(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180988
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ及び乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221130BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221130BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B60N2/90
F16F15/02 C
F16F15/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087798
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】516303716
【氏名又は名称】アディエント・エンジニアリング・アンド・アイピー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】船藤 達夫
【テーマコード(参考)】
3B087
3J048
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3J048AA02
3J048AD07
3J048BF02
3J048CB07
3J048EA36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シートアレンジに伴うシートバックの回動動作で不要な衝突音が生じないダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパ91は、金属の板状のベース部11とベース部の第1の方向の両端部それぞれから互いに対向するよう折り曲げられた第1対向壁部12及び第2対向壁部14とを有するブラケット1と、錘21と、錘を覆う錘被覆部221と、錘被覆部と第1対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第1支持体P1と、錘被覆部と第2対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第2支持体P2と、錘被覆部とベース部とを弾性的に連結する連結柱である第3支持体P3と、を有するダンパ本体2を備えている。錘は、第1支持体、第2支持体、及び第3支持体によってブラケットに支持されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の板状のベース部と、前記ベース部の第1の方向の両端部それぞれから互いに対向するよう折り曲げられた第1対向壁部及び第2対向壁部とを有するブラケットと、
錘と、前記錘を覆う錘被覆部と、前記錘被覆部と前記第1対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第1支持体と、前記錘被覆部と前記第2対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第2支持体と、前記錘被覆部と前記ベース部とを弾性的に連結する連結柱である第3支持体と、を有するダンパ本体と、
を備え、
前記錘は、第1支持体,第2支持体,及び第3支持体によって前記ブラケットに支持されているダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記第1支持体,前記第2支持体,及び前記第3支持体のいずれかは、複数の前記連結柱で構成されている請求項1記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
シートクッションと、シートバックフレーム及び前記シートバックフレームに取り付けられた請求項1又は請求項2記載のダイナミックダンパを有するシートバックを備え、
前記ダイナミックダンパは、前記第1の方向が前記シートバックフレームの長手方向であり前記ベース部が前記シートバックフレームの表側を向く姿勢で取り付けられている乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイナミックダンパ及び乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ダイナミックダンパを備えた乗り物用シートが記載されている。特許文献1に記載されたダイナミックダンパは、シートバックの内部のフレームに固定配置されており、天板と天板の両端から折り曲げられて対向する一対の側板とを有するブラケットと、一対の側板とゴム弾性体で連結されて天板と対向するよう配置された質量金具(錘)とを有する。
【0003】
特許文献1に記載されたダイナミックダンパは、シートバックが通常の起立姿勢にあるときに、そのシートバックの内部にブラケットの天板を前側とし一対の側板が上下となる姿勢でフレームに固定され配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車に搭載された乗り物用シートには、多様なシートアレンジによって、シートバックを水平姿勢に前倒し回動させてテーブル状態にできるものがある。
このようなシートバックの前倒し回動は、乗員によって勢いよく行われることが多く、所定の水平姿勢になるとロック機構が働いて回動は急停止する。そのため、特許文献1に記載されたダイナミックダンパは、錘が慣性力によってブラケットの天板に勢いよく衝突して、不要な衝突音が発生しやすい。これは、シートバックを後倒し回動させて簡易ベッド状態にする動作でも、錘がフレームに衝突して同様の不要な衝突音が発生する虞がある。
そのため、シートアレンジに伴うシートバックの回動動作で不要な衝突音が生じないダイナミックダンパ及び乗り物用シートが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 金属の板状のベース部と、前記ベース部の第1の方向の両端部それぞれから互いに対向するよう折り曲げられた第1対向壁部及び第2対向壁部とを有するブラケットと、
錘と、前記錘を覆う錘被覆部と、前記錘被覆部と前記第1対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第1支持体と、前記錘被覆部と前記第2対向壁部とを弾性的に連結する連結柱である第2支持体と、前記錘被覆部と前記ベース部とを弾性的に連結する連結柱である第3支持体と、を有するダンパ本体と、
を備え、
前記錘は、第1支持体,第2支持体,及び第3支持体によって前記ブラケットに支持されているダイナミックダンパである。
2) 前記第1支持体,前記第2支持体,及び前記第3支持体のいずれかは、複数の前記連結柱で構成されている1)に記載のダイナミックダンパである。
3) シートクッションと、シートバックフレーム及び前記シートバックフレームに取り付けられた1)又は2)に記載のダイナミックダンパを有するシートバックを備え、
前記ダイナミックダンパは、前記第1の方向が前記シートバックフレームの長手方向であり前記ベース部が前記シートバックフレームの表側を向く姿勢で取り付けられている乗り物用シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、シートアレンジに伴うシートバックの回動動作で不要な打音が生じない、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートの実施例であるシートSTを左前斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、シートSTが備えるダイナミックダンパ91の後面図である。
【
図3】
図3は、ダイナミックダンパ91の左側面図である。
【
図4】
図4は、ダイナミックダンパ91の周波数と左右方向の共振倍率との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ダイナミックダンパ91の周波数と上下方向の共振倍率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、変形例1のダイナミックダンパ91Aの後面図である。
【
図7】
図7は、ダイナミックダンパ91Aの左側面図である。
【
図8】
図8は、変形例2のダイナミックダンパ91Bの後面図である。
【
図9】
図9は、ダイナミックダンパ91Bの左側面図である。
【
図10】
図10は、変形例3のダイナミックダンパ91Cの後面図である。
【
図11】
図11は、ダイナミックダンパ91Cの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートを、実施例であるシートSTにより
図1を参照して説明する。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を
図1に矢印で示された方向に規定する。
図1は、シートSTを、左前斜め上方から見た斜視図である。
【0010】
シートSTは自動車などの乗り物に搭載される乗り物用シートであって、
図1に示されるようにシートクッションST1及びシートバックST2を有する。
シートクッションST1は、乗り物の床93に前後方向に延び左右方向に平行に離隔して敷設された一対のレール92,92によって、前後方向にスライド可能に支持されている。
【0011】
シートバックST2は、シートクッションST1の後端部において、後方に倒して任意の角度でロック可能なリクライニング構造で連結されている。また、シートバックST2は、シートアレンジとして、
図1の矢印DR1のように前方に倒して、後面がほぼ水平となるテーブル状姿勢にできる。
【0012】
シートバックST2の内部には、骨格となる枠状のシートバックフレームST2aとシートバックフレームST2aに固定されたダイナミックダンパ91とが収容されている。ダイナミックダンパ91は、シートバックST2において、幅方向は概ね中央位置、上下方向は中央からやや上よりの位置に配置されている。
【0013】
このダイナミックダンパ91について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、ダイナミックダンパ91の単体の後面図であり、
図3は、ダイナミックダンパ91をシートバックフレームST2aに取り付けた状態での左側面図である。
【0014】
ダイナミックダンパ91は、ブラケット1及びダンパ本体2を有する。
ブラケット1は、金属板をプレス成型することで形成され、ベース部11,上対向壁部12,上取り付け部13,下対向壁部14,下取り付け部15を有する。金属板は、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)である。
ブラケット1は、上下方向に延びる中心線CL1に対し左右対称に形成されている。
【0015】
ベース部11は、後面視で第1の方向である上下方向が長手の長方形となる平板状部位である。
上対向壁部12は、ベース部11の上端から後方に90°折り曲げられた平板状部位である。上取り付け部13は、上対向壁部12の後端から上方に90°折り曲げられた平板状部位である。
下対向壁部14は、ベース部11の下端から後方に90°折り曲げられて上対向壁部12と平行に対向する平板状部位である。下取り付け部15は、下対向壁部14の後端から下方に90°折り曲げられた平板状部位である。
すなわち、上対向壁部12及び下対向壁部14は、ベース部11の第1の方向の両端部それぞれから互いに対向するよう折り曲げられた第1対向壁部及び第2対向壁部である。
【0016】
上取り付け部13の左右方向の中央部には、上方に突出する上突出部131が形成されている。上突出部131には、中心線CL1上に、貫通孔132が形成されている。
下取り付け部15の左右方向の中央部には、下方に突出する下突出部151が形成されている。下突出部151には、中心線CL1上に、貫通孔152が形成されている。
【0017】
ダンパ本体2は、金属の塊である直方体状の錘21と、錘21の全面を覆うゴム製の被覆部22を有する。錘21を形成する金属は、例えば一般構造用圧延鋼材のSS400である。被覆部22を形成するゴムは、例えばNR/SBR(天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとのブレンドゴム)である。
【0018】
被覆部22は、錘21を覆う錘被覆部221と、第1連結柱222,第2連結柱223,第3連結柱225,第4連結柱226,及び第5連結柱228とを有する。
錘被覆部221は、上面2t,下面2d,左側面2l,右側面2r,前面2f,及び後面2kを有する。
第1連結柱222及び第2連結柱223は、円柱状であって、それぞれ錘被覆部221の上面2tに左右に離隔し上方に延びるように設けられている。
第1連結柱222及び第2連結柱223の上端部は、薄板状の上部台座224に接続しており、上部台座224はブラケット1の上対向壁部12に固定されている。
第3連結柱225及び第4連結柱226は、円柱状であって、それぞれ錘被覆部221の下面2dに左右に離隔し下方に延びるように形成されている。
第3連結柱225及び第4連結柱226の下端部は、薄板状の下部台座227に接続しており、下部台座227はブラケット1の下対向壁部14に固定されている。
【0019】
第5連結柱228は、後面視において錘21の重心Gと同じ位置において、錘被覆部221の前面2fから前方に延びる円柱状に形成されている。
第5連結柱228の前端は、薄板状の前部台座229に接続しており、前部台座229はブラケット1のベース部11に固定されている。
【0020】
図2及び
図3に示されるように、第1連結柱222,第2連結柱223,第3連結柱225,第4連結柱226,及び第5連結柱228を、それぞれ第1支持部PL1~第5支持部PL5とすると、錘21及び錘被覆部221は、ブラケット1に対し、第1支持部PL1~第5支持部PL5で弾性的に支持されている。
錘被覆部221と上対向壁部12とを連結する第1支持部PL1及び第2支持部PL2は第1支持体P1を構成している。錘被覆部221と下対向壁部14とを連結する第3支持部PL3及び第4支持部PL5は、第2支持体P2を構成している。錘被覆部221とベース部11とを連結する第5支持部PL5は、第3支持体P3を構成している。
【0021】
ブラケット1の上突出部131及び下突出部151は、シートバックST2のシートバックフレームST2aの取り付けフレームST2b及び取り付けフレームST2cに、それぞれボルトナットなどの固定具N1及び固定具N2を用いて固定されている。これにより、ダイナミックダンパ91は、シートバックST2に収容配置される。詳しくは、ダイナミックダンパ91は、上下方向がシートバックST2長手方向とされ、ベース部11が表側(背もたれ側)となる姿勢で配置される。
【0022】
シートバックフレームST2aに取り付けられたダイナミックダンパ91には、シートSTのシートアレンジにおいて、シートバックST2の前倒し回動及び後倒し回動に応じた慣性力、並びに、乗り物の挙動に応じて生じる慣性力が働く。ダイナミックダンパ91の錘21は、慣性力が働いて生じる移動が、予め設定された応答加速度で抑制されるように、錘21の質量、並びに、第1支持部PL1~第5支持部PL5の形状及び弾性係数などが設定されている。
【0023】
錘21に上下方向の慣性力が働いた場合には、第1支持部PL1及び第2支持部PL2と、第3支持部PL3及び第4支持部PL4との一方が軸方向に圧縮して他方が軸方向に伸張する。さらに第5支持部PL5は軸と直交する方向にせん断的に変形する。
これにより、錘21の上方への移動は予め設定された応答特性で適切に抑制される。
【0024】
錘21に左右方向の慣性力が働いた場合には、第1支持部PL1~第5支持部PL5は、各軸と直交する方向にせん断的に変形する。
これにより、第1支持部PL1~第5支持部PL5の弾性反発力によって錘21の左右方向の移動は、予め設定された応答特性で適切に抑制される。
【0025】
錘21に前方向又は後方向の慣性力が働いた場合には、第1支持部PL1~第4支持部PL4は、各軸と直交する方向にせん断的に変形し、第5支持部PL5は軸方向にそれぞれ圧縮又は伸張する。そのため、錘21の前後方向の移動は、予め設定された応答特性で適切に抑制される。
【0026】
このように、ダイナミックダンパ91は、ダンパ本体2とブラケット1のベース部11とが前後方向に延びる第5支持部PL5で連結されている。そのため、シートアレンジでシートバックST2を前倒し回動させても、錘21及び錘被覆部221はブラケット1のベース部11に衝突しない。また、シートバックST2を後倒し回動させても、錘21及び錘被覆部221はシートバックST2のシートバックフレームST2aなどに衝突しない。
これにより、ダイナミックダンパ91は、シートアレンジに伴うシートバックST2の回動動作で不要な衝突音は生じない。
【0027】
次に、ダイナミックダンパ91の、周波数と共振倍率との関係について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、ダイナミックダンパ91のダイナミックダンパ91の周波数と左右方向の共振倍率との関係を示すグラフである。
図5は、ダイナミックダンパ91の周波数と上下方向の共振倍率との関係を示すグラフである。いずれのグラフも、第5連結柱228を有していない従来のダイナミックダンパの特性が破線で示されている。
【0028】
図4に示されるように、左右方向において、ダイナミックダンパ91では、従来のダイナミックダンパの18Hz付近の共振倍率(約9倍)よりも小さい約7倍に抑制されたピークが19Hz付近に出現している。また、ダイナミックダンパ91は、従来のダイナミックダンパでは認められない29~30Hzに共振倍率は約2倍強の小さい共振が出現している。
図5に示されるように、長手となる上下方向において、ダイナミックダンパ91では、従来のダイナミックダンパでは19Hz付近に認められた小さなピークに替わり、19Hz付近及び28Hz付近の2ヶ所に、共振倍率が約8倍のピークが出現している。
【0029】
このように、第5支持部PL5である第5連結柱を有していても、19Hz付近にピークが発生する点で第5支持部PL5がない場合と同様の特性を維持しダイナミックダンパ91としての機能を有するものと言える。ダイナミックダンパ91は、共振倍率を第1支持部PL1~第5支持部PL5の形状及び錘21の質量などを調整して適正化することで、シートSTの共振を抑制できる。
【0030】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0031】
(変形例1)
図6及び
図7を参照してダイナミックダンパ91の変形例1であるダイナミックダンパ91Aについて説明する。
図6は変形例1のダイナミックダンパ91Aの後面図であり、
図7はダイナミックダンパ91Aの左側面図である。
【0032】
ダイナミックダンパ91Aは、ダイナミックダンパ91のダンパ本体2に換えてダンパ本体2Aを有する。ダンパ本体2Aは、錘21の全面を覆う被覆部22Aを有する。
被覆部22Aは、錘被覆部221の替わりに、第1突出部231,第2突出部232,第3突出部233,及び第4突出部234を有する錘被覆部221Aを有する。錘被覆部221Aは、上面2At,下面2Ad,左側面2Al,右側面2Ar,前面2Af,及び後面2Akを有する。
【0033】
第1突出部231は、錘被覆部221Aの後面2Akの上部に形成されている。第1突出部231は、横断面形状が概ね三角の山形状の一定形状であって、左右方向に延びる突出部である。
第3突出部233は、錘被覆部221Aの前面2Afにおいて、第1突出部231と同じ上下方向位置において同じ形状で前方に突出するように形成されている。
第2突出部232及び第4突出部234は、第1突出部231及び第3突出部233に対し、同じ形状で、錘被覆部221Aにおいて上下対称になるように形成されている。
【0034】
ダイナミックダンパ91Aは、第1~第4突出部231~234が形成されたダンパ本体2Aを有する。これにより、例えば
図7に示されるように矢印DR2で示されるような重心Gまわりに過大な回動力が働いた場合に、ブラケット1のベース部11に、薄肉の部位ではない厚肉の第3突出部233及び第4突出部234の一方が衝突する。
第3突出部233及び第4突出部234はゴムが厚く形成された部位であるから、仮に、ダンパ本体2Aが予期せぬ過大な回動力によってブラケット1に衝突した場合でも、生じる音量が抑制される。
【0035】
(変形例2)
図8及び
図9を参照してダイナミックダンパ91の変形例2であるダイナミックダンパ91Bについて説明する。
図8は変形例2のダイナミックダンパ91Bの後面図であり、
図9はダイナミックダンパ91Bの左側面図である。
【0036】
ダイナミックダンパ91Bは、ダイナミックダンパ91のダンパ本体2に換えてダンパ本体2Bを有する。
ダンパ本体2Bは、ダンパ本体2の錘21の替わりに、後面視形状が、上方の幅が狭い台形の下部に長方形を連結した形状の錘21Bが用いられている。ダンパ本体2Bは、錘21Bの全面を覆うゴム製の被覆部22Bを有する。
被覆部22Bは、錘21Bを覆う錘被覆部221Bと、第1連結柱222,第2連結柱223,第3連結柱225,第4連結柱226,及び第5連結柱228とを有する。
【0037】
錘被覆部221Bは、上面2Bt,下面2Bd,前面2Bf,及び後面2Bkを有する。また、錘被覆部221Bは、左側面及び右側面として、それぞれ上方に向かうにしたがって中心線CL1に近づく左傾斜側面2Blg及び右傾斜側面2Brgと、左傾斜側面2Blg及び右傾斜側面2Brgの下側にそれぞれ接続し中心線CL1と平行な左側面2Bl及び右側面2Brを有する。
この形状により、ダンパ本体2Bの重心GBの位置は、ダンパ本体2の重心Gの位置よりも下方にある。
第5支持部PL5である第5連結柱228は、ダンパ本体2Bの前面2Bfにおいて、ダンパ本体2よりも下方の重心GBに対応した位置に設けられている。
【0038】
ダイナミックダンパ91Bは、錘21Bの形状がダイナミックダンパ91の錘21と異なるものの、ダイナミックダンパ91と同様に、シートアレンジに伴うシートバックST2の回動動作で不要な打音は生じない。
【0039】
(変形例3)
図10及び
図11を参照してダイナミックダンパ91の変形例3であるダイナミックダンパ91Cについて説明する。
図9は、変形例3のダイナミックダンパ91Cの後面図であり、
図10は、ダイナミックダンパ91Cの左側面図である。
【0040】
ダイナミックダンパ91Cは、ダイナミックダンパ91Bのダンパ本体2Bに換えてダンパ本体2Cを有する。ダンパ本体2Cは、錘21Bの全面を覆う被覆部22Cを有する。被覆部22Cは錘21Bの全面を覆う錘被覆部221Cを有する。錘被覆部221Cは、上面2Ct,下面2Cd,前面2Cf,及び後面2Ckを有する。また、錘被覆部221Cは、左側面及び右側面として、それぞれ上方に向かうにしたがって中心線CL1に近づく左傾斜側面2Clg及び右傾斜側面2Crgと、左傾斜側面2Clg及び右傾斜側面2Crgの下側にそれぞれ接続し中心線CL1と平行な左側面2Cl及び右側面2Crを有する。
【0041】
ダイナミックダンパ91Cは、変形例2のダイナミックダンパ91Bに対し、第5支持部PL5が、一つの第5連結柱228ではなく複数(この例において3つ)の連結柱251~253の群である第5連結柱群251Gである点で異なる。
具体的には、第5支持部PL5である第5連結柱群251Gは、左右方向において重心GCと同じ位置で上方に設けられた連結柱251と、左右方向において重心GCのそれぞれ右側及び左側の下方に設けられた連結柱252及び連結柱253とを含む。連結柱251~253の先端には平板状の台座251a~253aが設けられている。台座251a~253aは、ベース部11に固定されている。
【0042】
ダイナミックダンパ91Cも、変形例2のダイナミックダンパ91Bと同様に、シートアレンジに伴うシートバックST2の回動動作で不要な打音は生じない。
【0043】
第1支持体P1は、二つの連結柱である第1連結柱222及び第2連結柱223で構成されるものに限定されない。いずれか1方のみ、又は3つ以上の連結柱で構成されていてもよい。
第2支持体P2は、二つの連結柱である第3連結柱225及び第4連結柱226で構成されるものに限定されない。いずれか1方のみ、又は3つ以上の連結柱で構成されていてもよい。
【0044】
乗り物は自動車に限定されない。第1~第5支持部PL1~PL5の形状も、柱状であればよく円柱状に限定されない。また、上部台座224,下部台座227,前部台座229や、台座251a~253aは備えてなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ブラケット
11 ベース部
12 上対向壁部
13 上取り付け部
131 上突出部
132 貫通孔
14 下対向壁部
15 下取り付け部
151 下突出部
152 貫通孔
2,2A,2B,2C ダンパ本体
2f,2Af,2Bf,2Cf 前面
2k,2Ak,2Bk,2Ck 後面
2t,2At,2Bt,2Ct 上面
2d,2Ad,2Bd,2Cd 下面
2l,2Al,2Bl,2Cl 左側面
2Blg,2Clg 左傾斜側面
2r,2Ar,2Br,2Cr 右側面
2Brg,2Crg 右傾斜側面
21,21B 錘
22,22A,22B,22C 被覆部
221,221A,221B,221C 錘被覆部
222 第1連結柱
223 第2連結柱
224 上部台座
225 第3連結柱
226 第4連結柱
227 下部台座
228 第5連結柱
229 前部台座
231 第1突出部
232 第2突出部
233 第3突出部
234 第4突出部
251G 第5連結柱群
251,252,253 連結柱
251a,252a,253a 台座
91,91A,91B,91C ダイナミックダンパ
92 レール
93 床
CL1 中心線
N1,N2 固定具
G,GB 重心
P1~P3 第1~第3支持体
PL1~PL5 第1~第5支持部
ST シート(乗り物用シート)
ST1 シートクッション
ST2 シートバック
ST2a シートバックフレーム
ST2b,ST2c 取り付けフレーム