(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181020
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】電池パックの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/244 20210101AFI20221130BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221130BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20221130BHJP
【FI】
H01M50/244 Z
H01M50/249
H01M50/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087840
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 義範
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 誠一
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AY04
5H040DD03
5H040JJ03
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA19
5H043FA04
5H043HA05F
5H043HA18F
(57)【要約】
【課題】ケース内に積層された状態で配置される複数の電池セルの端子とバスバーとの接合不良を良好に抑制して電池パックの生産効率を向上させる。
【解決手段】本開示の電池パックの製造方法は、それぞれ一面に配置された端子を有する複数の電池セルを当該一面が同方向を向くように積層して両側から圧縮し、圧縮された複数の電池セルを一面がケースの開放端側に位置するようにケース内に挿入し、複数の電池セルの一面上に、対応する端子と重なり合うように複数のバスバーを配置し、ケースの底面から最も離間した電池セルの端子の高さ位置に応じた加圧開始位置から複数のバスバーをケースの底面側に押し込むように加圧治具を加圧開始位置から移動させ、複数のバスバーの各々を対応する端子に接合するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開放されたケースと、それぞれ一面に配置された端子を有すると共に前記一面が同方向を向くように積層されて前記ケース内に収容される複数の電池セルと、それぞれ対応する前記端子に接合される複数のバスバーとを含む電池パックの製造方法において、
前記複数の電池セルを前記一面が同方向を向くように積層して両側から圧縮し、
圧縮された前記複数の電池セルを前記一面が前記ケースの開放端側に位置するように前記ケース内に挿入し、
前記複数の電池セルの前記一面上に、対応する前記端子と重なり合うように前記複数のバスバーを配置し、
前記ケースの底面から最も離間した前記電池セルの前記端子の高さ位置に応じた加圧開始位置から前記複数のバスバーを前記底面側に押し込むように前記加圧治具を移動させ、
前記複数のバスバーの各々を対応する前記端子に接合する、
電池パックの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックの製造方法において、
前記加圧開始位置から、少なくとも、前記ケースの前記底面から最も離間した前記電池セルの前記端子の高さ位置と、前記ケースの前記底面に最も近接した前記電池セルの前記端子の高さ位置との差だけ前記加圧治具を移動させる、
電池パックの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池パックの製造方法において、
前記複数の電池セルを前記ケース内に挿入した後であって、前記複数の電池セルの前記一面上に前記複数のバスバーを配置する前に、前記ケースの前記底面から最も離間した前記電池セルの前記端子から予め定められた基準面までの距離と、前記ケースの前記底面に最も近接した前記電池セルの前記端子から前記基準面までの距離とを取得する、
電池パックの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電池パックの製造方法において、
前記加圧治具は、それぞれ対応する前記バスバーを押圧する複数の押圧部を含み、
前記押圧部の各々は、前記バスバーに当接可能な押圧部材と、前記押圧部材を前記加圧治具の移動方向に移動自在に支持する支持部材と、前記押圧部材と前記支持部材との間に配置されると共に前記押圧部材の移動量に応じた荷重を発生する加圧機構とを含む、
電池パックの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックの製造方法において、
前記加圧開始位置は、前記複数の押圧部の前記押圧部材の少なくとも何れか1つが対応する前記バスバーに当接する位置である、
電池パックの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の電池パックの製造方法において、
前記加圧治具により前記複数のバスバーを押さえ付けながら、前記複数のバスバーの各々と対応する前記端子とを溶接する、
電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケースと、当該ケース内に積層された状態で収容される複数の電池セルとを含む電池パックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端が開放された被覆ケースと、それぞれ一面に配置された端子を有すると共に当該一面が同方向を向くように積層された状態で被覆ケース内に収容される複数の電池セルと、複数の電池セルを直列に接続するための複数のバスバーとを含む電池パック(電源装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電池パックの製造に際しては、まず、複数の電池セルを積層すると共に、高さ方向に下から順に並べられた複数のバインド治具で電池セルの積層体を両側から挟持する。次いで、複数のバインド治具を下側から順番に積層体から離間させながら、各電池セルの電極端子が上側(開放端側)に位置するように積層体を被覆ケース内に挿入する。そして、電池セルの積層体を押込治具により上から押圧し、当該積層体を被覆ケース内に圧入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにして製造される電池パックでは、バインドバーといった締結具が不要となることから、装置全体を小型軽量化することができる。しかしながら、上記従来の電池パックの製造に際しては、押込治具から電池セルの積層体に加えられる荷重を部品保護の観点から制限する必要があるので、当該積層体を押込治具により上から押圧して被覆ケース内に圧入しても、複数の電池セル間で電極端子の高さ位置(ケース底面からの高さ)にばらつきが生じてしまう。このため、対応する電極端子と重なり合うように積層体上にバスバーを配置した際に一部の電極端子とバスバーとの隙間が大きくなってしまい、当該一部の電極端子とバスバーとを溶接等により接合しようとしても接合不良が発生してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、ケース内に積層された状態で挿入される複数の電池セルの端子とバスバーとの接合不良を良好に抑制して電池パックの生産効率を向上させることができる電池パックの製造方法の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電池パックの製造方法は、一端が開放されたケースと、それぞれ一面に配置された端子を有すると共に前記一面が同方向を向くように積層されて前記ケース内に収容される複数の電池セルと、それぞれ対応する前記端子に接合される複数のバスバーとを含む電池パックの製造方法において、前記複数の電池セルを前記一面が同方向を向くように積層して両側から圧縮し、圧縮された前記複数の電池セルを前記一面が前記ケースの開放端側に位置するように前記ケース内に挿入し、前記複数の電池セルの前記一面上に、対応する前記端子と重なり合うように前記複数のバスバーを配置し、前記ケースの底面から最も離間した前記電池セルの前記端子の高さ位置に応じた加圧開始位置から前記複数のバスバーを前記底面側に押圧するように前記加圧治具を移動させ、前記複数のバスバーの各々を対応する前記端子に接合するものである。
【0007】
本開示の電池パックの製造方法において、積層されて圧縮された複数の電池セルは、それぞれの一面がケースの開放端側に位置するようにケース内に挿入される。また、複数の電池セルの一面上には、対応する端子と重なり合うように複数のバスバーが配置される。更に、加圧治具が、複数のバスバーをケースの底面側に押圧するように移動させられる。この際、加圧治具は、ケースの底面から最も離間した電池セルの端子の高さ位置に応じた加圧開始位置から移動を開始する。これにより、複数の電池セル間で端子の高さ位置にばらつきが生じていても、ケース内で底面側に位置する電池セルの端子に重なり合うバスバーを加圧治具によって十分に押圧することが可能となる。従って、本開示の方法によれば、各端子とバスバーとの隙間を十分に小さくした状態で、バスバーと端子とを接合することができる。この結果、ケース内に積層された状態で挿入される複数の電池セルの端子とバスバーとの接合不良を良好に抑制して電池パックの生産効率を向上させることが可能となる。
【0008】
また、前記方法は、前記加圧開始位置から、少なくとも、前記ケースの前記底面から最も離間した前記電池セルの前記端子の高さ位置と、前記ケースの前記底面に最も近接した前記電池セルの前記端子の高さ位置との差だけ前記加圧治具を移動させるものであってもよい。これにより、ケースの底面から離間している電池セルの端子に対してバスバーを過剰に押し付けてしまうのを抑制しつつ、ケースの底面に近接している電池セルの端子に重なり合うバスバーを加圧治具によって十分に押圧することが可能となる。
【0009】
更に、前記方法は、前記複数の電池セルを前記ケース内に挿入した後であって、前記複数の電池セルの前記一面上に前記複数のバスバーを配置する前に、前記ケースの前記底面から最も離間した前記電池セルの前記端子から予め定められた基準面までの距離と、前記ケースの前記底面に最も近接した前記電池セルの前記端子から前記基準面までの距離とを取得するものであってもよい。これにより、取得された距離から、ケースに対する複数の電池セルの挿入状態に応じた加圧治具の移動量を適正に定めることが可能となる。
【0010】
また、前記加圧治具は、それぞれ対応する前記バスバーを押圧する複数の押圧部を含むものであってもよく、前記押圧部の各々は、前記バスバーに当接可能な押圧部材と、前記押圧部材を前記加圧治具の移動方向に移動自在に支持する支持部材と、前記押圧部材と前記支持部材との間に配置されると共に前記押圧部材の移動量に応じた荷重を発生する加圧機構とを含むものであってもよい。これにより、バスバーに対して過剰な荷重を加えないようにしつつ、複数のバスバーの各々を対応する端子との隙間に応じて適正に加圧して当該隙間をより小さくすることが可能となる。
【0011】
更に、前記加圧開始位置は、前記複数の押圧部の前記押圧部材の少なくとも何れか1つが対応する前記バスバーに当接する位置であってもよい。
【0012】
また、前記方法は、前記加圧治具により前記複数のバスバーを押さえ付けながら、前記複数のバスバーの各々と対応する前記端子とを溶接するものであってもよい。これにより、各電池セルの端子とバスバーとの接合不良を極めて良好に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の製造方法により製造される電池パックを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の電池パックの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本開示の電池パックの製造方法を説明するための説明図である。
【
図4】本開示の電池パックの製造方法を説明するための説明図である。
【
図5】本開示の電池パックの製造方法を説明するための説明図である。
【
図6】本開示の電池パックの製造方法を説明するための説明図である。
【
図7】本開示の電池パックの製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
図1は、本開示の製造方法により製造される電池パック1を示す概略構成図である。同図に示す電池パック1は、電気自動車あるいはハイブリッド車両といった車両に搭載されて当該車両の電動機と電力をやり取りするものである。電池パック1は、図示するように、ケース2と、当該ケース2内に収容される電池スタック3とを含む。ケース2は、アルミニウム合金といった金属により形成された鋳造品であり、ケース2の一端すなわち当該ケース2の底面2bとは反対側の端部(
図1における上端)は開放されている。本実施形態において、ケース2は、単一の電池スタック3を収容するように形成されているが、複数の電池スタック3を例えば並列に収容するように形成されてもよい。
【0016】
電池スタック3は、
図1に示すように、複数の電池セル4と、電池セル4の個数よりも1つ少ない数(複数)のスペーサ(樹脂枠)5と、複数(2つ)のエンドプレート6と、複数のバスバー7とを含む。電池スタック3は、それぞれ複数の電池セル4、スペーサ5およびエンドプレート6を一方向に積層させることにより形成される。より詳細には、電池セル4およびスペーサ5は、2つのエンドプレート6の間で交互に並び、2つの電池セル4の間に1つのスペーサ5が配置される。また、複数の電池セル4は、複数のバスバー7により直列に接続される。
【0017】
電池スタック3の電池セル4は、例えば、密閉型のリチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池等であり、略直方体状に形成された金属製の筐体4cや、当該筐体の内部に収容された図示しない電極および非水電解液等を含む。また、各筐体4cの上面(一面)4uには、上記電極を形成する正極板または負極板にそれぞれ接続される2つの端子4t(
図1では、各電池セル4について1つの端子4tのみを示す。)が配置されている。各電池セル4の端子4tは、何れかのバスバー7を介して対応する電池セル4の端子4tに電気的に接続される。
【0018】
スペーサ5は、樹脂等の絶縁材料により形成されており、隣り合う2つの電池セル4を保持すると共に両者を絶縁する。更に、スペーサ5は、当該2つの電池セル4を放熱させる放熱部材としても機能する。エンドプレート6は、絶縁性を有するアルミニウム合金等の金属あるいは樹脂により形成される。複数のバスバー7は、樹脂等の絶縁材料により形成された図示しないモジュール本体により当該モジュール本体の表面および裏面で外部に露出するように一体に支持されている。すなわち、本実施形態では、複数の電池セル4が、複数のバスバー7と当該モジュール本体とを含むバスバーモジュールにより電気的に接続される。ただし、複数のバスバー7が複数の電池セル4に対して個別に設置されてもよい。
【0019】
続いて、
図2から
図7を参照しながら、電池パック1を製造するための本開示の製造方法について説明する。
【0020】
図2は、電池パック1の製造方法を説明するためのフローチャートである。電池パック1の製造に際しては、まず、各スペーサ5に電池セル4が組み付けられると共に、各電池セル4の上面4uすなわち端子4tが同じ方向(上方)を向くようにそれぞれ複数の電池セル4およびスペーサ5が積層される(ステップS100)。また、ステップS100では、隣り合う2つの電池セル4の間に1つのスペーサ5が位置するように電池セル4およびスペーサ5が積層され、電池セル4およびスペーサ5の積層体の両側にエンドプレート6が配置される。
【0021】
電池セル4、スペーサ5およびエンドプレート6の積層体は、
図3に示すように、スタック挿入装置(図示省略)に設けられた一対の拘束治具10により積層方向における両側から圧縮される(ステップS110)。更に、拘束治具10により圧縮保持された積層体は、
図4に示すように、当該スタック挿入装置によりケース2の開放端から内部に挿入(圧入)される(ステップS120)。これにより、電池セル4、スペーサ5およびエンドプレート6の積層体がケース2により圧縮された状態で保持され、電池スタック3が形成されることになる。
【0022】
ここで、電池セル4の筐体4c、スペーサ5およびエンドプレート6は、何れも弾性を有しており、それぞれの寸法にも若干のばらつきが生じている。このため、電池セル4、スペーサ5およびエンドプレート6の積層体を拘束治具10により圧縮してケース2に挿入しても、
図5および
図6に示すように、複数の電池セル4間で、上面4uの端子4tの高さ位置、すなわちケース2の底面2bから端子4tの頂部までの高さ(ケース2の深さ方向(上下方向)における距離)にばらつきが生じてしまう。これを踏まえて、本実施形態では、ケース2に対する電池スタック3の挿入(組み付け)完了後に、複数の電池セル4間における端子4tの高さ位置のばらつきを把握すべく、電池スタック3に対する形状検査が実行される(ステップS130)。
【0023】
ステップS130では、
図5に示すように、レーザ距離計等の測距装置20を用いて、複数の電池セル4ごとに、予め定められた任意の基準面Prefから端子4tの頂部までの距離が測定される。本実施形態において、基準面Prefは、測距装置20の起点を含むと共にケース2の深さ方向と直交する平面である。更に、ステップS130では、ケース2の底面2bから最も離間した電池セル4(
図5における最も上側に位置する電池セル4)の端子4tから基準面Prefまでの距離Zhと、ケース2の底面2bに最も近接した電池セル4(
図5における最も下側に位置する電池セル4)の端子4tから基準面Prefまでの距離Zlとが取得される。距離Zhは、複数の電池セル4について測定された基準面Prefから端子4tの頂部までの距離の最小値であり、距離Zlは、複数の電池セル4について測定された基準面Prefから端子4tの頂部までの距離の最大値である。また、ステップS130では、当該距離Zhと距離Zlとの差ΔZ(=Zl-Zh)が算出される。
【0024】
続いて、
図6に示すように、複数の電池セル4の上面4u上に、複数のバスバー7の各々が対応する端子4tとケース2の深さ方向(上下方向)に重なり合うようにバスバーモジュールが配置される(ステップS140)。この際、ケース2に対する電池スタック3の組み付けに伴って各電池セル4(端子4t)の高さ位置にばらつきが生じていることから、図示するように、各端子4tと対応するバスバー7との隙間にもばらつきを生じることになる。
【0025】
複数のバスバー7(バスバーモジュール)の組み付け完了後、電池スタック3を収容したケース2は、
図7に示すように、加圧溶接設備の加圧治具30の下方にセット(位置決め)される。加圧治具30は、図中上下方向(鉛直方向)すなわちケース2の深さ方向に昇降可能な移動部材31と、当該移動部材31により支持された複数の押圧部35とを含むものである。本実施形態において、移動部材31は、1つの電池スタック3に対応して当該電池スタック3の電池セル4と同数の押圧部35を支持しており、例えば電動モータ等を含む図示しない移動機構によりケース2の深さ方向に昇降させられる。
【0026】
加圧治具30の各押圧部35は、
図7に示すように、2つの押圧部材36と、2つの支持部材37と、2つの加圧機構38とを含む。各押圧部35は、2つの押圧部材36が電池スタック3の対応する電池セル4の2つの端子4tと対向するように移動部材31により支持される。また、各支持部材37は、リニアガイド等を介して、対応する押圧部材36を加圧治具30すなわち移動部材31の移動方向(上下方向すなわちケース2の深さ方向)に摺動自在(移動自在)に支持する。
【0027】
各加圧機構38は、コイルスプリング、皿バネやゴムといった弾性体を含むばね機構、あるいはサーボ機構等であり、対応する押圧部材36および支持部材37の間に配置される。各加圧機構38は、対応する押圧部材36が移動部材31側に移動するのに応じて押圧部材36の移動量(押し込み量)に応じた荷重を発生する。また、すべての押圧部35の加圧機構38が荷重を発生していない状態では、すべての押圧部材36の当接面(下端面)が概ね同一の平面内に含まれる。
【0028】
複数の電池セル4等を収容したケース2が加圧治具30の下方にセットされると、
図7に示すように、複数のバスバー7をケース2の底面2b側に押圧するように加圧治具30の移動部材31が図示しない移動機構により移動させられる(ステップS150)。ステップS150において、移動部材31がケース2に対して移動していくと、少なくとも1つの押圧部材36(の当接面)が対応するバスバー7に接触する。これにより、各押圧部材36は、当接面(下面)が上記基準面Prefから上記距離Zhに近い値だけ離間した位置、すなわちケース2の底面2bから最も離間した電池セル4の端子4tの高さ位置に応じた加圧開始位置に位置する。
【0029】
そして、ステップS150において、移動部材31は、少なくとも1つの押圧部材36(の当接面)が対応するバスバー7に接触する加圧開始位置から、各押圧部材36がケース2の底面2b側に目標移動量だけ移動(下降)するように上記移動機構によって移動(下降)させられる。本実施形態において、各押圧部材36の目標移動量は、ステップS130にて算出された差ΔZと予め定められたマージン(例えば、数ミリ)との和に設定される。これにより、加圧開始位置にて一部の押圧部材36が対応するバスバー7に接触していなかったとしても、移動部材31の移動(下降)に伴って、当該押圧部材36が対応するバスバー7に当接して当該バスバー7をケース2の底面2bに押圧していく。
【0030】
移動部材31がケース2の底面2b側に移動する間、加圧治具30の各加圧機構38は、バスバー7に当接した後の支持部材37に対する押圧部材36の移動量(押し込み量)に応じた荷重を発生し、当該荷重は、各押圧部材36から対応するバスバー7に加えられる。この結果、各押圧部材36により加圧されることで、各バスバー7が弾性変形したり、一部の電池セル4がケース2の底面2b側に押し込まれたりして、各端子4tとバスバー7との隙間が十分に小さくなっていく。
【0031】
各押圧部材36が目標移動量(ΔZ+マージン)だけ移動すると、移動部材31が停止させられる。その後、移動部材31等に形成された開口部に図示しない溶接機(例えば、レーザ溶接機)が挿入され、当該溶接機により各バスバー7が対応する端子4tに溶接されていく(ステップS160)。すなわち、各バスバー7は、対応する押圧部材36(加圧治具30)により端子4tに対して押し付けられた状態で当該端子4tに溶接される。これにより、各端子4tとバスバー7との隙間を十分に小さくした状態で、バスバー7と端子4tとを接合することができる。ステップS170における溶接処理が完了すると、1つの電池パック1の製造が完了する。
【0032】
以上説明したように、電池パック1の製造に際して、一対の拘束治具10により圧縮された複数の電池セル4等の積層体は、それぞれの上面(一面)4uがケース2の開放端側に位置するようにケース2内に挿入される(ステップS120)。また、複数の電池セル4の上面4u上には、対応する端子4tと重なり合うように複数のバスバー7が配置される(ステップS140)。更に、加圧治具30の移動部材31および複数の押圧部35が複数のバスバー7をケース2の底面2b側に押圧するように移動させられる(ステップS150)。この際、加圧治具30の各押圧部材36は、ケース2の底面2bから最も離間した電池セル4の端子4tの高さ位置(ケース2の底面2bからの高さ)に応じた加圧開始位置から移動を開始する。これにより、複数の電池セル4間で端子4tの高さ位置にばらつきが生じていても、ケース2内で底面2b側に位置する電池セル4の端子4tに重なり合うバスバー7を加圧治具30の対応する押圧部材36によって十分に押圧することが可能となる。
【0033】
すなわち、ステップS150の処理によれば、例えば各押圧部材36(加圧治具30)の加圧開始位置を底面2bから比較的遠い位置に固定すると共に移動部材31の目標移動量を電池セル4やスペーサ5の公差といった各種設計公差の総和とする場合に比べて、ケース2内で底面2b側に位置する電池セル4の端子4tに重なり合うバスバー7が加圧治具30によって十分押し込まれなくなってしまうのを良好に抑制することができる。従って、上記実施形態では、各端子4tとバスバー7との隙間を十分に小さくした状態で、バスバー7と端子4tとを溶接(接合)することが可能となり(ステップS160)、電池パック1の製造に要する時間を短縮化することができる。この結果、ケース2内に積層された状態で挿入される複数の電池セル4の端子4tとバスバー7との接合不良を良好に抑制して電池パック1の生産効率を向上させることが可能となる。
【0034】
また、ステップS150において、加圧治具30の各押圧部材36は、加圧開始位置から、少なくとも、ケース2の底面2bから最も離間した電池セル4の端子4tの高さ位置を示す距離Zhと、ケース2の底面2bに最も近接した電池セル4の端子4tの高さ位置を示す距離Zlとの差ΔZだけ移動させられる。これにより、ケース2の底面2bから離間している電池セル4の端子4tに対してバスバー7を過剰に押し付けてしまうのを抑制しつつ、ケース2の底面2bに近接している電池セル4の端子4tに重なり合うバスバー7を加圧治具30によって十分に押圧することが可能となる。
【0035】
更に、距離Zh、距離Zlおよび差ΔZは、複数の電池セル4等を含む積層体がケース2内に挿入された後であって、複数の電池セル4の一面上に複数のバスバー7が配置される前に取得される(ステップS130)。これにより、ステップS130にて取得された距離Zh,Zlから、ケース2に対する複数の電池セル4の挿入状態に応じた各押圧部材36(移動部材31)の目標移動量を適正に定めることが可能となる。なお、距離ZhおよびZlを取得するための基準面Prefは、上述のような測距装置20の起点を含む平面に限られるものではなく、例えば、ケース2の底面2bや内底面が基準面Prefとされてもよい。
【0036】
また、上記実施形態において、加圧治具30は、それぞれ対応するバスバー7を押圧する複数の押圧部35を含む。更に、各押圧部35は、バスバー7に当接可能な押圧部材36と、押圧部材36を加圧治具30(移動部材31)の移動方向に移動自在に支持する支持部材37と、押圧部材36と支持部材37との間に配置されると共に当該押圧部材36の移動量に応じた荷重を発生する加圧機構38とを含む。これにより、バスバー7に対して過剰な荷重を加えないようにしつつ、複数のバスバー7の各々を対応する端子4tとの隙間に応じて適正に加圧して当該隙間をより小さくすることが可能となる。
【0037】
そして、上記実施形態において、複数のバスバー7の各々は、加圧治具30により押さえ付けられながら、対応する端子4tに溶接される(ステップS160)。これにより、各電池セル4の端子4tとバスバー7との接合不良を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0038】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の発明は、電池パックの製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電池パック、2 ケース、2b 底面、3 電池スタック、4 電池セル、4c 筐体、4t 端子、4u 上面、5 スペーサ、6 エンドプレート、7 バスバー、10 拘束治具、20 測距装置、30 加圧治具、31 移動部材、35 押圧部、36 押圧部材、37 支持部材、38 加圧機構、Pref 基準面。