IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特開2022-180946静電荷像現像用トナー、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
<>
  • 特開-静電荷像現像用トナー、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180946
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G03G9/097 372
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087732
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】金原 規之
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 泰樹
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA10
2H500CA36
2H500EA13D
2H500EA14A
2H500EA42D
2H500FA10
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低温定着性とクリーニング性に優れ、消費電力が小さく、かつ長期にわたり高品質な画像を形成する静電荷像現像用トナー、それを用いた電子画像形成方法及び電子画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式1を満たすことを特徴とする。
式1 (B-A)<-5.0(℃)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、
前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式1を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
式1 (B-A)<-5.0(℃)
【請求項2】
前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
式2 (B-A)≦-15.0(℃)
【請求項3】
前記金属石鹸が、オレイン酸亜鉛を主成分とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記金属石鹸の添加量が、前記トナー母体粒子100質量部に対して0.2~3.0質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【請求項6】
少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段、及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温定着性とクリーニング性に優れ、消費電力が小さく、かつ長期にわたり高品質な画像を形成する静電荷像現像用トナー、それを用いた電子画像形成方法及び電子画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、感光体上に潤滑剤を供給して感光体とクリーニングブレードとの摩擦力を小さくすることで、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)のすり抜けを防止したり(クリーニング性の確保)、感光体の耐摩耗特性を向上させたりすることが知られている。
【0003】
潤滑剤を感光体表面に供給する方法には大きく分けて、(1)アプリケーターにより感光体表面に供給する方法、(2)潤滑剤を感光体の感光層又は表面層に含有させる方法、及び(3)トナーを含む現像剤に潤滑剤を添加する方法、の3種類が知られている。
【0004】
前記(3)の方法としては、トナーに外添剤として潤滑剤を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、装置の小型化を図ることができる点、感光体上に簡便に潤滑剤を供給することができる点等の利点を有し、クリーニングブレード等の各部材の耐久性を考慮すると、この方法が最も好ましい。また、トナーに添加される潤滑剤としては、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ワックス等が挙げられるが、摩擦を低減する効果や撥水性という観点から脂肪酸金属塩(「金属石鹸」ともいう。)が最も好ましい。
【0005】
一方、昨今の地球環境問題に対するユーザーの意識の高まりから、環境負荷低減に配慮して電子写真方式の画像形成装置では消費電力の低減が求められており、その対応として各社、トナーの低温定着化をおこなっている。しかしながら、これまで採用されてきた金属石鹸は低温定着化されたトナーの軟化点よりも融点が高いため、トナーの紙への定着性が不十分となり、画像不良を起こす問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-281458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性とクリーニング性に優れ、消費電力が小さく、かつ長期にわたり高品質な画像を形成する静電荷像現像用トナー、それを用いた電子画像形成方法及び電子画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、トナー母体粒子の軟化点と、外添剤に含有される潤滑剤の融点をそれぞれ特定の範囲に調整することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、
前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式1を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
式1 (B-A)<-5.0(℃)
【0011】
2.前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式2を満たすことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
式2 (B-A)≦-15.0(℃)
【0012】
3.前記金属石鹸が、オレイン酸亜鉛を主成分とすることを特徴とする第1項又は第2項に記載静電荷像現像用トナー。
【0013】
4.前記金属石鹸の添加量が、前記トナー母体粒子100質量部に対して0.2~3.0質量部の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
5.少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【0015】
6.少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段及びクリーニング工程を備える電子写真画像形成装置であって、
第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、低温定着性とクリーニング性に優れ、消費電力が小さく、かつ長期にわたり高品質な画像を形成する静電荷像現像用トナー、それを用いた電子画像形成方法及び電子画像形成装置を提供することができる。
【0017】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0018】
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の軟化点が、85~105℃の範囲内であり、前記外添剤が、前記式(1)で表されるように、少なくとも前記トナー母体粒子の軟化点に対して、5℃より低い融点を有する金属石鹸を含有することを特徴とする。
【0019】
感光体表面を低摩擦化してトナーのクリーニング性を向上させる観点で、金属石鹸をトナー母体粒子表面に付着させることが好ましいが、低温定着化されたトナーの軟化点よりも高い融点の金属石鹸をトナー母体粒子表面に付着させると、画像不良が発生し、狙いの温度よりも定着温度を高く設定する必要が生じる。定着性劣化の原因は定かではないが、トナーが溶融する温度で金属石鹸が溶融せずに固体のまま存在したり、トナーが溶融した後に金属石鹸が溶融するとトナーと紙の接着力が低下したりすることが考えられる。
【0020】
一方、本発明のトナー母体粒子の軟化点に対して5℃より低い融点の金属石鹸をトナー母体表面に付着させることで、感光体表面を低摩擦化しつつ、トナーが軟化する温度で潤滑剤である金属石鹸が溶融するので、前記定着性劣化が発生せず、良好な画像を得ることができるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の電子写真画像形成装置の構造を示す模式図
【0022】
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、前記式1を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0023】
本発明の実施態様としては、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、前記式(2)を満たすことが、トナーの低温定着性とクリーニング性をさらに向上する観点から、好ましい。
【0024】
また、本発明に係る金属石鹸は、延展性が容易な観点から、オレイン酸亜鉛を主成分とすることが好ましい。
【0025】
前記金属石鹸の添加量が、前記トナー母体粒子100質量部に対して0.2~3.0質量部の範囲内であることが、トナーの低温定着性とクリーニング性を向上し、高画質な画像を得る観点から、好ましい。
【0026】
本発明の電子写真画像形成方法(以下、「画像形成方法」ともいう。)は、少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の電子画像形成装置(以下、「画像形成装置」ともいう。)は、少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0028】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0029】
≪本発明の静電荷像現像用トナーの概要≫
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式1を満たすことを特徴とする。
式1 (B-A)<-5.0(℃)
【0030】
本発明の「静電荷像現像用トナー」は、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に配置される外添剤とを備えるトナー粒子を有する。
【0031】
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。本発明に係る「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0032】
以下、本発明に係る「静電荷像現像用トナー」は、本明細書においては、簡単に「トナー」ともいう。
【0033】
〔1〕静電荷像現像用トナー
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内であり、前記外添剤が、少なくとも金属石鹸を含有し、前記トナー母体粒子の軟化点A(℃)と前記金属石鹸の融点B(℃)が、下記式1を満たすことを特徴とする。
式1 (B-A)<-5.0(℃)
【0034】
〔1.1〕金属石鹸
本発明に係る金属石鹸は、式1で示すように、トナー母体粒子の軟化点A(℃)に対して5℃よりも低い融点B(℃)を有する。金属石鹸の融点がトナー母体粒子の軟化点に対して、5℃より高いと定着性が劣化する。本発明の効果をより高める観点から、金属石鹸の融点B(℃)はトナー母体粒子の軟化点A(℃)に対して、下記式2で示すように15℃以上低いことがより好ましい。
式2 (B-A)≦-15.0(℃)
【0035】
金属石鹸の融点B(℃)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(例えば、株式会社島津製作所製:DSC-60A)を用いて測定することができる。この装置(DSC-60A)の検出部の温度補正は、インジウムの融点と亜鉛の融点とを用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて-10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、吸熱ピーク温度を金属石鹸の融点とする。
【0036】
金属石鹸の一般的に知られている化合物例としては、ステアリン酸の亜鉛、カドミウム、バリウム、鉛、鉄、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩;二塩基性ステアリン酸鉛:オレイン酸の亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルト、銅、鉛、カルシウム等の金属塩;パルミチン酸のアルミニウム、カルシウム等の金属塩;カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノール酸亜鉛、リノール酸コバルト、リシノール酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛、リシノレイン酸カドミウム;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
本発明に係る金属石鹸としては、式1を満たすことが必要である。その観点からは上記金属石鹸の中から適宜選択することができ、中でも、オレイン酸の亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルト、銅、鉛、カルシウム等の金属塩が好ましく、オレイン酸亜鉛を主成分として含有することがより好ましい。「主成分」とは、金属石鹸中に、当該化合物として、55質量%以上含有することを言い、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。その観点からは、本発明に係る金属石鹸は、複数の化合物によって式1を満たすように組成されている態様を含むものである。その場合の「融点」は、組成された化合物の質量比率から求められる融点の「平均値」を採用することができる。
【0038】
また、金属石鹸の平均粒子径は、特に限定されないが、小径であるほど単位面積当たりの供給粒子数を増やすことができ、延展効率を高くして、動摩擦力の減少効果を発揮しやすい観点から、平均粒子径は5μm以下であることが好ましい。
【0039】
トナーに添加される金属石鹸の平均粒子径は、下記手順のとおり、トナーより脱離させた外添剤粒子をフロー式粒子像分析装置(例えば、「FPIA-2100」:シスメックス社(Sysmex)製)を用いて測定した値である。測定範囲は0.6~400μmの範囲で行う。トナー母体粒子に添加される無機外添剤は、0.6μm以下であるので、金属石鹸粒子以外の無機外添剤は測定されないため、この測定範囲で測定される平均粒子径は、金属石鹸粒子の平均粒子径に相当する。
【0040】
金属石鹸の含有量は、外添剤全体に対して、0.2~3.0質量部の範囲内が好ましい。0.2質量部以上であると、低温低湿環境におけるトナーのクリーニング性の劣化を抑制し、3.0質量部以内であると長期にわたり良好な画像安定性を維持できる。
【0041】
〔1.2〕トナー母体粒子
本発明に係るトナー母体粒子は、軟化点A(℃)が、85~105℃の範囲内である。軟化点が105℃を超えると低温定着性が悪化し、85℃未満であると耐熱保管性が悪化してしまう。低温定着性と耐熱保管性の観点より、90~100℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0042】
トナー母体粒子の軟化点は、下記に示す溶融粘度測定装置(例えば、フローテスター)によって測定されるものである。具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器(「SSP-10A」:島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、溶融粘度測定装置(例えば、フローテスター「CFT-500D」:島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
【0043】
本発明に係るトナー母体粒子は、軟化点を制御する観点から、少なくとも結着樹脂として、結晶性樹脂を含有することが好ましい。すなわち、トナー母体粒子が、結晶性樹脂を含有する結着樹脂を含んでいることが好ましい。
【0044】
本発明において、結晶性樹脂とは、例えば、示差走査熱量計(DSC)で測定した示差熱量曲線において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSC測定において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製:Diamond DSC)を用い、この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。
【0045】
このような結晶性樹脂は、その高い結晶性から、軟化点温度の直前までは粘度が高く、軟化点温度付近で急激に粘度が低下する。そのため、結着樹脂が、結晶性樹脂を含有することにより、高温環境下での保存性の高い(耐熱保管性)、かつ、定着性の高いトナーが得られる。
【0046】
本発明に係る結晶性樹脂の軟化点は、樹脂の種類、樹脂の分子量、又は組成によって制御することができる。
【0047】
トナー母体粒子中の結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、トナー母体粒子の総質量に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。結晶性樹脂の含有量が、1質量%以上であれば、十分な低温定着性が得られ、40質量%以下であれば、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0048】
また、結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱性の観点から、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることがより好ましく、5~20質量%の範囲内であることが更に好ましく、7~15質量%の範囲内であることが特に好ましい。結晶性樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、十分な可塑効果が得られ、低温定着性がより顕著であり、20質量%以下であれば、耐熱性が向上し、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0049】
低温定着性及び光沢度安定性の観点から、結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)が、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。また、結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10000~100000の範囲内であることが好ましく、15000~80000の範囲内であることがより好ましく、20000~50000の範囲内であることが更に好ましい。
【0050】
Mw及びMnが、上記範囲内であると、シャープメルト性が発現しやすく、定着温度を制御しやすい。また、定着画像において十分な強度が得られる。さらに、トナーの製造において、乳化液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されず、トナーのガラス転移温度Tgが一定に保たれるため、トナーの熱的安定性が保たれる。Mw及びMnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0051】
(結晶性樹脂の分子量の測定方法)
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して完全に溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液(サンプル)を調製する。その後、下記条件にて測定を行った。詳しくは、例えば、GPC装置HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKgelSuperH3000」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒(溶離液)としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。また、データ解析においては、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピークの手前まででベースラインを設定し解析したデータを試料の分子量とする。
【0052】
測定機種:東ソー株式会社製 GPC装置HLC-8220GPC
カラム:東ソー株式会社製 「TSKgelSuperH3000」
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:0.6ml/min
濃度:0.1mg/mL(0.1wt/vol%)
検量線:東ソー株式会社製 標準ポリスチレン試料
注入量:100μL
溶解性:完全溶解(40℃加温)
前処理:0.2μmのフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0053】
結晶性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。結晶性樹脂の種類は、特に限定されず、例として、結晶性ポリオレフィン樹脂、結晶性ポリジエン樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、結晶性ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性及び光沢度安定性の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、低温定着性を向上させることができる。
【0054】
また、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0055】
さらに、本発明に係るトナー母体粒子は、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0056】
〔1.2.1〕結着樹脂
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)及び/又はヒドロキシカルボン酸と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、例えば、示差走査熱量測定(DSC)において階段状の吸熱量変化ではなく、前述の明確な融解ピークを有する樹脂をいう。
【0057】
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
【0060】
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1~3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
【0062】
結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
【0063】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~25mgKOH/g、さらに好ましくは15~25mgKOH/gの範囲内である。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて下記手順により測定される。
【0065】
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070-1992の記載に従う。
【0066】
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
【0067】
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
【0068】
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
【0069】
式(1) A=〔(C-B)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
【0070】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、前述のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が5000~50000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1500~25000の範囲内であることが好ましい。
【0071】
また、結晶性ポリエステル樹脂としては、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるスチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂(「ハイブリッド樹脂」ともいう。)を用いてもよい。
【0072】
ここで、「スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性のポリエステル分子鎖(結晶性ポリエステル重合セグメント)に、スチレン・アクリル共重合体分子鎖(スチレン・アクリル重合セグメント)を化学結合させた、ブロック共重合体構造のポリエステル分子から構成される樹脂のことである。
【0073】
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に制限されない。当該重合セグメントの形成に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類ならびにこれらの単量体の重縮合条件は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
一方、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を構成するスチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、特に制限されないが、例えば、下記のものから選択される1種又は2種以上が用いられうる。
【0075】
(1)スチレン単量体
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など;
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル(n-ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など;
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸双方を包含する。
【0076】
スチレン・アクリル重合セグメントは、上記の単量体に加え、以下の単量体をさらに用いて形成されていてもよい。
【0077】
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど;
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど;
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど;
(7)その他の単量体
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など;
【0078】
スチレン・アクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
【0079】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂100質量%に対して、60~99質量%の範囲内であることが好ましく、70~98質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0080】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂におけるスチレン・アクリル重合セグメントの含有割合(以下、「スチレン・アクリル変性量」ともいう。)は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂100質量%に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、2~30質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0081】
スチレン・アクリル変性量は、具体的には、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントとなる未変性の結晶性ポリエステル樹脂を合成するための単量体と、スチレン・アクリル重合セグメントとなるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体と、これらを結合させるための両反応性単量体を合計した全質量に対する、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計の質量の割合をいう。
【0082】
ここで、「両反応性単量体」とは、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとを結合する単量体で、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基と、の双方を分子内に有する単量体である。
【0083】
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1~3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してスチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合される。
【0084】
両反応性単量体の使用量は、低温定着性を向上させる観点から、スチレン・アクリル重合セグメントを構成する単量体の総量を100質量%として1~20質量%の範囲内が好ましい。
【0085】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0086】
(A)結晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するためのスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させることにより、スチレン・アクリル重合セグメントを形成する方法;
(B)スチレン・アクリル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン・アクリル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法;
(C)結晶性ポリエステル重合セグメント及びスチレン・アクリル重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法;
【0087】
上記(A)~(C)の形成方法の中でも、(A)の方法は、生産工程を簡素化できる等の観点から好ましい。
【0088】
(非晶性樹脂)
本発明において、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂や非晶性ビニル樹脂等を用いることができる。
【0089】
非晶性樹脂とは、例えば、前述の示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められないものをいう。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。
【0090】
より具体的には、非晶性樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、35~70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~65℃の範囲内である。非晶性樹脂のTgが35℃以上であることにより、トナーに十分な熱的強度を与えることができ、十分な耐熱保管性が得られる。また、非晶性樹脂のTgが70℃以下であることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
【0091】
非晶性樹脂のTgは、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418-82に規定された方法(DSC法)によって測定される。すなわち、測定試料(非晶性樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度-10~120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、昇温-降温-昇温の温度制御を行い、その2回目の昇温におけるデータを基に解析を行う。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移点とする。
【0092】
(非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。
【0093】
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5~45mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは5~30mgKOH/gの範囲内である。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。なお、酸価は、結晶性ポリエステル樹脂の説明にて記載の方法と同様にして求めることができる。
【0094】
非晶性ポリエステル樹脂は、1種の非晶性ポリエステル樹脂でもよいが、2種以上の非晶性ポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
【0095】
非晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0096】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、BPA-PO(ビスフェノールAのプロピレンオキサイドnモル付加物)、BPA-EO(ビスフェノールAのエチレンオキサイドnモル付加物)等のジオールを用いることができる。また、例えば、グリセリン、ソルビトール、1,4-ソルビタン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールを用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、BPA-PO又はBPA-EOであることが好ましく、BPA-PO又はBPA-EOであることがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物又はビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物であることがさらに好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
また、多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル又は酸無水物であることが好ましく、テレフタル酸、フタル酸、これらの塩、低級アルキルエステル又は酸無水物であることがより好ましい。これら多価カルボン酸成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
多価カルボン酸成分として、3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、当該架橋構造をとることにより、一旦非晶性ポリエステル樹脂と相溶した結晶性ポリエステル樹脂を固定化し分離しにくくする効果をさらに得ることができる。
【0099】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸や1,2,5-ベンゼントリカルボン酸等のトリメリット酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリト酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられるが、トリメリット酸、その塩、低級アルキルエステル又は酸無水物が特に好適である。
【0100】
多価カルボン酸成分としてジカルボン酸と、3価以上のカルボン酸とを含有する場合、3価以上のカルボン酸の添加量は、多価カルボン酸成分の総モル数に対して、1~30モル%の範囲内であることが好ましく、5~20モル%の範囲内であることがより好ましく、10~15モル%の範囲内であることが好ましい。
【0101】
また、多価カルボン酸成分としては、前述の化合物の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0102】
非晶性ポリエステル樹脂の製造は、特に制限されないが、重合温度180~260℃として、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応により行い、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させることが好ましい。重合時間は、特に制限されないが、1~10時間であることが好ましく、2~6時間であることがより好ましい。
【0103】
重合性単量体(多価カルボン酸成分、多価アルコール成分)が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え、溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
【0104】
非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等を含むアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等を含む第2族金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等を含む金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、Mw/Mnをより小さくするとの観点から、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等を含む金属化合物であることが好ましく、スズの金属化合物(スズ系触媒)であることがより好ましい。スズ系触媒としては、特に制限されないが、例えば、ジブチルスズオキシド等が挙げられる。
【0105】
触媒の添加量としては、特に制限されないが、多価カルボン酸全量に対して0.00001~10質量%の範囲内であることが好ましい。触媒の添加量が増加するとより確実に反応を進行させることができ、触媒の添加量が減少するとより経済性に優れる。
【0106】
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%である。このような範囲であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
【0107】
(ビニル系樹脂)
本発明に用いられるビニル系樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂としてのスチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・(メタ)アクリル樹脂」とも称する)について説明する。
【0109】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。
【0110】
また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したものである。
【0111】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の一例を以下に示す。
【0112】
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0113】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0114】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、当該樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。さらに、スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加え、以下の単量体化合物を含んでいてもよい。このような単量体化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。これら単量体化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0115】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の上記単量体化合物に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0116】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000の範囲内であることが好ましい。
【0117】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn-オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0118】
〔1.2.2〕外添剤
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子表面に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等として機能する本発明に係る外添剤を添加する。
【0119】
本発明に係る外添剤は、少なくとも前記金属石鹸を含有することを特徴とし、さらに無機微粒子を含有する。
【0120】
本発明に係る外添剤に用いられる無機微粒子としては、1種でもそれ以上でもよい。当該外添剤としては、特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子及び酸化ホウ素粒子を使用できる。
【0121】
上記外添剤は、ゾル・ゲル法で作製されたシリカ粒子を含むことがより好ましい。ゾル・ゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒子径分布が狭いという特徴を有しているので、トナー母体粒子に対する外添剤の付着強度のバラツキを抑制する観点から好ましい。
【0122】
また、上記シリカ粒子の個数平均一次粒子径は、70~200nmであることが好ましい。個数平均一次粒子径が上記範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて粒子径が大きい。したがって、二成分現像剤においてスペーサーとしての役割を有する。よって、二成分現像剤が現像装置中で撹拌されているときに、より小さな他の外添剤がトナー母体粒子に埋め込まれることを防止する観点から好ましい。また、トナー母体粒子同士の融着を防止する観点からも好ましい。
【0123】
上記外添剤の個数平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求めることが可能であり、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することが可能である。
【0124】
上記外添剤は、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。当該疎水化処理には、公知の表面処理剤が用いられる。当該表面処理剤は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、又はそのエステル化物及びロジン酸が含まれる。
【0125】
上記シランカップリング剤の例には、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン及びデシルトリメトキシシランが含まれる。上記シリコーンオイルの例には、環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンなどが含まれ、より具体的には、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン及びテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、が含まれる。
【0126】
また、上記シリコーンオイルの例には、側鎖又は片末端や両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルが含まれる。上記変性基の種類は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、アルコキシ、カルボキシ、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリル及びアミノが含まれる。
【0127】
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1~10質量%の範囲内が好ましく、1~5質量%の範囲内がより好ましい。
【0128】
〔1.2.3〕その他の成分
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、またはランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、またはコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、またはマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
【0129】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、または同60などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
【0130】
白色用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、又は有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
【0131】
トナー母体粒子中における上記着色剤の含有量は、適宜に、そして独立して決めることができ、例えば画像の色再現性を確保する観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0132】
また、着色剤の粒子の大きさは、体積平均粒径で、例えば10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましく、80~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0133】
当該体積平均粒径は、カタログ値であってもよく、また、例えば着色剤の体積平均粒径(体積基準のメジアン径)は、「UPA-150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)によって測定することができる。
【0134】
(離型剤)
本発明に係るトナーは、離型剤(「ワックス」ともいう。)を含有し得る。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0135】
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0136】
離型剤としては、結着樹脂を構成する樹脂と相溶するなどの相互作用を有さないものを用いることが好ましい。
【0137】
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が60~100℃の範囲内のものを用いることが好ましい。また、離型剤としては、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂の融点Mp1に対して、(Mp1-10)℃~(Mp1+20)℃程度の融点を有するものを用いることが好ましい。
【0138】
離型剤の含有割合は、トナー中に1~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%の範囲内である。トナーにおける離型剤の含有割合が上記範囲であることにより、分離性及び定着性が確実に両立して得られる。
【0139】
離型剤のトナーへの導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子を非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
【0140】
また、非晶性樹脂が例えばスチレン・アクリル樹脂である場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂粒子(スチレン・アクリル樹脂粒子)に離型剤をあらかじめ混合させておくことによって、当該離型剤をトナーへ導入することもできる。
【0141】
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
【0142】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。その例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及び、サリチル酸金属塩、が含まれる。
【0143】
本発明のトナーにおける荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.5~5質量%の範囲内である。
【0144】
また、荷電制御剤の粒子の大きさは、数平均一次粒径で例えば10~1000nmの範囲内であり、好ましくは50~500nmの範囲内であり、より好ましくは80~300nmの範囲内である。
【0145】
本発明に係るトナー粒子においては、結着樹脂及び着色剤を含有するコア粒子と、該コア粒子の表面に被覆されるシェル層とを含むコア・シェル構造を有することが好ましい。なお、シェル層は、コア粒子を完全に被覆するものに限られず、一部コア粒子表面が露出されていてもよい。トナーがコア・シェル構造であることにより、帯電安定性や耐熱保管性を得ることができる。シェル層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、非晶性のポリエステル樹脂や非晶性ビニル樹脂などを用いることが好ましい。
【0146】
コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認することができる。
【0147】
〔1.3〕トナー粒子の製造方法
本発明のトナー粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0148】
本発明に係るトナー粒子は、具体的に以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
【0149】
本発明に係るトナー粒子は、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
【0150】
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合し、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
【0151】
以下では、トナーの製造方法の一例として、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を用いた場合について説明する。
【0152】
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1)着色剤を水系媒体中に分散させ、着色剤粒子分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程;
(2)結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製する結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程;
(3)必要に応じて離型剤及び荷電制御剤などのトナー構成成分が含有された非晶性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂)を水系媒体中に分散させ、非晶性樹脂粒子分散液(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性ビニル樹脂粒子分散液)を調製する非晶性樹脂粒子分散液調製工程;
(4)上記(1)~(3)で得られた各分散液を用いて、非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集、融着させて凝集粒子を形成する凝集、融着工程;
(5)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成して形状調整を行い、トナー母体粒子分散液を作製する熟成工程;
(6)トナー母体粒子分散液を冷却する冷却工程;
(7)冷却したトナー母体粒子分散液より当該トナー母体粒子を固液分離し、トナー母体粒子表面より界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程;
(8)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程;
(9)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添処理工程;
から構成される。
【0153】
本発明において、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
【0154】
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
【0155】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0156】
この着色剤粒子分散液調製工程において調製される着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10~300nmの範囲内とされることが好ましい。この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
【0157】
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
【0158】
(2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる水系直接分散法、結晶性ポリエステル樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する溶解乳化脱溶法、転相乳化法などが挙げられる。
【0159】
この結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程において得られる結晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0160】
(3)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂が非晶性ポリエステル樹脂である場合は、合成した非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させることによって、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製することができる。非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法と同様の方法を用いることができる。
【0161】
非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体を加え、撹拌を行いつつ所望の重合温度で水溶性重合開始剤を加え、重合を行うことにより、非晶性ビニル樹脂粒子分散液を調製することができる。
【0162】
また、同様に非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0163】
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において形成させる非晶性樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する方法を採用することができる。
【0164】
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0165】
(重合開始剤)
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
【0166】
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
【0167】
(連鎖移動剤)
非晶性樹脂(特には非晶性ビニル樹脂)粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0168】
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲内にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0169】
(4)凝集、融着工程
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に非晶性樹脂粒子分散液、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
【0170】
着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子などの粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
【0171】
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
【0172】
また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナーの成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上させることができる。
【0173】
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0174】
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0175】
(5)熟成工程
この工程は、具体的には、凝集粒子を含む系を加熱撹拌することにより、凝集粒子の形状が所望の平均円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間を制御して、トナー母体粒子を形成する工程である。この工程においては、熱エネルギー(加熱)によりトナー母体粒子の形状制御を行うことが好ましい。
【0176】
(6)冷却工程~(8)乾燥工程
冷却工程、濾過、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
【0177】
(9)外添処理工程
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、本発明に係る外添剤を添加、混合する工程である。
【0178】
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
【0179】
〔1.4〕トナー粒子の物性
<トナー粒子の平均粒径>
本発明に係るトナー粒子においては、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3~8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~8μmの範囲内である。
【0180】
この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0181】
トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0182】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
【0183】
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナー粒子においては、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内であることが好ましく、0.950~0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
【0184】
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
【0185】
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
【0186】
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0187】
〔2〕電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
本発明の電子写真画像形成方法は、少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、少なくとも本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0188】
詳細には、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、少なくとも4色の本発明の静電荷像現像用トナーを用いて、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、前記像保持体表面のクリーニング工程とを有する。
【0189】
(帯電する工程)
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
【0190】
(静電荷像を形成する工程)
本工程では、電子写真感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成する。
【0191】
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
【0192】
静電荷像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電荷像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
【0193】
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0194】
(現像する工程)
現像する工程は、静電荷像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
【0195】
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
【0196】
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電荷像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
【0197】
(転写する工程)
本工程では、記録媒体へのトナー像の転写をする。
【0198】
トナー像の記録媒体への転写は、トナー像を記録媒体に剥離帯電することにより行われる。
【0199】
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
【0200】
また、転写する工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を記録媒体上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する態様などによって行うこともできる。
【0201】
(定着する工程)
本発明に係る定着工程では、トナーを用いて形成された未定着画像(トナー像)が転写された記録材を、加熱された定着ベルト又は定着ローラーと、加圧部材との間を通過させることにより、当該未定着画像を当該記録材に定着させる工程を有する。用いられる定着ベルト又は定着ローラーが、本発明に係る定着部材であるときに、画像形成装置の紙出力速度が高速化(複写速度70cpm以上、いわゆるSeg.5以上の画像形成装置を使用)しても、高い定着分離性能を発揮し、かつ画像ムラを起こさない効果を得ることができる。
【0202】
定着工程の方式としては、具体的には、例えば、定着回転体としての定着ベルト又は定着ローラーと、当該定着ベルト又は定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧部材としての加圧ローラーとにより構成されてなるベルト定着方式又はローラー定着方式のものが挙げられる。
【0203】
(クリーニングする工程)
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
【0204】
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
【0205】
本発明の電子写真画像形成方法において、有彩色又は黒色トナーの画像は、最終的には記録媒体上に転写され形成される。
【0206】
記録媒体としては、特に制限されず、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙等の紙類;ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の樹脂製フィルム;布などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、記録媒体の色は特に限定されず、種々の色の記録媒体を使用することができる。
【0207】
また、本発明の電子写真画像形成装置は、少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0208】
詳細には、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と。本発明の静電荷像現像用トナーセットを用いて、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、クリーニング手段と、を備える。
【0209】
本発明の電子写真画像形成装置は、例えば、図1に示すような画像形成装置を用いることができ、図1はその一例における構成を示す断面概要図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、垂直方向に縦列配置された4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C及び10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とを有する。画像形成装置100の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0210】
中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとからなる。
【0211】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、ドラム状の感光体1Y、1M、1C及び1Bkを中心に有し、その周囲に配置された帯電手段2Y、2M、2C及び2Bkと、露光手段3Y、3M、3C及び3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C及び4Bkと、感光体1Y、1M、1C及び1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C及び6Bkを有する。
画像形成装置100は、感光体1Y、1M、1C及び1Bkとして、上記の本発明に係る感光体を備える。
【0212】
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、イエロー色、マゼンタ色、シアン色及び黒色のトナー像を形成する。
本発明の画像形成システムにおける、帯電工程、露光工程及び現像工程は、感光体上にトナー像を形成する工程であって、画像形成装置100においては、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkで、本発明に係る感光体1Y、1M、1C及び1Bk及び本発明に係るトナーを用いて、以下のとおり行われる。
なお、トナーは上記のようにキャリアともに混合されて二成分現像剤として用いることができる。
【0213】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0214】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0215】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段である。本発明においては、帯電手段としては、接触又は非接触のローラー帯電方式のもの等が挙げられるが、接触のローラー帯電方式のものであることが本発明の効果がより有効となる点で好ましい。
【0216】
露光手段3Yは、帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電荷像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又は、レーザー光学系等が用いられる。
【0217】
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し、二成分現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0218】
クリーニング手段6Yは、先端が感光体1Yの表面に当接するよう設けられたクリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられた、感光体1Yの表面に接触するブラシローラーとにより構成される。
クリーニングブレードは、感光体1Yに付着した残留トナーを除去する機能とともに、感光体1Yの表面を擦過する機能を有する。
【0219】
ブラシローラーは、感光体1Yに付着した残留トナーの除去、クリーニングブレードで除去された残留トナーの回収機能とともに、感光体1Y表面を擦過する機能を有する。すなわち、ブラシローラーは、感光体1Y表面と接触し、その接触部においては、感光体1Yと進行方向が同方向に回転し、感光体1Y上の残留トナーや紙粉を除去するとともに、クリーニングブレードで除去された残留トナーを搬送し回収する。
【0220】
ここで、本発明に係る感光体は、当該感光体が有する感光層中に電荷輸送物質(1)又は(2)を含有することで、メモリー性能が担保されている。
また、本発明に係るトナーは、外添剤としてランタンドープチタン酸化合物粒子を含有することで、トナーの帯電量が制御され、感光体へのトナーの付着力を弱めてクリーニング時のふき取り性を確保しており、クリーニング性能に優れた画像形成システムが提供される。
これにより、感光体への直接のダメージが軽減されるとともに、感光体上への付着力低下によるフィルミング発生が抑制される。このようにして、本発明の画像形成システムにおいては、感光体がクリーニング性能とメモリー性能を両立しつつ、高い耐久性を維持できることで、長期使用においても高画質の画像を安定して供給できる。
【0221】
画像形成装置100を用いた画像形成システムにおいて、上記感光体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写工程は、以下に説明するとおり、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を転写材上に2次転写する態様である。
【0222】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色のトナー像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、中間転写体ユニット7が有する回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
無端ベルト状中間転写体70は、複数のローラー71、72、73及び74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体である。
【0223】
無端ベルト状中間転写体70上で合成されたカラー画像は、次いで、転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シート等)Pに転写される。
【0224】
具体的には、給紙カセット20内に収容された転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送される。
【0225】
そして、二次転写ローラー5bにて、無端ベルト状中間転写体70から転写材P上にカラー画像が一括転写(二次転写)される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0226】
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0227】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0228】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0229】
また、画像形成装置100においては、装置本体Aから、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7とからなる筐体8を、支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0230】
なお、図1に示す画像形成装置100を用いて、カラーのレーザプリンターにおける画像形成システムを説明したが、本発明の画像形成システムは、モノクローのレーザプリンターやコピー機にも同様に適用可能である。また、露光光源もレーザー以外の光源、例えばLED光源を用いてもよい。
【実施例0231】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0232】
<トナー母体粒子Aの作製>
[スチレン・アクリル系樹脂1の微粒子分散液A1の調製]
1.第1段重合(樹脂微粒子a1の分散液の調製)
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤を仕込み、窒素気流下、230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム(KPS)」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた。
次いで、下記成分を下記の量で含有する単量体溶液を上記界面活性剤溶液に3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱、撹拌することで重合(第1段重合)を行い、生成した樹脂微粒子a1を含有する樹脂微粒子a1の分散液を調製した。
スチレン 540質量部
n-ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n-オクチルメルカプタン 17質量部
【0233】
2.第2段重合(樹脂微粒子a11の分散液の調製)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、下記成分を下記の量で仕込み、90℃にて溶解させ、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製、「クレアミックス」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、単量体溶液(2)を調製した。下記離型剤は、ベヘン酸ベヘニルであり、日本精蝋株式会社製のHNP-57であり、その融点は73℃である。
【0234】
スチレン 94質量部
n-ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n-オクチルメル力プタン 5質量部
離型剤 120質量部
【0235】
一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に「脂微粒子a1の分散液を、樹脂微粒子a1の固形分換算で28質量部添加した。
【0236】
次いで、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)により、上記の単量体溶液(2)を4時問混合、分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製した。次いで、この分散液に、重合開始剤としての過硫酸カリウム(KPS)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、得られた分散液を90℃において2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第2段重合)を行って、樹脂微粒子a11を含有する樹脂微粒子a11の分散液を調製した。
【0237】
3.第3段重合(スチレン・アクリル系樹脂1の微粒子分散液A1の調製)
上記の樹脂微粒子a11の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液をさらに添加し、80℃の温度条件下において、下記成分を下記の量で含有する単量体溶液(3)を1時間かけて滴下した。
【0238】
スチレン 230質量部
n-ブチルアクリレート 100質量部
n-オクチルメルカプタン 5.2質量部
【0239】
滴下終了後、得られた分散液を3時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、上記分散液を28℃まで冷却した。こうして、アニオン性界面活性剤溶液中にスチレン-アクリル系樹脂1の微粒子が分散した「スチレン・アクリル系樹脂1の微粒子分散液A1」を得た。
【0240】
[スチレン・アクリル系樹脂2の微粒子分散液A2の調製]
スチレン・アクリル系樹脂1の微粒子分散液(A1)の調製のうち、離型剤の量を140質量部から60質量部に変更すること以外はスチレン・アクリル系樹脂1の微粒子分散液A1の調製と同様にして、スチレン・アクリル系樹脂2の微粒子分散液A2を得た。
【0241】
[非晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液B1の調製]
1.非晶性ポリエステル含有樹脂1の合成
窒素導入管、脱水管、損拌器及び熱電対を装備した反応容器に、下記の成分を下記の量で入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した。下記エステル化触媒は、オクチル酸スズである。
【0242】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 54質量部
フマル酸 150質量部
エステル化触媒 2質量部
【0243】
次いで、上記の反応生成物に、下記成分を下記の量で含有する液を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた。次いで、得らえた反応生成物を200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、当該反応生成物からアクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントが結合してなる「非晶性ポリエステル含有樹脂1」を得た。下記重合開始剤は、ジ-t-ブチルパーオキサイドである。
【0244】
アクリル酸 10質量部
スチレン 58質量部
n-ブチルアクリレート 10質量部
重合開始剤 10賃量部
【0245】
2.非晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液B1の調製
非晶性ポリエステル含有樹脂1 200質量部を、解砕機「ランデルミル 形式:RM-2」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、得られた粉砕物をあらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液800質量部と混合し、撹拌しながら、超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所製)を用いてV-LEVEL、300μAで30分間超音波分散した。こうして、体積基準のメジアン径(D50)が200nmである非晶性ポリエステル含有樹脂1が分散された、非晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液B1を調製した。
【0246】
[非晶性ポリエステル含有樹脂2の微粒子分散液B2の調製]
テレフタル酸の量を54質量部から125質量部に変更し、フマル酸の量を150質量部から75質量部に変更した以外は、非晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液B1の調製と同様にして、非晶性ポリエステル含有樹脂2の微粒子分散液B2を得た。
【0247】
[非晶性ポリエステル含有樹脂3の微粒子分散液B3の調製]
1.非晶性ポリエステル含有樹脂3の合成
攪拌器、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、下記成分を下記の量で投入し、窒素ガス気流下、230℃で8時間縮重合反応させ、冷却しポリエステル樹脂のみからなる非晶性ポリエステル含有樹脂3を得た。下記エステル化触媒は、オクチル酸スズである。
【0248】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 54質量部
フマル酸 150質量部
エステル化触媒 2質量部
2.非晶性ポリエステル含有樹脂3の微粒子分散液B3の調製
【0249】
非晶性ポリエステル含有樹脂1に代えて非晶性ポリエステル含有樹脂3を用いる以外は、非晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液B1の調製と同様にして、体積基準のメジアン径(D50)が200nmである非晶性ポリエステル含有樹脂3が分散された、非晶性ポリエステル含有樹脂3の微粒子分散液B3を調製した。
【0250】
[結晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液C1の調製]
1.結晶性ポリエステル含有樹脂1の合成
窒素導入管、脱水管、損拌器及び熱電対を装備した反応容器に、下記の成分を下記の量で入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0251】
1,6-ヘキサンジオール 302質量部
セバシン酸 346質量部
【0252】
次いで、得られた溶液に、下記の成分を下記の量で有する混合液を滴下ロートにより90分間かけて滴下した。次いで、60分間熟成を行ったのち、得られた反応生成物から、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマーに対してごく微量であった。下記重合開始剤は、ジ-t-ブチルパーオキサイドである。
【0253】
スチレン 51質量部
n-ブチルアクリレート 18質量部
アクリル酸 3質量部
重合開始剤 9質量部
【0254】
その後、上記反応生成物に、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。得られた反応生成物を200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させた。こうして、結晶性ポリエステル含有樹脂1を得た。その融点は72℃であった。
【0255】
2.結晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液C1の調製
得られた結晶性ポリエステル含有樹脂1(20質量部)を溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)へ、毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル含有樹脂1の移送と同時に、当該乳化分散機へ、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。当該希アンモニア水は、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水80質量部をイオン交換水で希釈したものである。そして、上記乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm(490.5kPa)の条件で運転することにより、分散液中の樹脂粒子の体積基準のメジアン径が200nmであり、固形分量が20質量部である、結晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液C1を調製した。
【0256】
〔結晶性ポリエステル含有樹脂2の微粒子分散液C2の調製〕
1.結晶性ポリエステル含有樹脂2の合成
攪拌器、温度計、コンデンサーおよび空素ガス導入管を備えた反応容器に、下記成分を下記の量で投入し、窒素ガス気流下、70℃で3時間損拌反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌反応させた。こうして、結晶性ポリエステルのみからなる結晶性ポリエステル含有樹脂2を得た。下記エステル化触媒は、オクチル酸スズである。
1,6-ヘキサンジオール 302質量部
セバシン酸 346質量部
エステル化触媒 2質量部
2.結晶性ポリエステル含有樹脂2の微粒子分散液C2の調製
結晶性ポリエステル含有樹脂1に代えて結晶性ポリエステル含有樹脂を用いる以外は、結晶性ポリエステル含有樹脂1の微粒子分散液C1の調製と同様にして、分散液中の樹脂粒子の体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が20質量部である、結晶性ポリエステル含有樹脂2の微粒子分散液C2を調製した。
【0257】
[離型剤分散液の調製]
下記成分を下記の量で混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度100℃にて離型剤(ベヘン酸ベヘニル)を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却した。得られた分散液中における離型剤の粒子の体積平均粒径D50vは225nmであった。その後、イオン交換水を加えて固形分農度が20.0質量%になるように調整した。こうして、離型剤分散液を得た。なお、アニオン性界面活性剤は、ネオゲンRK(第一工業製薬株式会社製、「ネオゲン」は同社の登録商標)であり、その有効成分量は60質量%である。
【0258】
ベヘン酸ベヘニル 270質量部
アニオン性界面活性剤 13.5質量部
イオン交換水 21.6質量部
【0259】
[着色剤分散液の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解させて作製した溶液を撹拌させておき、当該溶液中に、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製、「リーガル」は同社の登録商標)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行い、こうして「着色剤分散液」を調製した。
【0260】
[トナー母体粒子Aの作製]
1.凝集・融着工程
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、下記の成分を下記の量で投入し、次いで、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、分散液のpHを10に調整し、また、当該分散液の温度を20℃に調整した。次いで、固形分換算で20質量部の着色剤分散液をさらに投入した。下記微粒子分散液の量は、固形分換算値である。
【0261】
微粒子分散液A1 140質量部
微粒子分散液B1 180質量部
微粒子分散液C1 20質量部
イオン交換水 1600質量部
【0262】
次いで、塩化マグネシウム40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて上記分散液に添加した。その後、3分間放置した後に上記分散液の昇温を開始し、60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。
【0263】
この状態で「マルチサイザー3」(べックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50%径)が6.6μmになった時点で塩化ナトリウム125質量部をイオン交換水500質量部に溶解した水溶液を上記分散液に添加して粒子成長を停止させた。
【0264】
さらに、上記分散液の昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、フロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」(シスメックス株式会社製)を用いて、HPF検出数を4000個の条件にて粒子の状態を分析し、当該粒子の平均円形度が0.945になった時点で上記分散液を30℃に冷却した。こうして、トナー母体粒子Aの分散液を得た。
【0265】
2.洗浄・乾燥工程
上記のトナー母体粒子Aの分散液を遠心分離機で固液分離し、粗大粒子や微細粒子を除き、トナー母体粒子Aのウェットケーキを作製した。当該ウェットケーキを、遠心分離機のろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで上記遠心分離器によって35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥した。こうして、トナー母体粒子Aを作製した。トナー母体粒子Aの軟化点を、下記方法にて測定したところ、94℃であった。
【0266】
<トナー母体粒子Aの軟化点の測定法>
トナー母体粒子の軟化点は、下記に示す溶融粘度測定装置(フローテスター)によって測定した。まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー母体粒子A)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器(「SSP-10A」:島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、溶融粘度測定装置(フローテスター「CFT-500D」:島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、軟化点とした。
【0267】
3.外添剤処理工程
上記のトナー母体粒子Aに、疎水性シリカ(個数平均一次粒子径=120nm)2.5質量%、疎水性シリカ(個数平均一次粒子径=12nm)を1.0質量%、及び、疎水性チタニア(個数平均一次粒子径=20nm)0.6質量%、金属石鹸としてオレイン酸亜鉛(下記測定方法による融点70℃。平均粒子径4.5μm)0.5質量部をそれぞれ添加しヘンシェルミキサーにより混合した。こうして、トナー粒子[1]を作製した。
【0268】
<金属石鹸の融点の測定方法>
金属石鹸の融点B(℃)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製:DSC-60A)を用いて測定した。この装置(DSC-60A)の検出部の温度補正は、インジウムの融点と亜鉛の融点とを用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて-10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、吸熱ピーク温度を金属石鹸の融点とした。
【0269】
<金属石鹸の平均粒子径の測定方法>
トナーに添加される金属石鹸の平均粒子径は、下記手順のとおり、トナーより脱離させた外添剤粒子をフロー式粒子像分析装置(「FPIA-2100」:シスメックス社(Sysmex)製)を用いて測定した値である。測定範囲は0.6~400μmの範囲で行う。トナー母体粒子に添加される無機外添剤は、0.6μm以下であるので、金属石鹸粒子以外の無機外添剤は測定されないため、この測定範囲で測定される平均粒子径は、金属石鹸粒子の平均粒子径に相当する。
【0270】
[トナー粒子[2]~[5]、トナー粒子[7]~[19]の作製]
外添剤処理工程において、金属石鹸の種類及び添加量を変える以外は、トナー粒子[1]と同様にしてトナー粒子[2]~[5]、トナー粒子[7]~[19]を得た。
なお、トナー粒子〔14〕では、金属石鹸としてオレイン酸亜鉛とオレイン酸カルシウムを平均融点値が76℃になるような組成比率で混合して用いた。
同様にトナー粒子〔15〕では、金属石鹸としてオレイン酸亜鉛とリシノール酸亜鉛を平均融点値が82℃になるような組成比率で混合して用いた。
【0271】
[トナー粒子[6]、〔20〕及び〔21〕の作製]
凝集工程において、微粒子分散液A1を使用せず、微粒子分散液B1に代えて微粒子分散液B3を用い、微粒子分散液C1に代えて微粒子分散液C2を用い、さらに離型剤分散液を用いる以外は、トナー母体粒子Aの作製と同様にしてトナー母体粒子Bを得て、更に表II、III記載の金属石鹸を含有する外添剤を用いて、トナー粒子[6]、〔20〕及び〔21〕を作製した。
【0272】
[トナー粒子[22]の作製]
凝集工程において、140質量部の微粒子分散液A1に代えて180質量部の微粒子分散液A2を用い、180質量部の微粒子分散液B1に代えて60質量部の微粒子分散液B2を用い、微粒子分散液C1に代えて微粒子分散液C2を用いた以外は、トナー母体粒子Aの作製と同様にしてトナー母体粒子Cを得て、トナー粒子〔1〕の作製と同様にして、表III記載のトナー粒子[22]を得た。
【0273】
なお、トナー母体粒子A~Cの構成は下記表Iに示すとおりである。
【0274】
【表1】
【0275】
<評価方法>
得られたトナー粒子[1]~〔22〕を用いて以下の評価を実施した。
【0276】
1.クリーニング性評価
評価は、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub C650」(コニカミノルタ株式会社製)を用いておこなった。現像剤を順番に装填し、10℃、10%RHの環境で、画素率が5%の画像をA4版上質紙(64g/m)に10万枚プリントし、ベタ画像(グリット電圧450V、現像電位:350V)を出力して判定した。画像上にトナーすり抜けがなければ実用上問題ない。
【0277】
(評価基準)
◎:トナーのすり抜けなし
○:感光体上にトナーすり抜け3箇所未満があるが、画像上にはない
△:感光体上にトナーすり抜けが3箇所以上あるが、画像上にはない
×:トナーのすり抜けが画像上にあり
【0278】
2.定着性評価
評価は、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub C650」(コニカミノルタ株式会社製)を、定着上ベルト及び定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用いた。A4(坪量80g/m)普通紙の上に、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、定着温度100~200℃にて出力する試験を、定着温度を5℃刻みで変更しながら、繰り返し行った。定着オフセットによる画像汚れが目視で確認されない最低の定着温度を最低定着温度とした。
【0279】
(評価基準)
◎:130℃未満であれば低温定着性に優れる優良なトナー
〇:130℃以上、140℃未満であれば実用上問題ないレベル
△:140℃以上、150℃未満であれば定着プロセスの制御により使用可能となるため許容可能
×:150℃以上のトナーでは目標とする通紙速度では十分定着しておらず、実用上問題
【0280】
【表2】
【0281】
【表3】
【0282】
表II、表IIIの結果から、本発明に係る軟化点A(℃)を有するトナー粒子、及び本発明に係る式1を満たす融点B(℃)を有する金属石鹸を組み合わせて作製した実施例1~15の静電荷像現像用トナー(トナー粒子)は、比較例1~7に対して、クリーニング性と低温定着性に優れていることが明らかである。
【符号の説明】
【0283】
101 導電性支持体
102 中間層
103 感光層
103a 電荷発生層
103b 電荷輸送層
103c 表面保護層
100 画像形成装置
1A、1B、1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
5Y、5M、5C、5Bk 一次転写ローラー
5b 二次転写ローラー
6Y、6M、6C、6Bk、6b クリーニング手段
7 中間転写体ユニット
8 筐体
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
21 給紙手段
20 給紙カセット
22A、22B、22C、22D 中間ローラー
23 レジストローラー
24 定着手段
25 排紙ローラー
26 排紙トレイ
70 無端ベルト状中間転写体
71、72、73、74 ローラー
82L、82R 支持レール
P 転写材
図1