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特開2022-18108改善された精度及び改善されたゴーストキャンセルのための協調型小型レーダターゲットシミュレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018108
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】改善された精度及び改善されたゴーストキャンセルのための協調型小型レーダターゲットシミュレータ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
G01S7/40 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021115596
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】63/051,441
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エス・リー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ダグラス・ファンウィゲレン
(72)【発明者】
【氏名】ケン・エイ・ニシムラ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB09
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC12
5J070AC13
5J070AF03
5J070AK15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のターゲットをエミュレーションするシステムが必要である。
【解決手段】車両レーダを試験するシステム100は、電磁波を受信して応答信号を送信するように適合される再照射要素を備える。この再照射要素は、複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS106)を備え、各MRTSは、受信アンテナ、可変利得増幅器(VGA)、同相直交(IQ)ミキサ、可変減衰器及び送信アンテナを備える。MRTS106は、当該MRTS106の行及び列を含むアレイに配置され、このアレイの各MRTS106は、隣接するMRTS106から横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置される。インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(δθ)角が、レーダ被試験デバイス(DUT)の方位分解能仕様(φres)及び上下分解能仕様(θres)よりもより微細である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を受信するように適合される再照射要素を備え、
前記再照射要素は、応答信号を送信するように適合され、前記再照射要素は、それぞれが受信アンテナと、可変利得増幅器(202)(VGA)と、同相直交(IQ)ミキサ(203)と、可変減衰器(204)と、送信アンテナとを備える複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS(106))を備え、
前記MRTS(106)は、該MRTS(106)の行及び列を含むアレイに配置され、前記アレイの各MRTS(106)は、隣接するMRTS(106)から横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置され、
インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(δθ)角が、レーダ被試験デバイス(DUT)の方位分解能仕様(φres)及び上下分解能仕様(θres)よりもより微細である、車両レーダを試験するシステム(100)。
【請求項2】
前記再照射要素は、見掛けのターゲット距離若しくは見掛けのターゲット速度、又はそれらの双方をエミュレーションするように構成される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記アレイの前記各MRTS(106)は、隣接するMRTS(106)から横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置され、インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(δθ)角が、レーダ被試験デバイス(DUT)の方位分解能仕様(φres)及び上下分解能仕様(θres)よりもより微細である、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)は、前記方位分解能仕様の約2分の1(φres/2)である、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記インクリメンタル上下角(δθ)は、前記上下分解能仕様の約2分の1(θres/2)である、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)は、前記方位分解能仕様の約2分の1(φres/2)であり、前記インクリメンタル上下角(δθ)は、前記上下分解能仕様の約2分の1(θres/2)である、請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項7】
電磁波を受信するように適合される再照射要素を備え、
前記再照射要素は、応答信号を送信するように適合され、前記再照射要素は、それぞれが受信アンテナと、可変利得増幅器(202)(VGA)と、同相直交(IQ)ミキサ(203)と、可変減衰器(204)と、送信アンテナとを備える複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS(106))を備え、
前記MRTS(106)は、該MRTS(106)の行及び列を含むアレイに配置され、前記VGA及び前記可変減衰器(204)は、ターゲットのエミュレーションされるレーダ断面積(RCS)を制御するように構成され、前記アレイは、被試験デバイス(DUT)から変位してジグザグ配置される複数のMRTS(106)を備える、車両レーダを試験するシステム(100)。
【請求項8】
前記MRTS(106)の行は、方位方向にジグザグ配置され、前記MRTS(106)の列は、上下方向にジグザグ配置される、請求項7に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記MRTS(106)の前記行は、偶数MRTS(106)及び奇数MRTS(106)であり、前記偶数MRTS(106)及び前記奇数MRTS(106)は、λ/4に等しい前記DUTからの距離だけ互いに変位され、ここで、λは前記DUTの波長であり、前記偶数MRTS(106)はそれぞれ、偶数の同相直交(IQ)ミキサを備え、前記奇数MRTS(106)はそれぞれ、奇数のIQミキサ(203)を備え、前記偶数MRTS(106)は、IF位相0度及び90度によって駆動され、前記奇数MRTS(106)は、IF位相180度及び270度によって駆動される、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記MRTS(106)の列は、偶数MRTS(106)及び奇数MRTS(106)であり、前記偶数MRTS(106)及び前記奇数MRTS(106)は、λ/4に等しい前記DUTからの距離だけ互いに変位され、ここで、λは前記DUTの波長であり、前記偶数MRTS(106)はそれぞれ、偶数の同相直交(IQ)ミキサを備え、前記奇数MRTS(106)はそれぞれ、奇数のIQミキサ(203)を備え、前記偶数MRTS(106)は、IF位相0度及び90度によって駆動され、前記奇数MRTS(106)は、IF位相180度及び270度によって駆動される、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項11】
車両レーダを試験するシステム(100)であって、
電磁波を受信するように適合される再照射要素であって、該再照射要素は、応答信号を送信するように適合され、該再照射要素は、それぞれが受信アンテナと、可変利得増幅器(202)(VGA)と、同相直交(IQ)ミキサ(203)と、可変減衰器(204)と、送信アンテナとを備える複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS(106))を備え、前記MRTS(106)は、該MRTS(106)の行及び列を含むアレイに配置され、前記アレイの前記各MRTS(106)は、隣接するMRTS(106)から横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置され、インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(δθ)角が、レーダ被試験デバイス(DUT)の方位分解能仕様(φres)及び上下分解能仕様(θres)よりもより微細である、再照射要素と、
命令を記憶するメモリ(118)と、前記命令を実行するプロセッサ(116)とを備えるコントローラ(114)であって、該コントローラ(114)は、前記再照射要素を制御し、複数のターゲットを含む前記車両レーダに対して性能試験を実行するように構成される、コントローラと
を備える、システム。
【請求項12】
前記再照射要素は、見掛けのターゲット距離若しくは見掛けのターゲット速度、又はそれらの双方をエミュレーションするように適合される、請求項11に記載のシステム(100)。
【請求項13】
前記インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)は、前記方位分解能仕様の約2分の1(φres/2)である、請求項11に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記インクリメンタル上下角(δθ)は、前記上下分解能仕様の約2分の1(θres/2)である、請求項11に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)は、前記方位分解能仕様の約2分の1(φres/2)であり、前記インクリメンタル上下角(δθ)は、前記上下分解能仕様の約2分の1(θres/2)である、請求項11に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ミリメートル波は、30ギガヘルツ(GHz)~300ギガヘルツの周波数スペクトル内の周波数における振動から生じる。ミリメートル波(mm波)自動車レーダは、既存の先進運転支援システム(ADAS:advanced driver-assistance systems)及び計画自律運転システム(planned autonomous driving systems)にとって重要な技術である。例えば、前方衝突及び後方衝突を警告するために、先進運転支援システムにおいてミリメートル波自動車レーダが使用される。さらに、適応走行制御(adaptive cruise control)及び自律駐車を実施するために、そして最終的には、街路及び幹線道路における自律運転のために、計画自律運転システムにおいてミリメートル波自動車レーダが使用される場合がある。ミリメートル波自動車レーダは、大部分のタイプの気象条件下で作動することができ、そして日中及び夜間に作動できるという点で、他のセンサシステムより優れた利点を有する。ミリメートル波自動車レーダを適応させるコストは、ミリメートル波自動車レーダを現時点において大規模に展開できるレベルまで下がっている。結果として、ミリメートル波自動車レーダは、先進運転支援システムにおいて長距離、中距離及び短距離の環境センシングのために、現在広く使用されている。さらに、ミリメートル波自動車レーダは、現在開発されつつある自律運転システム(autonomous driving systems)において広く使用される可能性が高い。
【0002】
自動車レーダが展開される場合がある実際の運転環境は大きく異なる可能性があり、多くのそのような運転環境は複雑な場合がある。例えば、実際の運転環境は数多くの物体を含む場合があり、実際の運転環境において遭遇する物体の中には、エコー信号に影響を及ぼす複雑な反射及び回折特性を有するものもある。エコー信号を誤って検知し、及び/又は解釈する直接の結果として、誤警告若しくは不適切な反応がトリガされるか、又はトリガされるべき警告若しくは反応がトリガされない場合があり、それにより事故につながるおそれがある。
【0003】
その結果、自動車製造業者及び自動車レーダ製造業者は、走行条件を電子的にエミュレーションして、最適な精度の性能を有する自動車レーダシステムを提供することを切望している。
【0004】
シングルターゲットレーダエミュレータ(single-target radar emulators)が知られている。しかしながら、実際の運転シナリオをエミュレーションするには、複数のターゲットをエミュレーションすることが必要となる。例として、レーダ装備車両の同じ車線内の前方に自動車が存在し、左側の1つの車線の前方にトラックが存在し、右側の車線分離線(lane divider)に沿って前方を走る自転車搭乗者が存在し、交差交通(cross traffic)において赤信号を無視して走行しようとする別の車両が存在する場合がある。既知のデバイスを使用した見掛けの到来角(AoA:angle of arrival)のエミュレーションは遅く、高価な電子機器に起因して、より多くの数に対してスケーラブルでない。その上、ほとんどの既知のエミュレータでは、レンジ、速度、及びAoAの不完全なサブセットしかエミュレーションされない。
【0005】
したがって、必要とされているものは、少なくとも上述した既知のレーダエミュレータの欠点を克服する、レーダシステムが遭遇する複数のターゲットをエミュレーションするシステムである。
【0006】
例示的な実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。種々の特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを強調したい。実際には、検討を明確にするために、寸法が任意に拡大又は縮小される場合がある。適用可能で、実用的な場合にはいつでも、同じ参照番号が同じ要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】代表的な実施形態による車両レーダを試験するシステムを示す簡略化されたブロック図である。
図1B】代表的な実施形態による小型(miniature)レーダターゲットシミュレータ(MRTS:miniature radar target simulator)のアレイの簡略化されたブロック図である。
図2】代表的な実施形態によるMRTSの簡略化された回路図である。
図3】代表的な実施形態による、隣接するMRTSの間に配置されたエミュレーションされるターゲットを補間するために使用される当該隣接するMRTSの簡略化されたブロック図である。
図4A】代表的な実施形態による、ゴースト画像を抑制するために有用な隣接するオフセットされたMRTSを示す図である。
図4B】代表的な実施形態による、曲線配置で配置され、ゴースト画像を抑制するために有用な隣接するオフセットされたMRTSを示す図である。
図5】代表的な実施形態による、単一のMRTSからなるターゲットのエミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が記述される。代表的な実施形態の説明を不明瞭にするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用される場合がある。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものでないことは理解されたい。定義される用語は、定義された用語の科学技術的な意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられるような意味を有する。
【0009】
種々の要素又は構成要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、第3の等の用語が使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されたい。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0010】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるときに、「一(a、an)」及び「その(the)」という単数形の用語は、文脈上、他の意味として明確に指示される場合を除いて、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。さらに、「備える(comprises、comprising)」という用語及び/又は類似の用語は、本明細書において使用されるときに、言及される特徴、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書において使用されるときに、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上の項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0011】
別段の言及がない限り、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される」又は「結合される」と言われるとき、その要素又は構成要素を他の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができるか、又は介在する要素又は構成要素が存在する場合があることは理解されたい。すなわち、これらの用語及び類似の用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が利用される場合がある事例を含む。しかしながら、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「直接接続される」と言われるとき、これは、2つの要素又は構成要素が、任意の中間にある又は介在する要素又は構成要素を用いることなく、互いに接続される事例のみを含む。
【0012】
様々な代表的な実施形態に関して本明細書で説明されるように、車両レーダを試験するシステムが開示される。このシステムは、電磁波を受信して応答信号を送信するように適合される再照射(re-illumination)要素を備える。この再照射要素は、複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS)を備え、各MRTSは、受信アンテナと、可変利得増幅器(VGA:variable gain amplifier)と、同相直交(IQ:in-phase-quadrature)ミキサと、可変減衰器と、送信アンテナとを備える。MRTSは、当該MRTSの行及び列を含むアレイに配置され、このアレイの各MRTSは、隣接するMRTSから横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置される。インクリメンタルサブテンデッド方位角(incremental subtended azimuth angle)(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(incremental subtended elevation)(δθ)角が、レーダ被試験デバイス(DUT:device under test)の方位分解能仕様(φres)及び上下分解能仕様(θres)よりもより微細(finer)である。
【0013】
様々な代表的な実施形態に関して本明細書で説明されるように、車両レーダを試験するシステムが開示される。このシステムは、電磁波を受信して応答信号を送信するように適合される再照射要素を備える。この再照射要素は、複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS)を備え、各MRTSは、受信アンテナと、可変利得増幅器(VGA)と、同相直交(IQ)ミキサと、可変減衰器と、送信アンテナとを備える。MRTSは、当該MRTSの行及び列を含むアレイに配置される。VGA及び可変減衰器は、ターゲットのエミュレーションされたレーダ断面積(RCS:radar cross section)を制御するように構成され、アレイの複数のMRTSは、被試験デバイス(DUT)から変位してジグザグ配置される。
【0014】
様々な代表的な実施形態に関して本明細書で説明されるように、車両レーダを試験するシステムが開示される。このシステムは、電磁波を受信して応答信号を送信するように適合される再照射要素を備える。この再照射要素は、複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS)を備え、各MRTSは、受信アンテナと、可変利得増幅器(VGA)と、同相直交(IQ)ミキサと、可変減衰器と、送信アンテナとを備える。MRTSは、当該MRTSの行及び列を含むアレイに配置され、アレイの各MRTSは、レーダ被試験デバイス(DUT)の分解能仕様(θres)から横方向に距離pに隔置され、縦方向に距離pに隔置される。システムは、命令を記憶するメモリとそれらの命令を実行するプロセッサとを備えるコントローラも備える。このコントローラは、再照射要素を制御し、隣接するMRTSを動作させるように構成される。インクリメンタルサブテンデッド方位角(δφ)及びインクリメンタルサブテンデッド上下(δθ)角は、複数のターゲットを含む車両レーダ上での方位分解能仕様(φres)及び高さ試験よりもより微細である。
【0015】
数ある利点の中でも特に、本教示のシステムによって提供されるエミュレーションは、本明細書において説明されるMRTSの「協調型変調(coordinated modulation)」に基づいている。このために、本明細書においてより十分に説明されるように、再照射器を提供するようにアレイに配置されたMRTSの変調は、角度補間並びに多数のゴースト信号の抑制を提供するように協調される。
【0016】
図1A及び図1Bは、代表的な実施形態による車両レーダを試験するシステム100を示す簡略化されたブロック図である。本開示の利益を有する当業者によって理解されるように、1つの有望な車両レーダは、現在及び振興(emerging)の自動車の用途において様々な収容能力で使用される自動車レーダである。ただし、ここで説明される車両レーダを試験するシステム100は、自動車レーダシステムに限定されるものではなく、バス、オートバイ、原動機付き自転車(例えば、スクータ)、及び車両レーダシステムを用いることができる他の車両を含む他のタイプの車両にも適用することができることを強調しておく。
【0017】
代表的な実施形態によれば、システム100は、レーダ被試験デバイス(DUT)102を試験するように準備される。システム100は、MRTS106のアレイを備える再照射器101を備える。図1AにおけるMRTS106のアレイは、図1Aの座標系によるxy方向に延びる2次元である。したがって、図1Bは、レーダDUT102の見晴らしの利く地点からの(すなわち、図1Bのxy平面における)2次元アレイのMRTS106を示している。以下でより十分に説明されるように、システム100のMRTS106は、1次元又は2次元におけるターゲットをエミュレーションするように適合される。その上、再照射器101のMRTS106のアレイは、(例えば、図1Bに示されるようなxy平面において)比較的平坦なものとすることもできるし、単一の行アレイに沿った弧に湾曲したものとすることもできるし、複数の列及び行のアレイの2次元において湾曲したものとすることもできる。
【0018】
アレイのMRTS106は、図1A及び図1Bに示されるように横方向間隔p及び縦方向間隔pを有する。以下でより詳細に説明される理由のために、隣接するMRTS106の間の横方向間隔pは、インクリメンタルサブテンデッド方位(図1Aにおけるδφ)が方位分解能仕様(φres)よりも僅かにより微細となるように選ばれ、隣接するMRTS106の間の縦方向間隔pは、インクリメンタルサブテンデッド上下(δθ、図示せず)角が上下分解能(θres)よりも僅かにより微細となるように選ばれる。以下でより詳細に論述される代表的な実施形態によれば、δφ=φres/2及びδθ=θres/2である。
【0019】
図2に関して以下で説明されるように、MRTS106のそれぞれは、送信アンテナ(図1A及び図1Bに図示せず)及び受信アンテナ(図1A及び図1Bに図示せず)を備える。本明細書においてより十分に説明されるように、エミュレーションされるターゲットごとに1つのMRTS106がある。システムはコンピュータ112も備える。コンピュータ112は、例示として、本明細書において説明されるコントローラ114を備える。本明細書において説明されるコントローラ114は、プロセッサ116と、命令を記憶するメモリ118との組み合わせを含むことができる。プロセッサ116は、本明細書において説明されるプロセスを実施するために命令を実行する。このために、コンピュータ112は、レーダDUT102の機能を制御することに加えて、代表的な実施形態によれば、再照射器101を制御するように適合される。以下でより十分に説明されるように、メモリ118に記憶された命令は、プロセッサ116によって実行され、コンピュータ112からMRTS106への駆動信号を調整することによって、選択されたMRST106の信号強度(したがって、電力)を変更し、本教示によれば、より弱い駆動信号が、比較して弱い応答エミュレーション信号を提供し、より強い駆動信号が、比較して強い応答エミュレーション信号を提供するようにする。ただし、特に、或る特定の実施形態では、MRTS106のI-Qミキサへの駆動信号の比較的大きな振幅及びエミュレーション強度(及びそれによってエミュレーションされるRCS)がVGAによって調整される。この手法は、I-Qミキサへの駆動信号を下げることによって所望の刺激信号の振幅を下げることには好ましいが、これによって、(以下で述べるように)搬送波周波数が増強され、その結果、望ましくないゴースト信号がもたらされる。
【0020】
コントローラ114は、コンピュータ112等のワークステーション、又はスタンドアローンコンピューティングシステム、サーバシステムのクライアントコンピュータ、デスクトップ若しくはタブレットの形態の1つ以上のコンピューティングデバイス、ディスプレイ/モニタ、及び1つ以上の入力デバイス(例えば、キーボード、ジョイスティック及びマウス)からなる別のアセンブリ内に収容することもできるし、それらにリンクすることもできる。「コントローラ」という用語は、本開示において説明されるような様々な原理の適用を制御する特定用途向けメインボード又は特定用途向け集積回路の、本開示の技術において理解されており本開示に例として説明されているような全ての構造的構成物を広く包含する。コントローラの構造的構成物は、プロセッサ(複数の場合もある)、コンピュータ使用可能/コンピュータ可読記憶媒体(複数の場合もある)、オペレーティングシステム、アプリケーションモジュール(複数の場合もある)、周辺デバイスコントローラ(複数の場合もある)、スロット(複数の場合もある)及びポート(複数の場合もある)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
加えて、コンピュータ112は、互いにネットワーク化された構成要素を示しているが、2つのそのような構成要素は、単一のシステムに統合することができる。例えば、コンピュータ112は、ディスプレイ(図示せず)及び/又はシステム100と統合することができる。すなわち、幾つかの実施形態では、コンピュータ112に帰属する機能は、システム100が実施する(例えば、実行する)ことができる。他方、コンピュータ112のネットワーク化された構成要素は、異なる部屋又は異なる建物等に分散させることによって空間的に分散させることもでき、その場合に、ネットワーク化された構成要素は、データ接続を介して接続することができる。更に別の実施形態では、コンピュータ112の構成要素のうちの1つ以上は、データ接続を介して他の構成要素に接続されず、その代わりに、メモリスティック又は他の形態のメモリ等によって手動で入力又は出力を与えられる。更に別の実施形態では、本明細書において説明される機能は、コンピュータ112の要素であるが、システム100の外部の要素の機能に基づいて実行することができる。
【0022】
システム100の様々な構成要素が、以下で代表的な実施形態に関してより詳細に説明されるが、システム100の機能の簡潔な説明をここで提示することにする。
【0023】
図1A及び図1Bを参照すると、動作中、レーダDUT102は、MRTS106のアレイに入射する信号(例示としてmm波信号)を放射する。本明細書においてより十分に説明されるように、レーダDUT102からの信号は、各MRTS106とレーダDUT102との間で、方位(図1A及び図1Bの座標系における±x方向)及び上下(図1A及び図1Bの座標系における±y方向)の双方において、距離をエミュレーションするように適合される電力レベルを用いて選択的に反射される。特に、受信アンテナ(図1A図1Bに図示せず)のそれぞれにおけるそれぞれの焦点(focal point)(或いは中心(foci))は、システム100によってエミュレーションされるターゲットを表す。
【0024】
レーダDUT102からの信号を受信するMRTS106からの再照射信号は、MRTS106によって選択的に変更され、レーダDUT102に返信される。以下でより十分に説明されるように、再照射器101の特定のMRTS106からの再照射信号は、ターゲットからのエミュレーションされた反射信号としてレーダDUT102において受信される。コンピュータ112は、レーダDUT102の精度の更なる解析のためにレーダDUT102から信号を受信する。
【0025】
図2は、代表的な実施形態による、図1A及び図1BのMRTS106の簡略化された回路図である。代表的な実施形態に関して説明されるMRTS106の態様は、上述したMRTS106及び遅延電子機器に共通のものとすることができるが、それらの態様は繰り返されない場合がある。さらに、MRTS106の様々な態様(MRD、CMT及びピクセルと呼ばれることがある)は、2019年10月9日に出願された同一出願人の米国仮出願第62/912,442号(添付)、2020年5月20日に出願された同一出願人の米国特許出願第16/867,804号(添付)、2020年6月30日に出願された同一出願人の米国仮出願第63/046,301号(添付)に記載されているものと同様のものとすることができる。米国仮出願第62/912,442号、米国特許出願第16/867,804号及び米国仮出願第63/046,301号の全内容は、引用することによって明確に本明細書の一部をなすものとする。
【0026】
MRTS106は、ミキサ203に接続される増幅器202を備える。この増幅器は、例示として可変利得増幅器(VGA)である。ミキサ203は、同相(I:in-phase)直交(Q:quadrature)ミキサ(IQミキサ)又はI-Q変調器であり、以下で説明される理由によって、有利には、RF信号の標準的な90度位相整合を有する単側波帯(single-sideband)IQミキサであり、その結果、上側波帯(USB:upper sideband)又は下側波帯(LSB:lower sideband)のいずれかを出力し、それぞれLSB又はUSBを阻止する。或いは、I-Qミキサ203は、2値位相変調(BPM:binary phase modulation)、4値位相変調(QPM:quaternary phase modulation)、8位相変調、16QAM等に適合することができる。以下で論述されるように、変調は、位相シンボルの差(difference phase symbols)の所望の近似度を提供するように選択される。特に、振幅の近似は、当業者の理解の範囲内にある技法を使用してI-Qミキサ203によって実行することができる。
【0027】
特に、代表的な実施形態の増幅器202は、2つの例示の有益な機能を提供する。I-Qミキサは、変換損失を被ることが知られており、そのため、比較的大きなレーダ断面積(RCS:radar cross section)を有するターゲットをエミュレーションするには、増幅が必要とされる。その上、VGAは、RCSを選択的に変更するのに有用である。I及びQの駆動の強度を単に低減することは望ましくない。なぜならば、これは、望まれていないゴーストターゲットをもたらす可能性がある強いシフトされていない搬送波周波数信号を伝えるからである。
【0028】
I-Qミキサ203の出力は可変減衰器204に与えられ、可変減衰器204は、ミキサ203から与えられた出力信号を選択的に変更し、所望の戻り信号をレーダDUT102に与える。具体的には、ミキサ203からの信号を可変減衰器204によって減衰することによって、有利には、ターゲットの所望のエミュレーションされたレーダ断面積(RCS)が得られる。上記で暗に示されているように、増幅器202及び可変減衰器204は、コンピュータ112に接続されている。メモリ118内の命令に基づいて、プロセッサ116は、コンピュータ112によって可変減衰器204に提供される制御信号を実行し、レーダDUT102から受信アンテナ208において受信され、再照射アンテナ209からレーダDUT102に戻される再照射信号の所望のレベルのエミュレーションを可能にする。
【0029】
或る特定の代表的な実施形態では、受信アンテナ208及び再照射アンテナ209は、レーダDUT102から受信されてレーダDUT102に戻される信号の波長用に選択されたホーンアンテナである。受信アンテナ208は、可変利得を有することができ、レンズ等のビーム整形要素(beam-shaping element)に結合されて、レーダDUT102からの到来角(AoA)の自由度を調整することができる。ホーンアンテナ又は類似のアンテナは、受信アンテナ208及び再照射アンテナ209に必須のものではなく、パッチアンテナ又はパッチアンテナアレイ等の他のタイプのアンテナを本教示の範囲から逸脱することなく組み込むことができる。
【0030】
特に、電力が、一貫したレーダ断面(RCS)をエミュレーションするために使用される。RCSは、例えば、メモリ118内のルックアップテーブルに記憶することができる。このために、所与のレンジrについて、戻り信号はRCSに比例し、1/rとして低下することが知られている。車両は、通常、1平方メートル(s.m.)に対する10dB、又は平易な英語では10平方メートルを意味する測定面積のレーダスピーク(radar speak)である10dBsmであると言われている。多くの対象物(人々、自転車搭乗者、建物等)が表にされており、表にされていないものは、近年、レイトレーシング(ray tracing)技法によって計算することができる。本教示によると、特定の対象物の距離rに対応する戻り信号強度(既知の1/rレーダ崩壊法則(radar decay law)に従う)及びRCSの許容値(accepted value)をレーダDUT102に提供することに重点が置かれる。代表的な実施形態によれば、信号強度(したがって、電力)は、コンピュータ112から様々な実施形態のMRTS106へのI/Q駆動信号の強度を調整することによって調整され、より弱いI/Q駆動信号は、比較してより弱いエミュレーション信号を提供する。特に、或る特定の代表的な実施形態では、コンピュータ112は、レーダDUT102における単一の焦点に提供される一貫した戻り信号を事前に計算し、コントローラ114は、その後、このSSB強度を達成するようにI及びQ駆動(I and Q drives)の強度を調整する。或いは、有利には、増幅器202の利得若しくは可変減衰器204による減衰、又はそれらの双方を、戻りSSB強度を制御するコントローラ114の動作によって調整することができる。
【0031】
車両レーダがFMCWデバイスであるとき、距離/速度が、MRTS106を使用して電子的にエミュレーションされる。このために、FMCWレーダシステムは、チャープ波形を使用し、それによって、レーダDUT102からの元の送信(Tx)波形と、受信される(Rx)エコー波形との相関が、ターゲット距離を明らかにする。例えば、±kswのチャープレート(Hz/secで測定される)を有するアップチャープ/ダウンチャープシステムでは、自車両に対して距離dにある0の相対速度のターゲットは、式(1)によって与えられる周波数シフト(δf)をもたらす。ここで、cは光速であり、係数2はレーダDUT102からの信号の往復伝播に起因するものである。
δf = -(±2kSWd/c) 式(1)
【0032】
このシフトの正負符号は、波形のアップチャープ対ダウンチャープのどの部分が処理されているのかに依存する。対照的に、相対速度に起因するドップラーシフトは、「コモンモード」周波数シフトとして現れる。例えば、波形の両半分にわたる正味のアップシフトは、レーダDUTがターゲットに接近していることを示す。相関は、DUTのIF/ベースバンドプロセッサにおいて実行される。数MHzの帯域幅が一般的である。
【0033】
FMCWの最も一般的に展開される変形形態は、繰り返しアップチャープ又は繰り返しダウンチャープを使用するが、双方を使用しない(介在する不感時間を有する)。したがって、ターゲットまでの距離は、ここでは正負符号の問題を抜きにして前の段落と同様に求められる。相対速度は、連続するフレームのIF相関信号の間の位相シフトを測定することによって求められ、ここで、フレームは、波形の1つの周期の専門用語(term of art)である。多くのFMCWレーダアプリケーションにおいて、フレームの繰り返しレートは、通常、数kHzである。
【0034】
FMCWレーダのチャープ信号を周波数シフトすることは、時間シフトすることと等価であり、したがって、推量された超過レンジ(excess range)を実施する。kswをチャープ傾斜とし、dをセットアップ距離(MRTS106内の導波路距離を含む)とし、dを所望のエミュレーション距離とすると、必要とされる中間周波数fIF(中間周波数)シフトは、以下の式となる。
IF = 2kSW(d-d)/c 式(2)
ここで、cは光速であり、係数2は往復伝播に起因するものである。
【0035】
図1A図1B及び図3を参照すると、近傍のMRTS106が、レーダDUT102の分解能仕様の1/2及び同じセットアップ距離dに位置決めされている場合に、レーダDUT102は、等しい駆動周波数fIF及び振幅で動作されているとき、それらのMRTS106を補間点(interpolant point)301にある単一のターゲットとして感知する。その上、図3に示される隣接するMRTS 106及びMRTS 106は等しい位相で動作され、I及びIは互いに同相であり、Q及びQは互いに同相であるが、それぞれの同相(I)成分及び直交(Q)成分は互いに90度位相がずれている。特に、ここに示される例示の実施形態では、MRTS及びMRTSの励起の駆動周波数及び振幅はともに等しく、そのため、補間点301は、MRTSとMRTSとの間の中間にある二等分する中点(bisecting midpoint)に配置される。
【0036】
補間点301の感知される角度位置は、MRTS106の再照射アンテナ209から再送信される信号の振幅を選択することによって決定される。このために、図3の隣接するMRTS 106及びMRTS 106の位相整合が上述したように維持される場合に、ターゲットの感知される角度位置は、隣接するMRTS106のそれぞれの再照射アンテナ209から再送信される信号の振幅を選択された振幅に変更してターゲットの感知される角度位置を変更する制御信号をコントローラ114から増幅器202及び可変減衰器204に提供することによって選択される。したがって、コントローラ114からの制御信号の結果、隣接するMRTS106からの振幅出力信号が同じとなる場合には、エミュレーションされるターゲットは、図示されるような補間点301に留まる。一方、コントローラ114によって提供される振幅加重(例えば、図3のMRTS 106からの出力電力に対するMRTS 106からの出力電力の比)が等しくない場合には、補間点301の感知される位置は、相対加重に応じて、MRTS 106により近くMRTS 106からより遠くにシフトする。また、感知されるRCSは、各MRTS106の個々のRCSの加重和によって与えられる。RCS協調は、既知の準光学「グリッド増幅器(grid amplifiers)」のマイクロ波電力結合法とかなり類似して機能する。
【0037】
特に図3を参照すると、レーダDUT102の半値全幅(FWHM:full width, half max)分解能が楕円302によって示されている。MRTS 106及びMRTS 106がこの分解能よりもより微細に、例えばδφ=φres/2に隔置されているとき、MRTS 106及びMRTS 106は、アクティブである場合に、中間の重心である楕円302の中心にある補間点301において単一のターゲットとして感知される。レーダデバイス(例えば、レーダDUT102)の角度分解能は、通常、その角度精度仕様よりも16倍粗い。δφ=φres/2及びδθ=θres/2を選択することによって、直線状(1D)アレイの再照射器101については、MRTS106の数の約8倍の削減が実現され、2D(図1Bの座標系におけるxy)アレイの再照射器101については、必要とされるMRTS106の約64倍の削減が実現される。
【0038】
図4Aは、代表的な実施形態による、ゴースト画像を抑制するように配置及び制御される隣接するオフセットされたMRTS106を示している。図4Aに関して説明される隣接するMRTS106の或る特定の態様は、図1A図3に関して上述されているとともに、本明細書に添付されている上掲の本明細書の一部をなす仮出願及び特許出願にある再照射器101及びMRTS106のアレイと共通である。共通の態様の詳細は必ずしも繰り返されない。
【0039】
レーダDUTのシーンをエミュレーションするシステムに発生する可能性があるゴースト信号の1つのタイプは、エミュレーションセットアップにおいて使用される構成要素に起因し、これらのゴースト信号は、システム自体の機械的/物理的ハードウェアからの反射に起因する「セットアップゴースト信号(setup ghost signals)」と呼ばれることが多い。単なる例示として、図1A及び図1BにおけるMRTS106のアレイは、レーダDUT102の試験の間、レーダDUT102から1メートルに接近させて配置することができる。MRTS106のアレイをレーダDUT102から1メートルに配置することは、軽減されない場合には、内部にレーダユニットが配置された車両の前方にゴースト信号をもたらす可能性がある。単なる例示として、或る特定の既知のエミュレーションシステムにおいて、関連するゴーストは搬送波漏れゴースト(carrier-leakage ghost)であり、このゴーストによって、元のチャープ信号の或る量は、周波数シフトを伴わずにミキサを通って漏出する。この搬送波漏れは、セットアップゴーストと比較して僅かな遅延のみを伴ってレーダに再送信される。したがって、この搬送波漏れは、例えば車両から1.2mにゴーストとして現れる。
【0040】
さらに、レンジゴースト(range ghost)として知られているゴースト信号が、MRTS106のアレイにおいて所望のシミュレーションされるターゲット(シミュラント(simulant))のほぼ整数倍に現れる可能性がある。例えば、ミキサは、I-Q駆動信号の高調波もミリメートル波RF信号と混合することができる非線形性を有する。これが発生すると、式(1)に従って、2次高調波がd=2d-dにレンジゴーストを導入し、3次高調波がd=3d-2dにレンジゴーストを導入し、これ以降の高次高調波も同様である。
【0041】
別のタイプのレンジゴーストが、ピックアップ-再送信分離が不十分であるときにマルチパス周波数シフトに起因して発生する。この場合に、元のチャープ信号は、トランスポンダを最初に通過する際に一度周波数シフトされるが、ピックアップアンテナに再び入って再度周波数シフトを受ける。もちろん、このループ挙動は、何度も繰り返し発生する可能性があり、前の段落の非線形高調波ゴーストとほぼ同じ距離に現れる一連のゴーストをもたらす。実際のところ、第nの通過ループのゴースト信号とn次高調波ゴーストとの間の離隔距離は、搬送波漏れゴースト信号とセットアップゴースト信号との間の距離とほぼ同じである。説明を簡単にするために、MRTS106は、図4Aの座標系におけるz軸に沿って配置され、方位(x軸)方向にジグザグ配置される。同様に、MRTS106は、ゴースト抑制を高めるために、1つが上下(y軸)方向にMRTS106を横断するようにz軸(上下)に沿ってもジグザグ配置される。感知されたゴースト角度は、MRTS106からの戻りゴースト波の集団的動作に起因して、多くの場合に直線的(straight ahead)(x方向)である。
【0042】
代表的な実施形態によれば、第1のMRTS106及び第3のMRTS106(図4Aにおける左から右)は、奇数MRTS106と指定され、奇数方位位置に配置される。対照的に、第2のMRTS106及び第4のMRTS106(図4Aにおける左から右)は、偶数MRTS106と指定され、偶数方位位置に配置される。偶数MRTS106は、レーダDUTからのセットアップ距離において奇数MRTS106からλ/4だけジグザグ配置される。ここで、λはレーダDUT102の波長である。したがって、偶数MRTS106と奇数MRTSとの間の往復差は、λ/2、すなわち、電気位相における180度である。
【0043】
それぞれのMRTSの選択的位相整合がない場合には、全ての信号(ゴースト及びシミュラント)は、レーダDUT102に戻る弱め合う干渉(destructive interference)を被る。スティミュラント(stimulant)信号のレーダDUT102への入射を抑制することを回避するために、偶数(e)MRTS106の位相は、同相成分の位相がφ(I)=0度(°)となり、直交成分の位相がφ(Q)=90度となるようにコントローラ114によって設定され、奇数MRTS106の位相は、φ(I)=180度、φ(Q)=270度となるように設定される。ここで、φは位相関数を表す。上記のMRTS106の物理的なジグザグ配置と組み合わせると、偶数MRTS106では、シミュラント信号は、0°+0°=0°の正味の位相を伴って戻され、奇数MRTS106では、シミュラント信号は、
180°+180° ≡ 0° mod 360°
を伴って戻される。ここで、正味の位相は、物理的なジグザグ配置遅延及びIF駆動の合計である。所望どおりに、2つの部分的なシミュラント信号は同相であり、したがって、DUTに戻る際に強め合って足し合わされる。表Iは、図4Aに示される偶数MRTS106及び奇数MRTS106の正味の位相と、シミュラント信号及びゴースト信号に対する結果の効果とを示す抑制の表である。
【表1】
【0044】
特に、表1は、いずれかの補間点(interpolant)が、図3に関して上述されたようなグリッド点(MRTS106)の間の中間部に配置されるときに適用される。その上、近傍の偶数MRTS及び奇数MRTSの振幅重みが本質的に等しいとき、戻り信号の協調された干渉は、厳密に強め合うか又は厳密に弱め合う。
【0045】
図4Bは、代表的な実施形態によるゴースト画像を抑制するように配置及び制御される隣接するオフセットされたMRTS106を示している。理解されるように、図4Bの代表的な実施形態のMRTS106の配置は、図4AのMRTS106の直線的な配置とは対照的に「湾曲」している。図4Bに関して説明される隣接するMRTS106の或る特定の態様は、図1A図4Aに関して上述されているとともに、本明細書に添付されている上掲の本明細書の一部をなす仮出願及び特許出願にある再照射器101及びMRTS106のアレイと共通である。共通の態様の詳細は必ずしも繰り返されない。
【0046】
説明を簡単にするために、MRTS106は、図4Bに示されるように方位
【数1】
方向に放射状にジグザグ配置される。同様に、MRTS106は、ゴースト抑制を高めるために、1つが上下(y軸)方向にピクセルを横断するようにz軸に沿ってもジグザグ配置される。感知されたゴースト角度は、MRTS106からの戻りゴースト波の集団的動作(collective action)に起因して、多くの場合に直線的(x方向)である。
【0047】
代表的な実施形態によれば、第1のMRTS106及び第3のMRTS106(図4Bにおける左から右)は、奇数MRTS106と指定され、奇数方位位置に配置される。対照的に、第2のMRTS106及び第4のMRTS106(図4Bにおける左から右)は、偶数MRTS106と指定され、偶数方位位置に配置される。図4Aに関して説明された代表的な実施形態と同様に、偶数MRTS106は、レーダDUTからのセットアップ距離において奇数MRTS106からλ/4だけジグザグ配置される。ここで、λはレーダDUT102の波長である。したがって、偶数MRTS106と奇数MRTSとの間の往復差は、λ/2、すなわち、電気位相における180度である。
【0048】
それぞれのMRTSの選択的位相整合に対して更にゴースト信号を軽減して抑制しない場合、全ての信号(ゴースト及びシミュラント)は、レーダDUT102に戻る弱め合う干渉を被る。スティミュラント信号のレーダDUT102への入射を抑制することを回避するために、偶数(e)MRTS106の位相は、同相成分の位相がφ(I)=0度となり、直交成分の位相がφ(Q)=90度となるようにコントローラ114によって設定され、奇数MRTS106の位相は、φ(I)=180度、φ(Q)=270度となるように設定される。ここで、φは位相関数を表す。上記のMRTS106の物理的なジグザグ配置と組み合わせると、偶数MRTS106では、シミュラント信号は、0°+0°=0°の正味の位相を伴って戻され、奇数MRTS106では、シミュラント信号は、
180°+180° ≡ 0° mod 360°
を伴って戻される。ここで、正味の位相は、物理的なジグザグ配置遅延及びIF駆動の合計である。所望どおりに、2つの部分的なシミュラント信号は同相であり、したがって、DUTに戻る際に強め合って足し合わされる。
【0049】
別の場合が図5に関して説明される。図5は、代表的な実施形態による、単一の分離されたMRTS106(ピクセル)からなるターゲットのエミュレーションを示している。再度述べるが、ここで説明されている代表的な実施形態の或る特定の態様は、図1A図4に関して上述されているとともに、本明細書に添付されている上掲の本明細書の一部をなす仮出願及び特許出願にある再照射器101及びMRTS106のアレイと共通である。共通の態様の詳細は必ずしも繰り返されない。特に、図5では、矢印の長さが信号トーン電力を表す。
【0050】
図5では、ターゲットは単一のピクセル(単一のMRTS)からなる。これは、遠方のターゲットには多くの場合に当てはまり、したがって、より弱い戻り信号がエミュレーションされる。対象のMRTSピクセルにおいて、I-Q駆動は適度であり、したがって、エミュレーションされるターゲットが比較的大きな距離にあるので、MRTSに提供されるコントローラ114からの強い駆動信号の必要はない。1つのMRTSの近傍にあるMRTSは、更に削減されるか又は場合によっては停止されるI-Q駆動信号を有する。アナログミキサでは、I-Q駆動信号が比較的弱いときに、より多くの搬送波漏れが生じる。したがって、近傍のMRTSにおいてそれぞれの可変減衰器(図2参照)によって提供される減衰は、近傍のMRTSの全搬送波漏れ電力が対象のMRTSの搬送波漏れ電力と一致するように増加される。近傍のI-Q駆動信号は既に小さいので、それらのSSBトーンは小さく、高い減衰が、それらを雑音レベルよりも低く下げる。したがって、隣接するMSTSのSSBトーンは、レーダDUT102に見えない。
【0051】
ここで説明されている実施形態では、非線形2次高調波及び2パスループゴーストの偶数キャンセル及び奇数キャンセルは実現されていない。なぜならば、近傍のMRTSが放出する2fIF電力は、非常に弱いI-Q駆動及び高い減衰に起因して無視することができるからである。ただし、これは、MRTSピクセル自体がコントローラから適度なI-Q駆動信号のみを受け、妥当なピックアップ-再送信分離とともに相対的に適切に設計されたミキサがd及びその近傍におけるレンジゴーストを回避するので、許容することができる。
【0052】
以下の表IIは、ターゲットが、分離されたMRTSピクセル上にあるときの抑制の表である。
【表2】
【0053】
最後に、ピクセルのロケーション(例えば、x、yの座標(図5に図示せず))であるピクセルグリッド点の間の中間部でもなく、正確にグリッド上でもない補間点等の中間ケースは、単純に図4のゴースト抑制方法と図5のゴースト抑制方法との間の中間形式でハンドリングされる。ここで、グリッドはMRTSの2Dアレイである。例えば、コントローラ114からI-Qミキサ(図2参照)への駆動信号及び連続する近傍の可変減衰器(図2参照)用にコントローラ114によって設定される減衰レベルは、所望の補間位置及び図3に関して上述したような感知されたRCSを表す重みを達成するように調整されるが、搬送波漏れの抑制を最大化するようにも調整される。図3を参照すると(ただし、ここでは、λ/4の物理的なジグザグ配置と、上記表Iにおいて論述された偶数IF対奇数IFの位相整合とを有する)、制御することができる4つの実変数、すなわち、I-Q駆動強度、I-Q駆動強度、MTRSの減衰レベル、及びMRTSの減衰レベルを除いて、望ましいもの(2つのシミュラント重み及び漏れバランス)があり、そのため、かなり一般的に、解の集合は常に存在する。
【0054】
上記のことを考慮して、本開示は、それゆえ、その種々の態様、実施形態及び/又は具体的な特徴若しくはサブ構成要素のうちの1つ以上を通して、以下に具体的に言及されるような利点のうちの1つ以上を明らかにすることを意図している。説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を完全に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が記述される。しかしながら、本明細書において開示される具体的な詳細から逸脱するが、本開示と矛盾しない他の実施形態も依然として、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように、既知の装置及び方法の説明は省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0055】
自動車レーダシステムに関する種々のターゲットエミュレーションが幾つかの代表的な実施形態を参照しながら説明されてきたが、使用されてきた言葉は、限定の言葉ではなく、説明及び例示の言葉であることは理解されたい。その態様における自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションの範囲及び趣旨から逸脱することなく、ここで言及されるように、そして修正されるように、添付の特許請求の範囲内で変更を加えることができる。自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションが特定の手段、材料及び実施形態を参照しながら説明されてきたが、自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションは、開示される詳細に限定されることは意図していない。むしろ、自動車レーダセンサ構成に関する動的エコー信号エミュレーションは、添付の特許請求の範囲内にあるような全ての機能的に等価な構造、方法及び用途にまで広がる。
【0056】
本明細書において説明される実施形態の例示は、種々の実施形態の構造を包括的に理解してもらうことを意図している。それらの例示は、本明細書において説明される開示の全ての要素及び特徴の完全な記述としての役割を果たすことは意図していない。数多くの他の実施形態が、本開示を再検討した当業者には明らかになる場合がある。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的代替及び変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を利用し、導出することができる。さらに、例示は単に表現するものであり、縮尺通りに描かれない場合がある。例示内の或る特定の比率が誇張されている場合があり、一方、他の比率が最小化される場合がある。したがって、開示及び図は、限定するものではなく、例示するものと見なされるべきである。
【0057】
本開示の1つ以上の実施形態が、本明細書において、「本教示」という用語によって個別に、及び/又はまとめて参照される場合があるが、便宜にすぎず、本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に制限することは意図していない。さらに、本明細書において具体的な実施形態が例示及び説明されてきたが、図示される具体的な実施形態の代わりに、同じ、又は類似の目的を果たすように設計される任意の後の時点の装置が使用されてもよいことは理解されたい。本開示は、種々の実施形態のありとあらゆる後の時点の改変及び変形に及ぶことを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書において具体的には説明されない他の実施形態が、説明を再検討した当業者には明らかになるであろう。
【0058】
本開示の要約書は、米国特許法施行規則第1.72(b)に準拠するように与えられ、特許請求の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないという了解の下に提出される。さらに、これまでの発明を実施するための形態において、本開示を簡素化する目的で、種々の特徴がまとめられる場合があるか、又は単一の実施形態において説明される場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が、各請求項において明確に列挙されるより多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、添付の特許請求の範囲が反映するように、発明の主題は、開示される実施形態のいずれかの実施形態の全ての特徴より少ない特徴を対象にする場合がある。したがって、添付の特許請求の範囲は発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、別々に特許請求される主題を規定するものとして自立している。
【0059】
開示される実施形態のこれまでの説明は、任意の当業者が本開示において説明される概念を実践できるようにするために与えられる。その場合に、上記の開示される主題は、例示と見なされ、限定するものと見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全てのそのような変更形態、改善形態及び他の実施形態に及ぶことを意図している。したがって、法律によって許される最大範囲まで、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、これまでの詳細な説明によって限定又は制限されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
【外国語明細書】