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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181103
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】継手、管材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/02 20060101AFI20221130BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20221130BHJP
   B29C 65/36 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F16L47/02
F16L21/02 F
B29C65/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087942
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三觜 浩平
(72)【発明者】
【氏名】小▲浜▼ 奈月
(72)【発明者】
【氏名】柏又 智明
【テーマコード(参考)】
3H015
3H019
4F211
【Fターム(参考)】
3H015AC02
3H015BA01
3H015BC01
3H019GA06
3H019GA11
4F211AD12
4F211AH11
4F211AK11
4F211TA01
4F211TC11
4F211TN16
(57)【要約】
【課題】複数の樹脂製の管材夫々の外周部と継手の内周部とが接触した状態で該複数の管材を接続させる構成と比して、複数の管材の接続作業を簡略化させることができる継手を提供すること。
【解決手段】内側に形成された孔部34と、樹脂製の円筒状の管材10が管材10の軸方向に沿って開口26aから挿入される凹部26と、を有し、孔部34を通して複数の管材10を接続する継手本体22と、管材10と継手本体22との間に配置されており、管材10が軸方向に沿って挿入されて管材10と接触する溝部54と、溝部54に挿入された管材10の端面と突き当たって接触する端面58と、を有し、管材10と共に軸方向に沿って継手本体22に挿入されて外周壁50及び端面48が凹部26と接触し、孔部34と管材10とを接続する円筒状のスリーブ40と、を備える継手20。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に形成された流路と、樹脂製の円筒状の管材が前記管材の軸方向に沿って挿入される第1被挿入部と、を有し、前記流路を通して複数の前記管材を接続する継手本体と、
前記管材と前記継手本体との間に配置されており、前記管材が前記軸方向に沿って挿入されて前記管材と接触する第2被挿入部と、前記第2被挿入部に挿入された前記管材の端面と突き当たって接触する被突き当て部と、を有し、前記管材と共に前記軸方向に沿って前記第1被挿入部に挿入されて外周部及び挿入方向前方の端面が前記第1被挿入部と接触し、前記継手本体と前記管材とを接続する円筒状の接続部と、
を備える継手。
【請求項2】
前記管材と前記継手本体と前記接続部とは、熱可塑性樹脂で形成されている、請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記接続部は、さらに磁性体を含んで形成されている、請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記接続部は、円筒状の磁性体を芯材とする熱可塑性樹脂のコーティング品である、請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記接続部は、磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂の成形品である、請求項3に記載の継手。
【請求項6】
前記接続部は、前記被突き当て部付近の外周部の一部を径方向に貫通する窓部を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の継手。
【請求項7】
前記接続部は、前記第2被挿入部に挿入された前記管材の内周部とさらに接触している、請求項1~6の何れか1項に記載の継手。
【請求項8】
前記第1被挿入部は、前記継手本体の外周部及び前記流路に挟まれた円筒状の溝部を有し、
前記第2被挿入部は、前記接続部の外周部及び内周部に挟まれた円筒状の溝部を有し、
前記接続部は、内周部が前記第1被挿入部とさらに接触している、請求項7に記載の継手。
【請求項9】
熱可塑性樹脂で形成された円筒状の管材と、
内側に形成された流路と、樹脂製の円筒状の管材が前記管材の軸方向に沿って挿入される第1被挿入部と、を有し、前記流路を通して複数の前記管材を接続する継手本体と、
前記管材と前記継手本体との間に配置されており、前記管材が前記軸方向に沿って挿入されて前記管材と接触する第2被挿入部と、前記第2被挿入部に挿入された前記管材の端面と突き当たって接触する被突き当て部と、を有し、前記管材と共に前記軸方向に沿って前記第1被挿入部に挿入されて外周部及び挿入方向前方の端面が前記第1被挿入部と接触し、前記継手本体と前記管材とを接続する円筒状の接続部であり、熱可塑性樹脂と磁性体とを含んで形成されている接続部と、
を用いて、
前記管材を前記接続部の前記第2被挿入部に挿入する第1挿入工程と、
前記第1挿入工程で前記管材を挿入されている前記接続部を前記継手本体の前記第1被挿入部に挿入する第2挿入工程と、
前記第2挿入工程で前記管材を挿入されており且つ前記継手本体に挿入されている前記接続部を電磁誘導加熱して前記管材及び前記継手本体に融着させる融着工程と、
を有する管材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手及び管材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内側面に磁性粉を含有した熱可塑性樹脂よりなる発熱体を埋設した継手を用い、この継手をプラスチック管の管端部に差込むか、或いは継手をプラスチック管の外周面に側方より当がって固定したのち、高周波発生装置と電極コア及び励磁コイルで構成された加熱装置を用いて1~400KHzの交番磁界を発生させ、磁性粉の発熱によって熱融着することを特徴とするプラスチック管の接合方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-117133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のプラスチック管の接合方法では、プラスチック管が円筒状の継手に挿入されてプラスチック管の外周部と継手の内周部のみが接触した状態でプラスチック管と継手とが熱融着される。この場合、熱融着の際にプラスチック管が十分に継手に挿入されていることを確認するため、継手に挿入されるプラスチック管には、熱融着の際に継手に挿入される部分の外周部を他の外周部に対して微少に削るピーリング加工が為される。ピーリング加工されたプラスチック管は、継手に挿入される部分の外周部と他の外周部とで形成される段差を有する。ピーリング加工されたプラスチック管を特許文献1に記載の継手に熱融着させるとき、作業者は、ピーリング加工で形成された段差を目視することでプラスチック管が十分に継手に挿入されていることを確認する。換言すると、プラスチック管の外周部と継手の内周部のみが接触した状態でプラスチック管と継手とを熱融着させるとき、作業者は、事前にプラスチック管をピーリング加工する必要がある。
【0005】
本発明は、上記現状を鑑みて成されたものであり、複数の樹脂製の管材夫々の外周部と継手の内周部とが接触した状態で該複数の管材を接続させる構成と比して、複数の管材の接続作業を簡略化させることができる継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の継手は、内側に形成された流路と、樹脂製の円筒状の管材が前記管材の軸方向に沿って挿入される第1被挿入部と、を有し、前記流路を通して複数の前記管材を接続する継手本体と、前記管材と前記継手本体との間に配置されており、前記管材が前記軸方向に沿って挿入されて前記管材と接触する第2被挿入部と、前記第2被挿入部に挿入された前記管材の端面と突き当たって接触する被突き当て部と、を有し、前記管材と共に前記軸方向に沿って前記第1被挿入部に挿入されて外周部及び挿入方向前方の端面が前記第1被挿入部と接触し、前記継手本体と前記管材とを接続する円筒状の接続部と、を備える。
【0007】
第1態様に記載の継手によれば、管材を接続部の第2被挿入部に挿入し、被突き当て部に突き当てる。そして、管材と接続部を継手本体の第1被挿入部に挿入し、接続部の外周部及び挿入方向前方の端面を第1被挿入部と接触させることで、管材が継手本体に接続される。したがって、複数の樹脂製の管材夫々の外周部と継手の内周部のみが接触した状態で該複数の管材を接続する構成と比して、管材の接続作業を簡略化させることができる。
【0008】
第2態様に記載の継手は、第1態様に記載の継手において、前記管材と前記継手本体と前記接続部とは、熱可塑性樹脂で形成されている。
【0009】
第2態様に記載の継手によれば、管材と継手本体と接続部とを加熱させることで管材と継手本体と接続部とを融着させることができる。
【0010】
第3態様に記載の継手は、第2態様に記載の継手において、前記接続部は、さらに磁性体を含んで形成されている。
【0011】
第3態様に記載の継手によれば、接続部を電磁誘導加熱することができる。
【0012】
第4態様に記載の継手は、第3態様に記載の継手において、前記接続部は、円筒状の磁性体を芯材とする熱可塑性樹脂のコーティング品である。
【0013】
第4態様に記載の継手によれば、接続部が電磁誘導加熱可能である構成において、接続部が磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂で成形されている構成と比して、電磁誘導加熱による接続部の加熱時間を短縮させることができる。
【0014】
第5態様に記載の継手は、第3態様に記載の継手において、前記接続部は、磁性粉体を含有する熱可塑性樹脂の成形品である。
【0015】
第5態様に記載の継手によれば、接続部が電磁誘導加熱可能である構成において、接続部が磁性体の芯材を有する構成と比して、接続部を容易に形成することができる。
【0016】
第6態様に記載の継手は、第1態様~第5態様の何れか一態様に記載の継手において、前記接続部は、前記被突き当て部付近の外周部の一部を径方向に貫通する窓部を有する。
【0017】
第6態様に記載の継手によれば、窓部を目視することで管材の接続部に対する挿入状態を確認することができる。
【0018】
第7態様に記載の継手は、第1態様~第6態様の何れか一態様に記載の継手において、前記接続部は、前記接続部に挿入された前記管材の内周部とさらに接触している。
【0019】
第7態様に記載の継手によれば、接続部が管材の外周部及び端面のみと接触している構成と比して、接続部と管材との間のシール性を向上させることができる。
【0020】
第8態様に記載の継手は、第7態様に記載の継手において、前記第1被挿入部は、前記継手本体の外周部及び前記流路に挟まれた円筒状の溝部を有し、前記第2被挿入部は、前記接続部の外周部及び内周部に挟まれた円筒状の溝部を有し、前記接続部は、内周部が前記第1被挿入部とさらに接触している。
【0021】
第8態様に記載の継手によれば、第1被挿入部が円柱状の凹部である構成と比して、継手本体と接続部との間のシール性を向上させることができる。
【0022】
第9態様に記載の管材の接続方法は、熱可塑性樹脂で形成された円筒状の管材と、内側に形成された流路と、樹脂製の円筒状の管材が前記管材の軸方向に沿って挿入される第1被挿入部と、を有し、前記流路を通して複数の前記管材を接続する継手本体と、前記管材と前記継手本体との間に配置されており、前記管材が前記軸方向に沿って挿入されて前記管材と接触する第2被挿入部と、前記第2被挿入部に挿入された前記管材の端面と突き当たって接触する被突き当て部と、を有し、前記管材と共に前記軸方向に沿って前記第1被挿入部に挿入されて外周部及び挿入方向前方の端面が前記第1被挿入部と接触し、前記継手本体と前記管材とを接続する円筒状の接続部であり、熱可塑性樹脂と磁性体とを含んで形成されている接続部と、を用いて、前記管材を前記接続部の前記第2被挿入部に挿入する第1挿入工程と、前記第1挿入工程で前記管材を挿入されている前記接続部を前記継手本体の前記第1被挿入部に挿入する第2挿入工程と、前記第2挿入工程で前記管材を挿入されており且つ前記継手本体に挿入されている前記接続部を電磁誘導加熱して前記管材及び前記継手本体に融着させる融着工程と、を有する。
【0023】
第9態様に記載の管材の接続方法によれば、樹脂製の管材の外径部と継手本体の内径部とが接触した状態で該複数の管材を該継手本体に接続させる場合と比して、管材と継手との融着作業及び接続作業を簡略化させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明に係る継手によれば、複数の樹脂製の管材夫々の外周部と継手の内周部とが接触した状態で該複数の管材を接続させる構成と比して、複数の管材の接続作業を簡略化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る継手の斜視断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る管材の斜視図である。
図3】(A)本発明の実施形態に係る継手本体の斜視図である。(B)本発明の実施形態に係る継手本体の斜視断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る接続部の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る接続部の斜視断面図である。
図6】(A)本発明の実施形態に係る第1挿入工程を示す斜視図である。(B)本発明の実施形態に係る第1挿入工程で管材を挿入された接続部を示す斜視図である。
図7】(A)本発明の実施形態に係る第2挿入工程を示す斜視図である。(B)本発明の実施形態に係る第2挿入工程で管材を挿入された接続部を挿入された継手を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る電磁誘導手段を取り付けられた継手を示す斜視図である。
図9図8の9-9断面図である。
図10】(A)本発明の実施形態に対する第1比較形態に係る継手に管材を挿入する工程を示す断面図である。(B)本発明の実施形態に対する第1比較形態に係る管材を挿入された継手を示す断面図である。
図11】(A)(B)本発明の実施形態に対する第2比較形態に係る継手を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図11にしたがって、本発明の実施形態の一例である継手20及び継手20を用いた管材10の接続方法について説明する。
【0027】
(継手の概略)
継手20は、図1に示されるように、2つの管材10を接続するものである。すなわち、継手20は、複数の管材10を接続するものである。
【0028】
管材10は、図2に示されるように、融点がTEである樹脂Rで形成された、一方向に延びる中空の円筒状の部材である。なお、本願における円筒状とは、一方向に延びる円柱に、該円柱を一方向(軸方向)に貫通する貫通孔が形成されている形状のことを指す。樹脂Rは熱可塑性樹脂である。管材10を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリブテンを用いることができる。管材10の中空部は、管材10を長手方向(軸方向)に貫通しており、中空部の内側に水等の流体が流入する。管材10の軸方向の両側の端部及び端面は夫々、端部12及び端面14とされている。
【0029】
管材10は、図1に示されるように、一方の端部12に後述するスリーブ40を取り付けられた状態で、後述する継手20の真直部24の溝部26cに挿入される。
【0030】
(継手)
継手20は、継手本体22と、スリーブ40と、を備える。
【0031】
(継手本体)
継手本体22は、図3(a)及び図3(b)に示されるように、熱可塑性樹脂で形成された、L字状に湾曲している中空の円筒状の部材である。継手本体22を形成する熱可塑性樹脂は、例えばポリブテンを用いることができる。また、継手本体22を形成する熱可塑性樹脂は、融点が管材10を形成する熱可塑性樹脂の融点TEと同じであることが好ましい。また、継手本体22を形成する熱可塑性樹脂は、管材10と同じ素材であることがより好ましい。本実施形態において、継手本体22を形成する熱可塑性樹脂は、管材10を形成する熱可塑性樹脂と同じ樹脂Rである。
【0032】
継手本体22は、互いに直交する方向に延びる2つの円筒状の真直部24と、2つの真直部24を繋げるように湾曲している湾曲部22aと、を有する。夫々の真直部24の端面は、端面24aとされている。
【0033】
真直部24は、端面24aに対して凹となっている円柱状の凹部26を有する。凹部26は、第1被挿入部の一例である。凹部26の開口及び端面は夫々、開口26a及び端面26bとされている。開口26aは、第1開口部の一例である。また、真直部24は、凹部26の端面26bの中央部から開口26a側に突出している円柱状の突出部28を有する。突出部28の端面は、端面28aとされている。突出部28の突出長さは、凹部26の深さよりも短い。
【0034】
また、夫々の真直部24は凹部26及び突出部28を有することで、凹部26の一部が、真直部24の外周部及び突出部28に挟まれている円筒状の溝部26cとなっている。すなわち、凹部26は、継手本体22の外周部及び突出部28に挟まれている円筒状の溝部26cを有する。
【0035】
継手本体22の中空部は、一方の真直部24から湾曲部22aを経由して他方の真直部24に向けて貫通するL字状に形成されている。具体的には、継手本体22の中空部は、一方の真直部24の突出部28の端面28aから湾曲部22aに向けて一方の真直部24の軸方向に延びて形成された円柱状の孔部30を有する。また、継手本体22の中空部は、他方の真直部24の突出部28の端面28aから湾曲部22aに向けて他方の真直部24の軸方向に延びて形成された円柱状の孔部32を有する。孔部30と孔部32は、湾曲部22aで繋がっており、継手本体22をL字状に貫通する孔部34を形成している。すなわち、L字状に湾曲している継手本体22の中空部は、継手本体22の形状に沿うように継手本体22を貫通している孔部34である。孔部34は、その内側に水等の流体が流入する。突出部28の孔部34は、流路の一例である。
【0036】
(スリーブ)
スリーブ40は、図4及び図5に示されるように、一方向に沿って延びる中空の円筒状の部材である。スリーブ40は、接続部の一例である。スリーブ40は、図1及び図7に示されるように、継手本体22の何れかの真直部24の軸とスリーブ40に軸が一致している状態で、該真直部24の凹部26に開口26aから軸方向に沿って挿入可能な機能を有する。また、スリーブ40は、管材10の軸とスリーブ40の軸が一致している状態で、該管材10の端部12をスリーブ40に軸方向に沿って挿入可能な機能を有する。別言すると、スリーブ40は、管材10の端部12に取付可能な機能を有する。具体的には、スリーブ40は、継手本体22の溝部26cの外周部と接触する円筒状の外周壁50と、外周壁50よりも小径であり、溝部26cの内周部と接触する円筒状の内周壁52とを有する。スリーブ40の外周壁50は、接続部の外周部の一例である。スリーブ40の内周壁52は、接続部の内周部の一例である。外周壁50と内周壁52とは、軸方向両側の端面の位置が一致しており、軸方向において継手本体22の湾曲部22aに近い側の端部に、該端面に沿う方向に形成されたリング状の端壁40aで繋がっている。また、スリーブ40は、内周壁52に囲まれるように形成されており、スリーブ40を軸方向に貫通する貫通孔42を有する。スリーブ40の端壁40a側の端面及び端壁40aとは反対側の端面は夫々、端面48及び端面46とされている。端面48は、継手本体22の凹部26に対する挿入方向前方の端面である。また、スリーブ40は、外周壁50と内周壁52と端壁40aとで形成された円筒状の溝部54を有する。換言すると、溝部54は、外周壁50及び内周壁52に挟まれるように形成されている。溝部54は、第2被挿入部の一例である。溝部54はスリーブの端面46に形成された開口56と、端壁40aの端面48とは反対側の面である端面58とを有する。開口56は、第2開口部の一例である。端面58は、被突き当て部の一例である。
【0037】
スリーブ40は、溝部54について、管材10の端部12の外周部及び内周部に対して嵌合可能な寸法を有する。また、スリーブ40は、管材10の端面14が溝部54の端面58に突き当たるように管材10を溝部54に挿入される。これにより、スリーブ40は、溝部54に管材10が挿入されているとき、溝部54が管材10の端面14と外周部と内周部とに接触する。
【0038】
また、スリーブ40の端面46と端面48との間の長さは、図1に示されるように、継手本体22の凹部26の深さと同等とされている。すなわち、スリーブ40の軸方向の長さは、継手本体22の凹部26の深さと同等である。これにより、スリーブ40は、スリーブ40の端面48が継手本体22の凹部26に挿入されて端面26bと接触しているとき、スリーブ40の端面46が継手本体22の端面24aに対して略面一となる機能を有する。また、スリーブ40は、外周壁50及び内周壁52について、スリーブ40を継手本体22の溝部26cに対して嵌合可能な寸法を有する。すなわち、スリーブ40は、継手本体22の凹部26に挿入されているとき、端面48と外周壁50と内周壁52とが凹部26と接触する。
【0039】
また、スリーブ40は、端面46よりも端面48に近い側の外周壁50の一部に、外周壁50を径方向に貫通している矩形状の窓部60が形成されている。換言すると、スリーブ40は、溝部54の端面58付近の外周壁50の一部を径方向に貫通する窓部60を有する。なお、窓部60は、窓部60を径方向から見たとき、端面58の位置を目視可能な大きさを有することが好ましい。
【0040】
スリーブ40は、図5に示されるように、スリーブ40と略相似している薄肉円筒状の芯材62の表面に、熱可塑性樹脂をコーティングされることで形成されている。芯材62は、鉄等の磁性体で構成されている。すなわち、スリーブ40は、磁性体を芯材とする熱可塑性樹脂のコーティング品である。また、スリーブ40は、磁性体の芯材62と、熱可塑性樹脂とを含んで構成されている。スリーブ40を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリブテンを用いることができる。また、スリーブ40を形成する熱可塑性樹脂は、融点が管材10を形成する熱可塑性樹脂の融点TE又は継手本体22の形成する熱可塑性樹脂の融点の何れか一方と同じであることが好ましい。また、スリーブ40を形成する熱可塑性樹脂は、管材10又は継手本体22の何れか一方と同じ素材であることがより好ましい。また、スリーブ40を形成する熱可塑性樹脂は、管材10及び継手本体22の両者と同じ素材であることがさらに好ましい。本実施形態において、スリーブ40を形成する熱可塑性樹脂は、管材10及び継手本体22を形成する熱可塑性樹脂と同じ樹脂Rである。すなわち、スリーブ40と、管材10と、継手本体22とを形成する熱可塑性樹脂の融点はTEである。
【0041】
継手本体22の凹部26にスリーブ40を取り付けられた管材10が挿入されているとき、管材10の中空部を端部12側に向けて流れる流体は、管材10の端部12に取り付けられたスリーブ40の貫通孔42を通過して継手本体22の孔部34に流入する。このように、スリーブ40は、継手本体22の孔部34と管材10とを接続する機能を有する。
【0042】
(管材の接続方法)
次に、本実施形態の継手20を用いた管材10の接続方法の手順を説明する。
【0043】
(1)先ず、スリーブ40を管材10の端部12に取り付ける(第1挿入工程)。具体的には、図6(A)に示されるように、管材10の端部12をスリーブ40の溝部54に挿入し、図1及び図6(B)に示されるように、管材10の端面14をスリーブ40の溝部54の端面58に突き当てて接触させる。このとき、作業者は、スリーブ40の窓部60から管材10の外径部が露出していることを目視することで、管材10の端面14がスリーブ40の溝部54の端面58に接触していることを確認する。
【0044】
(2)次に、図7(A)に示されるように、第1挿入工程でスリーブ40を取り付けられた管材10を継手本体22の凹部26に挿入し、図1及び図7(B)に示されるように、スリーブ40の端面48を凹部26の端面26bに突き当てて接触させる(第2挿入工程)。このとき、作業者は、スリーブ40の端面46と継手本体22の端面24aとが略面一となっていることを目視することで、スリーブ40の端面48が継手本体22の凹部26の端面26bに接触していることを確認する。
【0045】
(3)次に、図8及び図9に示されるように、第2挿入工程でスリーブ40が取り付けられている管材10を凹部26に挿入されている継手本体22の、スリーブ40と径方向で重なっている外周部に電磁誘導加熱手段70を取り付ける(取付工程)。
【0046】
電磁誘導加熱手段70は、第2挿入工程で管材10を挿入されており且つ継手本体22に挿入されているスリーブ40を電磁誘導加熱可能な構成を有している。具体的には、電磁誘導加熱手段70は、本体部72と、継手本体22の真直部24の外周部の全周を囲むように挟持する挟持部74と、挟持部74の開閉を操作する操作部76と、を有する装置である。電磁誘導加熱手段70は、操作部76を用いて挟持部74を開閉させることで、継手本体22に対して脱着可能な機能を有する。また、電磁誘導加熱手段70は、挟持部74が閉状態のときに、挟持部74で挟まれている空間に磁界を発生させることができる機能をさらに有する。また、電磁誘導加熱手段70は、挟持部74で挟まれている空間にスリーブ40が配置されている状態で磁界を発生させることで、スリーブ40に含まれる磁性体である芯材62を電磁誘導加熱させる機能を有する。本実施形態に係る電磁誘導加熱手段70の具体例として、WATTS社製TRITON(登録商標)システムが挙げられる。
【0047】
(4)取付工程で電磁誘導加熱手段70を継手本体22に取り付けた後、管材10に取り付けられており且つ継手本体22の凹部26に挿入されたスリーブ40を、電磁誘導加熱手段70を用いて加熱させ、管材10及び継手本体22に融着させる(融着工程)。具体的には、電磁誘導加熱手段70を用いて定められた時間TIだけスリーブ40の芯材62を電磁誘導加熱することで、スリーブ40と管材10との接触部及びスリーブ40と継手本体22との接触部を温度TE以上の温度に加熱させる。管材10と、継手本体22と、管材10及び継手本体22と接触しているスリーブ40とは、夫々の接触面が樹脂Rの融点TE以上の温度に加熱されることで融解した状態となる。具体的には、管材10の端部12の端面14と、外周部と、内周部及びスリーブ40の溝部54の端面58と、外周部と、内周部とがこの加熱によって融解する。また、継手本体22の溝部26cの端面26bと、外周部と、内周部及びスリーブ40の端面48と、外周壁50の凹部26側の周面と、内周壁52の溝部26c側の周面とがこの加熱によって融解する。
【0048】
電磁誘導加熱手段70による加熱が開始してから定められた時間TI経過した後、電磁誘導加熱手段70は加熱を停止し、管材10と継手本体22とスリーブ40とは温度TEより低い温度に冷却される。電磁誘導加熱手段70によって管材10及び継手本体22との接触面が融解されたスリーブ40は、この冷却によって管材10及び継手本体22と融着される。
【0049】
以上が、本実施形態の継手20を用いた管材10の接続方法の手順である。
【0050】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の継手20及び継手20を用いた管材10の接続方法の作用及び効果について説明する。なお、この説明において、実施形態に対する比較形態を記載するときに、継手20及び管材10と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0051】
本実施形態の継手20は、管材10の端面14と突き当たって接触する溝部54の端面58と、継手本体22の凹部26の端面26bに突き当たって接触する端面48と、を有するスリーブ40を備える。本実施形態の継手20と、以下に示す第1比較形態としての継手120とを比較する。
【0052】
比較形態の継手120は、図10(A)に示されるように、樹脂Rで形成された、一方向に延びる円筒状の部材である。継手120は、図10(B)に示されるように、管材10の外周部と継手120の内周部のみが接触した状態で熱融着される構成を有する。この場合、熱融着の際に管材10が十分に継手120に挿入されていることを確認するため、継手120に挿入される管材10には、熱融着の際に継手120に挿入される部分の外周部を他の外周部に対して微少に削るピーリング加工が為される。ピーリング加工された管材10は、継手に挿入される部分の外周部と他の外周部とで形成される段差112を有する。継手120を用いて複数の管材10を接続するために管材10を継手120に熱融着させるとき、作業者は、ピーリング加工で形成された段差112を目視することで管材10が十分に継手120に挿入されていることを確認する。換言すると、管材10の外周部と継手120の内周部のみが接触した状態で管材10と継手120とを熱融着させるとき、作業者は、事前に管材10をピーリング加工する必要がある。
【0053】
一方、本実施形態の継手20は、管材10の端面14と突き当たって接触する溝部54の端面58と、継手本体22の凹部26の端面26bに突き当たって接触する端面48と、を有するスリーブ40を備える。そのため、実施形態の継手20を用いて、管材10を継手20に熱融着させるために継手20に挿入させるときは、第1挿入工程及び第2挿入工程を経由すればよい。具体的には、管材10を継手20に熱融着させるために継手20に挿入させるときは、管材10の端面14がスリーブ40の溝部54の端面58に接触するように管材10をスリーブ40に挿入すればよい。また、管材10を継手20に熱融着させるために継手20に挿入させるときは、管材10を挿入されているスリーブ40の端面48が、継手本体22の凹部26の端面26bに接触するように該スリーブ40を継手本体22に挿入すればよい。すなわち、実施形態の継手20を用いた管材10の接続方法においては、管材10のピーリング作業が不要になる。よって、本実施形態の継手20は、複数の樹脂製の管材10夫々の外周部と継手の内周部のみが接触した状態で該複数の管材10を接続させる構成と比して、管材10の接続作業を簡略化させることができる。
また、本実施形態の継手20を用いた管材10の接続方法は、複数の樹脂製の管材10夫々の外周部と継手の内周部のみが接触した状態で該複数の管材10を接続させる場合と比して、管材10と継手20との融着作業及び接続作業を簡略化させることができる。
【0054】
また、本実施形態の継手20は、管材10と継手本体22とスリーブ40とが熱可塑性樹脂である樹脂Rで形成されている。よって、本実施形態の継手20は、管材10と継手本体22とスリーブ40とを樹脂Rの融点TE以上の温度に加熱することで、管材10と継手本体22とスリーブ40とを融着させることができる。
【0055】
また、本実施形態の継手20は、スリーブ40が、磁性体である芯材62を含んで構成されている。よって、本実施形態の継手20は、スリーブ40を電磁誘導加熱することができる。
【0056】
また、本実施形態の継手20は、スリーブ40が磁性体の芯材62の表面に樹脂Rをコーティングされることで形成されている、熱可塑性樹脂のコーティング品である構成を有する。すなわち、本実施形態の継手20は、スリーブ40が芯材62を磁性体とする構成を有する。そのため、継手20は、スリーブが磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂で成形されている構成と比して、電磁誘導によって加熱されやすい。よって、本実施形態の継手20は、スリーブ40が電磁誘導加熱可能である構成において、スリーブが磁性粉体を含有する熱可塑性樹脂で成形されている構成と比して、電磁誘導加熱によるスリーブ40の加熱時間を短縮させることができる。
【0057】
また、本実施形態の継手20は、スリーブ40の溝部54の端面58付近の外周壁50の一部を径方向に貫通する窓部60を有する。よって、本実施形態の継手20は、窓部60を目視することで管材10のスリーブ40に対する挿入状態を確認することができる。
【0058】
また、本実施形態の継手20は、スリーブ40が、スリーブ40に挿入された管材10の内周部又は外周部の少なくとも一方とさらに接触している。よって、本実施形態の継手20は、スリーブ40がスリーブ40に挿入された管材10の端面14のみと接触している構成と比して、スリーブ40と管材10との間のシール性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の継手20は、継手本体22に形成された円筒状の溝部26cと、スリーブ40に形成された円筒状の溝部54とを有し、スリーブ40の内周壁52が継手本体22の凹部26の溝部26cと接触している構成を有する。本実施形態の継手20と、以下に示す第2比較形態としての継手200とを比較する。
【0060】
第2比較形態の継手200は、図11(A)(B)に示されるように、実施形態の継手本体22及びスリーブ40に代わって継手本体222及びスリーブ240を備える。第2比較形態の継手本体222は、実施形態の凹部26と比して突出部28が形成されていない凹部226を有する。すなわち、第2比較形態の継手本体222は、実施形態における溝部26cに相当する構成を有さない。また、第2比較形態のスリーブ240は、実施形態におけるスリーブ40の内周壁52に相当する構成を有さない。すなわち、第2比較形態のスリーブ240は、実施形態における溝部54に代わって、円柱状の凹部254を有する。よって、第2比較形態のスリーブ240は、スリーブ240が挿入される継手本体222の凹部226に対して外周壁50及び端壁40aのみと接触する。また、スリーブ240は、スリーブ240の凹部254に挿入される管材10の内周部に対して非接触である。換言すると、スリーブ240は、スリーブ240の凹部254に挿入される管材10の端部12の外周部及び端面14のみと接触する。以上の点以外については、第2比較形態の継手200は、実施形態の継手20と同様の構成とされている。
【0061】
第2比較形態のスリーブ240は、スリーブ240が挿入される継手本体222の凹部226に対して外周壁50及び端壁40aのみと接触する。一方、実施形態の継手20は、継手本体22の溝部26cを形成する突出部28にスリーブ40の内周壁52が接触している。そのため、実施形態の継手20は、第2比較形態の継手200と比して、継手本体22に対するスリーブ40の接触面積が大きい。よって、本実施形態の継手20は、スリーブ40が挿入される継手本体の被挿入部が円柱状の凹部である構成と比して、継手本体22とスリーブ40との間のシール性を向上させることができる。なお、前述の第2比較形態の継手200は、本発明の技術的思想に含まれるものである。
【0062】
以上のとおり、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0063】
例えば、実施形態のスリーブ40は、磁性体の芯材62の表面に樹脂Rをコーティングされることで形成されている、熱可塑性樹脂のコーティング品であるものとした。しかしながら、本発明に係る接続部の一例としてのスリーブは、電磁誘導加熱させることができるのであれば、熱可塑性樹脂のコーティング品に限定されない。例えば、本発明に係るスリーブは、鉄などの磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂を用いて射出成型等によって成形されている構成を有していても良い。すなわち、本発明に係る接続部は、磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂の成形品であってもよい。本発明に係る接続部がこの構成を有する継手は、接続部が磁性体の芯材を有する構成と比して、接続部を容易に形成することができる。なお、この構成においては、熱可塑性樹脂は磁性体の粉体を複数種含有していてもよい。例えば、磁性体の粉体を含有する熱可塑性樹脂は、磁化しやすい粉体と、熱伝導率が高い粉体と、の2種類の粉体を含有していてもよい。
【0064】
また、実施形態の継手20は、2つの管材10を接続するものとした。しかしながら、本発明に係る継手は、3つ以上の管材10を接続する構成を有していてもよい。
【0065】
また、実施形態の継手本体22は、L字状に湾曲しているものとした。しかしながら、本発明に係る継手の継手本体は、L字状に湾曲しているものに限定されず、一方向に延びる構成を有するものであってもよい、
【0066】
また、実施形態の継手20を用いた管材10の接続方法においては、スリーブ40の電磁誘導加熱において、継手本体22の真直部24を挟持する挟持部74を有する電磁誘導加熱手段70を用いるものとした。しかしながら、本発明に係る管材10の接続方法では、スリーブ40を電磁誘導加熱させることができるのであれば、電磁誘導加熱手段は、挟持部74を有する電磁誘導加熱手段70を用いるものに限定されない。例えば、本発明に係る電磁誘導加熱手段は、継手本体22の全体を包囲可能なコイルの内側に、管材10を挿入されたスリーブ40を挿入された継手本体22を配置してコイルの内側に磁場を発生させる方法であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…管材、20…継手本体、26…凹部(第1被挿入部の一例)、26c…溝部、34…孔部(流路の一例)、40…スリーブ(接続部の一例)、54…溝部(第2被挿入部の一例)、58…端面(被突き当て部の一例)、60…窓部、62…芯材
図1
図2
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図11