(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181104
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087943
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 なみ
(72)【発明者】
【氏名】大見 陸斗
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB38
4C267CC09
(57)【要約】
【課題】先端部のシェイピング性能および折曲性を確保しつつ、トルク伝達性も良好なガイドワイヤを提供する。
【解決手段】先端部11と基端部12とを有するコアシャフト10を備えるガイドワイヤ1であって、先端部11は、横断面が扁平形状の第1の領域13A、14Aと、第1の領域13A、14Aよりも曲げ剛性が高く、横断面が円形状の第2の領域13B、14Bと、を含み、先端部11には、最先端側から順に第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bが設けられ、かつ、第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bが少なくとも2組以上設けられ、各第1の領域13A、14Aの扁平方向はすべて同一である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と基端部とを有するコアシャフトを備えるガイドワイヤであって、
前記先端部は、
横断面が扁平形状の第1の領域と、
前記第1の領域よりも曲げ剛性が高く、横断面が円形状の第2の領域と、を含み、
前記先端部には、最先端側から順に前記第1の領域および前記第2の領域が設けられ、かつ、前記第1の領域および前記第2の領域が少なくとも2組以上設けられ、
各第1の領域の扁平方向はすべて同一である、ガイドワイヤ。
【請求項2】
各第2の領域は、第1の部分と、前記第1の部分の基端側に位置し前記第1の部分よりも大きな外径を有する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置し前記第2の部分から前記第1の部分に向かって先細るテーパ部と、を有する、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1の領域は、板厚方向の側面が平滑面であり、板幅方向の側面が円弧面である請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓を取り巻く冠動脈などの血管に生じた狭窄の治療や、石灰化の進行により血管内が完全に閉塞した部位(例えば、慢性完全閉塞:CTOなど)を治療する際、バルーンカテーテル等の治療器具に先行してこれらを案内するためのガイドワイヤが血管に挿入される。
【0003】
上記ガイドワイヤには、例えば、芯線の先端部に、テーパ部とテーパ部から連続して先端側へ延びる偏平部とを有することにより、先端部の柔軟性を向上させたものが提案されている(例えば、特許文献1の
図2(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のガイドワイヤでは、先端部を偏平形状としたことにより、医療現場で先端部の癖付け(シェイピング)を行うシェイピング性能と、先端部を病変に押し込んでいった際に先端部が折れ曲がる方向を揃えることができるものの、回転トルクの伝達性が低下する。
【0006】
トルク伝達性を確保する手段の1つとしては、先端部を丸棒状(特許文献1の
図2(a)参照)に形成することが考えられるが、丸棒状に形成した場合、シェイピングした際の癖付けが立体的になるばかりでなく、先端を病変に押し込んでいった際、先端部が意図した方向とは違う方向に折れ曲がる(いわゆる3次元変形)してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、先端部のシェイピング性能および折曲性を確保しつつ、トルク伝達性も良好なガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本開示の一態様であるガイドワイヤは、先端部と基端部とを有するコアシャフトを備えるガイドワイヤであって、前記先端部は、横断面が扁平形状の第1の領域と、前記第1の領域よりも曲げ剛性が高く、横断面が円形状の第2の領域と、を含み、前記先端部には、最先端側から順に前記第1の領域および前記第2の領域が設けられ、かつ、前記第1の領域および前記第2の領域が少なくとも2組以上設けられ、 各第1の領域の扁平方向はすべて同一である。
【0009】
各第2の領域は、第1の部分と、前記第1の部分の基端側に位置し前記第1の部分よりも大きな外径を有する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置し前記第2の部分から前記第1の部分に向かって先細るテーパ部と、を有してもよい。
【0010】
より好ましい態様として、前記第1の領域は、板厚方向の側面が平滑面であり、板幅方向の側面が円弧面である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、第1の領域(扁平領域)でシェイピング性能および折曲特性を確保でき、第2の領域(丸棒領域)でトルク伝達性を確保可能なガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係るガイドワイヤの概略図である。
【
図3】第2の実施形態に係るガイドワイヤの概略図である。
【
図4】第2の実施形態の変形例に係るガイドワイヤの概略図である。
【
図6】実施例および比較例の回転性能評価における手元角度(入力角度)と先端角度(出力角度)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係るガイドワイヤについて図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、本開示において、先端とはガイドワイヤにおいて先端チップが位置する端部を意味し、基端とは当該先端とは反対側の端部を意味する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るガイドワイヤ1の概略図である。
図1に示すように、ガイドワイヤ1は、コアシャフト10と、コイル体2と、先端チップ3と、とを備える。
【0015】
コアシャフト10は、ガイドワイヤ1の基端から先端まで延びるシャフトである。コアシャフト10は、先端側(
図1では左側)に位置する先端部11と、先端部11よりも基端側(
図1では右側)に位置する基端部12とを有する。先端部11は、先端側から順に、第1先端部13と、第2先端部14と、テーパ部15と、を有する。
【0016】
第1先端部13は、横断面が扁平形状の第1の領域13Aと、第1の領域13Aよりも曲げ剛性が高く横断面が円形状の第2の領域13Bとを有する。第1の領域13Aは、扁平板領域13A1と テーパ領域13A2とを有する。扁平板領域13A1は、例えば、第2の領域13Bの外径と同径の円柱状部をプレス加工することにより、扁平板形状に形成される。この実施形態において、扁平板領域13A1のプレス方向は、
図1の上下方向であり、扁平板領域13A1の長軸(板幅方向)は
図1の紙面に対して垂直方向である。
【0017】
テーパ領域13A2は、第2の領域13Bと扁平板領域13A1とを連結し、第2の領域13Bから扁平板領域13A1に向かって漸次外径が減少する。
図2は、第1の領域13Aの縦断面図である。
図2に示すように、この実施形態において、扁平板領域13A1およびテーパ領域13A2は、丸棒体を上下方向からプレスするため、プレス面(
図1では板厚方向の側面)は平滑面13Cである。また、板幅方向の側面は、未プレス部であるため、円弧面13Dとなっている。
【0018】
第2先端部14は、横断面が扁平形状の第1の領域14Aと、第1の領域14Aよりも曲げ剛性が高く横断面が円形状の第2の領域14Bとを有する。第1の領域14Aは、扁平板領域14A1と 2つのテーパ領域14A2とを有する。扁平板領域14A1は、例えば、第2の領域14Bの外径と同径の円柱状部をプレス加工することにより、扁平板形状に形成される。
【0019】
一方のテーパ領域14A2は、扁平板領域14A1の端部(
図1では左端)と、第2の領域13Bの端部(
図1では右端)とを連結し、この例では、領域13Bから扁平板領域14A1に向かって漸次外径が減少している。他方のテーパ領域14A2は、扁平板領域14A1の端部(
図1では右端)と、第2の領域14Bの端部(
図1では左端)とを連結し、この例では、第2の領域14Bから扁平板領域14A1に向かって漸次外径が減少している。このように、先端部11には、第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bが少なくとも2組以上設けられている。
【0020】
この実施形態において、扁平板領域13A1およびテーパ領域13A2と同様に、扁平板領域14A1およびテーパ領域14A2は、丸棒体を上下方向からプレスするため、プレス面(
図2では板厚方向の側面)は平滑面14Cである。また、板幅方向の側面は、未プレス部であるため、円弧面14Dとなっている。
【0021】
第1の領域13A(扁平板領域13A1)と、第1の領域14A(扁平板領域14A1)の扁平方向はすべて同一に構成されている。すなわち、第1の領域13Aおよび第1の領域14Aの横断面の長手方向が平行をなすように構成されている。このため、第1の領域13Aおよび第1の領域14Aにおいて、それらの屈曲方向は同一である。第1の領域13Aは、使用前にその屈曲方向へわずかにシェイピングされる。
【0022】
第1の領域13A、14Aの扁平形状とは、少なくともプレス面が平滑面となっている長円形状および楕円形状等を含む形状であり、ガイドワイヤ1の使用時において屈曲方向が特定の方向に定まる形状である。
【0023】
扁平板領域13A1、14A1の曲げ剛性は等しく構成され、第2の領域13B、14Bの曲げ剛性は等しく構成されている。すなわち、扁平板領域13A1、14A1の厚さは等しく構成され、第2の領域13B、14Bの外径は等しく構成されている。
【0024】
コアシャフト10を構成する材料としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金、Co-Cr合金などの金属材料等が挙げられる。コアシャフト10の全長は例えば1,800~3,000mm、第1の領域13Aの長さは例えば5~20mm、第2の領域13Bの長さは例えば3~7mm、第1の領域14Aの長さは例えば3~7mm、第2の領域14Bの長さは例えば5~10mm、テーパ部15の長さは例えば30~100mmである。扁平板領域13A1、14A1の厚さは例えば0.04~0.07mm、第2の領域13B、14Bの外径は例えば0.06~0.10mmである。
【0025】
コイル体2は、コアシャフト10の先端部11の周囲に設けられている。コイル体2は、金属素線をコアシャフト10の周りに螺旋状に巻回することにより、中空円筒形状に形成されている。コイル体2の先端は先端チップ3に接合され、コイル体2の基端は接合部2Aによりテーパ部15に接合されている。接合部2Aは、例えばロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等により構成されている。
【0026】
コイル体2を構成する金属素線は、1本若しくは複数本の単線、または1本若しくは複数本の撚線である。金属素線の直径は、例えば0.01~0.10mmである。コイル体2の金属素線を構成する材料としては、例えばSUS316などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金、白金、タングステンなどの放射線不透過性の金属等が挙げられる。
【0027】
先端チップ3は、略半球形状をなし、ガイドワイヤ1の先端に設けられ、コアシャフト10の先端とコイル体2の先端とを接合している。先端チップ3は、例えばロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等により構成されている。
【0028】
以上のように、第1の実施形態のガイドワイヤ1によれば、コアシャフト10の先端部11は、横断面が扁平形状の第1の領域13A、14Aと、第1の領域13A、14Aよりも曲げ剛性が高く、横断面が円形状の第2の領域13B、14Bと、を含み、先端部11には、最先端側から順に第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bが設けられ、かつ、第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bが少なくとも2組以上設けられ、各第1の領域13A、14Aの扁平方向はすべて同一である。
【0029】
当該構成によれば、各第1の領域13A、14Aの扁平方向はすべて同一であるので、第1の領域13A、14Aの屈曲方向を同じ方向にすることができ、3次元変形を確実に抑制することができる。また、先端部11は、横断面が円形状の第2の領域13B、14Bを有するので、トルク伝達性を確保することができる。このように、シェイピング性能およびトルク伝達性を確保可能なガイドワイヤ1を提供することができる。
【0030】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態にかかるガイドワイヤについて、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態のガイドワイヤ1と同一の部材については同一の参照番号を付して説明を省略し、第1の実施形態のガイドワイヤ1と異なる構成について説明する。
【0031】
図3は、第2の実施形態に係るガイドワイヤ101の概略図である。
図3に示すように、第2の領域113B、114Bの構成が、第1の実施形態の第2の領域13B、14Bの構成と異なっている。
【0032】
第2の領域113Bは、第1の部分113B1と、第2の部分113B2と、テーパ部113B3と、を有する。第1の部分113B1は、横断面が円形状をなし、先端(
図3では左端)が第1の領域13Aのテーパ領域13A2の基端(
図3では右端)に接続されている。第2の部分113B2は、横断面が円形状をなし、基端(
図3では右端)が第1領域14Aの先端側のテーパ領域14A2の先端(
図3では左端)に接続されている。テーパ部113B3は、第1の部分113B1と第2の部分113B2との間に位置し、第1の部分113B1の基端(
図3では右端)と第2の部分113B2の先端(
図3では左端)とを連結する。この例では、テーパ部113B3は、第2の部分113B2から第1の部分113B1に向かって漸次外径が減少している。
【0033】
第2の部分113B2は、第1の部分113B1よりも大きな外径を有する。すなわち、第2の部分113B2は第1の部分113B1よりも曲げ剛性が高く構成され、両者により剛性ギャップが形成される。
【0034】
第2の領域114Bは、第1の部分114B1と、第2の部分114B2と、テーパ部114B3と、を有する。第1の部分114B1は、横断面が円形状をなし、先端(
図3では左端)が第1の領域14Aの基端側(
図3では右側)のテーパ領域14A2の基端(
図3では右端)に接続されている。第1の部分114B1の外径は、第2の領域113Bの第2の部分113B2の外径と同じである。第2の部分114B2は、横断面が円形状をなし、基端(
図3では右端)がテーパ部15の先端(
図3では左端)に接続されている。テーパ部114B3は、第1の部分114B1と第2の部分114B2との間に位置し、第1の部分114B1の基端(
図3では右端)と第2の部分114B2の先端(
図3では左端)とを連結する。この例では、テーパ部114B3は、第2の部分114B2から第1の部分114B1に向かって漸次外径が減少している。
【0035】
第2の部分114B2は、第1の部分114B1よりも大きな外径を有する。すなわち、第2の部分114B2は第1の部分114B1よりも曲げ剛性が高く構成され、両者により剛性ギャップが形成される。本実施形態では、第1の領域14Aの扁平板領域14A1は、第1の領域13Aの扁平板領域13A1よりも厚く構成されている。
【0036】
第1の領域13Aの長さは例えば5~10mm、第1の部分113B1の長さは例えば0~2mm、第2の部分113B2の長さは例えば5~7mm、テーパ部113B3の長さは例えば1~2mm、第1の領域14Aの長さは例えば5~10mm、第1の部分114B1の長さは例えば0~2mm、第2の部分114B2の長さは例えば5~7mm、テーパ部114B3の長さは例えば1~2mmである。扁平板領域13A1の厚さは例えば0.04~0.07mm、扁平板領域14A1の厚さは例えば0.11~0.14mmである。第1の部分113B1の外径は例えば0.06~0.10mm、第2の部分113B2の外径は例えば0.15~0.20mm、第1の部分114B1の外径は例えば0.15~0.20mm、第2の部分114B2の外径は例えば0.25~0.34mmである。
【0037】
本実施形態のガイドワイヤ101によれば、第1の実施形態のガイドワイヤ1とほぼ同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態のガイドワイヤ101は、各第2の領域113B、114Bは、第1の部分113B1、114B1と、第1の部分113B1、114B1の基端側に位置し第1の部分113B1、114B1よりも大きな外径を有する第2の部分113B2、114B2と、第1の部分113B1、114B1と第2の部分113B2、114B2との間に位置し第2の部分113B2、114B2から第1の部分113B1、114B1に向かって先細るテーパ部113B3、114B3と、を有する。
【0038】
このため、先端側の第1の部分113B1および第2の部分113B2の間に第1の剛性ギャップが形成され、基端側の第1の部分114B1と第2の部分114B2との間に第2の剛性ギャップが形成される。この実施形態においては、第1の剛性ギャップ<第2の剛性ギャップとなるように設定されている。
【0039】
これにより、病変部が比較的柔らかい組織からなる場合は、第1の剛性ギャップにより、第1の領域13Aのナックルの進展が抑制される。病変部が比較的に硬い組織からなる場合には、ガイドワイヤ101の先端が当該病変部に当接して第1の領域13Aのナックルの進展が止まらなくても、第2の剛性ギャップによってナックルの進展を止めることができる。その際、各扁平板領域13A1、14A1はすべて同一方向に扁平とされており、屈曲方向を同じ方向に揃え、3次元変形を確実に抑制することができる。このように、硬い病変にも対応可能なガイドワイヤ101を提供することができる。第2の領域113B、114Bにおいて、基端側に行くほど剛性を高くすることにより、ナックルが止まった部分で病変部の硬さを知ることができる。
【0040】
次に、第2の実施形態の変形例に係るガイドワイヤについて図面を参照しながら説明する。
図4は、第2の実施形態の変形例に係るガイドワイヤ201の概略図である。
図4に示すように、ガイドワイヤ201は、コアシャフト10の先端部11に、第1先端部13および第2先端部14に加え、第3先端部16をさらに有する。第3先端部16は、第2先端部14とテーパ部15との間に設けられている。なお、本変形例では、第1先端部13および第2先端部14のコアシャフト10の軸方向の長さは、
図3の第2の実施形態の第1先端部13および第2先端部14のコアシャフト10の軸方向の長さよりも短く構成されている。
【0041】
第3先端部16は、横断面が扁平形状の第1の領域16Aと、第1の領域16Aよりも曲げ剛性が高く横断面が円形状の第2の領域16Bとを有する。
【0042】
第1の領域16Aは、扁平板領域16A1と 2つのテーパ領域16A2とを有する。扁平板領域16A1は、例えば、第2の領域16Bの外径と同径の円柱状部をプレス加工することにより、扁平板形状に形成される。
【0043】
一方のテーパ領域16A2は、扁平板領域16A1の端部(
図4では左端)と、第2の部分114B2の端部(
図4では右端)とを連結し、この例では、第2の部分114B2から扁平板領域16A1に向かって漸次外径が減少している。他方のテーパ領域16A2は、扁平板領域16A1の端部(
図4では右端)と、第2の領域16Bの端部(
図4では左端)とを連結し、この例では、第2の領域16Bから扁平板領域16A1に向かって漸次外径が減少している。このように、先端部11には、第1の領域13A、14A、16Aおよび第2の領域113B、114B、16Bが3組設けられている。
【0044】
この実施形態において、扁平板領域13A1およびテーパ領域13A2と同様に、扁平板領域16A1およびテーパ領域16A2は、丸棒体を上下方向からプレスするため、プレス面(
図4では板厚方向の側面)は平滑面である。また、板幅方向の側面は、未プレス部であるため、円弧面となっている。
【0045】
第1の領域13A(扁平板領域13A1)と、第1の領域14A(扁平板領域14A1)と、第1領域16A(扁平板領域16A1)の扁平方向はすべて同一に構成されている。すなわち、第1の領域13A、第1の領域14A、および第1の領域16Aの横断面の長手方向が平行をなすように構成されている。このため、第1の領域13A、第1の領域14A、および第1の領域16Aにおいて、それらの屈曲方向は同一である。
【0046】
第2の領域16Bは、第1の部分16B1と、第2の部分16B2と、テーパ部16B3と、を有する。第1の部分16B1は、横断面が円形状をなし、先端(
図4では左端)が第1の領域16Aの基端側(
図4では右側)のテーパ領域16A2の基端(
図4では右端)に接続されている。第1の部分16B1の外径は、第2の領域114Bの第2の部分114B2の外径と同じである。第2の部分16B2は、横断面が円形状をなし、基端(
図4では右端)がテーパ部15の先端(
図4では左端)に接続されている。テーパ部16B3は、第1の部分16B1と第2の部分16B2との間に位置し、第1の部分16B1の基端(
図4では右端)と第2の部分16B2の先端(
図4では左端)とを連結する。この例では、テーパ部16B3は、第2の部分16B2から第1の部分16B1に向かって漸次外径が減少している先細るように構成されている。
【0047】
第2の部分16B2は、第1の部分16B1よりも大きな外径を有する。すなわち、第2の部分16B2は第1の部分16B1よりも曲げ剛性が高く構成され、両者により剛性ギャップが形成される。本実施形態では、第1の領域16Aの扁平板領域16A1は、第1の領域14Aの扁平板領域14A1よりも厚く構成されている。
【0048】
本変形例のガイドワイヤ201によれば、第2の実施形態のガイドワイヤ101とほぼ同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態のガイドワイヤ201は、各第2の領域113B、114Bに加え、第2の領域16Bを有する。第2の領域16Bは、第1の部分16B1と、第1の部分16B1の基端側に位置し第1の部分16B1よりも大きな外径を有する第2の部分16B2と、第1の部分16B1と第2の部分16B2との間に位置し第2の部分16B2から第1の部分16B1に向かって先細るテーパ部16B3と、を有する。
【0049】
このため、第1の剛性ギャップおよび第2の剛性ギャップに加え、最も基端側の第1の部分16B1および第2の部分16B2の間に第3の剛性ギャップが形成される。この実施形態においては、第1の剛性ギャップ<第2の剛性ギャップ<第3の剛性ギャップとなるように設定されている。
【0050】
これにより、病変部が硬い組織からなる場合には、ガイドワイヤ201において、第2先端部14が当該病変部に当接して第2の領域14Aのナックルの進展が止まらなくても、第3の剛性ギャップによってナックルの進展を止めることができる。その際、各扁平板領域13A1、14A1、16A1はすべて同一方向に扁平とされており、屈曲方向を同じ方向に揃え、3次元変形を確実に抑制することができる。このように、硬い病変にも対応可能なガイドワイヤ201を提供することができる。第2の領域113B、114B、16Bにおいて、基端側に行くほど剛性を高くすることにより、ナックルが止まった部分で病変部の硬さを知ることができる。
【0051】
次に、本実施形態のガイドワイヤ101について回転性能評価を行った結果について説明する。実施例として使用したガイドワイヤ101の寸法は、第1の領域13Aの長さが mm、第2の領域113Bの長さが mm、第1の領域14Aの長さが mm、第2の領域114Bの長さが mm、扁平板領域13A1の厚さが0.04mm、第1の部分113B1の外径が0.06mm、第2の部分113B2の外径が0.10mm、扁平板領域14A1の厚さが0.055mm、第1の部分114B1の外径が0.10mm、第2の部分114B2の外径が0.17mm、基端部12の外径が0.33mmである。比較例として使用したガイドワイヤは、テーパ部114B3よりも基端側の寸法が実施例のガイドワイヤ101の寸法と同じであり、第1の部分114B1から扁平板領域13A1までの部分を全て厚さ mmの扁平板形状としたものである。
【0052】
図5は、回転性能評価に用いる治具5の概略図である。治具5は、ワイヤ挿通部5Aと、入力部5Bと、出力部5Cとを備える。ワイヤ挿通部5Aは、樹脂製(例えば透明のアクリル板)であり、溝6が形成されている。溝6は、ワイヤ挿通部5Aの側面で開口している。溝6の幅は、1.0mmである。溝6は、複数の円弧部6A、6Bを有する。円弧部6Aの曲率半径は70mmであり、円弧部6Bの曲率半径は5mmである。入力部5Bは、略円柱状をなし、回転可能に設けられており、ガイドワイヤYの基端が接続される。出力部5Cには、ガイドワイヤYの先端が接続される。
【0053】
治具5を用いて、入力部5Bを反時計回りに回した時の出力部5Cの追従性(追従角度)について測定した。その結果を
図4に示している。
図6は、実施例および比較例の回転性能評価における手元角度(入力角度)と先端角度(出力角度)との関係を示すグラフである。
【0054】
図6に示すように、実施例のガイドワイヤ101の測定結果は、直線形状に近い形状となっており、回転追従性が良い結果となっている。これに対し、比較例のガイドワイヤの測定結果は、全体的に波形状となっており、回転追従性が悪い結果となっている。このように、本実施形態のガイドワイヤ101は優れた回転追従性を有する。
【0055】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0056】
例えば、第1の実施形態では、扁平板領域13A1、14A1の厚さは同じに構成されていた、扁平板領域14A1を扁平板領域13A1よりも厚く構成してもよい。第2の領域13B、14Bの外径は同じに構成したが、第2の領域14Bの外径を第2の領域13Bの外径よりも大きく構成してもよい。上記の実施形態では、第1の領域13A、14Aおよび第2の領域13B、14Bは2組設けていたが、3組以上設けてもよい。コイル体2をコアシャフト10の先端部11の周囲に設けたが、コイル体2に限らず、樹脂製の円筒状部材、編まれたブレードであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、101、201:ガイドワイヤ
10:コアシャフト
11:先端部
12:基端部
13A、14A、16A:第1の領域
13B、113B、14B、114B、16B:第2の領域
113B1、114B1、16B1:第1の部分
113B2、114B2、16B2:第2の部分
113B3、114B3、16B3:テーパ部