(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181079
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】光走査装置、画像形成装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/47 20060101AFI20221130BHJP
G03G 15/043 20060101ALI20221130BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B41J2/47 101M
G03G15/043
H04N1/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087915
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
(72)【発明者】
【氏名】黒田 亮太郎
【テーマコード(参考)】
2C362
2H076
5C072
【Fターム(参考)】
2C362AA07
2C362AA33
2C362AA54
2C362BA04
2H076AB05
2H076AB07
2H076AB21
2H076AB34
2H076AB84
2H076DA04
2H076DA10
2H076DA11
2H076DA17
2H076DA22
2H076EA01
5C072AA03
5C072BA04
5C072BA15
5C072HA02
5C072HA08
5C072HA09
5C072HA13
5C072HB02
5C072HB04
5C072HB08
5C072HB11
5C072XA01
5C072XA05
(57)【要約】
【課題】 レーザ発光部の目標光量に基づきレーザドライバに入力するアナログ信号にオフセットする場合に、レーザ特性やレンズ透過率に応じてレーザ発光量を適切に制御できる光走査装置等を提供する。
【解決手段】バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するようにレーザ発光部を制御するレーザドライバと、レーザ発光部の目標光量に基づき、レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じた設定値にレーザドライバのバイアス電流を制御するバイアス電流設定部と、決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号をレーザドライバに入力することによって、レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部とを備えた光走査装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するようにレーザ発光部を制御するレーザドライバと、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、
前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じた設定値にレーザドライバのバイアス電流を制御するバイアス電流設定部と、
前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、
を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記バイアス電流設定部は、レーザドライバのバイアス電流設定用抵抗の抵抗値を変化させてバイアス電流を設定値に制御することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記バイアス電流設定部は、レーザドライバのバイアス電流設定用抵抗を接続する端子が定電圧源のものの場合、当該端子に印加する電圧を変化させてバイアス電流を設定値に制御することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記レーザ発光部は、レーザビームを発光するレーザ発光素子を複数有するマルチビームレーザ発光部であり、
前記バイアス電流の設定値は、前記複数のレーザ発光素子に共通して設定し、かつ、各レーザ発光素子のうちで最もしきい値電流が小さいレーザ発光素子のしきい値電流よりも小さいものに設定することを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記バイアス電流の設定は、前記レーザ発光素子の個体バラつきや温度バラつき分のマージンを確保するものであることを特徴とする請求項1から4のうちの1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するようにレーザ発光部を制御するレーザドライバと、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、
前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、を備え、
前記レーザ発光部は、レーザビームを発光するレーザ発光素子を複数有するマルチビームレーザ発光部を有し、
前記レーザドライバ制御部は、レーザドライバに対して、対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するシェーディング補正信号をマルチビーム発光部の各レーザ発光素子について個別に設定すると共に、複数のレーザ発光素子にオフセット値の信号を共通に設定することを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちの1項に記載の光走査装置と、
前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するように前記レーザ発光部を制御するレーザドライバを備えた光走査装置の制御方法であって、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、
前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じてバイアス電流を設定するバイアス電流設定工程と、
前記バイアス電流が前記設定された状態で、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するように前記レーザ発光部を制御するレーザドライバを備えた光走査装置のコンピュータが、
前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、
前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じてバイアス電流を設定するバイアス電流設定機能と、
前記バイアス電流が前記設定された状態で、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能とを実現するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光走査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、画像信号に基づく画像を記録用紙(シート状の画像記録媒体)に形成する処理過程で、感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光処理のためにレーザダイオード(発光素子)の発光するレーザ光で感光体ドラムを被走査体として走査する光走査装置が搭載されている。
【0003】
一般に、レーザダイオードは、入力電流を増加させていくとしきい値電流で光出力が立ち上がる特性を有している。その特性からレーザ発振の立ち上がり時間の遅れを短くするため常時バイアス電流を流すようにしているのが一般的であった。
【0004】
レーザダイオードを駆動するレーザドライバにおいては、待機時には、しきい値以下の予め定められたバイアス電流を供給し、レーザダイオードの駆動時には、バイアス電流の超過分の電流がアナログ入力信号に比例して増減するレーザドライバが知られている。又、待機時にバイアス電流をしきい値に一致させるオートバイアス制御処理が知られている。
【0005】
特許文献1には、オートバイアス制御処理の実行機能を有しない固定バイアス電流のレーザドライバに関し、レーザダイオードの光量と電流の特性(PI特性)を温度毎に記憶させた上で、目標光量に応じてレーザドライバを制御するアナログ信号の電圧値を算出する光走査装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、レーザのPI特性を温度毎に記憶させた上で、目標光量に応じたアナログ信号の電圧設定値を算出するため、以下の課題があった。
【0007】
環境やライフ補正等の目標光量の変化に応じて、再度、電圧設定値を算出するため処理に時間を要していた。
【0008】
低い目標光量でシェーディングを実施する場合、シェーディングの分解能が悪くなっていた。又、レーザのPI特性や根本光量が個別にバラついた場合、目標光量に光ズレが生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の問題に対して目標光量に応じてアナログ信号に一括的にオフセットをかけることが考えられるが、一律なオフセット値を設定するのみでは、レーザ特性のバラつきやレンズ透過率によってレーザ発光量に不具合が生じる場合があった。
【0011】
本開示は、斯かる実情に鑑み、レーザ発光部の目標光量に基づきレーザドライバに入力するアナログ信号にオフセットする場合に、レーザ特性やレンズ透過率に応じてレーザ発光量を適切に制御できる光走査装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するようにレーザ発光部を制御するレーザドライバと、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じた設定値にレーザドライバのバイアス電流を制御するバイアス電流設定部と、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、を備えたことを特徴とする光走査装置である。
又、本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するようにレーザ発光部を制御するレーザドライバと、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、を備え、前記レーザ発光部は、レーザビームを発光するレーザ発光素子を複数有するマルチビームレーザ発光部を有し、前記レーザドライバ制御部は、レーザドライバに対して、対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するシェーディング補正信号をマルチビーム発光部の各レーザ発光素子について個別に設定すると共に、複数のレーザ発光素子にオフセット値の信号を共通に設定することを特徴とする光走査装置である。
【0013】
本開示は、上述の光走査装置と、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0014】
本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するように前記レーザ発光部を制御するレーザドライバを備えた光走査装置の制御方法であって、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じてバイアス電流を設定するバイアス電流設定工程と、前記バイアス電流が前記設定された状態で、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、を含むことを特徴とする制御方法である。
【0015】
本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が、入力されたアナログ信号に応じて増減するように前記レーザ発光部を制御するレーザドライバを備えた光走査装置のコンピュータが、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザドライバに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、前記レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じてバイアス電流を設定するバイアス電流設定機能と、前記バイアス電流が前記設定された状態で、前記決定されたオフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能とを実現するプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光走査装置等によれば、レーザ発光部のレーザ特性又はレンズ透過率に応じてバイアス電流を設定した状態で、オフセット値の信号に基づきオフセットされたアナログ信号をレーザドライバに入力することによって、レーザ発光部の発光量を制御するので、必要なオフセット量が確保され、目標光量が大きいときの分解能が確保され、目標光量にズレが生じないという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の外観図である。
【
図2】画像形成装置及び光走査装置の制御ブロック図である。
【
図3】光走査装置のレーザ発光部及びレーザドライバの信号伝達経路の回路図である。
【
図6】光走査部の各部信号であって、(a)がBDセンサの検出信号、(b)がシェーディング補正値の信号、(c)がオフセット値の信号、(d)がレーザドライバへの入力信号の各グラフである。
【
図7】バイアス電流制御回路の実施例1を説明する回路図である。
【
図8】バイアス電流制御回路の実施例2を説明する回路図である。
【
図9】レーザ発光素子の特性を説明するグラフである。
【
図11】レーザ発光素子の動作イメージの説明図であって、(a)がオフセット量が大きくなるケース、(b)がオフセット量の小さくなるケース、(c)(d)が補正イメージの説明図である
【
図13】(a)、(b)がマルチビームレーザのオフセット量に対するバイアス電流の説明図である。
【
図14】マルチビームレーザのオフセット量を設定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されない。
【0020】
[1. 実施形態]
まず、実施形態に係る画像形成装置10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る光走査装置200を搭載した画像形成装置10の外観図、
図2は、画像形成装置10及び光走査装置200の制御ブロック図である。
【0021】
[1.1 全体構成]
画像形成装置10は、
図1に示すように、画像形成装置10の上部に原稿読取部112を備えて原稿の画像を読み取り、電子写真方式により画像を出力する情報処理装置である。画像形成装置10には、多機能プリンタ(Multifunction Printer)を例に挙げることができる。
【0022】
画像形成装置10は、
図2の制御系図に示すように、主に、制御部100と、画像入力部110と、原稿読取部112と、画像処理部120と、画像形成部130と、操作部140と、表示部150と、記憶部160と、通信部170とを備え、光走査装置200の機能も有する。
【0023】
[1.2 画像形成装置10]
制御部100は、画像形成装置10の全体を制御するための機能部である。
【0024】
そして、制御部100は、各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えば1又は複数の演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit))等により構成されている。
【0025】
画像入力部110は、画像形成装置10に入力される画像データを読み取るための機能部である。そして、画像入力部110は、原稿の画像を読み取る機能部である原稿読取部112と接続され、原稿読取部112から出力される画像データを入力する。
【0026】
又、画像入力部110は、USBメモリや、SDカード等の記憶媒体から画像データを入力してもよい。又、他の端末装置と接続を行う通信部170により、他の端末装置から画像データを入力してもよい。
【0027】
原稿読取部112は、コンタクトガラス(不図示)に載置された原稿を光学的に読み取り、画像処理部120へスキャンデータを渡す機能を有する。
【0028】
画像形成部130は、画像データに基づく出力データを記録媒体(例えば記録用紙)に形成するための機能部である。例えば、
図1に示すように、給紙トレイ122から記録用紙を給紙し、画像形成部130において記録用紙の表面に画像が形成された後に排紙トレイ124から排紙される。画像形成部130は、電子写真方式を利用した電子写真プロセスを利用したレーザプリンタにより構成されている。
【0029】
画像形成部130の電子写真プロセスは、後述する光走査装置200によって、感光体ドラム(像担持体)130a(
図5参照)表面に画像データに対応するレーザビーム(レーザ光に相当)を走査して静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーによって現像し、現像したトナー像を記録媒体上に転写し及び定着して画像を形成するものである。
【0030】
画像処理部120は、原稿読取部112で読み込まれた画像データに基づき、設定されたファイル形式(TIFF,GIF,JPEG等)に変換する機能を有する。そして、画像処理が施された画像データに基づき出力画像を形成する。
【0031】
操作部140は、ユーザによる操作指示を受け付けるための機能部であり、各種キースイッチや、接触による入力を検出する装置等により構成されている。ユーザは、操作部140を介して、使用する機能や出力条件を入力する。
【0032】
表示部150は、ユーザに各種情報を表示するための機能部であり、例えばLCD(Liquid crystal display)等により構成されている。
【0033】
すなわち、操作部140は、画像形成装置10を操作するためのユーザインターフェースを提供し、表示部150には、画像形成装置の各種設定メニュー画面やメッセージが表示される。
【0034】
なお、画像形成装置10は、
図1に示すように、操作部140の構成として、操作パネル141と、表示部150とが一体に形成されているタッチパネルを備えてもよい。この場合において、タッチパネルの入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。
【0035】
記憶部160は、画像形成装置10の動作に必要な制御プログラムを含む各種プログラムや、読み取りデータを含む各種データやユーザ情報が記憶されている機能部である。記憶部160は、例えば、不揮発性のROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。又、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)を備えてもよい。
【0036】
通信部170は、外部の装置と通信接続を行う。通信部170としてデータの送受信に用いられる通信インターフェース(通信I/F)が設けられている。通信I/Fにより、画像形成装置10でのユーザによる操作によって、画像形成装置10の記憶部に格納されるデータを、ネットワークを介して接続される他のコンピュータ装置へデータの送受信をすることができる。
【0037】
[1.3 光走査装置200]
図2に示すように、画像形成装置10には光走査装置200が搭載されている。
図3は、光走査装置200におけるレーザドライバ周辺の信号伝達経路の具体的な回路図を示す。
【0038】
図2、
図3に示すように、光走査装置200は、レーザ発光素子(半導体レーザ素子)からなるレーザ発光部200aと、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するようにレーザ発光部(LD:Laser Device)200aを制御するレーザドライバ210と、レーザ発光部200aから出射するレーザビーム(レーザ光)を対象物の感光体ドラム130a上に走査する光走査部220と、対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正値の信号(Vshade)を出力するシェーディング補正信号部230と、レーザ発光部200aの目標光量(Vref)に基づき、レーザドライバ210に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部240と、レーザ発光部200aのレーザ特性又はレンズ透過率に応じてレーザドライバ210にバイアス電流を設定するバイアス電流設定部250と、決定されたオフセット値の信号(Voffset)をアナログ信号(シェーディング補正値の信号オフセット値の信号(Voffset))に重ね合わせてオフセットする重ね合わせ部(重ね合わせ回路)260と、バイアス電流が設定された状態で、重ね合わせによってオフセットされたアナログ信号のシェーディング補正信号(Vsw)をレーザドライバ(LD Driver)210に入力することによって、レーザ発光部(LD)200aの発光量を制御するレーザドライバ制御部270と、を備えている。なお、
図3において、Vccは電源電圧である。
【0039】
レーザ発光部200aは1又は複数のレーザ発光素子(レーザダイオード等の半導体レーザ素子)からなり、フォトダイオード(PD)からなる光量検出部280によって出力光量を検出する。
【0040】
バイアス電流設定部250は、レーザ発光部200aのバイアス電流の設定値を出力する。その設定値は、レーザ走査ユニット220aを通じてバイアス電流制御値に対応する制御信号がバイアス電流制御回路290に入力され、バイアス電流制御回路290は、レーザドライバの210のバイアス電流を設定値に応じたものに制御する。
【0041】
シェーディング補正信号部230の出力するシェーディング補正値(Vshade)は、光走査装置200の調整工程で算出され、記憶部160のROM等に記憶される。シェーディング補正値の読み出しは、主走査方向における感光体ドラム130a表面に対するレーザビームの照射位置に応じて記憶部160から順次読み出される。
【0042】
図3に示すように、光走査装置200おいて、光走査部220は、制御系としてレーザ走査ユニット(LSU)220aを有し、レーザ走査ユニットは,制御部100の制御信号によって、シェーディング補正信号部230、オフセット値決定部240及びバイアス電流設定部250から出力された信号をレーザドライバ210に入力するためのものであり、特定用途向け集積回路(LSUASIC)で構成されている。このレーザ走査ユニット220aの集積回路(LSUASIC)には、基準クロック信号200mと、BDセンサ200kの検出信号が入力される。
【0043】
シェーディング補正信号部230の出力するシェーディング補正値の信号(Vshade)は、予め実験等で得られており、記憶部160のROM等に記憶される。シェーディング補正値の信号(Vshade)はアナログ電圧信号である。レーザドライバ210は、シェーディング補正値の信号の入力によって、レーザ発光部200aのバイアス電流からの超過分の電流が比例するように制御する。読み出しは、BDセンサ200kの検出信号に基づいて、主走査方向における感光体ドラム130a表面に対するレーザビームの照射位置に応じて記憶部160から順次読み出される。
【0044】
オフセット値決定部240の出力するオフセット値の信号(Voffset)はアナログ電圧信号である。シェーディング割合の補正用の電圧信号であり、レーザ発光部200aのバイアス電流からしきい値までの電流を付加するものである。
【0045】
又、レーザ発光部200aは、光量検出部280が検出したレーザ発光部200aの発光量に基づき、レーザドライバ制御部270とレーザ走査ユニット220aが、レーザ発光部200aの発光量を目標光量になるように制御する(後述のAPC(Automatic Power Control))ものである。
【0046】
具体的には、目標光量の信号は副走査方向の基準電圧(Vref)に応じて制御する。この基準電圧信号(Vref)はAPCの基準電圧となりレーザドライバ210に入力する。レーザドライバ210は、この基準電圧信号(Vref)に発光光量が比例するようにレーザ発光部200aの電流を制御する。
【0047】
光量検出部280は、例えばレーザ発光部200aのレーザ発光素子の近傍に配置された光量検出素子のフォトダイオード(PD:Photo Diode)を備えたものである。又、レーザドライバ制御部270は、この光量検出部280が検出したレーザ発光部200aの光出力(光パワー)Pをモニタし、その光出力が目標光量になるように基準電圧信号(Vref)のレベルに応じた一定値になるようにレーザ発光部200aの駆動電流を自動的に制御するAPCの制御方式を採用したものである。
【0048】
なお、APCには、大きく分けて初期APCと定常APCがある。初期APCはレーザ発光素子の初期化時に行う点灯モードのことを言い、初期化若しくは1stAPCと称される。又、定常APCはライン走査毎に行うAPCのことを言い、line APC若しくは単にAPCと称される。
【0049】
図3において、光走査部220の制御系(レーザ走査ユニット220a)から出力される信号XSHは、APC用信号であって、このXSH信号の有効時(Low時)にAPCが実行される。又、画像データがレーザドライバ210に向けて出力され、これによって、感光体ドラム130aに画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0050】
又、BDセンサ200kの検知信号は、一般的に定常APCにおけるモニタリングと同期検出が同時に行われるように使用される。シェーディング補正値の信号(Vshade)と、オフセット値の信号(Voffset)は重ね合わせ回路260にて重ね合わせされてシェーディング補正信号がオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)がレーザドライバ210に入力される。
【0051】
又、光走査装置200は、レーザ発光部200aの発光量を検出する光量検出部280を有しており、レーザドライバ制御部270は、光量検出部280が検出したレーザ発光部200aの発光量を目標光量になるように、基準電圧信号(Vref)によって、レーザダイオードの駆動電流を制御するAPCの制御方式を採用したものである。
【0052】
オフセット値決定部240は、APC制御時におけるレーザドライバ制御部270の目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))に基づきオフセット値(信号Voffset)を決定するものである。記憶部160が、目標光量とオフセット値との関係が設定されたオフセット調整テーブル240aを記憶しており、オフセット値決定部240は、記憶されたオフセット調整テーブル240aを参照して、目標光量に基づいてオフセット値を決定する。
【0053】
実施形態においては、
図4に一例を示すようなオフセット調整テーブル240aを記憶部160のROM(:Read Only Memory)に記憶する。オフセット調整テーブル240aは、目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))とオフセット値(信号Voffset)との関係が設定されたものになっている。
【0054】
記憶部160にオフセット調整テーブル240aの形で一旦記憶しておくことによって、環境やライフ補正等の目標光量の変化に応じて、レーザドライバ210へのアナログ信号の設定値を再度算出する必要がなく、処理に時間を要しない。
【0055】
又、オフセット値(信号Voffset)が温度に応じて変化するのに対処するため、記憶部160に、温度に応じた複数のオフセット調整テーブル240aを記憶することが好適である。
【0056】
図5は、光走査装置200の光走査部220の機械的構成を示す。
【0057】
図5に示すように、光走査部220は、レーザ光を感光体ドラム130a上に走査して感光体ドラム130a上に静電潜像を形成するものである。
【0058】
光走査装置200は、
図5に示すように、レーザビーム(レーザ光)を発生するレーザ発光素子からなるレーザ発光部200aと、レーザ発光部200aから出射されるレーザビームの出射方向には、入射したレーザビームを平行ビームに変換するコリメータレンズ200bと、略中央部に開口200c1が形成された板状部材により構成されたアパーチャ200cと、後述するレーザビームを走査方向に拡大するfθレンズ200dとの組み合わせにより入射されたレーザビームを拡大する凹レンズ200eと、シリンドリカルレンズ200fと、入射ビーム折返しミラー200gとが順次配設されたものである。
【0059】
又、入射ビーム折返しミラー200gによるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d及び複数の反射面を外周面に備えたポリゴンミラー200hが順に配設されており、ポリゴンミラー200hの反射面によるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d、反射ミラー200i、ポリゴンミラー200hの面倒れ補正を行う出射ビーム折返しミラー200j、感光体ドラム130aが配設されている。
【0060】
反射ミラー200iに反射した反射光は、ビームディテクトセンサ(BDセンサ)200kで検出する。BDセンサ200kは、レーザビームの受光量の大きさに応じた検出信号を出力する光センサである。BDセンサ200kは、レーザビームの主走査領域(感光体ドラム130aの軸方向に沿った走査領域)の始端側からの反射光を検知する機能を有し、感光体ドラム130aに静電潜像を書き込むタイミングの制御に用いるものである。
図6に示すように、BDセンサ200kの検出信号はトリガ状になる。
【0061】
又、レーザ発光部200aは、そのレーザ出射量を検出するPD(フォトダイオード)を備えた光量検出部280を近傍に備えている。
【0062】
[1.4 制御信号例]
図3に示す光走査部220の制御信号の例を
図6によって説明する。
図6は、シェーディング補正値の信号(Vshade)、オフセット値の信号(Voffset)、オフセットされたシェーディング補正信号(レーザドライバ入力信号:Vsw)等の電圧信号例を示す。
【0063】
この場合、シェーディング補正値の信号(Vshade)は、シェーディング補正用のアナログ電圧である。本電圧に、バイアス電流からの超過分の電流が比例する。
【0064】
オフセット値の信号(Voffset)はシェーディング割合の補正用の電圧であり、バイアス電流からしきい値電流までの電流を付加する。
【0065】
副走査基準電圧の信号(Vref)は、APCの基準電圧となり、本電圧に光量が比例する。
【0066】
APC用信号(XSH)は、本信号が有効時(Low時)に、APCが実行される。
【0067】
レーザドライバ入力信号(Vsw)は、オフセットされたシェーディング補正信号を示す。
【0068】
いずれの信号もアナログの電圧信号である。なお、BD信号は、ビームディテクトセンサ(BDセンサ)200kで検出された主走査領域の始端側からの検出信号である。
【0069】
図6に示すように、シェーディング補正値の信号(Vshade)には、0レベルに近い部分があるが、オフセット値の信号(Voffset)で重ね合わせて持ち上がり、オフセットされたシェーディング補正信号(Vsw)では0レベルから離れている。このオフセット状態のシェーディング補正信号(Vsw)のアナログ信号をレーザドライバ210に入力する。
【0070】
図3に示すように、光走査部220においては、バイアス電流設定部250は、レーザドライバ210のバイアス電流を設定値に制御するため、設定値信号に応じて、レーザ走査ユニット220aを介してバイアス電流制御信号をバイアス電流制御回路290に入力する。
【0071】
図7は、バイアス電流制御回路290の実施例1を説明する回路図である。
図7に示すように、実施例1に係るバイアス電流制御回路290は、レーザドライバ210のバイアス電流設定用抵抗を複数設けて、そのオン・オフによって抵抗値を変化させてバイアス電流を設定値に制御するものである。
【0072】
具体的には、レーザドライバ210のバイアス電流を規定する抵抗R0の接続端子Rbiに、設定用抵抗R1、R2をスイッチSW1、2経由で並列に接続したものである。抵抗R1、R2をスイッチSW1、2のオン・オフで切り換えて、接続端子Rbiに接続する抵抗(抵抗値)を変化させてバイアス電流を設定値に制御する。
【0073】
この場合、オフセット(Voffset)の大小に応じて、下記のようにスイッチSW1、SW2のオン・オフによって接続端子Rbiに繋がる抵抗値を切り換えるので、必要なオフセット量と目標光量が大きいときの分解能との双方を確保できる。
【0074】
SW1及びSW2のオフ:抵抗値がR0
SW1オン・SW2オフ:抵抗値がR0×R1/(R0+R1)
SW1オフ・SW2オン:抵抗値がR0×R2/(R0+R2)
SW1オン・SW2オン:抵抗値がR0×R1×R2/(R1×R2+R0×R2+R0×R1)
【0075】
なお、抵抗はR1、R2の2つに限定されず1又は3つ以上とすることができる。又、抵抗をスイッチで切り換えるので抵抗値を正確に設定できるがそれに限定されず可変抵抗を設置することも考えられる。
【0076】
図8は、バイアス電流制御回路290の実施例2を説明する回路図である。
図8に示すように、実施例2に係るバイアス電流制御回路290は、レーザドライバのバイアス電流設定用抵抗R0を接続する接続端子Rbiが定電圧源のものの場合、接続端子Rbiに可変電圧源Vbiasを並列に接続して、接続端子Rbiに印加する電圧を変化させてバイアス電流を設定値に制御するものである。なお、R1は調整用抵抗である。
【0077】
この場合、可変電圧源Vbiasによって接続端子Rbiへの印過電圧を変化させることによって、バイアス電流を変化させてバイアス電流のアシスト量を可変させるものである。実施例1のようなスイッチのオン・オフによる段階的な切り換えでないため、滑らかに電圧を切り換えて適切な電圧を選定できる。又、バイアス電流設定部が定電圧源の場合にバイアス電流を制御可能にできる。
【0078】
次に、レーザドライバのバイアス電流の設定値は、レーザ特性又はレンズ特性に応じて決定することについて説明する。
【0079】
図9は、レーザ発光部200aのレーザ発光素子に用いる半導体レーザ素子の特性を説明するグラフである。
【0080】
半導体レーザ素子は、流す電流(順電流)Iと光出力Pとの関係が
図9に示すようになる。
【0081】
図9に示すように、電流Iを少しずつ流してゆくと、半導体レーザ素子は少しずつ光ってくるが、初めのうちはレーザ光ではなく、LED(発光ダイオード)光が出てくる。ところが、ある所で急に光出力が大きくなり、レーザ発振が開始される。このレーザ発振が始まる電流をしきい値電流Ithという。また、このしきい値電流Ithを超えた後の電流Iに対する光出力Pの変化は極めて急激であり、この電流Iに対する光出力Pの変化率を微分効率という。
【0082】
半導体レーザ素子は、たとえ同じ設計をしても材料のバラつきや製造過程の様々な条件によって、このしきい値電流や微分効率等の特性が異なるものになっている。
【0083】
図10は、レーザ発光部200aにおけるレンズ透過率のバラつきの説明図である。
レンズ透過率がバラつきの主な要因として、半導体レーザ素子の放射角(水平/垂直)のバラつきがある。
【0084】
図10に示すように、半導体レーザ素子からなるレーザ発光部200aから出力したレーザ光(200a1)は入射ユニット205のコリメータレンズ200bで平行光に変換して、アパーチャ200cで所定の光量に絞る。
【0085】
一般に、半導体レーザ素子の放射角(水平/垂直)自体がバラつくため、入射ユニットのアパーチャ200cが絞りを行った後に取り出せるレーザ光量もバラついてしまう。その他の要因としては、半導体レーザ素子と入射ユニット205の間の中心軸のズレや光走査装置内のミラーの反射率のバラつきがある。
【0086】
図11は、半導体レーザ素子の動作イメージの説明図である。(a)がオフセット量の大きくなるケース、(b)がオフセット量の小さくなるケースであり、(c)、(d)が補正イメージの説明図である。
【0087】
半導体レーザ素子の特性が
図11(a)に示すように、しきい値電流Ithが大きく、微分効率が大きく、レーザ光量が少ない場合、確保すべきオフセット量(Voffset)が大きくなる。
【0088】
又、半導体レーザ素子の特性が
図11(b)に示すように、しきい値電流Ithが小さく、微分効率が小さい、レーザ光量が多い場合、オフセット量(Voffset)が小さくなり分解能が問題になる。
【0089】
このため、実施形態のバイアス電流設定部250では、
図11(a)のようなオフセット量が大きくなる場合、
図11(c)に示すように、バイアス電流の設定値を大きくする。又、
図11(b)のようなオフセット量が小さくなる場合、
図11(d)に示すように、バイアス電流の設定値を小さくする。
【0090】
図12は、実施形態に係るバイアス電流の設定値を決定するフローチャートである。なお、
図4がオフセット値のテーブルの一例の説明図である。各ステップ100~をS100と略記する。
【0091】
まず、
図12に示すように、オフセット量を設定する(S100)。オフセット量(Voffset)は
図4に示すテーブルのように、副走査基準電圧の信号(Vref)に対応してオフセット量(Voffset)を決定(設定)する。
【0092】
次いで、オフセット量(Voffset)が所定量例えば255(dec)より小さいか否かを判定する(S110)。オフセット量が所定量よりも小さい場合は(S110:Yes)バイアス電流を現状のものに決定し(S120)、終了する。
【0093】
一方、オフセット量が所定量以上の場合は(S110:No)、バイアス電流をΔI追加し設定値を求める(S130)。求めたバイアス電流の設定値が半導体レーザ素子の規定値より大きいか否か判定する(S140)。バイアス電流が規定値より大きい場合は(S140:Yes)、バイアス電流の設定値が不適(NG)であり調整をNGとする。バイアス電流が規定値以下の場合は(S140:No)、S100以降の処理に戻って実行する。
【0094】
レーザ発光部200aが、レーザビームを発光するレーザ発光素子を複数有するマルチビームレーザ発光部の場合について説明する。
【0095】
図13の(a)、(b)は、マルチビームレーザのオフセット量に対するバイアス電流の説明図である。
図14はマルチビームレーザのオフセット量の設定の説明図である。
【0096】
マルチビームレーザでは、複数のレーザ素子に共通のバイアス電流を設定する。バイアス電流をしきい値電流になるべく近づけたほうが、より必要なオフセット量を下げることができる。しかし、複数の半導体レーザ素子にはビーム間にしきい値電流のバラつきがあるのでバイアス電流の設定値をむやみにしきい値電流に近づけるわけにはいかない。
【0097】
図13(a)に示すように、マルチビームレーザの発光部において、例えば2つの、異なる特性の半導体レーザ素子(レーザ発光素子)LD1、LD2を有する場合、しきい値の小さい半導体レーザ素子LD1よりもバイアス電流を大きくした場合、バイアス電流が半導体レーザ素子LD1のしきい値超える可能性が生じる。このように、バイアス電流がしきい値を超えた状態では、低い光量指令時にビーム間で光量が異なりやすくなる。又、しきい値電流の個体バラつきや温度バラつきによってレーザ発振する場合がある。
【0098】
これに対して、
図13(b)に示すように、マルチビームの半導体レーザ素子LD1、LD2において最もしきい値の小さいLD1よりもバイアス電流を小さく設定すれば、各半導体レーザ素子LD1、LD2がともに正常に作動する。
【0099】
そのため、マルチビームレーザにおいて、複数のレーザ発光素子にバイアス電流を共通して設定し、かつ、各レーザ発光素子のうちで最もしきい値電流が小さいレーザ発光素子のしきい値電流よりも小さいものバイアス電流に設定することが好適である。
【0100】
なお、バイアス電流の設定は、レーザ発光素子の個体バラつきや温度バラつき分のマージンを確保するものであることが好適である。
【0101】
図14は、マルチビームレーザのオフセット量の設定の説明図である。
【0102】
レーザ発光部200aが、マルチビームレーザ発光部を有する場合には前記レーザドライバ制御部270は、レーザドライバ210に対して、対象物上に走査するレーザ光をシェーディング補正するシェーディング補正信号(Vshade)をマルチビーム発光部200aの各レーザ発光素子について個別に設定する場合、複数のレーザ発光素子にオフセット値の信号を共通して設定することが好適である。
【0103】
ただし、バイアス電流とオフセット値の信号(Voffset)を共通に設定するが、シェーディング補正値の信号(Vshade)はレーザ発光素子毎に異なるものとする。
図14においては、各レーザ発光素子LD1、LD2のシェーディング補正値の信号(Vshade)を異なる設定にすることで、目標とする光量に調整できる。
【0104】
なお、オフセット値の信号(Voffset)を共通化すると、回路規模とROMの容量を小さくできる。又、レーザ発光素子の治具調整時間が増加しない利点がある。
【0105】
[1.5 作用・効果]
実施形態の光走査装置及び画像形成装置は、APC制御時のレーザドライバ制御部270の目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))と連動したオフセット値の信号(Voffset)をシェーディング補正値の信号(Vshade)に合成することを前提としている。
【0106】
目標光量に応じたオフセットをかける構成であるため、レーザ特性(しきい値電流、微分効率)とレンズ透過率のバラつきを考慮し、必要なオフセット量を確保する必要があるが、確保したオフセット量が大きければ、目標光量が大きいときにオフセットの分解能が不足し、目標光量にズレが生じる可能性がある。又、必要なオフセット量を下げるため、バイアス電流をしきい値電流に近づけると、以下の課題があった。
【0107】
・レーザ発光素子の個体バラつきや温度バラつきによって、バイアス電流がしきい値電流を超え、常時発光する可能性がある。
【0108】
・マルチビームレーザのバイアス電流を全ビーム共通設定する場合、しきい値電流のバラつきによって、レーザ発振するビームが発生する可能性がある。
【0109】
又、マルチビームレーザ構成でビーム別にオフセット調整する場合、回路規模とROM容量が大きくなり、治具調整時間も増加していた。
【0110】
〔特徴1〕
これに対して実施形態では、
図3~
図12に示すように、バイアス電流からの超過分の電流がアナログ入力信号に比例して増減するレーザドライバを用いた光走査装置及び画像形成装置において、レーザ特性(しきい値電流、微分効率)とレンズ透過率に応じて、バイアス電流を設定する特徴を有すものである。これにより下記の作用効果を奏する。
・必要なオフセット量が確保される。
・目標光量が大きいときの分解能が確保され、目標光量にズレが生じない。
・必要なオフセット量を下げる必要がなく、しきい値電流の個体バラつきや温度バラつきによって、バイアス電流がしきい値電流を超え、常時レーザ発振することがない。
【0111】
〔特徴2〕
特徴1の構成において、
図13に示すように、マルチビームレーザのバイアス電流設定を全ビーム共通に設定し、かつ最もしきい値電流が小さいビームよりも小さく設定する特徴2がある。これにより下記の作用効果を奏する。
・バイアス電流設定によって、レーザ発振することがない。
・治具調整時間が増加しない。
【0112】
〔特徴3〕
図13に基づく特徴2の構成において、レーザ発光素子の個体バラつきや温度バラつき分のマージンを確保する設定をすることが好適である。これを特徴3とする。
・設定例
常温25℃におけるしきい値電流の最小値:3(mA)の場合に、低温(5℃)変化すると最小値が-0.5(mA)ダウンする。
以上より、個体バラつきや温度バラつき分のマージンを考慮して2.0(mA)に設定する。
このマージンを考慮した設定によって下記の作用効果を奏する。
・個体バラつきによって、しきい値電流を超え、常時レーザ発振することがない。
・温度バラつきによって、しきい値電流を超え、レーザ発振することがない。
【0113】
〔特徴4〕
バイアス電流からの超過分の電流がアナログ入力信号に比例して増減するレーザドライバを用いた光走査装置及び画像形成装置において、
図14に示すように、マルチビームレーザのオフセット量を全ビーム共通に設定する特徴4を有する。これにより下記の作用効果を奏する。
・回路規模とROM容量を小さくできる。
・治具調整時間が増加しない。
【0114】
以上、実施形態について説明してきたが、具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0115】
又、実施形態において、各装置で動作するプログラムは、上述の実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えばRAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行われる。
【0116】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えばROMや不揮発性メモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versataile Disc)、MO(magneto Optical Disc)、(MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の非一時的記録媒体であればいずれでもよい。
【0117】
又、ロードしたプログラムを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示の基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本開示の機能が実現される場合もある。
【0118】
又、プログラムを市場に流通させる場合、可搬型の記憶装置にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されるサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのはもちろんである。
【0119】
又、上述した実施形態に置ける各装置の一部又は全部を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現してもよい。各装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部又は全部を集積してチップ化してもよい。又、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよい。又、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0120】
10 画像形成装置
100 制御部
130 画像形成部
130a 感光体ドラム
160 記憶部
200 光走査装置
200a レーザ発光部
210 レーザドライバ
220 光走査部
230 シェーディング補正信号部
240 オフセット値決定部
240a オフセット調整テーブル
250 バイアス電流設定部
270 レーザドライバ制御部
280 光量検出部
290 バイアス電流制御回路