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特開2022-180955車両用空中入力装置、車両用空中入力表示装置及び車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180955
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両用空中入力装置、車両用空中入力表示装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221130BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20221130BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221130BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALI20221130BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20221130BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20221130BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20221130BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G02B30/56
B60R11/02 Z
G06F3/0346 421
G06F3/0488
G06F3/042 480
G06F3/0481 150
G09G5/00 510G
G09G5/00 550C
G09G5/00 510H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087750
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】本間 聡
(72)【発明者】
【氏名】三浦 啓介
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
5B087
5C182
5E555
【Fターム(参考)】
2H199BA20
2H199BA32
2H199BB23
2H199BB52
2H199BB65
3D020BA01
3D020BA09
3D020BB01
3D020BC03
3D020BD03
3D020BD05
3D020BE02
5B087AA07
5B087AB02
5B087CC33
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA11
5C182AB15
5C182AB25
5C182AC02
5C182AC03
5C182AC39
5C182BA06
5C182BA65
5C182BA66
5C182BA75
5E555AA11
5E555AA27
5E555BA23
5E555BB23
5E555BC04
5E555BC08
5E555BE16
5E555CA12
5E555CA41
5E555CB22
5E555CB33
5E555CB52
5E555CB53
5E555CB65
5E555CC05
5E555DA11
5E555EA11
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中入力装置であって、車両に設けることが可能な空中入力装置を提供する。
【解決手段】空中入力装置20は、車両に設けられ、光源31と、ホログラムシート40と、位置検出センサ21と、を備える。ホログラムシート40は、光源31からの光によって記録されている像を結像位置38に結像する。位置検出センサ21は、結像位置38に対応した位置に感度を有する。位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、ホログラムシート40から離間している。光源31は、ホログラムシート40に対して結像位置38と同じ側に位置している。結像位置38とホログラムシート40との間の距離D1は、10mm以上である。
【選択図】図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる空中入力装置であって、
光源と、
前記光源からの光によって記録されている像を結像位置に結像するホログラムシートと、
前記結像位置に対応した位置に感度を有する位置検出センサと、を備え、
前記位置検出センサが感度を有する位置は、前記ホログラムシートから離間しており、
前記光源は、前記ホログラムシートに対して前記結像位置と同じ側に位置しており、
前記結像位置と前記ホログラムシートとの間の距離は、10mm以上である、車両用空中入力装置。
【請求項2】
前記ホログラムシートが結像する前記像の、前記ホログラムシートのシート面の法線を基準とした視野角は、前記ホログラムシートのシート面に沿った上下方向における前記ホログラムシートの上端側において10°以下であり、前記ホログラムシートのシート面に沿った左右方向において20°以下である、請求項1に記載の車両用空中入力装置。
【請求項3】
前記光源は、前記結像位置において前記位置検出センサが区別して認識可能な複数の検出位置を示す、請求項1または2に記載の車両用空中入力装置。
【請求項4】
前記像は、入力スイッチを示し、
前記位置検出センサは、前記入力スイッチに対する利用者の動作を検出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用空中入力装置。
【請求項5】
前記ホログラムシートは、体積ホログラムを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用空中入力装置。
【請求項6】
前記ホログラムシートの可視光透過率は、50%以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用空中入力装置。
【請求項7】
前記光源は、第1光源と、前記第1光源とは異なる位置に位置する第2光源と、を少なくとも含み、
前記ホログラムシートは、前記第1光源からの光によって記録されている第1の像を結像し、前記第2光源からの光によって記録されている第2の像を結像する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用空中入力装置。
【請求項8】
前記位置検出センサは、モーションセンサを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両用空中入力装置。
【請求項9】
前記車両に設けられ且つ透明な透明部材をさらに備え、
前記ホログラムシートは前記透明部材の面上に設けられる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項10】
前記車両に設けられ且つ画像を表示する表示面を有する表示装置と、
前記ホログラムシートが前記表示面上に設けられた請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空中入力装置と、を備える、車両用空中入力表示装置。
【請求項11】
前記光源から出て前記表示面において反射する反射光の、前記ホログラムシートのシート面の法線を基準とした角度は、前記ホログラムシートのシート面に沿った上下方向における前記ホログラムシートの上端側において10°以下であり、前記ホログラムシートのシート面に沿った左右方向において20°以下である、請求項10に記載の車両用空中入力表示装置。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空中入力装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中入力装置及び空中入力装置を有する空中入力表示装置に関する。また、本発明は、空中入力装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ウイルス等の接触感染を抑制するために、非接触型の位置検出センサが求められている。表示面等に接触することなく位置を検出することができるセンサとして、赤外線センサ等が知られている。非接触型の位置検出センサによれば、指等の物体を検出可能な位置に配置することで、物体が配置された位置を検出することができる。
【0003】
また、このような非接触型の位置検出センサと合わせて、例えば特許文献1に記載されているような、空中に像を結像する空中結像装置を設けて、情報を入力する入力装置とすることが考えられている。空中結像装置と非接触型の位置検出センサとの組み合わせにおいては、例えば、空中結像装置によって結像される像の位置に、非接触型の位置検出センサが感度を有する位置を対応させる。利用者は、空中結像装置によって結像した像を観察することで、非接触型の位置検出センサが感度を有する位置を認識することができる。そして、位置検出センサが感度を有する位置に指等を配置することで、適切に情報を入力することができる。例えば、位置検出センサ及び空中結像装置を、タッチパネル等の表示装置に設けることが考えられる。この場合、位置検出センサは、表示装置の表示面から離間した位置において物体を検出可能なように配置される。これによって、利用者は、表示装置の表示面に表示されている情報に基づいて、表示面に接触することなく、情報を入力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/131128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触型の位置検出センサと空中結像装置とを合わせた入力装置を、自動車などの車両に設けることが求められる場合があった。しかしながら、入力装置を車両に設ける場合には、車室内の空間が限られていることなどの理由から、光源などの入力装置の構成要素の配置に制約が生じる。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中入力装置であって、車両に設けることが可能な空中入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態による空中入力装置は、
車両に設けられる空中入力装置であって、
光源と、
前記光源からの光によって記録されている像を結像位置に結像するホログラムシートと、
前記結像位置に対応した位置に感度を有する位置検出センサと、を備え、
前記位置検出センサが感度を有する位置は、前記ホログラムシートから離間しており、
前記光源は、前記ホログラムシートに対して前記結像位置と同じ側に位置しており、
前記結像位置と前記ホログラムシートとの間の距離は、10mm以上である。
【0008】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記ホログラムシートが結像する前記像の、前記ホログラムシートのシート面の法線を基準とした視野角は、前記ホログラムシートのシート面に沿った上下方向における前記ホログラムシートの上端側において10°以下であり、前記ホログラムシートのシート面に沿った左右方向において20°以下であってもよい。
【0009】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記光源は、前記結像位置において前記位置検出センサが区別して認識可能な複数の検出位置を示してもよい。
【0010】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記像は、入力スイッチを示し、
前記位置検出センサは、前記入力スイッチに対する利用者の動作を検出してもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記ホログラムシートは、体積ホログラムを含んでもよい。
【0012】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記ホログラムシートの可視光透過率は、50%以上であってもよい。
【0013】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記光源は、第1光源と、前記第1光源とは異なる位置に位置する第2光源と、を少なくとも含み、
前記ホログラムシートは、前記第1光源からの光によって記録されている第1の像を結像し、前記第2光源からの光によって記録されている第2の像を結像してもよい。
【0014】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記位置検出センサは、モーションセンサを含んでもよい。
【0015】
本開示の一実施の形態による空中入力装置において、
前記車両に設けられ且つ透明な透明部材をさらに備え、
前記ホログラムシートは前記透明部材の面上に設けられてもよい。
【0016】
本開示の一実施の形態による空中入力表示装置は、
前記車両に設けられ且つ画像を表示する表示面を有する表示装置と、
前記ホログラムシートが前記表示面上に設けられた上記記載の空中入力装置と、を備える。
【0017】
本開示の一実施の形態による空中入力表示装置において、
前記光源から出て前記表示面において反射する反射光の、前記ホログラムシートのシート面の法線を基準とした角度は、前記ホログラムシートのシート面に沿った上下方向における前記ホログラムシートの上端側において10°以下であり、前記ホログラムシートのシート面に沿った左右方向において20°以下であってもよい。
【0018】
本開示の一実施の形態による車両は、上記空中入力装置を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中入力装置であって、車両に設けることが可能な空中入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態の表示装置に表示される画像の一例を示す上面図である。
図3図3は、第1の実施の形態の空中結像装置によって結像される像の一例を示す上面図である。
図4図4は、第1の実施の形態の空中結像装置によって結像される像の他の例を示す上面図である。
図5図5は、第1の実施の形態の空中結像装置によって結像される像のさらに他の例を示す上面図である。
図6図6は、第1の実施の形態の空中結像装置によって結像される像のさらに他の例を示す上面図である。
図7図7は、ホログラムシートの構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、第1の実施の形態の空中入力表示装置の上面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図10は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図11図11は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図12図12は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図13図13は、第2の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図14図14は、第2の実施の形態の表示装置に表示される画像の一例を示す上面図である。
図15a図15aは、第2の実施の形態の空中結像装置によって結像される像の一例を示す上面図である。
図15b図15bは、第2の実施の形態の空中結像装置によって結像される像の一例を示す上面図である。
図16図16は、第2の実施の形態の空中入力表示装置の上面図である。
図17図17は、図17のXVII-XVII線に沿った断面図である。
図18図18は、第3の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図19図19は、図18のXIX-XIX線に沿った断面図である。
図20図20は、第4の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図21図21は、図20のXXI-XXI線に沿った断面図である。
図22図22は、第4の実施の形態の空中入力表示装置の上面図である。
図23図23は、第5の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図24図24は、第5の実施の形態の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図25図25は、第5の実施の形態の空中入力表示装置の上面図である。
図26図26は、車両に適用された空中入力表示装置を側方から見た様子を示す図である。
図27図27は、車両に適用された空中入力表示装置を上方から見た様子を示す図である。
図28図28は、変形例1の空中入力表示装置を上方から見た様子を示す図である。
図29図29は、変形例1の空中入力表示装置の表示装置に表示される図形の一例を示す図である。
図30図30は、変形例1の空中入力表示装置の表示装置に表示される図形の一例を示す図である。
図31図31は、変形例2の空中入力表示装置を上方から見た様子を示す図である。
図32図32は、変形例3の空中入力表示装置を上方から見た様子を示す図である。
図33a図33aは、変形例3の空中入力表示装置の断面図である。
図33b図33bは、変形例3の空中入力表示装置の断面図である。
図34図34は、変形例4の空中入力表示装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図35図35は、変形例5の空中入力表示装置の断面図である。
図36図36は、変形例5の空中入力表示装置の断面図である。
図37図37は、変形例5の空中入力表示装置の上面図である。
図38図38は、変形例6の空中入力表示装置の断面図である。
図39図39は、変形例7の空中入力表示装置の断面図である。
図40図40は、変形例7の空中入力表示装置の断面図である。
図41図41は、変形例8の空中入力表示装置の断面図である。
図42図42は、変形例8の空中入力表示装置の断面図である。
図43図43は、変形例10の空中入力表示装置の断面図である。
図44図44は、変形例10の空中入力表示装置の断面図である。
図45図45は、変形例11のホログラムシートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0023】
以下、第1乃至第5の実施の形態に係る空中入力装置20について説明する。
【0024】
<第1の実施の形態>
まず、第1の実施の形態に係る空中入力装置20について説明する。第1の実施の形態に係る空中入力装置20は、車両に設けられた表示装置11に設けられる。表示装置11は、例えば、自動車の車室内に設けられたナビゲーション装置やメーター表示装置などである。
【0025】
図1には、第1の実施の形態に係る空中入力装置20を、車両に設けられた表示装置11であって、空中入力装置20が設けられる表示装置11とともに示す分解斜視図である。表示装置11と、空中入力装置20と、を有する装置を、空中入力表示装置10とも称する。空中入力表示装置10は、表示装置11による画像を表示し、また空中入力装置20により空中に像を結像する。すなわち、空中入力表示装置10の利用者は、表示装置11の表示面12に表示された画像と、表示面12から離間した位置に結像した像と、を視認することができる。また、空中入力装置20により、利用者は、空中入力表示装置10に情報を入力することができる。典型的には、空中入力表示装置10の利用者は、空中に結像した像の位置に指等の物体を配置することで、表示面12等に接触することなく、空中入力表示装置10に情報を入力することができる。例えば、空中入力表示装置10の利用者は、「はい」「いいえ」や「A」「B」「C」「D」等の複数の選択枝から1つを選択したという情報を入力することができる。
【0026】
表示装置11は、表示面12を有する。表示装置11は、表示面12に画像を表示することができる。表示面12に表示された画像は、空中入力装置20を介して、空中入力表示装置10の利用者に観察され得る。表示装置11は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の任意の表示装置を用いることができる。このような表示装置11の表示面12は、典型的にはガラス面となっている。
【0027】
あるいは、表示装置11は、光を印刷が施された透明なフィルム等を透過させて画像を表示するものや、光の一部を遮光物によって遮光することで明暗による画像を表示するものであってもよい。この場合、表示装置11は、光を発する光源と、表示する画像に対応した印刷が施された透明なフィルムや表示する画像に対応した形状の遮光物等といった所定のパターン部と、を含んでいる。透明なフィルムの表面や遮光物の非形成部が表示面12となる。光源としては、所定のパターン部を透過する光の強度を均一にするために、例えば面状に光を発する面光源装置が用いられることが好ましい。
【0028】
図2には、表示装置11が表示面12に表示している画像の一例が示されている。図2に示されている例では、表示面12には、4つの矩形の枠内にそれぞれA,B,C,Dの文字が表示されている。
【0029】
図1に示されているように、空中入力装置20は、位置検出センサ21と、空中結像装置30と、を有している。空中入力装置20は、空中結像装置30により空中に像を結像する。また、空中入力装置20は、位置検出センサ21が感度を有する位置21sにおける物体の存在を検出する。物体の存在を検出することにより、検出した位置の情報を入力することができる。また、位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、空中結像装置30が像を結像する位置に対応している。
【0030】
図1に示すように、空中入力装置20の各構成要素は、表示装置11の表示面12の側に配置されている。このため、空中入力装置20は、車両に設けられた表示装置11に対して後付けで設置することができる。すなわち、既設の表示装置11に空中入力装置20が設けられることで、空中入力表示装置10として機能させることができる。
【0031】
図1に示すように、空中結像装置30は、光を照射する光源31と、ホログラムシート40と、を有している。ホログラムシート40は、光を照射されると、記録されている像37を結像位置38に結像する。結像位置38とは、利用者によって像37が観察される位置である。とりわけ、ホログラムシート40は、光源31からの光によって、像37を結像する。結像した像37は、利用者に観察される。図1に示す例において、ホログラムシート40は、光を照射されると、像37を結像面39上に結像する。すなわち、ホログラムシート40が結像する像37は、結像面39上に位置する。結像面39とは、表示装置11の表示面12に平行且つ結像位置38を通る面のうち、表示面12に最も近い面である。図1に示す例において、像37は、結像面39と一致する面を示す。
【0032】
光源31は、空中結像装置30において結像する像37の基になる光をホログラムシート40に照射する。光源31は、点光源であることが好ましい。すなわち、光源31は、1点から広がるような光を出射することが好ましい。光源31は、平行光を出射することがより好ましい。このような光源31としては、例えばLEDライトを用いることができる。また、光源31は、単一であることが好ましい。光源31が出射する光は、ホログラムシート40に記録されている像37を再生させる波長を含んでいる。
【0033】
ホログラムシート40は、光を照射されることによって像37を結像位置38に結像する。すなわち、ホログラムシート40は、像37を当該ホログラムシート40から離間した位置に結像することができる。より詳しくは、ホログラムシート40は、光を回折することで入射した光を所定の位置に向かわせ、像37を結像位置38に結像する。特に、図示されている例では、ホログラムシート40が像37を結像する結像位置38は、表示装置11の表示面12の法線方向に位置している。言い換えると、結像位置38は、表示面12の正面に位置している。図示されている例では、ホログラムシート40は、表示面12に平行に重ねられている。このため、図1に示す表示面12に対して垂直な垂直方向DAは、ホログラムシート40に対しても垂直となっている。また、図示されている例では、ホログラムシート40は、光源31からの光が入射する側に像を結像する。したがって、ホログラムシート40は、光を反射させながら像を結像する。
【0034】
図1に示されているように、ホログラムシート40は、表示装置11の表示面12上に設けられている。ホログラムシート40を介して表示装置11の表示面12を観察可能なよう、ホログラムシート40の可視光透過率は、高くなっていることが好ましい。具体的には、ホログラムシート40の可視光透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定することができる。
【0035】
上述したように、ホログラムシート40は、光源31からの光が入射する側に像を結像する。言い換えると、光源31は、ホログラムシート40に対して結像位置38と同じ側に位置している。図示された例において、ホログラムシート40が像を結像する結像位置38は、光源31とホログラムシート40との間にある。結像位置38とホログラムシート40との間の距離D1は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、20mm以上50mm以下であることがより好ましい。結像位置38とホログラムシート40との距離D1は、像37のホログラムシート40に最も近い部分とホログラムシート40との距離である。
【0036】
図3乃至図6には、ホログラムシート40が結像位置38に結像する像37の具体的な例が、示されている。以下、図3乃至図6に示された像37の各例について説明する。
【0037】
図3に示されている例では、像37は、結像位置38に規則的に配置された複数の点を含んでいる。図3に示されたような像37によれば、像37が結像されている結像位置38が利用者に容易に認識される。また、光源31以外の光源、例えば周囲の照明等の環境光によって像が結像される場合、当該像は、結像面39上であって光源31による像37からずれた位置に規則的に配置された複数の点として結像される。光源31以外の光源に起因する複数の点の像は光源31に起因する複数の点の像37とほとんど区別なく観察される。したがって、光源31以外の光源による像によって結像位置38の視認性が害されにくい。
【0038】
図4に示されている例では、像37は、結像位置38に規則的に二次元配列された複数の線を含んでいる。図4に示されたような像37によれば、複数の線によって結像位置38が規定されている。像37によって規定された結像位置38は、利用者に容易に認識される。したがって、像37が結像されている結像位置38を容易に認識することができる。
【0039】
図5に示されている例では、像37は、結像位置38に不規則に配置された複数の点を含んでいる。図5に示されたような像37によれば、光源31以外の光源、例えば周囲の照明等の環境光によって像が結像される場合、当該像は、結像面39上であって光源31による像37からずれた位置に不規則に配置された複数の点として結像される。光源31以外の光源に起因する複数の点の像は光源31に起因する複数の点の像37とほとんど区別なく観察される。したがって、光源31以外の光源による像によって結像位置38の視認性が特に害されにくい。
【0040】
図6に示されている例では、像37は、結像位置38に規則的に配置された複数の意匠を含んでいる。図示された例では、像37は、意匠として複数のXYZの文字列を含んでいる。ただし、図示された例に限らず、像37は、図形や記号等のマークを含んでいてもよいし、文字と図形や記号等との組み合わせを含んでいてもよい。図6に示されたような像37によれば、像37に意匠性を付与することができる。また、意匠を観察することで、結像位置38を容易に認識することができる。したがって、像37が結像されている結像位置38を容易に認識することができる。
【0041】
結像位置38における像37は、図3乃至図6に例示されたようなドット、格子、図柄パターンのいずれか、またはその組み合わせからなる。表示面12に垂直な方向(図1に示す垂直方向DA)から観察した像37の面積の和は、表示面12の面積の0.1%以上60%以下であることが好ましく、1%以上30%以下であることがより好ましい。像37が十分な面積の和であることで、利用者に像37を適切に観察させることができる。また、像37の面積の和が表示面12に比べて大きすぎないことで、利用者に表示面12に表示されている画像を適切に観察させることができる。
【0042】
また、図7に示されているように、ホログラムシート40は、基材層41と、基材層41に支持されたホログラム層45と、基材層41とホログラム層45とを接合する接合層43と、ホログラム層45に積層されホログラムシート40の表面を形成する表面層47と、ホログラムシート40を表示装置11の表示面12に貼合するための接着層49と、を含んでいる。
【0043】
基材層41は、ホログラム層45を支持する。基材層41は、可視光線波長帯域の波長(380nm~780nm)を透過する一般に言うところの透明なフィルムである。基材層41としては、透明であり、ホログラム層45を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。また、基材層41は、透明性や、ホログラム層45の適切な支持性及び耐久性等を考慮すると、10μm以上100μm以下の厚みを有していることが好ましい。
【0044】
接合層43は、基材層41とホログラム層45とを接合する。このような接合層43としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層43は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような接合層43の典型的な材料としては、アクリル系粘着材を例示することができる。接合層43の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0045】
ホログラム層45は、ホログラムシート40において、入射した光を結像位置38に結像する機能を発揮する。ホログラム層45は、体積ホログラム(リップマンホログラムともいう)であることが好ましい。また、図示されている例では、ホログラムシート40は、光源31からの光が入射する側に像を結像する。したがって、ホログラム層45は、光を反射させながら像を結像する反射型ホログラムである。ホログラム層45は、例えば銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマー等を硬化したものを用いることができる。ホログラム層45の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であり、より好ましくは5μm以上40μm以下である。
【0046】
表面層47は、ホログラムシート40の表面をなしており、ホログラム層45を外部から保護する保護層として機能する。表面層47は、透明であり、ホログラム層45を適切に保護し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。表面層47の厚みは、例えば10μm以上100μm以下である。さらに表面層47には、何らかの機能を付与するようにしてもよい。表面層47に付与され得る機能としては、一例として、抗菌機能、抗ウイルス機能、耐アルコール機能、低反射(LR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能、接合機能等を例示することができる。表面層47には、2以上の機能が付与されていてもよい。とりわけ、表面層47に抗菌機能や抗ウイルス機能が付与されていることで、利用者がホログラムシート40に接触してしまった場合でも菌やウイルス等の接触感染を抑制することができる。また、表面層47に耐アルコール機能が付与されていることで、ホログラムシート40の表面をアルコールで消毒することができる。表面のアルコール消毒により、利用者がホログラムシート40に接触してしまった場合でも菌やウイルス等の接触感染を抑制することができる。
【0047】
接着層49は、ホログラムシート40を表示装置11の表示面12に接着するための層である。接着層49は、一度接着した部材から剥離することができ、剥離した後にも再接着可能であることが好ましい。また、接着層49は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような接着層49としては、例えば、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤等を挙げることができる。接着層49の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0048】
位置検出センサ21は、感度を有する領域、とりわけ面において、物体の位置を検出する。位置検出センサ21は、物体の位置だけでなく動きを検出してもよい。位置検出センサ21は、例えば赤外線によって物体の位置を検出する。位置検出センサ21は、像37が結像される結像位置38に対応した位置に検出の感度を有するよう、設定および配置されている。言い換えると、位置検出センサ21が感度を有する位置21sが、像37が結像している結像位置38によって示されている。位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、表示装置11の表示面12に平行且つ結像位置38を通る面のうち表示面12に最も近い面である結像面39と一致していてもよいが、結像位置38よりホログラムシート40から離間していることが好ましい。言い換えると、結像位置38とホログラムシート40との間の距離D1は、位置検出センサ21が感度を有する位置21sとホログラムシート40との間の距離D2より短くなっている。具体的には、結像位置38とホログラムシート40との間の距離D1は、位置検出センサ21が感度を有する位置21sとホログラムシート40との間の距離D2より1mm以上20mm以下短いことが好ましく、5mm以上10mm以下短いことがより好ましい。
【0049】
図8には、空中入力装置20の上面図が示されている。図8に示されている例では、表示装置11の表示面12において4つの矩形の枠内にそれぞれA,B,C,Dの文字が表示されており、表示面12上の結像位置38に像37が結像されている。図9には、図8のIX-IX線に沿った断面図が示されている。図8及び図9に示されている例において、位置検出センサ21は、表示面12に表示されたA,B,C,Dの文字に重なる位置において、物体の存在を検出する。このような空中入力装置20において、位置検出センサ21が感度を有する位置21sにおいて利用者が指Fで表示面12に描かれた文字を指すと、位置検出センサ21は指されている位置を検出する。検出した位置に対応した表示面12の位置から、利用者が指している文字を特定する。指されている文字の特定により、利用者が指している文字の情報を入力することができる。
【0050】
次に、ホログラム層45及びホログラムシート40の製造方法について、図10乃至図12を参照しながら説明する。
【0051】
まず、図10に示すように、ガラス基板51上にホログラム感材57a及びパターンマスク53を設ける。ホログラム感材57aは例えば、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマー等が挙げられるが、とりわけ、フォトポリマーは、紫外線を照射されることで硬化する乾式材料からなり、量産性に優れるため、ホログラム感材57aの材料として好ましい。フォトポリマーは、少なくとも一種の光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む。パターンマスク53は、開口部53aを有しており、開口部53aが設けられていない部分では光を遮光するが、開口部53aが設けられている部分では光を透過させる。パターンマスク53は、開口部53aによって、ホログラムシート40が結像する像37の位置に対応したパターン形状を形成している。例えば、ホログラムシート40が結像する像37に重なる位置において、パターンマスク53は開口部53aが設けられていない。
【0052】
次に、図10に矢印で示すように、パターンマスク53を介して紫外線を照射する。パターンマスク53の開口部53aが設けられていない部分では、紫外線は遮られる。一方、開口部53aが設けられている部分では、紫外線は、パターンマスク53を透過して、ホログラム感材57aに照射される。紫外線を照射されたホログラム感材57aは、硬化する。すなわち、ホログラム感材57aは、パターンマスク53に対応したパターン形状以外の部分で硬化する。ホログラム感材57aの硬化した部分は、ホログラムを記録しない不感部分57bとなる。すなわち、後にホログラムを結像するための光を照射しても、不感部分57bにおいてはホログラムが結像されなくなる。
【0053】
その後、図11に示すように、パターンマスク53を除去する。また、ガラス基板51のホログラム感材57aが設けられた側とは逆側に第1ホログラム原版55を配置する。第1ホログラム原版55には、全体にホログラムが記録されている。この状態で、図11に矢印で示すように、ホログラム感材57aに光、特に平行光束を照射する。ホログラム感材57aに直接照射される光が参照光として、またホログラム感材57aをいったん透過して第1ホログラム原版55で回折された回折光が物体光として、ホログラム感材57aに入射する。物体光と参照光とが干渉することにより、ホログラム感材57aにおいて明暗パターンである干渉縞が生成される。そして、この干渉縞が、感光性を有したホログラム感材57aに記録される。一方、不感部分57bには干渉縞が記録されない。ホログラムシート40が結像する像37に重なる位置において干渉縞が記録されることで、ホログラム感材57aから第2ホログラム原版57が製造される。
【0054】
なお、ホログラム感材57aに照射される光、すなわち物体光及び参照光としては、例えば、アルゴンイオンレーザー(波長457.9nm、476.5nm、488.0nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(波長647.1nm)、ヘリウム-ネオンレーザー(波長632.8nm)、YAGレーザー(波長532nm)が用いられる。ここで照射される波長の光は、光源31から照射される光に含まれる。
【0055】
その後、図12に示すように、ホログラム層45を形成するホログラム感材45aと上述した工程で製造された第2ホログラム原版57とを離間して配置する。ホログラム感材45aと第2ホログラム原版57との間の距離は、製造されるホログラム層45に記録された像37が結像する結像位置38とホログラム層45との間の距離となる。すなわち、ホログラム感材45aと第2ホログラム原版57との間の距離を調節することで、ホログラム層45に記録された像37が結像する結像位置38とホログラム層45との間の距離を調節することができる。図12に示されている例では、ホログラム感材45aと第2ホログラム原版57との間を所望の距離で離間させるために、ホログラム感材45aと第2ホログラム原版57との間にガラスや透明樹脂等からなる基板52が設けられている。あるいは、図示されている例に限らず、ホログラム感材45aと第2ホログラム原版57との間は、所望の距離で離間していれば、空気等であってもよい。その後、図12に矢印で示すように、ホログラム感材45aに光を照射することで、上述した第2ホログラム原版57の製造工程と同様に、ホログラム感材45a内に明暗パターンである干渉縞が生成される。干渉縞は、第2ホログラム原版57において干渉縞が生成されている位置、すなわちホログラムシート40が結像する像37に重なる位置に生成される。このようにして、ホログラム層45が製造される。
【0056】
製造されたホログラム層45を、接合層43を介して基材層41に接合させ、基材層41のホログラム層45が設けられた側とは逆側に接着層49を設ける。また、ホログラム層45の基材層41が設けられた側とは逆側に表面層47を設ける。このようにして、図7に示したようなホログラムシート40が製造される。なお、接着層49が意図せずに他の部材に粘着することを防止するため、接着層49に剥離可能なセパレータを設けてもよい。
【0057】
次に、第1の実施の形態に係る空中結像装置30及び空中入力装置20の作用について説明する。
【0058】
図9に示すように、まず、光源31から光がホログラムシート40に照射される。ホログラムシート40に照射された光は、ホログラムシート40におけるホログラム層45の干渉縞が生成されている部分において回折される。すなわち、ホログラム層45は、記録されているパターンに基づいて光を回折する。ホログラム層45で回折された光は、結像位置38に集光して、記録されているパターンに基づいた像37を結像する。このようにして、光源31からの光によって空中に像が結像される。すなわち、光源31から照射される光が、ホログラムを再生させる再生光となる。
【0059】
結像位置38に対応した位置に検出の感度を有する位置検出センサ21が配置されている。位置検出センサ21が感度を有する位置21sに物体、例えば利用者の指Fを配置することで、位置検出センサ21は、指Fの位置を検出する。位置検出センサ21により、空中入力装置20は、指Fで指された位置を特定することができ、当該位置の情報を入力することができる。とりわけ、位置検出センサ21が検出の感度を有する位置21sは、結像位置38に結像した像37によって容易に認識することができる。
【0060】
ところで、車両に設けられた表示装置11に対して、表示面12に接触することなく、適切に情報を入力することが可能な設備を設けることが求められている。とりわけ、接触感染について早期に対策するために、このような設備を低コストで簡易に設けられることが求められている。しかしながら、単に非接触型の位置検出センサを設けることでは、位置検出センサが感度を有する位置を適切に認識できないことがある。このため、車両の表示装置11に設けると適切に情報を入力することが困難であり、また表示面12に意図せずに接触してしまうことがある。一方、空中結像装置と非接触型の位置検出センサとを組み合わせた設備は、車室内の空間が限られていることなどの理由から、光学的な配置の制約上、車両に設けられた表示装置11に設けることが困難である。
【0061】
一方、第1の実施の形態の空中入力装置20は、位置検出センサ21を有している。位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、ホログラムシート40から離間している。すなわち、位置検出センサ21は、非接触型で位置を検出することができる。さらに、空中入力装置20は、光源31と、光源31からの光によって結像位置38に像37を結像するホログラムシート40を有している。位置検出センサ21、光源31及びホログラムシート40は、表示装置11の表示面12の側に配置される。したがって、位置検出センサ21、光源31及びホログラムシート40を車両の表示装置11に容易に設けて、空中入力表示装置10とすることができる。また、ホログラムシート40によれば、像37が結像されている結像位置38を容易に認識することができる。そして、位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、結像位置38に対応している。空中入力装置20の利用者は、結像位置38を認識することで、位置検出センサ21が感度を有する位置21sを認識することができる。すなわち、非接触型の位置検出センサ21が検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置30を、車両の表示装置11に容易に設けて、空中入力装置20を形成することができる。
【0062】
また、結像位置38とホログラムシート40との間の距離は、10mm以上である。結像位置38とホログラムシート40とが十分に離間しているため、例えば結像位置38に合わせて位置検出センサ21が検出の感度を有している場合、指Fで像37を指したときに、指Fがホログラムシート40に触れにくくなっている。したがって、ホログラムシート40におけるウイルス等の接触感染を抑制することができる。また、ホログラムシート40に指紋等の汚れが付着し、当該汚れにより像が結像しにくくなることが抑制される。
【0063】
結像位置38とホログラムシート40との間の距離は、100mm以下であることが好ましい。結像位置38とホログラムシート40と離間しすぎていないことで、結像位置38に結像している像37と、ホログラムシート40が設けられている表示装置11の表示面12とを、同時に認識することが容易となる。
【0064】
さらに、光源31は、点光源である。すなわち、光源31は、1点から広がるような光を出射する。光源31からの光は、ホログラムシート40で回折した光が結像位置38の光源31に対応した位置に結像する。光源31が線状あるいは面状に拡散して広がっていると、ホログラムシート40で回折する光も線状あるいは面状に拡散して広がってしまい、結像する像も線状あるいは面状に拡散して広がってしまう。すなわち、ホログラムシート40が結像する像37がぼやけてしまう。光源31が点光源であることで、光源31からの光が拡散しにくく、したがってホログラムシート40が結像する像37を明確にすることができる。これにより、結像位置38が認識されやすくなる。すなわち、位置検出センサ21が感度を有する位置21sが認識されやすくなる。また、光源31が点光源であると、光源31とホログラムシート40との間の距離が小さくても、ホログラムシート40の全体を光源31からの光で照射することができる。このため、空中入力装置20を小さくすることができる。
【0065】
あるいは、光源31は、平行光を出射する。光源31からの光は、ホログラムシート40で回折した光が結像位置38の光源31に対応した位置に結像する。ホログラムシート40において、像37は、参照光として平行光を照射されている。したがって、再生光となる光源31からの光が平行光となっていることで、ホログラムシート40が結像する像37をより明確にすることができる。これにより、結像位置38が認識されやすくなる。すなわち、位置検出センサ21が感度を有する位置21sがより認識されやすくなる。
【0066】
ホログラムシート40は、体積ホログラムであるホログラム層45を含んでいる。体積ホログラムによれば、2次以上の回折光が生じにくい。このため、ホログラムシート40に入射した光を効率よく結像位置38に結像することができる。すなわち、結像位置38が認識されやすくなり、したがって位置検出センサ21が感度を有する位置21sが認識されやすくなる。
【0067】
ホログラムシート40の可視光透過率は、50%以上である。ホログラムシート40の可視光透過率が十分に高くなっていることで、ホログラムシート40を介した視認性が害されにくくなる。例えば、ホログラムシート40を介して、ホログラムシート40が貼合されている表示装置11の表示面12を明瞭に観察することができる。
【0068】
結像位置38における像37はドット、格子、図柄パターンのいずれか、またはそれらの組み合わせからなり、表示面12に垂直な方向から観察した像37の面積の和は、表示面12の面積の0.1%以上60%以下である。像37の面積が上記の数値範囲を満たすことによって、像37が十分な面積の和となるように結像される。このため、像37を観察することで、利用者は結像位置38を容易に認識することができる。これにより、位置検出センサ21が感度を有する位置21sが認識されやすくなる。また、像37の面積の和が過剰でないため、像37を介して表示面12を観察することができる。さらに、結像位置38の像37が設けられていない部分が適切な割合で存在することによって、利用者の両目に視差を生じさせて、像37を立体的に観察させることができる。言い換えると、像37は、ホログラムシート40から離間した位置に存在するように観察される。
【0069】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る空中入力表示装置10及び空中入力装置20について説明する。なお、第2の実施の形態の空中入力表示装置10において、上述した第1の実施の形態の空中入力表示装置10と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0070】
図13には、第2の実施の形態に係る空中入力表示装置10の分解斜視図が示されている。図13に示されているように、第2の実施の形態の空中入力表示装置10は、表示装置11と、空中入力装置20と、を有している。第1の実施の形態と同様に、空中入力表示装置10の利用者は、空中に結像した像の位置に指等の物体を配置することで、表示装置11の表示面12等に接触することなく、空中入力表示装置10に情報を入力することができる。
【0071】
表示装置11は、後述する空中入力装置20の通知手段25として機能することができる。図14には、通知手段25としての表示装置11が表示面12に表示している画像の一例が示されている。図14に示されている例では、後述する結像位置38に結像される像37に対応して、表示面12には4つの矩形の枠の周縁が表示可能である。図示されている例において、1つの枠の周縁のみが表示されている。なお、表示装置11は、通知手段25としての表示以外の情報を表示することができてもよい。あるいは、表示装置11以外の部材が通知手段25として機能する場合、表示装置11は通知手段25としての機能を有していなくてもよい。
【0072】
図13に示されているように、空中入力装置20は、位置検出センサ21と、空中結像装置30と、通知手段25と、を有している。空中入力装置20は、空中結像装置30により空中に像を結像し、また、位置検出センサ21が感度を有する位置21sにおける物体の存在を検出する。位置検出センサ21は、物体の存在を検出することにより、検出した位置の情報を入力することができる。さらに、空中入力装置20は、通知手段25により、検出した位置の情報を出力して、利用者に通知する。位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、空中結像装置30が像37を結像する位置に対応している。
【0073】
図13に示されている例では、空中入力装置20の通知手段25以外の各構成要素は、表示装置11の表示面12の側に配置されている。また、表示装置11を通知手段25として機能させている。このため、空中入力装置20は、車両に設けられた表示装置11に対して後付けで設置することができる。すなわち、車両に設けられた表示装置11に空中入力装置20が設けられることで、空中入力表示装置10として機能させることができる。
【0074】
図13に示すように、空中結像装置30は、光を照射する光源31と、ホログラムシート40と、を有している。ホログラムシート40は、光源31からの光によって、結像位置38に像37を結像する。ホログラムシート40が結像する像37は、結像位置38において位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置を示す。とりわけ、ホログラムシート40は、結像位置38に指等を配置すべき位置を像37として結像する。
【0075】
図15aには、ホログラムシート40が結像位置38に結像する像37の具体的な例が示されている。図15aに示されている例では、像37は、結像位置38に4つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたA,B,C,Dの文字を含んでいる。これらの枠が、結像位置38において指等の物体を配置すべき位置として示される。位置検出センサ21は、各枠に対応した位置において物体の存在を検出することができる。すなわち、各枠が、位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置を示している。なお、結像位置38に結像される像37は、位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置に対応させることができれば、いかなるものであってもよい。例えば、像37は、テンキーやキーボード等であってもよい。
【0076】
図15bは、ホログラムシート40が結像位置38に結像する像37の、図15aとは異なる一例である。図15bに示されている例は、例えば表示装置11が自動車のナビゲーション装置である場合に、ホログラムシート40が結像する像37である。図15bに示す例において、像37は、通常の自動車のナビゲーション装置の画面に表示される機能等の選択画面と同様の表示を示している。図15bに示されている例では、像37は、結像位置38に6つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたナビゲーション装置の機能を示すアイコンを含んでいる。この場合においても、位置検出センサ21は、各枠に対応した位置において物体の存在を検出することができる。
【0077】
また、ホログラムシート40は、第1の実施の形態と同様に、基材層41と、ホログラム層45と、接合層43と、表面層47と、接着層49と、を含んでいる。
【0078】
通知手段25は、検出位置に対応した通知を行う。より具体的には、通知手段25は、位置検出センサ21が物体の存在を検出すると、物体を検出した検出位置に基づいた情報を利用者に通知する。図示されている例において、通知手段25は、表示装置11の表示面12に表示される矩形の枠である。この例において、位置検出センサ21が指等の物体の存在を検出すると、通知手段25として、物体が検出された位置に対応した位置において表示装置11の表示面12に矩形の枠が表示される。なお、図示された例に限らず、通知手段25は、表示装置11とは別の表示手段であってもよい。あるいは、通知手段25は、表示手段以外の手段、例えばスピーカ等から発せられる音声であってもよい。
【0079】
図16には、空中入力装置20の上面図が示されている。図16に示されている例では、表示面12上の結像位置38に像37として4つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたA,B,C,Dの文字が結像されている。また、通知手段25として、表示装置11の表示面12において1つの矩形の枠の周縁が表示されている。図示されている例は、空中入力装置20において、Aの文字の情報が入力されている状態を示している。すなわち、表示面12に表示されている矩形の枠の周縁は、像37のAの文字の枠に重なっている。
【0080】
第2の実施の形態に係るホログラムシート40は、第1の実施の形態に係るホログラムシート40と同様の工程によって製造することができる。
【0081】
次に、第2の実施の形態に係る空中結像装置30及び空中入力装置20の作用について、図17を参照しながら説明する。図17は、図16のXVII-XVII線に沿った断面図である。
【0082】
図17に示すように、まず、光源31から光がホログラムシート40に照射される。ホログラムシート40に照射された光は、ホログラムシート40におけるホログラム層45の干渉縞が生成されている部分において回折される。すなわち、ホログラム層45は、記録されているパターンに基づいて光を回折する。ホログラム層45で回折された光は、結像位置38に集光して、記録されているパターンに基づいた像37を結像する。このようにして、光源31からの光によって空中に像が結像される。すなわち、光源31から照射される光が、ホログラムを再生させる再生光となる。
【0083】
結像位置38に対応した位置に検出の感度を有する位置検出センサ21が配置されている。したがって、位置検出センサ21が検出の感度を有する位置21sは、結像位置38に結像した像37によって容易に認識することができる。位置検出センサ21が感度を有する位置21sに物体、例えば利用者の指Fを配置することで、位置検出センサ21は、指Fの位置を検出する。位置検出センサ21により、空中入力装置20は、指Fで指された位置を特定することができ、当該位置の情報を入力することができる。図16及び図17に示されている例では、位置検出センサ21は、結像位置38に結像されたA,B,C,Dの文字が配置された枠において、位置を区別して物体の存在を検出する。このような空中入力装置20において、位置検出センサ21が感度を有する位置21sにおいて利用者が指Fで結像位置38に結像された文字を指すと、位置検出センサ21は指されている位置を検出する。検出した位置に対応した表示面12の位置から、利用者が指している文字を特定する。指されている文字の特定により、利用者が指している文字の情報を入力することができる。また、通知手段25が、入力されている情報を利用者に通知する。具体的には、通知手段25としての表示面12において、入力されている情報に対応して矩形の枠が表示される。通知手段25として表示面12に表示されている枠が利用者に観察されることで、利用者は指等によって入力した情報を確認することができる。
【0084】
第2の実施の形態の空中入力装置20は、位置検出センサ21を有している。位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、ホログラムシート40から離間している。すなわち、位置検出センサ21は、非接触型で位置を検出することができる。さらに、空中入力装置20は、光源31と、光源31からの光によって結像位置38に像37を結像するホログラムシート40を有している。光源31及びホログラムシート40は、表示装置11の表示面12の側に配置される。したがって、光源31及びホログラムシート40は、車両に設けられた表示装置11に容易に設けることができる。また、ホログラムシート40によれば、結像位置38に指等を配置すべき位置を像37として結像する。そして、位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、結像位置38に対応している。空中入力装置20の利用者は、結像位置38に結像した像37を観察することで、位置検出センサ21が感度を有する位置21sを認識することができる。すなわち、非接触型の位置検出センサ21が検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置30を車両に設けられた表示装置に容易に設けることができる。
【0085】
とりわけ、第2の実施の形態の空中入力装置20は、結像位置38において位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置を示している。利用者は、結像位置38に結像した像37を観察することで、位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置を認識することができる。これにより、利用者は、結像位置38に結像した像37に基づいて情報を選択して入力することができる。
【0086】
また、第2の実施の形態に係る空中入力装置20は、検出位置に対応した通知を行う通知手段25を有している。通知手段25による通知により、利用者は、自身が入力した情報が意図した情報であるかを確認することができる。
【0087】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態に係る空中入力表示装置10及び空中入力装置20について説明する。なお、第3の実施の形態に係る空中入力表示装置10において、上述した第1及び第2の実施の形態の空中入力表示装置10と同様に構成され得る部分について、上述の第1及び第2の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0088】
図18は、第3の実施の形態に係る空中入力表示装置10の分解斜視図である。図19は、図18のXIX-XIX線に沿った断面図である。図18及び図19に示すように、第3の実施の形態の空中入力表示装置10は、表示装置11と、空中入力装置20と、を有している。空中入力装置20は、光を照射する光源31と、ホログラムシート40と、位置検出センサ21と、を有している。ホログラムシート40は、光源31からの光によって、結像位置38に像37を結像する。
【0089】
第3の実施の形態においては、図18及び図19に示すように、像37が、ホログラムシート40からの距離が異なる複数の部分を有する。図18及び図19に示す例において、ホログラムシート40が結像する像37は、ホログラムシート40からの距離が異なる複数の部分として、センサ対応部分37aと目印部分37bとを有する。
【0090】
センサ対応部分37aは、位置検出センサ21が感度を有する位置21sに対応した位置であるセンサ対応位置38aに結像される。空中入力表示装置10の利用者は、像37のセンサ対応部分37aを認識することで、位置検出センサ21が感度を有する位置21sを認識することができる。
【0091】
図19に示す例において、センサ対応部分37aは、第2の実施の形態に係る空中入力表示装置10の像37と同様に、センサ対応位置38aにおいて位置検出センサ21が区別して認識可能な複数の検出位置を示す。特に図19に示す例において、センサ対応部分37aは、4つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたA,B,C,Dの文字である。
【0092】
像37は、センサ対応部分37aとともに目印部分37bを有する。目印部分37bは、センサ対応部分37aとホログラムシート40との距離D1-1とは異なる距離D1-2だけホログラムシート40から離間した位置である目印位置38bに結像される。
【0093】
目印部分37bは、例えば、第1の実施の形態において説明した図3乃至図6に例示されたようなドット、格子、図柄パターンのいずれか、またはその組み合わせからなる。これによって、利用者は、目印部分37bが結像されている目印位置38bを容易に認識することができる。
【0094】
目印部分37bが、センサ対応部分37aとホログラムシート40との間の距離D1-1とは異なる距離だけホログラムシート40から離間した位置に結像されることによって、以下の効果が得られる。利用者に、センサ対応部分37aとともに、センサ対応部分37aとはホログラムシート40からの距離が異なる目印部分37bを視認させることによって、利用者の目に見えるセンサ対応部分37aの立体感を強調することができる。特に、センサ対応部分37aがホログラムシート40から離間していることを、利用者に明確に認識させることができる。センサ対応部分37aがホログラムシート40から離間していることを明確に認識させる観点からは、目印部分37bとホログラムシート40との距離D1-2は、センサ対応部分37aとホログラムシート40との距離D1-1よりも小さいことが好ましい。
【0095】
<第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態に係る空中入力表示装置10及び空中入力装置20について説明する。なお、第4の実施の形態に係る空中入力表示装置10において、上述した第1乃至第3の実施の形態の空中入力表示装置10と同様に構成され得る部分について、上述の第1乃至第3の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0096】
図20は、第4の実施の形態に係る空中入力表示装置10の分解斜視図である。図21は、図20のXXI-XXI線に沿った断面図である。図20及び図21に示すように、第4の実施の形態に係る空中入力表示装置10は、表示装置11と、空中入力装置20と、を有している。空中入力装置20は、光を照射する光源31と、ホログラムシート40と、位置検出センサ21と、を有している。ホログラムシート40は、光源31からの光によって、結像位置38に像37を結像する。
【0097】
第4の実施の形態においては、第3の実施の形態と同様に、像37が、ホログラムシート40からの距離が異なる複数の部分を有する。図20及び図21に示す例において、ホログラムシート40が結像する像37は、ホログラムシート40からの距離が異なる複数の部分として、第3の実施の形態において説明したセンサ対応部分37aとともに、ガイド部分37cを有する。ガイド部分37cは、センサ対応部分37aとホログラムシート40との距離D1-1よりも長い距離D1-3だけホログラムシート40から離間した位置に結像される。
【0098】
図22は、第4の実施の形態に係る空中入力表示装置10を、表示面12に垂直な方向(図20に示す垂直方向DA)から観察した様子を示す図、特に図20の上方から観察した様子を示す図である。ガイド部分37cは、開口部37c1を有する。ガイド部分37cの開口部37c1は、表示面12に垂直な方向(図20に示す垂直方向DA)からの観察において、センサ対応部分37aに重なる。
【0099】
図22に示す例において、センサ対応部分37aは、4つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたA,B,C,Dの文字である。そして、空中入力表示装置10を表示面12に垂直な方向から観察した場合に、ガイド部分37cの周縁は、センサ対応部分37aの4つの矩形の枠に重なっている。開口部37c1は、センサ対応部分37aの文字の部分に重なっている。
【0100】
ガイド部分37cが結像されることによって、以下の効果が得られる。利用者に、センサ対応位置38aに指等を配置する際には開口部37c1を通すよう促すことにより、センサ対応位置38a及び位置検出センサ21が感度を有する位置21sに進入する利用者の指等を、表示面12に対して垂直に近い角度にさせることができる。このため、利用者の指等が表示面12に対して傾いていたことに起因する位置検出センサ21の誤検出を、抑制することができる。例えば、利用者がセンサ対応部分37aのAの文字を指したにも関わらず、利用者の指が表示面12に対して大きく傾いていたために、位置検出センサ21が誤ってBの文字が指されたと検出することを、抑制することができる。
【0101】
<第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態に係る空中入力表示装置10及び空中入力装置20について説明する。なお、第5の実施の形態の空中入力表示装置10において、上述した第1乃至第4の実施の形態の空中入力表示装置10と同様に構成され得る部分について、上述の第1乃至第4の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0102】
図23は、第5の実施の形態に係る空中入力表示装置10の分解斜視図である。図23に示すように、第5の実施の形態の空中入力表示装置10は、表示装置11と、空中入力装置20と、を有している。空中入力装置20は、光を照射する光源31と、ホログラムシート40と、位置検出センサ21と、を有している。ホログラムシート40は、光源31からの光によって、結像位置38に像37を結像する。
【0103】
第5の実施の形態に係る空中入力装置20において、ホログラムシート40は、異なる複数の像37を結像することができる。一例として、ホログラムシート40は、異なる複数の像37を記録している。また、空中入力表示装置10の光源31は、位置の異なる複数の部分を含んでいる。ホログラムシート40は、光源31の複数の部分の1つからの光によって、記録されている複数の像37の1つを結像する。また、ホログラムシート40は、光源31の複数の部分の他の1つからの光によって、記録されている複数の像37の他の1つを結像する。これによって、ホログラムシート40は、異なる複数の像37を結像することができる。
【0104】
図24は、ホログラムシート40が図23において結像している像37とは異なる像37を結像している状態の、第5の実施の形態に係る空中入力表示装置10の分解斜視図である。図23及び図24に示す例において、空中入力装置20の光源31は、第1光源311と第2光源312と、を含む。第2光源312は、第1光源311とは非平行な方向からホログラムシート40に光を照射する。また、ホログラムシート40は、第1の像371と第2の像372とを記録している。一例として、ホログラムシート40は、第1光源311からの光によって、図23に示すように第1の像371を結像する。また、ホログラムシート40は、第2光源312からの光によって、図24に示すように第2の像372を結像する。
【0105】
図23に示す第1の像371は、4つの矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置されたA,B,C,Dの文字を含んでいる。図24に示す第2の像372は、第1の像371においてAの文字が配置されていた枠内のみ、第1の像371と異なっている。第2の像372は、第1の像371においてAの文字が配置されていた枠内に、Aの文字が形成されていた領域を除いて像を形成したような形状を有している。
【0106】
ホログラムシート40が第1光源311からの光によって第1の像371を結像し、第2光源312からの光によって第2の像372を結像することができることによって、以下の効果が得られる。第1光源311及び第2光源312のオンオフを切り替えることによって、ホログラムシート40が結像する像37を変更することができる。例えば、図23に示すように第1の像371が結像されている状態を、第1光源311をオフにし且つ第2光源312をオンにすることによって、第2の像372が結像されている状態に変更することができる。
【0107】
空中入力表示装置10は、位置検出センサ21による物体の検出結果に応じて、結像される像37を変更する。結像される像37を変更することによって、例えば、位置検出センサ21による物体の検出結果を空中入力表示装置10の利用者に通知することができる。例えば、位置検出センサ21が指等の物体の存在を検出することでAの文字の情報が入力された場合に、結像される像37を第1の像371から第2の像372に変更することによって、Aの文字の情報が入力されたことを利用者に通知することができる。
【0108】
結像される像37を第1の像371から第2の像372に変更することによって利用者に位置検出センサ21による物体の検出結果を通知する場合、第2の像372の形状は、利用者が位置検出センサ21による物体の検出結果を認識できる限り、特に限られない。例えば、結像される像37を第1の像371から第2の像372に変更することによってAの文字の情報が入力されたことを利用者に通知する場合、第2の像372を、第1の像371のAの文字の色が変化したような形状とすることもできる。また、第2の像372は、第1の像371のAの文字が配置されている枠が太くなったような形状とすることもできる。また、第2の像372は、第1の像371のAの文字及びAの文字が配置されている枠がホログラムシート40側に移動したような形状とすることもできる。
【0109】
ホログラムシート40は、さらに第1の像371及び第2の像372とは異なる像を結像することができてもよい。図23乃至図25に示す例において、光源31は、第1光源311及び第2光源312を含むとともに、第1光源311及び第2光源312とは異なる位置に位置する第3光源313及び第4光源314を含む。また、ホログラムシート40は、第1の像371及び第2の像372とは異なる第3の像及び第4の像を記録している。そして、ホログラムシート40は、第3光源313からの光によって第3の像を結像し、第4光源314からの光によって第4の像を結像する。第3の像及び第4の像は、例えば、位置検出センサ21が指等の物体の存在を検出することでB,CまたはDの文字の情報が入力されたことを利用者に通知するものである。
【0110】
光源31の複数の部分のホログラムシート40に対する位置は、光源31のオンオフによってホログラムシート40が記録されている複数の像37を結像することができる限り、特に限られない。光源31の位置は、後述するように、車両の機能や車室内での利用者の活動を大きく阻害しないように定められることが好ましい。光源31の複数の部分は、図25に示すように空中入力表示装置10を表示面12に垂直な方向から観察した場合に、ホログラムシート40を囲うように配置されていてもよい。図25に示すように空中入力装置20が4つの光源31を有する場合、4つの光源31は、ホログラムシート40上の一点(例えば、ホログラムシート40の重心)を中心として90°間隔で配置されていてもよい。また、空中入力装置20が8つの光源31を有する場合、8つの光源31は、ホログラムシート40上の一点(例えば、ホログラムシート40の重心)を中心として45°間隔で配置されていてもよい。
【0111】
一例として、ホログラムシート40は、互いに異なる像37を記録した複数のホログラム層45を有することによって、複数の像37を記録することができる。例えば、ホログラムシート40は、第1の像371を記録している第1のホログラム層45と、第2の像372を記録している第2のホログラム層45とを有することによって、第1の像371と第2の像372とを記録することができる。また、ホログラムシート40は、多重記録によって、複数の像37を記録してもよい。結像される像37の光量を確保する観点からは、ホログラムシート40が、互いに異なる像37を記録した複数のホログラム層45を有することによって、複数の像37を記録していることが好ましい。
【0112】
なお、位置検出センサ21による物体の検出結果に応じて結像される像37を変更する空中入力表示装置10の使用方法は、上述した、入力された文字等の情報の入力結果を利用者に通知するものに限られない。例えば、第1の像371が結像されている状態において、位置検出センサ21による物体の検出結果から利用者による情報の入力が読み取られた場合に、第2の像372として、第1の像371とは異なる入力用の表示を結像してもよい。
【0113】
以上のように、第1乃至第5の実施の形態の空中入力装置20は、光源31と、光源31からの光によって記録されている像37を結像位置38に結像するホログラムシート40と、結像位置38に対応した位置に感度を有する位置検出センサ21と、を備え、位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、ホログラムシート40から離間している。このような空中入力装置20によれば、光源31及びホログラムシート40を、車両の表示装置11に容易に設けることができる。また、結像位置38に結像した像37を観察することで、位置検出センサ21が感度を有する位置21sを認識することができる。このため、非接触型の位置検出センサ21が検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中入力装置20を車両の表示装置11に容易に設けることができる。
【0114】
ホログラムシート40を備える空中入力装置20及び空中入力表示装置10によれば、ホログラムシート40が結像する像37の視野角を制御することによって、利用者以外の者に像37を覗き見られることを防止することができる。また、通常のタッチパネル等の場合には、利用者の指紋を確認することによって、利用者が入力した情報が利用者以外の者に知られる懸念がある。これに対して、ホログラムシート40を備える空中入力装置20及び空中入力表示装置10によれば、指紋によって利用者が入力した情報が利用者以外の者に知られることも防止される。以上より、利用者が入力した情報が利用者以外の者に知られることを防止することもできる。
【0115】
次に、空中入力装置20及び空中入力表示装置10を車両に適用した具体的な例について説明する。図26及び図27は、空中入力装置20及び空中入力表示装置10が適用された車両を示す図である。図26及び図27では、空中入力装置20及び空中入力表示装置10が適用された車両として自動車90を例示している。しかしながら、図示された例に限らず、空中入力装置20及び空中入力表示装置10は、他の乗り物、例えば電車や船舶等に適用されてもよく、他の乗り物への適用においても、後述する作用効果に対応する作用効果を奏することができる。図26及び図27に示す例において、表示装置11は、自動車90の車室内であって自動車90の前方且つ自動車90のフロントウィンドウ91の下方に設けられている。表示装置11は、運転手D等に視認される。このような表示装置11の例としては、自動車90のナビゲーション装置やメーター表示装置が挙げられる。
【0116】
図26は、表示装置11に適用された空中入力表示装置10及び空中入力装置20を、自動車90の側方から見た様子を示している。図27は、図26に示す空中入力表示装置10及び空中入力装置20を上方から見た図である。図27においては、光源31及び位置検出センサ21の図示は省略している。図26に示す例において、表示装置11の表示面12は、水平面Gに非平行となっている。
【0117】
図27に位置を破線で示す、水平面Gに垂直且つホログラムシート40のシート面40aに垂直な面を、面SBと称する。図26に位置を破線で示す、面SBに垂直且つホログラムシート40のシート面40aに垂直な面を、面SAと称する。面SAに垂直な方向を、ホログラムシート40のシート面40aに沿った上下方向DB、または単に上下方向DBと称する。上下方向DBは、ホログラムシート40のシート面40aに平行に、ホログラムシート40の上端から下端へと向かう方向である。面SBに垂直な方向を、ホログラムシート40のシート面40aに沿った左右方向DC、または単に左右方向DCと称する。左右方向DCは、ホログラムシート40のシート面40aに平行に、ホログラムシート40の側方の一端から他端へと向かう方向である。
【0118】
図26に示す角度θ4a及び角度θ4bは、ホログラムシート40が結像する像37の、ホログラムシート40のシート面40aの法線を基準とした視野角を表す。シート面40aの法線を基準とした視野角とは、像37を視認できる領域と像37を視認できない領域との境界を示す線と任意のシート面40aの法線とがなす角度の、最小値である。図26に示す角度θ4aは、像37の、上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側(図26に示す上下方向DBにおける第1の側SB1)の視野角を表す。図26に示す角度θ4bは、像37の、上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側(図26に示す上下方向DBにおける第2の側SB2)の像37の視野角を表す。角度θ4a及び角度θ4bは、像37を視認できる領域と像37を視認できない領域との境界を示す線と面SAとがなす角度に相当する。
【0119】
図26に示す空中入力表示装置10においては、線L1に示す経路のように、ホログラムシート40からの光がフロントウィンドウ91において反射して運転手Dの目Eに到達し、運転手Dの視野を遮ることも考えられる。このような事態を防ぐ観点からは、上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側の視野角θ4aは小さいことが好ましい。一方で、上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側の視野角θ4bは、大きくても運転手Dの視野を遮る懸念はない。運転手Dの姿勢や身長の高低に関わらず運転手Dが像37を視認しやすくする観点からは、上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側の視野角θ4bは、大きいことが好ましい。一例として、上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側の視野角θ4bは、上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側の視野角θ4aよりも大きいことが好ましい。
【0120】
ホログラムシート40を備える空中入力装置20及び空中入力表示装置10が図26及び図27に示すように自動車90の表示装置11に適用される場合には、上記の観点から、上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側の視野角θ4aと上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側の視野角θ4bとを調整することができる。上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側の視野角θ4a及び上下方向DBにおけるホログラムシート40の下端側の視野角θ4bは、水平面Gに対する表示面12の傾きに応じて定めることができる。一例として、上下方向DBにおける表示面12の上端側の視野角θ4aは10°以下である。すなわち、像37の、シート面40aの法線を基準とした視野角は、上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側において10°以下である。一例として、上下方向DBにおける表示面12の下端側の視野角θ4bは20°以下である。
【0121】
また、図26に示す空中入力表示装置10においては、表示装置11の表示面12において反射した光源31からの光が、線L2に示す経路のようにフロントウィンドウ91において反射して運転手Dの目に到達し、運転手Dの視野を遮ることが考えられる。また、ホログラムシート40からの0次光が、フロントウィンドウ91において反射して運転手Dの目に到達し、運転手Dの視野を遮ることも考えられる。光源31は、このような事態が生じにくい位置に配置されることが好ましい。
【0122】
一例として、光源31の位置は、以下の条件を満たすように定められる。光源31から出て表示面12において反射する反射光の、シート面40aの法線を基準とした角度は、シート面40aに沿った上下方向DBにおけるホログラムシート40の上端側において10°以下である。一例として、光源31は、表示面12よりも上方に配置される。
【0123】
図27に示す例において、表示装置11は上方から見て運転手Dの正面に位置している。図27に示す角度θ5は、像37の、シート面40aの法線を基準とした左右方向DCにおける視野角を表す。角度θ5は、像37を視認できる領域と像37を視認できない領域との境界を示す線と面SBとがなす角度に相当する。図26及び図27に示す空中入力表示装置10において、像37の左右方向DCにおける視野角θ5は、覗き見防止の観点からは小さいほうが好ましい。また、左右方向DCにおける運転手Dの視点の位置は、運転手Dの姿勢の変化によっては大きく変化しないと考えられる。このため、像37の左右方向DCにおける視野角θ5が小さくても、運転手Dの視点からの視認しやすさは損なわれにくい。以上の観点から、像37の左右方向DCにおける視野角θ5は、比較的小さいことが好ましい。一例として、像37の左右方向DCにおける視野角θ5は、例えば20°以下である。すなわち、像37の、シート面40aの法線を基準とした視野角は、左右方向DCにおいて20°以下である。像37の左右方向DCにおける視野角θ5は、10°以下であってもよい。
【0124】
また、図27に示す空中入力表示装置10においては、表示装置11の表示面12において反射した光源31からの光が、線L3に示す経路のように自動車90のサイドウィンドウ92において反射して運転手Dの目Eに到達し、運転手Dの視野を遮ることが考えられる。また、ホログラムシート40からの0次光が、サイドウィンドウ92において反射して運転手Dの目Eに到達し、運転手Dの視野を遮ることも考えられる。光源31は、このような事態が生じにくい位置に配置されることが好ましい。
【0125】
一例として、光源31の位置は、以下の条件を満たすように定められる。光源31から出て表示面12において反射する反射光の、シート面40aの法線を基準とした角度は、シート面40aに沿った左右方向DCにおいて20°以下である。
【0126】
なお、上述した第1乃至第5の実施の形態、並びに空中入力装置20及び空中入力表示装置10を車両に適用した例に対して、様々な変更を加えることが可能である。例えば、第1乃至第5の実施の形態に係る空中入力装置20の各部材が適宜に組み合わされてもよい。具体的な例として、第1の実施の形態に係る空中入力装置20において、ホログラムシート40が結像位置38に結像する像37は、規則的に配置された複数の点、複数の矩形の枠及びそれぞれの枠内に配置された文字を含んでいてもよい。
【0127】
(変形例1)
空中入力装置20及び空中入力表示装置10を車両に適用した例に関し、上述した例とは別の例について、変形例1としてさらに説明する。変形例1では、自動車90の車室内に設けられる表示装置11であって上方から見て運転手Dの正面に位置する表示装置11に、空中入力表示装置10及び空中入力装置20が適用される例について示した。しかしながら、空中入力表示装置10及び空中入力装置20が適用される表示装置11は、上方から見て運転手Dの正面に位置するものに限られない。図28に示す例において、表示装置11は、左右方向DCにおける自動車90の中心に位置している。このため、表示装置11は、運転手Dの左右方向DCにおける左側に位置している。なお、自動車90の側方から見た表示装置11の位置は、図26に示す表示装置11の位置と同様である。すなわち、表示装置11は、運転手Dの前方且つ運転手Dの視点の下方に設けられている。
【0128】
ここで、ホログラムシート40が像37を結像する結像位置38は、利用者の視点の位置を考慮して定めることができる。結像位置38は、運転手Dの視点の位置を考慮して、運転手Dが像37を視認しやすい位置に定めることができる。例えば図28に示すように、結像位置38を、左右方向DCにおける表示面12の中心よりも運転手D側に定めることができる。また、像37が平面である場合には、平面である像37が運転手Dの目Eの位置として想定される位置を向くように、像37が表示面12に非平行となるように結像位置38を定めてもよい。
【0129】
また、ホログラムシート40が結像する像37の形状は、利用者の視点の位置を考慮して定めることができる。特に、ホログラムシート40が結像する像37の形状は、利用者の視点からの表示面12の見え方を考慮して定めることができる。一例として、図28に示す表示装置11の表示面12に図29に示すような長方形6が表示されており、ホログラムシート40を用いて運転手Dの視点から表示面12に表示された長方形6と同じ形状に見える図形を結像する場合を考える。なお、図28に示すように、長方形6の面が運転手Dの目Eの位置として想定される位置を向くように、像37が表示面12に非平行に結像されるものとする。
【0130】
表示面12は、図28に示すように、運転手Dの視点の左斜め前方に位置している。また、表示面12は、図26に示すように、運転手Dの視点の下方に位置している。この場合、運転手Dの視点からは、表示面12に表示された長方形6は図30に示す形状に見える。すなわち、長方形6の辺のうち右側の辺6aのほうが左側の辺6bよりも運転手Dの目に近いために、運転手Dの視点からは、右側の辺6aのほうが左側の辺6bよりも長く見える。また、表示面12が運転手Dの視点の左斜め前方且つ下方に位置するために、運転手Dの視点からは、右側の辺6aのほうが左側の辺6bよりも下方に位置するように見える。このため、図30に示す図形と同じ形状の像37を結像することによって、表示面12に表示された長方形6と像37とが運転手Dの視点から同じ形状に見えるようにすることができる。また、位置検出センサ21が感度を有する位置21sは、利用者である運転手Dの視点から像37が結像していると認識される位置に対応するように定めることができる。
【0131】
(変形例2)
像37が異なる複数の方向から視認されることが想定される場合、像37は、複数の方向のうち1つから視認しやすい部分と、複数の方向のうち他の1つから視認しやすい部分とを含んでいてもよい。例えば図31に示すように、空中入力表示装置10及び空中入力装置20が、自動車90の車室内であって自動車90の前方に設けられて運転席S1に座る運転手D及び助手席S2に座る人物P1に視認される表示装置11に適用される場合が考えられる。この場合、像37は、運転席S1から視認しやすい運転席向け部分37eと、助手席S2から視認しやすい助手席向け部分37dとを含んでいてもよい。この場合、像37のうち運転席向け部分37eの形状及び運転手Dの視点に対する位置関係として、矛盾しない限り、実施の形態及び変形例において上述した像37の形状及び運転手Dの視点に対する位置関係を採用することができる。また、像37のうち助手席向け部分37dの形状及び助手席S2に座る人物P1の視点に対する位置関係として、矛盾しない限り、実施の形態及び変形例において上述した像37の形状及び運転手Dの視点に対する位置関係を採用することができる。
【0132】
図31に示すように、像37が運転席向け部分37eと助手席向け部分37dとを含む場合、第5の実施の形態として上述した方法によって、運転席向け部分37eのみを結像させたり、助手席向け部分37dのみを結像させたりすることが可能であってもよい。すなわち、光源31は、第1光源311と、第1光源311とは異なる位置に位置する第2光源312と、を含んでもよい。そして、ホログラムシート40は、第1光源311からの光によって運転席向け部分37eを結像し、第2光源312からの光によって助手席向け部分37dを結像することが可能であってもよい。
【0133】
(変形例3)
上述の実施の形態においては、空中入力装置20を表示装置11に設けて空中入力表示装置10とする例について説明した。また、上述の実施の形態及び各変形例においては、空中入力装置20を車両に設けられた表示装置11に設ける例について説明した。しかしながら、空中入力装置20は、表示装置11に設けられなくてもよい。図32は、変形例3に係る空中入力装置20を示す図である。図32は、空中入力装置20が適用された自動車90の、運転席S1、助手席S2及び後部座席S3、S4が位置する範囲を、上方から見た様子を示している。図32においては、光源31及び位置検出センサ21の図示は省略している。
【0134】
変形例3において、空中入力装置20は、車両に設けられ且つ透明な透明部材95を備えている。一例として、透明部材95は、車両に既設の板状の透明な部材である。透明部材95は、例えばガラス製または樹脂製である。図32に示す例においては、運転席S1及び助手席S2と後部座席S3、S4との間を仕切るパーテーション93、並びに自動車90の後部座席S3、S4の側方のサイドウィンドウ94が、透明部材95に相当する。ホログラムシート40は、透明部材95の面上に設けられる。
【0135】
図32に示す例においては、パーテーション93とパーテーション93の面上に設けられたホログラムシート40とを有する空中入力装置20が、後部座席S3、S4に座る人物P2、P3に向けて、像37を結像している。図32の後部座席S3の右方のサイドウィンドウ94と当該サイドウィンドウ94の面上に設けられたホログラムシート40とを有する空中入力装置20が、後部座席S3、S4に座る人物P2、P3に向けて、像37を結像している。図32の後部座席S4の左方のサイドウィンドウ94と当該サイドウィンドウ94の面上に設けられたホログラムシート40とを有する空中入力装置20が、自動車90の外方に像37を結像している。
【0136】
図32に示す空中入力装置20のホログラムシート40は、例えば自動車90のドアの開閉を選択させる表示を結像する。利用者が像37を指等で指すと、位置検出センサ21による利用者が指した位置の検出結果に基づいて、自動車90のドアの開閉がされる。これによって、像37を視認した後部座席S3、S4に座る人物P2、P3や自動車90の外方の人物は、空中入力装置20を用いて、自動車90のドアの開閉を行うことができる。
【0137】
透明部材95とホログラムシート40とを備える空中入力装置20によれば、パーテーション93やサイドウィンドウ94等の既設の透明部材95を用いて、車両に空中入力装置20を設けることができる。また、空中入力装置20に既設の透明部材95を用いた場合であっても、ホログラムシート40が透明であることにより、空中入力装置20を透明とすることができる。このため、例えば空中入力装置20にパーテーション93を用いた場合であっても、パーテーション93を介して運転席S1及び助手席S2から後部座席S3、S4を見ることができるし、後部座席S3、S4から運転席S1及び助手席S2を見ることができる。また、空中入力装置20にサイドウィンドウ94を用いた場合であっても、サイドウィンドウ94を介して車室内から車外を見ることができる。
【0138】
空中入力装置20が後部座席S3、S4に座る人物P2、P3や車外の人物に向けて像37を結像する場合には、像37の視野角や光源31の位置は、空中入力装置20に起因する光が運転手Dの視野を遮ることが抑制されるように調整されることが好ましい。一例として、図32に示すパーテーション93とパーテーション93の面上に設けられたホログラムシート40とを有する空中入力装置20は、以下のように調整されていることが好ましい。像37がパーテーション93よりも自動車90の前方において視認されることがないように、像37の視野角が調整されることが好ましい。また、光源31からの光がパーテーション93よりも自動車90の前方に漏れることがないように、光源31の位置が調整されることが好ましい。
【0139】
図32に示すように車外に像37を結像する場合、空中入力装置20は、反射型ホログラムであるホログラム層45を有するホログラムシート40と、車外に位置する光源31と、を用いて像37を結像することができる。空中入力装置20は、透過型ホログラムであるホログラム層45を有するホログラムシート40と、車室内に位置する光源31と、を用いて像37を結像することもできる。空中入力装置20は、反射型ホログラムであるホログラム層45を有するホログラムシート40と、車室内に位置する光源31と、を用いて像37を結像することもできる。
【0140】
車外に像37を結像する空中入力装置20の一例について、より具体的に説明する。図33a及び図33bは、反射型ホログラムであるホログラム層45を有するホログラムシート40と、車室内に位置する光源31と、を用いて車外に像37を結像する空中入力装置20の一例を示す断面図である。図33a及び図33bに示す例において、空中入力装置20は、ハーフミラー96を備える。図33a及び図33bに示すホログラムシート40は、車室内に配置されている。ホログラムシート40は、シート面40aとして第1シート面40a1と第2シート面40a2とを有する。ホログラムシート40は、第1シート面40a1側からの光の入射を受けて第1シート面40a1側に像37を結像するように構成されている。
【0141】
図33aに示す例において、ホログラムシート40は、第1シート面40a1側を透明部材95に向けて配置されている。ハーフミラー96は、ホログラムシート40と透明部材95との間に配置されている。この場合、光源31からの光の一部が、ハーフミラー96において反射してホログラムシート40に入射する。そして、ホログラムシート40に入射して回折された光の一部がハーフミラー96を透過して、像37を結像する。
【0142】
図33bに示す例において、ホログラムシート40は、第2シート面40a2側を透明部材95に向けて配置されている。ハーフミラー96は、ホログラムシート40の第1シート面40a1側に配置されている。この場合、光源31からの光の一部が、ハーフミラー96を透過してホログラムシート40に入射する。そして、ホログラムシート40に入射して回折された光の一部がハーフミラー96において反射されて、像37を結像する。
【0143】
(変形例4)
上述した実施の形態並びに各変形例においては、位置検出センサ21として、感度を有する領域が面状であるセンサを用いる例について説明した。しかしながら、位置検出センサ21の例はこれに限られず、利用者による情報を入力する動作を検出することができるセンサを広く用いることが可能である。また、複数のセンサを組み合わせて用いることもできる。
【0144】
例えば、位置検出センサ21は、モーションセンサを含んでいてもよい。モーションセンサは、利用者の映像を撮影し、撮影した映像を解析して利用者の動きを検出することにより、利用者による情報を入力する動作を検出する。
【0145】
位置検出センサ21としてモーションセンサを用いることの効果について説明する。位置検出センサ21として感度を有する領域が面状であるセンサを用いる場合には、図9に示すように、位置検出センサ21を結像位置38の側方に配置する必要が生じる。このため、表示面12に平行な方向における空中入力装置20の寸法が大きくなる。これに対して、位置検出センサ21としてモーションセンサを用いる場合、位置検出センサ21が配置される位置は、利用者による情報を入力する動作を撮影できる位置であれば、特に限られない。このため、空中入力装置20が設けられる環境に応じて位置検出センサ21の位置を定めることができる。また、必ずしも位置検出センサ21を結像位置38の側方に配置する必要はないため、表示面12に平行な方向における空中入力装置20の寸法を小さくすることができる。
【0146】
また、モーションセンサによれば、指に限らず入力ペンや義手等によって情報を入力する動作を検出することができる。
【0147】
また、モーションセンサによれば、位置検出センサ21として感度を有する領域が面状であるセンサを用いる場合と比較して、面状の領域に限らず、三次元空間において利用者による情報を入力する動作を検出することができる。このため、モーションセンサによれば、三次元空間の情報を考慮することによって誤検出を低減し得る。
【0148】
モーションセンサを位置検出センサ21として用いることの効果について、特に空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合を例として説明する。像37の結像位置38とホログラムシート40との距離、すなわち図9に示す距離D1を長くすることが求められる場合がある。一例として、利用者が表示面12の付近まで手を延ばさなくても結像位置38に指等を配置できるようにする場合には、距離D1を長くする必要が生じる。また、利用者が認識する結像位置38は、利用者の視点の位置に応じて変化する。ここで、距離D1を長くする場合、利用者の視点の位置の変化に応じた利用者が認識する結像位置38の変化が、大きくなる。この場合、利用者が情報の入力を意図して結像位置38に指等を配置したときの指等の位置も、利用者の視点に応じて大きく変化する。モーションセンサを位置検出センサ21として用いることによって、三次元空間の情報を考慮することができるため、上記の通り利用者の視点に応じて利用者が指等を配置する位置が変化する場合においても、誤検出を低減することができる。
【0149】
また、モーションセンサによれば、利用者が情報の入力を意図して像37に対して行う多様な動作を、正確に検出することができる。例えば、利用者が情報の入力を意図して像37に対して行う動作として、指等で像37の一部を指す動作以外にも、スワイプ、ピンチイン、ピンチアウト、像37を引っ張る動作、像37を回転させる動作等の、多様な動作ができるようにすることも考えられる。このような場合に、モーションセンサを位置検出センサ21として用いることによって、三次元空間の情報を考慮して、利用者の動作を正確に検出することができる。
【0150】
以下、位置検出センサ21としてモーションセンサを用いた空中入力装置20について、空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合を例として説明する。図34には、位置検出センサ21としてモーションセンサを用いる空中入力表示装置10の分解斜視図が示されている。図34に示す例において、像37は、入力スイッチを示す。そして、位置検出センサ21は、入力スイッチに対する利用者の動作を検出する。図34に示す例において、像37は、ダイヤル式の入力スイッチを示している。この場合、利用者は、像37が結像されている位置において、像37が示す入力スイッチを回転させる動作を行う。位置検出センサ21がモーションセンサであることによって、位置検出センサ21を用いて利用者による入力スイッチを回転させる動作を検出することができる。このため、利用者は、入力スイッチを回転させる動作によって、空中入力表示装置10に情報を入力することができる。
【0151】
また、モーションセンサを位置検出センサ21として用いるとともに、アイトラッキングにより利用者の視点を把握することによって、さらに誤検出を低減することができる。この場合、空中入力装置20は、アイトラッキング実行手段をさらに備えてもよい。特に、図9に示す距離D1を長くする場合に、モーションセンサとアイトラッキングとを組み合わせることによって、さらに誤検出を低減することができる。なお、アイトラッキングを行う場合には、アイトラッキングの結果に応じて、光源31のオンオフや、ホログラムシート40により結像される像37の変更を行うことができる。例えば、アイトラッキングの結果として利用者が表示面12を見ていないことが検出された場合には光源31をオフにし、利用者が像37や表示面12を見ていることが検出された場合には光源31をオンにすることができる。また、第5の実施の形態として上述したように、ホログラムシート40が異なる複数の像37を結像することができる場合には、空中入力装置20は以下のように動作することもできる。まず、アイトラッキングによって利用者の視点の位置を把握する。そして、ホログラムシート40が結像できる像37のうち、把握された視点の位置から視認しやすい像37を選択して結像させる。
【0152】
(変形例5)
空中入力装置20は、特に表示装置11に設けられる場合に、ホログラムシート40に重ねられた加飾シート60をさらに備えてもよい。図35は、加飾シート60を備える空中入力装置20の、加飾シート60、表示装置11及びホログラムシート40を示す図である。図35に示す例においては、ホログラムシート40に関し、表面層47、接合層43及び接着層49については図示を省略して、ホログラム層45及び基材層41のみを図示している。加飾シート60は、加飾部材70によって表示される意匠を形成されている。加飾シート60はシート状である。加飾シート60は、シート状のホログラムシート40に、表示面12に垂直な垂直方向DAに重ねられている。図35に示す例において、加飾シート60が、ホログラムシート40と表示装置11との間に位置している。加飾シート60は、表示装置11に粘着層等を介して貼合されていてもよい。また、ホログラムシート40は、加飾シート60に粘着層等を介して貼合されていてもよい。例えば、ホログラムシート40は、図7に示す接着層49によって加飾シート60に貼合されていてもよい。ホログラムシート40と加飾シート60とを併せて、加飾部材70とも称する。
【0153】
加飾部材70の可視光透過率を、50%以下としてもよく、45%以下としてもよく、40%以下としてもよい。加飾部材70の全光線透過率に上限を設定することにより、加飾部材70の豊かな意匠表現を可能にし、とりわけ濃い黒色の意匠を表示できる。図示された例では、加飾部材70によって表示装置11を隠蔽できる。
【0154】
表示装置11と組み合わせて用いられる加飾部材70は、表示面12から射出する画像光を透過させる。利用者は、加飾部材70を介して、表示面12に表示される画像を透過観察可能である。加飾部材70の可視光透過率を、10%以上としてもよく、15%以上としてもよく、20%以上としてもよい。加飾部材70の可視光透過率に下限を設定することにより、表示装置11によって表示される画像の視認性を十分に確保できる。可視光透過率の上限値のいずれかと、可視光透過率の下限値のいずれかと、を任意に組み合わせて、加飾部材70の可視光透過率の範囲を設定できる。
【0155】
本明細書で用いる「透明」や「可視光透過性」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。
【0156】
図35乃至図37に示すように、加飾シート60は、意匠を表示する加飾層64を有している。加飾部材70によって表現される意匠は、加飾層64に形成されている。垂直方向DAからの観察において加飾層64が表示面12を覆うように、加飾シート60は表示装置11に重ねられる。表示装置11が非表示状態にある場合、加飾シート60は表示装置11を隠蔽して、意匠を表示する。
【0157】
加飾層64は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として設けられてもよい。加飾層64は、背景を表示する意匠表現を行ってもよい。例えば、空中入力装置20が設けられる周辺環境と加飾シートを調和させることができる意匠として、木目絵柄、レザー(皮シボ)絵柄、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目絵柄、砂目絵柄、タイル貼絵柄、煉瓦積絵柄、布目絵柄、幾何学絵柄等を、加飾層64が表示してもよい。加飾層64は、印刷によって形成されてもよい。加飾層64は、転写によっても形成されてもよい。
【0158】
図35及び図36に示すように、加飾シート60は、加飾層64と積層された基材62を更に含んでもよい。基材62は加飾層64を支持する。基材62はシート状である。基材62として、樹脂製のフィルムを用いることができる。基材62の材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等が例示される。基材62の垂直方向DAに沿った厚さを、20μm以上250μm以下としてもよい。
【0159】
加飾シート60は、加飾層64を被覆する機能層(図示せず)を更に含んでもよい。機能層は、種々の機能を期待され得る。種々の機能としては、ハードコート機能、反射防止機能、防眩機能、帯電防止機能、防汚機能等が例示される。機能層は加飾シート60の最表面層でもよい。最表面層としての機能層は、対擦傷性等を有したハードコート層としてもよい。
【0160】
図35は、加飾シート60の一例を示している。図35に示された図示された加飾シート60は、基材62及び加飾層64を有している。加飾層64は、第1意匠層67A及び第2意匠層67Bを含んでいる。第2意匠層67Bが、第1意匠層67Aと、加飾部材70の観察者となる利用者と、の間に位置している。
【0161】
第1意匠層67Aは黒色や濃い茶色等の暗色でもよい。加飾シート60によって表示される意匠のL表色系におけるLの値が30以下となるように、更にはLの値が10以下となるように、第1意匠層67Aの色が調整されてもよい。加飾シート60によって表示される意匠のL表色系におけるaの値が-1以上1以下となるように、第1意匠層67Aの色が調整されてもよい。加飾シート60によって表示される意匠のL表色系におけるbの値が-1以上1以下となるように、第1意匠層67Aの色が調整されてもよい。
【0162】
加飾シート60が表示する意匠のL表色系におけるLの値、aの値およびbの値は、次のようにして特定する。まず、加飾シート60の垂直方向DAにおいて使用者100に対面する表面とは反対側の表面に、黒色シートを貼り合わせることによって、評価用サンプルを作製する。垂直方向DAにおいて利用者に対面する表面から評価用サンプルに光を照射し、評価表サンプルからの反射光を測定することによって、Lの値、aの値およびbの値を特定する。Lの値、aの値およびbの値の特定には、分光測色計(コニカミノルタ製「CM-700d」)を用いる。この分光測色計で特定された値を、Lの値、aの値およびbの値とする。黒色シートは、評価用サンプルと同様にして分光測色計(コニカミノルタ製「CM-700d」)を用いて特定されたL表色系における明度Lの値が30であるものを用いる。
【0163】
第1意匠層67Aは、色材を有している。色材として、種々の色材、例えば顔料や染料を用いてもよい。第1意匠層67Aが、シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料を含有し、黒色の意匠を表示してもよい。第1意匠層67Aが、黒色顔料であるカーボンブロック及びシアン顔料を含有し、黒色の意匠を表示してもよい。
【0164】
第1意匠層67Aの色材が分散される母材として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。第1意匠層67Aは、母材及び色材を含む樹脂組成物を印刷することによって形成され得る。第1意匠層67Aの垂直方向DAに沿った厚さを、1μm以上10μm以下としてもよい。
【0165】
印刷層として作製された第1意匠層67Aは、背景を表示する意匠表現を行ってもよい。例えば、空中入力装置20が設けられる周辺環境と加飾シート60を調和させることができる意匠は、上述したとおりである。一例として、木目調や石目調の絵柄、質感、幾何学模様を、第1意匠層67Aが黒色の濃淡パターン等によって表現してもよい。
【0166】
第1意匠層67Aは、基材として機能してもよい。色材が練り込まれた樹脂シートによって、第1意匠層67Aを構成してもよい。この例において、加飾シート60から基材62を省略してもよい。この例における第1意匠層67Aの垂直方向DAに沿った厚さを、20μm以上250μm以下としてもよい。
【0167】
第2意匠層67Bは、第1意匠層67Aの観察者側、すなわち空中入力装置20の利用者側に配置されている。上述したように、第1意匠層67Aによって黒色等の色調を表現できる。この第1意匠層67Aと組合せて使用される第2意匠層67Bは、図形、パターン、デザイン、絵、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を表示し得る。第2意匠層67Bは、第1意匠層67Aと同様に、母材と色材とを含む。色材として、種々の顔料や染料を用いてもよい。第2意匠層67Bは、転写や印刷等によって、第1意匠層67A上に作製され得る。第1意匠層67Aの垂直方向DAに沿った厚さは、0.5μm以上10μm以下としてもよい。第2意匠層67Bは、加飾シート60から省いてもよい。
【0168】
図36及び図37には、加飾シート60の他の例が開示されている。図36及び図37に示された加飾シート60は、基材62及び加飾層64を有している。加飾層64は、意匠層67及び遮光層69を含んでいる。意匠層67は、上述した第1意匠層67Aや第2意匠層67Bと同様に構成してもよい。
【0169】
遮光層69は、意匠層67の背面側に配置されている。背面側とは、垂直方向DAにおいて観察者である空中入力装置20の利用者側とは反対側のことである。遮光層69は、表示装置11側から意匠層67を覆っている。遮光層69は、表示装置11からの画像光が意匠層67に入射しないよう、光を吸収する機能を有してもよい。遮光層69は、母材と光吸収粒子とを含んでもよい。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。
【0170】
遮光層69の母材の材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。遮光層69の厚さは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0171】
図36及び図37に示された例において、加飾層64には、開口部65が形成されている。表示装置11からの画像光は、開口部65を通過することで加飾シート60を透過する。画像光は、遮光層69に入射すると吸収され得る。これにより、表示装置11によって表示される画像の色変化を抑制できる。また、意匠層67によって形成される意匠を濃く明瞭に表示できる。
【0172】
図36及び図37に示された例において、加飾層64は、意匠を形成する加飾部64Aと、加飾部64Aの非形成部としての透過部64Bと、を含んでいる。加飾部64Aは、加飾層64のうちの開口部65が設けられていない領域によって形成されている。透過部64Bは、加飾層64のうちの開口部65が設けられている領域によって形成されている。加飾部64Aは、加飾層64が形成されている部分である。透過部64Bは、加飾シート60のうちの表示装置11からの画像光が透過する部分となる。透過部64Bは、可視光透過性を有している。
【0173】
図37は、図36の加飾シート60を示す部分平面図である。図37に示すように、平面視における加飾シート60は、加飾部64A及び透過部64Bに区分けされ得る。図示された例において、開口部65の位置、形状及び面積が、それぞれ、透過部64Bの位置、形状および面積を決めている。開口部65の平面視の形状は特に限定されない。例えば、開口部65の平面視形状として、円形状、楕円形状等の曲線輪郭を含んだ形状、三角形形状、四角形形状、五角形形状、六角形形状、八角形形状等の多角形形状、多角形形状の角を面取りした形状等が、例示される。ただし、光学特性の等方性を確保する上で、孔の平面視形状は円形状であることが好ましい。図37に示された例において、開口部65の平面視形状は円である。
【0174】
平面視における加飾層64の面積に対する開口部65が占める面積の割合を、加飾層64の開口率と定義する。各開口部65の面積は、垂直方向DAへの投影において加飾層64を貫通している部分の面積とする。すなわち、垂直方向DAの全厚みに亘って加飾層64を貫通している領域であって、垂直方向DAに進む光が加飾部64Aに入射することなく加飾層64を通過し得る領域の面積を、各開口部65の面積とする。加飾層64の開口率の上限値は、好ましくは、表示装置11が画像を表示していない状態で十分明瞭に加飾層64の意匠を観察し得るよう決定される。加飾層64の開口率を、50%以下としてもよく、40%以下としてもよく、30%以下としてもよい。加飾層64の開口率の下限値は、好ましくは、表示装置11が画像を表示している状態で十分明瞭に画像を観察し得るよう決定される。加飾層64の開口率を、好ましくは3%以上としてもよく、5%以上としてもよく、10%以上としてもよい。開口率の上限値のいずれかと、開口率の下限値のいずれかと、を任意に組み合わせて、加飾層64の開口率の範囲を設定できる。
【0175】
図36及び図37に示された加飾シート60の開口部65は、レーザー光の照射や、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングによって、形成され得る。
【0176】
加飾シート60を備える空中入力装置20の効果について説明する。利用者による入力が実施されていない状態において、表示装置11は、画像を表示していない非表示状態になり得る。このとき、図1に示すように、空中入力装置20の加飾部材70には、透明なホログラムシート40を介し、加飾シート60の意匠が観察される。図示された例において、利用者は、加飾シート60の加飾層64によって表示される意匠を観察する。加飾シート60は、印刷等の豊かな表現力により、優れた意匠を形成することができる。加飾シート60の意匠表現により、周囲環境との調和や統一性が確保され、更には加飾部材70を設置した環境に優れた意匠性を付与できる。加えて、表示装置11は、加飾シート60によって隠蔽される。すなわち、加飾部材70によれば、周囲環境との調和や統一性を確保しながら、表示装置11を設置できる。昨今では空中入力装置20の適用範囲が急速に広がっており、加飾部材70を用いることによって、意匠性が重視される自動車の内装、建物の内装、家具、家電製品等に空中入力装置20を適用できる。
【0177】
(変形例6)
図示された例において、光源31として点光源が用いられていた。しかしながら、光源31は、この例に限られない。図38に示すように、面状の発光面31cを有した面光源装置32を光源31として用いてもよい。面光源装置32を光源31として用いた空中入力装置20について、特に空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合を例として説明する。面光源装置32は、主たる構成要素として、導光板31a及び発光体31bを有している。発光体31bから射出した光が、導光板31a内に入射する。光は、導光板31a内から少しずつ出射しながら導光板31a内を進む。導光板31aから出射した光の進行方向を、光学部材等を用いて、集光させてよい。これにより、明瞭に観察される像37を生成できる。図38に示された空中入力装置20において、表示装置11、ホログラムシート40及び面光源装置32がこの順で垂直方向DAに重ねられている。図38に示すような空中入力装置20は、例えば空中入力装置20を自動車90の車室内に設ける場合のような、光源31として点光源を配置する空間が制限されている場合に、特に有効である。
【0178】
(変形例7)
空中入力装置20は、図39及び図40に示すように、光の進行方向を制御する光制御シート81をさらに備えてもよい。光制御シート81を備える空中入力装置20について、特に空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合を例として説明する。光制御シート81は、所定の方向を中心とした狭い角度範囲内を進む光のみを透過させることで、光の進行方向を制御する。光制御シート81はシート状である。一例として、光制御シート81は、シート面に沿う方向に配列された多数の遮光部を有する。遮光部の断面形状は、高アスペクトを有する。この場合、遮光部の間を通過する光以外の光は遮光部によって遮られるため、光制御シート81を透過する光は狭い角度範囲内を進む光のみとなる。図39に示された空中入力装置20において、表示装置11、ホログラムシート40及び光制御シート81がこの順で垂直方向DAに重ねられている。図40に示された空中入力装置20において、表示装置11、光制御シート81及びホログラムシート40がこの順で垂直方向DAに重ねられている。
【0179】
空中入力装置20が光制御シート81を備えることによって、光源31からの光や外光が表示装置11の表示面12において反射して利用者の目に到達し、像37や表示面12が見にくくなることを、防ぐことができる。また、表示装置11の表示面12が発する光の出射角度範囲を狭くして、表示面12の覗き見防止の効果を得ることもできる。
【0180】
(変形例8)
空中入力装置20は、図41及び図42に示すように、光源31からの光や外光が表示装置11の表示面12、透明部材95の面及びホログラムシート40の面において反射することを妨げる、反射防止層82をさらに備えてもよい。反射防止層82を備える空中入力装置20について、特に空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合を例として説明する。図41に示された反射防止層82は、ホログラムシート40の表示面12と対面するシート面40a上に設けられている。図41に示された反射防止層82は、ホログラムシート40のシート面40aにおける光源31からの光や外光の反射を防止する。図42に示された反射防止層82は、表示装置11の表示面12上に設けられている。図42に示された反射防止層82は、表示面12における光源31からの光や外光の反射を防止する。反射防止層82によって、光源31からの光や外光が表示装置11の表示面12やホログラムシート40の面において反射して利用者の目に到達し、像37や表示面12が見にくくなることを、防ぐことができる。図41及び図42に示す反射防止層82は、特に、ホログラムシート40と表示装置11との間に隙間が開けられている場合に設けられる。
【0181】
(変形例9)
図7に示すホログラムシート40の基材層41として、色の付された基材を用いてもよい。基材層41として色の付された基材を用いることで、基材層41の可視光透過率を小さく抑えることができる。特に空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合において、表示装置11が発する光は、基材層41を一度通過すれば利用者の目に到達する。一方で、光源31からの光や外光が表示装置11の表示面12において反射して利用者の目に到達する場合には、基材層41を二度通過する必要が生じる。このため、基材層41として可視光透過率が小さく抑えられた基材を用いることによって、表示装置11が発する光を利用者の目に到達させつつ、表示装置11の表示面12において反射する光を効果的に減少させることができる。
【0182】
(変形例10)
空中入力装置20が表示装置11に設けられている場合において、一般的な表示装置11の表示面12上には、表示面12の周辺を覆う額縁83と、表示面12及び額縁83を覆って表示面12を保護するカバーパネル84とが設けられる場合がある。額縁83は、例えば表示面12の周辺を保護するベゼルである。カバーパネル84は、例えば樹脂またはガラスから構成される板状の部材である。表示面12上に額縁83及びカバーパネル84が設けられる表示装置11は、例えば自動車90のナビゲーション装置である。表示面12上に額縁83及びカバーパネル84が設けられる場合、ホログラムシート40は、図43に示すように表示面12と額縁83との間に配置することができる。ホログラムシート40は、図44に示すようにカバーパネル84と額縁83との間に配置してもよい。
【0183】
(変形例11)
空中入力装置20に用いられるホログラムシート40には、アライメントマーク85が設けられていてもよい。一例として、図45に示すように、空中入力装置20の1つに備えられるホログラムシート40と、空中入力装置20の他の1つに備えられるホログラムシート40とは、連続した状態で形成される。連続した状態で形成された複数のホログラムシート40は、互いから切り離された上で、空中入力装置20に組み込まれる。図45に示す一点鎖線L5は、ホログラムシート40が切り離される位置を示している。図45に示す例において、空中入力装置20の1つに備えられるホログラムシート40は、矩形の形状を有する。そして、図45に示す例において、アライメントマーク85は、矩形の形状を有するホログラムシート40の角部に設けられている。アライメントマーク85は、十字型の記号である。アライメントマーク85は、複数のホログラムシート40を互いから切り離すときの切断位置、またはホログラムシート40を空中入力装置20に組み込むときの位置合わせの目安にすることができる。
【符号の説明】
【0184】
10 空中入力表示装置
11 表示装置
12 表示面
20 空中入力装置
21 位置検出センサ
25 通知手段
30 空中結像装置
31 光源
311 第1光源
312 第2光源
37 像
38 結像位置
39 結像面
40 ホログラムシート
40a シート面
41 基材層
43 接合層
45 ホログラム層
47 表面層
49 接着層
95 透明部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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