(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181078
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】投与計画決定支援システム、投与計画決定支援方法、および投与計画決定支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20221130BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087912
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】520236572
【氏名又は名称】ゲノム・ファーマケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 良久
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した薬剤の投与計画を決定することを支援する支援システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】投与計画の決定支援システム1は、予定されている医薬及び投与量を表す医薬情報を取得し、医薬の投与が禁止されるゲノム上の座位における禁止因子情報と、医薬の投与に際して必須とされるゲノム上の座位における必須因子情報と、の少なくとも一方を取得し、禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型と、必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型と、のうちの少なくとも一方の遺伝型情報む患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得部としての情報取得部を備え、禁止因子情報と、第1の遺伝型情報と、の比較結果及び必須因子情報と、第2の遺伝型情報と、の比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、患者に対する医薬情報の適否を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する好適な投薬計画の決定支援システムであって、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得部、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得部のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得部であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得部;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、および前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定部
を備えた決定支援システム。
【請求項2】
前記禁止因子情報取得部、および前記必須因子情報取得部の両方を備え、
前記投与計画決定部が、前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、および前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果に基づき、前記患者に対する投与計画を決定する、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部をさらに備え、
前記投与計画決定部は、前記第1の遺伝型情報が、前記禁止因子情報と一致せず、且つ前記第2の遺伝型情報が、前記必須因子情報と一致する場合に、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として判断し、
前記投与計画決定部が、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として判断したとき、前記投与計画出力部は、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として出力する、請求項1または2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部;および
前記医薬情報が不適である場合、前記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;
をさらに備え、
前記投与計画決定部は、前記第1の遺伝型情報が、前記禁止因子情報と一致した場合、または前記第2の遺伝型情報が、前記必須因子情報と一致しない場合に、前記患者への投与が予定されている医薬情報が不適であると判断し、
前記投与計画決定部が、前記患者への投与が予定されている医薬情報が不適であると判断したとき、前記投与計画出力部は、医薬情報が不適であることを示す警告および前記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報を出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項5】
前記禁止因子情報は、前記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子の機能と関連した変異を有する遺伝型、前記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型、前記医薬の投与による副作用の発症に関与することが実証されている単一遺伝子疾患の原因遺伝子と関連した変異を有する遺伝型、または前記医薬の投与による副作用の発症に関与することが実証されている多因子疾患若しくは多遺伝子性疾患への強い影響若しくは効果が実証されているレアバリアント、個人特有のバリアントまたはメンデル遺伝様サブセットの変異を有する遺伝型である、請求項1~4のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項6】
前記必須因子情報は、特定の疾患に対する分子標的として機能する前記医薬の薬効に必須であるゲノム上の特定座位のアレルの型、あるいはアレルの型の組み合わせを有する遺伝型である、請求項1~5のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項7】
前記システムは、前記患者遺伝型情報として、前記第1の遺伝型情報および/または前記第2の遺伝型情報が記録されていないとき、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、前記全ヌクレオチド配列を表す情報から、前記第1の遺伝型および/または前記第2の遺伝型の座位に存在するDNAバリアントを検出して、前記患者遺伝型情報を更新し、
前記患者遺伝型情報は、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項8】
前記システムは、前記DNAバリアントを検出するために、
当該DNAバリアントに対応する標的ヌクレオチド配列と、基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列とが結合した結合配列を生成し、当該結合配列と、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、
前記部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返す、請求項7に記載の支援システム。
【請求項9】
前記システムは、前記DNAバリアントを検出するために、
基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列に対応する2つのヌクレオチド配列を生成し、当該2つのヌクレオチド配列と、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、
前記部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返す、請求項7に記載の支援システム。
【請求項10】
前記DNAバリアントのうち一塩基多型を表す情報を、前記患者のゲノム断片を用いて、または前記全ヌクレオチド配列を表す情報に基づいて決定し、決定された一塩基多型を表す情報を記録し、
記録されていない前記DNAバリアントを表す情報を、前記全ヌクレオチド配列を表す文字情報に基づいて決定する、請求項7~9のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項11】
前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部をさらに備え、
前記投与計画出力部は、患者に対する投与計画を、表示装置を備えたユーザ端末に送信する、請求項1~10のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項12】
前記禁止因子情報および/または前記必須因子情報が人工知能によって生成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項13】
患者に対して好適な投与計画を決定支援する方法であり、コンピュータによって実行される方法であって、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得工程、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得工程のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得工程であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得工程;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、並びに前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定工程
を含む、方法。
【請求項14】
患者に対する好適な投薬計画の決定支援プログラムであって、コンピュータを、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得部、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得部のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得部であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得部;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、並びに前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の投与計画の決定を支援するシステムに関し、より詳細には、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画の決定を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の機能と、医薬の有効性との関連性は、以前から指摘されている。また、特定患者の情報を活かして、当該特定患者に即した医薬を処方することの提案は、これまでにある(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、ある疾患に有効と考えられている薬剤が実際に特定の患者にとって安全かつ有効かを、患者の遺伝情報を利用して判断するシステムさえ、実際には提案されるに至っていない。それは、1つの疾患に薬効を有していることが知られている薬剤は複数あるし、1つの薬剤の薬効または副作用に影響する遺伝子は複数あるし、1遺伝子の機能の発現には、複数の他の遺伝子が関与することが、よく知られているからである。
【0004】
したがって、医師が作成する現状の院外処方箋および院内処方箋(薬剤の種類、用量および用法が指定されている)には、一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)が依然として適用されている。このような処方箋では、個々の患者に適した薬剤の種類、その用量および用法を指定できていない。実際に、処方箋通りに薬剤を用いた複数の患者は、大きく異なる反応を示す。当該反応には、薬剤が患者に悪影響のみを与える(副作用のみを示し、かつ薬効を示さない)ことも含まれ得ると指摘されている。
【0005】
処方箋にしたがって患者が用いる薬剤のほかに、患者への投与または使用に、医療従事者の管理を要する薬剤およびそれ以外の物質(麻酔薬など)がある。当該薬剤または物質の投与または使用は、過剰な反応を一部の人に引き起こし得、副作用をしばしば伴うことがよく知られている。
【0006】
薬剤の有効性や副作用に関する個体差は、疾患の種類、環境要因(生活様式など)および/または服用している薬剤の組み合わせなどの影響よりも、ヒト集団における遺伝学的な多様性に多く起因する。
【0007】
臨床ゲノム塩基配列決定(clinical genome sequencing)は、病的バリアントの究極的スキャン法であるが、この場合には各人において臨床的意義が不明な多数のバリアントがみつかることになる。この場合の倫理的な懸念として、もともと塩基配列決定が目的としていたものとは無関係な病的バリアントが偶然に見つかった場合、それをどう扱うかという問題がある。臨床ゲノム塩基配列決定は、間もなく多くの先進国で既存の医療制度に組み込まれていくと考えられる。しかし、バイオインフォマティクス的および電子ネットワーク上の大きな課題が残されている。また、多くのバリアントの臨床的な意義がはっきりしていないなど、現在のような不完全な知識しかない状況でデータを公開することに対する倫理的な懸念もある。
【0008】
他方、DNAによる診断は、限られた遺伝子を解析することから、ゲノム全体を解析する方向へと移ってきており、ほとんどすべての診療科に関連するものとなってきている。遺伝学的検査の範囲と有用性が増加するにつれ、臨床遺伝専門医がほとんどの遺伝学的検査を手配する古いシステムは適切ではなくなってきている。患者を解析・管理する臨床医を含む臨床チームのメンバーが、今後、検査結果を直接取得し、利用することがますます求められるだろうと予想される。
【0009】
将来的に、臨床医はDNAや染色体の複雑な検査結果を受け取ることがあると予想されるが、現時点では、その解釈を助けるような情報はほとんどないのが現状である。“Mainstreaming genetics”は、遺伝学的検査を主流の通常医療へと組み込むことを目標としており、診断的検査は、患者が最初に紹介された臨床医の責任となってくると考えられる。そこで、遺伝学検査について限られた経験しかもたない各専門分野の臨床医は、遺伝学的検査の結果を解釈・伝達し、必要な知識を高めていく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、例えば臨床医、薬剤師、看護師などのユーザが、臨床遺伝専門医に必要とされるような遺伝学検査に関する経験を要せずとも、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した薬剤の投与計画を決定することを支援する投与計画決定支援システム、投与計画決定支援方法、および投与計画決定支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.患者に対する好適な投薬計画の決定支援システムであって、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得部、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得部のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得部であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得部;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、および前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定部
を備えた決定支援システム。
項2.前記禁止因子情報取得部、および前記必須因子情報取得部の両方を備え、
前記投与計画決定部が、前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、および前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果に基づき、前記患者に対する投与計画を決定する、項1に記載の支援システム。
項3.前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部をさらに備え、
前記投与計画決定部は、前記第1の遺伝型情報が、前記禁止因子情報と一致せず、且つ前記第2の遺伝型情報が、前記必須因子情報と一致する場合に、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として判断し、
前記投与計画決定部が、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として判断したとき、前記投与計画出力部は、前記患者への投与が予定されている医薬情報を、好適な医薬情報として出力する、項1または2に記載の支援システム。
項4.前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部;および
前記医薬情報が不適である場合、前記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;
をさらに備え、
前記投与計画決定部は、前記第1の遺伝型情報が、前記禁止因子情報と一致した場合、または前記第2の遺伝型情報が、前記必須因子情報と一致しない場合に、前記患者への投与が予定されている医薬情報が不適であると判断し、
前記投与計画決定部が、前記患者への投与が予定されている医薬情報が不適であると判断したとき、前記投与計画出力部は、医薬情報が不適であることを示す警告および前記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報を出力する、項1~3のいずれか一項に記載の支援システム。
項5.前記禁止因子情報は、前記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子の機能と関連した変異を有する遺伝型、前記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型、前記医薬の投与による副作用の発症に関与することが実証されている単一遺伝子疾患の原因遺伝子と関連した変異を有する遺伝型、または前記医薬の投与による副作用の発症に関与することが実証されている多因子疾患若しくは多遺伝子性疾患への強い影響若しくは効果が実証されているレアバリアント、個人特有のバリアントまたはメンデル遺伝様サブセットの変異を有する遺伝型である、項1~4のいずれか一項に記載の支援システム。
項6.前記必須因子情報は、特定の疾患に対する分子標的として機能する前記医薬の薬効に必須であるゲノム上の特定座位のアレルの型、あるいはアレルの型の組み合わせを有する遺伝型である、項1~5のいずれか一項に記載の支援システム。
項7.前記システムは、前記患者遺伝型情報として、前記第1の遺伝型情報および/または前記第2の遺伝型情報が記録されていないとき、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、前記全ヌクレオチド配列を表す情報から、前記第1の遺伝型および/または前記第2の遺伝型の座位に存在するDNAバリアントを検出して、前記患者遺伝型情報を更新し、
前記患者遺伝型情報は、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む、項1~6のいずれか一項に記載の支援システム。
項8.前記システムは、前記DNAバリアントを検出するために、
当該DNAバリアントに対応する標的ヌクレオチド配列と、基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列とが結合した結合配列を生成し、当該結合配列と、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、
前記部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返す、項7に記載の支援システム。
項9.前記システムは、前記DNAバリアントを検出するために、
基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列に対応する2つのヌクレオチド配列を生成し、当該2つのヌクレオチド配列と、前記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、
前記部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返す、項7に記載の支援システム。
項10.前記DNAバリアントのうち一塩基多型を表す情報を、前記患者のゲノム断片を用いて、または前記全ヌクレオチド配列を表す情報に基づいて決定し、決定された一塩基多型を表す情報を記録し、
記録されていない前記DNAバリアントを表す情報を、前記全ヌクレオチド配列を表す文字情報に基づいて決定する、項7~9のいずれか一項に記載の支援システム。
項11.前記患者に対する投与計画を出力する投与計画出力部をさらに備え、
前記投与計画出力部は、患者に対する投与計画を、表示装置を備えたユーザ端末に送信する、項1~10のいずれか一項に記載の支援システム。
項12.前記禁止因子情報および/または前記必須因子情報が人工知能によって生成される、項1~11のいずれか一項に記載の支援システム。
項13.患者に対して好適な投与計画を決定支援する方法であり、コンピュータによって実行される方法であって、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得工程、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得工程のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得工程であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得工程;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、並びに前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定工程
を含む、方法。
項14.患者に対する好適な投薬計画の決定支援プログラムであって、コンピュータを、
前記患者への投与が予定されている医薬および投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
前記医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子情報を取得する禁止因子情報取得部、および前記医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子情報を取得する必須因子情報取得部のうちの少なくとも一方;
前記患者の遺伝型の情報を取得する患者遺伝型情報取得部であって、前記患者の遺伝型の情報は、前記禁止因子に対応するゲノム上の座位における患者の第1の遺伝型、および前記必須因子に対応するゲノム上の座位における患者の第2の遺伝型のうちの少なくとも一方の遺伝型情報を含む、患者遺伝型情報取得部;および
前記禁止因子情報と前記第1の遺伝型情報との比較結果、並びに前記必須因子情報と前記第2の遺伝型情報との比較結果のうちの少なくとも一方に基づき、前記患者に対する前記医薬情報の適否を決定する投与計画決定部
として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、臨床遺伝専門医に必要とされるような遺伝学検査に関する体系的な知識や経験を要せずとも、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の概念を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシステムの説明図である。
【
図3】(a)患者情報、(b)医薬情報、(c)患者遺伝型情報、(d)禁止因子情報、(e)必須因子情報の例の説明図である。
【
図4】
図2の投与計画決定支援システムが実行する処理の一例の説明図である。
【
図5】
図2の投与計画決定支援システムが実行する処理の一例の説明図である。
【
図6】医薬の用量を変更した、変更医薬情報の例の説明図である。
【
図7】医薬の種類を変更した、変更医薬情報の例の説明図である。
【
図8】医薬の用量変更に関する医薬情報、変更医薬情報、禁止因子情報、必須因子情報の例の説明図である。(a) 関連性情報A、(b) 用量に関する変更医薬情報B
【
図9】ヒトゲノムにおける任意のDNAバリアントのアレルの型(遺伝型)を決定するための文字列の構造を表す模式図である。
【
図10】ゲノム配列上に存在するDNAバリアント(SNPを含む)のアレルの型(遺伝型)を決定する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「投与計画」は、特定患者に対してある投与量においてある医薬を投与することを示す指針(例えば処方箋)である。「投与計画」は、特定患者を表す情報、ならびに当該特定患者への投与が予定されている医薬の種類および投与量を表す情報を少なくとも含む。
【0016】
本明細書において、「医薬」は、投与を受けた患者において薬効を発揮することによって、疾患における症状の改善を直接的に生じさせる医薬、または医療行為を補助する目的(検査および麻酔など)に使用される物質(造影剤および麻酔剤など)を表す。医薬には、医療用医薬品および一般用医薬品(OTC医薬品とも呼ばれる)が含まれる。医療用医薬品には医師の処方箋を必要とする処方箋医薬品が含まれる。
【0017】
本明細書において、「遺伝型」(genotypeとも呼ばれる)は、個体全体または個体のゲノム上の特定の座位の遺伝的構成であり、ゲノムにおける1つ以上の座位にあるアレル(対立遺伝子)の組み合わせの型(2つ以上の座位を遺伝型の対象にするとき、各型の総和)を指す。「アレル」は、本明細書では、1本の染色体のうち、1つの座位に存在する個々の遺伝子およびDNA配列を指す。「遺伝型」または「アレルの型」と記載した場合は、「接合型」を含む概念として用いる。
【0018】
本明細書において、「禁止因子」の遺伝型情報とは、特定の医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位におけるアレルの型またはアレルの型の組み合わせ(遺伝型)の情報を表し、「必須因子」の遺伝型情報とは、特定の医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位におけるアレルの型またはアレルの型の組み合わせ(遺伝型)の情報を表す。
【0019】
「医薬情報」は、患者を特定する情報(例えば患者のID番号)、医薬を特定する情報(例えば医薬の商品名または物質名)、および患者に対する医薬の投与量を指定する情報を少なくとも含んでいる情報を表す。医薬情報は、例えば医師がコンピュータ上で作成するカルテまたは処方箋であり得る。
【0020】
「(医薬情報の)適否」は、患者に固有の遺伝型を基準とした、当該患者と、医薬情報に特定されている医薬の種類および/またはその投与量との関係が適切であるか否かを表す。
【0021】
本明細書において、「DNAバリアント(DNA variant)」は、ヒト集団において(その頻度に関わらず)、ヌクレオチド配列(アレルならびに染色体構造を含む)の変化が2つ以上存在するゲノム上の特定部位ならびにその変化の総体(すなわち、該特定部位のすべてのアレル型)の概念として記載する。上記ヌクレオチド配列の変化とは、1ヌクレオチド以上の置換、欠失、挿入および/または付加、重複を含め、あらゆる変化を意味する。
【0022】
上記「DNAバリアント」のうち、集団内で頻度の高い(1%以上)変化であるときは「多型(P:Polymorphism)」と呼び、例えば、1塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism、以降では「SNP」と記載する)、コピー数多型(Copy Number Polymorphism、以降では「CNP」と記載する)、マイクロサテライト多型(短鎖縦列反復配列: Short Tandem Repeat Polymorphism 、以降では「STRP」と記載する)がある。また、集団内で頻度の低い(1%未満)変化であるときは「バリアント(V:Variant)」と呼び、例えば、1塩基バリアント(Single Nucleotide Variant、以降では「SNV」と記載する)、コピー数バリアント(Copy Number Variant、以降では「CNV」と記載する)がある。なお、本明細書では、上記「DNAバリアント」は、上述の通り、ヒト集団における頻度によらず、「多型」および「バリアント」を含む概念である。
【0023】
1つの座位にある接合型を含むアレルの組み合わせの型(「アレルの型」)の総体(すなわち、該特定部位のすべてのアレル型)は、各アレルのヌクレオチド配列および/または当該組み合わせに含まれているアレルの数によって決まる。上記ヌクレオチド配列の少なくとも1つがヒト集団に最も多い野生型ヌクレオチド配列ではない、および/または上記アレルの数が通常の2つでない、患者(つまり上記型が通常でない患者)に対する上記医薬の投与は、当該患者に所望されない影響を生じ得る。当該所望されない影響は、例えば、上記型が通常の患者と比べたときの、(a)上記医薬の薬効の低下、喪失もしくは過剰な上昇、(b)上記医薬による副作用の発現もしくは増大、および/または(c)上記医薬の投与前に生じていない特定疾患の高い発症率である。しかし、実際には、上記所望されない影響は、1つの上記「アレルの型」のみでは現れず、多数の座位についての多数の「アレルの型」によって累積されたときに現れることが多い。
【0024】
図1は本発明の概念を説明する模式図である。本発明の実施形態の、患者に投与する医薬の投与計画の決定支援システムは、患者Aの遺伝型情報に合わせたオーダーメイド投与計画(例えば医薬B’および投与量C’)の決定を支援する。投与計画を決定するための判断基準としては、(1)医薬Bの薬物動態学的要因、(2)医薬Bの薬力学的要因および(3)医薬Bによる副次疾患の発症リスクが挙げられる。「薬物動態学(pharmacokinetics)」は、ある薬物と標的分子とが接触する確率を変化させる、薬物またはその代謝物の生体内における挙動を表す。「薬力学(pharmacodynamics)」は、ある物質(薬物)が生体内の標的物質に作用する強度を表す。(1)および(2)は、患者に投与される医薬Bの化学構造が、患者の体内で発現されているタンパク質と相互作用する程度(医薬Bの薬物動態学的要因または薬力学的要因)を適切に制御するために、利用される。(3)は、患者に固有の遺伝学的背景に基づくある疾患の発症リスクを、医薬の投与(人為行為)によって顕在化(つまり当該疾患を発症)させないために、利用される。上述した(1)~(3)に関し、本願では、医薬の投与が禁止される遺伝型である「禁止因子」と、医薬の投与に際して必須とされる遺伝型である「必須因子」を投与計画の決定のための判定処理に利用している(
図1の「(発明のシステム)」を参照)。
【0025】
本発明にかかる実施形態を以下詳細に説明する。
【0026】
〔実施形態1〕
以下、
図2~8に従って、患者に投与する医薬の投与計画の決定支援システム、投与計画の決定支援方法および投与計画の決定支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本決定支援システムは、患者にとって好適な投与計画(オーダーメイド投与計画)を作成することによって、ユーザの判断を補助するシステムである。ユーザには、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者、あるいは患者自身が含まれる。
【0027】
図2に示すように、本発明の一実施形態の患者に投与する医薬の投与計画の決定支援システム1は、制御部10と、制御部10に接続されたディスプレイなどの表示装置20と、制御部10に接続されたキーボード、マウス等の入力装置30とを備えている。また、制御部10は、情報取得部110(医薬情報取得部、禁止因子情報取得部、必須因子情報取得部、患者遺伝型情報取得部)、投与計画決定部120、医薬情報変更部130、および投与計画出力部140を備えている。情報取得部110、投与計画決定部120、医薬情報変更部130、および投与計画出力部140は、制御部10におけるCPU(Central Processing Unit)に含まれている。制御部10は、医薬関連遺伝子情報DB40およびゲノム情報DB50と接続されている。医薬関連遺伝子情報DB40は、当該医薬における薬効および副作用(副次疾患)と関連した遺伝型情報、ならびに当該遺伝型情報に基づく「禁止因子」および「必須因子」の遺伝型情報を、少なくとも含んでいる。投与計画の決定支援システム1は、入力装置30、医薬関連遺伝子情報DB40およびゲノム情報DB50から取得した情報に基づいて制御部10によって生成された情報を、表示装置20を介してユーザに出力する。
【0028】
制御部10(
図2)は、CPU等の制御手段、RAMおよびROM等のメモリを備え、後述する各種処理を行う。そして、投与計画の決定支援プログラムを実行することにより、制御部10(
図2)は、情報取得部110、投与計画決定部120、医薬情報変更部130、および投与計画出力部140として機能する。
【0029】
情報取得部110(
図2)は、後述の患者情報400、医薬情報500、患者遺伝型情報600、禁止因子情報700、および必須因子情報800(
図3(a)~(e))を含む情報を取得する処理を実行する。
【0030】
投与計画決定部120(
図2)は、情報取得部110(
図2)が取得した情報に基づいて、投与計画を判定する処理を実行する。
【0031】
医薬情報変更部130(
図2)は、投与計画決定部120(
図2)による判定結果に基づいて、医薬情報500(
図3(b))を変更する処理を実行する。
【0032】
投与計画出力部140(
図2)は、投与計画決定部120(
図2)による判定結果に基づいて、医薬情報500(
図3(b))または変更医薬情報510(
図6)を出力する処理を実行する。
【0033】
患者情報400は、
図3(a)に示されている、患者に関する一般情報である。患者情報400(
図3(a))は後述の患者遺伝型情報600(
図3(c))を含まない。患者情報400(
図3(a))は患者データとも称される。患者情報400(
図3(a))としては、患者ID等の患者コード、患者名、生年月日、性別、体重、疾患名、疾患の重症度などのうちの1つまたは2つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
医薬情報500は、
図3(b)に示されている、患者に投与される候補の医薬に関する情報であり、医薬情報取得部により取得される。医薬情報500(
図3(b))は医薬データとも称される。医薬情報500(
図3(b))としては、患者に投与される候補の医薬の名称、該医薬の投与量(例えば、1日服用量)などのうちの1つまたは2つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。患者情報400(
図3(a))と医薬情報500(
図3(b))が関連付けられることが好ましく、本実施形態では、患者情報400(
図3(a))の一つである患者IDが医薬情報500(
図3(b))に含まれている。
【0035】
患者遺伝型情報600は、
図3(c)に示されているように、患者の遺伝型に関する情報であり、患者遺伝型情報取得部により取得される。患者遺伝型情報600(
図3(c))は患者遺伝型データとも称される。患者遺伝型情報600(
図3(c))としては、遺伝子領域を含む患者のゲノム上の特定の座位(locus、複数の場合はloci)(以降、「ゲノム座位」と記載する)610(例えば、「遺伝子X」あるいは「遺伝子Y」と表記)と、その座位における患者の接合型を含むアレル(allele)の型、すなわち患者の遺伝型(genotype)(以降、「遺伝型」と記載する)620(例えば、記号化された情報として「
*1/
*2」、あるいは実際のヌクレオチドの種類として「A(アデニン)/C(シトシン)」と表記)が挙げられる。
【0036】
(患者の遺伝型情報)
患者遺伝型情報600(
図3(c))は、患者に固有な、患者ゲノム上の1つの座位に存在するアレル(本実施形態では1つの遺伝子に関連するアレル)の組み合わせの型(「アレルの型」)を含む。当該「アレルの型」の決定には、大きく分けて2通りの方法がある。当該方法は、患者から得られたゲノム全長の構造を表す情報(「全長文字列」)を用いる「方法1」、および患者由来のゲノムDNA試料を用いて、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアントのみ(例えば、SNP)を対象に、ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」である。
【0037】
前者の「方法1」は、大規模並列DNA塩基配列決定法(次世代塩基配列決定法)を利用して実施され得る。大規模並列DNA塩基配列決定法では、非常に多くの(時には数百万もの)ヌクレオチド配列を含む複雑なDNAサンプルを、同時かつ均等に配列決定できる。このため、大規模並列DNA塩基配列決定法は、従来のジデオキシ塩基配列決定法(サンガー法)と比較して、患者由来の血液細胞や各種組織などから定法により抽出されたゲノムDNA試料を用いて、短時間かつ低コストで、当該患者の全ゲノム(約30億のヌクレオチド数)に対応する文字列(「全長文字列」)情報に変換することが可能である。
【0038】
上記「全長文字列」に含まれている文字もしくは文字列(およびそれらの位置)をすべて決定し、ヒトゲノムの参照ヌクレオチド配列を表す文字列(「参照文字列」)と比較することによって、患者のゲノム上の特定の座位に関する遺伝型を決定できる。なお、参照文字列は、アンサンブル(Ensembl、URL:http://ensembl.org)をはじめとした公共のデータベースから取得可能である。
【0039】
例えば、ある座位に存在し得るアレルのヌクレオチド配列を表す文字列(「アレル文字列」)および集団内で当該アレル間にヌクレオチド配列の変化を生じている位置(既知のDNAバリアント)を表す情報は、集団での頻度の高い場合(例えば、SNP)、一般に利用可能なデータベース(例えば、dbSNP(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/))に格納されている。したがって、1つの座位に関するアレル文字列の組み合わせの型(「アレルの型」)のうち、「全長文字列」がどの型を含んでいるかを決定することによって、患者の有している1つの座位に関する遺伝型を決定できる。一例として、患者の遺伝型情報600(
図3(c))の決定過程の概略を、以下に説明する。
・一般に利用可能なデータベース(例えば、上述したdbSNP)に格納されている既知のDNAバリアントの位置を表す上記情報に基づいて、「全長文字列」に含まれている、上記「アレル文字列」における、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列(例えば約10~100文字)を決定する
・「全長文字列」における上記2つの文字列(すなわち、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列)が「参照文字列」と完全一致する位置を、周知の文字比較アプリケーションを用いて決定する
・「全長文字列」と「参照文字列」の間で、上記2つの文字列が完全一致する位置に挟まれている当該DNAバリアントに対応する文字(列)の一致、不一致にしたがって、「全長文字列」にある当該DNAバリアントの「アレルの型」(すなわち、患者の「遺伝型」)を決定する(上述の「全長文字列」を用いた患者の「遺伝型」に関する決定方法(「方法1」)の詳細については、〔実施形態2〕において後述されている)。
【0040】
一方、上述した後者の「方法2」(ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いた方法)としては、上記DNAバリアントが、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアント(例えば、SNP、またはゲノムにおける1から数ヌクレオチドの欠失もしくは挿入(インデル))であるとき、すでに商業化(市販キットおよび委託実施サービスの存在)されているマイクロアレイ技術は、多数(数万~数十万)のゲノム断片における多型の種類を短時間に決定可能である。マイクロアレイ技術の詳細については、キットのマニュアルまたは委託業者のHPを参照すればよい。
【0041】
以上の通り、患者の遺伝型情報600(
図3(c))は、上述した前者の「全長文字列」情報を用いる「方法1」および/または後者のゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」によって(またはこれらの方法の実施の間に)決定され得る。したがって、
図2のゲノム情報DB50(
図2)に格納されている患者の遺伝型情報600(
図3(c))は、(1)「全長文字列」(患者のゲノム情報)、(2)互いに関連付けられている患者の「遺伝型」を表す情報および当該患者を表す情報、ならびに(3)2つの当該情報が記号化されている情報(例えば、上述した
図3(c)の患者の遺伝型情報600に記載された「遺伝型620」を参照)の少なくとも1つであり得る。上記遺伝型情報は、(2)または(3)であることが好ましい。上記遺伝型情報として(2)または(3)を用いることは、投与計画決定支援システム1(
図2)およびゲノム情報DB50(
図2)に求められる性能を小さくし、投与計画決定支援システム1(
図2)の処理速度を向上させ得る。また、上記遺伝型情報として(3)を用いることは、記号の意味を解読できない不特定多数の第三者に(1)および(2)を秘匿できる。
【0042】
患者の遺伝型情報600(
図3(c))としての(2)および(3)を生成するための個々のDNAバリアントの「アレルの型」は、集団内での頻度を基準にしたDNAバリアントの種類(決定範囲)に応じて、2段階に分けて決定され得る(
図1の下部を参照)。第1段階として、まず集団内で1%以上の頻度であり、かつ自動解析にも適したDNAバリアントとして、既知の全SNPのみがゲノム網羅的に決定され、その情報は、データベース、記録媒体または記憶装置(図示せず)に格納される。また、上記の全SNPの解析に基づく患者の「遺伝型」情報が、ゲノム情報DB50(
図2)に格納される。なお、全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の決定には、上述した通り、当該患者のゲノムDNA試料を用いた実験的手法による「方法2」により、決定され得る。すなわち、まず上記ゲノムDNA試料は、患者の末梢血、口腔内細胞または頬粘膜などから定法により抽出される。続いて、上記試料を用いて、現行のマイクロアレイ技術によるゲノム網羅的な多型解析による実験的手法により、既知の全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は決定され得る。あるいは、上記の全SNPに関する患者の「遺伝型」(「アレルの型」)を、上述した「全長文字列」(患者のゲノム情報)を用いた情報解析による「方法1」により、決定してもよい(
図1の下部を参照。詳細については、〔実施形態2〕において後述されている)。
【0043】
次いで、第2段階として、必要に応じて、上記データベース、記録媒体または記憶装置に格納されていない残りのDNAバリアントに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)が、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により決定される。上記「残りのDNAバリアント」としては、集団内で頻度の低いDNAバリアント(例えば、SNV、CNV)、または自動解析に適しないDNAバリアント(例えば、CNP、STRP、あるいはその他の特殊なDNAバリアント)などが想定される(
図1の下部を参照)。残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は、入力装置30(
図2)より、患者情報400(
図3(a))および医薬情報500(
図3(b))が入力された後に決定される。
【0044】
図2の投与計画決定支援システム1は、上述の通り、医薬情報500(
図3(b))に含まれている医薬名に基づいて、医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)から、薬剤の薬効および副作用(副次疾患)と関連する遺伝子の名称あるいはゲノム座位の名称を取得する。医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)については、例えばDGIdb:Drug Gene Interaction database、URL:http://dgidb.org/などから関連情報を入手可能である。
【0045】
投与計画決定支援システム1(
図2)は、当該名称に基づいて、最新のゲノム情報DB50(
図2)を検索して、必要なDNAバリアントに関する「アレルの型」(すなわち、患者の遺伝型情報)が格納されていない場合、上述した通り、「参照文字列」情報を検索して、残りのDNAバリアントが存在するゲノム上の座位を、指定する。投与計画決定支援システム1(
図2)は、当該座位のみに存在する残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を、上記文字列(「全長文字列」)を用いた「方法1」により決定する。投与計画決定支援システム1(
図2)は、決定された残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の遺伝型情報)を上記ゲノム情報DB50(
図2)、ならびに上記データベース、記録媒体または記憶装置に格納する(図示せず)。
【0046】
図2には、ゲノム情報DB50は、制御部10(
図2)に接続されている外部記憶装置または記録媒体を読み取り可能な読み取り装置として示されているが、制御部2(
図2)に内蔵されている記憶部もしくは記録媒体を読み取り可能な読み取り部、または、ネットワーク上に存在する構成として代替可能である。
【0047】
上記(2)または(3)である上記遺伝型情報は、最新の報告に基づいて更新され得る。当該報告は、ある遺伝子に関連した新たなDNAバリアント、ならびに当該DNAバリアントに関する「アレルの型」(「遺伝型」)の総体(すなわち、該特定部位のすべてのアレル型)の報告である。上述した通り、上記「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、既存の報告および最新の報告に基づいて新たな(2)または(3)を生成できる。
【0048】
ゲノム情報DB50(
図2)には、患者の全ゲノムを構成する全ヌクレオチド配列が保存され得る。患者遺伝型情報600(
図3(c))は、患者の全ゲノムを構成する全ヌクレオチド配列の一部である。
【0049】
禁止因子情報700は、
図3(d)に示されている、医薬の投与が禁止される、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である禁止因子の情報であり、禁止因子情報取得部により取得される。禁止因子情報700(
図3(d))は、医薬の投与計画において、患者における対応するゲノム上の座位における遺伝型が一致してはならないアレルの組み合わせの型からなる遺伝型である。禁止因子情報700(
図3(d))は禁止因子データとも称される。禁止因子情報700(
図3(d))としては、遺伝子と関連したゲノム座位710(例えば、「遺伝子X」と表記)とその遺伝型720(例えば、記号化された情報として「
*1/
*1」、あるいは実際のヌクレオチドの種類として「A(アデニン)/A(アデニン)」と表記))が挙げられる。遺伝型720(
図3(d))の例としては、薬物動態学(例えば、薬剤代謝酵素の特定部位)や薬力学(例えば、特定薬剤に対する標的分子内の酵素活性部位)と関連する遺伝子の特定変異を構成する遺伝型;重篤な副作用(副次疾患)の発症に大きく関与することが実証されている単一遺伝子疾患の原因遺伝子の遺伝型;あるいは複雑疾患(多因子疾患、多遺伝子性疾患)のうち強い影響・効果をもつことが実証された「希少バリアント(rare variant)」、「個人特有のバリアント(private variant)」ならびに「メンデル遺伝様サブセット」の変異に関する重要なヌクレオチド変異を構成する遺伝型が挙げられる。
【0050】
禁止因子情報700(
図3(d))の一実施形態としては、患者におけるある特定の疾患リスクと関連した特定の遺伝的バリアントのオッズ比の数値が、設定値(例えば、5、10、または20)以上であるかまたは設定値よりも高い場合の、当該特定の遺伝的バリアントからなる遺伝型が挙げられる。そのような遺伝的バリアントは公知であり、特に希少バリアントが候補となる。なお、オッズ比とは、特定の遺伝的バリアントを有しているときに発症する確率を、そのバリアントを有していないときに発症する確率で割った値である。禁止因子情報700(
図3(d))の別の実施形態としては、特定の複雑疾患に関連するメンデル遺伝様サブセットが挙げられる。
【0051】
必須因子情報800は、
図3(e)に示されている、医薬の投与に際して必須とされる、ゲノム上の座位における遺伝型の情報である必須因子の情報であり、必須因子情報取得部により取得される。必須因子情報800(
図3(e))は、医薬の投与計画において、患者における対応するゲノム上の座位における遺伝型が一致しなければならないアレルの組み合わせの型からなる遺伝型である。必須因子情報800(
図3(e))は必須因子データとも称される。必須因子情報800(
図3(e))としては、患者の対応する遺伝子と関連したゲノム座位の遺伝型と一致しなければならないゲノム座位810(例えば、「遺伝子Y」と表記)とその遺伝型820(例えば、記号化された情報として「
*2/
*3」、あるいは実際のヌクレオチドの種類として「G(グアニン)/T(チミン)」と表記)が挙げられる。
【0052】
必須因子情報800(
図3(e))としては、特に限定されないが、必須因子情報800の一つの実施形態としては、特定の疾患に対する分子標的薬として医薬の薬効に必須であるゲノム上の特定座位のアレルの型、あるいはアレルの型の組み合わせを有する遺伝型、抗がん剤におけるコンパニオン診断として実証されたDNA変異の遺伝型などが挙げられる。必須因子情報800(
図3(e))の別の実施形態としては、特定の薬剤に対して、ある疾患群のうち、適応が限定的に実証された亜型分類(サブタイプ)の遺伝型が挙げられる。
【0053】
禁止因子情報および必須因子情報は、医薬関連遺伝子情報に関する公共のデータベース(例えばDGIdb:Drug Gene Interaction database、URL:http://dgidb.org/)や市販のデータベースから取得することができる。上述した禁止因子情報や必須因子情報、ならびにこれらの情報源としての医薬遺伝子関連情報は、新情報の追加および旧情報の更新によって、今後もより拡充され、かつより精度を増す。したがって、上記情報は、本実施形態の実施時における最新の情報に基づいて作成されることが好ましく、人工知能(Artificial Intelligence、以降では「AI」と記載する)によって生成され得る。上記新情報の追加の入力を受けたAIは、旧情報の更新に使用される新たな、医薬および遺伝子の関連性、およびこれらの情報にもとづく禁止因子情報や必須因子情報を出力し得る。
【0054】
以下、禁止因子および必須因子のいくつかの具体例を挙げる。
【0055】
(禁止因子情報、必須因子情報)
禁止因子情報700(
図3(d))の一つの具体例は、抗がん剤のイリノテカン(irinotecan)の投与における、UGT1A1酵素をコードする遺伝子のプロモーター領域の
*28/
*28のホモ接合型変異である。UGT1A1の遺伝子多型には、遺伝子の転写調節領域における2種類のヌクレオチド[TA]の反復配列が野生型では6回であるUGT1A1
*6バリアントであるのに対して、変異型では7回に増えたUGT1A1
*28バリアントが認められている。イリノテカンは、肝臓で抗腫瘍作用をもつ活性型へと変換されるプロドラッグであり、通常はUGT1A1酵素により代謝されるが、UGT1A1
*28プロモーター領域のホモ接合型変異多型により同酵素の産生減少が起こり、骨髄と胃腸で薬物の重篤な副作用(毒性)が起こるリスクが非常に高くなる。
【0056】
向精神作用性抗てんかん剤、躁状態治療剤のカルバマゼピンなどの場合、遺伝型HLA-A*31:01またはHLA-B*15:02が禁止因子である。該医薬が投与される患者の対応する遺伝型がこれと合致した場合、中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)等の重篤な皮膚障害の副作用が生じ得る。
【0057】
高尿酸血症治療剤のアロプリノールの場合、遺伝型HLA-B*58:01が禁止因子である。該医薬が投与される患者の対応する遺伝型がこれらと合致した場合、中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)、皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson症候群)等の重篤な皮膚障害の副作用が生じ得る。
【0058】
各HLA遺伝子のバリアントのアレルの型(遺伝型)の実際の塩基配列は、 http://hla.alles.org/より検索可能である。
【0059】
必須因子情報700(
図3(e))の一つの具体例として、非小細胞肺がん患者に対する抗悪性腫瘍薬であるALKチロシンキナーゼ阻害薬クリゾチニブ(商品名ザーコリ)の場合、該医薬が投与される患者のゲノムにおける染色体転座によるALK融合遺伝子(EML4-ALK融合遺伝子)の遺伝型またはROS1融合遺伝子を構成する遺伝型の存在が必須因子として挙げられる。
【0060】
黒色腫患者に対するBRAF阻害薬であるベムラフェニブ(総称名 ゼルボラフ)は、BRAF遺伝子内のアミノ酸変異に起因したV600変異(V600E、V600D、V600R、V600K、V600G、V600M)を含む活性化変異型のBRAFキナーゼ活性を阻害することによりBRAF活性化によるMEKおよびERKのリン酸化を阻害し、BRAF V600変異を有する腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。このため、上記アミノ酸変異に起因したBRAF遺伝子内の特定ゲノム部位の変異を有する遺伝型が、必須因子である。
【0061】
慢性骨髄性白血病の患者に対するBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブメシル酸塩(総称名グリベック)は、染色体転座により生じたフィラデルフィア染色体(bcr-abl遺伝子)を構成する遺伝型の存在と、FIP1L1-PDGFRαの存在が必須因子である。
【0062】
なお、禁止因子の遺伝型と必須因子の遺伝型のゲノム上の座位は、両者で、重複していてもよい。例えば、同一座位において、禁止因子の遺伝型のヌクレオチドは「A(アデニン)」であるのに対して、必須因子の遺伝型のヌクレオチドは「G(グアニン)」である等であってもよい。
【0063】
(投与計画決定支援システムの処理)
次に、
図4および5を参照しながら、
図2のシステムが実行する処理手順を説明する。
【0064】
ユーザである医師が、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別などの患者情報と患者への投与が意図された医薬の医薬名(ここでは化合物B)などの医薬情報とを入力装置30(
図2)を介して入力すると、入力装置30は、入力された患者情報400(
図3(a))と医薬情報500(
図3(b))とを情報取得部110(
図2)に送る(
図4の工程S1)。なお、本実施形態では患者情報400(
図3(a))と医薬情報500(
図3(b))が別々のデータとなっているが、患者情報と医薬情報を関連付けて一セットのデータとして取り扱ってもよい。
【0065】
次に、情報取得部110(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))に含まれている医薬名が表す薬剤の名称に基づいて、当該医薬に対応する禁止因子情報700(
図3(d))を、
図2の医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)から取得する(
図4の工程S2)。
図4の工程S2で判定が「YES」の場合、次に、情報取得部110(
図2)は、患者情報400(
図3(a))に含まれている患者ID情報、および禁止因子情報700(
図3(d))に含まれている遺伝子と関連した特定のゲノム座位の名称に基づいて、患者IDおよび遺伝子と関連した特定のゲノム座位に対応する患者の遺伝型情報500(
図3(c))を、ゲノム情報DB50(
図2)から取得する(
図4の工程S3)。
図4の工程S3で判定が「YES」の場合、次に、情報取得部110(
図2)は、取得した医薬情報500(
図3(b))、患者遺伝型情報600(
図3(c))、および禁止因子の遺伝型情報700(
図3(d))を投与計画決定部120(
図2)に送る。投与計画決定部120(
図2)は、医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)から取得した禁止因子情報700(
図3(d))に基づいて、当該医薬に関連する遺伝型が、患者遺伝型情報600(
図3(c))中の対応する遺伝型(患者の第1の遺伝型情報)と一致するかどうかを判定する(
図4の工程S4)。
【0066】
図4の工程S4に関し、例えば
図3(c)および(d)に示す例では、禁止因子情報700(
図3(d))によると、化合物である医薬Bに関する禁止因子である遺伝子と関連したゲノム座位710、および対応する遺伝型720は、「遺伝子X」で「
*1/
*1(ホモ接合体)」(実際のヌクレオチドの種類として「A(アデニン)/A(アデニン)」)となっているが(
図3(d))、患者の遺伝型情報600(
図3(c))によると、患者の対応する遺伝子と関連したゲノム座位610、および対応する遺伝型620は、「遺伝子X」で「
*1/
*2(ヘテロ接合体)」(実際のヌクレオチドの種類として「A(アデニン)/C(シトシン)」)であるため、両者は一致しない。このため、
図4の工程S4は「NO」となる。なお、本実施形態では遺伝型を
*1/
*1、
*1/
*2で示しているが、括弧で並記されているように、この記号は遺伝型に対応する実際の各ヌクレオチドの種類の記号(A/A、T/G等)で示してもよい。
【0067】
なお、
図4の工程S2で判定が「NO」の場合、
図2の情報取得部110は、
図4の工程S5に進む前に、制御部10(
図2)が、表示装置20(
図2)に、禁止因子情報700(
図3(d))が存在しないことを示す警告表示を表示させる工程をさらに含んでもよい。
【0068】
図4の工程S4で判定が「NO」の場合、次に、情報取得部110(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))に含まれている医薬名が表す薬剤の名称に基づいて、当該医薬に対応する必須因子情報800(
図3(e))を、
図2の医薬関連遺伝子情報DB40から取得する(
図4の工程S5)。
図4の工程S5で判定が「YES」の場合、次に、情報取得部110(
図2)は、患者情報400(
図3(a))に含まれている患者ID情報、および必須因子情報800(
図3(e))に含まれている遺伝子と関連した特定のゲノム座位の名称に基づいて、患者IDおよび遺伝子と関連した特定のゲノム座位に対応する患者の遺伝型情報600(
図3(c))を、ゲノム情報DB50(
図2)から取得する(
図4の工程S6)。
図4の工程S6で判定が「YES」の場合、次に、情報取得部110(
図2)は、取得した医薬情報500(
図3(b))、患者遺伝型情報600(
図3(c))、および必須因子情報800(
図3(e))を投与計画決定部120(
図2)に送る。
図2の投与計画決定部120は、医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)から取得した必須因子情報800(
図3(e))に基づいて、当該医薬に関連する遺伝型が、患者遺伝型情報600(
図3(c))中の対応する遺伝型(患者の第2の遺伝型情報)と一致するかどうかを判定する(
図4の工程S7)。
【0069】
例えば
図3(c)および(e)に示す例では、必須因子情報800(
図3(e))によると、医薬Bに関する必須因子である遺伝子と関連した特定のゲノム座位810および遺伝型820は、「遺伝子Y」で「
*2/
*3(ヘテロ接合体)」(実際のヌクレオチドの種類として「G(グアニン)/T(チミン)」)となっており(
図3(e))、患者の遺伝型情報600(
図3(c))によると、患者の対応する遺伝子と関連した特定のゲノム座位610、および対応する遺伝型620は、「遺伝子Y」で「
*2/
*3(ヘテロ接合体)」(実際のヌクレオチドの種類として「G(グアニン)/T(チミン)」)であるため、両者は一致する。このため、
図4の工程S7で判定は「YES」となる。
【0070】
図4の工程S7で判定が「YES」の場合、投与計画決定部120(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))を投与計画出力部140(
図2)に送り、投与計画出力部140(
図2)が上記医薬情報を出力し、表示装置20(
図2)が上記医薬情報を表示し(
図4の工程S8)、投与計画決定支援システムは処理を終了する。
【0071】
なお、
図4の工程S5で判定が「NO」の場合、
図2の情報取得部110は、
図4の工程S8に進む前に、制御部10(
図2)が、表示装置20(
図2)に、必須因子情報800(
図3(e))が存在しないことを示す警告表示を表示させる工程をさらに含んでもよい。
【0072】
図4の工程S3で判定が「NO」の場合(例えば、当該医薬(医薬B)に関連する禁止因子情報700(
図3(d))がいまだ患者の遺伝型情報600(
図3(c))に記録されていない)、または
図4の工程S6で判定が「NO」の場合(例えば、当該医薬(医薬B)に関連する必須因子情報600(
図3(e))がいまだ患者の遺伝型情報600(
図3(c))に記録されていない)、
図2の情報取得部110(
図2)は、最初に入力された医薬情報500(
図3(b))を表示装置20(
図2)に送る。表示装置20(
図2)は医薬情報500(
図3(b))に加えて、「判定不能」のメッセージをその理由とともに表示し(
図4の工程S9)、システム1(
図2)は処理を終了する。
【0073】
図4の工程S4で、禁止因子である遺伝子と関連した特定のゲノム座位710の遺伝型720(
図3(d))と、患者の対応する遺伝子と関連した特定のゲノム座位610の遺伝型620(
図3(c))が一致し、
図4の工程S4で判定が「YES」の場合、または必須因子である遺伝子と関連した特定のゲノム座位810の遺伝型820(
図3(e))と、患者の対応する遺伝子と関連した特定のゲノム座位610の遺伝型620(
図3(c))が一致しないため、
図4の工程S7で判定が「NO」の場合、投与計画決定部120(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))、禁止因子情報700(
図3(d)または必須因子情報800(
図3(e))および適否「不適」を医薬情報変更部130(
図2)および投与計画出力部140(
図2)に送る。投与計画出力部140(
図2)が当該患者にとって、当該医薬は「不適である」との警告メッセージを(根拠となる「遺伝型」およびその理由もあわせて)出力し、表示装置20(
図2)が上記事項を表示する(
図5の工程S10)。医薬情報変更部130(
図2)は禁止因子情報700(
図3(d))および必須因子情報800(
図3(e))に基づき、例えば当該薬剤の代謝率が低いため、用量の変更が必要と判断した場合、医薬情報500(
図3(b))に記載された「1日服用量」を減少させる(
図5の工程S11)。この場合(
図5の工程S12で「NO」)、用量または用法を変更した変更医薬情報510(
図6)を投与計画出力部140(
図2)に送り、投与計画出力部140(
図2)が上記変更医薬情報を出力し、表示装置20(
図2)が上記変更医薬情報を表示し(
図5の工程S14)、投与計画決定支援システムは処理を終了する(薬剤の用量変更に関する具体例は、後述されている)。
【0074】
概して、「用量」に関する変更医薬情報で、一日服用量が投与限界を超えた場合、あるいは、薬力学的要因により薬効が全く見込めない場合には、医薬情報変更部(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))における用量の変更から医薬の種類の変更に移行する(
図5の工程S12で「YES」)。
【0075】
図5の工程S12で「YES」の場合、例えば、禁止因子情報700(
図3(d))および必須因子情報800(
図3(e))に基づき、プロドラッグを活性化合物に変換できず薬効を見込めない場合、医薬情報変更部130(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))に記載された「医薬名」を変更する((
図5の工程S11)。この場合(
図5の工程S13で「YES」)、医薬情報変更部130(
図2)は、医薬名を変更した変更医薬情報520(
図7)を情報取得部110(
図2)に送り、
図4の工程S2に戻る。
【0076】
図5の工程S13で「NO」の場合、つまり変更する候補となる医薬が存在しない場合は、投与計画決定支援システムは処理を終了する。
【0077】
以上の通り、本実施形態の投与計画決定支援システム1(
図2)は、ある医薬に関連する禁止因子の遺伝型と必須因子の遺伝型のうち、少なくともどちらか一方が患者のゲノム中に存在するか否かを照合し、患者により適した投与計画を決定することを支援する。したがって、本実施形態の投与計画決定支援システム1(
図2)は、遺伝学の知識に乏しいユーザでも、患者に固有の遺伝型に基づく薬効に優れたオーダーメイド投与計画を正確かつ簡便に決定することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の投与計画決定支援システム1(
図2)によれば、医師は、薬物療法、放射線治療、運動療法、食事療法等の種々の疾患の治療方法の中から、患者に適した治療法を選択することをも支援する。例えば、本実施形態の投与計画決定支援システム1(
図2)により、ある医薬に関する患者に適した投与計画が特定された場合、該医薬の投与計画を患者の今後の治療方法に反映することができる。そのような医薬の投与が患者に適していないと判定された場合も、該医薬の投与を患者の今後の治療方法から除外することができる。
【0079】
また、本実施形態の投与計画決定支援システム1(
図2)によれば、ある医薬に関連する禁止因子の遺伝型が患者のゲノム中に存在する場合や、ある医薬に関連する必須因子の遺伝型が患者のゲノム中に存在しない場合は、医薬情報500(
図3(b))に含まれる医薬の種類またはその用量を変更することにより、投与計画を変更することができる。したがって、システム1(
図2)の医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)に記録される禁止因子および/または必須因子の情報を最新情報に更新することにより、システム1(
図2)が患者に合わせてカスタマイズされ、投与計画の正確性および精度が向上する。
【0080】
禁止因子の遺伝型と患者の第1の遺伝型が一致する場合や、必須因子の遺伝型と患者の第2の遺伝型が一致しない場合の医薬の用量の変更例(
図6)および医薬の種類の変更例(
図7)について以下説明する。
【0081】
図2の投与計画決定部120は、関連性情報A(
図8(a))において、医薬情報Aのフェニトインの処方用量(1日服用量が初期量、維持量ともに300mg)の場合、CYP2C9内のSNP(rs1057910)に関する患者の遺伝型情報としてヘテロ接合型「
*1/
*3」(実際のヌクレオチドの種類は「A(アデニン)/C(シトシン)」)を取得しているとき、ヘテロ接合型「
*1/
*3」に対応するフェニトインの代謝率(薬効)の値「-1(禁止因子)」から、医薬情報500(
図3(b))の代謝率(薬効)に関する適否を「不適」として決定する。投与計画決定部120(
図2)は、医薬情報500(
図3(b))(具体的には、
図8(a)の関連性情報Aにおける「医薬情報A」の処方用量)および適否「不適」を医薬情報変更部130(
図2)に送る。
【0082】
図2の医薬情報変更部130は、負の値である代謝率(薬効)の値「-1(禁止因子)」を低いと判断する。医薬情報変更部130(
図2)は、代謝率(薬効)「-1」にしたがって、医薬情報500(
図3(b))(具体的には、
図8の関連性情報Aにおける「医薬情報A」の処方用量)における一日服用量のうち、維持投与量(初期投与期間の経過後に継続的に投与される薬剤の投与量で、医薬情報500(
図3(b))に記載された「1日服用量(維持量)」)を1単位(1単位=医薬情報500に記載の25%)だけ減少させ、薬効「±0」にする(
図5の工程S11)。
図5の工程S11における変更が「一日服用量(維持量)」である(
図5の工程S12での判断は「NO」)ので、上述の通り、医薬情報変更部130(
図2)は「一日服用量(維持量)」を300mgから25%減じた投与量として、225mgに変更した変更医薬情報510(
図6)を表示装置20(
図2)に送る。なお、初期投与量に変更は無く、
図3(b)の医薬情報500に記載された「一日服用量(初期量)300mg」のままである(具体的には、
図8(b)の用量に関する変更医薬情報Bの処方用量)。表示装置20(
図2)が変更医薬情報510(
図6)を表示し、投与計画決定支援システム1(
図2)は処理を終了する。なお、
図6の変更医薬情報510における一日服用量が投与限界を超えるとき、医薬情報変更部130(
図2)は、変更医薬情報510(
図6)における医薬の種類の変更を実行する(
図5の工程S12で「YES」)。
【0083】
以上の例示した場合と異なり、投与計画決定部120(
図2)は、ゲノム情報DB50(
図2)から患者の遺伝型情報として正常型「
*1/
*1」(実際のヌクレオチドの種類は「A(アデニン)/A(アデニン)」)を取得しているとき、フェニトインの代謝率(薬効)の値を「±0(必須因子)」と決定し、医薬情報500(
図3(b))(具体的には、
図8(a)の関連性情報Aにおける「医薬情報A」の処方用量)を表示装置20(
図2)に送る。表示装置20(
図2)が上記医薬情報を表示し、投与計画決定支援システム1(
図2)は処理を終了する。
【0084】
また、上述の例では医薬情報に対する変更は医薬の種類の変更ではなかったので、
図2の医薬情報変更部130は
図5の工程S12で判断「NO」を行った。しかし、例えば、下記の例では、医薬情報変更部130(
図2)は医薬の種類を変更する(
図5の工程S12で判断「YES」)。条件:非小細胞肺癌の患者Sに対して好適な薬剤の選択を行う。(薬剤1)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤:ゲフィチニブ、(薬剤2)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤:オシメルチニブメシル酸塩。なお、患者Sは次の遺伝型を有しているとする。EGFR:2573位 変異型(G/G)(ホモ接合型)、EGFR:2369位 変異型(T/T)(ホモ接合型)、KRAS:34-35位 正常型(G/G-G/G)(ともに、ホモ接合型)、KRAS:38位 正常型(G/G)(ホモ接合型)
【0085】
患者Sに対して、投与を予定している(薬剤1)EGFRチロシンキナーゼ阻害薬:ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)を選択した場合、薬剤ゲフィチニブの「禁止因子」情報を取得し(
図4の工程S2)、対応する患者Sの第1の遺伝型情報を取得する(
図4の工程S3)。当該薬剤ゲフィチニブに対する「禁止因子」の遺伝型情報としては、ゲフィチニブに対する耐性と関連したEGFR遺伝子の2369位がホモ接合型変異「T(チミン)/T(チミン)」またはヘテロ接合型変異「T(チミン)/C(シトシン)」のバリアントである。次に、上記「禁止因子」情報と対応する患者Sの第1の遺伝型情報との照合の結果、患者Sの遺伝型が、「禁止因子」として、EGFRの2369位のホモ接合型変異(「T/T」)を保持しており「禁止因子」と一致するため、不適となる(
図4の工程S4で「YES」)。よって、「当該医薬は不適である」との警告メッセージを、その理由(「禁止因子」遺伝型(EGFR:2369位T/TまたはT/C)の不適合:患者Sの遺伝型T/Tの一致による)と共に表示する(
図5の工程S10)。好ましくは、具体的に、「患者Sの遺伝型は、EGFR遺伝子エクソン20(2369C>T)の遺伝子変異により、ゲフィチニブに対して耐性を示す患者の遺伝型と関連したEGFR T790M変異のアミノ酸変異(EGFRタンパク質の790番目のアミノ酸配列がトレオニンからメチオニンに変異)を起こしたタンパク質を含んでいる」という内容事項も、あわせて提示することが望ましい。なお、薬剤ゲフィチニブの「必須因子」情報については、対応する患者Sの第2の遺伝型情報との比較・照合の結果は、すべて、完全一致するため、「適合」となっている。ゲフィチニブの必須因子の遺伝型情報としては、EGFRの2573位がG/GまたはG/Tであること、およびKRASの34-35-38位がG/G-G/G-G/Gであることである。
【0086】
続いて、上述の通り、上記の患者Sは、当該薬剤ゲフィチニブに対する「禁止因子」の遺伝型情報として、ゲフィチニブ耐性と関連したEGFRの2369位のホモ接合型変異「T/T」を保持していることから、薬力学的要因により薬効が見込めないため、今回は、用量の変更ではなく、医薬の変更である。そこで、
図5の工程S12の判定が「YES」となり、工程S13に進むが、今回は、(薬剤1)ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)に対する変更医薬として、(薬剤2)EGFRチロシンキナーゼ阻害薬:オシメルチニブメシル酸塩(商品名:タグリッソ)が登録されているため、
図5の工程S13の判定が「YES」となり、
図4の工程S2に戻る。
【0087】
ゲフィチニブと同様な手順で、(薬剤2)オシメルチニブメシル酸塩の「必須因子」および「禁止因子」の遺伝型、ならびに対応する患者の遺伝型を取得した後、比較・照合する。その結果、両者(「必須因子」および「禁止因子」)ともに適合であるため、「不適ではない」という判定となり(
図4の工程S4で「NO」、工程S7で「YES」)、最終的に変更医薬情報520(
図7)として、T790M変異EGFRタンパク質に阻害効果を示す不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(薬剤2)オシメルチニブメシル酸塩が、ユーザに提示される(
図4の工程S8)。なお、オシメルチニブメシル酸塩の必須因子情報としては、EGFRの2573位がG/GまたはG/Tであること、およびKRASの34-35-38位がG/G-G/G-G/Gであることである(なお、当該薬剤(オシメルチニブメシル酸塩)には、上記の(薬剤1)ゲフィチニブの禁止因子の遺伝型情報であったEGFRの2369位のホモ接合型変異(「T/T」)またはヘテロ接合型変異(「T/C」)は存在しない。)。
【0088】
変更医薬が登録されていない場合は(
図5の工程S13で「NO」)、システムは終了する。また、「禁止因子」または「必須因子」の遺伝型は取得できたが、対応する患者の遺伝型情報を取得できなかった場合は(
図4の工程S3で「NO」または工程S6で「NO」)、ユーザに当該医薬は「判定不能」とメッセージを、その理由とともに提示する(
図4の工程S9)。
【0089】
本発明は、上記実施形態に限られず、以下のような種々の変形が可能である。
【0090】
図4の投与計画決定支援システムの処理手順において、患者遺伝型情報600(
図3(c))として、医薬情報500(
図3(b))に表される医薬と関連する禁止因子情報700(
図3(d))と関連する患者ゲノム上の座位における遺伝型(「第1の遺伝型」)の情報および/または必須因子情報800(
図3(e))と関連する患者ゲノム上の座位における遺伝型(「第2の遺伝型」)の情報がゲノム情報DB50(
図2)に記録されていないとき、
図2の投与計画決定支援システム1は、
図4の工程S3から工程S9および/または工程S6から工程S9に進む代わりに、
図2の制御部10(特には情報取得部110)が、ゲノム情報DB50(
図2)に格納された患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、該全ヌクレオチド配列を表す情報から、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む、あらゆる頻度のバリアントを表す情報について、禁止因子情報700(
図3(d))と関連する患者ゲノム上の座位に存在するDNAバリアント(患者の「第1の遺伝型」)および/または必須因子情報800(
図3(e))と関連する患者ゲノム上の座位に存在するDNAバリアント(患者の「第2の遺伝型」)を検出して、患者遺伝型情報600(
図3(c))を更新し、
図4の工程S2に戻ってもよい。
【0091】
例えば、上記DNAバリアントを検出するために、検出法(1)として、当該DNAバリアントに対応する標的ヌクレオチド配列と、基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列とが結合した結合配列を生成し、当該結合配列と、患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返すようにしてもよい。
【0092】
あるいは、検出法(2)として、上記DNAバリアントを検出するために、基準のヒトゲノムにおいて当該DNAバリアントに対応する位置の両側の部分ヌクレオチド配列に対応する2つのヌクレオチド配列を生成し、当該2つのヌクレオチド配列と、患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列とを比較することを、部分ヌクレオチド配列の長さを増加させながら繰り返すようにしてもよい。
【0093】
〔実施形態2〕
以下では、上述した2種類のDNAバリアントの検出法(1)および(2)、すなわち、公知のDBに格納されているヒトゲノム(「参照文字列」)ではなく、個人から得られたゲノムの全ヌクレオチド配列(「全長文字列」)における任意のDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を決定する方法を説明する。上記DNAバリアントは、SNP、SNV、インデル、CNP、CNV、マイクロサテライト多型(「STRP」)を含むあらゆるヌクレオチドの変化である。当該方法では、上記標的ヌクレオチドを挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つの文字列を、基準のヒトゲノムを表す公知の文字列(「参照文字列」)から抽出し、使用する。
【0094】
上記方法では、標的ヌクレオチドの種類に応じて、(1)標的ヌクレオチドおよびこれを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列が結合した配列を表す1つの連続した文字列、または(2)標的ヌクレオチドを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列のそれぞれを示す2つの文字列が使用される。(1)は、標的ヌクレオチドが、ヒトゲノムにおいて公知であり、かつSNP、SNVまたはインデルであるときに、「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の簡便な決定法として使用される。(2)は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の「アレルの型」の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。
図9および10を参照して、(1)および(2)の文字列を用いる上記方法を以下に説明する。
【0095】
(SNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定する簡便な方法)
上述した(1)の文字列による当該方法は、特に、SNP、SNVまたはインデルのアレルの型を決定する簡便な方法である。
図9に示されているように、(1)の文字列は、標的ヌクレオチド(SNP、SNVまたはインデル)を表す文字列902、文字列902を挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つ文字列901および903を含んでいる、1つの連続した文字列である。文字列901および903は、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)(例えば、アンサンブル(Ensemble、URL:http://ensembl.org)から取得可能)の一部として決定される(
図10の工程S15)。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))は、本実施形態に係る方法を実施する時点で既知の(以降では単に「既知の」と記載する)DNAバリアントとして、既知のDBに格納されている。つまり上記「DNAバリアント」は、本願の出願以降に見いだされたDNAバリアントも含まれ得る。たとえば、既知の全SNPに関する情報は、dbSNPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)より取得可能である。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))が、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)に存在する位置の情報も、当該DB(例えば、上記のdbSNPデータベース)に格納されている。(1)の文字列において、文字列901と文字列903の長さは同一に設定し、解析部位(文字列902)を中央に配置することが好ましい。
【0096】
したがって、上記方法によって、既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれているか否かによって決定する(
図10の工程S16)。個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれ得る位置は、上記DBに格納されている基準のヒトゲノム(「参照文字列」)の位置の情報から推定可能である。したがって、例えば、(1)の文字列と完全一致する1つの文字列を見出したとき(
図10の工程S17)、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)から、(1)の文字列を含み得る文字列を抽出し、当該文字列と(1)の文字列とを比較することによって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列(「全長文字列」)における既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定できる(
図10の工程S18)。
【0097】
ここで、
図9の文字列901および903の長さは、少なくとも10文字(例えば、10、20、30、40、50、100、150、200文字またはそれ以上)、好ましくは10~1000文字である。(1)の文字列の文字数が少ないほど、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出す確率が高くなる。(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出したとき(
図10の工程S17で「NO」)、2つの文字列(
図9の文字列901と文字列903)の長さを均等にそれぞれ1文字以上(例えば、1、3、5、10、20、25、50または100文字)ずつ延長する(
図10の工程S20)ことによって、上記確率が低下する。ただし、2つの文字列の合計は、例えば、10000文字以下である。極端に長い2つの文字列(
図9の文字列901と文字列903)の一方が、標的ヌクレオチド(
図9の文字列902)以外のDNAバリアントを表す文字列を含んでいるとき、結果「(1)の文字列は、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列に含まれていない」が必ず現れるためである。
【0098】
例えば、ゲノム上の特定の位置における既知のSNPのアレルの型は、ヌクレオチドの種類と同じく、最大で4種類である。例えば、正常型アレルのヌクレオチドがAで表されるとき、T、GおよびCによって表されるヌクレオチドを含むアレルは、変異型アレルである。したがって、
図9の文字列902をA、T、GおよびCに指定して、上述の処理を4回試行することによって、上記特定の位置における既知のSNPのアレルの型を決定可能である(
図10の工程S18)。しかしながら、実際には、既知のSNPは、集団内で2種類(まれに3種類)のヌクレオチドが一般的であることから、ほとんど2回の試行で容易に決定可能である。
【0099】
図9において、正常型文字列を含む文字列901~903(正常文字列)および変異型文字列を含む文字列901~903(変異文字列)は、個人のゲノムがSNPに関して、ホモ接合型またはヘテロ接合型であるかの決定に使用され得る。例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)の両方(通常、ゲノムは、母親ならびに父親由来の2セットを保持する接合型として存在する)に、正常文字列が一致し、変異文字列が一致しないとき、当該個人のゲノムは正常型アレルである(正常型:N/N)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の一方に、正常文字列が一致し、他方に変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを一方のゲノムに有している(ヘテロ接合型:N/M)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の両方に、正常文字列が一致せず、変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合型:M/M)。
【0100】
当該個人における上記遺伝型の決定過程を、上記のフェニトイン(抗てんかん薬)に関する関連性情報A(
図8(a))の情報に基づいて、CYP2C9(薬剤代謝酵素遺伝子)のコード領域内に存在する既知のSNP(rs1057910)を例に、具体的に説明する。上記文字列902に対して、SNP(rs1057910)における野生型(正常型)アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「アデニン(A)」であり、フェニトインの代謝率が低下することが知られている低代謝型アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「シトシン(C)」である。また、既知のSNPの場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。そこで、野生型文字「A」を含む文字列901~903(「野生型文字列」)、および低代謝型文字「C」を含む文字列901~903(「低代謝型文字列」)を抽出して、上記工程を2回試行することにより当該個人の遺伝型を容易に決定できる。
【0101】
具体的には、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に対して、「野生型文字列」が一致し、「低代謝型文字列」が一致しないとき、当該個人のゲノムは野生型アレルを両方のゲノムに有している(野生型:「A/A」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」と「低代謝型文字列」の両方に一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを一方のゲノムに有する(ヘテロ接合型:「A/C」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」が一致せず、「低代謝型文字列」が一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合の低代謝型:「C/C」)。
【0102】
以上の過程により決定した当該個人におけるCYP2C9のSNP(rs1057910)のヌクレオチド変化の組み合わせの型(「A/A」、「A/C」または「C/C」)に応じて、関連性情報A(
図8(a))のフェニトインの医薬情報Aの処方用量(1日服用量が初期量、維持量ともに300mg)の場合、禁止因子情報A、必須因子情報A(
図8(a))に示す通り、異なる記号化された遺伝型(「
*1/
*1」、「
*1/
*3」または「
*3/
*3」)、ならびに異なる代謝率(薬効)(「±0(必須因子)」、「-1(禁止因子)」または「-2」(禁止因子))を決定可能である。
【0103】
決定された遺伝型とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB50(
図2)に格納される(
図10の工程S19)。
【0104】
(あらゆるDNAバリアントの「アレルの型」の決定に適用できる一般的な方法)
上述した(2)の文字列による当該方法は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の接合型を含むアレルの型(「アレルの型」)の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢は、例えば、マイクロサテライト多型(「STRP」)などのように、反復回数の異なる単純反復配列を標的ヌクレオチドにするときに生じる。つまり、(2)の文字列は、標的ヌクレオチドの数、さらには標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列も決定する必要のあるときに特に有効である。
【0105】
標的ヌクレオチドの全長が数万ヌクレオチドに達し得、標的ヌクレオチドの長さには大きな個体差が生じ得る。したがって、特定の標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列は、当該個体のゲノムに基づいて、個々に決定される必要がある。しかし、標的ヌクレオチド(CNP、CNV、STRP)が存在するゲノム上の座位は、SNP、SNVまたはインデルと同様に、ヒトの基準ゲノムではすでに同定されている。当該座位における標的ヌクレオチドの存在位置も相対的に決定されている。つまり、(2)の文字列は、ヒトの基準ゲノムを表す文字列(「参照文字列」)において既知である(
図10の工程S15)。
【0106】
(2)の文字列は、個人のゲノムに存在する既知のDNAバリアントを表す標的ヌクレオチドの両側に隣接するヌクレオチド配列を表す文字列と完全一致し得る。したがって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(2)の文字列(2つ1組:
図9の文字列901ならびに903)が存在するか否かを決定する(
図10の工程S17)ことによって、標的ヌクレオチドが個人のゲノム上に存在するか否かを決定できる(
図10の工程S18)。(2)の文字列(2つ1組:
図9の文字列901ならびに903)の長さは、(1)の文字列における文字列901および903の長さと同様に設定され得る。
【0107】
個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:
図9の文字列901ならびに903)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(
図9の文字列902であり、標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)が、抽出される。
【0108】
例えば、抽出された文字列がマイクロサテライト多型(「STRP」)のように非常に短い配列(1~4塩基対の長さ)の単純反復配列を表すとき、文字列に含まれている反復回数(および、ヌクレオチド総数)がさらに決定される。単純反復配列は、個体のゲノムにおいて、例えば数ヌクレオチド~数十ヌクレオチドを1単位として、反復回数が異なり得る。回数に対応する「アレルの型」を検出する。例えば、2種類の異なる長さの配列を検出した場合、「ヘテロ接合型」、また1種類のみ長さの配列を検出した場合、「ホモ接合型」と決定する。
【0109】
晩発性の単一遺伝子疾患であるハンチントン病の原因遺伝子(HTT)をコード配列内に存在する3ヌクレオチド(CAG)のマイクロサテライト多型(「STRP」)を例に、当該若年成人の無症候者(あるいは、当該疾患患者)における上記遺伝型の決定過程を具体的に説明する。ハンチントン病の患者では、変異アレルが細胞(特に神経細胞)にとって有害な異常タンパク質を産生する。ニューロンの消失は緩徐であるが、最終的には破壊的な神経変性状態へと至る。症状の発症は通常中年期から更年期に生じる。ハンチントン病は、その原因遺伝子HTTのコード配列上に存在するCAGリピートの不安定な伸長によって長いポリグルタミン鎖が産生されるために起こる。正常型のグルタミンの反復回数は6~35であるのに対して、疾患患者(あるいは、疾患の発症リスクの極めて高い若年成人の無症候者)は、36~121である。
【0110】
上記のような既知のマイクロサテライト多型(「STRP」)の場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。当該疾患患者の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:
図9の901ならびに903の文字列)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(
図9の902:標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)の配列およびその長さが、抽出・決定される。例えば、配列およびその長さを抽出した結果、CAGのリピート回数が「80(ヌクレオチド数:240)」ならびに「113(ヌクレオチド数:339)」の2種類であった場合、ヘテロ接合型である(両アレルとも、疾患型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクが極めて高い(例えば、ハンチントン病の治療薬の投与計画に対して、「必須因子」の遺伝型の候補となりうる。また、ハンチントン病に対して禁忌である薬剤に対して、「禁止因子」の遺伝型の候補となりうる。))。また、CAGのリピート回数が「5(ヌクレオチド数:15)」の1種類であった場合、ホモ接合型である(両アレルの型は正常型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクは低い(例えば、ハンチントン病の治療薬の投与計画に対して、「禁止因子」の候補となりうる。また、ハンチントン病に対して禁忌である薬剤に対して、「必須因子」の候補となりうる。))。
【0111】
決定された「アレルの型」(患者の遺伝型)とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB50(
図2)に格納される(
図10の工程S19)。
【0112】
〔その他〕
図2のシステム1を実行するプログラム全体は、ユーザの使用するユーザ端末からアクセス可能なサーバに保存され、ユーザ端末からアクセス可能なイントラネットまたはインターネットを介して実行可能である。上記システム1は、ユーザが出力を希望する情報を紙面に印刷するための印刷装置(例えばプリンタまたは複合機)と接続されていてもよい。
【0113】
この場合、上記実施形態では表示装置20(
図2)と入力装置30(
図2)は、制御部10(
図2)に接続されているものとして示されているが、表示装置20(
図2)と入力装置30(
図2)はユーザ端末(PC、タブレット、スマートフォンなど)に存在することになる。サーバ装置とユーザ端末はネットワーク回線により繋がっており、ユーザ端末の入力装置30(
図2)により入力された情報がサーバ装置に送信され(例えば、スマートフォン、タブレット等でバーコードをスキャンすることで入力することもできる)、サーバ装置は、当該入力された情報、医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)およびゲノム情報DB50(
図2)から取得した情報に基づいて制御部10(
図2)によって生成された情報をユーザ端末に送信し、ユーザ端末の表示装置20(
図2)を介してユーザに出力される。すなわち、サーバ装置は
図4、
図5に示すフローチャートと同様の処理を行い、前記投与計画出力部140(
図2)は、患者に対する投与計画を、ユーザ端末に送信し、投与計画を受信したユーザ端末は表示装置に当該投与計画を表示する。ここでの投与計画には、
図4の工程S8、S9、
図5の工程S10、S14で表示される情報が含まれる。
【0114】
図2において、医薬関連遺伝子情報DB40は、禁止因子情報700(
図3(d))および必須因子情報800(
図3(e))を含む1つのDBとして示しているが、禁止因子情報700(
図3(d))および必須因子情報800(
図3(e))は別々の医薬関連遺伝子情報DB40(
図2)に含まれていてもよい。
【0115】
図4の工程S2~S4と、工程S5~S7とは、順序が逆であってもよい。すなわち、必須因子情報と患者の遺伝型情報との一致を判断した後に、禁止因子情報と患者の遺伝型情報との一致の判断を行ってもよい。
【0116】
上記実施形態では、必須因子情報および禁止因子情報の両方と患者の遺伝型情報との一致(または不一致)を判断しているが、必須因子情報および禁止因子情報のいずれか一方のみと患者の遺伝型情報との一致(または不一致)を判断してもよい。必須因子情報のみと患者の遺伝型情報との一致(または不一致)を判断する場合は、
図4の工程S2~S4は省略される。一方、禁止因子情報のみと患者の遺伝型情報との一致(または不一致)を判断する場合は、工程S5~S7は省略される。
【0117】
〔ソフトウェアによる実現例〕
図2のシステム1は、制御部10(特に情報取得部110、投与計画決定部120、医薬情報変更部130、および投与計画出力部140)を、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
後者の場合、投与計画決定支援システム1(
図2)は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPUを用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【符号の説明】
【0119】
1 投与計画の決定支援システム
10 制御部
110 情報取得部
120 投与計画決定部
130 医薬情報変更部
140 投与計画出力部
20 表示装置
30 入力装置
40 医薬関連遺伝子情報DB
50 ゲノム情報DB
400 患者情報
500 医薬情報
510 変更医薬情報
520 変更医薬情報
600 患者遺伝型情報
700 禁止因子情報
800 必須因子情報
901 文字例
902 文字列(標的ヌクレオチド)
903 文字列