(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181099
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用キャリアの製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/10 20060101AFI20221130BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G03G9/10
G03G9/113 351
G03G9/113 362
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087937
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB04
2H500AB05
2H500BA29
2H500BA31
2H500CA04
2H500CA11
2H500EA42E
2H500EA52E
2H500EA53E
2H500EA58E
2H500EA59E
2H500EA60E
2H500EA61E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアの提供。
【解決手段】磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有し、体積平均粒径が20μm以上50μm以下であり、長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下である静電荷像現像用キャリア。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有し、
体積平均粒径が20μm以上50μm以下であり、
長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下である静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記磁性粒子の体積平均粒径が18μm以上48μm以下である請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記樹脂層の膜厚が0.5μm以上2.0μm以下である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、1.0質量%以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
前記樹脂層に樹脂粒子を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項6】
前記樹脂粒子の含有量が、樹脂層全体に対して、5質量%以上20質量%以下である請求項5に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項7】
磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を撹拌翼を備えた混合機に加え、前記磁性粒子と、前記溶液と、を混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物を減圧条件下で、溶剤を乾燥しながら混練して、磁性粒子に樹脂被覆層を形成する第2工程と、
前記樹脂被覆された磁性粒子を撹拌することで解砕しながら冷却した後、混合機からキャリアを取り出す第3工程と、を含み、
前記混合機のケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比(クリアランス/撹拌翼の直径D)が1.0%以上5%以下であり、
前記第2工程において、撹拌翼の回転数をN2(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、円周率をπ、第2工程の時間をt2(s)としたとき下記式1及び式2を満たす請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
式1:0.2≦前記撹拌翼の周速πDN2(m/s)≦1.6
式2:100<t2(πDN2)2<6000
【請求項8】
前記第2工程において、前記混合物の温度を、25℃以上、前記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg(℃)以下の領域で、かつ、前記混合物を含む前記混合機内の圧力を1kPa-abs以上、101kPa-abs以下の領域で乾燥させる請求項7に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記混合機内の圧力を、真空圧側から大気圧側へ上げることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項10】
前記第2工程において、前記攪拌翼の負荷動力値を連続的にモニターし、任意の値になるように、前記混合機内の圧力を制御させる請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項11】
前記第3工程において、撹拌翼の回転数をN3(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第3工程の撹拌時間をt3(s)としたとき下記式2及び下記式3を満たす請求項7~請求項10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
式3:0.2≦前記撹拌翼の周速πDN3(m/s)≦2.0
式4:1×103≦撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)≦4×103
【請求項12】
前記第3工程の後に、粗大粒子を除去する第4工程を含む請求項7~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項13】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア及び静電荷像現像用トナーを含有する、静電荷像現像剤。
【請求項14】
少なくとも像保持体を帯電させる帯電工程と、
前記像保持体表面に静電潜像を形成する露光工程と、
前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、
前記トナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記静電荷像現像剤が、請求項13に記載の静電荷像現像剤である
画像形成方法。
【請求項15】
像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、
前記トナー像を定着する定着手段と、を有し、
前記静電荷像現像剤が、請求項13に記載の静電荷像現像剤である
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用キャリアの製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「芯材粒子表面に乾式コーティング法により樹脂被覆層を形成して成る静電荷像現像用キャリアにおいて、体積平均粒径D50が40~80μmの範囲にあり、50*1.20μm以上の粒子が5重量%以下で、D50*0.7μm以下の粒子が5重量%以下である芯材粒子に、体積平均粒径D50が0.5~20μmの範囲にあり、体積25%粒径D25のD50に対する比D25/D50が0.5~1.0であり、体積75%粒径D75のD50に対する比D75/D50が1.0~1.8である樹脂微粒子凝集体を被覆して成ることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。」が提案されている。
特許文献2には、「磁性粒子表面に樹脂微粒子を機械的圧力を利用して固着することにより樹脂被覆層を形成して成る静電荷像現像用キャリアにおいて、前記樹脂微粒子が一次粒子の凝集体から成り、該凝集体の体積平均粒径D50が0.5~20μmであり、体積25%,粒径D25の前記D50に対する比D25/D50が0.5~1.0であり、体積75%,粒径D75の前記D50に対する比D75/D50が1.0~1.8であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-152208号公報
【特許文献2】特開平5-211807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有する静電荷像現像用キャリアにおいて、体積平均粒径が20μm未満若しくは50μmを超える場合、又は長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%を超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> 磁性粒子と、
前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有し、
体積平均粒径が20μm以上50μm以下であり、
長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下である静電荷像現像用キャリア。
<2> 前記磁性粒子の体積平均粒径が18μm以上48μm以下である前記<1>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<3> 前記樹脂層の膜厚が0.5μm以上2.0μm以下である前記<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<4> 前記凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、1.0質量%以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
<5> 前記樹脂層に樹脂粒子を含む前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
<6> 前記樹脂粒子の含有量が、樹脂層全体に対して、5質量%以上20質量%以下である前記<5>に記載の静電荷像現像用キャリア。
<7> 磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を撹拌翼を備えた混合機に加え、前記磁性粒子と、前記溶液と、を混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物を減圧条件下で、溶剤を乾燥しながら混練して、磁性粒子に樹脂被覆層を形成する第2工程と、
前記樹脂被覆された磁性粒子を撹拌することで解砕しながら冷却した後、混合機からキャリアを取り出す第3工程と、を含み、
前記混合機のケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比(クリアランス/撹拌翼の直径D)が1.0%以上5%以下であり、
前記第2工程において、撹拌翼の回転数をN2(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、円周率をπ、第2工程の時間をt2(s)としたとき下記式1及び式2を満たす前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
式1:0.2≦前記撹拌翼の周速πDN2(m/s)≦1.6
式2:100<t2(πDN2)2<6000
<8> 前記第2工程において、前記混合物の温度を、25℃以上、前記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg(℃)以下の領域で、かつ、前記混合物を含む前記混合機内の圧力を1kPa-abs以上、101kPa-abs以下の領域で乾燥させる前記<7>に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
<9> 前記第2工程において、前記混合機内の圧力を、真空圧側から大気圧側へ上げることを特徴とする前記<7>又は<8>に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
<10>前記第2工程において、前記攪拌翼の負荷動力値を連続的にモニターし、任意の値になるように、前記混合機内の圧力を制御させる前記<7>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
<11> 前記第3工程において、撹拌翼の回転数をN3(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第3工程の撹拌時間をt3(s)としたとき下記式2及び下記式3を満たす前記<7>~<10>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
式3:0.2≦前記撹拌翼の周速πDN3(m/s)≦2.0
式4:1×103≦撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)≦4×103
<12> 前記第3工程の後に、粗大粒子を除去する第4工程を含む前記<7>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
<13> 前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア及び静電荷像現像用トナーを含有する、静電荷像現像剤。
<14> 少なくとも像保持体を帯電させる帯電工程と、
前記像保持体表面に静電潜像を形成する露光工程と、
前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、
前記トナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記静電荷像現像剤が、前記<13>に記載の静電荷像現像剤である
画像形成方法。
<15> 像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、
前記トナー像を定着する定着手段と、を有し、
前記静電荷像現像剤が、前記<13>に記載の静電荷像現像剤である
画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有する静電荷像現像用キャリアにおいて、体積平均粒径が20μm未満若しくは50μmを超える場合、又は長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%を超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<2>に係る発明によれば、磁性粒子の体積平均粒径が18μm未満又は48μmを超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<3>に係る発明によれば、樹脂層の膜厚が0.5μm以上2.0μm以下である場合においても高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<4>に係る発明によれば、凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、1.0質量%を超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<5>に係る発明によれば、樹脂層に樹脂微粒子を含み、前記樹脂微粒子の含有量が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、5質量%未満若しくは20質量%を超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<6>に係る発明によれば樹脂微粒子がメラミン・ホルムアルデヒド縮合物からなる微粒子を用いた場合、樹脂微粒子添加なしである場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが提供される。
<7>に係る発明によれば、磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を撹拌翼を備えた混合機に加え、前記磁性粒子と、前記溶液と、を混合して混合溶液を得る第1工程と、前記混合溶液を減圧条件下で混練して混合物を得る第2工程と、前記混合物を撹拌することで解砕した後、混合機からキャリアを取り出す第3工程と、を含み、前記混合機のケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比(クリアランス/撹拌翼の直径D)が1.0以上5%以下であり、である静電荷像現像用キャリアの製造方法において、前記第2工程において、撹拌翼の回転数をN2(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第2工程の時間をt2(s)としたとき下記式C1、式C2を満たす場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
式C1:0.2≧撹拌翼の周速πDN2(m/s) 又は 撹拌翼の周速πDN2(m/s)≧1.6
式C2:100≧t2(πN2D)2 又は t2(πN2D)2≧6000
<8>に係る発明によれば、前記第2工程において、前記混合物の温度を25℃未満、若しくは前記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg(℃)を超える領域で乾燥させる場合、又は前記混合物を含む前記混合機内の圧力を1kPa-abs未満、若しくは101kPa-absを超えるの領域で乾燥する場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
<9>に係わる発明によれば、前記第2工程において、前記混合機内の圧力を、真空圧側から徐々に大気圧側へ上げて行かない場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
<10>に係わる発明によれば、前記第2工程において、前記攪拌翼の負荷動力値を連続的にモニターし、任意の値になるようにしない場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
<11>に係る発明によれば、前記第3工程における、撹拌翼の回転数をN3(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第3工程の撹拌時間をt3(s)としたとき下記式C2及び下記式C3を満たす場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
式C3:0.2>撹拌翼の周速πDN3(m/s)又は撹拌翼の周速πDN3(m/s)>2.0
式C4:1×103>撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)又は撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)>4×103
<12>に係る発明によれば、前記第3工程の後に、粗大粒子を除去する第4工程を含まない場合と比較して高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアが得られる静電荷像現像用キャリアの製造方法が提供される。
<13>、<14>、又は<15>に係る発明によれば、磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有する静電荷像現像用キャリアにおいて、体積平均粒径が20μm未満若しくは50μmを超える場合、又は長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%を超える場合と比較して、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアを備えた静電荷像現像剤、画像形成方法、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に好適に使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に好適に使用されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の一例における時間経過に伴う撹拌翼の負荷動力値の変動、混合機内温度及び混合機内温度の変動を示す模式的グラフである。
【
図4】本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の他の一例における時間経過に伴う撹拌翼の負荷動力値の変動、混合機内温度及び混合機内温度の変動を示す模式的グラフである。
【
図5】本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の他の一例における時間経過に伴う撹拌翼の負荷動力値の変動、混合機内温度及び混合機内温度の変動を示す模式的グラフである。
【
図6】本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の他の一例における時間経過に伴う撹拌翼の負荷動力値の変動、混合機内温度及び混合機内温度の変動を示す模式的グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリア(以下、「静電荷像現像用キャリア」を単に「キャリア」ともいう)は、磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有する。
また、前記キャリアの体積平均粒径が20μm以上50μm以下である。
そして、長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下である。
ここで、「凝集体」とは、複数のキャリアの一次粒子が凝集したものを指す。
【0011】
本実施形態に係るキャリアは、上記構成により、高温高湿環境下(例えば、28.5℃、85%RH環境下)で低密度画像(例えば画像密度1%以下の画像)を連続して形成した後に、高温高湿環境下(例えば、28.5℃、85%RH環境下)で高密度画像(例えば画像密度30%以下の画像)を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0012】
磁性粒子と、前記磁性粒子を被覆する樹脂層と、を有する静電荷像現像用キャリアの製造方法が、例えば、磁性粒子と、前記樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を混合した後に、乾燥を行う工程を有する場合、前記乾燥において、例えば、長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体が生じやすいことがあった。前記凝集体は、現像スリーブ上の現像剤量を規制する層規制部材を通過できず、現像器内の層規制部材手前に滞留することから、キャリアが前記凝集体を一定数量以上含有する場合、現像スリーブ上に形成される、キャリア及びトナーとからなる現像剤が付着した現像ブラシの構造が不規則となりやすい。この現象は、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に顕著となりやすい。そして、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後、現像スリーブ上に形成されるキャリア及びトナーの層構造が不規則となった状態で、高温高湿環境下で高密度画像を形成したとき、画像濃度ムラが発生しやすいことがあった。
【0013】
本実施形態に係るキャリアは、体積平均粒径が20μm以上50μm以下のキャリアにおいて、長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体の含有量を、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下に低減する。そのため、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した場合であっても、現像スリーブ上に形成される現像ブラシの構造が不規則となりにくくなる。キャリアの体積平均粒径が20μm以下であると、一粒子あたりの磁力が下がることから、磁気拘束力による現像ブラシ構造が不規則になりやすく、50μm以上であると磁気拘束力による現像ブラシ構造が強固になるため、凝集体による層規制への影響をより受けやすくなる。
【0014】
以上のことから、本実施形態に係るキャリアは、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制すると推測される。
【0015】
(磁性粒子)
磁性粒子は、特に限定されるものではなく、キャリアの芯材として用いられる公知の磁性粒子が適用される。磁性粒子として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物の粒子;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。本実施形態において磁性粒子としては、フェライト粒子が好ましい。
【0016】
磁性粒子の体積平均粒径は、10μm以上100μm以下が好ましく、15μm以上80μm以下がより好ましく、20μm以上60μm以下が更に好ましい。
ここで体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、BECKMAN COULTER社(ベックマン・コールター社)製)を用いて測定される。測定される体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを体積平均粒径とする。
【0017】
磁性粒子の粗さ曲線の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)は、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.2μm以上0.8μm以下がより好ましい。
磁性粒子の粗さ曲線の算術平均高さRaは、表面形状測定装置(例えば、(株)キーエンス製「超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9700」)を用いて適切な倍率(例えば、倍率1000倍)で磁性粒子を観察し、カットオフ値0.08mmにて粗さ曲線を得て、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ10μmを抜き出して求める。磁性粒子100個のRaを算術平均する。
【0018】
磁性粒子の磁力は、3000エルステッドの磁場における飽和磁化が、50emu/g以上が好ましく、60emu/g以上がより好ましい。上記飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10-15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。
【0019】
磁性粒子の体積電気抵抗(体積抵抗率)は、1×105Ω・cm以上1×109Ω・cm以下が好ましく、1×107Ω・cm以上1×109Ω・cm以下がより好ましい。
磁性粒子の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。20cm2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cm2の電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、相対湿度50%とする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
R=E×20/(I-I0)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm2)を表す。
【0020】
(樹脂層)
樹脂層は、樹脂層を構成する樹脂を含有する。
樹脂層を構成する樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。
【0021】
樹脂層は、脂環構造を有するアクリル樹脂を含有することが好ましい。脂環構造を有するアクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂環構造を有するアクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環構造を有するアクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、脂環構造を有するアクリル樹脂の全質量に対して、75質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましく、95質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0022】
樹脂層の膜厚は0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.7μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上1.5μm以下であることが更に好ましい。
【0023】
樹脂層の膜厚が0.4μm以上2.0μm以下である場合、キャリアの製造の際、凝集体がより発生しやすい傾向にある。そのため、樹脂層の膜厚が当該範囲内であるキャリアは凝集体を多く含みやすい。本実施形態に係るキャリアは、0.4μm以上2.0μm以下である場合においても、凝集体の含有量が少ないため、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0024】
樹脂層の膜厚は、下記の方法により求める。
キャリアをエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームで切削し、キャリア断面を作製する。キャリア断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)により撮影したSEM画像を、画像処理解析装置に取り込み画像解析を行う。キャリア1粒子あたり10箇所を無作為に選んで樹脂層の厚さ(μm)を測定し、さらにキャリア100個について測定し、すべてを算術平均し、これを樹脂層の膜厚(μm)とする。
【0025】
樹脂層を構成する樹脂の含有量は、樹脂層全体に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、52質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
-内添剤-
樹脂層は内添剤を含むことが好ましい。
ここで内添剤とは、樹脂層に含有される成分のうち上述した樹脂層を構成する樹脂以外の成分をいう。
内添剤としては、例えば、導電材料、導電材料以外の無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。
【0027】
・導電材料
導電材料としては、カーボンブラック、金、銀、銅といった金属や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、アンチモンがドープされた酸化錫、錫がドープされた酸化インジウム、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛、金属で被覆した樹脂粒子等が挙げられる。
【0028】
導電材料の含有量は、樹脂層全体に対し、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0029】
・導電材料以外の無機粒子
導電材料以外の無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子などが挙げられる。
導電材料の含有量は、樹脂層全体に対し、0質量%以上60質量%以下が好ましく、0.05質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0030】
・樹脂粒子
樹脂層に樹脂粒子を含むことが好ましい。
樹脂層に樹脂粒子を含むことで樹脂層表面の樹脂微粒子がスペーサーとなり、現像器内の攪拌によるキャリア樹脂層はがれを抑制し、樹脂剥がれを核とした凝集体を現像器内で生成しにくくなる。そのため、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制する静電荷像現像用キャリアに、よりなりやすくなる。少なすぎるとスペーサー効果が得られず、多すぎると樹脂と磁性粒子との密着性の結着性が悪化して樹脂剥がれが進行する。
【0031】
樹脂粒子としては、熱硬化樹脂粒子、架橋樹脂粒子等が挙げられる。
熱硬化樹脂粒子としては熱硬化性樹脂により形成された粒子であれば特に限定はされないが、窒素元素を含有する樹脂により形成された粒子が好ましい。中でもメラミン樹脂、ウレア樹脂、ウレタン樹脂、グアナミン樹脂、アミド樹脂は正帯電性が高く、また樹脂硬度が高いので樹脂被覆層の剥がれ等による帯電量の低下が抑制されるため好ましい。
【0032】
熱硬化樹脂粒子としては市販品を使用することも可能であり、例えばエポスタS((株)日本触媒製、メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂)、エポスタMS((株)日本触媒製、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂)等が挙げられる。
【0033】
架橋樹脂粒子としては、重合可能なモノマーの重合体であれば特に限定はされない。例えば、帯電性制御性が良好なスチレン化合物、(メタ)アクリレート化合物、及びポリビニル化合物から選択される少なくとも一種を用いた樹脂が好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これらのうち、低吸湿性である脂環式(メタ)アクリレート化合物の単独重合体又は共重合体がより好ましい。脂環式(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、等が挙げられる。
【0034】
架橋樹脂粒子としては帯電付与効果を持たせるために窒素含有モノマーを含有してもよい、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=メタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル=メタクリレート等が挙げられる。
【0035】
架橋樹脂粒子を作製する際に、架橋構造を形成する手段としては、特に限定はしないが、架橋性モノマー等の架橋剤を使用する方法などがある。
【0036】
架橋剤の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類;フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類;ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類;ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール-2-カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類;ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’-チオジプロピオン酸ジビニル、trans-アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類;等が挙げられる。
【0037】
本実施形態において、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記架橋剤のうち、被覆樹脂の帯電性を損なわないためにアクリレート系が望ましく、ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類などを用いることが好ましい。
【0038】
熱硬化樹脂粒子及び架橋樹脂粒子の作製方法としては、乳化重合法又は懸濁重合法等により樹脂粒子を合成する方法、合成後の樹脂を粉砕分級や水中で乳化分散して得る方法などがある。本実施形態においては重合開始剤と界面活性剤を用いた乳化重合法で重合し乾燥して作製した樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0039】
樹脂粒子の平均粒径としては、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、70nm以上500nm以下であることがより好ましく、90nm以上300nm以下であることが更に好ましい。
樹脂粒子の平均粒径の測定は下記の通り行う。
キャリアをエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームで切削し、キャリア断面を作製する。キャリア断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)により撮影したSEM画像を、画像処理解析装置に取り込み画像解析を行う。樹脂層中の樹脂粒子(一次粒子)を無作為に100個選び、それぞれの円相当径(nm)を求め、算術平均し、これを樹脂粒子の平均粒径(nm)とする。
【0040】
高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制する静電荷像現像用キャリアとする観点から、樹脂粒子の含有量は、樹脂層全体に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、7質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
(キャリアの特性)
-体積平均粒径-
キャリアの体積平均粒径は20μm以上50μm以下である。
高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制する観点から、キャリアの体積平均粒径は23μm以上49μm以下であることが好ましく、25μm以上48μm以下であることがより好ましく、27μm以上47μm以下であることが更に好ましい。
【0042】
キャリアの体積平均粒径の測定は下記の通り行う。
測定装置として、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液としては、ISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用し、まず、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを前記電解液100ml以上150ml以下中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000とする。
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)と定義する。
【0043】
-凝集体の含有量-
長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体(以下、特定凝集体とも称する)が、静電荷像現像用キャリア全体に対して、2.0質量%以下である。
【0044】
ここで、特定凝集体の含有量は下記の通り行う。
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用い、目開き75μmのふるいを配置する。正確に秤量した2gのキャリアをふるい上に投入し、振幅1mmで90秒間振動を与え、キャリアに含まれる凝集体を振動後のふるい上に残す。振動後のふるい上の凝集体の質量を測定し、「キャリア全体に対する、振動後のふるい上の凝集体の質量%」を算出する。
つづいて、振動後のふるい上の凝集体をSEM(Scanning Electron Microscope)装置により350倍の倍率で観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込む。凝集体の画像解析によって、凝集体の長軸方向の長さ、及び凝集体の短軸方向の長さを算出する。ここで、凝集体の長軸方向長さとは、前記画像中の凝集体の輪郭上の2点を結ぶ線分のうち最長の長さをいう。また、凝集体の短軸方向の長さとは、凝集体の長軸方向長さと平行な直線に直交し、かつ前記画像中の凝集体の輪郭上の2点を結ぶ線分のうち最短の長さをいう。この凝集体の長軸方向の長さ、及び凝集体の短軸方向の長さの算出を、凝集体500個について実施する。そして、得られた値から、凝集体の長軸方向の平均長さ、及び凝集体の短軸方向の平均長さを算出する。凝集体の長軸方向の平均長さを「凝集体の長径」とする。凝集体の短軸方向の平均長さを1としたときの凝集体の長軸方向の平均長さを「凝集体のアスペクト比」とする。
上述の手順により測定される「凝集体の長径」が75μm以上であり、かつ「凝集体のアスペクト比」が1.4以上4.0以下である場合、上記「キャリア全体に対する、振動後のふるい上の凝集体の含有量(質量%)」をキャリア全体に対する、特定凝集体の含有量(質量%)とする。
【0045】
特定凝集体の含有量は、静電荷像現像用キャリア全体に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
特定凝集体の含有量を上記数値範囲内とすることで、キャリアに含有される特定凝集体の量がより少ない状態となる。そのため、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制できるキャリアとなる。
【0047】
<キャリアの製造方法>
キャリアの製造方法は、下記工程を含む。
磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を撹拌翼を備えた混合機に加え、前記磁性粒子と、前記溶液と、を混合して混合物を得る第1工程。
前記混合物を減圧条件下で、溶剤を乾燥しながら混練して、磁性粒子に樹脂被覆層を形成する第2工程。
前記樹脂被覆された磁性粒子を撹拌することで解砕しながら冷却した後、混合機からキャリアを取り出す第3工程。
そして前記混合機のケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比が(クリアランス/撹拌翼の直径D)が1.0%以上5%以下であり、
前記第2工程において、撹拌翼の回転数をN2(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、円周率をπ、第2工程の時間をt2(s)としたとき下記式1及び式2を満たす。
式1:0.5≦前記撹拌翼の周速πDN2(m/s)≦1.6
式2:100<t2(πDN2)2<6000
【0048】
第2工程において、0.2(m/s)≦πDN2かつ、t2(πDN2)2を100を超える数値とすることで、第2工程において、混合溶液中の磁性粒子の分散状態が良好となりやすい。そのため、第2工程で得られる混合物が凝集しにくくなり、キャリアの凝集体の発生も抑制される。
一方、第2工程において、πDN2≦1.6(m/s)では均一な混練状態が保たれるが、1.6(m/s)を超えると、高粘度状態の混合物に対して、攪拌翼だけが空回りして、均一な混練状態が保たれない為、均一な樹脂被覆層が形成されない。更に、t2(πN2D)2を6000未満とすることで、第2工程で得られる混合物に力が加わりすぎることが無く、磁性粒子の樹脂被膜層が剥がれにくくなる。磁性粒子の被膜樹脂が剥がれると、キャリアの凝集体が生じやすくなる。そのため、t2(πDN2)2を6000未満とすることで、キャリアの凝集体が生じにくくなる。
【0049】
以上のことから、本実施形態に係るキャリアの製造方法は、篩分けを行わなくてもキャリアに含有される特定凝集体の量が少ない状態となりやすい。そのため、本実施形態に係るキャリアの製造方法は、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制できるキャリアを、良好な歩留まりで得られる製造方法となる。
【0050】
(第1工程)
第1工程は、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を撹拌翼を備えた混合機に加え、前記磁性粒子と、前記溶液と、を混合して混合物を得る工程である。
【0051】
第1工程としては、磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液と、を均一混合するために撹拌翼を備えた混合機に加えた後、前記磁性粒子と、前記溶液と、を撹拌翼の回転数を0.2≦前記撹拌翼の周速πDN1(m/s)≦2.0rpm以上の条件で5分間以上60分間以下の間混合することが好ましい。
また、撹拌翼の形状および直径Dは後述の第2工程又は第3工程まで連続して同一の装置内で行う場合、使用する撹拌翼は同一となるが、それぞれの工程を別の装置に取り出して行う場合は、その限りではない。
【0052】
磁性粒子及び樹脂層を構成する樹脂としては、記述のものが適用される。
樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液に用いられる溶剤としては、樹脂層を構成する樹脂を、溶剤100質量部に対して、50質量部以上溶解する溶剤であることが好ましい。
溶剤としては、使用する樹脂層を構成する樹脂の種類によって適宜変更される。
【0053】
撹拌翼を備えた混合機に加えられる、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液の量は、磁性粒子100質量部に対する、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液の固形分量が、1.0質量部以上40.0質量部以下となる様にすることが好ましく、1.5質量部以上35.0質量部以下となる様にすることがより好ましく、2.0質量部以上30.0質量部以下となる様にすることが更に好ましい。
なお、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有するコート液の固形分量は、前記溶液100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。
【0054】
-撹拌翼を備えた混合機-
撹拌翼を備えた混合機としては、「混合機内の物質を撹拌、及び加熱、冷却」、「混合機内の物質の温度、混合機内の圧力、及び撹拌翼の負荷動力値の測定」、並びに「混合機内の減圧」が可能な混合機であれば特に限定されず、公知の混合機が適用される。
また、本実施形態に用いられる混合機は、回分式混合機であることが好ましく、回分式真空混合機であることがより好ましい。
更に、前記回分式混合機としては、ブレード型混練機が好ましく、ブレードの回転軸方向は縦型でも横型でもよい。中でも、ニーダーがより好ましく、二軸横型のニーダーが特に好ましい。
また、前記混合機は、混合槽内圧力を減圧下で加熱冷却が可能な温度調節構造と、撹拌翼の負荷動力値を検出できる機構とを有していることが好ましい。
前記温度調節構造としては、特に制限はないが、ジャケット構造が好ましい。
【0055】
撹拌翼を備えた混合機の、ケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比が(クリアランス/撹拌翼の直径D)が1.0%以上5%以下である。
ここで、前記混合機のケーシング内壁とは、混合機の撹拌翼と一番狭いところをいう。
また、撹拌翼の直径とは、撹拌翼の回転軸方向から見たときの、撹拌翼の回転軌跡の最大径である。
前記撹拌翼の形状としては、特に制限はないが、バンバリー型、シグマ型、ゼット型、スパイラル型、フィッシュテール型等の形状が挙げられる。
【0056】
(第2工程)
第2工程は、第1工程で得られる混合物を減圧条件下で、溶剤を乾燥しながら混練して、磁性粒子に樹脂被覆層を形成する工程である。
そして、第2工程は、撹拌翼の回転数をN2(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第2工程の時間をt2(s)としたとき下記式1および下記式2を満たす様にする。
式1:0.5≦前記撹拌翼の周速πDN2(m/s)≦1.6
式2:100<t2(πDN2)2<6000
【0057】
高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法とする観点から、第2工程は、下記式1-2を満たすことが好ましく、更に、下記式2-2を満たすことが好ましく、下記式2-3を満たすことがより好ましく、下記式2-4を満たすことが更に好ましい。
式1-2;0.5<πDN2(m/s)<1.1
式2-2:120<t2(πDN2)2<5000
式2-3:200<t2(πDN2)2<3000
式2-4:300<t2(πDN2)2<2000
【0058】
第2工程の時間t2とは、以下の通り撹拌翼の負荷動力値によって定義される第2工程の開始点から第2工程の終了点までの時間(単位:sec)である。
【0059】
先ず、第1工程から第3工程における、撹拌翼の負荷動力値の推移について説明する。
第1工程から第3工程においては、例えば、
図3に示す撹拌翼の負荷動力値の変動が生じると考えられる。
図3は、本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の一例における時間経過に伴う撹拌翼の負荷動力値の変動及び混合機内温度の変動を示す模式的グラフである。
図3の左側の縦軸は、撹拌翼の負荷動力値(kW)を表し、右側の縦軸は、混合機内温度(℃)を表し、横軸は、経過時間(min)を表す。
【0060】
図3に示すT0において、磁性粒子と、樹脂層を構成する樹脂及び溶剤を含有する溶液(以下、コート液とも称する)とを混合機に投入し、T0からT1までは、コート液と磁性粒子とを混合している状態であり、第1工程である。T1からT2までは、減圧しながらコート液に含まれていた溶剤を蒸発させ、キャリアの乾燥が完了するまでの状態であり、第2工程である。T2からT3までは、乾燥したキャリアを解砕し、必要に応じて、冷却している状態であり、第3工程の一部である。なおT3は撹拌翼の回転を停止した時点を示す。
【0061】
図3に示す撹拌翼の負荷動力値の変動については、以下の通りである。
T0からT1まで(第1工程)では、撹拌翼の負荷動力値はほぼ一定である。
T1からT2まで(第2工程)では、溶剤が蒸発するにつれて、混合機内におけるコート液と磁性粒子との混合溶液の粘度が向上し、キャリアの乾燥が完了するまで撹拌翼の負荷動力値が上昇を続ける。キャリアの乾燥が完了し、混合物が得られると、急激に撹拌翼の負荷動力値が低下し、T0からT1までの撹拌翼の負荷動力値とほぼ同様の値まで減少する。
T2からT3まで(第3工程)では、再び、撹拌翼の負荷動力値はほぼ一定となる。
【0062】
なお、
図3に示す混合機内温度の変動については、以下の通りである。
T0からT1まででは、徐々に設定した温度(例えば、ジャケット温度)まで上昇する。
T1からT2までは、溶剤の気化熱もあり、安定的に温度が上昇するわけではないが、全体としては混合溶液の乾燥が進むにつれて徐々に温度が上昇する。
T2からT3までは、乾燥時に設定した温度に応じて徐々に上昇し、冷却を開始するとともに設定した冷却温度(例えば、ジャケット温度)に応じて徐々に温度が下降する。
【0063】
第2工程の開始点及び終了点は以下の通り定義する。
前記混合物の減圧及び撹拌を開始した時点(
図3~6のT1)を第2工程の開始点とする。そして、混合溶液中に含有される溶剤が更に蒸発することで低下した撹拌翼の負荷動力値が、第2工程開始点における撹拌翼の負荷動力値(
図3~6のp1参照)の1.3倍以下となった時点(
図3~6のT2)を第2工程の終了点とする。
ここで、撹拌翼の負荷動力値は、混合機によって測定される値である。
【0064】
第2工程の時間t2をより適した時間に調整し、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法とする観点から、第2工程において、前記混合物の温度を、25℃以上(前記樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg(℃))以下の領域で変化させ、かつ、前記混合溶液を含む前記混合機内の圧力を1kPa-abs以上、101kPa-abs以下の領域で変化させることが好ましい。
また、混合機内の圧力を、真空圧側から大気圧側へ上げることが好ましい。
【0065】
第2工程において混合物の温度は、第2工程開始点において、50℃から90℃とし、60℃から85℃が好ましく、更に70℃から80℃が好ましい。
第2工程において混合機内の圧力は、第2工程開始点から1分経過した時点から10分経過した時点までの間に、80kPa-absから1kPa-absの範囲とし、60kPa-absから5kPa-absの範囲とするのが好ましく、更には20kPa-absから5kPa-absの範囲とするのが好ましい。
第2工程開始点において、混合物を含む前記混合機内の温度が、前記の温度に到達した後、混合機内の圧力を先述した圧力まで低下させた後、その圧力で第2工程終了まで、または、第3工程が終了するまで混合機内の圧力を固定する。前記開始点の温度と混合機内の圧力の組み合わせによって、乾燥速度を可変させて、第2工程時間t
2を制御する。
例えば、本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の一例における時間経過に伴う槽内圧力の設定値と、撹拌翼の負荷動力値の変動及び混合機内温度の変動を示す、模式的グラフ
図3と
図4を使って説明する。任意の温度に到達後、T1から槽内圧力を
図3では、10kPa-absまで減圧して、第3工程が終了するまで混合機内の圧力を固定する。一方、
図4のように30kPa-absまで減圧して第3工程が終了するまで混合機内の圧力を固定する。こうすることで、槽内圧力によって決まる溶剤の沸点と槽内温度との乖離の大きさによって、乾燥速度(時間)を制御することができる。
【0066】
第2工程において混合機内の別の圧力制御としては、混合物を含む前記混合機内の圧力を先述した圧力まで低下させた後、徐々に大気圧まで除圧していく方法である。こうすることで、乾燥速度を遅くすることができ、第2工程時間t
2を延ばすことができる。
例えば、本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の一例における時間経過に伴う槽内圧力の設定値と、撹拌翼の負荷動力値の変動及び混合機内温度の変動を示す、模式的グラフ
図5を使って説明する。10kPa-absまで減圧後、60kPa-absまで任意の時間をかけて除圧し、乾燥が終了後、再び、10kPa-absまで減圧する。
【0067】
高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を更に抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法とする観点から、別の圧力制御として、混合物を含む前記混合機の攪拌翼の負荷動力値を連続的にモニターし、予め設定しておいた負荷動力値になるように、混合機内の圧力を可変させる方法である。こうすることで、混合物の混練状態を一定に任意の時間保てることで、より均一な被覆層を形成できる。
例えば、本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの製造方法の一例における時間経過に伴う槽内圧力の設定値と、撹拌翼の負荷動力値の変動及び混合機内温度の変動を示す、模式的グラフ
図6を使って説明する。10kPa-absまで減圧後、乾燥が進むのに従って、負荷電流値が上昇するが、予め設定しておいた前記攪拌翼の負荷動力値p2を超えた場合、一定の偏差で槽内機内圧を下げて、負荷動力値をp2まで下げる。逆にp2より低かった場合は、一定の偏差で、槽内圧力を上げて、負荷動力が一定になるようにする。
【0068】
(第3工程)
第3工程は、第2工程で得られる樹脂被覆された磁性粒子を撹拌することで解砕しながら冷却した後、混合機からキャリアを取り出す工程である。
第2工程において粉体に近い樹脂被覆された磁性粒子が得られる。当該樹脂被覆された磁性粒子はキャリアの凝集体を多く含むため、第3工程において混合物を更に撹拌することで凝集体を解砕し、凝集体の量を低減する。
【0069】
第3工程において、撹拌翼の回転数をN3(rps)、撹拌翼の直径をD(m)、第3工程の撹拌時間をt3(s)としたとき下記式3及び下記式4を満たすことが好ましい。
式3:0.2≦(πDN3)≦2.0
式4:1×103≦t3(πDN3)≦4×103
【0070】
ここで、第3工程の撹拌時間t
3は、第2工程終了点(例えば、
図3のT2)から、撹拌翼の回転を停止した時点(例えば、
図3のT3)までの時間(単位:秒)である。
【0071】
第3工程において、上記条件を満たすことで、解砕時におけるキャリアの樹脂層の剥がれが抑制され、凝集体の発生が抑制される。よって、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生をより抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法となる。
【0072】
高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を更に抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法とする観点から、第3工程において、下記式3-2及び下記4-2を満たすことがより好ましく、下記式3-3及び下記式4-3を満たすことが更に好ましい。
【0073】
式3-2:0.5≦(πDN3)≦2.0
式4-2:1.1×103≦撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)≦3.5×103
【0074】
式3-3:0.7≦(πDN3)≦1.5
式4-3:1.4×103≦t3(πDN3)撹拌仕事量(周速×撹拌時間t3)≦2.5×103
【0075】
撹拌翼の回転数N3は、式3及び式4を満たしやすくする観点から、10rpm以上200rpm以下であることが好ましく、15rpm以上160rpm以下であることがより好ましく、50rpm以上160rpm以下であることが特に好ましい。
【0076】
第3工程の撹拌時間t3は、式2及び式3を満たしやすくする観点から、5分以上280分以下であることが好ましく、10分以上80分以下であることがより好ましく、20分以上70分以下であることが特に好ましい。
すなわち、第3工程の撹拌時間t3は、300秒以上16,800秒以下であることが好ましく、600秒以上4,800秒以下であることがより好ましく、1,200秒以上4,200秒以下であることが特に好ましい。
【0077】
前記混合機からのキャリアを取り出す際のキャリアの温度は、前記樹脂層に含まれる前記樹脂のガラス転移温度Tg-20℃以下であることが好ましい。
【0078】
(第4工程)
第4工程としては、粗大粒子を除去する第4工程を含むことが好ましい。
当該工程を含むことで、特定凝集体の含有量がより低減されやすくなる。そのため、 高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を更に抑制する静電荷像現像用キャリアの製造方法となる。
【0079】
第4工程としては、例えば、目開き45μm以上500μm以下の網を備えた振動篩分機を用いて粗大粒子を除去する工程が挙げられる。
【0080】
第4工程に用いられる網の目開きとしては、45μm以上106μm以下であることがより好ましく、60μm以上75μm以下であることが更に好ましい。
【0081】
第4工程は、上記方法に限定されず、ジャイロシフター、超音波篩分機、風力篩分機等を用いた方法であってもよい。
【0082】
以上の工程を経て、本実施形態に係るキャリアが製造される。
なお、第1工程、第2工程、及び第3工程中は、撹拌翼による撹拌を続けることが好ましい。
【0083】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るキャリア及び静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)を含有する二成分現像剤として構成される。
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100~30:100が好ましく、3:100~20:100がより好ましい。
以下、本実施形態に係る静電荷像現像剤に用いられるトナーについて説明する。
【0084】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーとも称する)は、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
トナー粒子に含まれる結着樹脂、着色剤、離型剤、及びその他添加剤、並びに外添剤としては、特に限定されず、トナーに用いられる従来公知のものが挙げられる。
【0085】
(トナー粒子の特性等)
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0086】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0087】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0088】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0089】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0090】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0091】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0092】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0093】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0094】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体に転写する転写手段と、前記トナー像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0095】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0096】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0097】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0098】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0099】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0100】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0101】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0102】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0103】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0104】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0105】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0106】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0107】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0108】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0109】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0110】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0111】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0112】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0113】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0114】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0115】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0116】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0117】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例0118】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0119】
〔コート液1の調製〕
・シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比95モル:5モル):3部
・トルエン:15部
・カーボンブラック(平均粒径0.2μm):0.2部
・樹脂微粒子(メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、エポスターFS、平均粒径:0.2μm、日本触媒社製):0.3部
上記の材料をサンドミルに投入し、30分間分散後、コート液1を得た。
上記の材料を分散機に投入し、固形分17%のコート液を得た。
【0120】
〔コート液2の調製〕
樹脂微粒子の添加量を0.12部としたこと以外は、コート液1の調製手順と同様の手順にてコート液2を調整した。
【0121】
〔コート液3の調製〕
樹脂微粒子の添加量を0.15部としたこと以外は、コート液1の調製手順と同様の手順にてコート液3を調整した。
【0122】
〔コート液4の調製〕
樹脂微粒子の添加量を0.57部としたこと以外は、コート液1の調製手順と同様の手順にてコート液4を調整した。
【0123】
〔コート液5の調製〕
樹脂微粒子の添加量を0.63部としたこと以外は、コート液1の調製手順と同様の手順にてコート液5を調整した。
【0124】
(フェライト粒子(1)の作製)
Fe2O31318部と、Mn(OH)2587部と、Mg(OH)296部とを混合し、温度900℃且つ4時間の仮焼成を行った。水中に、仮焼成品と、ポリビニルアルコール6.6部と、分散剤としてのポリカルボン酸0.5部と、メディア径1mmのジルコニアビーズとを投入し、サンドミルで30分間かけて粉砕及び混合し、分散液を得た。分散液中の粒子の体積平均粒径は1.5μmであった。
分散液を原料にしてスプレードライヤーで造粒及び乾燥させ、体積平均粒径35μmの粒状物を得た。次に、酸素分圧1%の酸素窒素混合雰囲気のもと、電気炉を用いて温度1350℃且つ4時間で本焼成を行い、次いで、大気中で温度900℃且つ3時間の加熱を行い、焼成粒子を得た。焼成粒子を解砕及び分級し、体積平均粒径34μmのフェライト粒子(1)を得た。
【0125】
(フェライト粒子(2)の作成)
フェライト粒子(1)をエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製)で分級することで体積平均粒径29μmのフェライト粒子(2)を得た。
【0126】
(フェライト粒子(3)の作成)
フェライト粒子(1)を目開き20μmの網で篩分することで体積平均粒径49μmのフェライト粒子(3)を得た。
【0127】
(フェライト粒子(4)の作成)
フェライト粒子(1)をエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製)で分級することで体積平均粒径19μmのフェライト粒子(4)を得た。
【0128】
(フェライト粒子(5)の作成)
フェライト粒子(1)をエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製)で分級することで体積平均粒径17μmのフェライト粒子(5)を得た。
【0129】
(フェライト粒子(6)の作成)
フェライト粒子(1)を25μmの網で篩分することで体積平均粒径47μmのフェライト粒子(6)を得た。
【0130】
キャリアの製造条件は以下の製造条件例1~15、比較条件例1~6である。後述の実施例及び比較例は、フェライト粒子をフェライト粒子(1)~(6)のいずれかを使用し、下記条件例のいずれか1つの製造条件に従って製造した。
<製造条件例1>
-第1工程-
フェライト粒子(体積平均粒径35μm):100部
コート液1:フェライト粒子100部に対して固形分量が3部となる量
上記成分を、ジャケット温度を90℃に暖気した回分式撹拌型真空混合機(井上製作所(株)製50Lニーダー、撹拌翼直径D=0.25m、ケーシング内壁と攪拌翼の外周とのクリアランス/D=3.5%)に50kg投入し、60rpmで撹拌混合しながら、70℃まで予熱した。
【0131】
-第2工程-
次いで、前記混合機の内圧を大気圧から10kPa-absまで5分で減圧して、溶剤が乾燥するまで、10kPa-absで固定した。前記混合機における撹拌動力が、乾燥開始前の撹拌動力値の1.3倍まで低下したタイミングで、前記混合機のジャケットに冷水20℃を注入した。
なお、第2工程において、撹拌翼の回転数N
2(rps)、撹拌翼の直径D、第2工程の時間t
2(s)との関係「撹拌翼の周速(πDN
2)、t
2(πDN
2)
2」と、乾燥開始時の混合物の温度及び混合機内の圧力は表1中に記載した値となる様に調製した。
なお表1中に記載された「混合物の温度」は、第2工程開始時の槽内温度を示す。
また、槽内圧力の経時変化の概要がわかるように、表1中に
図3から
図6の模式図の何れかを記載した。
-第3工程-
前記混合機に冷水20℃を注入した時点(=第2工程終了点)から45分後に撹拌を停止して前記混合機から容器に排出し、キャリアを作製した。
なお、第3工程において、撹拌翼の回転数N
3(rps)、撹拌翼の直径D(m)、第3工程の撹拌時間t
3(s)との関係「(πDN
3)、t
3(πDN
3)」は表1中に記載した値となる様に調製した。
-第4工程-
前記混合機から取り出したキャリアは、75μ目開きで篩分して、キャリアを作製した。
【0132】
<製造条件例2~14、比較条件例1~6>
第2工程及び第3工程を表1の通りに変更したこと以外は、製造条件例1と同様にしてキャリアを得た。
【0133】
<実施例1~8、17~27、比較例1~6>
フェライト粒子の種類及び製造条件を表2に示す通りとして、各例のキャリアを得た。
【0134】
<実施例9>
コート液1の添加量を、フェライト粒子100部に対して固形分量が1.2部となる量としたこと以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0135】
<実施例10>
コート液1の添加量を、フェライトコア100部に対して固形分量が1.5部となる量としたこと以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0136】
<実施例11>
コート液1の添加量を、フェライトコア100部に対して固形分量が6部となる量としたこと以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0137】
<実施例12>
コート液1の添加量を、フェライトコア100部に対して固形分量が6.3部となる量としたこと以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0138】
<実施例13>
コート液1の替わりに、コート液2を使用した以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0139】
<実施例14>
コート液1の替わりに、コート液3を使用した以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0140】
<実施例15>
コート液1の替わりに、コート液4を使用した以外は実施例1と同様にしてキャリアを得た。
【0141】
<実施例16>
コート液1の替わりに、コート液5を使用した以外は実施例1と同様にして現像剤を得た。
【0142】
<画像濃度ムラ評価>
各例で得られたキャリアを用いて、DocuCeNterColor400(富士ゼロックス(株)製)用の現像剤を作製した。
得られた現像剤をDocuCeNterColor400(富士ゼロックス(株)製)の現像機に充填した。28.5℃、85%RHの環境下でDocuCeNterColor400を用いて、A4サイズのJ紙(富士ゼロックス(株)製)を使用し、画像密度1%のチャートのある画像10,000枚を10日間かけて出力する試験を行った。合計10,000枚出力した後に、画像密度30%となる画像を500枚印刷した後に、A4サイズの45紙((株)リコー製 坪量52gsm)を使用し、トナー載り量が9.8g/cm2となる3次色(プロセスブラック)の全面べた画像及びトナー載り量が6.5g/cm2となる2次色のパッチが印刷された画像サンプルを10枚印刷した。
3次色の全面べた画像及び2次色のパッチが印刷された画像サンプル(以下、単に画像サンプルと称する)2枚目の画像サンプルを目視にて確認し、下記評価基準に基づいて白点評価を行った。なお、下記Cまでを許容範囲とした。
A:画質に問題はない。
B: 3次色のべた画像周辺にわずかにムラが観察されるが、画質に問題はない。
C:3次色のべた画像に加え、2次色のパッチ周辺にわずかにムラが観察されるが、画質に問題はない。
D:3次色のべた画像にムラが観察される
E:3次色のべた画像に加え、2次色のパッチ周辺にもムラが観察される
【0143】
【0144】
【0145】
表1に記載された「クリアランス率(%)」は、混合機のケーシング内壁と撹拌翼の外周とのクリアランス(m)と、攪拌翼の直径D(m)との比(クリアランス/撹拌翼の直径D)を示す。
表2に記載された「凝集体量(質量%)」は、長径が75μm以上かつアスペクト比が1.4以上4.0以下である凝集体の、キャリア全体に対する量を示す。
【0146】
上記結果から、本実施例のキャリアは、高温高湿環境下で低密度画像を連続して形成した後に、高温高湿環境下で高密度画像を形成したときの画像濃度ムラの発生を抑制することがわかる。