(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180940
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】遠心圧縮機及び過給機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20221130BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221130BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20221130BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F04D29/44 N
F04D29/66 N
F04D29/44 Y
F04D29/42 M
F02B39/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087718
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
【テーマコード(参考)】
3G005
3H130
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA11
3G005FA45
3G005GB15
3G005GB85
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC14
3H130AC17
3H130BA10A
3H130BA13A
3H130BA97A
3H130CA02
3H130CA05
3H130DA02Z
3H130DD06Z
3H130DD09Z
3H130DG02Z
3H130DG04Z
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07J
3H130EB00A
(57)【要約】
【課題】低周波数の騒音を低減するとともに大型化を抑制可能な遠心圧縮機を提供する。
【解決手段】インペラと、インペラを収容し、インペラに空気を案内するように内部に空気流路を形成するケーシングと、を備える遠心圧縮機であって、ケーシングは、空気流路を流れる空気の一部をインペラの翼の前縁より下流側から前縁より上流側に還流させるための少なくとも1つの再循環流路を空気流路の外周側に含み、再循環流路は、螺旋状に形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
前記インペラを収容し、前記インペラに空気を案内するように内部に空気流路を形成するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記空気流路を流れる前記空気の一部を前記インペラの翼の前縁より下流側から前記前縁より上流側に還流させるための少なくとも1つの再循環流路を前記空気流路の外周側に含み、
前記再循環流路は、螺旋状に形成された、遠心圧縮機。
【請求項2】
前記再循環流路の入口から前記再循環流路を通って前記再循環流路の出口に向かう場合における前記再循環流路の螺旋の回転方向は、前記インペラの回転方向と同一である、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記再循環流路の入口側における前記再循環流路の端部は、前記再循環流路の入口に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成された、請求項1又は2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記再循環流路の出口側における前記再循環流路の端部は、前記再循環流路の出口に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成された、請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記空気流路を流れる前記空気の一部を前記インペラの翼の前縁より下流側から前記前縁より上流側に還流させるための複数の再循環流路を前記空気流路の外周側に含み、
前記複数の再循環流路の各々は、螺旋状に形成された、請求項1乃至4の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
前記複数の再循環流路の各々の空気の入口は、前記インペラの周方向において互いに異なる位置に形成された、請求項5に記載の遠心圧縮機。
【請求項7】
前記複数の再循環流路の各々の空気の出口は、前記インペラの周方向において互いに異なる位置に形成された、請求項5又は6に記載の遠心圧縮機。
【請求項8】
前記複数の再循環流路は、互いに長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路を含む、請求項5乃至7の何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項9】
前記複数の再循環流路は、
螺旋状に形成された第1再循環流路と、
螺旋状に形成された第2再循環流路であって、前記インペラの軸方向における少なくとも一部の範囲において、前記第1再循環流路の螺旋の半径よりも大きな螺旋の半径を有する第2再循環流路と、
を備える、請求項8に記載の遠心圧縮機。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の遠心圧縮機と、前記遠心圧縮機と回転軸を介して連結されたタービンとを備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機及び過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば過給機の遠心圧縮機では、過給機の回転数と翼の枚数との積によって決まる周波数を有する回転音であるBPF音に加えて、サージ(逆流)点近傍の流量が小さい運転領域で回転数又はそれよりも低い周波数帯で発生するうなり音、遷音速領域で翼端からの衝撃波の発生に伴い発生する回転数とその高調波の騒音(Buzz-saw音)といった、比較的低い周波数(例えば1000Hz程度以下)の騒音が発生することがある。
【0003】
一般に、低周波数の騒音はサイレンサなどによる低減が難しい。また、周波数の低い音波ほど波長がながく、過給機の大きさでは共鳴管などによる対策も困難となりやすい。また、新たに騒音対策のための構造を加えることは、過給機の大型化及び重量増大に繋ってしまう。
【0004】
特許文献1には、遠心圧縮機の騒音低減のための構造として、インペラの周囲に円環状の流路を設けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の遠心圧縮機では、円環状の流路を用いて騒音を低減しており、ある程度低い周波数の騒音を低減するためには、コンプレッサの入口近傍が大型化してしまう。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、低周波数の騒音を低減するとともに大型化を抑制可能な遠心圧縮機及び過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機は、
インペラと、
前記インペラを収容し、前記インペラに空気を案内するように内部に空気流路を形成するケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記空気流路を流れる前記空気の一部を前記インペラの翼の前縁より下流側から前記前縁より上流側に還流させるための少なくとも1つの再循環流路を前記空気流路の外周側に含み、
前記再循環流路は、螺旋状に形成される。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
前記遠心圧縮機と、前記遠心圧縮機と回転軸を介して連結されたタービンとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、低周波数の騒音を低減するとともに大型化を抑制可能な遠心圧縮機及び過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る過給機2の部分断面図であり、過給機2における遠心圧縮機4の部分について軸方向に沿った断面を示している。
【
図2】
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に直交する断面の一例を示している。
【
図3】
図2に示した空気案内筒部20の一部について、軸方向に沿った断面を示す断面斜視図である。
【
図4】
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に沿った断面及び再循環流路26の入口28と出口30の一例を示している。
【
図5】
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に沿った断面及び再循環流路26の入口28と出口30の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
図1は、一実施形態に係る過給機2の部分断面図であり、過給機2の遠心圧縮機4について回転軸6の軸線方向に沿った断面を示している。
【0014】
図1に示すように、過給機2は、遠心圧縮機4と、遠心圧縮機4に回転軸6を介して連結されたタービン8とを備える。遠心圧縮機4は、インペラ10と、インペラ10を収容するケーシング12と、を備える。
【0015】
以下では、インペラ10の軸方向(回転軸6の軸線方向)を単に「軸方向」といい、インペラ10の径方向(回転軸6の径方向)を単に「径方向」といい、インペラ10の周方向(回転軸6の周方向)を単に周方向ということとする。
【0016】
インペラ10は、回転軸6に固定されたハブ14とハブ14の外周面に周方向に間隔をあけて設けられた複数の翼16とを含む。インペラ10は、回転軸6を介してタービン8のタービンロータ9に連結されており、インペラ10とタービンロータ9とは一体的に回転するように構成されている。回転軸6は不図示の軸受によって回転可能に支持されている。
【0017】
ケーシング12は、インペラ10に空気を案内するように内部に空気流路18を形成する筒状の空気案内筒部20と、インペラ10を通過した空気が流入するスクロール流路21を形成するスクロール部22とを含む。
【0018】
空気案内筒部20は、空気流路18を流れる空気の一部をインペラ10の翼16の前縁24より下流側から前縁24より上流側に還流させるための少なくとも一つの再循環流路26(ケーシングトリートメント)を空気流路18の外周側(径方向における空気流路18の外側)に含む。再循環流路26は、遠心圧縮機4の低流量時におけるインペラ10での逆流を抑制し、過給機2の運転可能範囲を拡大する機能を有する。
【0019】
再循環流路26の一端は空気流路18における前縁24よりも下流側の位置に接続しており、再循環流路26の他端は空気流路18における前縁24よりも上流側の位置に接続している。すなわち、再循環流路26の一端側の開口である再循環流路26の入口28は、空気流路18における前縁24よりも下流側の位置において空気流路18の流路壁面29に形成されており、再循環流路26の他端側の開口である再循環流路26の出口30は、空気流路18における前縁24よりも上流側の位置において空気流路18の流路壁面29に形成されている。
【0020】
再循環流路26は、空気流路18の外周側に空気流路18を取り巻くように螺旋状に形成されている。再循環流路26は、空気流路18に沿って軸方向における一方側(及び他方側)に向かうにつれて周方向に巻くように(周方向に回転するように)形成されている。
【0021】
上記の構成では、空気流路18を流れる空気の一部は、空気流路18における前縁24よりも下流側において再循環流路26の入口28から螺旋状の再循環流路26に流入し、空気流路18の周りを旋回するように再循環流路26を流れて、空気流路18における前縁24よりも上流側の位置において再循環流路26の出口30から空気流路18に還流される。
【0022】
このような構成では、インペラ10の入口付近(前縁24付近)で発生した騒音の音波は、空気流路18及び再循環流路26をそれぞれ伝搬して、再循環流路26の出口30で互いに干渉するため、再循環流路26の流路長さを適切に設定することにより、対象とする周波数の騒音を干渉により低減することができる。
【0023】
例えば、螺旋状の再循環流路26の長さL1と、再循環流路26の入口28の位置から再循環流路26の出口30の位置までの空気流路18の長さL2との差をΔL(=L1―L2)とし、音波の波長をλとすると、差ΔLが波長λのn/2倍(ここで、nは正の整数である。)となると、音波の干渉によりインペラ10の入口付近で発生した騒音を低減することができる。なお、上記差ΔLが波長λのn/2倍となる場合において、特にnが奇数である場合に音波の干渉によりインペラ10の入口付近で発生した騒音を効果的に低減することができるが、nが偶数である場合においても、過渡的に周波数が変化する音波に対する減衰効果がある。なお、音波の上記干渉によって音波を効果的に減衰させるためには、上記長さL1を有する再循環流路26から来る音のエネルギーと、空気流路18における上記出口30から上記入口28へ向かう音(上記長さL2に対応する経路を通る音)のエネルギーとは、同一又は概ね同程度であることが望ましい。
【0024】
上記の構成では、再循環流路26を空気流路18の外周側に螺旋状に形成することにより、限られたスペースに長い再循環流路26を形成することができるため、低周波数の騒音を低減するとともに遠心圧縮機4及び過給機2の大型化を抑制することが可能となる。
【0025】
また、従来、再循環流路は過給機の作動範囲の拡大のために設けられる場合があるため、過給機の作動範囲の拡大のための再循環流路とは別に騒音低減のための構造を新たに追加する場合と比較して、過給機の大型化や重量増大を抑制することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、再循環流路26の入口28から再循環流路26を通って再循環流路26の出口30に向かう場合における螺旋状の再循環流路26の螺旋の回転方向は、インペラ10の回転方向と同一であってもよい。例えば、インペラ10を軸方向に沿って空気流路18の下流側から(タービン8側から)視たときにインペラ10が時計回りに回転する場合には、螺旋状の再循環流路26の螺旋は、再循環流路26を入口28から出口30に向かうにつれて時計回りに回転するように構成されてもよい。また、インペラ10を軸方向に沿って空気流路18の下流側から(タービン8側から)視たときにインペラ10が反時計回りに回転する場合には、螺旋状の再循環流路26の螺旋は、再循環流路26を入口28から出口30に向かうにつれて反時計回りに回転するように構成されてもよい。
【0027】
一般に、インペラ10に流入する流れは、インペラ10の回転の向きに旋回している。このため、上記のように構成することにより、インペラ10に流入する流れの旋回方向と再循環流路26を入口28から出口30へ流れる流れ場の旋回方向とを一致させることができる。これにより、インペラ10へ流入する流れの乱れを抑制し、発生する騒音の増大を効果的に抑制することができる。
【0028】
図2は、
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に直交する断面の一例を示している。
図3は、
図2に示した空気案内筒部20の一部について、軸方向に沿った断面を示す断面斜視図である。
図4は、
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に沿った断面及び再循環流路26の入口28と出口30の一例を示している。
図5は、
図1に示したケーシング12の空気案内筒部20の一部の構成例を示す断面斜視図であり、空気案内筒部20における軸方向に沿った断面及び再循環流路26の入口28と出口30の一例を示している。
【0029】
以下で説明する幾つかの実施形態において、
図1を用いて説明した各構成と共通の符号は、特記しない限り
図1を用いて説明した各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0030】
幾つかの実施形態では、例えば
図2~
図5に示すように、遠心圧縮機4のケーシング12は、螺旋状に形成された再循環流路26を複数備えている。すなわち、遠心圧縮機4の空気案内筒部20は、空気流路18を流れる空気の一部をインペラ10の翼16の前縁24より下流側から前縁24より上流側に還流させるための複数の再循環流路26を空気流路18の外周側に含む。例えば
図2及び
図3に示す空気案内筒部20は、6つの螺旋状の再循環流路26を備えている。例えば
図2及び
図3に示すように、複数の再循環流路26の各々は、軸方向に直交する断面において他の再循環流路26に対して周方向にずれて配置されており、複数の再循環流路26のうち互いに隣接する2つの再循環流路26は、螺旋状の隔壁32によって仕切られている。
【0031】
このようにケーシング12が複数の螺旋状の再循環流路26を備えることにより、個々の再循環流路26の流路断面積が小さくとも複数の再循環流路26によって大きなエネルギーを輸送することができ、上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、複数の再循環流路26の各々の空気の入口28は、周方向において互いに異なる位置に形成されている。図示する形態では、複数の再循環流路26の各々の空気の入口28は、軸方向における同一の位置に形成されている。
【0033】
かかる構成によれば、限られたスペースに複数の螺旋状の再循環流路26を密に形成することができ、複数の再循環流路26によって大きなエネルギーを輸送することができる。また、騒音の発生源と考えられる翼16の先端に近い位置に再循環流路26の入口28があることも、再循環流路26による音のエネルギーの輸送量を大きくするために有効である。これにより、遠心圧縮機4の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。なお、騒音低減効果を高めるために、例えば複数の再循環流路26の入口28の面積の合計は、軸方向における入口28の位置(入口28の中心位置)での空気流路18の流路断面積の0.1倍~1.4倍であってもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、複数の再循環流路26の各々の空気の出口30は、周方向において互いに異なる位置に形成されている。図示する形態では、複数の再循環流路26の各々の空気の出口30は、軸方向における同一の位置に形成されている。
【0035】
かかる構成によれば、限られたスペースに螺旋状の複数の再循環流路26を密に形成することができ、複数の再循環流路26によって大きなエネルギーを輸送することができる。また、騒音の発生源と考えられる翼16の先端に近い位置に再循環流路26の入口28があることも、再循環流路26による音のエネルギーの輸送量を大きくするために有効である。これにより、遠心圧縮機4の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。なお、騒音低減効果を高めるために、例えば複数の再循環流路26の出口30の面積の合計は、軸方向における出口30の位置(出口30の中心位置)での空気流路18の流路断面積の0.1倍~1.4倍であってもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、再循環流路26の入口28側における再循環流路26の端部34は、再循環流路26の入口28に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成される。図示する構成では、再循環流路26の入口28側における再循環流路26の端部34は、再循環流路26の入口28に近づくにつれて流路断面積が拡大するようにラッパ状に形成されている。
【0037】
これにより、インペラ10の回転により発生した騒音の音波が再循環流路26に入りやすくなり、上述の干渉を促して騒音を効果的に低減することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、再循環流路26の出口30側における再循環流路26の端部36は、再循環流路26の出口30に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成される。図示する構成では、再循環流路26の出口30側における再循環流路26の端部36は、再循環流路26の出口30に近づくにつれて流路断面積が拡大するようにラッパ状に形成されている。
【0039】
これにより、再循環流路26を通った騒音の音波が再循環流路26から空気流路18に出やすくなり、上述の干渉を促して騒音を効果的に低減することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、例えば
図5に示すように、複数の再循環流路26は、互いに流路長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路26a,26bを含む。
【0041】
過給機2の運転状態は、過給機2が接続された不図示のエンジンの状況に応じて変化するため、過給機2の遠心圧縮機4で発生する騒音の周波数もエンジンの状況に応じて変化する可能性がある。この点に関し、上記のようにケーシング12の複数の再循環流路26が互いに流路長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路26a,26bを含んでいることにより、広い周波数帯域で騒音を低減することができ、エンジンの状況が変化しても遠心圧縮機4の騒音の増大を抑制することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、例えば
図5に示すように、軸方向における少なくとも一部の範囲において、螺旋状の再循環流路26bの半径Rbは、螺旋状の再循環流路26aの半径Raよりも大きい。ここで、螺旋状の再循環流路26の半径Rとは、再循環流路26とインペラ10の回転軸線との距離を意味する。図示する構成では、軸方向における再循環流路26bの入口28と出口30との中間の範囲Sにおける再循環流路26bの半径Rbは、該範囲Sにおける再循環流路26aの半径Raよりも大きい。
【0043】
かかる構成によれば、軸方向における限られたスペースで互いに流路長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路26a,26bを形成することができる。したがって、遠心圧縮機4の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して広い周波数帯域で騒音を低減することができる。
【0044】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0045】
例えば、再循環流路26の入口28から再循環流路26を通って再循環流路26の出口30に向かう場合における螺旋状の再循環流路26の螺旋の回転方向は、インペラ10の回転方向と逆方向であってもよい。この場合においても、低周波数の騒音を低減するとともに遠心圧縮機の大型化を抑制することが可能となる。ただし、インペラへ流入する流れの乱れを抑制して発生する騒音の増大を効果的に抑制するためには、再循環流路26の入口28から再循環流路26を通って再循環流路26の出口30に向かう場合における螺旋状の再循環流路26の螺旋の回転方向は、インペラ10の回転方向と同一であることが好ましい。
【0046】
また、ケーシング12が備える再循環流路26の数は限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機(例えば上述の遠心圧縮機4)は、
インペラ(例えば上述のインペラ10)と、
前記インペラを収容し、前記インペラに空気を案内するように内部に空気流路(例えば上述の空気流路18)を形成するケーシング(例えば上述のケーシング12)と、
を備え、
前記ケーシングは、前記空気流路を流れる前記空気の一部を前記インペラの翼(例えば上述の翼16)の前縁(例えば上述の前縁24)より下流側から前記前縁より上流側に還流させるための少なくとも1つの再循環流路(例えば上述の再循環流路26,26a,26b)を前記空気流路の外周側に含み、
前記再循環流路は、螺旋状に形成される。
【0049】
上記(1)に記載の遠心圧縮機では、インペラの回転により発生した騒音は、空気流路及び再循環流路をそれぞれ伝搬して、再循環流路の出口で互いに干渉するため、再循環流路の流路長さを適切に設定することにより、対象とする周波数の騒音を干渉により低減することができる。
また、再循環流路を空気流路の外周側にらせん状に形成することにより、限られたスペースに長い再循環流路を形成することができるため、低周波数の騒音を低減するとともに遠心圧縮機の大型化を抑制することが可能となる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の遠心圧縮機において、
前記再循環流路の入口から前記再循環流路を通って前記再循環流路の出口に向かう場合における前記再循環流路の前記螺旋の回転方向は、前記インペラの回転方向と同一である。
【0051】
一般に、インペラに流入する流れは、インペラの回転の向きに旋回している。このため、上記(2)のように構成することにより、インペラに流入する流れの旋回方向と再循環流路の入口から再循環流路を通って再循環流路の出口へ流れる流れ場の旋回方向とを一致させることができる。これにより、インペラへ流入する流れの乱れを抑制し、発生する騒音の増大を効果的に抑制することができる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の遠心圧縮機において、
前記再循環流路の入口(例えば上述の入口28)側における前記再循環流路の端部(例えば上述の端部34)は、前記再循環流路の入口に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成される。
【0053】
上記(3)に記載の遠心圧縮機によれば、インペラの回転により発生した騒音の音波が再循環流路に入りやすくなり、上述の干渉を促して騒音を効果的に低減することができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の遠心圧縮機において、
前記再循環流路の出口(例えば上述の出口30)側における前記再循環流路の端部(例えば上述の端部36)は、前記再循環流路の出口に近づくにつれて流路断面積が拡大するように構成される。
【0055】
上記(4)に記載の遠心圧縮機によれば、再循環流路を通った騒音の音波が再循環流路から空気流路に出やすくなり、上述の干渉を促して騒音を効果的に低減することができる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の遠心圧縮機において、
前記ケーシングは、前記空気流路を流れる前記空気の一部を前記インペラの翼の前縁より下流側から前記前縁より上流側に還流させるための複数の再循環流路(例えば上述の再循環流路26,26a,26b)を前記空気流路の外周側に含み、
前記複数の再循環流路の各々は、螺旋状に形成される。
【0057】
上記(5)に記載の遠心圧縮機によれば、ケーシングが複数の螺旋状の再循環流路を備えることにより、個々の再循環流路の流路断面積が小さくとも複数の再循環流路によって大きなエネルギーを輸送することができ、上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の遠心圧縮機において、
前記複数の再循環流路の各々の空気の入口(例えば上述の入口28)は、前記インペラの周方向において互いに異なる位置に形成される。
【0059】
上記(6)に記載の遠心圧縮機によれば、限られたスペースに複数の螺旋状の再循環流路を密に形成することができ、複数の再循環流路によって大きなエネルギーを輸送することができる。また、騒音の発生源と考えられる翼の先端に近い位置に再循環流路の入口があることも、再循環流路による音のエネルギーの輸送量を大きくするために有効である。これにより、遠心圧縮機の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の遠心圧縮機において、
前記複数の再循環流路の各々の空気の出口(例えば上述の出口30)は、前記インペラの周方向において互いに異なる位置に形成される。
【0061】
上記(7)に記載の遠心圧縮機によれば、限られたスペースに螺旋状の複数の再循環流路を密に形成することができ、複数の再循環流路によって大きなエネルギーを輸送することができる。また、騒音の発生源と考えられる翼の先端に近い位置に再循環流路の入口があることも、再循環流路による音のエネルギーの輸送量を大きくするために有効である。これにより、遠心圧縮機の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して騒音を効果的に低減することができる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)乃至(7)の何れかに記載の遠心圧縮機において、
前記複数の再循環流路は、互いに長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路(例えば上述の再循環流路26a,26b)を含む。
【0063】
上記(8)に記載の遠心圧縮機によれば、広い周波数帯域で騒音を低減することができ、エンジンの状況が変化しても遠心圧縮機の騒音の増大を抑制することができる。
【0064】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の遠心圧縮機において、
前記複数の再循環流路は、
螺旋状に形成された第1再循環流路(例えば上述の再循環流路26a)と、
螺旋状に形成された第2再循環流路であって、前記インペラの軸方向における少なくとも一部の範囲において、前記第1再循環流路の半径(例えば上述の半径Ra)よりも大きな半径(例えば上述の半径Rb)を有する第2再循環流路(例えば上述の再循環流路26b)と、
を備える。
【0065】
上記(9)に記載の遠心圧縮機によれば、軸方向における限られたスペースで互いに流路長さの異なる複数の螺旋状の再循環流路を形成することができる。したがって、遠心圧縮機の大型化を抑制しつつ上述の干渉を利用して広い周波数帯域で騒音を低減することができる。
【0066】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
上記(1)乃至(9)の何れかに記載の遠心圧縮機と、前記遠心圧縮機と回転軸(例えば上述の回転軸6)を介して連結されたタービン(例えば上述のタービン8)とを備える。
【0067】
上記(10)に記載の遠心圧縮機によれば、上記(1)乃至(9)の何れかに記載の遠心圧縮機を備えているため、低周波数の騒音を低減するとともに遠心圧縮機の大型化を抑制することが可能となる。
また、従来、再循環流路は過給機の作動範囲の拡大のために設けられる場合があるため、過給機の作動範囲の拡大のための再循環流路とは別に騒音低減のための構造を新たに追加する場合と比較して、過給機の大型化や重量増大を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
2 過給機
4 遠心圧縮機
6 回転軸
8 タービン
9 タービンロータ
10 インペラ
12 ケーシング
14 ハブ
16 翼
18 空気流路
20 空気案内筒部
21 スクロール流路
22 スクロール部
24 前縁
26,26a,26b 再循環流路
28 入口
29 流路壁面
30 出口
32 隔壁
34,36 端部