(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181031
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087855
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】森 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和善
(72)【発明者】
【氏名】森崎 想
(72)【発明者】
【氏名】小柳 聖
(72)【発明者】
【氏名】中尾 元春
(72)【発明者】
【氏名】原 瞳子
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA14
2H033AA25
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB08
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】面状発熱手段のベルト内面と圧接するベルトの移動方向に沿った下流側のエッジ部の断面形状が0.2μm以上の曲率半径を有する円弧形状に形成した場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を両立できる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転可能な無端状のベルトと、少なくとも前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が回転体に圧接され、前記ベルト内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01μm以上0.2μm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた形状に形成される面状発熱手段と、前記ベルトの内部に配置され、前記ベルトを圧接部において前記回転体に圧接するよう前記面状発熱手段を保持する保持手段と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状のベルトと、
少なくとも前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部を介して回転体に圧接され、前記ベルトの内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm以上0.2mm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた形状に形成される面状発熱手段と、
前記ベルトの内部に配置され、前記回転体に圧接するよう前記面状発熱手段を保持する保持手段と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記面状発熱手段は、前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部の内部に位置し、前記ベルトの移動方向に沿った上流側の端部が圧接部の外部に位置する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記面状発熱体は、前記ベルト内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm以上0.05mm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた複数の角部を有する形状に形成される請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記面状発熱手段は、当該面状発熱手段の長手方向と交差する方向に沿って一体的に形成された複数の前記面状発熱手段の集合体を、隣接する前記面状発熱手段の境界に長手方向に沿って形成された切り欠き溝を介し分離して形成される請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記面状発熱手段は、前記ベルト内面と接触する下流側のエッジ部が切削又は研磨加工される請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記面状発熱手段は、前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が上流側の端部より前記回転体に対して圧接量が大きい請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記保持手段は、前記回転体の回転方向に沿った上流側に変位して配置される請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項1乃至7のいずれかに記載の定着装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置に関する技術としては、例えば、特許文献1又は2等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、弾性ローラの回転軸線に対して鉛直な断面において、板状発熱体の中心位置がニップ部の中心よりも被記録材搬送方向上流側に位置し、かつ板状発熱体の被記録材搬送方向下流側端部は、ニップ部のニップ内にあり、被記録材搬送方向上流側端部は定着ニップ部のニップ外にあるよう構成したものである。
【0004】
特許文献2は、突出した加熱体の摺動部端面エッジ部の形状が、R0.2以上であるよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-078578号公報
【特許文献2】特開2006-292867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、面状発熱手段のベルト内面と圧接するベルトの移動方向に沿った下流側のエッジ部の断面形状が0.2mm以上の曲率半径を有する円弧形状に形成した場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、回転可能な無端状のベルトと、
少なくとも前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部を介して回転体に圧接され、前記ベルトの内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm以上0.2mm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた形状に形成される面状発熱手段と、
前記ベルトの内部に配置され、前記回転体に圧接するよう前記面状発熱手段を保持する保持手段と、
を備える定着装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記面状発熱手段は、前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部の内部に位置し、前記ベルトの移動方向に沿った上流側の端部が圧接部の外部に位置する請求項1に記載の定着装置である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記面状発熱体は、前記ベルト内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm以上0.05mm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた複数の角部を有する形状に形成される請求項2に記載の定着装置である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、前記面状発熱手段は、当該面状発熱手段の長手方向と交差する方向に沿って一体的に形成された複数の前記面状発熱手段の集合体を、隣接する前記面状発熱手段の境界に長手方向に沿って形成された切り欠き溝を介し分離して形成される請求項1に記載の定着装置である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、前記面状発熱手段は、前記ベルト内面と接触する下流側のエッジ部が切削又は研磨加工される請求項4に記載の定着装置である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、前記面状発熱手段は、前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が上流側の端部より前記回転体に対して圧接量が大きい請求項1に記載の定着装置である。
【0013】
請求項7に記載された発明は、前記保持手段は、前記回転体の回転方向に沿った上流側に変位して配置される請求項6に記載の定着装置である。
【0014】
請求項8に記載された発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に形成された画像を定着する定着手段と、
を備え、
前記定着手段として請求項1乃至7のいずれかに記載の定着装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、面状発熱手段のベルト内面と圧接するベルトの移動方向に沿った下流側のエッジ部の断面形状が0.2mm以上の曲率半径を有する円弧形状に形成した場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を両立することができる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、面状発熱手段は、ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部の外部に位置する場合に比べて、画質の向上を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、面状発熱体は、ベルト内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm未満又は0.05mmを超える場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を面状発熱体のエッジ部の加工量を抑えつつ達成することができる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、個々の面状発熱手段を個別に形成する場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、面状発熱手段は、ベルト内面と接触する下流側のエッジ部が切削又は研磨加工以外による場合に比べて、加工が容易となる。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、面状発熱手段は、ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が上流側の端部より回転体に対して圧接量が小さい場合に比べて、画質を確実に向上させることができる。
【0021】
請求項7に記載された発明によれば、保持手段は、回転体の回転方向に沿った上流側に変位して配置されない場合に比べて、面状発熱手段の圧接量を容易に所望の状態に設定することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載された発明によれば、定着手段として請求項1乃至7のいずれかに記載の定着装置を用いない場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る定着装置を示す断面構成図である。
【
図4】セラミックヒータの発熱部を示す平面構成図である。
【
図5】この発明の実施の形態1に係る定着装置の要部を示す断面構成図である。
【
図6】セラミックヒータの製造工程を示す模式図である。
【
図7】セラミックヒータ45のエッジ部の形状を示す拡大図である。
【
図8】定着ニップ部における加熱ベルトの歪みを示す模式図である。
【
図9】定着ニップ部の位置と加熱ベルト表面の歪みの関係を示すグラフである。
【
図10】セラミックヒータ45のエッジ部の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置を示すものである。
【0026】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、現像剤4を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。複数の作像装置10及び中間転写装置20は、記録用紙5に画像を形成する画像形成部2を構成している。なお、図中の1aは画像形成装置1の装置本体を示し、この装置本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。また、図中の二点鎖線は、装置本体1a内において記録用紙5が搬送される主な搬送経路を示す。
【0027】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これらの4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、装置本体1aの内部空間において傾斜した状態で1列に並べた状態となるよう配置されている。
【0028】
4つの作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のカラーの作像装置10(Y,M,C)と、ブラック(K)の作像装置10Kとから構成されている。ブラックの作像装置10Kは、中間転写装置20の中間転写ベルト21の移動方向Bに沿った最も下流側に配置されている。画像形成装置1は、画像形成モードとして、カラーの作像装置10(Y,M,C)及びブラック(K)の作像装置10Kを動作させてフルカラーの画像を形成するフルカラーモードと、ブラック(K)の作像装置10Kのみを動作させて白黒(モノクロ)の画像を形成する白黒モードとを備える。
【0029】
各作像装置10(Y,M,C,K)は、
図1に示されるように、像保持体の一例としての回転する感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のようなトナー像形成手段の一例としての各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤4のトナーで現像してトナー像にする現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写装置15(Y,M,C,K)と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置16(Y,M,C,K)等である。
【0030】
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない駆動装置から動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するよう支持されている。
【0031】
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。なお、帯電装置12としては、感光体ドラム11の表面に非接触状態で配置されるスコロトロン等の非接触型の帯電装置を用いてもよい。
【0032】
露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って配列された複数の発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム11に画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成するLEDプリントヘッドからなる。なお、露光装置13としては、画像情報に応じて構成されるレーザー光を感光体ドラム11の軸方向に沿って偏向走査するものを用いても良い。
【0033】
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、開口部と現像剤4の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤4を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤4を攪拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送する2つのスクリューオーガー等の攪拌搬送部材142,143と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材144などを配置して構成したものである。この現像装置14には、その現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や攪拌搬送部材142,143は、図示しない駆動装置からの動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、4色の現像剤4(Y,M,C,K)としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
【0034】
一次転写装置15(Y,M,C,K)は、感光体ドラム11の周囲に中間転写ベルト21を介して接触し回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
【0035】
ドラム清掃装置16は、一部が開口する容器状の本体160と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板161と、清掃板161で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送するスクリューオーガー等の送出部材162等で構成されている。清掃板161としては、ゴム等の材料からなる板状の部材(例えばブレード)が使用される。
【0036】
中間転写装置20は、
図1に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するよう配置される。この中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22~27と、ベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写装置30と、二次転写装置30を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置28とで主に構成されている。
【0037】
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22はベルト清掃装置28の対向ロールを兼ねる図示しない駆動装置によって回転駆動される駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23は中間転写ベルト21の画像形成面を形成する面出しロールとして構成され、ベルト支持ロール24は中間転写ベルト21に張力を付与する張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール25は二次転写装置30と対向する対向ロールとして構成され、ベルト支持ロール26,27は中間転写ベルト21の走行位置を支持する従動ロールとして構成されている。
【0038】
二次転写装置30は、
図1に示されるように、中間転写装置20におけるベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写ロール31を備えた接触型の転写装置である。また、二次転写ロール31又は中間転写装置20のベルト支持ロール25には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として図示しない電源装置から供給される。
【0039】
定着装置40は、記録用紙5の導入口及び排出口が形成された筐体41の内部に、矢印で示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるよう加熱手段によって加熱される加熱ベルト42と、この加熱ベルト42の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転する加圧ロール43などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱ベルト42と加圧ロール43が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部となる。なお、定着装置40については、後に詳述する。
【0040】
給紙装置50は、作像装置10(Y,M,C,K)の下方側の位置に存在するよう配置される。この給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体51と、用紙収容体51から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置52,53とで主に構成されている。用紙収容体51は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるよう取り付けられている。
【0041】
記録用紙5としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、あるいはOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙5の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙なども好適に使用することができる。
【0042】
給紙装置50と二次転写装置30との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する単数又は複数の用紙搬送ロール対54や搬送ガイド55で構成される給紙搬送路56が設けられている。給紙搬送路56において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対54は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。また、二次転写装置30と定着装置40との間には、二次転写装置30から送り出される二次転写後の記録用紙5を定着装置40まで搬送するための用紙搬送路57が設けられている。さらに、画像形成装置1の装置本体1aに形成される用紙の排出口に近い部分には、定着装置40から出口ロール36により送り出される定着後の記録用紙5を装置本体1aの上部の用紙排出部58に排出するための用紙排出ロール対59aを備えた排出搬送路59が設けられている。
【0043】
図1中符号200は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御装置を示している。制御装置200は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、あるいはこれらCPUやROM等を接続するバス、通信インターフェイスなどを備えている。また、符号201は画像形成装置1が外部の機器と通信を行う通信部を、202は通信部201を介して入力される画像情報を処理する画像処理部をそれぞれ示している。
【0044】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0045】
ここでは、まず、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するフルカラーモードにおける動作を説明する。
【0046】
画像形成装置1は、図示しないパーソナルコンピュータや画像読取装置等から通信部201を介して画像情報及びフルカラーの画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、制御装置200が4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置30、定着装置40等を始動する。
【0047】
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、
図1に示されるように、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を画像処理部202によって各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0048】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール141からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0049】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15(Y,M,C,K)が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わされるような状態で一次転写させる。
【0050】
また、一次転写が終了した各作像装置10(Y,M,C,K)では、ドラム清掃装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10(Y,M,C,K)は、次の作像動作が可能な状態にされる。
【0051】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路56に送り出す。給紙搬送路56では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対54が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0052】
二次転写位置においては、二次転写装置30が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置28が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0053】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21から剥離された後に用紙搬送路57を介して定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱ベルト42と加圧ロール43との間の接触部に二次転写後の記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、用紙排出ロール対59aにより、例えば、装置本体1aの上部に設置された用紙排出部58に排出される。
【0054】
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙5が出力される。
【0055】
<定着装置の構成>
図2はこの実施の形態1に係る定着装置を示す断面構成図である。
【0056】
定着装置40は、
図2に示されるように、大別して、回転する無端状のベルトの一例としての加熱ベルト42を有する加熱ユニット44と、加熱ユニット44に対して圧接される回転体の一例としての加圧ロール43を備えている。加熱ベルト42と加圧ロール43の間には、未定着像の一例としての未定着トナー像Tを保持した記録媒体の一例としての記録用紙5が通過する領域である圧接部の一例としての定着ニップ部Nが形成されている。なお、記録用紙5は、搬送方向と交差する方向に沿った中央を基準(所謂センターレジ)として搬送される。
【0057】
定着装置40は、
図1に示されるように、記録用紙5を鉛直方向に沿って下方から上方へ向けて搬送する用紙搬送路57において、延長方向に沿って搬送される記録用紙5に対して定着処理を施すため、加熱ベルト42と加圧ロール43が略水平方向に沿って対向するよう配置されるが、
図2では、便宜上、加熱ベルト42と加圧ロール43を上下方向に沿って図示している。
【0058】
加熱ユニット44は、
図2に示されるように、加熱ベルト42と、加熱ベルト42の内部に配置され、加熱ベルト42を加熱する面状発熱手段(面状発熱体)の一例としてのセラミックヒータ45と、同じく加熱ベルト82の内部に配置され、加熱ベルト42を介して加圧ロール43の表面に圧接させるようセラミックヒータ45を保持する保持手段の一例である保持部材46と、同じく加熱ベルト42の内部に配置され、保持部材46を加圧ロール43に圧接させるよう支持する支持手段の一例としての支持部材47と、加熱ベルト42の内部に長手方向に沿って配置され、加熱ベルト42を回転可能に案内する案内部材48等を備えている。
【0059】
なお、面状発熱手段の一例としてのセラミックヒータ45は、発熱部自体が面状である必要はなく、発熱部が直線状に形成されたものであっても、加熱ベルト42を加熱するセラミックヒータ45の下端面(加熱面)が面状であれば良い。また、セラミックヒータ45の下端面(加熱面)は、平面である必要はなく、曲面形状であっても良い。
【0060】
加熱ベルト42は、可撓性を有する材料からなり、装着前の状態である自由形状が薄肉円筒形の無端状ベルトとして構成されている。加熱ベルト42は、
図3に示されるように、セラミックヒータ45側に配置される基材層421と、基材層421の表面に接着層422を介して被覆された弾性体層423と、弾性体層423の表面に直接又は図示しない接着層を介して被覆された表面層424とを備える。基材層421は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性を有する合成樹脂を主成分として形成される。弾性体層422は、耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる。表面層423は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。加熱ベルト42は、例えば、その厚さが50~200μm程度に設定可能である。
【0061】
基材層421は、必要に応じて、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性を有する合成樹脂を主成分とし、加熱ベルト42の熱伝導性等の特性を向上させるためにカーボンナノチューブや炭素繊維、あるいはガラス繊維等の充填材が配合される。充填材としては、高熱伝導性及び低動摩擦係数、耐摩耗性の観点からカーボンナノチューブが望ましい。
【0062】
セラミックヒータ45は、
図4及び
図5に示されるように、セラミック製の基板451と、基板451の表面に長手方向に沿って直線状に複数本形成された第1乃至第3の発熱部452
1~452
3と、第1乃至第3の発熱部452
1~452
3に個別に通電するための第1乃至第3の電極453
1~453
3と、第1乃至第3の発熱部452
1~452
3の他端部に共通に通電する共通電極454と、少なくとも第1乃至第3の発熱部452
1~452
3の表面を被覆するガラス等からなる被覆層455とを備えている。
【0063】
保持部材46は、例えば、射出成形等により所要の形状に一体成形された耐熱性を有する合成樹脂からなる。耐熱性を有する合成樹脂としては、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいはこれらの複合材料などが挙げられる。
【0064】
保持部材46は、定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ45を加熱ベルト42を介して加圧ロール43に加圧するよう支持するセラミックヒータ45の平面形状に対応した細長い矩形状の剛体からなる支持用枠部461(
図5参照)を有している。保持部材46は、加熱ベルト42の長手方向に沿った全長より長く配設されている。
【0065】
保持部材46には、
図2に示されるように、定着ニップ部Nの加熱ベルト42の回転方向に沿った上流側に加熱ベルト42を定着ニップ部Nへと案内する断面形状が曲面形状に形成された第1の案内部462が設けられている。支持部材46の下端面463は、平面形状に形成されている。支持部材46の加熱ベルト42の回転方向に沿った下流側に位置する下端面463は、セラミックヒータ45の表面と略同一平面を形成するよう形成される。また、保持部材46には、定着ニップ部Nの加熱ベルト42の回転方向に沿った下流側に隣接した位置に、定着ニップ部Nを通過した加熱ベルト42の内面に接触して略自由形状に復帰するよう案内する断面形状が曲面形状に形成された第2の案内部464が設けられている。
【0066】
また、保持部材46には、定着ニップ部Nと反対側の面に支持部材47の第1及び第2の垂直板部471,472の先端が当接された状態で保持する当接部465,466が、加熱ベルト42の回転方向に沿った上流側及び下流側に設けられている。
【0067】
支持部材47は、
図2に示されるように、例えば、ステンレスやアルミニウム、あるいは鋼鉄等の金属製の板材から構成される。支持部材47は、定着ニップ部Nの加熱ベルト42の回転方向に沿った上流側及び下流側において、セラミックヒータ45の表面に対して略垂直にそれぞれ配置された第1及び第2の垂直板部471,472を備えている。
【0068】
案内部材48は、加熱ベルト42の内部において、当該加熱ベルト42の長手方向に沿って下向きの略U字形状に形成されている。案内部材48は、保持部材46とともに支持部材47に取り付けられている。案内部材48の外周面には、加熱ベルト42とセラミックヒータ45との摺動抵抗を低減するため、シリコーンオイルやグリース等の潤滑剤を含浸させたフェルト等からなる潤滑剤保持部材Fが設けられている。
【0069】
また、案内部材48の長手方向に沿った両端部には、加熱ベルト42の移動方向と交差する方向に沿った長手方向への移動を規制するフランジ部481がそれぞれ設けられている。
【0070】
加熱ベルト42は、セラミックヒータ45の定着ニップ部Nと反対側の面に接触するよう配置された温度センサ49によって定着ニップ部Nの温度が検知される。セラミックヒータ45は、上述したように、長手方向に沿った発熱領域が異なる第1乃至第3の発熱部4521~4523を備えている。そのため、温度センサ49は、第1乃至第3の発熱部4521~4523に対応してセラミックヒータ45の長手方向に沿って複数(例えば、3つ)配置される。加熱ベルト42は、温度センサ49の検知結果に基づいてセラミックヒータ45の各第1乃至第3の発熱部4521~4523への通電を図示しない温度制御回路によって制御することにより、記録用紙5のサイズに応じて定着ニップ部Nが所要の定着温度(例えば、200~230℃程度)となるよう加熱される。
【0071】
加圧ロール43は、
図2に示されるように、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円柱形状又は円筒形状の芯金431と、芯金431の外周に相対的に厚く被覆されたシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体からなる弾性体層432と、弾性体層432の表面に薄く被覆されたポリテトラフロオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等からなる離型層433を有している。なお、加圧ロール43の内部には、必要に応じてハロゲンランプ等からなる加熱手段(加熱源)を配置しても良い。
【0072】
加圧ロール43は、その長手方向(軸方向)に沿った芯金431の両端部が定着装置40の図示しない装置ハウジングのフレームに軸受部材を介して回転可能に支持されている。加圧ロール43は、加熱ユニット44に所要の圧力で圧接される。加圧ロール43は、回転軸を兼ねる芯金431の軸方向に沿った一端部に取り付けられた図示しない駆動ギアを介して駆動装置により矢印C方向に沿って所要の速度で回転駆動される。なお、加熱ベルト41は、回転駆動される加圧ロール43に圧接されて従動回転する。
【0073】
ところで、上記の如く構成される定着装置40では、
図6に示されるように、複数のセラミックヒータ45を一体的に形成した後、隣合うセラミックヒータ45を互いに分離することによって形成される。
【0074】
そのため、各セラミックヒータ45表面の加熱ベルト42の内面と接触する幅方向に沿った角部には、
図7に拡大して示されるように、微小な欠けやバリが存在する。
【0075】
このように、セラミックヒータ45表面の幅方向に沿った角部に微小な欠けやバリが存在すると、加熱ベルト42が周回移動する間に、当該加熱ベルト42の内面がセラミックヒータ45表面の微小な欠けやバリによって損傷し、加熱ベルト42の寿命が低下するという技術的課題を有していた。
【0076】
そのため、かかる技術的課題を解決するため、従来の定着装置40では、突出した加熱体の摺動部端面エッジ部の形状がR0.2以上であるよう構成したものが既に提案されている(特許文献2)。
【0077】
しかしながら、従来の定着装置40において、突出した加熱体の摺動部端面エッジ部の形状がR0.2以上であるよう構成した場合には、次のような技術的課題が新たに生じることが本発明者等によって明らかとなった。
【0078】
定着装置40の定着ニップ部Nには、
図1に示されるように、二次転写位置において略球形状の微細な粉末からなるトナー像Tが転写された記録用紙5が加熱ベルト42の回転に伴って進入する。
【0079】
定着ニップ部Nにおいては、加圧ロール43がトナー像Tを保持した記録用紙5及び加熱ベルト42を介してセラミックヒータ45に圧接されている。そのため、加圧ロール43の表面に形成された弾性体層432は、
図8に示されるように、セラミックヒータ45の表面に圧接されることにより、本来の形状である断面円形状から略平面形状に変形する。その結果、加圧ロール43表面の弾性体層432は、その周方向に沿った長さである周長が断面円形状から略平面形状に変形することにより周方向に沿って圧縮されて短くなる。これに伴って、加圧ロール43とともにセラミックヒータ45の表面に圧接する加熱ベルト42の弾性体層423も、加圧ロール43の弾性体層432と同様に、周方向に沿った長さが圧縮される。さらに、加熱ベルト42の表面に接触する記録用紙5に保持されたトナー像も、移動方向に沿って圧縮された状態で定着ニップ部Nを通過する。
【0080】
つまり、記録用紙5に保持されたトナー像は、定着ニップ部Nを通過する間に、セラミックヒータ45の熱及び加圧ロール43からの押圧力によりガラス転移温度以上に加熱され加圧されて軟化乃至溶融した状態となるとともに、移動方向に沿って圧縮された状態で隣接するトナー粒子同士が凝集して定着ニップ部Nを通過する。
【0081】
その後、記録用紙5に保持されたトナー像は、定着ニップ部Nを通過した後、移動方向に沿って圧縮された状態が急激に解消され、加熱加圧されて凝集したトナー像が移動方向に沿って伸張された状態となることにより、良好な画質の画像として記録用紙5上に定着される。
【0082】
これに対して、従来の定着装置40において、突出した加熱体の摺動部端面エッジ部の形状がR0.2以上であるよう構成した場合には、加熱体であるセラミックヒータ45の角度にR0.2以上という曲率半径が大きなアール形状が形成されるため、
図8及び
図9に示されるように、記録用紙5が定着ニップ部Nを通過した後の移動方向に沿った伸張作用が十分作用せず、良好な画質の画像を得難くなるという技術的課題が新たに生じることが、本発明者等の研究により明らかとなった。
【0083】
そこで、この実施の形態1に係る定着装置40は、少なくとも前記ベルトの移動方向に沿った下流側の端部が圧接部を介して回転体に圧接され、前記ベルトの内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.01mm以上0.2mm以下の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた形状に形成される面状発熱手段を備えるように構成している。好ましくは、ベルトの内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状が、0.2mm未満の曲率半径を有する湾曲形状又は当該寸法にわたりエッジ部を切欠いた形状に形成される。
【0084】
セラミックヒータ45は、
図6に示されるように、同一のセラミック製の基板451上に複数のセラミックヒータ45が同時に形成された後、個々のセラミックヒータ45が幅方向に沿って隣接する他のセラミックヒータ45と分離されることによって製造される。
【0085】
その際、各セラミックヒータ45は、
図7に示されるように、その表面に位置する隣接する他のセラミックヒータ45との角部に微小な欠けやバリが必然的に発生する。
【0086】
そのため、各セラミックヒータ45は、
図10に示されるように、研磨や切削等の機械加工あるいはエッチング等の化学処理によって、加熱ベルト42の内面と接触する下流側のエッジ部の断面形状がR形状乃至C形状となるような加工処理が施される。
【0087】
このとき、本発明者等は、各セラミックヒータ45の加熱ベルト42の内面と接触する下流側に位置するエッジ部の断面形状を、R形状乃至C形状となるような加工処理するにあたり、どの程度のR形状乃至C形状となるように加工処理すれば、上述した加熱ベルト42の長寿命化と良好な画質の画像を得ることができるか種々の実験を行った。
【0088】
実験は、セラミックヒータ45のエッジ部の断面形状をR形状に加工するにあたり、R形状の曲率半径を、0.005mm、0.01mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmに変化させて、加熱ベルト42の寿命を計測するとともに記録用紙5に定着された画像の画質を目視によって確認することとした。なお、セラミックヒータ45のエッジ部の断面形状におけるR形状の大きさは、株式会社アサカ理研のレーザー形状測定機「ROLL2000」を用いて測定した。
【0089】
加熱ベルト42が必要とされる寿命まで破断等無く機能を維持するためには、ヒータエッジ部のバリや欠けなどで生じる加熱ベルト内面のダメージを抑える必要がある。加熱した定着ニップ部にA4サイズの普通紙を5万枚通紙した後のセラミックヒーアが摺擦する加熱ベルト内面の周方向傷の深さをKeynce社製「VK-K100」で測定し、深さ3μmを基準として基準以下の深さであれば必要寿命達成可能、基準より深い場合は必要寿命達成不可とした。
また、記録用紙5に定着された画像の画質は、出願人の社内で採用されている画質評価基準に従って問題がない場合は〇、わずかに画質の低下が見受けられるものの実使用上、問題がない場合は△、画質の低下が顕著であり実使用上の問題がある場合は×として評価した。
【0090】
【0091】
この
図11から明らかなように、セラミックヒータ45のエッジ部のR形状が0.005mmの場合には、画質は良好であったが、加熱ベルト42の寿命低下が発生し、ベルト信頼性の観点から×と判断された。
【0092】
また、セラミックヒータ45のエッジ部のR形状が0.01mm~0.2mmの場合には、ベルト信頼性及び画質の観点から良好であったが、R形状が0.2mmの場合は、若干画質の低下が見受けられた。
【0093】
そのため、セラミックヒータ45のエッジ部のR形状は、0.01mm~0.2mmの範囲であることが望ましいが、特に0.01mm~0.1mmの範囲であることが更に望ましい。
【0094】
一方、セラミックヒータ45のエッジ部のR形状が0.3mmの場合には、ベルト信頼性の観点からは良好であったが、画質の低下が顕著に見受けられ不可と判断された。
【0095】
<定着装置の動作>
この実施の形態1に係る定着装置では、次のようにして、面状発熱手段のベルト内面と圧接するベルトの移動方向に沿った下流側のエッジ部の断面形状が0.2mm以上の曲率半径を有する円弧形状に形成した場合に比べて、ベルトの長寿命化及び画質の向上を両立することが可能となっている。
【0096】
すなわち、この実施の形態1に係る定着装置40は、
図2に示されるように、未定着トナー像Tを保持した記録用紙5が定着ニップ部Nに導入されることにより、加熱ベルト42を介したセラミックヒータ45からの熱及び加圧ロール43の加圧力によって加熱加圧されて定着処理が施される。
【0097】
このとき、定着ニップ部Nにおいては、加圧ロール43がトナー像Tを保持した記録用紙5及び加熱ベルト42を介してセラミックヒータ45に圧接されている。そのため、加圧ロール43の表面に形成された弾性体層432は、
図8に示されるように、セラミックヒータ45の表面に圧接されることにより、本来の形状である断面円形状から略平面形状に変形する。その結果、加圧ロール43表面の弾性体層432は、その周方向に沿った長さである周長が断面円形状から略平面形状に変形することにより周方向に沿って圧縮されて短くなる。これに伴って、加圧ロール43とともにセラミックヒータ45の表面に圧接する加熱ベルト42の弾性体層423も、加圧ロール43の弾性体層432と同様に、周方向に沿った長さが圧縮される。さらに、加熱ベルト42の表面に接触する記録用紙5に保持されたトナー像も、移動方向に沿って圧縮された状態で定着ニップ部Nを通過する。
【0098】
つまり、記録用紙5に保持されたトナー像は、定着ニップ部Nを通過する間に、セラミックヒータ45の熱及び加圧ロール43からの押圧力によりガラス転移温度以上に加熱され加圧されて軟化乃至溶融した状態となるとともに、移動方向に沿って圧縮された状態で隣接するトナー粒子同士が凝集して定着ニップ部Nを通過する。
【0099】
その後、記録用紙5に保持されたトナー像は、定着ニップ部Nを通過した後、移動方向に沿って圧縮された状態が急激に解消され、加熱加圧されて凝集したトナー像が移動方向に沿って伸張された状態となることにより、良好な画質の画像として記録用紙5上に定着される。
【0100】
ところで、この実施の形態1に係る定着装置40では、セラミックヒータ45の加熱ベルト42の移動方向に沿った下流側端部のエッジ部の形状が0.01mm~0.2mmの範囲であるように構成されている。
【0101】
そのため、セラミックヒータ45の加熱ベルト42の移動方向に沿った下流側端部のエッジ部には、
図7に示されるように、微小な欠けやバリが存在しないので、セラミックヒータ45のエッジ部に接触する加熱ベルト42が損傷を受けることがなく、加熱ベルト42の長寿命化が可能となる。
【0102】
また、この実施の形態1に係る定着装置40では、セラミックヒータ45のエッジ部の形状が0.01mm~0.2mmの範囲を満たしている。
【0103】
そのため、セラミックヒータ45のエッジ部がR0.2以上である場合のように、記録用紙5が定着ニップ部Nを通過した後の移動方向に沿った伸張作用が十分作用せず、良好な画質の画像を得難くなるということがなく、記録用紙5上に定着されるトナー像Tの画質が良好に維持される。
【0104】
なお、前記実施の形態では、面状発熱手段としてセラミックヒータを用いた場合について説明したが、面状発熱手段としては、セラミックヒータに限定されるものではなく、定着ニップ部Nにおいて文字通り面状に発熱するものであれば良い。
【0105】
また、前記実施の形態では、加圧手段として加圧ロールを用いた場合について説明した
が、加圧手段としては加圧ベルトを用いたものであっても良い。
【0106】
また、本発明は、電子写真方式の画像形成装置で説明を行ったが、電子写真方式の画像形成装置に限られるものではなく、例えば、インクによる未乾燥層の画像(未定着のインク画像)を保持して搬送された用紙に接してその未定着インク画像を用紙上に定着する、インクジェット方式の画像形成装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…画像形成装置
1a…画像形成装置本体
40…定着装置
42…加熱ベルト
43…加圧ロール
45…セラミックヒータ
452…発熱部
456…セラミックヒータの裏面