(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180954
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】射出成形金型と射出延伸ブロー成形機、及び中空成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/40 20060101AFI20221130BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20221130BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221130BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20221130BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B29C45/40
B29C45/00
B29C49/06
B29C49/42
B29B11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087749
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390007179
【氏名又は名称】株式会社青木固研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 茂人
【テーマコード(参考)】
4F201
4F202
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F201AG07
4F201AG23
4F201AG25
4F201AG28
4F201AH55
4F201BA03
4F201BC02
4F201BC12
4F201BC21
4F201BD04
4F201BD06
4F201BM05
4F201BM12
4F202AF01
4F202AG05
4F202AG07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD23
4F202CK11
4F202CM90
4F206AF01
4F206AG05
4F206AG07
4F206JA06
4F206JL02
4F206JN41
4F206JQ81
4F208AG07
4F208AG23
4F208AG25
4F208AG28
4F208AH55
4F208LA08
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG14
4F208LG15
4F208LG30
(57)【要約】
【課題】射出コア型の外表面を荒らすことの利点を活かしながら、底部を薄肉にして成形するプリフォームを用いて中空成形体を製造する際、中空成形体の底部に荒らし加工面の転写跡が生じないようにして、底部の美観が整えられた中空成形体を得る。
【解決手段】射出コア型12の先端部の外表面が、プリフォーム底部10とプリフォーム胴部14の下端14aとに対応していて、このプリフォーム底部10とプリフォーム胴部14の下端14aとに対応する面を鏡面加工面20にし、鏡面加工面以外のプリフォーム対応面を粗面加工面15にした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出コア型と射出キャビティ型とを備えて、プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを成形する射出成形金型であって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面である請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
プリフォームを射出成形する射出成形金型を有する射出成形部と、
射出成形されたプリフォームを延伸し、中空成形体をブロー成形するブロー成形部と、
を備え、
射出成形部の射出成形金型は、射出コア型と射出キャビティ型とを備えていて、
プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを成形する射出成形金型であって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする射出延伸ブロー成形機。
【請求項4】
粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面である請求項3に記載の射出延伸ブロー成形機。
【請求項5】
プリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で得られたプリフォームを延伸するとともに、気体を吹き込んで中空成形体をブロー成形するブロー成形工程とを有する中空成形体の製造方法において、
射出成形工程は、射出コア型と射出キャビティ型とを備える射出成形金型で、プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを射出成形するものであって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする中空成形体の製造方法。
【請求項6】
ブロー成形工程時に、射出コア型の鏡面加工面が対応するプリフォームのプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とで、中空成形体の底部とこの中空成形体の底部から中空成形体の胴部に向けて連続する立ち上がり部とを形成する請求項5に記載の中空成形体の製造方法。
【請求項7】
粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面である請求項5または6に記載の中空体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームを成形するための射出成形金型と、この射出成形金型を備えてプリフォームから中空成形体を製造する射出延伸ブロー成形機、及び中空成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、プリフォームはテーパーが小さく細長いので、プリフォームを成形する射出成形金型での射出コア型が抜き難いという問題が挙げられている。対策として単に抜け易くするために射出コア型の外表面を鏡面磨きに仕上げても、空気の逃げができず、封入された空気溜まり跡が発生することが示されている。
【0003】
そして、特許文献1では、射出コア型の外表面にエッチング加工により皮模様、梨地模様などの細かい凹凸を形成することも挙げられている。この技術を用いて射出コア型の外表面にシボ加工、ブラスト加工を行ない、表面を荒らし、射出した樹脂とコア型との間に空気層を作り、コア先端側に空気が流れるようにすることも示されている。ブラストの場合、表面に細かい投射材粒子を吹き付けて荒らして微細な凹凸を表面に作ると、溶融樹脂はその凹凸のパターンを転写せず、空気層を形成し、この空気層が、金型からの抜け適性を向上させると説明している。
【0004】
さらにこの特許文献1では、プリフォーム口部の先端近傍のプリフォーム内面に対応する部位の表面と、フランジやカプラなどの突起に対向するプリフォーム内面に対する表面とを鏡面加工面にして、それ以外の表面をシボ加工面にする技術も示されており、鏡面部分でコア型とプリフォームとが密着してプリフォームの樹脂が冷却されて、ヒケを生じさせないようにする工夫が示されている。
【0005】
また、特許文献2には、射出成形したプリフォームから射出コア型を抜け易くする工夫として、射出コア型の胴部規定部の表面に、前記胴部規定部からネック部規定部へ延びる溝を形成し、射出コア型の胴部規定部の表面のうち、溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さを0.2μm以上15μm以下にする点が示されている。
【0006】
また、特許文献3にも、射出成形したプリフォームから射出コア型を抜け易くする工夫として、射出コア型の口部成形部より下側の表面層に多数の細かな凹みを形成することが示されていて、その凹みに、プリフォーム成形時に空気の滞在を許容し、柔らかなプリフォームと射出コア型との間に空気層を断続的に滞在させるとともに、その柔らかなプリフォームの内面と射出コア型の外表面との接触を射出コア型の凹みで部分的にして、射出コア型を引き抜くときの摩擦抵抗を小さくする点が示されている。
【0007】
特許文献4はプリフォームからの抜けを良好する技術を示すものではないが、この特許文献4にあっては射出コア型の先端の半球面に微細な凹凸で形成された粗面で形成されるテクスチャ付与パターンを形成する点が示されている。特許文献4の発明自体はボトル開封時に発泡を効果的に生じさせることを目的とするもので、射出成形したプリフォームのプリフォーム底部に射出コア型からパターンを転写させる技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6326790号公報
【特許文献2】特許第6780155号公報
【特許文献3】特開平04-085007号公報
【特許文献4】特開2017-088209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PETボトルなどの中空成形体をホットパリソン形式で成形する成形機は、射出装置から溶融樹脂が射出されてプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部から移動してきた高温度状態のプリフォームを延伸するとともに、気体を吹き込んで中空成形体をブロー成形するブロー成形部と、中空成形体を成形機外へと送り出す取り出し部とを備えている。
【0010】
射出成形部とブロー成形部と取り出し部とは回転板の回転方向に沿って順に位置するようにして設けられている。回転板は所定の角度ごとに回転してリップ型が射出成形部とブロー成形部と取り出し部に順に対応位置しながら移動し、射出成形部では、この射出成形部が備える射出成形金型の射出コア型と射出キャビティ型、そしてこれにリップ型が組み合わされた状態で溶融樹脂が射出されて、プリフォームを射出成形する。
【0011】
射出成形されたプリフォームは、リップ型によってブロー成形部へと搬送され、割型のブロー成形金型にリップ型が組み合わされて型内にプリフォームが配置される。ブロー成形部では、延伸ロッドによってプリフォーム底部が押し下げられるようにして高さ方向に延伸するとともに、気体の吹き込みを行なってプリフォームから中空成形体をブロー成形する。
【0012】
そして、ブロー成形された中空成形体は、回転板の回転により移動するリップ型によって取り出し部に搬送される。取り出し部において、リップ型が中空成形体の口部を解放することで成形機外へ送り出されるようにしている。
中空成形体を解放したリップ型は、回転板の前記回転によって射出成形部へ移動し、この射出成形部では、上述したように射出成形金型にリップ型を組み込んでプリフォームの射出成形が行なわれるようにしている。
【0013】
射出延伸ブロー成形機では、プリフォームの成形サイクルを短かくすることで、中空成形体の生産効率が高まることになる。そのため、上述したように射出コア型の外表面を荒らして離型性を高めて、プリフォームの成形サイクルを短かくすることができる。
【0014】
また、射出成形金型からプリフォームを離型するタイミングを早めることでプリフォームの成形サイクルを短かくし、早期にブロー成形金型に移してブロー成形を行なうことで、中空成形体の生産効率を高めることができる。
【0015】
プリフォームを離型するタイミングを早めて、高温度の状態のプリフォームをブロー成形金型でブロー成形する場合、プリフォーム底部がプリフォーム胴部と同じ位に厚みがあると、熱を持ち続ける度合いが高く、延伸ロッドで突き破られ易い。そのため、プリフォーム底部を薄肉に設計して射出成形金型で冷却が進み易くし、プリフォーム底部の強度が高まるようにしている。
【0016】
例えば、プリフォーム底部の最下端での肉厚を1.0mmとし(ゲート部分は除く)、中空成形体(ボトル)の肩位置を含む胴の部分を賦形するプリフォーム胴部の肉厚を2.1~2.2mmとしていて、プリフォーム底部の肉厚とプリフォーム胴部の肉厚との比を1対2程度にして、プリフォームの形状を設定することも多く行われる。
【0017】
射出コア型の外表面を荒らしてプリフォームの離型性を良好にするとともに、プリフォーム底部の肉厚を薄くすることでプリフォームの離型のタイミングを早めても延伸時の破れを生じさせないようにすることで、プリフォームの成形サイクルを縮め、中空成形体の生産効率を高めることができる。
【0018】
しかしながら、射出コア型の外表面はプリフォームに対応する面全面に粗面加工(荒らし加工)が施されていることから、ブロー成形した中空成形体の底面に、荒らし加工跡が転写され、引き伸ばされた状態で現れるという不具合がある。
即ち、プリフォーム胴部では成形体胴部に賦形するときの伸び、広がりが大きいため、射出コア型側から転写された荒らし加工跡は広がって消えるが、プリフォーム底部では、ある程度の硬さが確保された状態で延伸するために伸びや広がりは小さく、転写された荒らし加工跡が残って底面全面に広がった状態になる。
【0019】
よって、荒らし加工跡が残った状態で中空成形体の底部が形成されることがあり、中空体の外観を損なうという不具合があった。
【0020】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、射出コア型の外表面を荒らすことの利点を活かしつつ、底部を薄肉にして成形するプリフォームを用いて中空成形体を製造するに際し、中空成形体の底部に荒らし加工跡が表れないようにすることを課題とし、底部の美観を整えた中空成形体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、射出コア型と射出キャビティ型とを備えて、プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを成形する射出成形金型であって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする射出成形金型を提供して、上記課題を解消するものである。
なお、鏡面とは、例えばJIS B 0601:2001での算術平均粗さRaを0.2μm以下にしたり最大高さRzを0.8μm以下にする表面粗さ(旧表記における三角記号の▽▽▽▽)に相当する表面仕上げの状態である。但し、この値に限定されるものではない。
【0022】
そして、上記射出成形金型の発明において、粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面であることが良好である。
【0023】
また、もう一つの発明は、プリフォームを射出成形する射出成形金型を有する射出成形部と、
射出成形されたプリフォームを延伸し、中空成形体をブロー成形するブロー成形部と、
を備え、
射出成形部の射出成形金型は、射出コア型と射出キャビティ型とを備えていて、
プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを成形する射出成形金型であって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする射出延伸ブロー成形機であり、この射出延伸ブロー成形機を提供して、上記課題を解消するものである。
【0024】
そして、上記射出延伸ブロー成形機の発明において、粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面であることが良好である。
【0025】
さらに、もう一つの発明は、プリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で得られたプリフォームを延伸するとともに、気体を吹き込んで中空成形体をブロー成形するブロー成形工程とを有する中空成形体の製造方法において、
射出成形工程は、射出コア型と射出キャビティ型とを備える射出成形金型で、プリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを射出成形するものであって、
射出コア型の先端部の外表面が、プリフォーム底部とプリフォーム底部が連続するプリフォーム胴部の下端とに対応していて、このプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する面が鏡面加工面であり、射出コア型の前記鏡面加工面以外のプリフォーム対応面が粗面であることを特徴とする中空成形体の製造方法であり、この中空成形体の製造方法を提供して、上記課題を解消するものである。
【0026】
そして、上記中空成形体の製造方法において、ブロー成形工程時に、射出コア型の鏡面加工面が対応するプリフォームのプリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とで、中空成形体の底部とこの中空成形体の底部から中空成形体の胴部に向けて連続する立ち上がり部とを形成することが良好である。
【0027】
さらに、粗面は、射出コア型の外表面を射出コア型の高さ方向に沿う縦の微細溝を形成するように目荒らしをした加工面であることが良好である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の射出成形金型はプリフォーム底部がプリフォーム胴部より薄肉であるプリフォームを成形する金型であり、プリフォーム底部とプリフォーム胴部の下端とに対応する射出コア型の先端部の外表面が鏡面加工面であることから、プリフォーム胴部の下端からプリフォーム底部に亘る部分(内表面)に鏡面加工面の面形状が転写されるようになる。
【0029】
そして、射出コア型でのプリフォーム対応面中、鏡面加工面以外の部分は粗面であるので、射出コア型がプリフォームから抜ける離型がスムーズになり、高温度で軟質状態のプリフォームが離型時に型崩れすることがない。
【0030】
さらに、射出成形が行なわれる段階では、プリフォーム胴部の下端からプリフォーム底部が薄肉であるために冷却が進み易く、ブロー成形の段階に進んでもプリフォーム底部の破れが抑止され、適正に中空成形体を製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の射出延伸ブロー成形機の一例を概略的に示す説明図である。
【
図2】検討技術での射出成形金型を示す説明図である。
【
図3】同じく検討技術でのブロー成形金型を示す説明図である。
【
図5】ブロー成形金型にプリフォームを配置した状態と中空成形体をブロー成形した状態とを合わせて示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図中1はPETボトルや広口ボトルなどの合成樹脂製の中空成形体を製造する射出延伸ブロー成形機1を概略的に示している。
【0033】
(射出延伸ブロー成形機)
射出延伸ブロー成形機1はホットパリソン形式で中空成形体を製造する装置であり、
図1に示すように射出装置2から溶融樹脂を送り込む射出成形部3と、中空成形体をブロー成形するブロー成形部4と、中空成形体を成形機外へと送り出す取り出し部5とが、リップ型8を有した図示しない回転板の回転方向に順に配置されている。
図1で矢印を付した移動は、回転板の回転方向を示し、リップ型8の移動方向を示している。
【0034】
以下に本発明に至るに際して検討した検討技術と本発明の実施の形態とを説明する。なお、検討技術と本発明の実施の形態での射出延伸ブロー成形機1は、
図1で示す基本的な構成は同一である。
【0035】
(検討技術)
まず、検討技術では、
図2に示す射出成形金型7を用いてプリフォーム6を射出成形し、このプリフォーム6の凸となっている方向に延伸し、気体の吹き込みを行なって広口のカップ状容器Aをブロー成形するものである。
【0036】
検討技術で用いる射出成形金型7では、下方に凸にしたドーム状の射出コア型12と擂り鉢状に上方に開いた射出キャビティ型13とからなり、射出成形を行なう際にリップ型8を組み合わせて構成される。
【0037】
そして、射出成形金型7が射出成形するプリフォーム6は、
図3に示すように上方に開く擂り鉢状であって、プリフォーム底部10とこのプリフォーム底部10から上方に向けて傘状に拡散して連続するプリフォーム胴部14とからなり、上縁に口部を備える。
【0038】
さらにプリフォーム6は、プリフォーム底部10の肉厚をプリフォーム胴部14の肉厚より小にしている形状である。具体的な例としては、プリフォーム底部10の肉厚は1.2mm、プリフォーム胴部(傘開部分)の肉厚は2.0mmである。
【0039】
この射出成形金型7では、プリフォーム底部10の肉厚をプリフォーム胴部14の肉厚より薄くしてプリフォーム6を射出成形し、プリフォーム底部10の冷却が進み易くなるようにしている。プリフォーム底部10の冷却を進み易くしたことで、射出成形金型7から離型してブロー成形金型9内に配置した時点でも、プリフォーム底部10が硬い状態に保たれているので、延伸の操作が行なわれても破れることがない。
【0040】
図3は、検討技術として構成されている射出延伸ブロー成形機1でのブロー成形金型9に擂り鉢状のプリフォーム6が配置された状態と、ブロー成形されたカップ状容器Aを示している。ブロー成形金型9においては上述したようにプリフォーム底部10が薄肉で硬い状態であることから、延伸と空気等の吹き込みによるブローを受けることでプリフォーム6の径方向(プリフォーム6の高さ方向に直交する方向)に広がって、カップ状容器Aの容器底部Bを形成する。
【0041】
一方、プリフォーム胴部14はプリフォーム底部10に比べて肉厚が厚いとともに軟質状態が維持されているので、延伸とブローとによって上下方向と径方向とに伸展して容器胴部Cを形成する。
【0042】
この検討技術において、射出コア型12でのプリフォーム底部10に対応する下端の外周面は粗面加工面15であり、最下端部の位置からコア型表面に沿いながら上方に向かう縦の微細溝を多く設けた面である。具体的な加工例を挙げるとすれば、所要の番手のサンドペーパーを用いて縦荒らしを行なうようにすればよい。
【0043】
また、プリフォーム胴部14に対応する射出コア型12の外表面は鏡面加工面20として設けられていて、所定の表面粗さ以下の滑らかな面が形成されるように研磨剤や磨きペーストなどを用いた磨き込みを行なって形成した鏡面である。なお、
図3で、プリフォーム底部10の外周部分と容器底部Bの外周部分とを一点鎖線で結んでおり、プリフォーム底部10が容器底部Bを形成するときの広がり度合いを分かり易くしている。
【0044】
この検討技術によれば、擂り鉢状のプリフォーム6を成形する射出成形金型7において、プリフォーム底部10の肉厚を薄くして成形することで、プリフォーム6をブロー成形するときにプリフォーム底部10の破れを防止できることが確認できる。
【0045】
また、射出コア型12の下端に粗面加工面15を設ける点は、型開き時にプリフォーム6に引き裂きの力が加わってプリフォームコア層に空気が入ってしまう不具合を抑えて、離型が良好に行なわれるように図ったものである。そして、プリフォーム底部10の肉厚を薄くする設定の下で、離型のタイミングを早めてもプリフォーム6から射出コア型12が不具合無く分離できることが分かった。
【0046】
つぎに本発明における実施の形態を
図4と
図5とに基づいて説明する。上述したように射出延伸ブロー成形機1での基本的な構成は検討技術での説明と同じである。
【0047】
実施の形態の射出延伸ブロー成形機1における射出成形部3は射出装置2からの溶融樹脂によってプリフォーム6を射出成形する射出成形金型7を有している。プリフォーム6は、射出成形金型7に組み合わされるリップ型8に支えられて射出成形金型7から離れ、ブロー成形部4へと移動するように設けられている。
【0048】
ブロー成形部4は割り型のブロー成形金型9を有していて、リップ型8がブロー成形金型9に組み合わされてプリフォーム6がこのブロー成形金型9の内部に配置され、この後、不図示の延伸ロッドがプリフォーム6の内側に進入してプリフォーム底部10を押し下げる延伸を行ない、また、気体を吹き込んでプリフォーム6から中空成形体11をブロー成形する。
【0049】
ブロー成形された中空成形体11は、ブロー成形金型9から離れたリップ型8の移動によってブロー成形部4から取り出し部5へと移動する。取り出し部5に移動したリップ型8が開いて中空成形体11の口部に対する保持を解除し、中空成形体11は成形機外へ送り出される。
【0050】
リップ型8は再び閉じて射出成形部3へ移動するように設けられている。射出成形部3に移動したリップ型8は射出成形金型7と組み合わされ、そして、上述したように射出成形金型7では溶融樹脂が送り込まれてプリフォーム6を射出成形する。
【0051】
(中空成形体の製造方法)
このように射出延伸ブロー成形機1による中空成形体の製造では、プリフォーム6を射出成形する射出成形部3における射出成形工程と、射出成形部3で得られたプリフォーム6を延伸し、吹き込みで中空成形体11をブロー成形するブロー成形部4のブロー成形工程と、ブロー成形部4でブロー成形された中空成形体11が取り出し部5に達し、この取り出し部5から成形機外へと送り出す取り出し部工程とがあって、射出成形工程とブロー成形工程と取り出し工程とを順に進めることによって中空成形体11が得られるようにしている。
【0052】
そして、リップ型8の移動は上記回転板の所定の角度ごとの回転によって行われるものであって、射出成形工程からブロー成形工程への移行では、リップ型8がプリフォーム6を咥えるように支持しながら移動し、ブロー成形工程から取り出し工程への移行では、同じくリップ型8が中空成形体を支持しながら移動し、さらに、取り出し工程から射出成形工程への移行では、中空成形体を解放したリップ型8のみが射出成形部へ移動するようにしている。
【0053】
このようにリップ型8が射出成形部3からブロー成形部4、ブロー成形部4から取り出し部5、取り出し部5から前記射出成形部3と順に移動することで、射出成形工程とブロー成形工程と取り出し工程とが連続して中空成形体11を製造する。なお、回転板は射出成形部3とブロー成形部4と取り出し部5とに対応するようにして三か所にリップ型8を備えており、この三か所それぞれのリップ型8で前記工程が異なりながら中空成形体の製造が進むようにしている。
【0054】
(射出成形金型)
図4に示されているように射出成形部3の射出成形金型7は射出コア型12と射出キャビティ型13とを備えていて、上記リップ型8を組み合わせて溶融樹脂が射出される。この射出コア型12と射出キャビティ型13とリップ型8とで構成する射出成形金型7は、プリフォーム底部10がプリフォーム胴部14より薄肉であって、プリフォーム胴部14の下端14aからプリフォーム底部10での最下端10aにかけて漸次薄肉となるように成形する。
【0055】
プリフォーム胴部14の下端14aからプリフォーム底部10の最下端10aにかけて漸次薄肉となるように成形することで、射出成形金型7内でのプリフォーム胴部14の下端14aからプリフォーム底部10の冷却の進みを早めてプリフォーム底部10廻りでの硬度が高まるようにし、ブロー成形部4で延伸を行なったときに、プリフォーム底部10側で延伸ロッドによる突き破りが生じないようにしている。
【0056】
図4に示す射出成形金型7は、上述したようにプリフォーム胴部14の下端14aからプリフォーム底部10の最下端10aにかけて徐々に薄肉となって最下端10aの位置で最も薄くなるプリフォーム6が射出成形されるようにしている。なお、最下端10aの薄肉の状態についてはゲートの部分は含まずに説明している。
【0057】
(射出コア型)
さらに本発明の実施の形態の射出成形金型7では、射出コア型12の外表面には以下に説明する一部分を除いて粗面加工面15が設けられている。粗面加工面15は、鏡面仕上げとなる所定の表面粗さまで研磨された射出コア型12の外表面を、プリフォーム6の高さ方向に沿った方向である縦の微細溝を形成するように縦の目荒らしを行なった面である。
【0058】
(粗面加工面)
粗面加工面15は、射出成形金型7内に送り込まれる溶融樹脂の流れ込みを良好にするとともに、離型時における射出コア型12の抜けを良好にするための加工であり、この目的に沿う表面粗さに仕上げられている。
【0059】
粗面加工面15の具体的な位置が
図4に斜め線を付した領域として示され、プリフォーム6での粗面加工面15に対応する部分が
図5に示されていて、プリフォーム6のプリフォーム口部16の内面と、中空成形体11にしたときの肩部17と胴部18と裾部始端19になるプリフォーム胴部14の一般部14bの内面とに対応する箇所が、縦の目荒らしを施してなる粗面加工面15である。
【0060】
(鏡面加工面)
一方、射出コア型12の外表面の先端部(射出コア型の下端部分)は目荒らしを行なわずに鏡面仕上げされた鏡面加工面20である。鏡面加工面20は、プリフォーム6でのプリフォーム胴部14の下端14aの内面からプリフォーム底部10の最下端10aの内面に対応する面であり、これらの内面に対し、鏡面加工面20の鏡面状態を転写するようにしている。
【0061】
鏡面加工面20の鏡面状態を転写したプリフォーム胴部14の下端14aからプリフォーム底部10の最下端10aの部分は、ブロー成形工程では、中空成形体11の底部21とこの底部21の外周辺である接地部(糸尻)22からプリフォーム胴部14に向けて拡径しながら裾部始端19に連続する立ち上がり部23として形成される。
【0062】
図5においてプリフォーム胴部14の下端14aの外周部分と中空成形体11の前記立ち上がり部23の外周部分とを一点鎖線で結んでおり、プリフォーム胴部14の下端14aまでの領域が中空成形体11の立ち上がり部23までの領域になるときの広がり度合いを分かり易くしている。
【0063】
図4と
図5に示されるようにプリフォーム底部10の最下端10aからプリフォーム胴部14の下端14aまでの領域については、射出コア型12の鏡面加工面20が転写される状態となるので、中空成形体11の底部21と立ち上がり部23には目荒らし跡は転写されず、底部の美観を損なわない中空成形体11が得られる。
【0064】
なお、本発明にあっては、鏡面加工面20を形成するための仕上げの手法は限定されない。
また、鏡面加工面20の表面状態についても、上述したようにJIS B 0601:2001での算術平均粗さRaを0.2μm以下にした状態や最大高さRzを0.8μm以下にした表面粗さに相当する表面仕上げの状態と表現することが可能であるが、前記粗さを示す数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1…射出延伸ブロー成形機
3…射出成形部
4…ブロー成形部
5…取り出し部
6…プリフォーム
7…射出成形金型
8…リップ型
9…ブロー成形金型
10…プリフォーム底部
10a…プリフォーム底部の最下端
11…中空成形体
12…射出コア型
13…射出キャビティ型
14…プリフォーム胴部
14a…プリフォーム胴部の下端
14b…プリフォーム胴部の一般部
15…粗面加工面
16…プリフォーム口部
17…肩部
18…胴部
19…裾部始端
20…鏡面加工面
21…底部
22…接地部
23…立ち上がり部