(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181120
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221130BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221130BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20221130BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221130BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221130BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
B32B7/022
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087967
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小倉 透
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA04
4F100AA04B
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB18
4F100AB18B
4F100AB24
4F100AB24B
4F100AK04
4F100AK04A
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4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05
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4F100DE01
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4F100EJ55
4F100GB66
4F100JC00
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4F100JL13B
4J004AA10
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4J004AB01
4J004CA04
4J004CE01
4J004FA09
4J040DF001
4J040HA066
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA41
4J040MA11
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】微生物やウイルスの高い除去性を有し、それらの飛散および増殖が抑制され、かつ長期間にわたり継続的に使用することができる除菌性、抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つの機能を有する積層フィルムを提供する。
【解決手段】基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムにおいて、前記粘着層に、該粘着層100質量部に対して1~15質量部の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を配合し、前記粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が0.7~1.4となるように調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムであって、
前記粘着層が、該粘着層100質量部に対して1~15質量部の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を含み、
前記粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が0.7~1.4である、前記積層フィルム。
【請求項2】
前記粘着層の粘着力が0.5~3.5N/25mmである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記粘着層の自背面剥離力が1.0~4.0N/25mmである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記抗菌剤が銀系抗菌剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記粘着層の厚さが1~10μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記抗菌剤の粒子径が0.5~2.5μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルムを複数備える、積層体。
【請求項8】
請求項7の積層体を備える、抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有するマット。
【請求項9】
(a)基材層を準備する工程、
(b)前記基材層の少なくとも一方の面に粘着層を積層する工程
を含む積層フィルムの製造方法であって、
前記粘着層が、該粘着層100質量部に対して1~15質量部の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を含み、
前記粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が0.7~1.4である、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物やウイルスの飛散および増殖を防止する粘着抗菌層を備える積層フィルムおよびその製造方法、ならびに前記積層フィルムを備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生の観点から、細菌や菌類等の微生物、ウイルス等を除去および増殖防止するために様々な試みがなされている。近年では、様々な微生物やウイルスによる生活環境や医療環境の汚染が大きな問題として取り上げられている。中でも、医療施設では、外来者による微生物やウイルスの持ち込みに伴う院内感染により、入院患者や他の外来患者等に深刻な悪影響をもたらす場合がある。
【0003】
このような外来者による微生物やウイルスの持ち込みを防止する技術も様々に研究されており、粘着性を有するフィルムや該フィルムを備えるマット等を用いて外来者の身体や着用物の表面に付着した微生物やウイルスを粘着させて除去する技術が開発されている。
【0004】
しかしながら、このような粘着性を有するフィルムは長期にわたり使用すると粘着性が低下し、その結果、微生物やウイルスを粘着させて除去することができなくなったり、いったんは粘着させた微生物やウイルスがフィルムから剥離し、飛散したりするという性能の低下の問題があった。また、フィルムに微生物やウイルスを粘着させて除去した場合であっても、粘着させた微生物やウイルスがフィルム上で増殖する恐れがあるという問題もあった。また、このような粘着性を有するフィルムを積層することにより、1~数回の使用後に使用済みのフィルムを剥がして新たなフィルムに換えることができる積層体も存在するが、使用済みのフィルムを剥がす際の振動や破断等により、いったんは粘着させた微生物やウイルスがフィルムから剥離し、飛散することがあり、上記の問題を十分に解決し得るものではなかった。
【0005】
また、殺菌性の光触媒酸化チタン微粒子を含む繊維を有する粘着剤層を備えるシートが知られているが(例えば、特許文献1)、光触媒酸化チタン微粒子は光に依存して抗菌性を発揮するため、使用する場所や時間帯が制限されるという問題があった。
【0006】
このような状況下、微生物やウイルスを十分に粘着・除去することができ、かつ、それらが飛散および増殖を抑制することができる除菌性、抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つの機能を有する部材が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
本発明の目的は、微生物やウイルスの高い除去性を有し、かつ、それらの飛散および増殖が抑制された除菌性、抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つの機能を有する積層フィルムを提供することにある。
【0009】
今般、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、基材層と該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムにおいて、粘着層に、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を配合し、粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値を特定の数値範囲とすることにより、積層フィルムに微生物やウイルスの高い除去性および増殖の抑制性を付与することができるとの知見を得た。また、本発明者らは、このような積層フィルムを複数積層した積層体において、使用済みの積層フィルムを剥離して新たなフィルムに換える場合に、その振動や破断を抑制することができ、その結果、いったんは積層フィルムに粘着されて除去された微生物やウイルスがフィルムから剥離・飛散することを抑制できるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0010】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムであって、
前記粘着層が、該粘着層100質量部に対して1~15質量部の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を含み、
前記粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が0.7~1.4である、前記積層フィルム。
[2]前記粘着層の粘着力が0.5~3.5N/25mmである、[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記粘着層の自背面剥離力が1.0~4.0N/25mmである、[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記抗菌剤が銀系抗菌剤を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[5]前記粘着層の厚さが1~10μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]前記抗菌剤の粒子径が0.5~2.5μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルムを複数備える、積層体。
[8][7]の積層体を備える、抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有するマット。
[9](a)基材層を準備する工程、
(b)前記基材層の少なくとも一方の面に粘着層を積層する工程
を含む積層フィルムの製造方法であって、
前記粘着層が、該粘着層100質量部に対して1~15質量部の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を含み、
前記粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が0.7~1.4である、前記製造方法。
【0011】
本発明によれば、基材層と該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムにおいて、粘着層に特定の量の、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤およびアンモニウム系抗菌剤からなる群から選択される少なくとも一種の抗菌剤を配合し、粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値を特定の数値範囲とすることにより、積層フィルムに微生物やウイルスの高い除去性および増殖の抑制性を付与することができる。また、本発明によれば、このような積層フィルムを複数積層した積層体において、使用済みの積層フィルムを剥離して新たなフィルムに換える場合に、その振動や破断を抑制することができ、その結果、いったんは積層フィルムに粘着されて除去された微生物やウイルスがフィルムから剥離・飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、基材層と該基材層の一方の面に設けられた粘着層とを有する本発明の積層フィルムの一実施形態を示した断面模式図である。
【
図2】
図2は、基材層と該基材層の一方の面に設けられた粘着層とを有し、基材層と粘着層との間にプライマー層をさらに有する本発明の積層フィルムの一実施形態を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、基材層と該基材層の一方の面に設けられた粘着層とを有する本発明の積層フィルムを複数備える本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
【発明の具体的説明】
【0013】
積層フィルム
本発明の積層フィルムを、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は、それぞれ本発明の積層フィルムの一実施形態を示した断面模式図である。本発明の積層フィルム1は、基材層10と、基材層10の少なくとも一方の面に設けられた粘着層11とを備えている。すなわち、本発明の積層フィルム1は、
図1に示すように、基材層10の一方の面に粘着層11を備えていてもよく、また、
図2に示すように、本発明の積層フィルム1は、基材層10と粘着層11との間にプライマー層12を備えていてもよい。なお、本発明の積層フィルムは、薄い膜状のもの全般を指し、一般にフィルム、シート、膜、箔等(以下、「フィルム等」ともいう)と呼ばれるものが包含される。本発明の積層フィルム1は複数を積層させて積層体とすることもできる。
【0014】
基材層10と粘着層11とを積層する方法としては、積層体を成形する際に通常用いられる方法を用いることができる。かかる成形方法としては、例えば、積層フィルム1を構成する基材層10および粘着層11を予め別々のフィルム等として成形した後に各層をなすフィルム等を接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一工程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また、基材層10と粘着層11とを積層する別の方法としては、積層フィルム1を構成する基材層10を予めシート等として成形した後に、該基材層10のフィルム等の表面に粘着剤を塗工することにより粘着層11を成形する方法が挙げられる。このような粘着剤の塗工には、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビーアコーター等が用いられる。
【0015】
本発明の積層フィルム1の厚さは、積層フィルムの用途および要求される品質レベルにより適宜設定することができるが、一般的には成形性、取り扱い性、強度、製造コスト等の観点から、好ましくは25~100μm、より好ましくは30~80μm、より一層好ましくは40~70μmである。特に、積層フィルム1の厚さが小さすぎると強度が不足し、積層フィルム1を積層して積層体として用いる場合、積層フィルム1を剥がす際に破断する恐れがあり、それにより、いったんは積層フィルム1に粘着されて除去された微生物やウイルス等が剥離し、飛散する恐れがある。一方、積層フィルム1の厚さが大きすぎると成形、取り扱いがしづらくなり、製造コストが増大する。
【0016】
以下、本発明の積層フィルムを構成する各層について具体的に説明する。
[基材層]
基材層10は、積層フィルム1の形態の維持、物理的な強度の確保等の基材の役割を担うものである。基材層10は樹脂を含んでなる。基材層10の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、フィルム、シート、膜、箔等の形態とすることができる。
【0017】
基材層10を構成する樹脂は熱可塑性樹脂を含み、好ましくは熱可塑性樹脂のみを含む。基材層10を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、基材層10は単層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよいが、好ましくは単層で構成される。
【0018】
好ましい実施形態によれば、基材層10を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでなる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン・シクロオレフィン・コポリマー樹脂(環状オレフィンコポリマー)が用いられる。これらのうち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0019】
好ましい実施形態によれば、基材層10は、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を単独で含む。ポリエチレン樹脂を構成するポリエチレンとしては、その密度によらず、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれのポリエチレンも用いることができる。
【0020】
基材層10の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、成形性、取り扱い性、強度、製造コスト等の観点から、好ましくは20~100μm、より好ましくは30~80μm、より一層好ましくは40~70μmである。
【0021】
[粘着層]
粘着層11は、上記した基材層10の少なくとも一方の面に設けられて、積層フィルム1の粘着層11が設けられた側の面において、微生物やウイルス等を接着させることが可能となる。
【0022】
粘着層11を構成する成分は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ニトリル―ブタジエン共重合体系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ウレタン樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル系粘着剤が用いられる。
【0023】
粘着層11の粘着力は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、好ましくは0.5~3.5N/25mm、より好ましくは1.0~2.0N/25mm、より一層好ましくは1.0~1.8N/25mm、特に好ましくは1.1~1.7N/25mmとすることができる。粘着層11の粘着力が大きすぎると、本発明の積層フィルム1を積層して積層体として用いる場合、積層体を構成する積層フィルム1の粘着層11と、微生物やウイルス等を除去する対象との粘着が強い場合(例えば、対象が積層体を踏んで通過する等の場合)、対象と粘着した積層フィルム1が対象から適切に離れず、その結果、積層体を構成する複数の積層フィルム1間に浮き(分離)が発生する恐れがある。一方、粘着層11の粘着力が小さすぎると、対象と接触させても十分に微生物やウイルス等を粘着して除去することができない恐れがある。
【0024】
粘着層11の粘着力は、例えば、日本産業規格JIS Z 0237-2000 粘着テープ・粘着シート試験方法に従う剥離試験によって測定される。すなわち、積層フィルム1を幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を得、該試験片を2kgのローラーを用いてステンレス製板SUS280に貼着し、常温で20分間静置した後、常温で、引張り試験機を用いて剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、測定される剥離強度を粘着力とする。
【0025】
粘着層11の自背面剥離力、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、好ましくは1.0~4.0N/25mm、より好ましくは1.0~3.0N/25mm、より一層好ましくは1.0~2.5N/25mm、特に層好ましくは1.1~2.0N/25mmとすることができる。粘着層11の自背面剥離力が大きすぎると、本発明の積層フィルム1を積層して積層体として用いる場合、使用済みの積層フィルム1を積層体から剥がして新たな積層フィルム1に換える際に、使用済みの積層フィルム1が剥がれにくくなり、場合によっては破断する恐れがある。このような場合、使用済みの積層フィルム1に粘着されて除去された微生物やウイルス等が剥離し、飛散する恐れがある。一方、粘着層11の自背面剥離力が小さすぎると、積層体の使用中に積層フィルム1が積層体から容易に剥がれる恐れがある。このような場合、例えば、対象が積層体を踏んで通過するような使用方法では、対象に積層フィルム1が付着する恐れがある。例えば、対象が人の場合には積層フィルム1が足元に付着して躓きや転倒の危険性を生じ得る。また、対象が台車やカート等の場合には、その車輪に積層フィルム1が付着したり巻き込まれたりして転倒の危険性を生じ得る。
【0026】
粘着層11の自背面剥離力は、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、積層フィルム1を積層した積層体を幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を得、常温で、引張り試験機を用いて剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離し、測定される剥離強度を自背面剥離力とする。
【0027】
本発明の積層フィルム1は、上述した粘着層11の粘着力および自背面剥離力を特定の関係とすることにより、上述した問題点を解決するものである。具体的には、本発明の積層フィルム1の粘着層11は、自背面剥離力に対する粘着力の比(粘着力/自背面剥離力)の値が0.7~1.4である。自背面剥離力に対する粘着力の比の値は、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.8~1.2、より一層好ましくは0.9~1.2である。本発明の積層フィルム1は、粘着層11の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が上記の範囲を満たすことにより、上述したような問題を引き起こすことなく粘着層11に微生物やウイルス等を十分に粘着させて除去することができる。
【0028】
粘着層11の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、成形性、取り扱い性、強度、製造コスト等の観点から、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~8μm、より一層好ましくは4~7μmである。
【0029】
粘着層11は抗菌成分である抗菌剤を含む。積層フィルム1は、抗菌剤を含む粘着層11を備えることにより抗菌作用を奏する。本発明の積層フィルム1は、このような抗菌作用を奏する粘着層11を備えることにより、粘着層11に粘着されて除去された微生物やウイルス等の増殖を防止することができる。その結果、特に、本発明の積層フィルム1を積層して積層体として用いる場合、使用済みの積層フィルムを積層体から剥がして新たな積層フィルム1に換える際に、使用済みの積層フィルム1から活性を有する(生きている)微生物やウイルスの飛散を防止することができる。
【0030】
粘着層11に含まれる抗菌剤としては、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤、アンモニウム系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態において、粘着層11は銀系抗菌剤を含む。
【0031】
銀系抗菌剤としては、銀(銀原子)が含まれていれば特に限定されることなく用いることができる。また、銀の形態も特に限定されず、例えば、金属銀、銀イオン、銀塩(銀錯体を含む)等の形態が挙げられる。なお、本明細書において、銀錯体は銀塩の範囲に包含される。
【0032】
銀塩としては、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ素銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis-1,5-シクロオクタジエン)-1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7-ジメチル-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-4,6-オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン酸銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロホウ酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、バナジン酸銀が挙げられる。
【0033】
銀錯体としては、例えば、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、イミダゾール銀錯体が挙げられる。
【0034】
銀系抗菌剤としては、例えば、上記銀塩(銀錯体)等の有機系の抗菌剤、後述する担体を含む無機系の抗菌剤が挙げられる。これらのうち、より優れた抗菌作用を奏するという点で、銀系抗菌剤は無機系の抗菌剤が好ましく、担体と担体上に担持された銀とを含む銀担持担体がより好ましい。
【0035】
銀を担持する担体としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されず、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸チタン等のリン酸塩、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイトおよびガラス(水溶性ガラスを含む)等が挙げられる。これらのうち、特に優れた抗菌作用を奏するという点で、リン酸塩カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ゼオライトおよびガラスが好ましい。これらの担体は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
銅系抗菌剤としては、銅(銅原子)が含まれていれば特に限定されることなく用いることができる。また銅の形態も特に限定されず、例えば、金属銅、銅イオン、銅塩(銅錯体を含む)等の形態が挙げられる。なお、本明細書において、銅錯体は銅塩の範囲に包含される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、銅系抗菌剤は一価の銅化合物を含む。一価の銅化合物の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ナノ粒子等の微粒子等の形態とすることができる。好ましい実施形態によれば、一価の銅化合物はナノ粒子の形態で用いられる。
【0038】
亜鉛系抗菌剤としては、亜鉛(亜鉛原子)が含まれていれば特に限定されることなく用いることができる。また亜鉛の形態も特に限定されず、例えば、金属亜鉛、亜鉛イオン、亜鉛塩(亜鉛錯体を含む)等の形態が挙げられる。なお、本明細書において、亜鉛錯体は亜鉛塩の範囲に包含される。
【0039】
リン酸塩系抗菌剤としては、リン酸塩系基材(例えば、リン酸カルシウム、水酸アパタイト、非晶質リン酸カルシウム、ケイ酸アパタイト、リン酸水素チタン水和物、リン酸水素ジルコニウム水和物、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸ジルコニウム等)に、抗菌性の金属、金属イオン(例えば、上記の銀、銅、亜鉛、それらのイオン等)が担持された抗菌剤が挙げられる。
【0040】
アンモニウム系抗菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の、第四級アンモニウムの塩が挙げられる。
【0041】
抗菌剤の含有量は粘着層100重量部に対して1~15質量部であり、好ましくは1.5~12質量部、より好ましくは1.8~12質量部、より一層好ましくは2~10重量部とすることができる。抗菌剤の含有量が上記の範囲を満たすことにより、積層フィルム1が十分な抗菌作用を奏し、一方で粘着層11の表面における凹凸の発生が抑制され、良好な外観を有するフィルムとなり得る。
【0042】
抗菌剤の粒子径は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましくは0.5~2.5μm、より好ましくは0.6~2.3μm、より一層好ましくは0.5~2.0μmとすることができる。
【0043】
粘着層11が奏する「抗菌作用」には、粘着層11に微生物が付着した場合に、その微生物自体を不活性化する作用、およびその微生物が増殖することを阻害する作用が包含される。本明細書において抗菌作用の対象となる微生物は、抗菌剤により不活性化および/または増殖阻害されるものであれば特に限定されず、例えば、細菌、菌類、微細藻類、原生動物、ウイルス等が挙げられる。
【0044】
細菌としては、例えば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌(Shigella dysenteriae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、チフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ菌(Salmonella enteritidis)、ペスト菌(Yersinia. pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、セラチア菌(Serratia marcescens)、プロテウス菌(Proteus, Providencia, Morganella)、シトロバクター菌(Citrobacter freundii)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セパシア菌(Burkholderia(Pseudomonas) cepacia)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、淋菌(Niserria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Niserria meningitides)カタル球菌(Moraxella(Branhamella) catarrhalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、バクテロイド属菌等の細菌(Bacteroides fragilis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)、古草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphthriae)、ノルカジア菌(Nocardia属菌)、腸内細菌エンテロバクテリア(Enterobacter cloacae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、アシネトバクテリア菌(Acinetobacter calcoaceticus)、腸球菌(Enterococcus属菌)、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant Enterococcus、VRE)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、カンピロバクター(Campylobacter jejuni, Campylobacter coli)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumonia)、性行為感染症クラミジア(Chlamydia trachomatis)、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythensis)等が挙げられる。
【0045】
菌類としては、例えば、白癬菌(Trichophyton rubrum, Trichophyton mentagrophytes)、アスペルギルス菌(Aspergillus fumigatus)、カンジダ菌(Candida albicans)、クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)が挙げられる。
【0046】
ウイルスとしては、ウイルスが有するゲノムの種類(DNAであるかRNAであるか、また、一本鎖であるか二本鎖であるか)、エンベロープの有無等によらず、様々なウイルスが抗菌作用の対象となり得る。ウイルスとしては、例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型、C型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型、C型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルウス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘、帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルスが挙げられる。
【0047】
粘着層11は、微生物の他に、微生物の代謝、増殖に資する物質(炭水化物、タンパク質、脂質、核酸等)が付着した場合であっても、抗菌作用を奏し得る。すなわち、粘着層11は、微生物を含む体液(血液、唾液、汗等)が付着した場合であっても、該体液に含まれる微生物を不活性化し、その増殖を阻害する作用を奏し得る。
【0048】
粘着層11は、本発明の効果が奏されるのを妨げない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑沢剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂をシート状またはフィルム状に成形する際に、粘着層11の他の構成成分と混合して押出成形するか、または予めこれらの添加剤を粘着層11の他の構成成分と混合したマスターバッチを、押出成形の際にさらに抗菌層10の他の構成成分と混合して成形することで抗菌層10に配合することができる。
【0049】
基材層10と粘着層11との接着性を向上させるために、基材層10および/または粘着層1には、予めコロナ放電処理または化学処理等が施すことにより、そのぬれ性(ぬれ張力)を向上させてもよい。
【0050】
基材層10と粘着層11との間には、プライマー層を塗工して形成することもできる。プライマー層を塗工して形成することにより、基材層10と粘着層11との良好な接着性を実現することができ、基材層10と粘着層11とを接着させるに当たり、コロナ放電処理によりぬれ性(ぬれ張力)を向上させる必要がなくなる。その結果、設備等の要因によりコロナ放電処理を行うのが困難な場合であっても本発明の積層フィルムを製造することが可能となる。プライマー層を構成する成分としては、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、接着樹脂、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0051】
プライマー層を構成する接着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン-アクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等)、ポリビニルアセタール樹脂(例えば、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等)、セルロース樹脂が挙げられる。これらの接着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、後述するゴム系粘着剤と組み合わせて用いてもよい。
【0052】
プライマー層を構成するゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタン樹脂が挙げられる。これらのゴム系粘着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述した接着樹脂と組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の積層フィルムは単独で用いることもでき、また、複数の積層フィルムを積層させた積層体としても用いることができる。このような積層フィルムを複数積層して積層体とすることにより、使用済みの積層フィルムを剥離して新たなフィルムに換えることが可能となり、その結果、微生物やウイルスの高い除去性、飛散および増殖の抑制性が奏されるだけでなく、継続的に使用することが可能となる。
【0054】
好ましい実施形態において、複数の積層フィルムを積層させて積層体とする場合、積層フィルムの基材層側に別の積層フィルムの粘着層が接着するように積層される。積層体を構成する積層フィルムの数は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましくは20~100枚、より好ましくは30~80枚、より一層好ましくは40~60枚とすることができる。
【0055】
本発明の積層フィルムまたは積層体は、他の部材と組み合わせて用いることもできる。具体的には、本発明の積層フィルムまたは積層体とゴム等のマットシートとを組み合わせた粘着マットとすることができる。前記粘着マットにおいては、本発明の積層フィルムまたは積層体の基材層側をマットシートの表面に接着させ、積層フィルムまたは積層体の粘着層が粘着マット表面に露出するように配置される。
【0056】
積層フィルムの製造方法
本発明の一つの態様によれば、微生物やウイルスの高い除去性、飛散および増殖の抑制性を備える積層フィルムの製造方法が提供される。本発明の製造方法は、基材層と該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗菌性および抗ウイルス性の少なくとも一つを有する粘着層とを備える積層フィルムにおいて、粘着層に抗菌剤を配合し、粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比の値が特定の数値範囲となるように調整することを含む。
【0057】
粘着層に含まれる抗菌剤としては、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、リン酸塩系抗菌剤、アンモニウム系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤は1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態において、粘着層は銀系抗菌剤を含む。
【0058】
積層フィルムを構成する各層に含まれる成分、その含有量等は上記の本発明の積層フィルムについて説明したのと同様とすることができる。
【0059】
好ましい実施形態によれば、前記粘着層の粘着力が0.5~3.5N/25mmとなるように調整される。
【0060】
好ましい実施形態によれば、前記粘着層の自背面剥離力が1.0~4.0N/25mmとなるように調整される。
【0061】
本発明の製造方法によれば、積層フィルムは、従来公知の多層フィルム成形方法に従って製造することができる。かかる成形方法としては、例えば、積層フィルムを構成する基材層および粘着層を予め別々のフィルム、シート等として成形した後に各層をなすフィルム、シート等を接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一工程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また、別の成形方法としては、積層フィルムを構成する基材層を予めフィルム、シート等として成形した後に、該基材層のフィルム、シート等の表面に抗菌剤を含む粘着剤を塗工することにより粘着層を成形する方法が挙げられる。このような粘着剤の塗工には、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等が用いられる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本実施例は、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図するものではない。また、本明細書において、特段の記載がない限り、測定値の単位および測定方法はJIS(日本産業規格)による規定に従うものとする。
【0063】
積層フィルムの作製
基材層を構成する樹脂として、ポリエチレン樹脂(L405、住友化学株式会社製)を準備した。ポリエチレン樹脂を押出成形して厚さ50μmの基材層フィルム(1)を得た。また、基材層フィルム(1)の一方の面にコロナ放電処理を施して、該面のぬれ性(ぬれ張力)を向上させた基材層フィルム(2)を得た。また、基材層フィルム(1)の一方の面に離型処理を施した基材層フィルム(3)を準備した。さらに、粘着層を構成する粘着剤として、粘着剤(N-2031、三菱ケミカル株式会社製)を準備した。さらに、粘着層を構成する銀系抗菌剤として、銀系抗菌剤準備した。粘着剤と銀系抗菌剤とを混合して混合物を得、各基材層フィルムの一方の表面に混合物を塗工することにより粘着層を形成し、実施例1~4および比較例1~4の各積層フィルムを得た。なお、各実施例および比較例において、各基材層フィルムの表面に塗工される混合物は、粘着層100質量部に対する銀系抗菌剤の含有量がそれぞれ下記表1に示される量となるように調整されたものである。また、いずれの積層フィルムも、粘着層の厚さが6μmとなるように調整した。得られた各積層フィルムについて、粘着層の粘着力、自背面剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
抗菌性の評価
各積層フィルムの抗菌性を、以下のようにして測定および評価した。すなわち、各積層フィルムを縦3cm×横3.3cmとなるように切断して試験片を得、エンテロバクター属細菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌および緑膿菌の4種類の細菌が混合された細菌液50mlに各試験片を浸し、試験片同士が接着しないようにしながら、35℃の条件下で24時間撹拌および培養をした。24時間後、試験片を浸した各細菌液中の生菌数を計測した。下記式に基づいて各試験片の活菌活性値を算出し、算出された活菌活性値が2.0以上である場合に、積層体は微生物に対して十分な抗菌性を有すると判定した。結果を表1に示す。
【数1】
【0066】
表1の結果から、実施例1~4の積層フィルムでは、十分な抗菌性が奏されることが示された。一方、銀系抗菌剤を含有しない比較例1の積層フィルム、または銀系抗菌剤の含有量が少ない比較例4の積層フィルムでは、いずれも十分な抗菌性が奏されないことが示された。
【0067】
粘着力の測定
各積層フィルムの粘着力を、日本産業規格JIS Z 0237-2000 粘着テープ・粘着シート試験方法に従う剥離試験によって測定される。すなわち、各積層フィルム1を幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を得、該試験片を2kgのローラーを用いてステンレス製板SUS280に貼着し、常温で20分間静置した後、常温で、引張り試験機を用いて剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離した際に測定される剥離強度を粘着力とした。結果を表1に示す。
【0068】
自背面剥離力の測定
各積層フィルムの自背面剥離力を、以下のようにして測定した。すなわち、各積層フィルムを積層した積層体を幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を得、常温で、引張り試験機を用いて剥離速度0.3m/分、剥離角度180度の条件で剥離した際に測定される剥離強度を自背面剥離力とした。結果を表1に示す。
【0069】
自背面剥離力に対する粘着力の比の値の算出
上記の方法によって測定された各積層フィルムの粘着力および自背面剥離力の数値に基づいて、各積層フィルムの自背面剥離力に対する粘着力の比(粘着力/自背面剥離力)の値を算出した。結果を表1に示す。
【0070】
微生物の飛散の有無の評価
実施例1~4の積層フィルムをそれぞれ積層させた各積層体において、積層フィルムを各積層体から剥離したところ、いずれの積層体においても積層フィルムが破断することなくスムーズに剥離できた。この結果は、自背面剥離力に対する粘着力の比の値が特定の数値範囲(0.7~1.4)の範囲を満たす場合には、積層フィルムに微生物やウイルスが十分に粘着されて除去することができ、かつ積層フィルムの剥離時の振動や破断が十分に抑制され、積層フィルムからの微生物やウイルスの剥離・飛散が十分に防止され得ることを示すものである。表1中、「〇」は、微生物やウイルスの剥離・飛散の抑制が十分に抑制され得ることを示し、「×」は、微生物やウイルスの剥離・飛散の抑制が十分に抑制され得ないことを示す。
【0071】
積層フィルムの剥がれの有無の評価
各積層フィルムを積層体とした場合の、積層フィルムの剥がれの有無を評価した。すなわち、各積層フィルムの積層体を、積層体を構成する積層フィルムの粘着層が鉛直上方に位置するように平らな地面に設置し、該積層体の積層フィルムの粘着層の表面上で、底部(靴底)に付着物がない靴を履いて足踏みして、積層フィルムの剥がれの有無を評価した(条件1)。さらに、積層体の積層フィルムの粘着層の表面上で、60kgのおもりを積載した台車を1往復させて、積層フィルムの剥がれの有無を評価した(条件2)。表1中、「〇」は、条件1および2のいずれにおいても積層フィルムの剥がれがなかったことを示し、「×」は、条件1および2の少なくとも一方において積層フィルムの剥がれがあったことを示す。
【0072】
上述した「抗菌性」、「積層フィルムの剥がれの有無」および「微生物の飛散の有無」の各項目の評価結果に基づいて、総合評価を行った。上記の各項目のすべてについて良好な結果(評価結果「〇」)である場合には総合評価を「〇」とし、1つ以上の項目について不良な結果(評価項目「×」)である場合には総合評価を「×」とした。表1の結果から、粘着層が特定の量(粘着層100質量部に対して1~15質量部)の銀系抗菌剤を含み、粘着層の自背面剥離力に対する粘着力の比が特定の値(0.7~1.4)である実施例1~4の積層フィルムは、総合評価が「〇」であることが示された。