(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181086
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】信号発生装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20221130BHJP
H04B 3/462 20150101ALI20221130BHJP
【FI】
G01R31/00
H04B3/462
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087922
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】中村 友洋
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 誉行
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA28
2G036BA13
(57)【要約】
【課題】映像信号等の所定の信号にジッタを付加する際に、周期ジッタの周波数及びジッタ量を簡便に変動させることが可能な信号発生装置を提供する。
【解決手段】信号発生装置1の映像信号送信回路10は、映像信号を送信し、誘導信号送信回路11は、周波数f(i)が反映された周期的な誘導信号を生成して送信する。ジッタ特性制御回路12は、所望のジッタJ(i)が発生するように要素番号iを指定し、誘導信号の周波数f(i)及び伝送線路13に備えた結合線路21-1~21-Nのうちの結合線路21-iを特定する。伝送線路13は、結合線路21-iにて映像信号及び誘導信号を伝送することで、容量的結合及び誘導的結合に伴う誘導信号から映像信号へのクロストークにより、映像信号に対し、配線間隔s
V(i)等のパラメータに応じたジッタJ(i)を付加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジッタが付加された信号を発生する信号発生装置において、
2本の信号線による差動の信号を送信する信号送信回路と、
所定の周波数fが反映された周期的な2本の信号線による差動の誘導信号を生成し、前記誘導信号を送信する誘導信号送信回路と、
複数の結合線路を有し、前記複数の結合線路のうちのいずれかが指定される伝送線路と、を備え、
前記複数の結合線路のそれぞれは、
誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された2本の信号用配線及び2本の誘導用配線を備え、
前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、
前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、
前記ジッタは、
前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
複数のリンクからなる信号であって、ジッタが付加されたマルチリンクの前記信号を発生する信号発生装置において、
前記複数のリンクのそれぞれについて、信号送信回路と、誘導信号送信回路と、伝送線路と、を備え、
前記信号送信回路は、
2本の信号線による差動の信号を生成し、
前記誘導信号送信回路は、
所定の周波数fが指定され、前記周波数fが反映された周期的な2本の信号線による差動の誘導信号を生成し、前記誘導信号を送信し、
前記伝送線路は、
複数の結合線路を有し、前記複数の結合線路のうちのいずれかが指定され、
前記複数の結合線路のそれぞれは、
誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された2本の信号用配線及び2本の誘導用配線を備え、
前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、
前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、
前記ジッタは、
前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号発生装置において、
前記複数の結合線路のそれぞれは、
前記誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線、及び前記2本の信号用配線の隣に形成された前記2本の誘導用配線を備えている、ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の信号発生装置において、
前記複数の結合線路のそれぞれは、
前記誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線、及び前記2本の信号用配線を挟み込むように形成された前記2本の誘導用配線を備え、
前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、前記2本の誘導用配線のうちプラス側の前記誘導信号を伝送する配線と、前記2本の信号用配線のうちの一方の配線との間の配線間隔をp1、前記2本の誘導用配線のうちマイナス側の前記誘導信号を伝送する配線と、前記2本の信号用配線のうちの他方の配線との間の配線間隔をp2、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、
前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、
前記ジッタは、
前記周波数f、前記配線間隔sV,p1,p2、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の信号発生装置において、
前記複数の結合線路のそれぞれは、
前記誘電体、前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線、並びに、前記誘電体に積層され、かつ前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線を覆うように設置された第2誘電体を備え、
前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh1、前記誘電体の比誘電率をεr1、前記第2誘電体の高さをh2、及び前記第2誘電体の比誘電率をεr2として構成され、
前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、
前記ジッタは、
前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh1,h2及び前記比誘電率εr1,εr2により決定される、ことを特徴とする信号発生装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の信号発生装置において、
外部装置にてエラーが発生したときのBER(ビットエラーレート)、ビットエラーの数、CRC(巡回冗長検査)エラーレートまたはCRCエラーの数と前記ジッタとの間の関係を測定するために、前記ジッタが付加された前記信号を、前記外部装置へ出力する、ことを特徴とする信号発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッタが付加された信号を発生する信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4Kまたは8K用非圧縮映像の超高精細度テレビジョン信号を業務用映像機器間で伝送する場合、様々なインターフェースが使用されている。例えば、12G-SDI等のように、非圧縮デジタル映像及び音声をBNCケーブルと同軸ケーブルで伝送するシリアルデジタルインターフェース(SDI)が使用されている(例えば非特許文献1を参照)。
【0003】
また、8K解像度、RGB444、ハイフレームレート、広色域、12ビット階調に対応した映像信号の伝送には、Ultrahigh-definition Signal/Data Interface(以下、「U-SDI」という。)が使用されている(例えば特許文献1、非特許文献2を参照)。これらのインターフェースの伝送レートは、10Gbpsを超えている。
【0004】
一般に、SDIに対応した業務用カメラ、スイッチャー、変換器等の映像制作機器では、機器筐体のコネクタとFPGA(Field Programmable Gate Array)等の信号処理部品との間の信号伝送のために、電気差動信号が用いられる。
【0005】
U-SDIに対応した映像制作機器においても同様に、O/E(光/電気変換器)、E/O(電気/光変換器)、FPGA等の信号処理部品の間の信号伝送のために、電気差動信号が用いられる。
【0006】
信号処理部品が搭載された基板等において、電気差動信号は、誘電体による配線損失、電源レギュレーターのリップル、同時スイッチングノイズ等の影響を受けるため、機器内部でジッタが発生する。
【0007】
このため、SDI信号またはU-SDI信号の受信特性を満足せず、映像データ、アンシラリーデータ、タイミング基準コードが変化し、異なる装置間の信号伝送が不可能になるという問題がある。また、装置が、所定規格のアイマスク試験に合格しないという問題もある。
【0008】
映像入力回路を備える機器のISI(InterSymbol Interference)に対する耐性の測定手法は、例えば本件特許出願の同一の出願人によりなされた、本件特許出願時に未公開の特願2020-63223号公報に記載されている。
【0009】
この手法は、電気差動信号の振幅及びエンファシスフィルタのゲインを変更することで、確定的ジッタ量を変動させながら映像信号を送出し、映像送信機器と映像受信機器との間の信号伝送が不可能となるときのジッタ量により、耐性を測定するものである。
【0010】
電気差動信号のジッタには、ISI以外にも電源レギュレーターのリップルまたは多数のI/Oを用いた同時スイッチングノイズによる周期ジッタ(データパターンに無相関で、かつ周期的に発生するジッタ)が含まれる。前述の耐性を測定する手法では、電源レギュレーターのスイッチング周波数を変動させることで、周期ジッタを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】SMPTE ST2082-1:2015,“SMPTE STANDARD 12Gb/s Signal/Data Serial Interface - Electrical”
【非特許文献2】ARIB STD-B58,“超高精細度テレビジョン信号スタジオ機器間インターフェース規格”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の手法では、電源レギュレーターのスイッチング周波数を変動させているため、周期ジッタの周波数を調整することができる。しかし、電源レギュレーターによっては、ジッタ量を十分に調整することができない場合がある。
【0014】
また、前述の手法では、映像信号に周期ジッタを付加するために、電源レギュレーターのリップル量を変動させる必要がある。しかし、リップル量を変動させるためには、電源レギュレーター周辺に実装されたデカップリングキャパシタ等の定数を変更させるか、または負荷容量を変動させる必要があり、簡便ではないという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像信号等の所定の信号にジッタを付加する際に、周期ジッタの周波数及びジッタ量を簡便に変動させることが可能な信号発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、請求項1の信号発生装置は、ジッタが付加された信号を発生する信号発生装置において、2本の信号線による差動の信号を送信する信号送信回路と、所定の周波数fが指定され、前記周波数fが反映された周期的な2本の信号線による差動の誘導信号を生成し、前記誘導信号を送信する誘導信号送信回路と、複数の結合線路を有し、前記複数の結合線路のうちのいずれかが指定される伝送線路と、を備え、前記複数の結合線路のそれぞれが、誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された2本の信号用配線及び2本の誘導用配線を備え、前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、前記ジッタが、前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項2の信号発生装置は、複数のリンクからなる信号であって、ジッタが付加されたマルチリンクの前記信号を発生する信号発生装置において、前記複数のリンクのそれぞれについて、信号送信回路と、誘導信号送信回路と、伝送線路と、を備え、前記信号送信回路が、2本の信号線による差動の信号を生成し、前記誘導信号送信回路が、所定の周波数fが指定され、前記周波数fが反映された周期的な2本の信号線による差動の誘導信号を生成し、前記誘導信号を送信し、前記伝送線路が、複数の結合線路を有し、前記複数の結合線路のうちのいずれかが指定され、前記複数の結合線路のそれぞれが、誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された2本の信号用配線及び2本の誘導用配線を備え、前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、前記ジッタが、前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項3の信号発生装置は、請求項1または2に記載の信号発生装置において、前記複数の結合線路のそれぞれが、前記誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線、及び前記2本の信号用配線の隣に形成された前記2本の誘導用配線を備えている、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の信号発生装置は、請求項1または2に記載の信号発生装置において、
前記複数の結合線路のそれぞれが、前記誘電体、並びに前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線、及び前記2本の信号用配線を挟み込むように形成された前記2本の誘導用配線を備え、前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、前記2本の誘導用配線のうちプラス側の前記誘導信号を伝送する配線と、前記2本の信号用配線のうちの一方の配線との間の配線間隔をp1、前記2本の誘導用配線のうちマイナス側の前記誘導信号を伝送する配線と、前記2本の信号用配線のうちの他方の配線との間の配線間隔をp2、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh、及び前記誘電体の比誘電率をεrとして構成され、前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、前記ジッタが、前記周波数f、前記配線間隔sV,p1,p2、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh及び前記比誘電率εrにより決定される、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項5の信号発生装置は、請求項1または2に記載の信号発生装置において、前記複数の結合線路のそれぞれが、前記誘電体、前記誘電体の表面に並走するように形成された前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線、並びに、前記誘電体に積層され、かつ前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線を覆うように設置された第2誘電体を備え、前記2本の信号用配線の配線間隔をsV、隣り合う前記信号用配線と前記誘導用配線との間の配線間隔をp、前記2本の誘導用配線の配線間隔をsA、前記信号用配線の配線幅をwV、前記誘導用配線の配線幅をwA、前記2本の信号用配線及び前記2本の誘導用配線の配線長をL、前記誘電体の高さをh1、前記誘電体の比誘電率をεr1、前記第2誘電体の高さをh2、及び前記第2誘電体の比誘電率をεr2として構成され、前記信号送信回路により送信された前記信号を前記2本の信号用配線にて伝送すると共に、前記誘導信号送信回路により送信された前記誘導信号を前記2本の誘導用配線にて伝送することで、前記誘導信号から前記信号へのクロストークにより、前記ジッタを前記信号に付加し、前記ジッタが、前記周波数f、前記配線間隔sV,p,sA、前記配線幅wV,wA、前記配線長L、前記高さh1,h2及び前記比誘電率εr1,εr2により決定される、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項6の信号発生装置は、請求項1から5までのいずれか一項に記載の信号発生装置において、外部装置にてエラーが発生したときのBER(ビットエラーレート)、ビットエラーの数、CRC(巡回冗長検査)エラーレートまたはCRCエラーの数と前記ジッタとの間の関係を測定するために、前記ジッタが付加された前記信号を、前記外部装置へ出力する、、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、映像信号等の所定の信号にジッタを付加する際に、周期ジッタの周波数及びジッタ量を簡便に変動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態による信号発生装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】結合線路の第1の構成例を説明する図である。
【
図4】マルチリンク信号にジッタを付加する場合の信号発生装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】マルチリンク信号にジッタを付加する場合の伝送線路の構成例を示すブロック図である。
【
図6】マルチリンク信号にジッタが付加された場合の測定結果(A)を説明する図である。
【
図7】マルチリンク信号にジッタが付加された場合の測定結果(B)を説明する図である。
【
図8】結合線路の第2の構成例を説明する図である。
【
図9】結合線路の第3の構成例を説明する図である。
【
図10】結合線路の第4の構成例を説明する図である。
【
図11】結合線路の第5の構成例を説明する断面図である。
【
図12】周期ジッタに対するエラー耐性を評価する全体システムの構成例を示す概略図である。
【
図13】エラー測定回路の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、ジッタが付加される対象となる所定の信号及び誘導信号が伝送される伝送線路の容量的結合及び誘導的結合を調整することで、所定の信号に誘導信号を付加したときのジッタを制御することを特徴とする。
【0025】
〔信号発生装置〕
まず、本発明の実施形態による信号発生装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態による信号発生装置の構成例を示すブロック図である。この信号発生装置1は、映像信号送信回路10、誘導信号送信回路11、ジッタ特性制御回路12、伝送線路(ジッタ付加回路)13、映像信号出力回路14及び誘導信号出力回路15を備えている。
【0026】
映像信号送信回路10は、ジッタが付加される対象となる映像信号を、2本の信号線による差動(逆位相)の信号(差動信号(プラス側の差動信号P及びマイナス側の差動信号N))として生成するか、または外部から入力し、差動信号である映像信号を送信する。映像信号は、例えば映像信号データがNRZ信号、PAM信号等の伝送路符号を用いて符号化された信号である。
【0027】
誘導信号送信回路11は、ジッタ特性制御回路12から周波数(トグルレート)f(i)を入力し、周波数f(i)が反映された周期的な誘導信号を、2本の信号線による差動の信号(差動信号)として生成し、差動信号である誘導信号を送信する。誘導信号は、例えば周期信号、PRBS(Pseudo-Random Binary Sequence)等の擬似ランダムパターン、映像信号等のデータが伝送路符号を用いて符号化された信号である。
【0028】
ジッタ特性制御回路12は、伝送線路13により映像信号に付加されるジッタの特性を制御する回路である。ジッタ特性制御回路12は、ユーザ操作に従い手動にて、または自動にて、ユーザの所望するジッタ(確定的ジッタ)J(i)が発生するように、要素番号iを指定する。そして、ジッタ特性制御回路12は、要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i)、及び後述する結合線路21-1~21-Nのうちのいずれか1つの結合線路21-iを特定する。ここで、要素番号iは、1≦i≦Nを満たす整数である。Nは要素数である。誘導信号の周波数f(i)は、周期ジッタの周波数でもある。
【0029】
ジッタ特性制御回路12は、周波数f(i)を誘導信号送信回路11に出力すると共に、要素番号iを伝送線路13に出力する。
【0030】
これにより、誘導信号送信回路11において、周波数f(i)が反映された周期的な誘導信号が生成される。また、伝送線路13において、要素番号iに対応する結合線路21-iを用いて、映像信号及び誘導信号が伝送される際の容量的結合及び誘導的結合により、誘導信号から映像信号へのクロストークが生じる。そして、このクロストークにより誘導信号が映像信号に干渉することで、映像信号に対し、所望の特性を有するジッタが付加される。
【0031】
伝送線路13は、ジッタ特性制御回路12から要素番号iを入力し、後述する結合線路21-1~21-Nのうち、要素番号iに対応する結合線路21-iに切り替える。また、伝送線路13は、映像信号送信回路10から送信された映像信号を伝送すると共に、誘導信号送信回路11から送信された誘導信号を伝送する。
【0032】
伝送線路13は、結合線路21-iにて映像信号及び誘導信号を伝送することで、容量的結合及び誘導的結合に伴う誘導信号から映像信号へのクロストークにより、映像信号に対し、ジッタJ(i)を付加する。このジッタJ(i)は、誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iの構成等の各種のパラメータにより決定される。
【0033】
伝送線路13は、ジッタが付加された映像信号を映像信号出力回路14に出力し、誘導信号を誘導信号出力回路15に出力する。伝送線路13、ジッタJ(i)及びパラメータの詳細については後述する。
【0034】
映像信号出力回路14は、伝送線路13からジッタが付加された映像信号を入力し、映像信号に所定の出力用インターフェースの処理(例えば電気/光変換の処理)を施す。そして、映像信号出力回路14は、所定の出力用インターフェースの処理が施された映像信号を出力する。例えば映像信号出力回路14は、ARIB STD-B58の標準規格に従ったビットパターンを生成して出力する。
【0035】
誘導信号出力回路15は、伝送線路13から誘導信号を入力し、誘導信号に所定の出力用インターフェースの処理を施す。そして、誘導信号出力回路15は、所定の出力用インターフェースの処理が施された誘導信号を出力する。尚、誘導信号出力回路15は、終端抵抗であってもよい。この場合、誘導信号出力回路15は、誘導信号を出力しない。
【0036】
(伝送線路13)
次に、
図1に示した伝送線路13について詳細に説明する。
図2は、伝送線路13の構成例を示すブロック図である。この伝送線路13は、切替回路20,22及び結合線路(マイクロストリップ線路)21-1~21-Nを備えている。
【0037】
切替回路20は、ジッタ特性制御回路12から要素番号i(1≦i≦N)を入力し、結合線路21-1~21-Nのクロスポイントを、既に選択されている線路から要素番号iに対応する結合線路21-iに切り替える。
【0038】
切替回路20は、映像信号送信回路10から送信された映像信号及び誘導信号送信回路11から送信された誘導信号を、結合線路21-iを介して切替回路22へ伝送する。
【0039】
結合線路21-1~21-Nは、容量的結合及び誘導的結合の結合量の異なるN個の結合線路から構成される。
【0040】
結合線路21-i(すなわち結合線路21-1~21-Nのそれぞれ)は、切替回路20を介して映像信号及び誘導信号を伝送することで、容量的結合及び誘導的結合に伴う誘導信号から映像信号へのクロストークにより、映像信号に対し、ジッタを付加する。
【0041】
前述のとおり、結合線路21-iにて発生するジッタJ(i)は、誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iの構成等の各種のパラメータにより決定される。このため、結合線路21-1~21-N間で、誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iの構成等のパラメータのうちのいずれか1つまたは複数のパラメータが異なる場合には、映像信号に対して異なるジッタが付加されることとなる。
【0042】
ユーザは、誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iの構成等のパラメータに応じたジッタの特性を、要素番号i毎に予め認識している。
図1に示したジッタ特性制御回路12により、ユーザ操作に従い手動にて、または後述する
図12に示すエラー耐性評価装置3のように自動にて、ジッタの特性に応じた誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iを特定するための要素番号iが指定される。つまり、所定のジッタが発生するように、ジッタ特性制御回路12により要素番号iが指定される。
【0043】
結合線路21-iは、ジッタが付加された映像信号、及び入力して伝送された誘導信号を切替回路22に出力する。結合線路21-iの詳細については後述する。
【0044】
切替回路22は、ジッタ特性制御回路12から要素番号i(1≦i≦N)を入力し、結合線路21-1~21-Nのうちそのクロスポイントを、既に選択されている線路から要素番号iに対応する結合線路21-iに切り替える。
【0045】
切替回路22は、結合線路21-iからジッタが付加された映像信号及び誘導信号をそれぞれ入力し、ジッタが付加された映像信号を映像信号出力回路14に出力すると共に、誘導信号を誘導信号出力回路15に出力する。
【0046】
尚、N=1の場合、伝送線路13は、1個の結合線路21-1を備えるため、切替回路20,22を備えていなくてもよい。
【0047】
(結合線路21-i/第1の構成例)
次に、結合線路21-1~21-N(結合線路21-i)について詳細に説明する。
図3は、結合線路21-iの第1の構成例を説明する図である。
【0048】
この結合線路21-iは、誘電体30、誘電体30に積層されたGND(グランド)層31、並びに、誘電体30に対しGND層31とは反対側に設置され、誘電体30の表面(表層)に並走するように形成された映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を備えて構成される。
【0049】
映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2は、誘電体30の表面において、互いに平行に設置されている。映像用配線32-1,32-2にて伝送される映像信号、及び誘導用配線33-1,33-2にて伝送される誘導信号は、GND層31を共有している。
【0050】
前述のとおり、映像信号及び誘導信号は、共に差動信号である。映像用配線32-1は、2本の映像信号のうちプラス側の差動信号Pが伝送される線路であり、映像用配線32-2は、2本の映像信号のうちマイナス側の差動信号Nが伝送される線路である。また、誘導用配線33-1は、2本の誘導信号のうちプラス側の差動信号Pが伝送される線路であり、誘導用配線33-2は、2本の誘導信号のうちマイナス側の差動信号Nが伝送される線路である。
【0051】
映像信号を伝送する2本の映像用配線32-1,32-2の配線間隔をs
V(i)、映像用配線32-1,32-2と誘導用配線33-1,33-2との間の配線間隔(
図3では、隣り合う映像用配線32-1と誘導用配線33-2との間の配線間隔)をp(i)とする。また、誘導信号を伝送する2本の誘導用配線33-1,33-2の配線間隔をs
A(i)とする。
【0052】
映像用配線32-1,32-2の配線幅(配線断面のサイズ)をwV(i)、誘導用配線33-1,33-2の配線幅をwA(i)、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2が誘電体30の長手方向の表面を並走する配線長をL(i)とする。また、誘電体30の高さをh(i)、誘電体30の比誘電率をεr(i)、誘導信号の周波数(周期ジッタの周波数)をf(i)とする。
【0053】
結合線路21-iにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i)は、前述の配線間隔sV(i)等のパラメータを用いて、以下の関数g(・)にて表される。
[数1]
J(i)=g(sV(i),p(i), sA(i), wV(i), wA(i),L(i),h(i),εr(i),f(i))
・・・(1)
【0054】
前記式(1)は、映像用配線32-1,32-2と誘導用配線33-1,33-2とが容量的に結合(静電結合)すると共に、誘導的に結合(電磁結合)することから導出される。
【0055】
前記式(1)において、例えば映像用配線32-1と誘導用配線33-2との間の配線間隔p(i)が狭いほど、ジッタJ(i)(の量)は大きくなり、配線間隔p(i)が広いほど、ジッタJ(i)は小さくなる。これは、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2が物理的に近接するほど、結合の程度が強くなりクロストークが増加し、離れるほど、結合の程度が弱くなりクロストークが減少するからである。
【0056】
また、例えば映像用配線32-1,32-2の配線間隔sV(i)が広く、誘導用配線33-1,33-2の配線間隔sA(i)が狭いほど、ジッタJ(i)は大きくなる。一方、映像用配線32-1,32-2の配線間隔sV(i)が狭く、誘導用配線33-1,33-2の配線間隔sA(i)が広いほど、ジッタJ(i)は小さくなる。
【0057】
また、例えば映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2の配線長L(i)が長いほど、ジッタJ(i)は大きくなり、配線長L(i)が短いほど、ジッタJ(i)は小さくなる。
【0058】
また、映像用配線32-1,32-2の配線幅wV(i)、誘導用配線33-1,33-2の配線幅wA(i)、誘電体30の高さh(i)、誘電体30の比誘電率εr(i)及び誘導信号の周波数f(i)については、他のパラメータとの関係で、間接的にジッタJ(i)に影響する。
【0059】
ここで、
図1に示した信号発生装置1の伝送線路13は、周波数f(i)以外の全てのパラメータのうち1または複数のパラメータが異なるN種類の結合線路21-1~21-Nを備えている。この場合、誘導信号の周波数f(i)は、要素番号i毎に異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。
【0060】
また、誘導信号の周波数f(i)が要素番号i毎に異なる値である場合、信号発生装置1の伝送線路13は、周波数f(i)以外のパラメータが要素番号i間で同一の結合線路21-1~21-N(構成等が同一の結合線路21-1~21-N)を備えるようにしてもよい。
【0061】
前述のとおり、ジッタ特性制御回路12は、結合線路21-iにてユーザが所望するジッタJ(i)を発生させるために、要素番号iを指定する。
【0062】
これにより、ジッタ特性制御回路12にて要素番号iが指定されることで、誘導信号の周波数f(i)すなわちジッタJ(i)の周波数f(i)、及び結合線路21-iが特定され、映像信号に付加されるジッタJ(i)を制御することができる。
【0063】
尚、
図3に示した結合線路21-iにおいて、誘導信号から映像信号へのクロストークにより、映像信号に対してジッタが付加されるが、このクロストークは、クロストーク成分の正負に関係なくジッタに変換される。この場合、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を流れる電流の向きについては、どちらでも構わない。一般に、どちらか一方の向きを反対にすると、クロストーク成分の正負が反転し、両方の向きを反転させると、クロストーク成分の正負が元に戻ることとなる。後述する
図8等においても同様である。
【0064】
(結合線路21-iの基本形/配線間隔p(i)以外のパラメータが同一)
ここで、結合線路21-iの基本形について説明する。結合線路21-iの基本形は、映像用配線32-1と誘導用配線33-2との間の配線間隔p(i)以外のパラメータが同一の場合である。この場合の結合線路21-iにて発生するジッタJ(i)は、以下の式にて表される。
[数2]
J(i)=g(p(i)) ・・・(2)
【0065】
前記式(2)は、前記式(1)を簡略化したものであり、配線間隔p(i)を変更することで、ジッタJ(i)が変更されることを示している。前記式(2)において、配線間隔p(i)が狭いほど、ジッタJ(i)は大きくなり、配線間隔p(i)が広いほど、ジッタJ(i)は小さくなる。
【0066】
この基本形においては、信号発生装置1の伝送線路13は、配線間隔p(i)の異なるN種類の結合線路21-1~21-Nを備えている。ジッタ特性制御回路12は、結合線路21-iにてユーザが所望するジッタJ(i)を発生させるために、要素番号iを指定する。この場合の周波数f(i)は、結合線路21-1~21-N間で共通の値が用いられる。
【0067】
これにより、ジッタ特性制御回路12にて要素番号iが指定されることで、誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iが特定され、結合線路21-1~21-N間の異なる配線間隔p(i)に応じて、映像信号に付加されるジッタJ(i)を制御することができる。
【0068】
(結合線路21-iの他の第1形態/周波数f(i)以外のパラメータが同一)
次に、結合線路21-iの他の第1形態について説明する。結合線路21-iの他の第1形態は、誘導信号の周波数f(i)以外のパラメータが同一の場合である。この場合の結合線路21-iにて発生するジッタJ(i)は、以下の式にて表される。
[数3]
J(i)=g(f(i)) ・・・(3)
【0069】
前記式(3)は、前記式(1)を簡略化したものであり、周波数f(i)を変更することで、ジッタJ(i)の周波数が変更されることを示している。ジッタJ(i)の周波数は、誘導信号の周波数f(i)に依存するからである。前記式(3)において、周波数f(i)が高いほど、ジッタJ(i)の周波数は高くなり、周波数f(i)が低いほど、ジッタJ(i)の周波数は低くなる。
【0070】
誘導信号としてPRBS等の擬似ランダムパターンを用いる場合、その周期に応じて、ジッタJ(i)の周波数特性がランダムになる。このため、誘導信号が周期的に変化することで、映像信号に付加されるジッタJ(i)の周波数を変動させることができる。
【0071】
この形態においては、信号発生装置1の伝送線路13は、配線間隔sV(i),p(i),sA(i)、配線幅wV(i), wA(i)、配線長L(i)、高さh(i)及び比誘電率εr(i)が同一の結合線路21-1~21-Nを備えている。
【0072】
ジッタ特性制御回路12は、結合線路21-iにてユーザが所望するジッタJ(i)を発生させるために、要素番号iを指定する。
【0073】
これにより、ジッタ特性制御回路12にて要素番号iが指定されることで、誘導信号の周波数f(i)が特定され、要素番号1~N間の異なる周波数f(i)に応じて、映像信号に付加されるジッタJ(i)を制御することができる。
【0074】
(結合線路21-iの他の第2形態/配線長L(i)以外のパラメータが同一)
次に、結合線路21-iの他の第2形態について説明する。結合線路21-iの他の第2形態は、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2の配線長L(i)以外のパラメータが同一の場合である。この場合の結合線路21-iにて発生するジッタJ(i)は、以下の式にて表される。
[数4]
J(i)=g(L(i)) ・・・(4)
【0075】
前記式(4)は、前記式(1)を簡略化したものであり、配線長L(i)を変更することで、ジッタJ(i)が変更されることを示している。
【0076】
前述のとおり、映像信号及び誘導信号のそれぞれは差動信号である。このため、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2における差動信号P,Nの線路には、奇モード及び偶モードの2種類の伝搬モードが存在し、2種類の伝搬モード間で伝搬速度が異なる。伝搬モード間の遅延時間の差は、配線長L(i)に比例して増加するため、クロストークも配線長L(i)に比例して増大する。
【0077】
したがって、前記式(4)において、配線長L(i)が長いほど、ジッタJ(i)は大きくなり、配線長L(i)が短いほど、ジッタJ(i)は小さくなる。
【0078】
この形態においては、信号発生装置1の伝送線路13は、配線長L(i)の異なるN種類の結合線路21-1~21-Nを備えている。ジッタ特性制御回路12は、ユーザが所望するジッタJ(i)を発生させるために、要素番号iを指定する。この場合の周波数f(i)は、結合線路21-1~21-N間で共通の値が用いられる。
【0079】
これにより、ジッタ特性制御回路12にて要素番号iが指定されることで、結合線路21-iが特定され、結合線路21-1~21-N間の異なる配線長L(i)に応じて、映像信号に付加されるジッタJ(i)を制御することができる。
【0080】
以上のように、
図1に示した信号発生装置1によれば、映像信号送信回路10は、映像信号を送信し、誘導信号送信回路11は、周波数f(i)が反映された周期的な誘導信号を生成して送信する。
【0081】
ジッタ特性制御回路12は、ユーザの所望するジッタJ(i)が発生するように、要素番号iを指定し、要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iを特定する。
【0082】
伝送線路13は、結合線路21-iにて映像信号及び誘導信号を伝送することで、容量的結合及び誘導的結合に伴う誘導信号から映像信号へのクロストークにより、映像信号に対し、配線間隔sV(i)等のパラメータに応じたジッタJ(i)を付加する。
【0083】
これにより、指定された要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i)及び結合線路21-iの構成に応じて、ユーザが所望するジッタJ(i)を発生させることができ、当該ジッタJ(i)が映像信号に付加される。
【0084】
つまり、周期ジッタの周波数f(i)は、誘導信号の周波数f(i)のパラメータを変えることで簡便に変動させることができる。また、周期ジッタの量は、誘導信号の周波数f(i)以外のパラメータ(配線間隔sV(i)等)を変えること、すなわち結合線路21-iを切り替えることで簡便に変動させることができる。したがって、映像信号にジッタを付加する際に、周期ジッタの周波数及びジッタ量を簡便に変動させることができる。
【0085】
〔信号発生装置/マルチリンク信号の場合〕
次に、複数のリンクの映像信号からなるマルチリンク信号にジッタを付加する場合の信号発生装置について説明する。
図4は、マルチリンク信号にジッタを付加する場合の信号発生装置の構成例を示すブロック図である。
【0086】
マルチリンク信号は、全リンクにおいてビットエラーなく伝送される必要があるため、信号発生装置2の基板上には、ジッタ特性制御回路12を除いて、最大Mリンク分の構成部が必要となる。Mはリンク数を示し、整数である。
【0087】
マルチリンク信号は、前述の非特許文献2に準拠したU-SDI信号のようにマルチリンクから構成される信号であり、複数のリンクのそれぞれに対応した映像信号からなる信号である。前述の非特許文献2において、マルチリンク信号は、24リンク分の10Gリンク信号により、1系統のU-SDI信号が構成される。
【0088】
この信号発生装置2は、リンク数Mの映像信号送信回路10-1~10-M、リンク数Mの誘導信号送信回路11-1~11-M、ジッタ特性制御回路12、リンク数Mの伝送線路(ジッタ付加回路)13-1~13-M、リンク数Mの映像信号出力回路14-1~14-M、及びリンク数Mの誘導信号出力回路15-1~15-Mを備えている。
【0089】
第1番目のリンクに対応する構成部は、映像信号送信回路10-1、誘導信号送信回路11-1、伝送線路13-1、映像信号出力回路14-1及び誘導信号出力回路15-1である。また、第M番目のリンクに対応する構成部は、映像信号送信回路10-M、誘導信号送信回路11-M、伝送線路13-M、映像信号出力回路14-M及び誘導信号出力回路15-Mである。
【0090】
信号発生装置2により、第1番目のリンクに対応する映像信号に対し、後述するジッタJ(i,1)が付加され、第M番目のリンクに対応する映像信号に対し、ジッタJ(i,M)が付加される。
【0091】
ここで、mをリンク番号とし、1≦m≦Mを満たす整数とする。信号発生装置2は、m番目のリンクについて、映像信号送信回路10-m、誘導信号送信回路11-m、伝送線路13-m、映像信号出力回路14-m及び誘導信号出力回路15-mを備え、第m番目のリンクに対応する映像信号に対し、ジッタJ(i,m)を付加する。信号発生装置2は、リンク数Mのリンクにおいて、共通のジッタ特性制御回路12を備えている。
【0092】
リンク毎の映像信号送信回路10-mは
図1に示した映像信号送信回路10に相当し、誘導信号送信回路11-mは誘導信号送信回路11に相当し、伝送線路13-mは伝送線路13に相当し、映像信号出力回路14-mは映像信号出力回路14に相当し、誘導信号出力回路15-mは誘導信号出力回路15に相当し、ジッタ特性制御回路12はジッタ特性制御回路12に相当する。
【0093】
映像信号送信回路10-mは、映像信号を、2本の信号線による差動信号として生成するか、または外部から入力し、差動信号である映像信号を送信する。
【0094】
誘導信号送信回路11-mは、ジッタ特性制御回路12から周波数f(i,m)を入力し、周波数f(i,m)が反映された周期的な誘導信号を、2本の信号線による差動信号として生成し、誘導信号を送信する。
【0095】
ジッタ特性制御回路12は、ユーザの所望するジッタJ(i,m)が発生するように、要素番号iを指定する。そして、ジッタ特性制御回路12は、リンク毎に、要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i,m)、及び結合線路21-1-m~21-N-mのうちのいずれか1つの結合線路21-i-mを特定する。誘導信号の周波数f(i,m)は、後述する結合線路21-i-mにおいて付加されるジッタJ(i,m)の周波数でもある。
【0096】
ジッタ特性制御回路12は、周波数f(i,m)を誘導信号送信回路11-mに出力すると共に、要素番号iを伝送線路13-mに出力する。
【0097】
伝送線路13-mは、ジッタ特性制御回路12から要素番号iを入力し、後述する結合線路21-1-m~21-N-mのうち、要素番号iに対応する結合線路21-i-mに切り替える。また、伝送線路13-mは、対応する映像信号送信回路10-mから送信された映像信号を伝送すると共に、対応する誘導信号送信回路11-mから送信された誘導信号を伝送する。
【0098】
伝送線路13-mは、容量的結合及び誘導的結合に伴うクロストークにより、映像信号に対してジッタJ(i,m)を付加し、ジッタJ(i,m)を付加した映像信号を、対応する映像信号出力回路14-mに出力する。また、伝送線路13-mは、誘導信号を、対応する誘導信号出力回路15-mに出力する。伝送線路13-1~13-M及びジッタJ(i,m)等の詳細については後述する。
【0099】
映像信号出力回路14-mは、対応する伝送線路13-mからジッタJ(i,m)が付加された映像信号を入力し、映像信号に所定の出力用インターフェースの処理を施す。そして、映像信号出力回路14-mは、所定の出力用インターフェースの処理が施された映像信号を出力する。
【0100】
誘導信号出力回路15-mは、対応する伝送線路13-mから誘導信号を入力し、誘導信号に所定の出力用インターフェースの処理を施す。そして、誘導信号出力回路15-mは、所定の出力用インターフェースの処理が施された誘導信号を出力する。
【0101】
(伝送線路13-1~13-M)
次に、
図4に示した伝送線路13-1~13-Mについて詳細に説明する。
図5は、伝送線路13-1~13-Mの構成例を示すブロック図である。
【0102】
この伝送線路13-1~13-Mは、リンク数Mの切替回路20-1~20-M、リンク数Mの結合線路21-i-1~21-i-M、及びリンク数Mの切替回路22-1~22-Mを備えている。
【0103】
つまり、リンク毎の伝送線路13-mは、切替回路20-m、結合線路21-1-m~21-N-m及び切替回路22-mを備えている。
【0104】
リンク毎の伝送線路13-mは、
図2に示した伝送線路13と同様である。切替回路20-mは切替回路20に相当し、結合線路21-1-m~21-N-mは結合線路21-1~21-Nに相当し、切替回路22-mは切替回路22に相当するため、それぞれの構成部の説明は省略する。
【0105】
尚、N=1の場合、伝送線路13-1~13-Mは、切替回路20-1~20-M、及び切替回路22-1~22-Mを備えていなくてもよい。
【0106】
リンク毎の結合線路21-1-m~21-N-m(結合線路21-i-m)の構成は、
図3に示した結合線路21-iの構成と同様である。尚、リンク毎の結合線路21-i-mにおいては、リンク間の干渉がないように、リンク間で所定の距離が確保されている。
【0107】
映像信号を伝送する2本の映像用配線32-1,32-2の配線間隔をsV(i,m)、映像用配線32-1と誘導用配線33-2との間の配線間隔をp(i,m)とする。また、誘導信号を伝送する2本の誘導用配線33-1,33-2の配線間隔をsA(i,m)とする。
【0108】
映像用配線32-1,32-2の配線幅をwV(i,m)、誘導用配線33-1,33-2の配線幅をwA(i,m)、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2が誘電体30の長手方向の表面を並走する配線長をL(i,m)とする。また、誘電体30の高さをh(i,m)、誘電体30の比誘電率をεr(i,m)、誘導信号の周波数をf(i,m)とする。
【0109】
結合線路21-i-mにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i,m)は、前述の配線間隔sV(i,m)等のパラメータを用いて、以下の関数g(・)にて表される。
[数5]
J(i,m)=g(sV(i,m),p(i,m),sA(i,m),wV(i,m),wA(i,m),L(i,m),h(i,m),εr(i,m),f(i,m)) ・・・(5)
【0110】
これにより、ジッタ特性制御回路12にて要素番号iが指定されることで、マルチリンク信号を構成するリンク数Mの映像信号のそれぞれに付加されるジッタJ(i,m)を制御することができる。
【0111】
(測定結果)
次に、マルチリンク信号にジッタが付加された場合の測定結果について説明する。
図6及び
図7は、
図4に示した信号発生装置2を用いた場合の測定結果(A)及び(B)を示しており、所定のリンク(被測定リンク)に関する所定の外部装置のジッタ特性を、サンプリングオシロスコープで測定した結果が表示されている。
【0112】
図6は、マルチリンク信号にジッタが付加された場合の測定結果(A)を説明する図であり、リンク数M=24において、被測定リンクの映像信号及び誘導信号を15段のPRBS信号(PRBS-15信号)とし、他のリンクの映像信号をU-SDI信号とし、他のリンクの誘導信号をトグルレート10.681Gbpsのクロック信号とした場合の例である。
【0113】
図7は、マルチリンク信号にジッタが付加された場合の測定結果(B)を説明する図であり、リンク数M=24において、被測定リンクの映像信号及び誘導信号をPRBS-15信号とし、他のリンクの映像信号をU-SDI信号とし、他のリンクの誘導信号をPRBS-15信号とした場合の例である。
【0114】
図6の(1)~(4)及び
図7の(1)~(4)は、ジッタのヒストグラムを示しており、横軸は1UIの時間からのズレ時間(秒)を示し、縦軸は頻度を示す。
【0115】
図6及び
図7の(1)には、データパターンに依存するジッタ(1.1)、ランダムジッタ及び周期ジッタ(1.2)、及びトータルジッタ(1.3)のヒストグラム(Composite Histogram)が示されている。
【0116】
図6及び
図7の(2)には、データパターンに依存するジッタ(1.1)を拡大したヒストグラム(Composite DDJ Histogram)において、(2.1)に、ビット‘1’からビット‘0’に遷移するときに観測されたヒストグラム、(2.2)に、ビット‘0’からビット‘1’に遷移するときに観測されたヒストグラム、(2.3)に、全体のヒストグラムが示されている。(2.1)のヒストグラムと(2.2)のヒストグラムは、ほぼ同じである。
【0117】
図6及び
図7の(3)には、ランダムジッタ及び周期ジッタ(1.2)のみを拡大したヒストグラム(RJ,PJ Histogram)が示されている。本測定に用いたサンプリングオシロスコープではランダムジッタと周期ジッタとを分離することができないため、1つのヒストグラムが示されている。
図6の(3)のヒストグラムでは、映像信号の配線が周期的な誘導信号によって電気的なノイズを受け、2つの山が生じており、
図7の(3)のヒストグラムでは、1つの山が生じている。
【0118】
図6及び
図7の(4)には、データパターンに依存するジッタ(1.1)のみを拡大したヒストグラム(DDJ Histogram)が示されている。このヒストグラムは、(2.3)のヒストグラムと同じである。
【0119】
図6の(5)には、周期ジッタの測定値PJ(δ-δ)=8.2ps,PJ(rms)=3.99psが示されており、
図7の(5)には、周期ジッタの測定値PJ(δ-δ)=2.4ps,PJ(rms)=1.58psが示されている。測定値PJ(δ-δ)は、Dual-Diracモデルに基づくPJの近似値であり、測定値PJ(rms)は、RMS(Root Mean Square、二乗平均平方根)値である。尚、Dual-Diracモデルの詳細については、以下を参照されたい。
[非特許文献]
Stephens, Ransom, “Jitter Analysis : The Dual-Dirac Model, RJ/DJ, and Q-Scale”, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, Document 5989-3206EN, (2004)
【0120】
図6及び
図7を比較すると、(3)及び(5)に示したとおり、周期ジッタのヒストグラムの形状及びその測定値が異なることがわかる。
【0121】
尚、
図4に示した信号発生装置2は、以下の非特許文献3,4に記載されているように、映像信号が複数系統のSDI信号にマッピングされて伝送されるケース、及び、DisplayPortのような複数リンクから構成される映像インターフェースについても適用できる。
[非特許文献3] SMPTE ST2082-12:2016,“4320-line and 2160-line Source Image and Ancillary Data Mapping for Quad-link 12G-SDI”
[非特許文献4] SMPTE ST425-5:2015,“Image Format and Ancillary Data Mapping for Quad-link 3 Gb/s Serial Interface”
【0122】
以上のように、
図4に示した信号発生装置2によれば、映像信号送信回路10-1~10-Mは、マルチリンク信号を送信し、誘導信号送信回路11-1~11-Mは、周波数f(i,1)~f(i,M)が反映された周期的な誘導信号を生成して送信する。
【0123】
ジッタ特性制御回路12は、ユーザの所望するジッタJ(i,1)~J(i,M)が発生するように、要素番号iを指定し、要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i,1)~f(i,M)及び結合線路21-i-1~21-i-Mを特定する。
【0124】
伝送線路13-1~13-Mは、結合線路21-i-1~21-i-Mにてマルチリンク信号及び誘導信号を伝送することで、容量的結合及び誘導的結合に伴う誘導信号からマルチリンク信号へのクロストークにより、マルチリンク信号に対し、配線間隔sV(i,1)~sV(i,M)等のパラメータに応じたジッタJ(i,1)~J(i,M)を付加する。
【0125】
これにより、指定された要素番号iに対応する誘導信号の周波数f(i,1)~f(i,M)及び結合線路21-i-1~21-i-Mの構成に応じて、ユーザが所望するジッタJ(i,1)~J(i,M)を発生させることができ、当該ジッタJ(i,1)~J(i,M)がマルチリンク信号に付加される。
【0126】
つまり、周期ジッタの周波数f(i,1)~f(i,M)は、誘導信号の周波数f(i,1)~f(i,M)のパラメータを変えることで簡便に変動させることができる。また、周期ジッタの量は、誘導信号の周波数f(i,1)~f(i,M)以外のパラメータ(配線間隔sV(i,1)~sV(i,M)等)を変えること、すなわち要素番号iの結合線路21-i-1~21-i-Mを切り替えることで簡便に変動させることができる。したがって、マルチリンク信号にジッタを付加する際に、周期ジッタの周波数及びジッタ量を簡便に変動させることができる。
【0127】
(結合線路21-i/第2の構成例)
次に、
図3に示した結合線路21-1~21-N(結合線路21-i)の第2の構成例について詳細に説明する。
図8は、結合線路21-iの第2の構成例を説明する図であり、映像信号を誘導信号で挟む場合を示している。尚、この構成例は、
図5に示した結合線路21-1-1~21-1-M,・・・,21-N-1~21-N-M(結合線路21-i-m)についても同様である。後述する
図9~
図11についても同様である。
【0128】
この結合線路21-iは、
図3に示した第1の構成例と同様に、誘電体30、誘電体30に積層されたGND層31、並びに、誘電体30に対しGND層31とは反対側に設置され、誘電体30の表面に並走するように形成された映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を備えて構成される。
【0129】
図3に示した結合線路21-iの第1の構成例と
図8に示す結合線路21-iの第2の構成例とを比較すると、両結合線路21-iは、誘電体30の表面に並走するように形成された2本の映像用配線32-1,32-2及び2本の誘導用配線33-1,33-2を備えている点で共通する。
【0130】
これに対し、結合線路21-iの第2の構成例は、2本の誘導用配線33-1,33-2が2本の映像用配線32-1,32-2を挟み込むように形成されている点で、結合線路21-iの第1の構成例と相違する。
【0131】
映像信号を伝送する2本の映像用配線32-1,32-2の配線間隔をs
V(i)、プラス側の差動信号Pの映像信号を伝送する映像用配線32-1とプラス側の差動信号Pの誘導信号を伝送する誘導用配線33-1との間の配線間隔をp1(i)とする。また、マイナス側の差動信号Nの映像信号を伝送する映像用配線32-2とマイナス側の差動信号Nの誘導信号を伝送する誘導用配線33-2との間の配線間隔をp2(i)とする。その他の配線幅w
V(i)等のパラメータは、
図3に示した第1の構成例のパラメータと同じであるとする。
【0132】
結合線路21-iにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i)は、前述の配線間隔sV(i)等のパラメータを用いて、以下の関数g(・)にて表される。
[数6]
J(i)=g(sV(i),p1(i),p2(i),wV(i),wA(i),L(i),h(i),εr(i),f(i))
・・・(6)
【0133】
(結合線路21-i/第3の構成例)
次に、
図3に示した結合線路21-1~21-N(結合線路21-i)の第3の構成例について詳細に説明する。
図9は、結合線路21-iの第3の構成例を説明する図であり、
図8に示した結合線路21-iの第2の構成例に対し、誘導信号の極性が反転している。
【0134】
この結合線路21-iは、
図8に示した第2の構成例と同様に、誘電体30、誘電体30に積層されたGND層31、並びに、誘電体30に対しGND層31とは反対側に設置され、誘電体30の表面に並走するように形成された映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を備えて構成される。
【0135】
図8に示した結合線路21-iの第2の構成例と
図9に示す結合線路21-iの第3の構成例とを比較すると、両結合線路21-iは、誘電体30の表面に並走するように形成された2本の映像用配線32-1,32-2及び2本の誘導用配線33-1,33-2を備えている点で共通する。
【0136】
これに対し、結合線路21-iの第3の構成例は、映像用配線32-1の隣に誘導用配線33-2が形成され、映像用配線32-2の隣に誘導用配線33-1が形成されている点で、映像用配線32-1の隣に誘導用配線33-1が形成され、映像用配線32-2の隣に誘導用配線33-2が形成されている結合線路21-iの第2の構成例と相違する。つまり、結合線路21-iの第3の構成例は、第2の構成例に対し、誘導信号の極性が反転するように、誘導用配線33-1,33-2が形成されている。
【0137】
映像信号を伝送する2本の映像用配線32-1,32-2の配線間隔をs
V(i)、プラス側の差動信号Pの映像信号を伝送する映像用配線32-1とマイナス側の差動信号Nの誘導信号を伝送する誘導用配線33-2との間の配線間隔をp2(i)とする。また、マイナス側の差動信号Nの映像信号を伝送する映像用配線32-2とプラス側の差動信号Pの誘導信号を伝送する誘導用配線33-1との間の配線間隔をp1(i)とする。その他の配線幅w
V(i)等のパラメータは、
図8に示したパラメータと同じであるとする。
【0138】
結合線路21-iにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i)は、前述の配線間隔sV(i)等のパラメータを用いて、前記式(6)にて表される。
【0139】
結合線路21-iの第3の構成例は、第2の構成例に対し、誘導信号の極性を反転させている。これにより、誘導信号から映像信号へ誘起されるクロストークの符号が反転するため、ジッタJ(i)が変動することとなる。
【0140】
(結合線路21-i/第4の構成例)
次に、
図3に示した結合線路21-1~21-N(結合線路21-i)の第4の構成例について詳細に説明する。
図10は、結合線路21-iの第4の構成例を説明する図であり、
図3に示した結合線路21-iの第1の構成例に対し、誘導信号の極性が反転している。
【0141】
この結合線路21-iは、
図3に示した第1の構成例と同様に、誘電体30、誘電体30に積層されたGND層31、並びに、誘電体30に対しGND層31とは反対側に設置され、誘電体30の表面に並走するように形成された映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を備えて構成される。
【0142】
図3に示した結合線路21-iの第1の構成例と
図10に示す結合線路21-iの第4の構成例とを比較すると、両結合線路21-iは、誘電体30の表面に並走するように形成された2本の映像用配線32-1,32-2及び2本の誘導用配線33-1,33-2を備えている点で共通する。
【0143】
これに対し、結合線路21-iの第4の構成例は、映像用配線32-1,32-2の隣に誘導用配線33-1が形成され、誘導用配線33-1の隣に誘導用配線33-2が形成されている点で、映像用配線32-1,32-2の隣に誘導用配線33-2が形成され、誘導用配線33-2の隣に誘導用配線33-1が形成されている結合線路21-iの第1の構成例と相違する。つまり、結合線路21-iの第4の構成例は、第1の構成例に対し、誘導信号の極性が反転するように、誘導用配線33-1,33-2が形成されている。
【0144】
結合線路21-iにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i)は、前述の配線間隔sV(i)等のパラメータを用いて、前記式(1)にて表される。
【0145】
結合線路21-iの第4の構成例は、第1の構成例に対し、誘導信号の極性を反転させている。これにより、誘導信号から映像信号へ誘起されるクロストークの符号が反転するため、ジッタJ(i)が変動することとなる。
【0146】
(結合線路21-i/第5の構成例)
次に、
図3に示した結合線路21-1~21-N(結合線路21-i)の第5の構成例について詳細に説明する。
図11は、結合線路21-iの第5の構成例を説明する断面図であり、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を誘電体30とは異なる他の誘電体で覆う場合を示している。この場合の結合線路21-iは、埋め込み型マイクロストリップ線路である。
【0147】
この結合線路21-iは、誘電体30-1、誘電体30-1に積層されたGND層31、誘電体30-1に対しGND層31とは反対側に設置され、誘電体30-1の表面に並走するように形成された映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2、並びに誘電体30-2を備えて構成される。
【0148】
図3に示した結合線路21-iの第1の構成例と
図11に示す結合線路21-iの第5の構成例とを比較すると、両結合線路21-iは、誘電体30(30-1)、GND層31、映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2を備えている点で共通する。
【0149】
これに対し、結合線路21-iの第5の構成例は、誘電体30-1に加え、誘電体30-2を備えている点で、誘電体30-2を備えていない結合線路21-iの第1の構成例と相違する。つまり、結合線路21-iの第1の構成例では、誘電体30と空気との間の境界に映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2が形成されているが、結合線路21-iの第5の構成例では、誘電体30-1と誘電体30-2との間の境界に映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2が形成されている。
【0150】
結合線路21-iの第5の構成例では、誘電体30-2は、誘電体30-1に積層され、かつ2本の誘導用配線33-1,33-2及び2本の映像用配線32-1,32-2を覆うように設置されている。
【0151】
誘電体30-1の高さをh1(i)、誘電体30-1の比誘電率をε
r1(i)、誘電体30-2の高さをh2(i)、誘電体30-2の比誘電率をε
r2(i)とする。その他の配線間隔s
V(i)等のパラメータは、
図3に示した第1の構成例のパラメータと同じであるとする。
【0152】
結合線路21-iにおいて、誘導用配線33-1,33-2に流れる誘導信号が映像用配線32-1,32-2に与えるジッタJ(i)は、前述の配線間隔sV(i)等のパラメータを用いて、以下の関数g(・)にて表される。
[数7]
J(i)=g(sV(i),p(i),sA(i),wV(i),wA(i),L(i),h1(i),h2(i),εr1(i),εr2(i),f(i)) ・・・(7)
【0153】
前記式(7)において、誘電体30-2を備えることで、誘電体30-2を備えていない場合に比べてジッタJ(i)は小さくなる。これは、電気力線が誘電体30-2へどのように通過するかによって、空気の場合に比べ結合の程度が変化するからである。
【0154】
〔エラー耐性評価装置〕
次に、
図1に示した信号発生装置1を含むエラー耐性評価装置について説明する。
図12は、周期ジッタに対するエラー耐性を評価する全体システムの構成例を示す概略図である。
【0155】
このシステムは、外部装置4の周期ジッタに対するエラー耐性を評価するために、エラー耐性評価装置3及び外部装置4を備えて構成される。エラー耐性評価装置3は、信号発生装置1、映像信号入力回路40、映像信号受信回路41及びエラー測定回路42を備えている。
【0156】
尚、エラー耐性評価装置3は、信号発生装置1の代わりに、
図4に示した信号発生装置2を備えるようにしてもよい。
【0157】
エラー耐性評価装置3の信号発生装置1は、エラー測定回路42から要素番号iを入力し、結合線路21-iを用いて、ジッタJ(i)が付加された映像信号VS1を発生する。そして、信号発生装置1は、ジッタJ(i)が付加された映像信号VS1を外部装置4へ出力すると共に、当該映像信号VS1をエラー測定回路42に出力する。
【0158】
尚、信号発生装置1は、ジッタJ(i)が付加された映像信号VS1の代わりに、ジッタJ(i)が付加された擬似ランダム信号またはクロック信号を出力するようにしてもよい。
【0159】
外部装置4は、信号の入出力経路切替のためのクロスポイントスイッチを装備したルーティングスイッチャー等の装置である。外部装置4は、信号発生装置1からジッタJ(i)が付加された映像信号VS1を入力する。
【0160】
外部装置4において、映像信号VS1に付加されているジッタJ(i)により、映像信号VS1のデータに対してビットエラーが発生する。外部装置4は、発生したビットエラーを含む映像信号をエラー耐性評価装置3の映像信号入力回路40へ出力する。これにより、外部装置4から、当該外部装置4のジッタ特性が反映された映像信号が出力される。
【0161】
映像信号入力回路40は、外部装置4からビットエラーを含む映像信号を入力し、当該映像信号に所定の入力用インターフェースの処理を施し、所定の入力用インターフェースの処理が施された映像信号を映像信号受信回路41に出力する。
【0162】
映像信号受信回路41は、
図1に示した信号発生装置1の映像信号送信回路10に対応する回路である。映像信号受信回路41は、映像信号入力回路40から映像信号を入力し、所定の処理を施し、所定の処理が施された映像信号VS2(ビットエラーを含む映像信号VS2)をエラー測定回路42に出力する
【0163】
エラー測定回路42は、要素番号iを信号発生装置1に出力し、信号発生装置1から要素番号iに対応したジッタJ(i)が付加された映像信号VS1を入力する。また、エラー測定回路42は、映像信号受信回路41から、要素番号iに対応したジッタJ(i)により発生したビットエラーを含む映像信号VS2を入力する。そして、エラー測定回路42は、映像信号VS1,VS2に基づいて、BER(Bit Error Rate:ビットエラーレート)を測定する。エラー測定回路42は、このような処理を、要素番号i毎に行う。
【0164】
図13は、エラー測定回路42の処理例を示すフローチャートである。エラー測定回路42は、要素番号iに1を設定し(ステップS1301)、要素番号iを信号発生装置1に出力する(ステップS1302)。
【0165】
エラー測定回路42は、信号発生装置1から、要素番号iに対応したジッタJ(i)が付加された映像信号VS1を入力すると共に、映像信号受信回路41から、要素番号iに対応したジッタJ(i)により発生したビットエラーを含む映像信号VS2を入力する(ステップS1303)。
【0166】
エラー測定回路42は、映像信号VS1のデータと映像信号VS2のデータとの間で、異なるビット数をカウントすることで、要素番号iに対応するBERを測定する(ステップS1304)。
【0167】
本例では、要素番号iに対応するジッタJ(i)の量が、要素番号iの増加に従い単調に増加するものとする。すなわち、要素番号iが増加すると、ジッタJ(i)の量も増加するように、誘導信号の周波数f(i)及び配線間隔sV(i)等のパラメータが決定されており、信号発生装置1の伝送線路13は、配線間隔sV(i)等のパラメータが反映された結合線路21-iを備えているものとする。
【0168】
エラー測定回路42は、BERが予め設定された閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS1305)。エラー測定回路42は、ステップS1305において、BERが閾値よりも小さいと判定した場合(ステップS1305:Y)、ステップS1306へ移行する。一方、エラー測定回路42は、ステップS1305において、BERが閾値よりも小さくないと判定した場合(ステップS1305:N)、ステップS1308へ移行する。
【0169】
エラー測定回路42は、ステップS1305(Y)から移行して、要素番号iが予め設定された要素数N以上であるか否かを判定する(ステップS1306)。エラー測定回路42は、ステップS1306において、要素番号iが要素数N以上でないと判定した場合(ステップS1306:N)、要素番号iに1を加算し(ステップS1307)、ステップS1302へ移行する。これにより、新たな要素番号iについて、ステップS1302~S1305の処理が行われる。
【0170】
一方、エラー測定回路42は、ステップS1306において、要素番号iが要素数N以上であると判定した場合(ステップS1306:Y)、ステップS1308へ移行する。
【0171】
エラー測定回路42は、ステップS1305(N)またはステップS1306(Y)から移行して、ステップS1304にて測定したBERと、要素番号iに対応して予め設定されたジッタJ(i)の量との間の関係を、グラフ表示、表形式等のデータとして出力する(ステップS1308)。
【0172】
尚、エラー測定回路42は、BERの代わりにCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)エラーレートを測定し、CRCエラーレートとジッタJ(i)の量との間の関係をデータとして出力するようにしてもよい。
【0173】
また、エラー測定回路42は、ビットエラーの数またはCRCエラーの数を測定し、エラー数とジッタJ(i)の量との間の関係をデータとして出力するようにしてもよい。
【0174】
以上のように、
図12に示したエラー耐性評価装置3によれば、ユーザは、例えばU-SDI信号を入力する外部装置4について、周期ジッタに対する耐性を、映像、BER、CRCエラーレート等の指標を見ながら定量的に確認することができる。
【0175】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0176】
例えば結合線路21-iについて、
図3に示した第1の構成例、
図8に示した第2の構成例、
図9に示した第3の構成例、
図10に示した第4の構成例、及び
図11に示した第5の構成例は例示であり、本発明は、これらの構成例に限定されるものではない。また、誘電体30,30-1の表面に形成された4本の映像用配線32-1,32-2及び誘導用配線33-1,33-2の配列は、任意であってもよい。
【0177】
また、
図1に示した信号発生装置1及び
図4に示した信号発生装置2では、映像信号にジッタを付加する例を示したが、本発明は、映像信号以外の信号にジッタを付加する場合にも適用がある。
【符号の説明】
【0178】
1,2 信号発生装置
3 エラー耐性評価装置
4 外部装置
10,10-1~10-M 映像信号送信回路
11,11-1~11-M 誘導信号送信回路
12 ジッタ特性制御回路
13,13-1~13-M 伝送線路(ジッタ付加回路)
14,14-1~14-M 映像信号出力回路
15,15-1~15-M 誘導信号出力回路
20,20-1~20-M,22,22-1~22-M 切替回路
21-1~21-N,21-1-1~21-1-M,・・・,21-N-1~21-N-M 結合線路
30,30-1,30-2 誘電体
31 GND(グランド)層
32-1,32-2 映像用配線
33-1,33-2 誘導用配線
40 映像信号入力回路
41 映像信号受信回路
42 エラー測定回路
i 要素番号
N 要素数
M リンク数
m リンク番号
sV 2本の映像用配線の配線間隔
p,p1,p2 映像用配線と誘導用配線との間の配線間隔
sA 2本の誘導用配線の配線間隔
wV 映像用配線の配線幅
wA 誘導用配線の配線幅
L 配線長
h,h1,h2 誘電体の高さ
εr,εr1,εr2 比誘電率
f 誘導信号の周波数(周期ジッタの周波数)
VS1,VS2 映像信号