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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180945
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】センサネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/38 20180101AFI20221130BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20221130BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H04W4/38
H04W24/08
H04M11/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087731
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 敬一
(72)【発明者】
【氏名】中西 裕亮
【テーマコード(参考)】
5K067
5K201
【Fターム(参考)】
5K067BB27
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE16
5K201BA02
5K201CB10
5K201CC02
5K201CC04
5K201CC05
5K201CC07
5K201DC02
5K201EA07
5K201EB06
5K201EC05
5K201EC08
5K201ED09
5K201EE08
(57)【要約】
【課題】中継機の状態を特定する。
【解決手段】センサネットワークシステムは、複数のメータそれぞれに対応付けられたセンサノードと、センサノードを通じてメータの情報を収集する中継機114と、中継機114を通じて収集したメータの情報を受信するセンター装置116と、中継機114とセンター装置116との通信を中継する基地局118と、中継機114の位置に基づいて、中継機114と通信が確立された基地局118の位置を推定する基地局推定部142と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメータそれぞれに対応付けられたセンサノードと、
前記センサノードを通じて前記メータの情報を収集する中継機と、
前記中継機を通じて収集した前記メータの情報を受信するセンター装置と、
前記中継機と前記センター装置との通信を中継する基地局と、
前記中継機の位置に基づいて、前記中継機と通信が確立された基地局の位置を推定する基地局推定部と、
を備えるセンサネットワークシステム。
【請求項2】
前記基地局推定部は、前記基地局と通信が確立された中継機の位置の座標を平均化し、その平均値を、前記中継機と通信が確立された基地局の位置とする請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
前記基地局推定部は、前記基地局と通信が確立された中継機の位置の座標に、前記中継機の密度に基づく重み付けを乗じた結果を平均化し、その平均値を、前記中継機と通信が確立された基地局の位置とする請求項2に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記基地局推定部は、所定の領域を複数のブロックに区分けし、
前記ブロック単位で、前記ブロックに含まれる中継機と通信が確立された基地局の割合を、前記ブロックに設定した仮想中継機の重み付けとし、
前記仮想中継機の位置の座標に前記重み付けを乗じた結果を平均化し、その平均値を、前記中継機と通信が確立された基地局の位置とする請求項2に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項5】
前記中継機が今回通信を確立している基地局が、前回通信を確立した基地局と異なることに基づいて、前記中継機が移動したと判定する中継機判定部をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項6】
前記中継機判定部は、前記中継機が今回通信を確立している基地局が、前回通信を確立した基地局と等しく、かつ、前記センサノードと通信を確立できないことに基づいて、前記中継機と前記センサノードとが未接続であると判定する請求項5に記載のセンサネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のメータの情報を収集するセンサネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス事業者や電力事業者は、需要者が消費したガスや電力の使用量を積算するため、需要箇所にガスメータや電力メータを配置している。また、近年では、通信機能を備え、ガス事業者や電力事業者との間で双方向にデータ通信を行い、ガスや電力の使用量を自動的に遠隔検針可能なスマートメータの設置が促進されている。かかるスマートメータは、ガスや電力といったインフラ網の安全性や利用効率を高めるための情報源としても利用できる。
【0003】
また、上述したスマートメータとガス事業者や電力事業者とのデータ通信を実現すべく様々な手段が提案されている。例えば、スマートメータに近距離の無線機を設け、メッシュ型のネットワークを形成したり、LTE(Long Term Evolution)といった携帯電話網によってスター型のネットワークを形成したり、電力線通信によるスター型のネットワークを形成することが考えられる。
【0004】
また、メッシュ型のネットワークの応用として、基幹ネットワークと無線LANによるアドホック通信とを併設し、基幹ネットワークの障害時においてアドホック通信に切り替えることでスマートメータを安定して運用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、ネットワークのルーティングに関する技術も公開されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-065422号公報
【特許文献2】特開2012-105258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサネットワークシステムでは、複数のメータそれぞれにセンサノードが対応付けられ、センサノードは中継機を通じてセンター装置と通信を確立する。中継機は、複数のセンサノードからメータの情報を取得し、センター装置に送信する。中継機は、経年劣化による不具合を解消するため、所定期間、例えば、10年毎に交換することとしている。
【0007】
ただし、中継機の交換作業が適切に完結するとは限らない。例えば、撤去された中継機がまだ機能している状態でセンサネットワークシステム内に存在する場合がある。また、中継機が交換されているにも拘わらず、その作業が報告されず、中継機の交換がセンサネットワークシステムに反映されない場合がある。したがって、中継機の状態、すなわち、中継機の現在の位置や動作状態を特定する必要がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、中継機の状態を特定することが可能なセンサネットワークシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のセンサネットワークシステムは、複数のメータそれぞれに対応付けられたセンサノードと、センサノードを通じてメータの情報を収集する中継機と、中継機を通じて収集したメータの情報を受信するセンター装置と、中継機とセンター装置との通信を中継する基地局と、中継機の位置に基づいて、中継機と通信が確立された基地局の位置を推定する基地局推定部と、を備える。
【0010】
基地局推定部は、基地局と通信が確立された中継機の位置の座標を平均化し、その平均値を、中継機と通信が確立された基地局の位置としてもよい。
【0011】
基地局推定部は、基地局と通信が確立された中継機の位置の座標に、中継機の密度に基づく重み付けを乗じた結果を平均化し、その平均値を、中継機と通信が確立された基地局の位置としてもよい。
【0012】
基地局推定部は、所定の領域を複数のブロックに区分けし、ブロック単位で、ブロックに含まれる中継機と通信が確立された基地局の割合を、ブロックに設定した仮想中継機の重み付けとし、仮想中継機の位置の座標に重み付けを乗じた結果を平均化し、その平均値を、中継機と通信が確立された基地局の位置としてもよい。
【0013】
中継機が今回通信を確立している基地局が、前回通信を確立した基地局と異なることに基づいて、中継機が移動したと判定する中継機判定部をさらに備えるとしてもよい。
【0014】
中継機判定部は、中継機が今回通信を確立している基地局が、前回通信を確立した基地局と等しく、かつ、センサノードと通信を確立できないことに基づいて、中継機とセンサノードとが未接続であると判定してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中継機の状態を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】センサネットワークシステムの概略的な構成を示した説明図である。
図2】センター装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図3】中継機判定方法の流れを示すフローチャートである。
図4】通信確立データベースの構成を説明するための説明図である。
図5】基地局推定部の処理を説明するための説明図である。
図6】基地局推定部の他の処理を説明するための説明図である。
図7】中継機判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(センサネットワークシステム100)
図1は、センサネットワークシステム100の概略的な構成を示した説明図である。図1に示すように、センサネットワークシステム100は、複数のメータ110と、複数のセンサノード112と、複数の中継機114と、センター装置116と、基地局118とを含んで構成される。
【0019】
メータ110は、例えば、スマートメータであり、需要者、すなわち、個別住宅や集合住宅の各住戸単位で設置される。メータ110は、ガス事業者から需要者にガスを供給したり、電力事業者から需要者に電力を供給したりする場合に、少なくともガスや電力の使用量を自動的に検針する装置である。本実施形態では、説明の便宜上、ガス事業者によるガスのメータ110について例示するが、電力(電気)にも適用できることは言うまでもない。
【0020】
センサノード112は、メータ110それぞれに対し1対1に対応付けられて設置され、少なくともメータ110で利用される情報(データ)の送受信を行う。
【0021】
中継機114は、異なるネットワーク同士を接続するゲートウェイ機器として機能し、複数のセンサノード112のいずれかに対応付けて設置される。中継機114は、その中継機114に対応付けられたセンサノード112と有線で通信を確立するとともに、センター装置116との通信を確立する。そして、中継機114は、対応付けられたセンサノード112を通じて、周囲の1または複数のセンサノード112と無線通信を確立する。
【0022】
ただし、センサノード112同士の通信は、近距離無線で実現されているため、全てのセンサノード112が、中継機114に対応付けられたセンサノード112と、無線通信を直接確立できるとは限らない。この場合、センサノード112は、無線通信可能な他のセンサノード112を1または複数回ホップ(経由)して中継機114に接続される。こうして、中継機114は、対応付けられたセンサノード112および周囲の他のセンサノード112を通じて、各センサノード112の情報をセンター装置116に送信するとともに、センター装置116の情報を周囲のセンサノード112に送信することができる。なお、このとき、伝達される情報には、情報が伝達される際に経由した中継機114および基地局118を特定する識別子も含まれるので、センター装置116は、その情報の発信元と経路を特定することができる。
【0023】
センター装置116は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者や電力事業者といったセンサネットワークシステム100の管理者側に属する機器である。センター装置116は、1または複数の中継機114と通信を確立して、情報を収集または送信する。なお、メータ110が設置されている位置(座標情報)は、センター装置116において導管マッピング(GISシステム)を通じて管理されている。したがって、メータ110に設置されるセンサノード112の位置や、センサノード112と併設される中継機114の位置も導管マッピングによって特定できる。
【0024】
基地局118は、中継機114およびセンター装置116のいずれとも通信を確立でき、中継機114とセンター装置116との通信を中継する。
【0025】
ここで、各装置間の通信について説明する。例えば、中継機114と基地局118との無線通信、および、基地局118とセンター装置116との通信は、携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の、例えば、LTEといった、通信量に応じて通信料が生じる既存の有料通信網が用いられる。かかる有料通信網は、ガス事業者や電力事業者と異なる、例えば、通信事業者が管理している。
【0026】
センサノード112同士は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメータ用無線システム(U-Bus Air)を通じた無線通信を確立する。かかるセンサノード112同士の無線通信は無料であることを想定しているが、有料か無料かは問わず、少なくとも中継機114とセンター装置116との間の通信より通信コストが低ければよい。このような無線通信により、中継機114は、有料通信網を通じて、センター装置116と接続されると共に、スマートメータ用無線システムを通じて各センサノード112と接続される。
【0027】
センサネットワークシステム100では、需要者単位で、メータ110およびセンサノード112が配置されている。また、上述したように、メータ110およびセンサノード112に対し、中継機114が併設される場合もある。センター装置116は、センサノード112や中継機114を通じてメータ110の情報を収集、または、メータ110を制御する。したがって、センサノード112や中継機114は、需要者が存在するあらゆる位置に配置されることとなる。
【0028】
ここでは、センサノード112から中継機114までのスマートメータ用無線システムと、中継機114からセンター装置116までの既存の有料通信網とを併用することで、センサノード112とセンター装置116との通信を低コストで実現する。すなわち、中継機114は、別途の通信料が不要なアドホック通信を通じて複数のセンサノード112から情報を収集する。そして、中継機114は、通信料を費やすものの、1日に1回の短時間で、収集した情報を一度にセンター装置116に送信する。こうして、中継機114の有料通信網の利用を最小限に留めることができ、センサネットワークシステム100全体の通信コストを削減することが可能となる。
【0029】
また、上記スマートメータ用無線システムは、近距離無線を想定しているため、無線通信に費やす電力は比較的少ない。したがって、センサノード112の電源は、電池等で賄うことができ、センサネットワークシステム100の消費電力を削減することが可能となる。有料通信網は、スマートメータ用無線システムと比べると相対的に電力を消費し易いので、大容量の電池もしくは別途の電源を要する。しかし、センサノード112に対して中継機114の絶対数が少なく、かつ、1台当たりの通信頻度および通信時間が少ないので、全てのセンサノード112から携帯電話網を常時利用する場合に比べ、消費電力を極めて低く抑えることができる。
【0030】
(中継機114の状態特定)
上述したように、センサノード112とセンター装置116とで情報を伝達するセンサネットワークシステム100を構築することで、ガス事業者の検針員がメータ110を直接検針しなくても、検針情報を収集(自動検針)することが可能となり、業務の効率化を図ることができる。
【0031】
センサネットワークシステム100では、経年劣化による不具合を解消するため、メータ110、センサノード112、中継機114を、所定期間、例えば、10年毎に交換することとしている。
【0032】
ただし、中継機114の交換作業が適切に完結するとは限らない。例えば、撤去された中継機114がまだ機能している状態でセンサネットワークシステム100内に存在する場合がある。また、中継機114が交換されているにも拘わらず、その作業が報告されず、中継機114の交換がセンサネットワークシステム100に反映されない場合がある。また、中継機114は交換されたが、新たな中継機114とセンサノード112との接続が適切に行われず、交換された中継機114が機能しない場合がある。したがって、中継機114の状態、すなわち、中継機114の現在の位置(設置位置)や動作状態を特定する必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、通信が確立された基地局118を基準として中継機114の位置を特定することを試みる。しかし、上述したように、基地局118は、ガス事業者や電力事業者と異なる通信事業者に管理されている。したがって、まず、基準となる基地局118の位置を特定すべきである。ここでは、まず、導管マッピングによって特定可能な中継機114の位置から基地局118の位置を推定する。
【0034】
図2は、センター装置116の概略的な構成を示した機能ブロック図である。センター装置116は、センター通信部130と、センター保持部132と、センター制御部134とを含んで構成される。
【0035】
センター通信部130は、基地局118を通じて中継機114と通信を確立する。センター保持部132は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、センター装置116に用いられる導管マッピングや、後述する通信確立データベース等、各種情報を保持する。センター制御部134は、プロセッサ、プログラムを格納するメモリで構成される。センター制御部134は、プロセッサがプログラムを実行することで、データ取得部140、基地局推定部142、中継機判定部144といった機能モジュールとして機能する。
【0036】
以下、本実施形態の中継機判定方法について、センター制御部134の各機能モジュールの動作も踏まえて詳述する。なお、以下では、センター装置116がセンサネットワークシステム100の中継機判定方法を実現する例を挙げて説明するが、かかる場合に限らず、プロセッサを有する任意のコンピュータを用いてセンサネットワークシステム100の中継機判定方法を実現することができる。
【0037】
(中継機判定方法)
図3は、中継機判定方法の流れを示すフローチャートである。センサネットワークシステム100では、所定の割込時間毎に当該中継機判定方法を実行する。中継機判定方法では、まず、データ取得部140がデータを取得する(S100)。基地局推定部142が、基地局118の位置を推定する(S102)。中継機判定部144が、中継機の状態を判定する(S104)。以下、中継機判定方法の各処理について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係な処理については説明を省略する。
【0038】
(データ取得処理S100)
データ取得部140は、センター装置116と中継機114とが通信を確立した際に、センター装置116と中継機114とを中継した基地局118を特定可能な識別子である基地局識別子を取得する。そして、データ取得部140は、取得した基地局識別子を、通信確立データベースに記憶する。
【0039】
図4は、通信確立データベースの構成を説明するための説明図である。通信確立データベースでは、センサネットワークシステム100に用いられる全ての中継機114と、その中継機114が設置されている位置(座標、建物であれば階数)、および、その中継機114と通信を確立した基地局118の基地局識別子とが対応付けられている。なお、中継機114は、通信を行うタイミングや通信環境によって、通信を確立する基地局118が異なる場合がある。したがって、通信確立データベースでは、1の中継機114に、複数の基地局識別子と、その基地局118と通信が確立された頻度や回数が記憶されるとしてもよい。
【0040】
(基地局推定処理S102)
基地局推定部142は、既に特定されている中継機114の位置に基づいて、中継機114と通信が確立された基地局118の位置を推定する。
【0041】
図5は、基地局推定部142の処理を説明するための説明図である。基地局推定部142は、所定の基地局118と通信を確立している、または、所定の基地局118と通信を確立したことのある中継機114を全て抽出する。そして、基地局推定部142は、抽出した全ての中継機114の位置、すなわち、座標の平均値を導出する。基地局推定部142は、導出した座標の平均値を基地局118の位置とし、その基地局118に関連付けて記憶する。
【0042】
ここでは、基地局118と単に通信を確立している中継機114を対象としている。したがって、中継機114が、基地局118の通信可能範囲120に含まれていることは特定できるものの、中継機114と基地局118との距離は特定されない。
【0043】
しかし、図5で示すように、センサネットワークシステム100では、1の基地局118に対し、複数の中継機114が通信を確立している。また、中継機114は、所定数(例えば、47以下)のセンサノード112単位で、その所定数のセンサノード112と通信を確立できる位置に配置されている。そうすると、中継機114同士の距離は、ある程度均等となり、中継機114は、基地局118の通信可能範囲120内で均等に分散することとなる。したがって、基地局推定部142は、複数の中継機114の位置を平均化するだけで、基地局118の位置を推定することができる。
【0044】
ただし、センサノード112の位置の偏りに伴い中継機114の位置が偏った場合、基地局118の位置の推定精度が低下するおそれがある。例えば、1の集合住宅等では多数のセンサノード112が高密度で配置されるので、それに伴い、1の集合住宅に複数の中継機114が配置されている場合がある。そうすると、中継機114の位置の平均値が、基地局118の本来の位置より、高密度に配置された中継機114の方に偏ってしまうおそれがある。
【0045】
そこで、集合住宅等、密度が高いと考えられる領域における複数の中継機114については、その代表の1の中継機114以外の中継機114を無効とし、1の中継機114のみを平均化の対象としてもよい。こうして、中継機114の密度を均等化し、基地局118の位置の推定精度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、集合住宅内の中継機114の重み付けを、他の個別住宅の重み付けより下げるとしてもよい。例えば、集合住宅内に中継機114が3台ある場合、その中継機114の密度に基づいて、例えば、重み付けを1/3とする。基地局推定部142は、このように変更された中継機114の位置に重み付けを乗じた結果を平均化する。なお、重み付けは、中継機114の位置に乗じるだけでなく、除算(平均化)の除数にも影響する。すなわち、座標A、B、Cに、それぞれの重み付けa、b、cを乗じた平均値は(A×a+B×b+C×c)/(a+b+c)となる。こうして、中継機114の密度を均等化し、基地局118の位置の推定精度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、1の中継機114が複数の基地局118の間に位置している場合、通信時の通信環境に応じて、通信を確立する基地局118が変動することがある。このような中継機114については、所定の回数(例えば3回)連続して同一の基地局118と通信を確立した場合に有効化する。基地局推定部142は、このような連続条件を満たした中継機114を平均化の対象とする。こうして、基地局118の位置の推定精度の低下を抑制することができる。
【0048】
上述した実施形態において、基地局推定部142は、中継機114の位置を直接用いて基地局118の位置を推定した。しかし、かかる場合に限らず、基地局推定部142は、中継機114の位置を間接的に用いて基地局118の位置を推定してもよい。例えば、基地局推定部142は、基地局118の位置を推定する対象となる地域を複数のブロックに区分けし、そのブロック単位で仮想的な中継機114である仮想中継機を設定して、その仮想中継機の位置(座標)の平均値を、基地局118の位置としてもよい。
【0049】
図6は、基地局推定部142の他の処理を説明するための説明図である。ここでは、基地局118の位置を推定する対象となる地域を、1辺が所定距離の正方形のブロック122単位で複数、例えば、25区画に区分けする。
【0050】
基地局推定部142は、各ブロック122の中央位置(中央座標)に仮想中継機124を設定する。したがって、仮想中継機124の位置は、各ブロック122の中央に固定される。なお、仮想中継機124の位置は、各ブロック122で共通であれば、中央に限らず、任意に決定できる。
【0051】
例えば、図6(a)で示した任意のブロック122aに着目すると、ブロック122a内に位置する3つの中継機114のうち、中継機114a、114bは基地局118aと通信を確立し、中継機114cは基地局118bと通信を確立している。基地局推定部142は、ブロック122a内の中継機114a、114b、114cそれぞれと通信を確立している基地局118の比率に基づいて、仮想中継機124が通信を確立する基地局118と仮定する。ここで、ブロック122a内の中継機114は、2/3の割合で基地局118aと通信を確立し、1/3の割合で基地局118bと通信を確立している。そうすると、基地局推定部142は、仮想中継機124が通信を確立している基地局118を、その通信割合により、2/3×基地局118a+1/3×基地局118bと表すことができる。
【0052】
基地局推定部142は、基地局118aの位置を推定する場合、図6(b)に示した複数のブロック122における仮想中継機124の位置を平均化し、その平均値を基地局118の位置とする。このとき、仮想中継機124の位置に重み付けがなされる。例えば、図6(a)のブロック122aに対し、基地局推定部142は、仮想中継機124の位置に、重み付けとして、基地局118aと通信を確立する割合である2/3を乗じる。基地局推定部142は、図6(b)に示した複数のブロック122全てに対し、仮想中継機124の位置に重み付け(通信割合)を乗じ、その結果を平均化する。
【0053】
このように、仮想中継機124の位置に、基地局118との距離に応じた重み付けを行うことで、ブロック122内の中継機114の数(中継機114の密度)に拘わらず、各基地局118との通信状態を正規化できる。例えば、ブロック122内に中継機114が3台あり、そのうち2台が基地局118aと通信を確立している場合も、ブロック122内に中継機114が15台あり、そのうち10台が基地局118aと通信を確立している場合も、ブロック122単位で基地局118aと通信を確立する割合は2/3と等しくなる。したがって、ブロック112毎に中継機114の数が偏っている場合においても、正規化された通信割合によって基地局118の位置を適切に平均化できる。こうして、中継機114の位置の偏りを解消することが可能となる。
【0054】
(中継機判定処理S104)
基地局118の位置が推定されると、中継機判定部144は、推定された基地局118の位置、および、センサノード112との接続可否に基づいて、中継機114の状態を判定する。
【0055】
図7は、中継機判定処理S104の流れを説明するためのフローチャートである。まず、中継機判定部144は、今回通信を確立している基地局118が、前回通信を確立した基地局118と異なるか否か判定する(S200)。その結果、前回通信を確立した基地局118と異なる場合(S200におけるYES)、中継機判定部144は、今回通信を確立している基地局118が、基地局推定部142が既に推定している所謂既知の基地局118であり、かつ、その基地局118の位置と、通信確立データベースに登録されている中継機114が設置されている本来の位置との距離が所定距離(例えば、1km)以上離れているか否か判定する(S202)。その結果、既知の基地局118であり、かつ、所定距離以上離れていれば(S202におけるYES)、中継機判定部144は、中継機114が元の位置から移動(撤去)されたと判定する(S204)。
【0056】
なお、この中継機114が交換された古い中継機114である場合、中継機判定部144は、中継機114が撤去されたものであるが、電源が投入されたままであり、かつ、交換されたことがセンサネットワークシステム100に反映されていないと判定することができる。
【0057】
また、今回通信を確立している基地局118が、基地局推定部142が未だ推定していない所謂未知の基地局118である、または、基地局118の位置と中継機114が設定されている本来の位置との距離が所定距離未満であれば(S202におけるNO)、中継機判定部144は、今回通信を確立している基地局118が、未知の基地局118であり、かつ、前回通信を確立した基地局118と所定日数(例えば、5日間)以上連続して通信を確立できなかったか否か判定する(S206)。その結果、未知の基地局118であり、かつ、所定日数以上連続して通信を確立できていなければ(S206におけるYES)、中継機判定部144は、中継機114が元の位置から移動(撤去)されたと判定する(S204)。ここで、今回通信を確立している基地局118が、既知の基地局である、または、前回通信を確立した基地局118と所定日数が経過するまでに通信を確立できれば(S206におけるNO)、中継機判定部144は、当該中継機判定処理S104を終了する。
【0058】
なお、通信事業者が新たに基地局118を追加した場合、その基地局118は、一旦、未知の基地局118として、中継機114と通信を確立することがある。しかし、基地局推定部142が、中継機114との通信の確立に基づいて、その未知の基地局118を既知の基地局118に切り換えるため、中継機判定部144が、中継機114を移動されたものと判定することはない。
【0059】
また、今回通信を確立している基地局118が、前回通信を確立した基地局118と等しいと判定されると(S200におけるNO)、中継機判定部144は、対象となる中継機114が対応するセンサノード112と通信を確立できるか否か判定する(S208)。その結果、センサノード112と通信を確立できれば(S208におけるYES)、中継機判定部144は、当該中継機判定処理S104を終了する。また、センサノード112と通信を確立できなければ(S208におけるNO)、中継機判定部144は、中継機114とセンサノード112とが未接続であると判定する(S210)。
【0060】
なお、中継機114が移動していないのにセンサノード112と未接続となるのは、以下の理由が考えられる。すなわち、その中継機114が交換された新しい中継機114であれば、センサノード112との接続を行っていないからと判断できる。また、その中継機114が交換された古い中継機114であれば、撤去されておらず(残置されており)、電源は投入されたままで、かつ、交換されたことがセンサネットワークシステム100に反映されていないからと判断できる。
【0061】
ここで、中継機判定部144は、推定された基地局118の位置、および、センサノード112との接続可否に基づいて、中継機114の状態を判定し、中継機114が適切に動作していない理由を特定することが可能となる。したがって、中継機114が適切に動作していない場合であっても、その理由を作業員に確認しないで済み、処理負担を軽減することが可能となる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
また、コンピュータを、上記センサネットワークシステム100を設計する装置、メータ110、センサノード112、または、センター装置116として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0064】
なお、本明細書に示した各処理は、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【符号の説明】
【0065】
100 センサネットワークシステム
110 メータ
112 センサノード
114 中継機
116 センター装置
118 基地局
140 データ取得部
142 基地局推定部
144 中継機判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7