60の回転軸61とベルト63を介して接続されることにより電動モータ60の回転力が伝達される伝達軸12と、伝達軸12と図示しないベベルギヤを介して接続されることにより回転軸方向を変換する変換軸14と、変換軸14とベルト15を介して接続されカッターブレード5を回転駆動する駆動軸16(回転部)と、を有する。
【0014】
伝達軸12は、伝達軸12の回転中心C1が電動モータ60の回転軸61の回転中心と平行となるように、図示しないベアリングを有する一対の支持部18を介して、台車1のフレームに取り付けられる。一対の支持部18のうち、後方側に配置される支持部18には、伝達軸12と変換軸14との接続部であるギヤ機構を収容する収容部20が、伝達軸12の回転中心C1を中心として回動可能に取り付けられる。
【0015】
収容部20には、変換軸14を支持する図示しないベアリングが設けられており、変換軸14は、収容部20によって、変換軸14の回転中心C2が伝達軸12の回転中心C1に対して直交するように支持される。
【0016】
また、収容部20には、駆動軸16を回転自在に保持する保持アーム22が、変換軸14の回転中心C2を中心として回動可能に取り付けられる。保持アーム22は、主に収容部20を挟んで対向して設けられる一対のプレート材23によって構成される。
【0017】
駆動軸16は、図2に示すように、駆動軸16の回転中心C3が変換軸14の回転中心C2と平行となるように一対のプレート材23によって、その一端側の部分が支持される一方、駆動軸16の他端側には、フランジ部24を介してカッターブレード5が取り付けられる。このように駆動軸16とフランジ部24とによりカッターブレード5を回転駆動する回転軸が構成される。
【0018】
カッターブレード5の周囲には、カッターブレード5の両側面と刃先である外周面とを部分的に覆うカッターカバー30が設けられる。カッターカバー30は、一対のプレート材23のうち、カッターブレード5側に設けられるプレート材23から延びるブラケット23aに取り付けられることで保持アーム22に固定される。
【0019】
カッターカバー30の下方には開口部30aが設けられており、カッターブレード5は、開口部30aからその一部分がカッターカバー30から露出した状態となっている。また、カッターカバー30には、耐摩耗性に優れ弾力性を有する樹脂製糸材を束ねることにより形成された図示しないブラシが、開口部30aを取り囲むように全周にわたって設けられる。このようにブラシを設けることによって、コンクリート床版Fをカッターブレード5により切断する際、コンクリート床版Fとカッターカバー30の底面との間の隙間は、ブラシによってほぼ塞がれた状態とになる。これにより、カッターブレード5に供給された冷却液がカッターカバー30の外側へと漏れ出ることが抑制される。
【0020】
また、収容部20には、コンクリート切断装置100を前方から見たときのコンクリート床版Fに対するカッターブレード5の傾き、すなわち、伝達軸12の回転中心C1を中心とした収容部20及び保持アーム22の回動量を設定する傾き設定ピン26と、コンクリート床版Fに対するカッターブレード5の切断深さ、すなわち、変換軸14の回転中心C2を中心とした保持アーム22の回動量を設定する油圧シリンダ28と、が設けられる。
【0021】
傾き設定ピン26は、収容部20の上方に立設された一対の支持プレート21によって回動自在に支持された円柱状部材から径方向外側に向かって突出して設けられたピン部材であり、図1及び図3に示すように、台車1のフレームに取り付けられたセットプレート27に形成された溝に倒し込まれる構成となっている。なお、図3に示すように、カッターブレード5が切断面に対して傾けられた状態でコンクリート切断装置100が使用される場合、コンクリート床版Fとカッターカバー30の底面との間の隙間を小さくするために、カッターカバー30は、その底面がコンクリート床版Fに対してほぼ平行となるものに適宜交換される。
【0022】
このように傾き設定ピン26をセットプレート27に形成された何れかの溝に倒し込むことによって、伝達軸12の回転中心C1を中心に回動する収容部20及び保持アーム22の位置が固定され、コンクリート床版Fに対するカッターブレード5の傾きを、台車1自体を傾かせることなく、所望の傾きに設定することができる。
【0023】
油圧シリンダ28は、シリンダ部の外周面に設けられた一対のトラニオンを介して一対の支持プレート21によって回動自在に支持される一方、シリンダ部から突出したロッド部の先端は保持アーム22に接続される。このため、油圧シリンダ28の伸縮に応じて、保持アーム22は変換軸14の回転中心C2を中心として回動し、油圧シリンダ28の伸長量を大きくすることによって、コンクリート床版Fに対するカッターブレード5の切断深さを深くすることができる。換言すれば、異なる径のカッターブレード5を用意したり、台車1を昇降させたりすることなく、1つのカッターブレード5で切断深さを任意の深さに設定することが可能である。
【0024】
なお、図1図2に示す例では、カッター駆動部10は、コンクリート切断装置100の右側方に配置されているが、カッター駆動部10は、コンクリート切断装置100の左側方に配置されていてもよく、例えば、カッター駆動部10をユニット化することによって、その組み換えを容易に行うことができる。
【0025】
走行部50は、電動モータ60によって回転される図示しない油圧ポンプと、油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される図示しない油圧モータと、を有する、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)であり、任意の速度でコンクリート切断装置100を前進または後進させることが可能な機構である。なお、走行部50は、電動モータ60とは別の電動モータであって、後輪3を直接駆動する電動モータであってもよい。
【0026】
液体供給部70は、冷却液としての冷却水が貯留された図示しない冷却水タンクと、冷却水タンク内の冷却水を圧送する図示しない冷却水ポンプと、を有する。冷却水ポンプから吐出された冷却水は、図示しない流路を通じてカッターブレード5に供給される。なお、冷却液は、水に限定されず、冷却作用を有する液体であればどのような液体であってもよい。また、冷却水にはカッターブレード5とコンクリート床版Fとの間に生じる摩擦力を低減する潤滑剤等が混入されていてもよい。また、冷却水タンク及び冷却水ポンプは、コンクリート切断装置100の外部に配置されていてもよく、この場合、冷却水は、外部に設けられた冷却水ポンプから吐出され、冷却水ポンプとコンクリート切断装置100内の冷却水配管とに接続される図示しない冷却水ホースを通じてカッターブレード5に供給される。
【0027】
液体回収部80は、カッターブレード5に供給されカッターカバー30内に飛散した冷却液やコンクリート床版Fを切断する際に冷却液とコンクリート粉とが混ざり合うことで生じた汚濁水を回収する機構であり、図示しない吸引ポンプと、吸引ポンプにより吸引された汚濁水を貯留する図示しない汚濁水タンクと、を有する。吸引ポンプからは一対の吸引ホース81,82が延びており、第1吸引ホース81は、カッターカバー30の前方側に接続され、第2吸引ホース82は、カッターカバー30の後方側に接続される。なお、吸引ポンプ及び汚濁水タンクは、コンクリート切断装置100の外部に配置されていてもよい。
【0028】
電動モータ60及びバッテリ62は、台車1の左右方向において略中央に配置される。このため、上述のように、コンクリート切断装置100の左右何れ側にもカッター駆動部10を配置することができる。なお、台車1の左右方向における電動モータ60及びバッテリ62の設置位置は、略中央に限定されず、カッター駆動部10との重量バランスを考慮し、カッター駆動部10から離れる方向、すなわち、コンクリート切断装置100の左側方寄りであってもよい。
【0029】
また、電動モータ60及びバッテリ62は、台車1の比較的低い位置に配置される。このように重量物である電動モータ60やバッテリ62を低い位置に配置し、コンクリート切断装置100の重心位置を低くすることによって、コンクリート切断装置100の走行性が安定し、切断作業時における直進走行性を向上させることができる。
【0030】
制御部64は、図示しない操作部を介して行われるオペレータの操作に応じて電動モータ60の出力制御や走行部50の速度制御、液体供給部70及び液体回収部80のオンオフ制御を行う。例えば、制御部64は、コンクリート床版Fを切断する際、切断抵抗によってカッターブレード5の回転数が低下してしまわないように、カッターブレード5の回転数が所定の回転数を維持するよう電動モータ60の出力を制御する。なお、電動モータ60、走行部50、液体供給部70及び液体回収部80の作動は、制御部64を介することなく、オペレータの操作に応じて直接的に変更されてもよい。
【0031】
続いて、上記構成のコンクリート切断装置100によるコンクリート床版Fの切断工程について説明する。
【0032】
コンクリート造建築物の解体においては、支保工を階下に設置しなくても切断後のコンクリート床版Fが階下に落下しないようにするために、カッターブレード5を所定の角度に傾けた状態でコンクリート床版Fの切断を行うことがある。
【0033】
この場合、まず、図3に示すように、コンクリート床版Fに対するカッターブレード5の傾きが所定の角度に設定される。具体的には、傾き設定ピン26をセットプレート27の所定の溝に倒し込むことにより、コンクリート床版Fに対する保持アーム22の傾きを固定し、カッターブレード5の傾きを所定の角度、例えば60°前後とする。
【0034】
次に、カッターブレード5を回転駆動させるとともに、カッターブレード5の切断深さがコンクリート床版Fの厚さ以上となるように油圧シリンダ28を伸長させる。
【0035】
また、これと同時に、液体供給部70からカッターブレード5へ冷却水の供給を開始し、液体回収部80により冷却水及び汚濁水の回収を開始する。
【0036】
コンクリート床版Fをカッターブレード5により切断する際、コンクリート床版Fとカッターカバー30の底面との間の隙間は、上述のように図示しないブラシによってほぼ塞がれた空間となる。このため、カッターブレード5に供給された冷却水は、この空間に溜まり、液体回収部80で生じた負圧によって、吸引ホース81,82を通じて回収される。
【0037】
そして、走行部50によりコンクリート切断装置100を所定の速度で前進させることによって、コンクリート床版Fは、所定の長さにわたって切断される。
【0038】
このような切断が繰り返して行われることによりコンクリート床版Fは、所定の大きさに切断される。なお、コンクリート床版Fの切断は、必ずしもすべての辺に対してカッターブレード5を傾けた状態で行われる必要は無く、部分的にカッターブレード5を傾けない状態で行われてもよい。
【0039】
コンクリート床版Fの厚さが比較的厚い場合や鉄筋量が多い場合には、複数回に分けて切断を行うステップカットを行ってもよく、例えば、最初は浅めに切断し、徐々に切断深さを深くするようにしてもよい。
【0040】
また、コンクリート床版Fの下面にデッキプレートが設けられている場合、カッターブレード5の回転方向によっては、カッターブレード5によりコンクリート床版Fを切断する際、スラブからデッキプレートが剥がれてしまい、デッキプレートが切断されずに残ってしまうおそれがある。
【0041】
このような場合には、図1の矢印Rで示されるように、コンクリート切断装置100を右側方から見て、反時計回りとなるようにカッターブレード5を回転させ、コンクリート切断装置100を前進させたときに、切断部分においてカッターブレード5の刃先がコンクリート床版Fの下方から上方に向かって移動するようにすることによって、デッキプレートをスラブに押し付けながらコンクリート床版Fを切断することが好ましい。
【0042】
また、図1の矢印Rで示されるように、カッターブレード5を回転させた場合、切断時の反力(切断抵抗力)は、カッターブレード5により切断されるコンクリート床版Fの切断箇所を力点とすると、駆動軸16の回転中心C3が支点となって、変換軸14の回転中心C2が作用点となることで、台車1に対して台車1を走行路面に押さえつける力として作用する。特に、作用点となる変換軸14の回転中心C2は、前輪2と後輪3との間であって、後輪3よりも台車1の内側に位置することから、前輪2及び後輪3の接地性が向上し、切断作業時のコンクリート切断装置100の走行安定性及び直進性を向上させることが可能となり、結果として、カッターブレード5による切断精度を向上させることができる。
【0043】
なお、コンクリート床版Fの下面にデッキプレートが設けられていない場合やコンクリート床版Fの厚さが比較的薄い場合には、図1の矢印Rで示される方向とは反対の方向にカッターブレード5を回転させることでコンクリート床版Fを切断してもよい。
【0044】
また、上記構成のコンクリート切断装置100では、図3に示すように、コンクリート床版Fは、右側の後輪3の走行線上の近傍においてカッターブレード5により切断される。つまり、カッターブレード5による切断ラインは、右側の後輪3のほぼ前方を通ることになる。このため、後輪3による走行駆動力と、カッターブレード5に作用する切断抵抗力と、がほぼ同一線上において互いに対向して作用した状態となることから、コンクリート切断装置100をふらつかせることなく直進させやすくなり、結果として、カッターブレード5による切断精度を向上させることができる。
【0045】
なお、カッターブレード5による切断ラインが、右側の後輪3の走行線から台車1の外側に離れるほど、後輪3の走行駆動力は、平面視において、カッターブレード5による切断箇所を中心にコンクリート切断装置100を回転させる方向に分散されやすくなることから、コンクリート切断装置100の直進性が悪化し、コンクリート床版Fを目標ライン通りに真っすぐ切断することが困難となる。
【0046】
また、カッターブレード5による切断精度を向上させるためには、カッターブレード5による切断ラインが右側の後輪3の直下とならないように、つまり、右側の後輪3により切断ラインが踏まれないようにすることで、切断作業中、オペレータが切断ラインを容易に確認できる状態としておくことが好ましい。これにより切断ラインを目標ラインに合わせる微調整が容易になり、目標ライン通りに真っすぐ切断し易くなる。
【0047】
また、このようにコンクリート切断装置100の直進走行性が向上し、切断ラインを計画通りに比較的真っすぐ形成することが可能となることによって、上述のステップカットを行う際に、浅めに切断された切断ラインに対してカッターブレード5を再度差し込む刃入れを容易に行うことが可能となる。
【0048】
また、上記構成のコンクリート切断装置100では、カッターブレード5の駆動源としてエンジンではなく電動モータ60が用いられる。このため、コンクリート造建築物の解体におけるスラブ切断を、まだ外装材が残った状態で屋内作業として行う場合であっても排気ガスを気にすることなく安全に作業を行うことができる。なお、電動モータ60の定格出力を大きくするほど比較的厚さの厚いコンクリート床版Fであっても切断可能となるが、定格出力が大きくなるほど電動モータ60のサイズ及び重量が大きくなることから、切断対象物に合わせて適度な定格出力を有する電動モータ60が適宜選定される。
【0049】
また、上記構成のコンクリート切断装置100では、カッターブレード5を回転駆動する駆動軸16の回転中心C3は、前輪2と後輪3との間に位置している。このため、駆動軸16の回転中心C3が前輪2よりも前方に位置している場合と比較し、壁際からスラブ切断を始めた場合に、進行方向の後方に残るコンクリート床版Fの非切断部分(切残し)の長さを短くすることができる。このため、コンクリート造建築物の解体効率を向上させることができる。
【0050】
また、上記構成のコンクリート切断装置100では、カッター駆動部10及びカッターブレード5を、後輪3よりも台車1の内側に位置する伝達軸12の回転中心C1を中心に回動させる構成とするとともに、電動モータ60を台車1の左右方向において略中央に配置することにより、コンクリート切断装置100全体をコンパクト化している。
【0051】
このように上記構成のコンクリート切断装置100によれば、自走しながらコンクリート床版Fを所定の角度で精度よく切断することが可能である。なお、コンクリート切断装置100は、自走式に限定されず、走行部50が設けられていない手押し式であってもよい。
【0052】
一方で、コンクリート切断装置100によりコンクリート床版Fを切断する際、液体供給部70からカッターブレード5に供給された冷却水は、液体回収部80によって順次回収されるが、カッターブレード5に供給された冷却水は、カッターブレード5の回転によってあらゆる方向へと勢いよく飛散することから、切断と同時に行われる回収だけでは十分に汚濁水を回収することができないおそれがある。
【0053】
特にコンクリート造建築物の解体においてコンクリート床版Fを切断する場合、十分に汚濁水を回収できないと、階下に汚濁水が流れ落ち、切断作業後に汚濁水を回収ないし除去する作業を改めて実施しなければならなくなる。
【0054】
このような状況を避けるためには、カッターブレード5へ供給される冷却水の量を減らすことも考えられるが、カッターブレード5に供給された冷却水は、カッターブレード5によりコンクリート床版Fが切断される部分、すなわち、冷却が必要な部分に至る前に、カッターブレード5の回転によってある程度飛散してしまうことから、冷却水の供給量を単に減らしてしまうと、切断部分における冷却を十分に行うことができなくなるおそれがある。
【0055】
このような課題を解決するために、本実施形態では、カッターカバー30内に飛散した冷却水や汚濁水を所定の方向に導くことによって、汚濁水の回収効率を向上させるとともに、カッターブレード5への冷却水の供給を所定の方向のみに向けて行うことによって、切断部分における冷却効率を向上させつつ冷却水の供給量を低減させている。
【0056】
次に、図4図6を参照し、上記課題を解決するための具体的な構成について説明する。図4は、図1のA-A線に沿うカッター駆動部10の断面を部分的に示した断面図であり、その他の部分については省略して示している。図5は、図4のB-B線に沿うカッターカバー30の断面を示した断面図であり、カッターブレード5によりコンクリート床版Fが切断される状態を想定した図である。図6は、図4のC-C線に沿うフランジ部24の断面を示した断面図であり、説明の都合上、カッターブレード5を省略して示している。
【0057】
まず、図4及び図5を参照し、カッターカバー30の構成について説明する。
【0058】
カッターカバー30は、図4に示すように、カッターブレード5を挟んで対向して設けられカッターブレード5の側面を部分的に覆う第1側面カバー部31及び第2側面カバー部32と、第1側面カバー部31と第2側面カバー部32とを連結するように設けられカッターブレード5の刃先である外周面を部分的に覆う外周面カバー部33と、を有する。
【0059】
第1側面カバー部31は、カッターブレード5と保持アーム22との間に配置されており、駆動軸16の回転中心C3を中心として、カッターカバー30の前後方向及び上方における外縁が第2側面カバー部32の外縁よりも小さく形成されている。このため、外周面カバー部33の内壁面33aは、図4に示されるように、第1側面カバー部31から第2側面カバー部32に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜している。
【0060】
また、図5に示すように、カッターカバー30は、外周面カバー部33の長手方向一端側である前方側に設けられた第1フランジ部34aと、外周面カバー部33の長手方向他端側である後方側に設けられた第2フランジ部34bと、をさらに有する。
【0061】
第1フランジ部34a及び第2フランジ部34bには、上下方向に貫通して形成された第1スリット35a及び第2スリット35bがそれぞれ設けられる。第1スリット35aには、図示しないコネクタを介して第1吸引ホース81が接続され、第2スリット35bには、図示しないコネクタを介して第2吸引ホース82が接続される。つまり、第1スリット35aは、液体回収部80が冷却液を吸引する第1吸引部として機能し、第2スリット35bは、液体回収部80が冷却液を吸引する第2吸引部として機能する。
【0062】
また、一対の側面カバー部31,32のうち、図3に示されるようにカッターブレード5が傾けられた状態となった場合に内壁面が鉛直方向上方を向くことになる第2側面カバー部32の内壁面32aには、内壁面32aに沿って流れ落ちる冷却液を受け入れる冷却液ガイド部37が設けられる。
【0063】
冷却液ガイド部37は、図4で示される断面視において略L字状の断面形状を有する部材であり、図5に示すように、第1吸引部である第1スリット35aに冷却液を導くように第1スリット35a側に向かって下がり傾斜に形成された第1ガイド部37aと、第2吸引部である第2スリット35bに冷却液を導くように第2スリット35b側に向かって下がり傾斜に形成された第2ガイド部37bと、を有する。つまり、冷却液ガイド部37は、図5で示される断面視において駆動軸16の回転中心C3付近に頂点を有する山形状に形成されている。
【0064】
続いて、このように構成されたカッターカバー30内での汚濁水を含む冷却水の流れについて説明する。
【0065】
図4に矢印で示されるように、遠心力によってカッターブレード5の刃先から径方向外側へと飛散した冷却水は、カッターブレード5の外周面に対向する外周面カバー部33の内壁面33aに衝突する。外周面カバー部33の内壁面33aは、上述のように第1側面カバー部31から第2側面カバー部32に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜していることから、内壁面33aに衝突した冷却水は、第2側面カバー部32と外周面カバー部33とにより挟まれ鋭角となった狭小領域へと導かれる。
【0066】
そして、図5に矢印で示されるように、狭小領域へと導かれた冷却水の一部は、そのまま狭小領域を伝って第1スリット35a(第1吸引部)または第2スリット35b(第2吸引部)へと向かう。
【0067】
一方、狭小領域へと一旦導かれた冷却水の大半は、第2側面カバー部32の内壁面32aに沿って下方へと流れ落ち、やがて内壁面32aに設けられた冷却液ガイド部37に受け入れられる。そして、冷却液ガイド部37のうち、第1ガイド部37aに受け入れられた冷却水は、第1スリット35a(第1吸引部)に向かって導かれ、第2ガイド部37bに受け入れられた冷却水は、第2スリット35b(第2吸引部)に向かって導かれる。
【0068】
カッターブレード5によってコンクリート床版Fを切断する際、コンクリート床版Fとカッターカバー30の底面との間の隙間は、上述のようにカッターカバー30の開口部30aを囲むように設けられたブラシ39によってほぼ塞がれた空間となる。このため、第1スリット35aに向かって導かれた冷却水は、第1吸引ホース81を通じて液体回収部80により回収され、第2スリット35bに向かって導かれた冷却水は、第2吸引ホース82を通じて液体回収部80により回収される。
【0069】
このように上記構成のカッターカバー30によれば、カッターカバー30内に飛散した冷却水及び汚濁水は、第1スリット35a(第1吸引部)及び第2スリット35b(第2吸引部)の何れかに向けて積極的に導かれることになる。このため、冷却水及び汚濁水の回収効率を向上させることができる。
【0070】
また、冷却水及び汚濁水は、カッターカバー30の前後に設けられた第1スリット35a及び第2スリット35bに向けて積極的に導かれることから、第1フランジ部34aと第2フランジ部34bとの間のカッターカバー30の側部には、冷却水及び汚濁水を吸引するためのスリットを設ける必要がなくなる。これにより、液体回収部80で生じる負圧を第1スリット35a及び第2スリット35bの2箇所に集中させることが可能となる。したがって、第1スリット35a及び第2スリット35bにおいて、比較的大きな負圧によって、冷却水及び汚濁水を効率的に回収することができる。なお、十分な負圧を確保することができる場合には、カッターカバー30の側部にも、冷却水及び汚濁水を吸引するためのスリットを設けてもよい。
【0071】
また、第1側面カバー部31の内壁面31aに沿って流れ落ちる冷却水も少なからず存在することから、第1側面カバー部31の内壁面31aにも冷却液ガイド部37と同様のガイド部を設けておくことによって、さらに冷却水及び汚濁水の回収効率を向上させることができる。
【0072】
次に、図4及び図6を参照し、カッターブレード5へ冷却水を供給する部分の構成について説明する。
【0073】
図4に示すように、駆動軸16の内部には、冷却水が通る供給通路40aが設けられた冷却液供給管40が設けられ、供給通路40a内を流れた冷却水は、円環状のフランジ部24に形成された冷却液ガイド通路24bを通じてカッターブレード5の側面に沿って供給されるように構成されている。換言すれば、これら冷却液供給管40及び冷却液ガイド通路24bは、カッターブレード5に冷却液を供給する液体供給部70を構成している。なお、フランジ部24は、駆動軸16の軸方向において、2つに分割して形成されており、カッターブレード5の内周側端部5aを挟み込んだ状態で駆動軸16に組み付けられている。
【0074】
冷却液供給管40は、駆動軸16内に形成された収容孔16a内にブッシュ42を介して収容された有底筒状部材であり、その内部には液体供給部70の図示しない冷却水ポンプから吐出された冷却水が流入する供給通路40aが形成される。冷却液供給管40は、駆動軸16内で回転しないように、図示しないブラケットを介して保持アーム22に固定支持される。
【0075】
また、冷却液供給管40には、一端が冷却液供給管40の外周面において開口し、他端が供給通路40aに開口することで、供給通路40aと、フランジ部24に形成された冷却液ガイド通路24bと、を連通させる連通路40bが設けられる。
【0076】
一方、フランジ部24には、図6に示すように、複数の冷却液ガイド通路24bが駆動軸16の回転中心C3を中心として放射状に形成される。また、駆動軸16にも、フランジ部24に形成された冷却液ガイド通路24bに合わせて複数の冷却液ガイド通路16bが形成される。このように、冷却液ガイド通路16b,24bは、一端が駆動軸16(回転部)の収容孔16aの内周面において開口し、他端がフランジ部24の外周面24aにおいて開口するように、径方向に沿ってそれぞれ独立して形成されている。
【0077】
また、冷却液ガイド通路16b,24bの流路面積は、回転中心C3に近い方の一端から他端に向かうにつれて徐々に大きくなるように形成されている。これにより、連通路40bを通じて冷却液ガイド通路16b,24bに流入した冷却水は、カッターブレード5の側面に拡がりながら供給される。
【0078】
なお、冷却液ガイド通路16b,24bの流路面積は、一端から他端に向かって同じ大きさであってもよい。また、冷却液ガイド通路16b,24bの本数は、複数本あればよく、6本に限定されるものではない。また、駆動軸16の収容孔16a内に嵌入されたブッシュ42にも冷却液ガイド通路16bに合わせて複数の通路42aが形成される。
【0079】
このように冷却液ガイド通路16b,24bが形成された駆動軸16及びフランジ部24からなる回転部が、上記構成の冷却液供給管40の外周面に沿って回転することにより、供給通路40a内の冷却水は、連通路40bと連通した冷却液ガイド通路16b,24bに対して順次供給されることになる。換言すれば、カッターブレード5が回転駆動される際に、供給通路40aと複数の冷却液ガイド通路16b,24bとは、連通路40bを通じて断続的に連通されることになる。
【0080】
ここで、冷却液供給管40に設けられた連通路40bは、図6に示すように、所定の範囲に向かって開口するように形成されており、この開口範囲は、カッターカバー30の開口部30aからカッターブレード5が露出する領域に対応している。
【0081】
したがって、冷却液供給管40の連通路40bから流出した冷却水は、カッターブレード5のうち、カッターカバー30から露出した部分、つまり、カッターブレード5がコンクリート床版Fと接する部分であって摩擦熱により温度が上昇する部分に向けてピンポイントで供給される。
【0082】
このように、カッターブレード5とコンクリート床版Fとが接する部分のみに冷却水が供給される構成とすることによって、カッターブレード5全体に向けて冷却水を供給した場合と比較し、冷却水の供給量を低減させつつ、切断部分における温度上昇を効率的に抑制することが可能となる。
【0083】
また、冷却水の供給量が低減されることで冷却水とコンクリート粉とが混ざり合うことで生じる汚濁水も少なくなるため、冷却水及び汚濁水は上述の液体回収部80によって十分に回収されることとなる。この結果、汚濁水が液体回収部80により回収されずに残ったり、コンクリート床版Fを切断する際に階下に汚濁水が流れ落ちたりすることが抑制され、切断作業後に改めて汚濁水を回収除去する作業が不要ないし縮小される。
【0084】
なお、図6に示される冷却液供給管40の連通路40bは、カッターカバー30からカッターブレード5が露出する領域の略中央に向けて1つだけ設けられている。図1の矢印Rで示されるようにカッターブレード5を回転させた場合に、略中央に向けて冷却水を供給すると、カッターブレード5に供給された冷却水は、カッターブレード5が回転することで中央よりも回転方向にずれた領域、つまり、カッターブレード5によってコンクリート床版Fが切断される切断部分へと到達し易くなる。このため、上述のような方向に向けて連通路40bを開口させておくことによって切断部分における温度上昇を効率的に抑制することができる。
【0085】
また、カッターカバー30からカッターブレード5が露出する領域のうち、略中央の領域では、コンクリート床版Fを切断する際、コンクリート床版Fの下面から階下にカッターブレード5の刃先が突き出た状態になるため、この領域に冷却水が供給されると階下にそのまま流れ落ちてしまう。このため、上述のように、カッターブレード5を回転させた場合に、カッターブレード5が突き出る中央領域からずれた領域に冷却水が到達するように連通路40bの開口方向を設定しておくことで、階下に流れ落ちる冷却水及び汚濁水の量を減らすことができる。
【0086】
このように連通路40bの開口方向は、冷却したい部分に冷却水が到達するとともに、階下へ流れ落ちる冷却水の量が少なくなるように、カッターブレード5の回転方向や回転速度に応じて適宜変更される。また、連通路40bの数は1つに限定されず、要求される箇所に冷却水が到達するように複数設けられてもよい。
【0087】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0088】
上記構成のコンクリート切断装置100では、カッターブレード5の刃先である外周面の一部を覆う外周面カバー部33の内壁面33aが、第1側面カバー部31から第2側面カバー部32に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜している。
【0089】
このようにカッターブレード5の外周面が対向する外周面カバー部33の内壁面33aが傾斜して形成されていることで、遠心力によってカッターブレード5の径方向外側へと飛散した冷却水や汚濁水は、外周面カバー部33の内壁面33aに衝突した後、外周面カバー部33と第2側面カバー部32とにより挟まれた狭小領域へと導かれ、その一部はそのまま狭小領域に沿って流れ落ち、第1スリット35a(第1吸引部)または第2スリット35b(第2吸引部)へと導かれる。
【0090】
また、上記構成のコンクリート切断装置100では、第2側面カバー部32の内壁面32aに冷却液ガイド部37が設けられることから、狭小領域へと導かれた後、第2側面カバー部32の内壁面32aに沿って下方へと流れ落ちる大半の冷却水は、この冷却液ガイド部37に受け入れられ、冷却液ガイド部37のうち、第1ガイド部37aに受け入れられた冷却水は、第1スリット35a(第1吸引部)へと導かれ、第2ガイド部37bに受け入れられた冷却水は、第2スリット35b(第2吸引部)へと導かれる。
【0091】
このように上記構成のコンクリート切断装置100では、カッターカバー30内に飛散した冷却水及び汚濁水は、第1スリット35a(第1吸引部)及び第2スリット35b(第2吸引部)の何れかに向けて積極的に導かれることになるため、冷却水及び汚濁水の回収効率を向上させることができる。
【0092】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0093】
上記実施形態では、外周面カバー部33の内壁面33aは、第1側面カバー部31から第2側面カバー部32に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜している。これに代えて、外周面カバー部33の内壁面33aは、第2側面カバー部32から第1側面カバー部31に向かうにつれて、すなわち、台車1側に向かうにつれてカッターブレード5から離れる方向に傾斜していてもよい。特にカッターブレード5をコンクリート床版Fに対して傾けない場合には、このように外周面カバー部33の内壁面33aを傾斜させておくことによっても飛散した冷却水や汚濁水を各吸引部へと導くことが可能である。なお、この場合、冷却液ガイド部37は、第1側面カバー部31の内壁面31aに設けられる。
【0094】
また、上記実施形態では、コンクリート床版Fに対するカッターブレード5の傾きを変更可能なチルト機構がカッター駆動部10に設けられている。これに代えて、カッター駆動部10には、チルト機構が設けられていなくてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、冷却液ガイド通路16b,24bは、駆動軸16の収容孔16aの内周面からフランジ部24の外周面24aに向かって直線状に形成されている。これに代えて、冷却液ガイド通路16b,24bは、駆動軸16の収容孔16aの内周面からフランジ部24の外周面24aに向かって弧状に形成されていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、冷却液ガイド通路16b,24bは、一端から他端に向かうにつれて流路面積が徐々に大きくなる1本の通路で形成されている。これに代えて、冷却液ガイド通路16b,24bは、一端側では共通の開口である一方、他端側では異なる開口を有する複数本の通路で形成されていてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
100・・・コンクリート切断装置
1・・・台車
5・・・カッターブレード(カッター)
5a・・・内周側端部
10・・・カッター駆動部
16・・・駆動軸(回転部,回転軸)
16b・・・冷却液ガイド通路
24・・・フランジ部(回転軸)
24a・・・外周面
24b・・・冷却液ガイド通路
30・・・カッターカバー
30a・・・開口部
31・・・第1側面カバー部
32・・・第2側面カバー部
33・・・外周面カバー部
35a・・・第1スリット(第1吸引部)
35b・・・第2スリット(第2吸引部)
37・・・冷却液ガイド部
37a・・・第1ガイド部
37b・・・第2ガイド部
40・・・冷却液供給管
40a・・・供給通路
40b・・・連通路
70・・・液体供給部
80・・・液体回収部
図1
図2
図3
図4
図5
図6