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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181122
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】空中入力装置、空中入力表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221130BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20221130BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20221130BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/042 485
G06F3/041 490
G02B5/32
G09F9/00 366A
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087969
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】水野 剛秀
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知哉
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 茉里
(72)【発明者】
【氏名】山内 豪
【テーマコード(参考)】
2H249
5G435
【Fターム(参考)】
2H249CA05
2H249CA08
2H249CA17
5G435AA00
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE49
5G435FF03
5G435GG01
5G435GG03
(57)【要約】
【課題】非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置を既設の表示装置に容易且つ省スペースで設ける。
【解決手段】空中入力装置10は、照明部材30と、ホログラムシート50と、位置検出センサ13と、を備える。ホログラムシート50は、照明部材30からの光によって記録されている像58を結像面57に結像する。位置検出センサ13は、結像面57に対応した検出位置13aに感度を有する。照明部材30とホログラムシート50との距離は、前記ホログラムシートが前記照明部材から光を照射される方向を前記ホログラムシートのシート面に投影した方向である第1方向における結像面の長さ以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明部材と、
前記照明部材からの光によって記録されている像を結像面に結像するホログラムシートと、
前記結像面に対応した検出位置に感度を有する位置検出センサと、
を備え、
前記検出位置は、前記ホログラムシートから離間しており、
前記照明部材と前記ホログラムシートとの距離は、前記ホログラムシートが前記照明部材から光を照射される方向を前記ホログラムシートのシート面に投影した方向である第1方向における前記結像面の長さ以下である、空中入力装置。
【請求項2】
第2照明部材と、
前記第2照明部材からの光によって記録されている像を第2結像面に結像する第2ホログラムシートと、をさらに備え、
前記第2照明部材は、前記ホログラムシートに対して前記照明部材とは異なる方向に配置されている、請求項1に記載の空中入力装置。
【請求項3】
前記照明部材及び前記第2照明部材は、前記第1方向において互いに対向する位置に設けられており、
前記第2ホログラムシートは、前記ホログラムシートと前記第1方向に隣り合って配置されている、請求項2に記載の空中入力装置。
【請求項4】
前記ホログラムシートは、前記第2照明部材より前記照明部材に近い側に配置されており、
前記第2ホログラムシートは、前記照明部材より前記第2照明部材に近い側に配置されている、請求項3に記載の空中入力装置。
【請求項5】
前記第2ホログラムシートは、前記ホログラムシートに積層されている、請求項2に記載の空中入力装置。
【請求項6】
前記照明部材は、前記ホログラムシートのシート面に沿った方向に並んだ複数の光源を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項7】
複数の前記光源は、別個に光の出射を制御される、請求項6に記載の空中入力装置。
【請求項8】
前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられたレンズと、を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項9】
前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられたプリズムと、を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項10】
前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられた光透過方向制御フィルムと、を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項11】
前記照明部材は、光源と、前記光源を前記ホログラムシートの側とは逆側から覆う遮蔽部材を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項12】
前記検出位置は、前記ホログラムシートのシート面への法線方向において前記照明部材と前記ホログラムシートとの間に位置している、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項13】
前記ホログラムシートに記録されている前記像の大きさは、前記照明部材から離間するにつれて大きくなっている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項14】
前記照明部材からの光を前記ホログラムシートの方へ反射する反射部材をさらに備える、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の空中入力装置。
【請求項15】
画像を表示する表示面を有する表示装置と、
前記ホログラムシートが前記表示面上に設けられた請求項1乃至14のいずれか一項に記載の空中入力装置と、を備える、空中入力表示装置。
【請求項16】
前記照明部材を前記表示面から離間して支持可能な支持体をさらに備える、請求項15に記載の空中入力表示装置。
【請求項17】
前記位置検出センサを前記表示面から離間して支持可能な支持体をさらに備える、請求項16に記載の空中入力表示装置。
【請求項18】
前記像は、周期構造を含み、
前記表示面に表示された画像に含まれる絵柄の大きさは、前記像の前記周期構造のピッチより大きい、請求項15乃至17のいずれか一項に記載の空中入力表示装置。
【請求項19】
前記像は、前記表示面に表示された画像に含まれる絵柄に重なる位置に結像される、請求項15乃至18のいずれか一項に記載の空中入力表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中入力装置及び空中入力装置を有する空中入力表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示面に表示されている情報に基づいて、情報を入力する入力装置が知られている。このような入力装置として、例えば、表示面に設けられる接触型の位置検出センサ、いわゆるタッチパネルセンサが知られている。
【0003】
現在、ウイルス等の接触感染を抑制するために、非接触型の位置検出センサが求められている。表示面等に接触することなく位置を検出することができるセンサとして、赤外線センサ等が知られている。非接触型の位置検出センサによれば、指等の物体を検出可能な位置に配置することで、物体が配置された位置を検出することができる。このような非接触型の位置検出センサを表示装置の表示面から離間した位置において物体を検出可能なように配置することで、検出された位置に基づいた情報が入力される。したがって、利用者は、表示面に表示されている情報について、表示面に接触することなく、情報を入力することができる。
【0004】
このような非接触型の位置検出センサを、既設の表示装置に設けることが考えられている。既設の表示装置を利用することで、表示面に表示されている情報に基づいて非接触で情報を入力可能な入力装置を、低コストで実現することができる。ところが、当該装置の利用者は、非接触型の位置検出センサが感度を有する検出位置が不可視であるために、当該検出位置を適切に認識できないことがある。このため、適切に情報を入力することができないことや、意図せずに表示面に接触してしまうことが起こりえる。
【0005】
また、このような非接触型の位置検出センサと合わせて、例えば特許文献1に記載されているような、空中に像を結像する空中結像装置を設けることが考えられている。空中結像装置と非接触型の位置検出センサとの組み合わせにおいて、空中結像装置によって結像される像の位置は、非接触型の位置検出センサが感度を有する位置に対応している。利用者は、空中結像装置によって結像した像を観察することで、非接触型の位置検出センサが感度を有する位置を認識することができる。したがって、表示面に接触することなく、適切に情報を入力することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/131128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような空中結像装置は、結像のための照明部材と光学素子との位置関係や利用者の観察位置等により、光学的な配置に制約がある。このため、このような空中結像装置を既設の表示装置に設けることは困難である。とりわけ、既設の表示装置に空中結像装置を省スペースで設けることは困難である。すなわち、表示面に接触することなく適切に情報を入力することができる装置を、既設の表示装置を利用して低コスト且つ省スペースで実現することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置を既設の表示装置に容易且つ省スペースで設けることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空中入力装置は、
照明部材と、
前記照明部材からの光によって記録されている像を結像面に結像するホログラムシートと、
前記結像面に対応した検出位置に感度を有する位置検出センサと、を備え、
前記検出位置は、前記ホログラムシートから離間しており、
前記照明部材と前記ホログラムシートとの間の距離は、前記ホログラムシートが前記照明部材から光を照射される方向を前記ホログラムシートのシート面に投影した方向である第1方向における前記結像面の長さ以下である。
【0010】
本発明の空中入力装置は、
第2照明部材と、
前記第2照明部材からの光によって記録されている像を第2結像面に結像する第2ホログラムシートと、をさらに備え、
前記第2照明部材は、前記ホログラムシートに対して前記照明部材とは異なる方向に配置されていてもよい。
【0011】
本発明の空中入力装置において、
前記照明部材及び前記第2照明部材は、前記第1方向において互いに対向する位置に設けられており、
前記第2ホログラムシートは、前記ホログラムシートと前記第1方向に隣り合って配置されていてもよい。
【0012】
本発明の空中入力装置において、
前記ホログラムシートは、前記第2照明部材より前記照明部材に近い側に配置されており、
前記第2ホログラムシートは、前記照明部材より前記第2照明部材に近い側に配置されていてもよい。
【0013】
本発明の空中入力装置において、前記第2ホログラムシートは、前記ホログラムシートに積層されていてもよい。
【0014】
本発明の空中入力装置において、前記照明部材は、前記ホログラムシートのシート面に沿った方向に並んだ複数の光源を含んでもよい。
【0015】
本発明の空中入力装置において、複数の前記光源は、別個に光の出射を制御されてもよい。
【0016】
本発明の空中入力装置において、前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられたレンズと、を含んでもよい。
【0017】
本発明の空中入力装置において、前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられたプリズムと、を含んでもよい。
【0018】
本発明の空中入力装置において、前記照明部材は、光源と、前記光源と前記ホログラムシートとの間に設けられた光透過方向制御フィルムと、を含んでもよい。
【0019】
本発明の空中入力装置において、前記照明部材は、光源と、前記光源を前記ホログラムシートの側とは逆側から覆う遮蔽部材を含んでもよい。
【0020】
本発明の空中入力装置において、前記検出位置は、前記ホログラムシートのシート面への法線方向において前記照明部材と前記ホログラムシートとの間に位置していてもよい。
【0021】
本発明の空中入力装置において、前記ホログラムシートに記録されている前記像の大きさは、前記照明部材から離間するにつれて大きくなっていてもよい。
【0022】
本発明の空中入力装置は、前記照明部材からの光を前記ホログラムシートの方へ反射する反射部材をさらに備えてもよい。
【0023】
本発明の空中入力表示装置は、
画像を表示する表示面を有する表示装置と、
前記ホログラムシートが前記表示面上に設けられた空中入力装置を備える。
【0024】
本発明の空中入力表示装置は、前記照明部材を前記表示面から離間して支持可能な支持体をさらに備えてもよい。
【0025】
本発明の空中入力表示装置は、前記位置検出センサを前記表示面から離間して支持可能な支持体をさらに備えてもよい。
【0026】
本発明の空中入力表示装置において、
前記像は、周期構造を含み、
前記表示面に表示された画像に含まれる絵柄の大きさは、前記像の前記周期構造のピッチより大きくてもよい。
【0027】
本発明の空中入力表示装置において、前記像は、前記表示面に表示された画像に含まれる絵柄に重なる位置に結像されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置を既設の表示装置に容易且つ省スペースで設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、空中入力表示装置を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、表示装置に表示される画像の一例を示す上面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、照明部材の側面図である。
図5図5は、照明部材の構成を説明するための図である。
図6図6は、空中結像装置によって結像される像の一例を示す上面図である。
図7図7は、ホログラムシートの構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、位置検出センサを説明するための斜視図である。
図9図9は、空中入力表示装置の上面図の一例である。
図10図10は、空中入力表示装置の上面図の他の例である。
図11図11は、図9のXI-XI線に沿った断面図である。
図12図12は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図13図13は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図14図14は、ホログラムの製造方法の一例を説明するための図である。
図15図15は、像が結像した状態の空中入力表示装置の一例を示す斜視図である。
図16図16は、像が結像した状態の空中入力表示装置の他の例を示す斜視図である。
図17図17は、空中入力装置の一変形例を説明するための図である。
図18図18は、空中入力装置の他の変形例を説明するための図である。
図19図19は、空中入力装置のさらに他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0031】
なお、「シート面」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。
【0032】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0033】
図1には、空中入力表示装置1の一例が示されている。図1に示されているように、空中入力表示装置1は、表示装置5と、支持体9と、空中入力装置10と、を有している。空中入力表示装置1は、表示装置5により画像を表示し、また空中入力装置10により空中に像を結像する。空中入力表示装置1の利用者は、表示装置5の表示面6に表示された画像と、表示面6から離間した位置に結像した像と、を同時に視認することができる。また、利用者は、空中入力表示装置1に情報を入力することができる。典型的には、空中入力表示装置1の利用者は、空中に結像した像の位置に指等の物体を配置することで、表示面6等に接触することなく、空中入力表示装置1に情報を入力することができる。例えば、空中入力表示装置1の利用者は、「はい」「いいえ」や「A」「B」「C」「D」等の複数の選択肢から1つを選択したという情報を入力することができる。
【0034】
表示装置5は、表示面6を有する。表示装置5は、表示面6に画像を表示することができる。表示面6に表示された画像は、空中入力表示装置1の利用者に観察され得る。表示装置5は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の任意の表示装置を用いることができる。このような表示装置5の表示面6は、典型的にはガラス面となっている。
【0035】
あるいは、表示装置5は、光を印刷が施された透明なフィルム等を透過させて画像を表示するものや、光の一部を遮光物によって遮光することで明暗による画像を表示するものであってもよい。この場合、表示装置5は、光を発する発光体と、表示する画像に対応した印刷が施された透明なフィルムや表示する画像に対応した形状の遮光物等といった所定のパターン部と、を含んでいる。透明なフィルムの表面や遮光物の非形成部が表示面6となる。発光体としては、所定のパターン部を透過する光の強度を均一にするために、例えば面状に光を発する面光源装置が用いられることが好ましい。
【0036】
図2には、表示装置5が表示面6に表示している画像の一例が示されている。画像は、絵柄7を含んでいる。図2に示されている例では、表示面6には、絵柄7として、4つの矩形の枠内にそれぞれA,B,C,Dの文字が表示されている。絵柄7は、空中入力表示装置1において入力される選択肢を示している。
【0037】
支持体9は、空中入力装置10の後述する照明部材30、第2照明部材40及び位置検出センサ13を支持する。支持体9により、照明部材30、第2照明部材40及び位置検出センサ13は、表示装置5の表示面6から離間した位置に支持されることができる。支持体9は、表示装置5の外枠に取り付けられている。支持体9は、連続的にまたは段階的に、照明部材30、第2照明部材40及び位置検出センサ13と表示面6との距離を調節することができる。
【0038】
空中入力装置10は、空中に像を結像し、像に対応した位置に指等の物体を配置することで情報を入力することができる。図3には、図1のIII-III線に沿った断面図が示されている。図3に示されているように、空中入力装置10は、表示装置5の表示面6の側に配置されている。空中入力装置10は、空中結像装置20と、位置検出センサ13と、を有している。空中入力装置10において、空中結像装置20が空中に像を結像し、また、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aにおける物体の存在を検出する。物体の存在を検出することにより、検出した位置の情報を入力することができる。また、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aは、空中結像装置20が像を結像する位置に対応している。
【0039】
図3に示すように、空中入力装置10の各構成要素は、表示装置5の表示面6の側に配置されている。このため、空中入力装置10は、既存の表示装置5に対して後付けで設置することができる。すなわち、既設の表示装置5に空中入力装置10が設けられることで、空中入力表示装置1として機能させることができる。特に、空中入力装置10は、ホログラムシート50及び第2ホログラムシート60が表示装置5の表示面6上に設けられるように配置されている。
【0040】
図3に示すように、空中結像装置20は、照明部材30と、第2照明部材40と、ホログラムシート50と、第2ホログラムシート60と、を有している。ホログラムシート50は、照明部材30からの光を照射されると、記録されている像58を結像面57に結像する。第2ホログラムシート60は、第2照明部材40からの光を照射されると、記録されている像68を結像面67に結像する。結像した像58,68は、利用者に観察される。なお、本明細書における「像」とは、ホログラムシートに記録された像と、結像面に結像された像と、の両方を意味する。
【0041】
以下、空中入力装置10及び空中結像装置20の各構成要素について説明する。
【0042】
照明部材30及び第2照明部材40は、空中入力装置10が結像する像の基になる光を照射する。照明部材30は、ホログラムシート50に光を照射し、第2照明部材40は、第2ホログラムシート60に光を照射する。照明部材30が照射する光は、ホログラムシート50に記録されている像を再生させる波長を含んでいる。同様に、第2照明部材40が照射する光は、第2ホログラムシート60に記録されている像を再生させる波長を含んでいる。第2照明部材40は、ホログラムシート50に対して照明部材30とは異なる方向に配置されている。具体的には、照明部材30及び第2照明部材40は、ホログラムシート50及び第2ホログラムシート60を介して第1方向d1に互いに対向する位置に設けられている。第1方向d1は、ホログラムシート50が照明部材30から光を照射される方向をホログラムシート50のシート面に投影した方向であり、第2ホログラムシート60が第2照明部材40から光を照射される方向を第2ホログラムシート60のシート面に投影した方向でもある。ホログラムシート50が照明部材30から光を照射される方向とは、照明部材30の光軸方向、言い換えると照明部材30から照射される光の輝度が最も高くなる方向である。ホログラムシート50のシート面に投影した方向とは、ホログラムシート50の法線方向ndから観察した際の方向である。
【0043】
図3に示されているように、照明部材30は、光源31と、光学部材35と、遮光部材39と、を含んでいる。同様に、第2照明部材40は、第2光源41と、第2光学部材45と、第2遮光部材49と、を有している。照明部材30と第2照明部材40とは、同一の構成となっている。以下、照明部材30の構成について説明するが、第2照明部材40も、同様の構成をとることができる。
【0044】
図4には、第1方向d1から観察した照明部材30の側面図が示されている。図4に示されているように、複数の光源31が、第1方向d1に非平行な第2方向d2に沿って並んでいる。第2方向d2は、ホログラムシート50のシート面に沿った方向であり、例えば第1方向d1に直交する方向である。言い換えると、ホログラムシート50は、第1方向d1及び第2方向d2に広がっている。光源31としては、例えばLEDライトを用いることができる。光源31が出射する光は、ホログラムシート50に記録されている像58を再生させる波長を含んでいる。複数の光源31は、図示しない外部の制御装置等によって、別個に光の出射を制御される。例えば、複数の光源31は、第2方向d2において1つおきに組となって光の出射が制御される。
【0045】
また、光学部材35が、光源31とホログラムシート50との間に位置している。図3及び図4に示されている例では、光源31に対面する位置に光学部材35が設けられている。光学部材35は、光源31からホログラムシート50に向かう光に対して光学的に作用する。図5には、光源31及び光学部材35の拡大図が示されている。図5に示されている例では、光学部材35は、レンズ35aと、プリズム35bと、光透過方向制御フィルム35cと、を含んでいる。ただし、図示された例に限らず、光学部材35は、レンズ35a、プリズム35b及び光透過方向制御フィルム35cのいずれかのみを含んでいてもよいし、任意の組み合わせを含んでいてもよい。あるいは、光学部材35は、他の要素を含んでいてもよい。
【0046】
レンズ35aは、光源31から拡散するように出射した光を屈折させて平行光にする。例えば、レンズ35aは、フレネルレンズ、シリンドリカルレンズ等である。プリズム35bは、光源31から出射した光をホログラムシート50に向かう方向に屈折させる。光透過方向制御フィルム35cは、光源31から出射した光のうち、ホログラムシート50に向かう光を透過させ、ホログラムシート50に向かう光以外の光を遮光する。典型的には、光透過方向制御フィルム35cは、ルーバーフィルムである。
【0047】
図3によく示されているように、遮光部材39は、光源31をホログラムシート50の側とは逆側から覆っている。遮光部材39は、光源31から出射した光のうち、ホログラムシート50とは逆方向に向かう光を遮光する。遮光部材39は、ホログラムシート50とは逆方向に向かう光を遮光しやすいよう、光源31及び光学部材35より第1方向d1に突出している。遮光部材39が光源31及び光学部材35から突出している長さは、例えば1mm以上10mm以下である。遮光部材39は、光を吸収しやすいよう、暗色、特に黒色であることが好ましい。
【0048】
ホログラムシート50は、所定の波長を含む光を照射されることによって記録されている像58をホログラムシート50から離間した結像面57に結像する。第2ホログラムシート60は、所定の波長を含む光を照射されることによって記録されている第2像68を第2ホログラムシート60から離間した第2結像面67に結像する。ホログラムシート50が像58を結像させる光の波長は、第2ホログラムシート60が第2像68を結像させる光の波長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。より詳しくは、ホログラムシート50、60は、光を回折することで入射した光を所定の位置に向かわせ、像58、68を結像面57、67に結像する。特に、図示されている例では、結像面57、67は、表示面6の正面に位置している。また、図示されている例では、ホログラムシート50、60は、照明部材30,40からの光が入射する側に像58、68を結像する。
【0049】
図3に示されているように、第2ホログラムシート60は、ホログラムシート50と第1方向d1に隣り合って配置されている。より詳しくは、ホログラムシート50は、第1方向d1において、第2照明部材40より照明部材30に近い側に配置されており、第2ホログラムシート60は、照明部材30より第2照明部材40に近い側に配置されている。ホログラムシート50と第2ホログラムシート60とは、シート面が同一の平面を画定するように配置されていることが好ましい。なお、ホログラムシート50と第2ホログラムシート60とが一体的に形成されていてもよい。
【0050】
ホログラムシート50は、照明部材30から光を照射されることで像58を結像面57に結像する。ホログラムシート50は、照明部材30の方向から照射された光によって像58を結像しやすいように形成されている。第2ホログラムシート60は、第2照明部材40から光を照射されることで第2像68を第2結像面67に結像する。第2ホログラムシート60は、第2照明部材40の方向から照射された光によって第2像68を結像しやすいように形成されている。ホログラムシート50が像58を結像しやすい光の照射方向と第2ホログラムシート60が第2像68を結像しやすい光の照射方向とは、互いに異なっていることが好ましい。
【0051】
ホログラムシート50、60を介して表示装置5の表示面6を観察可能なよう、ホログラムシート50、60の可視光透過率は、高いことが好ましい。具体的には、ホログラムシート50、60の可視光透過率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定することができる。
【0052】
図6には、ホログラムシート50に記録されている像58の具体的な一例が示されている。図6に示されている例では、像58は、ピッチpで周期的に配置された周期構造を含んでいる。ピッチpは、表示装置5のサイズにもよるが、例えば5mm以上50mm以下のである。図示された例では、周期構造は、複数の点である。しかしながら、図示されている例に限らず、周期構造は、線や絵柄、文字列等であってもよい。また、像58は、周期構造を含んでいなくてもよい。例えば、像58は、不規則に配置された点を含んでいてもよい。
【0053】
照明部材30の光源31は、ホログラムシート50に記録されている像58の位置に合わせて配置されていることが好ましい。図6に示されている例では、光源31は、像58が周期的に配置されている第2方向d2の位置に配置されている。この場合、光源31からの光によって像58が鮮明に結像される。
【0054】
図6に示されているように、ホログラムシート50に記録されている像58は、第1方向d1において大きさが変化している。より詳しくは、像58は、照明部材30から離間するにつれて大きくなっている。一例として、照明部材30に最も近い像58は、直径が0.2mm以上0.3mm以下の点である。照明部材30から第1方向d1に離間するにつれて、像58の直径は0.1mm以上0.2mm以下ずつ大きくなっている。最大の像58は、直径が2mm以上2.5mm以下となっている。同様に、第2ホログラムシート60に記録されている第2像68は、第2照明部材40から離間するにつれて大きくなっている。
【0055】
また、図7には、ホログラムシート50の構成の一例が示されている。図7に示されているように、ホログラムシート50は、基材層51と、基材層51に支持されたホログラム層53と、基材層51とホログラム層53とを接合する接合層52と、ホログラム層53に積層されホログラムシート50の表面を形成する表面層54と、ホログラムシート50を表示装置5の表示面6に貼合するための接着層55と、を含んでいる。
【0056】
基材層51は、ホログラム層53を支持する。基材層51は、可視光線波長帯域の波長(380nm~780nm)を透過する一般に言うところの透明なフィルムである。基材層51としては、透明であり、ホログラム層53を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。また、基材層51は、透明性や、ホログラム層53の適切な支持性及び耐久性等を考慮すると、10μm以上100μm以下の厚みを有していることが好ましい。
【0057】
接合層52は、基材層51とホログラム層53とを接合する。このような接合層52としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層52は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような接合層52の典型的な材料としては、アクリル系粘着材を例示することができる。接合層52の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0058】
ホログラム層53は、ホログラムシート50において、入射した光を結像面57に結像する機能を発揮する。ホログラム層53は、体積ホログラム(リップマンホログラムともいう)であることが好ましい。また、図示されている例では、ホログラムシート50は、照明部材30からの光が入射する側に像58を結像する。したがって、ホログラム層53は、光を反射させながら像を結像する反射型ホログラムである。ホログラム層53は、例えば銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマー等を硬化したものを用いることができる。ホログラム層53の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であり、より好ましくは5μm以上40μm以下である。
【0059】
表面層54は、ホログラムシート50の表面をなしており、ホログラム層53を外部から保護する保護層として機能する。透明であり、ホログラム層53を適切に保護し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。表面層54の厚みは、例えば10μm以上100μm以下である。さらに表面層54には、何らかの機能を付与するようにしてもよい。表面層54に付与され得る機能としては、一例として、抗菌機能、抗ウイルス機能、耐アルコール機能、低反射(LR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能、接合機能等を例示することができる。表面層54には、2以上の機能が付与されていてもよい。とりわけ、表面層54に抗菌機能や抗ウイルス機能が付与されていることで、利用者がホログラムシート50に接触してしまった場合でも菌やウイルス等の接触感染を抑制することができる。また、表面層54に耐アルコール機能が付与されていることで、ホログラムシート50の表面をアルコールで消毒することができる。表面のアルコール消毒により、利用者がホログラムシート50に接触してしまった場合でも菌やウイルス等の接触感染を抑制することができる。
【0060】
接着層55は、ホログラムシート50を表示装置5の表示面6に接着するための層である。接着層55は、一度接着した部材から剥離することができ、剥離した後にも再接着可能であることが好ましい。また、接着層55は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような接着層55としては、例えば、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤等を挙げることができる。接着層55の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0061】
なお、図7を参照してホログラムシート50の構成について説明したが、第2ホログラムシート60も、上述したホログラムシート50と同一の構成をとることができる。
【0062】
位置検出センサ13は、感度を有する領域、とりわけ面において、物体の位置を検出する。位置検出センサ13は、物体の位置だけでなく動きを検出してもよい。位置検出センサ13は、例えば枠状の部材である。位置検出センサ13は、例えば赤外線によって物体の位置を検出する、及び/又は静電容量によって位置検出する。図8に示すように、赤外線センサとしての位置検出センサ13は、例えば赤外線を検出する検出部13aと、赤外線を反射する再帰反射部13bと、を含んでいる。検出部13aは、四角形の枠状の位置検出センサ13の内側の角部に設けられ、再帰反射部13bは、例えば四角形の枠状の位置検出センサ13の内側に設けられる。位置検出センサ13は、ホログラムシート50から離間した検出位置13aにおいて、物体の位置を検出する。位置検出センサ13は、像58,68が結像される結像面57,67に対応した位置に検出の感度を有するよう、設定および配置されている。言い換えると、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aが、結像面57,67に結像している像58,68によって示される。
【0063】
図9及び図10には、空中入力表示装置1の上面図の一例及び他の例が示されている。図示されている例では、表示装置5の表示面6において4つの矩形の枠内にそれぞれA,B,C,Dの文字が表示されており、表示面6上の結像面57,67に像58,68が結像されている。表示面6に表示された絵柄7の大きさは、像58,68の周期構造のピッチpより大きくなっている。図9に示されている例では、空中入力装置10による像58,68が、表示面6に重なる位置の全体にわたって結像している。図10に示されている例では、空中入力装置10による像58,68は、表示面6に表示された画像に含まれる絵柄7に重なる位置にのみ結像している。
【0064】
図11には、図9のXI-XI線に沿った断面図が示されている。図9及び図10に示されている例において、位置検出センサ13は、表示面6に表示されたA,B,C,Dの文字に重なる位置において、物体の存在を検出する。このような空中入力装置10において、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aにおいて利用者が指F等の物体で表示面6に描かれた文字を指すと、位置検出センサ13は指されている位置を検出する。検出した位置に対応した表示面6の位置から、利用者が指している文字を特定する。指されている文字の特定により、利用者が指している文字の情報を入力することができる。
【0065】
検出位置13aは、ホログラムシート50のシート面への法線方向ndにおいて、照明部材30とホログラムシート50との間に位置している。また、検出位置13aは、第2ホログラムシート60のシート面への法線方向ndにおいて、第2照明部材40と第2ホログラムシート60との間に位置している。
【0066】
空中入力装置10の全体が大型化してしまうことを抑制するよう、照明部材30は、ホログラムシート50の近くに設けられている。具体的には、照明部材30とホログラムシート50との間の距離D1は、第1方向d1における結像面57の長さと第2結像面67の長さとの合計の長さ以下である。あるいは、照明部材30とホログラムシート50との間の距離D1は、第1方向d1における表示装置5の表示面6の長さ以下である。同様に、第2照明部材40と第2ホログラムシート60との間の距離は、第1方向d1における結像面57の長さと第2結像面67の長さとの合計の長さ以下である。あるいは、第2照明部材40と第2ホログラムシート60との間の距離は、第1方向d1における表示装置5の表示面6の長さ以下である。また、照明部材30とホログラムシート50との間の距離D1は、第1方向d1における結像面57の長さ以下であってもよい。あるいは、第2照明部材40と第2ホログラムシート60との間の距離は、第1方向d1における第2結像面67の長さ以下であってもよい。なお、上述したように、第1方向d1は、ホログラムシート50が照明部材30から光を照射される方向をホログラムシート50のシート面に投影した方向であり、第2ホログラムシート60が第2照明部材40から光を照射される方向を第2ホログラムシート60のシート面に投影した方向でもある。
【0067】
上述したように、ホログラムシート50は、照明部材30からの光が入射する側に像を結像する。言い換えると、照明部材30は、ホログラムシート50に対して結像面57と同じ側に位置している。結像面57とホログラムシート50との間の距離D2は、10mm以上100mm以下であることが好ましく、20mm以上50mm以下であることがより好ましい。
【0068】
位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aは、像58,68が結像している結像面57,67と一致していてもよいし、結像面57,67よりホログラムシート50に近くてもよいが、結像面57,67よりホログラムシート50から離間していることが好ましい。言い換えると、結像面57,67とホログラムシート50,60との間の距離D2は、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aとホログラムシート50、60との間の距離D3より短くなっていることが好ましい。具体的には、結像面57,67とホログラムシート50、60との間の距離D2は、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aとホログラムシート50、60との間の距離D3より1mm以上20mm以下短いことが好ましく、5mm以上10mm以下短いことがより好ましい。
【0069】
次に、空中入力装置10の作用について説明する。
【0070】
図11に示すように、まず、照明部材30から光がホログラムシート50に照射され、第2照明部材40から光が第2ホログラムシート60に照射される。ホログラムシート50に照射された光は、ホログラムシート50におけるホログラム層53の干渉縞が生成されている部分において回折される。すなわち、ホログラム層53は、記録されているパターンに基づいて光を回折する。ホログラム層53で回折された光は、結像面57に集光して、記録されているパターンに基づいた像58を結像する。同様に、第2ホログラムシート60に照射された光が、第2結像面67に第2像68を結像する。このようにして、照明部材30及び第2照明部材40からの光によって、空中に像58,68が結像される。すなわち、照明部材30及び第2照明部材40から照射される光が、ホログラムを再生させる再生光となる。
【0071】
結像面57,67に対応した位置に検出の感度を有する位置検出センサ13が配置されている。位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aに利用者の指F等の物体を配置することで、位置検出センサ13は、指F等の物体の位置を検出する。位置検出センサ13により、空中入力装置10は、指F等の物体で指された位置を特定することができ、当該位置の情報を入力することができる。とりわけ、位置検出センサ13が検出の感度を有する検出位置13aは、結像面57,67に結像した像58,68によって容易に認識することができる。
【0072】
次に、ホログラム層53及びホログラムシート50の製造方法について、図12乃至図14を参照しながら説明する。なお、第2ホログラムシート60も、同様の方法で製造することができる。
【0073】
まず、図12に示すように、ガラス基板91上にホログラム感材97a及びパターンマスク93を設ける。ホログラム感材97aは例えば、銀塩感材、重クロム酸ゼラチン、架橋性ポリマー、フォトポリマー等が挙げられるが、とりわけ、フォトポリマーは、紫外線を照射されることで硬化する乾式材料からなり、量産性に優れるため、ホログラム感材97aの材料として好ましい。フォトポリマーは、少なくとも一種の光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む。パターンマスク93は、開口部93aを有しており、開口部93aが設けられていない部分では光を遮光するが、開口部93aが設けられている部分では光を透過させる。パターンマスク93は、開口部93aによって、ホログラムシート50が結像する像58の位置に対応したパターン形状を形成している。例えば、ホログラムシート50が結像する像58に重なる位置において、パターンマスク93は開口部93aが設けられていない。
【0074】
次に、図12に矢印で示すように、パターンマスク93を介して紫外線を照射する。パターンマスク93の開口部93aが設けられていない部分では、紫外線は遮られる。一方、開口部93aが設けられている部分では、紫外線は、パターンマスク93を透過して、ホログラム感材97aに照射される。紫外線を照射されたホログラム感材97aは、硬化する。すなわち、ホログラム感材97aは、パターンマスク93に対応したパターン形状以外の部分で硬化する。ホログラム感材97aの硬化した部分は、ホログラムを記録しない不感部分97bとなる。すなわち、後にホログラムを結像するための光を照射しても、不感部分97bにおいてはホログラムが結像されなくなる。
【0075】
その後、図13に示すように、パターンマスク93を除去する。また、ガラス基板91のホログラム感材97aが設けられた側とは逆側に第1ホログラム原版95を配置する。第1ホログラム原版95には、全体にホログラムが記録されている。この状態で、図13に矢印で示すように、ホログラム感材97aに光、特に平行光束を照射する。ホログラム感材97aに直接照射される光が参照光として、またホログラム感材97aをいったん透過して第1ホログラム原版95で回折された回折光が物体光として、ホログラム感材97aに入射する。物体光と参照光とが干渉することにより、ホログラム感材97aにおいて明暗パターンである干渉縞が生成される。そして、この干渉縞が、感光性を有したホログラム感材97aに記録される。一方、不感部分97bには干渉縞が記録されない。ホログラムシート50が結像する像58に重なる位置において干渉縞が記録されることで、ホログラム感材97aから第2ホログラム原版97が製造される。
【0076】
なお、ホログラム感材97aに照射される光、すなわち物体光及び参照光としては、例えば、アルゴンイオンレーザー(波長457.9nm、476.5nm、488.0nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(波長647.1nm)、ヘリウム-ネオンレーザー(波長632.8nm)、YAGレーザー(波長532nm)が用いられる。ここで照射される波長の光は、照明部材30から照射される光に含まれる。
【0077】
その後、図14に示すように、ホログラム層53を形成するホログラム感材53aと上述した工程で製造された第2ホログラム原版97とを離間して配置する。ホログラム感材53aと第2ホログラム原版97との間の距離は、製造されるホログラム層53に記録された像58が結像する結像面57とホログラム層53との間の距離となる。すなわち、ホログラム感材53aと第2ホログラム原版97との間の距離を調節することで、ホログラム層53に記録された像58が結像する結像面57とホログラム層53との間の距離を調節することができる。図14に示されている例では、ホログラム感材53aと第2ホログラム原版97との間を所望の距離で離間させるために、ホログラム感材53aと第2ホログラム原版97との間にガラスや透明樹脂等からなる基板92が設けられている。あるいは、図示されている例に限らず、ホログラム感材53aと第2ホログラム原版97との間は、所望の距離で離間していれば、空気等であってもよい。その後、図14に矢印で示すように、ホログラム感材53aに光を照射することで、上述した第2ホログラム原版97の製造工程と同様に、ホログラム感材53a内に明暗パターンである干渉縞が生成される。干渉縞は、第2ホログラム原版97において干渉縞が生成されている位置、すなわちホログラムシート50が結像する像58に重なる位置に生成される。このようにして、ホログラム層53が製造される。
【0078】
製造されたホログラム層53を基材層51に接合層52を介して接合させ、基材層51のホログラム層53が設けられた側とは逆側に接着層55を設ける。また、ホログラム層53の基材層51が設けられた側とは逆側に表面層54を設ける。このようにして、図7に示したようなホログラムシート50が製造される。なお、接着層55が意図せずに他の部材に粘着することを防止するため、接着層55に剥離可能なセパレータを設けてもよい。
【0079】
ところで、既存の表示装置に対して、表示面に接触することなく、適切に情報を入力することが可能な設備を設けることが求められている。とりわけ、接触感染について早期に対策するために、このような設備を低コストで容易に且つ省スペースで設けられることが求められている。しかしながら、既存の表示装置に対して単に非接触型の位置検出センサを設けることでは、位置検出センサが感度を有する検出位置を適切に認識できないことがある。このため、既存の表示装置に設けると適切に情報を入力することが困難であり、また表示面に意図せずに接触してしまうことがある。一方、空中結像装置と非接触型の位置検出センサとを組み合わせた設備は、光学的な配置の制約上、既存の表示装置に省スペースで設けることが困難である。
【0080】
一方、本実施の形態の空中入力装置10は、位置検出センサ13を有している。位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aは、ホログラムシート50から離間している。すなわち、位置検出センサ13は、非接触型で位置を検出することができる。また、空中入力装置10は、照明部材30と、ホログラムシート50と、を有している。ホログラムシート50は、照明部材30からの光によって結像面57に像58を結像する。照明部材30、ホログラムシート50及び位置検出センサ13を既設の表示装置5の表示面6の側に設けることで、容易に空中入力表示装置1とすることができる。さらに、ホログラムシート50によれば、像58が結像されている結像面57を容易に認識することができる。そして、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aは、結像面57に対応している。空中入力装置10の利用者は、結像面57を認識することで、位置検出センサ13が感度を有する検出位置13aを認識することができる。また、照明部材30及びホログラムシート50は、小さなスペースにまとめて設けられている。照明部材30とホログラムシート50との距離は、ホログラムシート50が照明部材30から光を照射される方向をホログラムシート50のシート面に投影した方向である第1方向d1における結像面57の長さ以下である。照明部材30及びホログラムシート50を小さなスペースにまとめた状態で、表示装置5に設けることができる。すなわち、非接触型の位置検出センサ13が検出可能な検出位置13aを利用者に認識させることができる空中入力装置10を、既設の表示装置5に容易且つ省スペースで設けて、空中入力表示装置1とすることができる。
【0081】
また、照明部材30及び第2照明部材40は、第1方向d1において互いに対向する位置に設けられている。第2ホログラムシート60は、ホログラムシート50と第2方向d2に隣り合って配置されている。したがって、ホログラムシート50が像58を結像する結像面57は、第2ホログラムシート60が第2像68を結像する第2結像面67と第2方向d2に隣り合う。このため、平面視における別の位置に異なる像を観察させることができる。
【0082】
さらに、ホログラムシート50は、第2照明部材40より照明部材30に近い側に配置されており、第2ホログラムシート60は、照明部材30より第2照明部材40に近い側に配置されている。照明部材30からの光は、ホログラムシート50に照射されやすくなる。したがって、像58が明るく結像されやすくなる。同様に、第2照明部材40からの光は、第2ホログラムシート60に照射されやすくなる。したがって、第2像68が明るく結像されやすくなる。
【0083】
照明部材30は、ホログラムシート50のシート面に沿った第2方向d2に並んだ複数の光源31を含んでいる。複数の光源31によれば、照明部材30がホログラムシート50の近くに配置されていても、ホログラムシート50の全体に光を照射することができる。したがって、ホログラムシート50の全体から像58を結像させることができる。
【0084】
複数の光源31は、別個に光の出射を制御される。例えば、複数の光源31は、第2方向d2において1つおきに組となって光の出射が制御される。この場合、ある組の光源31が光を出射すると、図15のように結像面57に像58が結像する。ある組の光源31が消えて他の組の光源31が光を出射すると、図16のように結像面57において第2方向d2に微小にずれた位置に像58が結像する。このように、複数の光源31の光の出射を制御することで、結像面57における像58の第2方向d2における位置を変化させることができる。これにより、空中入力装置10及び空中入力表示装置1を第2方向d2において観察する位置に対応して、適切な位置に像58を結像させることができる。例えば、空中入力表示装置1を観察する人の目線の高さに合わせて、適切な位置に像58を結像させることができる。
【0085】
照明部材30は、レンズ35aを含んでいる。レンズ35aにより、光源31からの光が平行光となる。平行光となっている照明部材30からの光は、ホログラムシート50の全体に均一に照射されることができる。したがって、ホログラムシート50の全体から像58を結像させることができる。また、結像面57において、明るさのむらを小さくすることができる。
【0086】
照明部材30は、プリズム35bを含んでいる。プリズム35bにより、光源31からの光がホログラムシート50に向かいやすくなる。このため、照明部材30からの光を効率よく利用して、ホログラムシート50において像58として結像させることができる。また、光源31からの光がホログラムシート50以外に向かいにくくなることで、照明部材30からの光が外部から直接観察されにくくなる。
【0087】
照明部材30は、光透過方向制御フィルム35cを含んでいる。光透過方向制御フィルム35cにより、光源31からの光のうち、ホログラムシート50以外に向かう光が遮光される。これにより、照明部材30からの光が外部から直接観察されにくくなる。
【0088】
照明部材30は、光源31をホログラムシート50の側とは逆側から覆う遮光部材39を含んでいる。遮光部材39により、光源31からの光のうち、ホログラムシート50の側とは逆側に向かう光が遮光される。これにより、照明部材30からの光が外部から直接観察されにくくなる。
【0089】
照明部材30からの光は、照明部材30から離間するにつれて少なくなる。本実施の形態では、ホログラムシート50に記録されている像58の大きさは、照明部材30から離間するにつれて大きくなっている。照明部材30から離間した位置においては暗い像58が大きく観察されるため、結像面57においてホログラムシート50が結像させる像58を結像面57の全体で均一に認識することができる。言い換えると、照明部材30の光を照射して、結像面57を人間の目で観察したとき、像58の大きさは照明部材30に近い側から離間する側にかけて同じような明るさに視察できる。この観察態様は、第2ホログラムシート60を使用した結像面67、像68でも同様である。
【0090】
図9及び図10に示したように、絵柄7と像58が重なって観察される。表示面6に表示された画像に含まれる絵柄7の大きさは、像58の周期構造のピッチpより大きい。このため、像58によって絵柄7の視認性が阻害されにくい。
【0091】
上述したように、像58は、位置検出センサ13で検出される検出位置13aを示している。絵柄7は、空中入力表示装置1において入力される選択肢を示している。図9及び図10に示した例のように、像58が絵柄7に重なる位置に結像されることで、指F等の物体を配置する位置を容易に認識させることができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態の空中入力装置10は、照明部材30と、照明部材30からの光によって記録されている像58を結像面57に結像するホログラムシート50と、結像面57に対応した検出位置13aに感度を有する位置検出センサ13と、を備え、検出位置13aは、ホログラムシート50から離間しており、照明部材30とホログラムシート50との距離は、ホログラムシート50が照明部材30から光を照射される方向をホログラムシート50のシート面に投影した方向である第1方向d1における結像面の長さ以下である。このような空中入力装置10によれば、照明部材30、ホログラムシート50及び位置検出センサ13を既設の表示装置5の表示面6の側に設けることで、容易に空中入力表示装置1とすることができる。また、照明部材30及びホログラムシート50は、小さなスペースにまとめて設けられている。このように、非接触型の位置検出センサが検出可能な位置を利用者に認識させることができる空中結像装置を既設の表示装置に容易且つ省スペースで設けることができる。
【0093】
空中入力表示装置1及び空中入力装置10は、現金自動預け払い機(ATM)、券売機、注文機、販売機、画像や写真の印刷機、ゲームセンター等に設置されるアミューズメント用の筐体等に設けられてもよい。または、自動車などの移動体に設けられてもよい。
【0094】
なお、上述した実施の形態の空中入力表示装置1及び空中入力装置10に対して、様々な変更を加えることが可能である。
【0095】
図17には、本実施の形態の一変形例の空中入力装置10が示されている。図17に示されている空中入力装置10では、第2ホログラムシート60は、ホログラムシート50に積層されている。
【0096】
このような空中入力装置10によれば、表示面6に重なる位置の全体にわたって、ホログラムシート50が像58を結像させ、第2ホログラムシート60が第2像68を結像させる。利用者は、像58及び第2像68が重なって観察することができる。
【0097】
図18には、本実施の形態の他の変形例の空中入力装置10が示されている。図18に示されている空中入力装置10は、反射部材17をさらに有している。反射部材17は、照明部材30からの光をホログラムシート50の方へ反射させる。図示されている例では、反射部材17は、ホログラムシート50を介して第1方向d1において照明部材30と対向する位置に設けられている。反射部材17は、光を反射するものであればいかなるものでもよいが、例えば鏡(ミラー)である。
【0098】
このような空中入力装置10によれば、反射部材17で光を反射させることで、照明部材30からホログラムシート50までの光学的な距離を長くすることができる。光学的な距離が長くなると、照明部材30からの光は平行光に近くなり、またホログラムシート50の全体に均一に照射されやすくなる。このため、ホログラムシート50の全体から明るさのむらの小さな像58を結像させることができる。
【0099】
空中入力表示装置1は、人の存在や接近を感知するセンサに接続していてもよい。この場合、人の存在や接近が感知された際に、照明部材30が光を照射する。人が空中入力表示装置1の近傍に存在しない間には照明部材30が光を照射しないため、照明部材30によって消費される電力を低減することができる。
【0100】
また、図19に示すように、空中入力装置10は、照明部材30のホログラムシート50の側に、スペーサ11をさらに有していてもよい。スペーサ11により、照明部材30とホログラムシート50との間の距離を調節することができる。これにより、適切な距離及び角度で、照明部材30からホログラムシート50に光を照射することができる。同様に、空中入力装置10は、第2照明部材40の第2ホログラムシート60の側に、第2スペーサ12をさらに有していてもよい。第2スペーサ12により第2照明部材40と第2ホログラムシート60との間の距離を調節することで、適切な距離及び角度で、第2照明部材40から第2ホログラムシート60に光を照射することができる。
【0101】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 空中入力表示装置
5 表示装置
6 表示面
7 絵柄
9 支持体
10 空中入力装置
11 スペーサ
12 第2スペーサ
13 位置検出センサ
13a 検出位置
17 反射部材
20 空中結像装置
30 照明部材
31 光源
35 光学部材
35a レンズ
35b プリズム
35c 光透過方向制御フィルム
39 遮光部材
40 第2照明部材
41 第2光源
45 第2光学部材
49 第2遮光部材
50 ホログラムシート
51 基材層
52 接合層
53 ホログラム層
54 表面層
55 接着層
57 結像面
58 像
60 第2ホログラムシート
67 第2結像面
68 第2像
図1
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