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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180949
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子
(51)【国際特許分類】
   C01G 9/02 20060101AFI20221130BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20221130BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20221130BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20221130BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C01G9/02 A
A61K8/27
A61Q1/02
A61Q1/12
A61Q1/00
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087739
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小澤 晃代
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083BB26
4C083CC03
4C083CC12
4C083CC14
4C083DD17
4C083EE07
4C083EE12
4C083FF01
4G047AA02
4G047AB06
4G047AC03
4G047AD04
(57)【要約】
【課題】 従来の酸化亜鉛粒子よりも良好な滑り性を有する酸化亜鉛粒子を提供する。
【解決手段】 酸化亜鉛に酸化セリウムが担持され、該酸化セリウムの担持量が、酸化亜鉛100モル%に対して0.1~10モル%であり、該酸化亜鉛は、板状形状を有する粒子が球状に集積した粒子であることを特徴とする酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛に酸化セリウムが担持され、
該酸化セリウムの担持量が、酸化亜鉛100モル%に対して0.3~10モル%であり、該酸化亜鉛は、板状形状を有する粒子が球状に集積した粒子であることを特徴とする酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子。
【請求項2】
前記酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定されるメジアン径が1~10μmであることを特徴とする請求項1に記載の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項4】
酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を製造する方法であって、
該製造方法は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液を中和する工程(1-1)及び該工程(1-1)により得られた生成物を焼成する工程(1-2)、又は、
亜鉛塩を含む水溶液を中和する工程(2-1)、該工程(2-1)により得られた生成物を焼成する工程(2-2)及び該工程(2-2)で得られた焼成物と酸化セリウムとを溶媒中で分散させる工程(2-3)を含むことを特徴とする酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法。
【請求項5】
前記亜鉛塩は、硝酸塩であることを特徴とする請求項4に記載の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子に関する。より詳しくは、化粧料原料等に有用な酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、ファンデーション、フェイスパウダー等の化粧料に配合されるUVカット剤として広く知られており、肌へ塗布した際に肌が白くなるのを抑制するため、数十~数百ナノメートルの微粒子が広く利用されている。
【0003】
化粧料は、塗布時の皮膚への感触(しっとり感やすべすべ感等)や塗布時の滑り性が求められており、皮膚化粧料の皮膚への感触あるいは毛髪化粧料の使用時の滑り性や感触を向上させるための化粧料原料として、架橋シリコーン粒子等を化粧料に配合することが周知である。この種の化粧料としては、三次元的な網状の構造を有する架橋シリコーン粒子を含有する化粧料(特許文献1、2参照)や、シリコーン架橋物などからなるシリコーンオイルエマルジョンを含有する化粧料(特許文献3参照)が知られている。
しかし、近年肌への刺激性をより低減することが求められており、化学成分を使用しない、酸化鉄のマイカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の天然のミネラル(鉱物)を主成分としたミネラルファンデーションが広く使われるようになってきた。そのようなニーズに合わせて、シリコーン等の有機化合物の感触向上成分を使用せずに、化粧料の滑り性を向上させる技術も開発されており、例えば、花びら状の酸化亜鉛や板状集積型球状酸化亜鉛粒子を用いる技術が報告されている(特許文献4~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-165509号公報
【特許文献2】特開平1-190757号公報
【特許文献3】特開平3-79669号公報
【特許文献4】特開2007-182382号公報
【特許文献5】特開2008-254990号公報
【特許文献6】国際公開第2013/133412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来酸化亜鉛により滑り性を向上させる技術が開発されているが、近年ではマスクを常時着用する等の生活習慣の変化に伴い、マスクと肌との摩擦による肌荒れを改善すべく、より高い滑り性を発揮することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の酸化亜鉛粒子よりも良好な滑り性を有する酸化亜鉛粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、酸化亜鉛粒子について種々検討したところ、板状形状を有する粒子が球状に集積した酸化亜鉛粒子に所定量の酸化セリウムを担持させることにより、従来の酸化亜鉛よりも塗布した際の滑り性に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、酸化亜鉛に酸化セリウムが担持され、該酸化セリウムの担持量が、酸化亜鉛100モル%に対して0.3~10モル%であり、該酸化亜鉛は、板状形状を有する粒子が球状に集積した粒子である酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子である。
【0009】
上記酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定されるメジアン径が1~10μmであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を含む化粧料でもある。
【0011】
本発明は更に、酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を製造する方法であって、該製造方法は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液を中和する工程(1-1)及び該工程(1-1)により得られた生成物を焼成する工程(1-2)、又は、亜鉛塩を含む水溶液を中和する工程(2-1)、該工程(2-1)により得られた生成物を焼成する工程(2-2)及び該工程(2-2)で得られた焼成物と酸化セリウムとを溶媒中で分散させる工程(2-3)を含む酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法でもある。
【0012】
上記亜鉛塩は、硝酸塩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、上述の構成よりなり、従来の板状形状を有する粒子が球状に集積した酸化亜鉛粒子を含む酸化亜鉛よりも、塗布した際に良好な滑り性を発揮するため、化粧料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例2で得られた粉体の電子顕微鏡写真である。
図2】比較例4で得られた粉体の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0016】
<酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子>
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、板状形状を有する粒子が球状に集積した酸化亜鉛粒子に酸化セリウムが担持され、該酸化セリウムの担持量が、酸化亜鉛100モル%に対して0.3~10モル%である。当該比率は、すなわち、酸化亜鉛と酸化セリウムのモル比である。
これにより、粉体感触に優れ、塗布した際の滑り性に優れることとなる。
化粧料等の使用感が求められる用途では、使用感を向上させる基材として、球状粒子(例えば、ナイロンビーズ、球状シリカ)や板状粒子(例えば、マイカ、セリサイト)の他、板状化した硫酸バリウムが開発されており、これらの形状に由来して良好な滑り性が発揮されている。
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子に含まれる酸化亜鉛粒子は、板状形状を有する粒子が球状に集積した粒子であり、これにより、滑り性がより向上することとなる。この理由としては、集積体が球状であることにより転がりやすいことと、板状粒子形状に起因した摩擦係数が低い特徴を併せ持つことで、肌へのひっかかり感がなく、高い滑り性を発揮していると考えられ、理由は定かではないが、ここに酸化セリウムが担持されるとそれぞれの特徴を増幅することでより高い滑り性が発現すると考えられる。
また、酸化セリウムの担持量が0.3モル未満であると滑り性が向上する効果は無く、10モル%以下であることにより、コストを充分に抑制することもできる。
【0017】
本発明において、「酸化亜鉛に酸化セリウムが担持されている」とは、酸化セリウムが酸化亜鉛表面に支持されていることをいう。酸化亜鉛表面に酸化セリウムが部分的に付着している場合もあるが、酸化セリウムの層が形成される場合もある。
【0018】
上記酸化セリウムの担持量は、酸化亜鉛100モル%に対して0.3~10モル%であるが、好ましくは0.5~10モル%である。これにより本発明の作用効果がより発揮されることとなる。より好ましくは0.7~5モル%であり、更に好ましくは1.0~3モル%である。
酸化セリウムの担持量は後述の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
【0019】
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定されるメジアン径が1~10μmであることが好ましい。これにより滑り性がより向上することとなる。メジアン径としてより好ましくは2~10μmであり、更に好ましくは4~10μmである。
【0020】
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、BET比表面積が5~50m/gであることが好ましい。より好ましくは8~40m/gであり、更に好ましくは10~25m/gである。
【0021】
上記酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子に含まれる酸化亜鉛粒子は、板状形状を有する粒子が球状に集積した粒子であり、板状形状を有する粒子が少なくとも2個集積した集積体であることが好ましい。より好ましくは板状酸化亜鉛粒子が10~1000個集合して外見上1個の粒子とみなされる集積体である。
上記板状酸化亜鉛粒子の集積体は、まりもに類似した形状であることが好ましい。まりもは、糸状体と呼ばれる細い繊維が毬のように球状に集合したものであり、本発明における酸化亜鉛粒子も板状粒子が毬のように球状に集合した形状であることが好ましく、酸化亜鉛粒子の形状は電子顕微鏡により観察できる。
【0022】
上記集積体を構成する板状形状を有する酸化亜鉛の粒子は、板状粒子の外周の長さと厚みの比(外周/厚み)が3~100000であることが好ましい。本発明において板状の形状とは、板状以外に薄片状、りん片状、雲母状等と呼ばれるものも包含する。集積体の表面部にある板状酸化亜鉛の形状、板状粒子の外周の長さ、厚みは電子顕微鏡により観察できる。板状粒子の外周の長さは、電子顕微鏡により観察できる範囲の外周の長さである。
【0023】
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、酸化亜鉛及び酸化セリウム以外のその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては特に制限されないが、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム等が挙げられる。
上記その他の成分の割合としては、酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。より好ましくは0~5質量%であり、更に好ましくは0~1質量%である。
【0024】
<酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法>
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法は特に制限されないが、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液を中和する工程及び該中和工程により得られた生成物を焼成する工程、又は、亜鉛塩を含む水溶液を中和する工程、該中和工程により得られた生成物を焼成する工程及び該焼成工程で得られた焼成物と酸化セリウムとを溶媒中で分散させる工程とを行って製造する方法が好ましい。
本発明は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液を中和する工程(1-1)及び該工程(1-1)により得られた生成物を焼成する工程(1-2)、又は、亜鉛塩を含む水溶液を中和する工程(2-1)、該工程(2-1)により得られた生成物を焼成する工程(2-2)及び該工程(2-2)で得られた焼成物と酸化セリウムとを溶媒中で分散させる工程(2-3)を含む酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法でもある。
【0025】
上記中和工程(1-1)又は(2-1)において、アニオンの存在下で中和を行うことが好ましい。これにより、板状形状を有する酸化亜鉛の粒子が球状に集積した集積体をより充分に得ることができる。
上記アニオンとしては、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等の無機アニオン;酢酸イオン、シュウ酸イオン等のカルボキシラートイオン;スルホン酸アニオン等が挙げられる。好ましくは硝酸イオンである。
【0026】
上記中和工程(1-1)は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液を中和する限り特に制限されず、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液に中和剤を添加することが好ましい。
中和剤としては特に制限されないが、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩;アンモニア等が挙げられる。中和剤として好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0027】
上記中和工程(1-1)における中和剤の添加量としては特に制限されないが、亜鉛塩の使用量100モル%に対して120~1000モル%であることが好ましい。より好ましくは200~800モル%であり、更に好ましくは300~600モル%である。
【0028】
上記中和工程(1-1)で使用する亜鉛塩としては、亜鉛元素を含むものであれば特に制限されず、例えば、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩;酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。中でも好ましくは硝酸塩である。硝酸塩を用いることにより、得られる酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の粒子径をより好適な範囲とすることができる。
【0029】
上記中和工程(1-1)で使用するセリウム塩としては、セリウム元素を含むものであれば特に制限されず、例えば、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩;酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩;NH(アンミン)、NO(ニトラト)等の配位子を有するセリウム錯体等が挙げられる。中でも好ましくは硝酸塩、塩化物、硫酸塩であり、より好ましくは硝酸セリウムアンモニウムである。
【0030】
上記セリウム塩の使用量は、目的のセリウムの担持量を考慮して適宜調整することができるが、亜鉛塩100モル%に対して、0.3~10モル%であることが好ましい。より好ましくは0.5~10モル%であり、更に好ましくは1.0~10モル%である。
【0031】
上記中和工程(1-1)で使用する亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む限り特に制限されず、亜鉛塩水溶液とセリウム塩水溶液とを混合しても、亜鉛塩及びセリウム塩を水に添加して溶解させて得てもよい。
【0032】
上記中和工程(1-1)において、亜鉛塩、セリウム塩及び中和剤以外にその他の成分を添加してもよい。
上記その他の成分としては特に制限されないが、親水性分散剤としてカルボキシル基を有する化合物、アルキルスルホン酸又はその塩、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸又はその塩、ポリエーテルアルキルスルホン酸又はその塩、アルキルベタイン、ポリエーテル又はその誘導体、ポリエーテルアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテルソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテル脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル硬化ヒマシ油、ポリエーテルアルキルアミン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、多価アルコール類、アルキル変性多価アルコール等が挙げられる。
【0033】
上記カルボキシル基を有する化合物としては特に制限されないが、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、カルボキシルアミノ酸及びこれらの塩等が挙げられる。
上記モノカルボン酸としては、シュウ酸、フマル酸等のジカルボン酸;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸、タルトロン酸等のヒドロキシジ-又はヒドロキシトリ-カルボン酸;グルコヘプトン酸又はグルコン酸等の(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸;酒石酸等のポリ(ヒドロキシカルボン酸)等が挙げられる。
上記カルボキシルアミノとしては、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸等のジカルボキシルアミノ酸及びそれに対応するアミド;リジン、セリン、トレオニン等のヒドロキシル化されていてもよいモノカルボキシルアミノ酸等が挙げられる。
【0034】
上記その他の成分の割合は、亜鉛塩及びセリウム塩を含む水溶液全量に対して0.5~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5~5質量%である。
【0035】
上記焼成工程(1-2)は、中和工程(1-1)により得られた生成物を焼成する限り特に制限されないが、焼成前に中和工程(1-1)により得られた生成物をろ過する工程や洗浄する工程を行うことが好ましい。
上記焼成工程(1-2)における焼成温度としては、100~500℃が好ましい。より好ましくは250~450℃であり、更に好ましくは300~400℃である。
本明細書中、焼成温度とは、焼成工程での最高到達温度を意味する。
上記焼成工程(1-2)における焼成時間、すなわち上記焼成温度での保持時間は特に制限されないが、0.5~20時間とすることが好ましい。より好ましくは2~8時間である。
【0036】
上記亜鉛塩を含む水溶液を中和する工程(2-1)は、亜鉛塩を含む水溶液を中和する限り特に制限されず、中和剤としては工程(1-1)で述べた中和剤を用いることができる。
また、上記中和工程(2-1)で用いる亜鉛塩の具体例及び好ましい形態、その他の成分の具体例及び好ましい割合も工程(1-1)で述べたとおりである。
【0037】
上記焼成工程(2-2)は、工程(2-1)により得られた生成物を焼成する限り特に制限されないが、焼成前に中和工程(2-1)により得られた生成物をろ過する工程や洗浄する工程を行うことが好ましい。
上記焼成工程(2-2)における好ましい焼成温度、焼成時間としては、上述の焼成工程(1-2)と同様である。
【0038】
上記分散工程(2-3)は、上記焼成工程(2-2)で得られた焼成物と酸化セリウムとを溶媒中で分散させる限り特に制限されないが、例えば、超音波により分散させることが好ましい。
【0039】
上記分散工程(2-3)で使用する酸化セリウムとしては特に制限されないが、平均粒子径が0.05~1μmであることが好ましい。より好ましくは0.1~0.5μmである。
上記平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0040】
上記分散工程(2-3)で使用する酸化セリウムの使用量は目的のセリウムの担持量を考慮して適宜調整することができるが、工程(2-1)で使用する亜鉛塩100モル%に対して、0.3~10モル%であることが好ましい。より好ましくは0.5~10モル%であり、更に好ましくは1~10モル%である。
【0041】
上記酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を、工程(2-1)~(2-3)を行って製造する場合、分散工程(2-3)の後に乾燥工程を行うことが好ましい。
【0042】
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の製造方法としては、中和工程(1-1)と焼成工程(1-2)とを含むことが好ましい。これにより、得られる酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子において酸化セリウムがより充分に担持されることとなる。
【0043】
<酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の用途>
本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子は、滑らかな感触を有し、滑り性に優れ、更に、紫外線遮蔽性においても優れた性能を発揮することができるため、化粧料の配合成分として好適に使用することができる。上記酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を含む化粧料もまた本発明の1つである。
【0044】
本発明の化粧料としては、特に制限されないが、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ、頬紅、マスカラ、口紅、サンスクリーン剤等を挙げることができる。本発明の化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料の任意の形態とすることができる。中でも、ファンデーション、化粧下地、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料において特に好適に使用することができる。
【0045】
本発明の化粧料は、本発明の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子以外に、化粧料分野で使用することができる任意の水性成分、油性成分を含んでいてもよい。上記水性成分及び油性成分としては特に限定されず、例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線遮蔽剤、各種抽出液、無機及び有機顔料、無機及び有機粘土鉱物等の各種粉体、金属石鹸処理又はシリコーンで処理された無機及び有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等が挙げられる。上記化粧料の配合成分の具体例として、特許文献6に記載のものが挙げられる。
これらの1種又は2種以上を任意に配合して通常用いられる方法により目的の化粧料を製造することが可能である。これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【実施例0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
<物性評価>
以下の手順により得られた各粉末の物性等を評価した。結果を表1~3及び各図面に示す。
【0048】
1、官能試験
手の甲あるいは前腕内側部に実施例、比較例で得られる粉体をとり、指先で擦ることで、感触の評価項目のうち、「すべり性」について5段階(非常に低い1点~非常に高い5点)で相対的に評価し、被験者10人の平均値を算出した。
【0049】
2、MIU(平均摩擦係数)及びMMD(摩擦係数の平均偏差)
実施例、比較例で得られる粉体について、KES-SE摩擦感テスター(カトーテック社製)を用いて以下のように測定した。
スライドガラスに25mm幅の両面テープを貼り、粉体を載せ、化粧用パフで伸ばし、KES-SE摩擦感テスター(カトーテック社製)によりMIU(平均摩擦係数)及びMMD(摩擦係数の平均偏差)を測定した。
摩擦測定荷重25gf、表面測定試料移動速度1mm/sec、測定距離範囲20mmの条件で測定を行った。センサーとしては、シリコーン接触子(人間の指を想定した凹凸が施されたシリコーンゴム製の摩擦子)を用いた。MIU(平均摩擦係数)の値が小さい程、滑り性が良く滑り易いことを意味する。MMD(摩擦係数の平均偏差)の値が小さい程、ざらつき感が少なく滑らかさが高いことを意味する。
【0050】
3、組成比、酸化セリウム担持量
各粉体の酸化亜鉛と酸化セリウムの元素含有量は誘導結合(ICP)発光分光分析装置(SII社製 ICP SPS3100)を用いて、スカンジウムを内標準とした検量線法によって求めた。測定試料は、四ホウ酸リチウムを用いたアルカリ溶融法にて調整した。
【0051】
4、メジアン径
メジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(日機装社製:型番マイクロトラックMT3000)を用い以下のように測定した。すなわち、サンプル0.1gと0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液60mLを加え、超音波ホモジナイザー(US-600、日本精機製作所社製)にて十分に分散した懸濁液を調製したものを試料とし、分散媒屈折率(1.33:0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液)、試料屈折率1.9、流速50%、超音波分散3分間、透過率80~95%の条件で測定した。
【0052】
<酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子の合成>
(実施例1)
硝酸亜鉛六水和物5mmolと硝酸二アンモニウムセリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)0.025mmolを80mLの純水に溶解し、上記溶液を攪拌させながら水酸化ナトリウム30mmolを添加し、3時間以上攪拌した。その後、ろ過し、水で十分洗浄後、60℃で乾燥させた。得られた粉末を450℃で2時間大気中で焼成した。
【0053】
(実施例2)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0.075mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0054】
(実施例3)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0.25mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0055】
(実施例4)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0.5mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0056】
(実施例5)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成し、その粉末0.5gと酸化セリウム(ニッキ株式会社製、HM)0.0159g(酸化亜鉛100モル%に対して1.5モル%)をイオン交換水中添加し、超音波分散5分後に蒸発乾燥して粉体を得た。
(比較例1)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0057】
(比較例2)
硝酸二アンモニウムセリウム量を0.005mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0058】
(比較例3)
硝酸二アンモニウムセリウム量を5mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法で合成した。
【0059】
(比較例4)
炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウム10水塩)64.5mmolと水酸化ナトリウム200mmolとを200mlの水中で溶解したアルカリ調整液を調製した。
これとは別に、反応容器に1000mlの水を入れ、これを60℃に加熱してこの温度を保持しつつ、ポンプを接続したpHコントローラーを用いて、反応水溶液のpHを8.0に保ちながら、1.0Mの塩化亜鉛水溶液(0.1M塩酸を含む)及び上記アルカリ調整液を滴下した。
塩化亜鉛水溶液を100mL滴下したところで反応を終了し、0.4μmフィルターで反応液を濾過して、引続き、水洗濾過を3回繰り返した。
残渣を150℃で12時間乾燥した後、400℃で2時間焼成を行い、粉末を得た。
【0060】
(比較例5)
実施例5の酸化セリウムを酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製 微細酸化亜鉛)0.0075gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で合成し、粉体を得た。
【0061】
(比較例6)
実施例5の酸化セリウムを酸化チタン(堺化学工業株式会社製 SSP―N)0.0074gに変更した以外は、実施例5と同様の方法で合成し、粉体を得た。
【0062】
(比較例7)
実施例5の酸化セリウムを酸化ケイ素(堺化学工業株式会社製Sciqas0.4μm)0.0055gに変更した以外は実施例5と同様の方法で合成し、粉体を得た。
【0063】
実施例1~4及び比較例1~4で得られた粉体の形状及び滑り性の官能試験の結果を表1に示す。実施例2及び比較例4における電子顕微鏡写真を図1及び図2に示す。
粉体の形状の「まりも状形状」は、板状粒子が球状に集積した形状を表す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例5及び比較例5~7で得られた粉体についての滑り性の官能試験の結果を表2に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例2で得られた粉体並びに比較例8として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、微細酸化亜鉛)及び比較例9として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、Candy Zinc)について、MIU(平均摩擦係数)及びMMD(摩擦係数の平均偏差)を測定し、結果を表3に示した。
【0068】
【表3】
図1
図2