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特開2022-181089ゴム組成物の製造方法および医療用ゴム部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181089
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法および医療用ゴム部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20221130BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221130BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20221130BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20221130BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/36
C08K3/011
C08K5/54
C08L23/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087925
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】宮田 崇
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC021
4J002AC121
4J002BB032
4J002BB181
4J002DE078
4J002DE108
4J002DJ016
4J002DJ040
4J002EX037
4J002EX067
4J002EX077
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD090
4J002FD148
4J002FD158
4J002FD170
4J002FD207
4J002GB00
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】ゴム組成物の組成や使用する機器類、あるいは作業条件等に手を加えることなく現状を維持しながら、なおかつ金属表面への粘着を抑制して、ゴム組成物を、生産性良くコスト安価に製造できる、ゴム組成物の製造方法と、かかる製造方法によって製造されたゴム組成物を用いて医療用ゴム部品を製造するための、医療用ゴム部品の製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム組成物の製造方法は、ゴムに結晶性シリカを混練する基礎混練工程と、基礎混練工程で得た混練物に架橋成分を加えて混練する仕上混練工程とを含み、基礎混練工程では、シランカップリング剤の全量の25質量%以上、75質量%以下を配合し、かつ仕上混練工程において、シランカップリング剤の残量を配合する。医療用ゴム部品の製造方法は、上記製造方法によって製造されたゴム組成物を所定の形状に成形して架橋させる工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性のゴム、結晶性シリカ、シランカップリング剤、および前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴムに前記結晶性シリカを混練する基礎混練工程、および
前記基礎混練工程で得た混練物に、前記架橋成分を加えて混練する仕上混練工程、
を含み、前記基礎混練工程では、前記シランカップリング剤の全量の25質量%以上、75質量%以下を配合し、かつ前記仕上混練工程において、前記シランカップリング剤の残量を配合する、ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記基礎混練工程は、混練機を用いて、前記ゴムに前記結晶性シリカ、および前記シランカップリング剤を混練する混練処理工程、および前記混練処理工程で得た混練物を、ロールを用いてリボンどりするロール処理工程を含み、前記ロール処理工程は、ロールの温度を45℃以下に設定して行う請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ゴムは、ブチル系ゴムである請求項1または2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤の全量は、前記ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、0.4質量部以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたゴム組成物を所定の形状に成形して架橋させる工程を含む、医療用ゴム部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ゴム部品の材料となるゴム組成物の製造方法と、当該製造方法によって製造されたゴム組成物を用いて医療用ゴム部品を製造する、医療用ゴム部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用ゴム部品などのゴム製品のもとになるゴム組成物は一般に、ゴムに、シリカ等の白色ないし淡色の補強剤や、ゴムを架橋させるための架橋成分などの、各種の配合剤を配合し、混練して製造される(特許文献1~4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-347022号公報
【特許文献2】特開2011-026441号公報
【特許文献3】特開2008-179717号公報
【特許文献4】特開2004-209939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム組成物の製造では通常、上記各種の配合剤を、凝集塊を生じないように、ゴム中に均一に分散させることが求められる。
しかし、シリカは極性が高いため、とくに医療用ゴム部品などの形成材料として広く用いられる、極性の低いブチル系ゴムなどとの静電気的な相性が良くなく、均一に分散させるのが困難である。
【0005】
そこで特許文献1では、先行してゴムを予備混練したあとにシリカ等を添加してさらに混練することで、当該シリカ等の分散性を向上することが検討されている。
しかし、特許文献1は自動車などのタイヤに関する技術であって、医療用ゴム部品とは製品のサイズが全く異なるため、上記の方法で、医療用ゴム部品に求められるシリカの分散の均一性を達成できるか否かは不明である。
【0006】
シリカは、表面官能基の違いに基づいて、補強性が低い結晶性シリカと、補強性が高い非晶性シリカに分類される。
このうち結晶性シリカは、非晶性シリカに比べて表面の極性が小さいため、当該結晶性シリカを選択して用いることで、ブチル系ゴム等の極性の低いゴムに対する分散性をある程度は改善することができる。
【0007】
しかし、上記のように結晶性シリカは補強性が低いことから、当該結晶性シリカによる補強性を補って医療用ゴム部品等の機械的強度をさらに向上するため、ゴム組成物には、さらにシランカップリング剤を配合するのが一般的である。
シランカップリング剤は、ゴムと結晶性シリカの両方に対して反応性を有するため、ゴムに対する結晶性シリカの分散性を向上し、かつ分散させた結晶性シリカによるゴムの補強性を高めることができる。
【0008】
特許文献2には、ゴムに、結晶性シリカやシランカップリング剤等の配合剤を配合して混練する基礎混練工程と、基礎混練工程で得た混練物に、ゴムを架橋させるための架橋成分を加えて混練する仕上混練工程とを経てゴム組成物を製造することが記載されている。
しかし、かかる製造方法では、シランカップリング剤の全量をゴムおよび/または結晶性シリカと反応させることができず、未反応のシランカップリング剤がゴム組成物中に残留する、いわゆる反応残りが原因となって、種々の問題を生じる場合がある。
【0009】
すなわち基礎混練工程では、上記のようにゴムや結晶性シリカ、シランカップリング剤等を、混練機を用いて混練(混練処理工程)したのち、得られた混練物を混練機から排出させ、ロールを用いてリボンどり(ロール処理工程)して次工程へ送るのが一般的である。
ところが、シランカップリング剤の反応残りが発生すると、混練中のゴム組成物が、混練機の槽の内部に露出した金属表面に粘着しやすくなって、混練が容易でなくなったり、混練したゴム組成物を混練機から排出させるのが容易でなくなったりする場合がある。
【0010】
また、混練機から排出させたゴム組成物を、ロールを用いてリボンどりする際に、当該ゴム組成物がロールの金属表面に粘着しやすくなって、リボンどりの作業が容易でなくなる場合もある。
反応残りのシランカップリング剤が、これらの金属表面と反応するのが原因と考えらえる。
【0011】
特許文献3では、配合剤のうちシランカップリング剤等の、ゴム組成物の粘着を生じる原因となる低融点の成分を、所定の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックに吸着させた状態でゴムに配合して、ゴム組成物の粘着を抑制することが検討されている。
しかし、かかる構成を、医療用ゴム部品用のゴム組成物に適用するためには、黒色であるカーボンブラックの配合量等を含めて、組成を全面的に見直す必要があり、実現は困難であると言える。
【0012】
特許文献4では、混練機などの加工装置の、ゴム組成物と接触する金属表面を所定の表面粗度とするとともに、加工時の金属表面の温度を80℃以上として、ゴム組成物の粘着を抑制することが検討されている。
しかし、混練するゴムや配合剤との接触によって摩耗して徐々に変化する金属表面の表面粗度を、加工装置を継続して使用し続けながら、なおかつ所定の範囲に維持し続けるためには、表面粗度の測定やその修正などのメンテナンスを頻繁に行う必要がある。
【0013】
その上、金属表面の温度を80℃以上という高温に維持するにはエネルギーの負荷が大きくなる上、作業環境上のリスクも高くなることから、かかる製造方法は、十分な実現性、実用性を有しているとは言い難いのが現状である。
本発明の目的は、ゴム組成物の組成や使用する機器類、あるいは作業条件等に手を加えることなく現状を維持しながら、なおかつ金属表面への粘着を抑制して、ゴム組成物を、生産性良くコスト安価に製造できる、ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【0014】
また本発明の目的は、かかる製造方法によって製造されたゴム組成物を用いて医療用ゴム部品を製造するための、医療用ゴム部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、架橋性のゴム、結晶性シリカ、シランカップリング剤、および前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴムに前記結晶性シリカを混練する基礎混練工程、および
前記基礎混練工程で得た混練物に、前記架橋成分を加えて混練する仕上混練工程、
を含み、前記基礎混練工程では、前記シランカップリング剤の全量の25質量%以上、75質量%以下を配合し、かつ前記仕上混練工程において、前記シランカップリング剤の残量を配合する、ゴム組成物の製造方法である。
【0016】
また本発明は、かかる本発明の製造方法によって製造されたゴム組成物を所定の形状に成形して架橋させる工程を含む、医療用ゴム部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゴム組成物の組成や使用する機器類、あるいは作業条件等に手を加えることなく現状を維持しながら、なおかつ金属表面への粘着を抑制して、ゴム組成物を、生産性良くコスト安価に製造できる、ゴム組成物の製造方法を提供することができる。
また本発明によれば、かかる製造方法によって製造されたゴム組成物を用いて医療用ゴム部品を製造するための、医療用ゴム部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《ゴム組成物の製造方法》
本発明のゴム組成物の製造方法は、上述したように架橋性のゴムに、結晶性シリカを混練する基礎混練工程(ベース練り)、および基礎混練工程で得た混練物に、ゴムを架橋させるための架橋成分を加えて混練する仕上混練工程(ファイナル練り)を含み、基礎混練工程では、シランカップリング剤の全量の25質量%以上、75質量%以下を配合し、なおかつ仕上混練工程において、シランカップリング剤の残量、すなわち全量の25質量%以上、75質量%以下を配合することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、基礎混練工程で、シランカップリング剤の全量ではなくその一部を上記の範囲で配合することにより、シランカップリング剤の反応残りと、それに伴う金属表面へのゴム組成物の粘着とを抑制しながら、結晶性シリカを、ゴムに良好に分散できる。
すなわち、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量が全量の75質量%を超える場合には、上述したシランカップリング剤の反応残りと、それに伴う、金属表面へのゴム組成物の粘着とを生じやすくなる場合がある。
【0020】
一方、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量が全量の25質量%未満では、当該基礎混練工程において、結晶性シリカを、シランカップリング剤の機能によって、ゴム中に均一に分散させることができない場合がある。
そのため、結晶性シリカの分散によって医療用ゴム部品等の機械的強度を向上する効果が十分に得られない場合がある。
【0021】
これに対し、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量を全量の75質量%以下に制限することにより、シランカップリング剤の反応残りと、それに伴う金属表面へのゴム組成物の粘着とを抑制することができる。
また、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量を全量の25質量%以上とすることにより、結晶性シリカを、シランカップリング剤の機能によってゴムに良好に分散させて、医療用ゴム部品等の機械的強度を十分に向上することができる。
【0022】
そのためシランカップリング剤の配合手順を上記のように変更するだけで、その他の構成、すなわちゴム組成物の組成や使用する機器類、あるいは作業条件等には手を加えることなく現状を維持しながら、金属表面への粘着を抑制することができる。
そしてゴム組成物を、現状よりも生産性良く、コスト安価に製造することが可能となる。
【0023】
また結晶性シリカを、シランカップリング剤の機能によってゴムに良好に分散させて、医療用ゴム部品等の機械的強度を十分に向上することもできる。
なお、これらの効果をより一層向上することを考慮すると、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量は、上記の範囲でも、全量の28質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、73質量%以下、とくに70質量%以下であるのが好ましい。
【0024】
また、仕上混練工程で配合するシランカップリング剤の量は、上記の残量、すなわち全量の27質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、72質量%以下、とくに70質量%以下であるのが好ましい。
またシランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合するシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上、とくに0.3質量部以上であるのが好ましく、0.5質量部以下、とくに0.4質量部以下であるのが好ましい。
【0025】
シランカップリング剤の全量がこの範囲未満では、基礎混練工程において配合するシランカップリング剤の量が少なすぎて、結晶性シリカを、シランカップリング剤の機能によって、ゴム中に均一に分散できない場合がある。
一方、全量が上記の範囲を超える場合には、たとえ基礎混練工程におけるシランカップリング剤の量を上記の範囲に制限したとしても、シランカップリング剤の反応残りと、それに伴う、金属表面へのゴム組成物の粘着とを生じやすくなる場合がある。
【0026】
これに対し、シランカップリング剤の全量を上記の範囲とすることにより、前述した本発明の効果をより一層向上して、シランカップリング剤の反応残りと、それに伴う金属表面へのゴム組成物の粘着とを抑制しながら、ゴムに、結晶性シリカを良好に分散できる。
そして、医療用ゴム部品等の機械的強度を十分に向上することができる。
【0027】
〈基礎混練工程〉
基礎混練工程は、シランカップリング剤の量を上記の範囲とすること以外は従来同様に実施することができる。
たとえばニーダー等の密閉式の混練機に、まずゴムを投入して素練りする。
次いで混練を続けながら、結晶性シリカ等の、シランカップリング剤以外の配合剤を順次配合したのち、所定量のシランカップリング剤を加えてさらに混練して混練物を調製する(混練処理工程)。
次いで調製した混練物を、ロールを用いてリボンどり(ロール処理工程)し、さらに必要に応じてストレーニング処理工程を経たのち、冷却して基礎混練工程を終了する。
【0028】
各処理工程の条件等は、従来同様でよい。
ただし本発明では、ロール処理工程時のロールの温度を45℃以下とするのが好ましい。
ロール処理工程時のロールの温度がこの範囲を超える場合には、たとえシランカップリング剤の量を上記の範囲としても、ゴム組成物がロールの金属表面に粘着して、リボンどりの作業が容易でなくなる場合がある。
【0029】
これに対し、ロールの温度を上記の範囲とすることにより、ゴム組成物がロールの金属表面に粘着するのを抑制してリボンどりの作業を容易化できるため、ゴム組成物を、さらに生産性良くコスト安価に製造することができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、ロールの温度は、上記の範囲でも、とくに35℃以下とするのが好ましい。
また、ロールの温度が低すぎる場合には、却ってリボンどりの作業が容易でなくなる場合があるため、ロールの温度は、上記の範囲でも25℃以上、とくに30℃以上とするのが好ましい。
【0030】
〈仕上混練工程〉
仕上混練工程は、架橋成分とともにシランカップリング剤の残量を配合すること以外は、従来同様に実施することができる。
たとえばニーダー等の混練機に、まず基礎混練工程で得た混練物と、所定量の架橋成分とを投入して混練する。
次いで混練を続けながら、シランカップリング剤の残量を配合してさらに混練することで、ゴム組成物が製造される。
混練の条件等は、従来同様でよい。
たとえば混練の温度は、混練中に誤って架橋反応が開始されるのを抑制するため100℃以下、とくに80℃以下程度とするのが好ましい。
【0031】
〈ゴム〉
ゴムとしては、架橋性を有する種々のゴムを用いることができる。
たとえば、ゴム組成物が医療用ゴム部品の形成用である場合、ゴムとしては、ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のブチル系ゴムが好ましい。
【0032】
このうちブチルゴムとしては、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である種々のブチルゴムが使用可能である。
ブチルゴムとしては、たとえば日本ブチル(株)製のButyl 268〔安定剤:NS、不飽和度:1.5モル%、ムーニー粘度[ML(1+8)125℃]:51、比重:0.92〕、Butyl 365〔安定剤:NS、不飽和度:2.0モル%、ムーニー粘度[ML(1+8)125℃]:33、比重:0.92〕;LANXESS(ランクセス)社製のLANXESS(登録商標)X_BUTYL 301等が挙げられる。
【0033】
またハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、およびイソブチレンとp-メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物等が使用可能である。
塩素化ブチルゴムとしては、たとえば日本ブチル(株)製のCHLOROBUTYL 1066〔安定剤:NS、ハロゲン含量:1.26%、ムーニー粘度[ML(1+8)125℃]:38、比重:0.92〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL CB1240等が挙げられる。
【0034】
また臭素化ブチルゴムとしては、たとえば日本ブチル(株)製のBROMOBUTYL 2255〔安定剤:NS、ハロゲン含量:2.0%、ムーニー粘度[ML(1+8)125℃]:46、比重:0.93〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL BBX2等が挙げられる。
さらにイソブチレンとp-メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物としては、たとえばExxon Mobile(エクソンモービル)社製のExxpro(登録商標)3035等が挙げられる。
これらのゴムの、1種または2種以上を用いることができる。
【0035】
〈結晶性シリカ〉
結晶性シリカとしては、二酸化ケイ素からなり、様々な結晶形を有するシリカ、具体的には、各種の合成法で合成された合成シリカ、および天然鉱物を原料とする天然シリカが、いずれも使用可能である。
【0036】
(合成シリカ)
合成シリカとしては、含水シリカ、煙霧状シリカ(ヒュームドシリカ)等が挙げられる。
このうち含水シリカとしては、たとえば東ソー・シリカ(株)製のNipsil(登録商標)VN3、AQ、LP、ER、EL等が挙げられる。
また煙霧状シリカ(ヒュームドシリカ)としては、たとえば日本アエロジル(株)製のアエロジル(登録商標)200、アエロジルR972等が挙げられる。
【0037】
(天然シリカ)
天然シリカとしては、たとえばU.S.Silica(USシリカ)社製のMIN-U-SIL(登録商標)5、10、15、30;UNIMIN(ユニミン)社製のIMSIL(登録商標)A-8、A-10、A-15、A-25、A-108;(株)龍森製のCRYSTALITE(登録商標)A-A、VX-S、VX-S2、VX-SR等が挙げられる。
これらの結晶性シリカの、1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
(配合割合)
結晶性シリカの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、とくに3質量部以上であるのが好ましく、55質量部以下、とくに50質量部以下であるのが好ましい。
【0039】
〈シランカップリング剤〉
シランカップリング剤としては、ゴムおよび結晶性シリカと反応性を有する種々のシランカップリング剤が、いずれも使用可能である。
シランカップリング剤としては、たとえば含イオウ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、およびその他のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0040】
また含イオウ系シランカップリング剤としては、たとえばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。
【0041】
メルカプト系シランカップリング剤としては、例えばγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
さらに、その他のシランカップリング剤としては、たとえばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシオキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシ系;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系;あるいはγ-メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等の各種シランカップリング剤が挙げられる。
これらのシランカップリング剤の、1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
〈架橋成分〉
仕上混練工程で配合する架橋成分としては、架橋剤、促進剤、架橋助剤(架橋活性剤)等が挙げられる。
なおブチルゴム、塩素化ブチルゴム、および臭素化ブチルゴムはそれぞれ架橋のメカニズムが異なるため、架橋に最適な架橋成分を選択して使用するのが好ましい。
【0043】
たとえばゴムがブチルゴム単独、またはブチルゴムと塩素化ブチルゴムとの併用である場合、架橋成分としては、たとえば樹脂架橋剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤、チウラム系促進剤、および架橋助剤を併用するのが好ましい。
このうち樹脂架橋剤としては、たとえばアルキルフェノールジサルファイドやその低級重合物、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、フェノールジアルコール系樹脂、ビスフェノール樹脂、熱硬化性ブロモメチルアルキル化フェノール樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0044】
促進剤としては、ニトロソアミンを発生しないものが好ましい。
ジチオカルバミン酸塩系促進剤としては、たとえばジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZTC)が挙げられる。
チウラム系促進剤としては、たとえばテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
さらに架橋助剤としては、たとえば酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウム等が挙げられる。
また、ゴムが塩素化ブチルゴム単独である場合には、架橋成分として、たとえばトリアジン誘導体系架橋剤を配合すればよい。
トリアジン誘導体系架橋剤としては、たとえば6-[ビス(2-エチルへキシル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、6-ジイソブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
さらに、ゴムが臭素化ブチルゴム単独である場合は、架橋成分として、たとえば硫黄等の硫黄系架橋剤、前述した樹脂架橋剤、ジチオカルバミン酸系促進剤、およびチウラム系促進剤を併用するのが好ましい。
架橋成分の組み合わせと配合割合は、ゴム分の種類および組み合わせや、目的とする医療用ゴム部品等のゴム硬さ等に応じて適宜設定できる。
【0047】
〈ハイドロタルサイト〉
ゴム組成物に天然もしくは合成のハイドロタルサイトを配合すると、医療用ゴム部品の表面の親水性を低いレベルに維持して、水分を吸収したり透過したりしにくくできる。
またハイドロタルサイトは、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時にスコーチ防止剤として、医療用ゴム部品の圧縮永久ひずみが大きくなるのを防止するためにも機能する。
【0048】
さらにハイドロタルサイトは受酸剤として、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時に発生する塩素系ガスや臭素系ガスを吸収して、これらのガスによる架橋阻害等の発生を防止するためにも機能する。
なお、先述した酸化マグネシウムも、受酸剤として機能しうる。
ハイドロタルサイトとしては、たとえばMg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等のMg-Al系ハイドロタルサイトなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0049】
ハイドロタルサイトとしては、たとえば協和化学工業(株)製のアルカマイザー(登録商標)1、DHT-4A(登録商標)-2等が挙げられる。
ハイドロタルサイトの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、とくに3質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
〈充填剤〉
ゴム組成物には、さらにクレーやタルク等の充填剤を配合してもよい。
充填剤は、医療用ゴム部品のゴム硬さを調整するために機能するとともに、増量材として、医療用ゴム部品の生産コストを低減させるためにも機能する。
このうちクレーとしては、焼成クレーやカオリンクレーが使用可能である。
クレーとしては、たとえばHOFFMANN MINERAL(ホフマンミネラル)社製のSILLITIN(登録商標)Z、BASF社製のSATINTONE(登録商標)W、土屋カオリン工業(株)製のNNカオリンクレー、イメリス スペシャリティーズ ジャパン(株)製のPoleStar200R等が挙げられる。
【0051】
またタルクとしては、たとえば竹原化学工業(株)製のハイトロンA、日本タルク(株)製のMICRO ACE(登録商標)K-1、イメリス スペシャリティーズ ジャパン(株)製のミストロン(登録商標)ベーパー等が挙げられる。
充填剤の配合割合は、先述した結晶性シリカの配合割合、ゴムの種類および組み合わせや、目的とする医療用ゴム部品のゴム硬さ等に応じて適宜設定できる。
【0052】
ただし、クレーやタルク等の無機系の充填剤は分散性が低い上、微量の重金属を含むため、多量に配合しないのが好ましい。
その場合には、たとえばオレフィン系樹脂、スチレン系エラストマ、または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粉末等を、充填剤として配合してもよい。
これらの充填剤の、1種または2種以上を用いることができる。
【0053】
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤や、滑剤、加工助剤、可塑剤等として機能するステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレングリコール、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩素化ポリエチレン、プロセスオイル等を、適宜の割合で配合してもよい。
【0054】
《医療用ゴム部品の製造方法》
本発明の医療用ゴム部品の製造方法は、上記本発明の製造方法で製造したゴム組成物を所定の形状に成形して架橋させる工程を含むことを特徴とするものである。
その他の構成は、従来同様とすることができる。
すなわち、まずリボン状、ペレット状、あるいはシート状としたゴム組成物を上型と下型で挟んで加圧・加熱するプレス成形や、ゴム組成物を型内に注入する射出成形等によって、所定の医療用ゴム部品の立体形状に成形する。
【0055】
とくに、真空プレス成形機等を用いたプレス成形が好ましい。
プレス成形では、たとえば1枚のゴム組成物のシート上に複数個の医療用ゴム部品を形成するいわゆる多数個どりによって、当該医療用ゴム部品の生産性を向上できる。
プレス成形後は、必要に応じてシリコーン系潤滑コート剤の塗布等の工程を経たのち、外観検査、シートから個々の医療用ゴム部品の打ち抜き、洗浄、滅菌、乾燥、および包装の各工程を経て医療用ゴム部品が製造される。
【0056】
また医療用ゴム部品には、従来同様に樹脂フィルムが積層され、一体化されていてもよい。
樹脂フィルムとしては、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、およびこれらの変性体や、超高密度ポリエチレン(UHMWPE)等の不活性樹脂のフィルムが挙げられる。
【0057】
樹脂フィルムは、たとえばシート状としたゴム組成物上に重ねた状態でプレス成形することにより、プレス成形によって形成される医療用ゴム部品と一体化すればよい。
本発明の構成は、種々の医療用ゴム部品に適用することができる。
すなわち医療用ゴム部品としては、たとえば液剤、粉末製剤、凍結乾燥製剤等の各種薬剤用の容器のゴム栓やシール部材、プレフィルドシリンジ用のガスケット、あるいはノズルキャップの摺動もしくはシール部品等が挙げられる。
【0058】
このうちバイアル用や輸液製剤容器用を含むゴム栓やシール部材は、ゴム硬さが日本産業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」所載の測定方法に則って測定されるデュロメータタイプA硬さ(ショアA硬さ)で表して35以上であるのが好ましく、60以下であるのが好ましい。
【0059】
また、プレフィルドシリンジ用のガスケットやノズルキャップの摺動もしくはシール部品は、上記ショアA硬さが40以上であるのが好ましく、70以下であるのが好ましい。
医療用ゴム部品のゴム硬さは、架橋成分の組み合わせや配合割合、補強剤としての結晶性シリカの配合割合、充填剤の配合割合等を変更することで調整可能である。
とくに結晶性シリカの配合割合はゴム硬さを調整にするために重要な要素である。
【0060】
ただし、使用する結晶性シリカのBET比表面積、および嵩比重も、配合割合とともにゴム硬さを調整するための要素として作用する。
すなわち、BET比表面積、および嵩比重が大きい結晶性シリカほど補強性が高いため、より少量の配合で、同じゴム硬さの医療用ゴム部品を形成できる。
そのため、目的とする医療用ゴム部品のゴム硬さ、および使用する結晶性シリカのBET比表面積や嵩比重に応じて、当該結晶性シリカの配合割合を、先に説明した範囲で適宜変更するのが好ましい。
【実施例0061】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(基礎混練工程)
・ 混練処理工程
ゴムとしては、塩素化ブチルゴム〔日本ブチル(株)製のCHLOROBUTYL 1066〕を用い、まずゴムの全量を、容量55リットルの接線式のニーダーに供給して素練りし、次いで混練を続けながら、下記の各成分を順次配合した。
【0062】
【表1】
【0063】
表中の各成分は下記のとおりであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
結晶性シリカ:天然シリカ、USシリカ社製のMIN-U-SIL 5
タルク:イメリス スペシャリティーズ ジャパン(株)製のミストロン ベーパー
LDPE:三井化学(株)製のミペロン(登録商標)XM-220
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製のマグサラット(登録商標)150ST
酸化チタン:石原産業(株)製のA-100
カーボンブラック:Cancarb社製のThermax(登録商標)N990
ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製のアルカマイザー1
ステアリン酸カルシウム:日油(株)製のカルシウムステアレートGF-200
ポリエチレングリコール:日油(株)製のPEG#4000
次いで混練を続けながら、さらに、下記の2成分を配合したのち、混練物の温度が125℃に達した時点で混練を終了して、混練物をニーダーから排出させた。
【0064】
【表2】
【0065】
表中の両成分は下記のとおりであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
シランカップリング剤:ダウ・東レ(株)製のSH6062
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW-380
【0066】
・ ロール処理工程
ニーダーから排出させた混練物を、ロール径20インチ、ゲージ7のロールに巻き付けてリボンどりした。
ロールの表面温度は35℃とした。
ロールの表面温度は、ロール内部を流れる温調水で調節し、ロール表面の温度を接触式温度計で測定して確認した。
【0067】
・ ストレーニング処理工程
ロール処理工程でリボンどりした混練物を、シリンダー内径120mmの1軸ゴム押出機に供給してストレーニング処理した。
1軸ゴム押し出し機には、200番のステンレスメッシュおよびそれを補強するメッシュを組み込むとともに、未加硫の混練物に接する部分の直径が158mmで、かつ直径9.5mmの穴を135個有するブレーカープレートを組み合わせた。
【0068】
(仕上混練工程)
ストレーニング処理した混練物を冷却後、容量55リットルの接線式のニーダーに、下記の両成分とともに供給して混練し、混練物の温度が80℃に達した時点で混練を終了して、ゴム組成物を製造した。
【0069】
【表3】
【0070】
表中の両成分は下記のとおりであり、表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
シランカップリング剤:ダウ・東レ(株)製のSH6062
架橋剤:トリアジン誘導体系架橋剤、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、三協化成(株)製のジスネット(登録商標)DB
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の70質量%であった。
【0071】
〈実施例2〉
ゴム100質量部あたりのシランカップリング剤の量を、基礎混練工程において0.15質量部、仕上混練工程において0.15質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の50質量%であった。
【0072】
〈実施例3〉
ゴム100質量部あたりのシランカップリング剤の量を、基礎混練工程において0.09質量部、仕上混練工程において0.21質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の30質量%であった。
【0073】
〈実施例4〉
ゴム100質量部あたりのシランカップリング剤の量を、基礎混練工程において0.273質量部、仕上混練工程において0.117質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.39質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の70質量%であった。
【0074】
〈比較例1〉
ゴム100質量部あたりのシランカップリング剤の量を、基礎混練工程において0.3質量部として、仕上混練工程ではシランカップリング剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の100質量%であった。
【0075】
〈比較例2〉
ゴム100質量部あたりのシランカップリング剤の量を、仕上混練工程において0.3質量部として、基礎混練工程ではシランカップリング剤を配合せず、かつロール処理工程でのロールの表面温度を55℃としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を製造した。
シランカップリング剤の全量、すなわち基礎混練工程と仕上混練工程で配合したシランカップリング剤の合計の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部であり、基礎混練工程で配合したシランカップリング剤の量は、全量の0質量%であった。
【0076】
〈ニーダーからの排出性評価〉
実施例、比較例において、基礎混練工程のうち混練処理工程の終了後に、混練物をニーダーから排出させるために、当該ニーダーのローターを20rpmで回転させた際に、原材料の総量-1(kg)の量の混練物が排出されるのに要した時間を計測した。
そして、上記時間が2分間以内であったものを排出性良好(○)、粘着して2分間を超えたものを排出性不良(×)と評価した。
【0077】
〈リボンどりの作業性評価〉
実施例、比較例において、基礎混練工程のうちロール処理工程において、先の混練処理工程4バッチ分の混練物を、バッチごとに取り上げずに連続してリボンどりした際に、4バッチ目の最後の混練物をロールから剥がすことができたか否かを確認した。
そして粘着せずに、あるいは多少は粘着したものの、ロールから剥がすことができたものをリボンどりの作業性良好(○)、ロールに粘着して剥がせなかったものをリボンどりの作業性不良(×)と評価した。
【0078】
〈架橋物のゴム物性評価〉
実施例、比較例で製造したゴム組成物を、日本産業規格JIS K6299:2012「ゴム-試験用試料の作成方法」に規定された調製法に則って、厚み2mmのシート状にプレス架橋させて架橋シートを調製した。
【0079】
ついでこの架橋シートを打ち抜いて、日本産業規格JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されたダンベル状3号形試験片を作製し、温度23℃の環境下、同規格に規定された引張試験を実施して引張強さT(MPa)を求めた。
そして、比較例1で製造したゴム組成物からなる試験片の引張強さT(MPa)を100としたときの相対値を求めて、当該相対値が85以上であったものをゴム物性良好(○)、85未満であったものをゴム物性不良(×)と評価した。
以上の結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4の実施例1~4、比較例1の結果より、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量を、全量の75質量%以下に制限することにより、シランカップリング剤の反応残りと、それに伴う金属表面への粘着とを抑制して、ゴム組成物を、現状よりも生産性良く、コスト安価に製造できることが判った。
また実施例1~4、比較例2の結果より、基礎混練工程で配合するシランカップリング剤の量を全量の25質量%以上とすることにより、結晶性シリカを、シランカップリング剤の機能によってゴムに良好に分散させて、医療用ゴム部品等の機械的強度を十分に向上できることが判った。
【0082】
さらに実施例1~4の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、ロール処理工程は、ロールの温度を45℃以下に設定して行うのが好ましいこと、シランカップリング剤の全量は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、0.4質量部以下とするのが好ましいことが判った。