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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180939
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20221130BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20221130BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221130BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20221130BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F01N3/023 K
F01N3/025 101
F01N3/035 E
F01N3/023 A
F01N3/18 B
F01N3/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087717
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA05
3G091AA18
3G091AA28
3G091AB02
3G091AB13
3G091BA33
3G091CA18
3G091CB07
3G091EA01
3G091EA17
3G091EA30
3G091EA32
3G091FC01
3G091HA36
3G091HA37
3G190AA02
3G190AA06
3G190AA12
3G190BA05
3G190BA11
3G190BA13
3G190BA35
3G190CA01
3G190CB18
3G190CB23
3G190CB34
3G190CB35
3G190DA03
3G190DB02
3G190DB05
3G190DB12
3G190DB84
3G190DD08
3G190EA01
3G190EA09
3G190EA13
3G190EA14
3G190EA23
3G190EA42
3G190EA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸化触媒の目詰まりの発生を精度よく判定することができる排気浄化システムを提供する。
【解決手段】排気浄化システムは、DOCに対して燃料を添加させることでDPFの再生制御を実行するフィルタ再生部と、DOCの目詰まりの発生を判定する判定部と、を備える。フィルタ再生部は、PMの推定値が第1閾値よりも大きい第1条件が満たされたとき、又は、DPFに関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、DPFの再生制御を実行する。判定部は、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされることでDPFの再生制御が実行された場合であって、かつ、後端部と先端部との温度差が第3閾値よりも大きい第3条件が満たされた場合に、DOCの目詰まりが発生していると判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路に設けられ、前記内燃機関の排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタよりも上流側に位置するように前記排気流路に設けられ、燃料を酸化させることで前記フィルタを再生させる酸化触媒と、
前記フィルタの先端部及び前記フィルタの後端部のそれぞれの温度を検出する温度センサと、
前記酸化触媒に対して前記燃料を添加させることで前記フィルタの再生制御を実行するフィルタ再生部と、
前記酸化触媒の目詰まりの発生を判定する判定部と、を備え、
前記フィルタ再生部は、前記フィルタによって捕集された前記粒子状物質の推定値が第1閾値よりも大きい第1条件が満たされたとき、又は、前記フィルタに関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、前記フィルタの再生制御を実行し、
前記判定部は、前記第1条件が満たされる前に前記第2条件が満たされることで前記フィルタの再生制御が実行された場合であって、かつ、前記後端部と前記先端部との温度差が第3閾値よりも大きい第3条件が満たされた場合に、前記酸化触媒の目詰まりが発生していると判定する、排気浄化システム。
【請求項2】
前記フィルタの上流側及び前記フィルタの下流側のそれぞれの圧力を検出する圧力センサを更に備え、
前記所定の指標は、前記フィルタの上流側と前記フィルタの下流側との圧力差であり、
前記第2条件は、前記圧力差が前記第2閾値よりも大きい条件である、請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項3】
前記酸化触媒の再生制御を実行する触媒再生部を更に備える、請求項1又は2に記載の排気浄化システム。
【請求項4】
前記触媒再生部は、前記フィルタ再生部が前記フィルタの再生制御を実行する期間中に、前記酸化触媒の再生制御を実行する、請求項3に記載の排気浄化システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記内燃機関を含む車両に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記内燃機関を含む車両とは離れておりかつ前記車両と通信可能な装置に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ、及び、燃料を酸化させることでフィルタを再生させる酸化触媒を備える排気浄化システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような排気浄化システムでは、酸化触媒の目詰まりが発生すると、フィルタの再生過程において、酸化触媒に対して添加された燃料が十分に酸化されないまま、フィルタへ流れる場合がある。その場合には、フィルタへ流れる排気ガスの温度が十分に上昇しない結果、フィルタの先端部と後端部との温度差が生じる傾向にある。特許文献1に記載の排気浄化システムでは、このような傾向に着目し、上記の温度差に基づいて、酸化触媒の目詰まりの発生を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-161718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような排気浄化システムでは、一般的にはフィルタの熱容量が比較的大きいため、上記の温度差が酸化触媒の目詰まりの発生よりも遅れて現れる場合があり、その場合には、酸化触媒の目詰まりの発生を精度良く判定することが困難なおそれがある。
【0005】
本発明は、酸化触媒の目詰まりの発生を精度よく判定することができる排気浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気浄化システムは、内燃機関の排気流路に設けられ、内燃機関の排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、フィルタよりも上流側に位置するように排気流路に設けられ、燃料を酸化させることでフィルタを再生させる酸化触媒と、フィルタの先端部及びフィルタの後端部のそれぞれの温度を検出する温度センサと、酸化触媒に対して燃料を添加させることでフィルタの再生制御を実行するフィルタ再生部と、酸化触媒の目詰まりの発生を判定する判定部と、を備え、フィルタ再生部は、フィルタによって捕集された粒子状物質の推定値が第1閾値よりも大きい第1条件が満たされたとき、又は、フィルタに関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、フィルタの再生制御を実行し、判定部は、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされることでフィルタの再生制御が実行された場合であって、かつ、後端部と先端部との温度差が第3閾値よりも大きい第3条件が満たされた場合に、酸化触媒の目詰まりが発生していると判定する。
【0007】
この排気浄化システムでは、フィルタ再生部は、粒子状物質の推定値が第1閾値よりも大きい第1条件が満たされたとき、又は、フィルタに関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、フィルタの再生制御を実行する。第1条件が満たされる前にフィルタの再生制御が実行された場合には、酸化触媒の目詰まりが発生している可能性が比較的高い。すなわち、酸化触媒の目詰まりが発生していると、上述したように、酸化触媒に対して添加された燃料が十分に酸化されないまま、フィルタへ流れる場合がある。その場合には、フィルタの先端部においては、フィルタへ流れる排気ガスの温度が十分に上昇しない結果、粒子状物質が除去されにくくなる。一方、フィルタの後端部においては、酸化触媒で十分に酸化されていない燃料が粒子状物質と燃焼反応を起こした結果、先端部に比べて粒子状物質が除去されやすくなる。つまり、酸化触媒の目詰まりが発生していると、粒子状物質がフィルタの先端部に偏って堆積する傾向にあり、第1条件が満たされる前にフィルタの再生制御が実行される場合がある。判定部は、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされることでフィルタの再生制御が実行された場合であって、かつ、後端部と先端部との温度差が第3閾値よりも大きい第3条件が満たされた場合に、酸化触媒の目詰まりが発生していると判定する。これにより、第1条件及び第2条件に基づいて、酸化触媒の目詰まりの発生を素早く判定し、かつ、第3条件に基づいて、酸化触媒の目詰まりを確実に判定することができる。以上により、この排気浄化システムによれば、酸化触媒の目詰まりの発生を精度よく判定することができる。
【0008】
排気浄化システムは、フィルタの上流側及びフィルタの下流側のそれぞれの圧力を検出する圧力センサを更に備え、所定の指標は、フィルタの上流側とフィルタの下流側との圧力差であり、第2条件は、圧力差が第2閾値よりも大きい条件であってもよい。酸化触媒の目詰まりが発生していると、上述したように、粒子状物質がフィルタの先端部に偏って堆積する傾向にある。その場合には、第1条件が満たされる前に圧力差が第2閾値よりも大きくなる傾向にある。上記の構成によれば、第2条件として圧力差を用いることで、酸化触媒の目詰まりの発生を容易且つ素早く判定することができる。
【0009】
排気浄化システムは、酸化触媒の再生制御を実行する触媒再生部を更に備えてもよい。これにより、酸化触媒の目詰まりが発生していると判定部が判定した場合に、酸化触媒を素早く再生させることができる。
【0010】
触媒再生部は、フィルタ再生部がフィルタの再生制御を実行する期間中に、酸化触媒の再生制御を実行してもよい。これにより、フィルタの再生制御及び酸化触媒の再生制御が同時に実行される期間が生じるため、フィルタ及び酸化触媒の再生の効率を向上させることができる。
【0011】
判定部は、内燃機関を含む車両に設けられていてもよい。これにより、当該車両の酸化触媒の目詰まりの発生を確実に判定することができる。
【0012】
判定部は、内燃機関を含む車両とは離れておりかつ車両と通信可能な装置に設けられていてもよい。これにより、当該車両と離れている場所においても、酸化触媒の目詰まりの発生を判定することができ、酸化触媒の目詰まりの解消のために柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸化触媒の目詰まりの発生を精度良く判定することができる排気浄化システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る排気浄化システムの概略構成を示す図である。
図2】排気浄化システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】フィルタ再生部での処理の一例を示すフローチャートである。
図4】フィルタによって捕集された粒子状物質の分布を示すイメージ図である。
図5】酸化触媒の正常状態及び異常状態のそれぞれを示すグラフである。
図6】触媒再生部での処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は同等要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る排気浄化システムの概略構成を示す図である。図1に示されるように、排気浄化システム10は、車両1に搭載されている。車両1は、例えば乗用車又はフォークリフト等である。車両1は、エンジン(内燃機関)2と、インテークマニホールド3と、エキゾーストマニホールド4と、吸気部5と、排気管6と、排気浄化システム10と、を備えている。
【0017】
エンジン2は、例えば、コモンレール式の4気筒直列ディーゼルエンジンである。エンジン2は、シリンダブロック及びシリンダヘッド等を有している。エンジン2には、各燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ(図示省略)が設けられている。インジェクタは、コモンレールに接続されている。インジェクタには、コモンレールに貯留された高圧燃料が供給される。燃料は、例えば軽油である。
【0018】
インテークマニホールド3は、エンジン2の燃焼室に連通されている。インテークマニホールド3は、空気をエンジン2の燃焼室に流入させる。エキゾーストマニホールド4は、エンジン2の燃焼室に連通されている。エキゾーストマニホールド4は、エンジン2の燃焼室から排気された排気ガスを流出させる。
【0019】
吸気部5は、空気の流路におけるインテークマニホールド3の上流側に設けられている。吸気部5は、例えばスロットルバルブ等である。エンジン2では、吸気部5の開度が調整されることで、燃焼室に流入する空気の量が調整される。排気管6は、エキゾーストマニホールド4に連通されている。排気管6は、エキゾーストマニホールド4から流出された排気ガスをエンジン2の外部へ流出させる。エキゾーストマニホールド4の流路及び排気管6の流路6aは、エンジン2の排気流路を構成する。
【0020】
排気浄化システム10は、フィルタ[DPF:Diesel Particulate Filter]11と、酸化触媒[DOC:Diesel Oxidation Catalyst]12と、添加部13と、一対の圧力センサ14と、一対の温度センサ15と、温度センサ16と、ECU[Electronic Control Unit]17と、を備えている。
【0021】
DPF11は、エンジン2の排気流路に設けられている。DPF11は、排気管6の流路6aに配置されている。DPF11は、排気ガス中の粒子状物質[PM:Particulate Matter]を捕集することで、排気ガスからPMを除去する。
【0022】
DOC12は、エンジン2の排気流路に設けられている。DOC12は、排気管6の流路6aに配置されている。DOC12は、排気流路においてDPF11よりも上流側に位置している。DOC12は、排気ガスに含まれるHC及びCO等を酸化させることで、排気ガスを浄化する。DOC12は、燃料を酸化させることでDPF11へ流れる排気ガスの温度を上昇させる。DPF11は、DPF11を流れる高温の排気ガスによって再生される。
【0023】
添加部13は、排気管6に設けられた燃料添加弁131を有している。燃料添加弁131は、排気流路におけるDOC12の上流側に設けられている。添加部13は、DOC12に対して燃料を添加する。添加部13により添加される燃料は、上記のインジェクタに供給される燃料と同じである。
【0024】
各圧力センサ14及び各温度センサ15,16は、排気管6の流路6aに設けられている。各圧力センサ14は、排気流路におけるDPF11の上流側及び下流側に設けられている。一方の圧力センサ14は、DPF11とDOC12との間に設けられており、DPF11の上流側の圧力を検出する。他方の圧力センサ14は、DPF11に対してDOC12とは反対側に設けられており、DPF11の下流側の圧力を検出する。各圧力センサ14は、検出された圧力に関する信号をリアルタイムでECU17へ送信する。
【0025】
各温度センサ15は、排気流路におけるDPF11の上流側及び下流側に設けられている。一方の温度センサ15は、DPF11とDOC12との間に設けられており、DPF11の上流側の排気ガスの温度をDPF11の先端部11aの温度として検出する。他方の温度センサ15は、DPF11に対してDOC12とは反対側に設けられており、DPF11の下流側の排気ガスの温度をDPF11の後端部11bの温度として検出する。各温度センサ15は、圧力センサ14よりもDPF11側に位置している。各温度センサ15は、検出された温度に関する信号をリアルタイムでECU17へ送信する。
【0026】
温度センサ16は、排気流路におけるDOC12の上流側に設けられている。温度センサ16は、DOC12に対してDPF11とは反対側に設けられている。温度センサ16は、DOC12の上流側の排気ガスの温度をDOC12の先端部12aの温度として検出する。温度センサ16は、検出された温度に関する信号をリアルタイムでECU17へ送信する。
【0027】
ECU17は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]及びCAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU17では、ROMに記憶されているプログラムがRAMにロードされ、RAMにロードされたプログラムがCPUで実行されることにより各種の機能が実現される。ECU17は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。ECU17は、エンジン2を含む車両1に設けられている。ECU17は、エンジン2に設けられている。
【0028】
図2は、排気浄化システム10の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、ECU17は、機能的構成として、算出部171と、フィルタ再生部172と、判定部173と、触媒再生部174と、を有している。
【0029】
算出部171は、予め保存されたPMに関するデータ、並びに、エンジン2の回転数又は運転時間等の運転状況に基づいて、DPF11によって捕集されたPMの推定値(以下、「PMの推定値」という)を算出する。PMに関するデータは、例えば、エンジン2の回転数又は運転時間等の運転状況とDPF11によって捕集されたPMの実際の重量との相関関係を示すマップ等である。PMの推定値は、DPF11に堆積しているであろうPMの重量である。
【0030】
フィルタ再生部172は、DPF11の再生制御を実行する。具体的には、フィルタ再生部172は、例えば、添加部13を制御することでDOC12に対して燃料を添加させる。フィルタ再生部172は、添加部13によって添加される燃料の量を制御する。フィルタ再生部172は、添加部13の燃料添加弁131の開度に関する信号を添加部13へ送信する。
【0031】
フィルタ再生部172は、算出部171によって算出されたPMの推定値、又は、各圧力センサ14から送信された信号に基づいて、DPF11の再生制御を実行する。具体的には、フィルタ再生部172は、PMの推定値が第1閾値よりも大きいとき(第1条件が満たされたとき)、又は、DPF11に関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、DPF11の再生制御を実行する。所定の指標は、DPF11の上流側と下流側との圧力差(以下、「DPF11の圧力差」という)である。第2条件は、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きい条件である。DPF11の圧力差は、DPF11を流れる排気ガスの流量ごとの圧力差である。つまり、DPF11の圧力差は、DPF11の圧力差の実測値を排気ガスの流量で除した値である。
【0032】
DPF11の圧力差は、DPF11の上流側の圧力からDPF11の下流側の圧力を引いた値である。本実施形態では、第2閾値は、0以上である。つまり、第2条件は、DPF11の上流側の圧力がDPF11の下流側の圧力よりも大きい条件である。第1閾値は、例えば30g程度である。第2閾値は、例えば0.1kPa/(g/s)程度である。
【0033】
フィルタ再生部172は、第1条件及び第2条件のいずれか一方が満たされれば、DPF11の再生制御を実行する。フィルタ再生部172は、第2条件が満たされる前に第1条件が満たされた場合、及び、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされた場合のいずれにおいても、DPF11の再生制御を実行する。
【0034】
判定部173は、DOC12の目詰まりの発生を判定する。DOC12の目詰まりの発生とは、DOC12における排気ガスが流れる流路のうち、所定値よりも多い流路が詰まっていることをいう。判定部173は、フィルタ再生部172によるDPF11の再生制御、及び、各温度センサ15から送信された信号に基づいて、DOC12の目詰まりの発生を判定する。具体的には、判定部173は、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされることでDPF11の再生制御が実行された場合であって、かつ、DPF11の先端部11aと後端部bとの温度差(以下、「DPF11の温度差」という)が第3閾値よりも大きい場合(第3条件が満たされた場合)に、DOC12の目詰まりが発生していると判定する。
【0035】
DPF11の温度差は、DPF11の後端部11bの温度からDPF11の先端部11aの温度を引いた値である。本実施形態では、第3閾値は、0以上である。つまり、第3条件は、DPF11の先端部11aの温度がDPF11の後端部11bの温度よりも小さい条件である。DPF11の温度差は、DPF11の再生期間中における再生終了時の値である。第3閾値は、例えば100℃程度である。
【0036】
触媒再生部174は、DOC12の再生制御を実行する。具体的には、触媒再生部174は、例えば、吸気部5の開度を制御することでエンジン2の燃焼室へ流入する空気の量を制御する。触媒再生部174は、エンジン2の燃焼室へ流入する空気の量を減少させることで、DOC12へ流れる排気ガスの温度を上昇させる。DOC12は、DOC12を流れる高温の排気ガスによって再生される。触媒再生部174は、温度センサ16から送信された信号に基づいて、DOC12の先端部16aの温度が所定値よりも大きくなるまでDOC12の再生制御を実行する。
【0037】
触媒再生部174は、フィルタ再生部172がDPF11の再生制御を実行する期間中に、DOC12の再生制御を実行する。具体的には、触媒再生部174は、DOC12の目詰まりが発生していると判定部173が判定した場合に、当該判定の後、DPF11の再生制御が実行される期間中に、DOC12の再生制御を実行する。
【0038】
次に、ECU17での処理について説明する。図3は、フィルタ再生部172での処理の一例を示すフローチャートである。図3に示されるように、まず、PMの推定値が第1閾値よりも大きいか否かが判定される(ステップS1)。ステップS1において、PMの推定値が第1閾値よりも大きいと判定された場合、DPF11の再生制御が実行される(ステップS2)。ステップS1において、PMの推定値が第1閾値以下であると判定された場合、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きいか否かが判定される(ステップS3)。ステップS3において、DPF11の圧力差が第3閾値よりも大きいと判定された場合、ステップS2の処理が実行される。ステップS3において、DPF11の圧力差が第3閾値以下であると判定された場合、処理が終了される。
【0039】
図4は、DPF11によって捕集されたPMの分布を示すイメージ図である。図4の(a)に示されるように、DOC12の目詰まりが発生していない場合(正常な場合)には、PM9がDPF11の全体において概ね均等に分布する。しかし、図4の(b)に示されるように、DOC12の目詰まりが発生している場合(異常な場合)には、PM9がDPF11の先端部11aに偏って堆積する。
【0040】
すなわち、排気浄化システム10のようなシステムでは、DOC12の目詰まりが発生すると、DPF11の再生過程において、DOC12に対して添加された燃料が十分に酸化されないまま、DPF11へ流れる場合がある。その場合には、DPF11の先端部11aにおいては、DPF11へ流れる排気ガスの温度が十分に上昇しない結果、PM9が除去されにくくなる。一方、DPF11の後端部11bにおいては、DOC12で十分に酸化されていない燃料がPM9と燃焼反応を起こした結果、先端部11aに比べてPM9が除去されやすくなる。このように、DOC12の目詰まりが発生していると、PM9がDPF11の先端部11aに偏って堆積する傾向にある。
【0041】
また、DOC12の目詰まりが発生していると、上述したように、DPF11の先端部11aにおいては、DPF11へ流れる排気ガスの温度が十分に上昇せず、かつ、DPF11の後端部11bにおいては、DOC12で十分に酸化されていない燃料がPM9と燃焼反応を起こすため、先端部11aの温度が後端部11bの温度よりも低くなる傾向にある。
【0042】
図5は、DOC12の正常状態及び異常状態のそれぞれを示すグラフである。図5に示されるように、DOC12が正常である場合には、PM9の推定値が第1閾値に到達するとほぼ同時にDPF11の圧力差が第2閾値に到達する。しかし、DOC12が異常である場合には、PM9の推定値が第1閾値に到達する前にDPF11の圧力差が第2閾値に到達する場合がある。換言すると、PM9の推定値が第1閾値よりも大きくなる前にDPF11の圧力差が第2閾値よりも大きくなった場合には、DOC12の目詰まりが発生している可能性がある。
【0043】
図6は、触媒再生部174での処理の一例を示すフローチャートである。図6に示されるように、まず、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きいことでDPF11の再生制御が実行されたか否かが判定される(ステップS11)。ステップS11において、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きいことでDPF11の再生制御が実行されたと判定された場合、DPF11の温度差が第3閾値よりも大きいか否かが判定される(ステップS12)。
【0044】
ステップS12において、DPF11の温度差が第3閾値よりも大きいと判定された場合、DOC12の目詰まりフラグがONとされる(ステップS13)。これにより、DOC12の目詰まりが発生していると判定される。続いて、DOC12の再生制御が実行される(ステップS14)。続いて、DOC12の先端部12aの温度が所定値よりも大きいか否かが判定される(ステップS15)。
【0045】
ステップS15において、DOC12の先端部12aの温度が所定値よりも大きいと判定された場合、DOC12の目詰まりフラグがOFFとされ(ステップS16)、処理が終了される。ステップS11において、DPF11の圧力差が第2閾値以下であるときにDPF11の再生制御が実行されたと判定された場合、処理が終了される。ステップS12において、DPF11の温度差が第3閾値以下であると判定された場合、処理が終了される。ステップS15において、DOC12の先端部12aの温度が所定値以下であると判定された場合、再び、ステップS14の処理が実行される。
【0046】
以上説明したように、排気浄化システム10では、フィルタ再生部172が、PMの推定値が第1閾値よりも大きい第1条件が満たされたとき、又は、DPF11に関する所定の指標と第2閾値との関係についての第2条件が満たされたときに、DPF11の再生制御を実行する。第1条件が満たされる前にDPF11の再生制御が実行された場合には、DOC12の目詰まりが発生している可能性が比較的高い。すなわち、DOC12の目詰まりが発生していると、上述したように、PMがDPF11の先端部11aに偏って堆積する傾向にあり、第1条件が満たされる前にDPF11の再生制御が実行される場合がある。判定部173は、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされることでDPF11の再生制御が実行された場合であって、かつ、DPF11の温度差が第3閾値よりも大きい第3条件が満たされた場合に、DOC12の目詰まりが発生していると判定する。これにより、第1条件及び第2条件に基づいて、DOC12の目詰まりの発生を素早く判定し、かつ、第3条件に基づいて、DOC12の目詰まりを確実に判定することができる。以上により、排気浄化システム10によれば、DOC12の目詰まりの発生を精度よく判定することができる。
【0047】
DPF11に関する所定の指標は、DPF11の圧力差である。第2条件は、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きい条件である。DOC12の目詰まりが発生していると、上述したように、PMがDPF11の先端部11aに偏って堆積する傾向にある。その場合には、第1条件が満たされる前にDPF11の圧力差が第2閾値よりも大きくなる傾向にある。上記の構成によれば、第2条件としてDPF11の圧力差を用いることで、DOC12の目詰まりの発生を容易且つ素早く判定することができる。
【0048】
排気浄化システム10は、DOC12の再生制御を実行する触媒再生部174を備えている。これにより、DOC12の目詰まりが発生していると判定部173が判定した場合に、DOC12を素早く再生させることができる。
【0049】
触媒再生部174は、フィルタ再生部172がDPF11の再生制御を実行する期間中に、DOC12の再生制御を実行する。これにより、DPF11の再生制御及びDOC12の再生制御が同時に実行される期間が生じるため、DPF11及びDOC12の再生の効率を向上させることができる。
【0050】
判定部173は、エンジン2を含む車両1に設けられている。これにより、当該車両1のDOC12の目詰まりの発生を確実に判定することができる。例えば、車両1が通信状況の優れない地域で走行している場合においても、外部からのサポートを必要とすることなく、自車両のDOC12の目詰まりの発生を確実に判定することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0052】
DPF11に関する所定の指標が、DPF11の圧力差であって、第2条件が、DPF11の圧力差が第2閾値よりも大きい条件である例を示した。しかし、DPF11に関する所定の指標は、例えば、第1回目(前回)のDPF11の再生終了時から起算して、第2回目(今回)のDPF11の再生制御が実行されるまでの期間(以下、「サイクル期間」という)であってもよい。第2条件は、サイクル期間が第2閾値よりも短い条件であってもよい。この場合、第2閾値としては、第1回目のDPF11の再生終了時から起算して、PMの推定値が第1閾値よりも大きくなるまでの期間よりも短い期間(例えば6時間)が用いられてもよい。換言すると、判定部173は、第1回目のDPF11の再生終了時から起算して、例えば6時間を経過する前にDPF11の再生制御が実行された場合であって、かつ、DPF11の温度差が第3閾値よりも大きい場合に、DOC12の目詰まりが発生していると判定してもよい。
【0053】
DPF11の温度差が、DPF11の再生期間中における再生終了時の値である例を示したが、DPF11の温度差は、DPF11の再生期間中における任意の時刻の値であってもよい。DPF11の温度差は、DPF11の再生期間中における平均値であってもよい。
【0054】
触媒再生部174がDOC12の再生制御を実行する例を示したが、DOC12の再生は、手動で行われてもよい。つまり、排気浄化システム10は、触媒再生部174を備えていなくてもよい。この場合、DOC12を柔軟にかつ効率よく再生させることができる。
【0055】
車両1に設けられているECU17が、判定部173を有している例を示したが、判定部173は、車両1とは離れておりかつ車両1と通信可能な装置に設けられていてもよい。判定部173は、例えば、車両1と通信可能な基地局に設けられていてもよい。この場合、当該車両1と離れている場所においても、DOC12の目詰まりの発生を判定することができ、DOC12の目詰まりの解消のために柔軟に対応することができる。例えば、基地局において、テレマティクスデータ等に基づいて、車両1のDOC12の目詰まりが発生していると判定した場合に、車両1に向けてDOC12の再生を促す信号を送信してもよいし、DOC12の再生を専門とする人を車両1の所在地に派遣してもよい。また、1つの基地局において複数の車両1についてDOC12の目詰まりの発生を判定することができる。なお、算出部171、フィルタ再生部172又は触媒再生部174も判定部173と同様に、車両1とは離れた装置に設けられていてもよい。
【0056】
添加部13が、排気管6に設けられた燃料添加弁131を有している例を示したが、添加部13としてエンジン2に設けられたインジェクタが用いられてもよい。排気流路への燃料の添加は、インジェクタによるポスト噴射により実現することができる。また、添加部13により添加される燃料は、インジェクタに供給される燃料と同じでる例を示したが、添加部13が、排気管6に設けられた燃料添加弁131を有している場合には、添加部13により添加される燃料は、インジェクタに供給される燃料と異なってもよい。添加部13により添加される燃料は、例えばガソリン等であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…車両、2…エンジン(内燃機関)、9…PM(粒子状物質)、10…排気浄化システム、11…DPF(フィルタ)、11a…先端部、11b…後端部、12…DOC(酸化触媒)、14…圧力センサ、15…温度センサ、172…フィルタ再生部、173…判定部、174…触媒再生部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6