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特開2022-181125情報処理装置、キャリブレーションシステム及び情報処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181125
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、キャリブレーションシステム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20221130BHJP
   G01S 13/90 20060101ALI20221130BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G01S7/40 104
G01S13/90
G01S13/90 164
G01S13/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087977
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】松元 利裕
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC11
5J070AF03
5J070AF05
5J070AF06
5J070BD08
5J070BE02
(57)【要約】
【課題】事前情報を必要とせず、高精度にキャリブレーションを行うことが可能な情報処理装置、キャリブレーションシステム及び情報処理方法を提供すること。
【解決手段】本技術に係る情報処理装置は、距離情報算出部と、位相変化算出部と、キャリブレーション処理部とを具備する。距離情報算出部は、対象物で反射され、第1の測距装置が受信した第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出し、対象物で反射され、第2の測距装置が受信した第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する。相変化算出部は、対象物または筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、第1の位相情報及び第2の位相情報の位相変化を算出する。キャリブレーション処理部は、第1の位相情報及び第2の位相情報の位相変化に応じて第1の測距装置と第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する第1の距離情報算出部と、
前記対象物または前記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、前記第1の位相情報の位相変化を算出する第1の位相変化算出部と、
第2の測距装置が備え、前記筐体に設置された第2の受信部が受信した、前記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する第2の距離情報算出部と、
前記対象物または前記筐体のうちの前記一方の移動に応じて発生する、前記第2の位相情報の位相変化を算出する第2の位相変化算出部と、
前記第1の位相情報の位相変化及び前記第2の位相情報の位相変化に応じて前記第1の測距装置と前記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理部と
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記キャリブレーション処理部は、前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置と前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置を特定し、前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置と前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置に基づいて前記キャリブレーション処理を実行する
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記キャリブレーション処理部は、前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置と、前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置に基づいて前記第1の測距装置と前記第2の測距装置の相対位置を特定し、前記第1の測距装置と前記第2の測距装置の相対位置に基づいて前記キャリブレーション処理を実行する
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記キャリブレーション処理部は、前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置と前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置に基づいて前記第1の測距装置と前記第2の測距装置の相対角度を特定し、前記第1の測距装置と前記第2の測距装置の相対角度に基づいて前記キャリブレーション処理を実行する
キャリブレーションシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1の位相変化算出部は、前記筐体の移動に応じて発生する前記第1の位相情報の位相変化を算出し、
前記第2の位相変化算出部は、前記筐体の移動に応じて発生する前記第2の位相情報の位相変化を算出する
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記キャリブレーション処理部は、前記第1の受信波に対して合成開口処理を実行して前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置を特定し、前記第2の受信波に対して合成開口処理を実行して前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置を特定する
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1の位相変化算出部は、前記対象物の移動に応じて発生する前記第1の位相情報の位相変化を算出し、
前記第2の位相変化算出部は、前記対象物の移動に応じて発生する前記第2の位相情報の位相変化を算出する
情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記キャリブレーション処理部は、前記第1の受信波に対して逆合成開口処理を実行して前記対象物に対する前記第1の受信部の相対位置を特定し、前記第2の受信波に対して逆合成開口処理を実行して前記対象物に対する前記第2の受信部の相対位置を特定する
情報処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1の受信波は第1の送信波が前記対象物によって反射された波であり、
前記第2の受信波は第2の送信波が前記対象物によって反射された波であり、
前記第1の距離情報算出部は、前記第1の送信波と前記第1の受信波に基づいて前記第1の距離情報を算出し、
前記第2の距離情報算出部は、前記第2の送信波と前記第2の受信波に基づいて前記第2の距離情報を算出する
情報処理装置。
【請求項10】
筐体に設置され、対象物で反射された第1の受信波を受信する第1の受信部と、
前記第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する第1の距離情報算出部と、
前記対象物または前記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、前記第1の位相情報の位相変化を算出する第1の位相変化算出部と
を備える第1の測距装置と、
前記筐体に設置され、前記対象物で反射された第2の受信波を受信する第2の受信部と、
前記第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する第2の距離情報算出部と、
前記対象物または前記筐体のうちの前記一方の移動に応じて発生する、前記第2の位相情報の位相変化を算出する第2の位相変化算出部と
を備える第2の測距装置と、
前記第1の位相情報の位相変化及び前記第2の位相情報の位相変化に応じて前記第1の測距装置と前記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理装置と
を具備するキャリブレーションシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のキャリブレーションシステムであって、
前記第1の測距装置は、前記筐体に設置され、前記対象物に第1の送信波を送信する第1の送信部をさらに具備し、
前記第1の受信部は、前記第1の送信波が前記対象物によって反射された波である前記第1の受信波を受信し、
前記第1の距離情報算出部は、前記第1の送信波と前記第1の受信波に基づいて前記第1の距離情報を算出し、
前記第2の測距装置は、前記筐体に設置され、前記対象物に第2の送信波を送信する第2の送信部をさらに具備し、
前記第2の受信部は、前記第2の送信波が前記対象物によって反射された波である前記第2の受信波を受信し、
前記第2の距離情報算出部は、前記第2の送信波と前記第2の受信波に基づいて前記第2の距離情報を算出する
キャリブレーションシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のキャリブレーションシステムであって、
前記対象物を撮像した撮像画像を生成する撮像装置をさらに具備し、
前記キャリブレーション処理装置は、前記第1の位相情報の位相変化、前記第2の位相情報の位相変化及び前記撮像画像に応じて、前記第1の測距装置、前記第2の測距装置及び前記撮像装置のキャリブレーション処理を実行する
キャリブレーションシステム。
【請求項13】
請求項10に記載のキャリブレーションシステムであって、
前記第1の受信波及び前記第2の受信波はミリ波であり、
前記第1の受信部及び前記第2の受信部はアンテナである
キャリブレーションシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のキャリブレーションシステムであって、
前記筐体は自動車である
キャリブレーションシステム。
【請求項15】
第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出し、
前記対象物または前記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、前記第1の位相情報の位相変化を算出し、
第2の測距装置が備え、前記筐体に設置された第2の受信部が受信した、前記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出し、
前記対象物または前記筐体のうちの前記一方の移動に応じて発生する、前記第2の位相情報の位相変化を算出し、
前記第1の位相情報の位相変化及び前記第2の位相情報の位相変化に応じて前記第1の測距装置と前記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、筐体に搭載された複数の測距装置のキャリブレーション処理を行う情報処理装置、キャリブレーションシステム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の車載ミリ波レーダを設置して情報を含み合わせることで、単体のミリ波レーダより高い精度を実現する技術が検討されている。正確なレーダ間の距離、方位の情報を元に、レーダの情報を組み合わせることで高い精度を実現するが、複数のレーダ間の距離及び方位が正確でないと精度低下が生じてしまうため、複数のレーダ間のキャリブレーションが重要となる。
【0003】
複数のレーダ間のキャリブレーションに関して、例えば特許文献1には、事前情報としての地図データを基準として、各センサのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置が記載されている。また、特許文献2にはポイントターゲットの間隔を基準として、各センサのキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-96715号公報
【特許文献2】特開2020-26955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のキャリブレーション装置では、事前情報としての地図データが無ければキャリブレーションを実施することができない。また、特許文献2に記載のキャリブレーションシステムでは、事前情報として位置が既知のポイントターゲットが無ければキャリブレーションを実施することができない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、事前情報を必要とせず、高精度にキャリブレーションを行うことが可能な情報処理装置、キャリブレーションシステム及び情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術に係る情報処理装置は、第1の距離情報算出部と、第1の位相変化算出部と、第2の距離情報算出部と、第2の位相変化算出部と、キャリブレーション処理部とを具備する。
上記第1の距離情報算出部は、第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する。
上記第1の位相変化算出部は、上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出する。
上記第2の距離情報算出部は、第2の測距装置が備え、上記筐体に設置された第2の受信部が受信した、上記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する。
上記第2の位相変化算出部は、上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出する。
上記キャリブレーション処理部は、上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する。
【0008】
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定し、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記キャリブレーション処理を実行してもよい。
【0009】
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と、上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対位置を特定し、上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対位置に基づいて上記キャリブレーション処理を実行してもよい。
【0010】
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対角度を特定し、上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対角度に基づいて上記キャリブレーション処理を実行してもよい。
【0011】
上記第1の位相変化算出部は、上記筐体の移動に応じて発生する上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
上記第2の位相変化算出部は、上記筐体の移動に応じて発生する上記第2の位相情報の位相変化を算出してもよい。
【0012】
上記キャリブレーション処理部は、上記第1の受信波に対して合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置を特定し、上記第2の受信波に対して合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定してもよい。
【0013】
上記第1の位相変化算出部は、上記対象物の移動に応じて発生する上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
上記第2の位相変化算出部は、上記対象物の移動に応じて発生する上記第2の位相情報の位相変化を算出してもよい。
【0014】
上記キャリブレーション処理部は、上記第1の受信波に対して逆合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置を特定し、上記第2の受信波に対して逆合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定してもよい。
【0015】
上記第1の受信波は第1の送信波が上記対象物によって反射された波であり、
上記第2の受信波は第2の送信波が上記対象物によって反射された波であり、
上記第1の距離情報算出部は、上記第1の送信波と上記第1の受信波に基づいて上記第1の距離情報を算出し、
上記第2の距離情報算出部は、上記第2の送信波と上記第2の受信波に基づいて上記第2の距離情報を算出してもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本技術に係るキャリブレーションシステムは、第1の測距装置と、第2の測距装置とキャリブレーション処理装置とを具備する。
上記第1の測距装置は、筐体に設置され、対象物で反射された第1の受信波を受信する第1の受信部と、上記第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する第1の距離情報算出部と、上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出する第1の位相変化算出部とを備える。
上記第2の測距装置は、上記筐体に設置され、上記対象物で反射された第2の受信波を受信する第2の受信部と、上記第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する第2の距離情報算出部と、上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出する第2の位相変化算出部とを備える。
上記キャリブレーション処理装置は、上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する。
【0017】
上記第1の測距装置は、上記筐体に設置され、上記対象物に第1の送信波を送信する第1の送信部をさらに具備し、
上記第1の受信部は、上記第1の送信波が上記対象物によって反射された波である上記第1の受信波を受信し、
上記第1の距離情報算出部は、上記第1の送信波と上記第1の受信波に基づいて上記第1の距離情報を算出し、
上記第2の測距装置は、上記筐体に設置され、上記対象物に第2の送信波を送信する第2の送信部をさらに具備し、
上記第2の受信部は、上記第2の送信波が上記対象物によって反射された波である上記第2の受信波を受信し、
上記第2の距離情報算出部は、上記第2の送信波と上記第2の受信波に基づいて上記第2の距離情報を算出してもよい。
【0018】
上記キャリブレーションシステムは、上記対象物を撮像した撮像画像を生成する撮像装置をさらに具備し、
上記キャリブレーション処理装置は、上記第1の位相情報の位相変化、上記第2の位相情報の位相変化及び上記撮像画像に応じて、上記第1の測距装置、上記第2の測距装置及び上記撮像装置のキャリブレーション処理を実行してもよい。
【0019】
上記第1の受信波及び上記第2の受信波はミリ波であり、
上記第1の受信部及び上記第2の受信部はアンテナであってもよい。
【0020】
上記筐体は自動車であってもよい。
【0021】
上記目的を達成するため、本技術に係るキャリブレーションシステムは、
第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出し、
上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
第2の測距装置が備え、上記筐体に設置された第2の受信部が受信した、上記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出し、
上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出し、
上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本技術の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムのブロック図である。
図2】上記キャリブレーションシステムが搭載された自動車の模式図である。
図3】上記キャリブレーションシステムが備える第1測距装置の第1送信波と第1受信波のグラフである。
図4】上記第1送信波及び上記第1受信波の差分を示すグラフである。
図5】上記キャリブレーションシステムによるキャリブレーション対象の軸を示す模式図である。
図6】上記キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理を示す模式図である。
図7】上記キャリブレーションシステムにおける、第1送信部、第1受信部、第2送信部及び第2受信部の移動を示す模式図である。
図8】上記キャリブレーションシステムにおける、第1送信部及び第1受信部の位置と第1受信波の位相変化を示す模式図である。
図9】上記キャリブレーションシステムにおける、第2送信部及び第2受信部の位置と第2受信波の位相変化を示す模式図である。
図10】上記キャリブレーションシステムが備えるキャリブレーション処理部による、第1受信波に対する合成開口処理の処理結果を示す模式図である。
図11】上記キャリブレーションシステムが備えるキャリブレーション処理部による、第2受信波に対する合成開口処理の処理結果を示す模式図である。
図12】上記キャリブレーション処理部による、第1測距装置と第2測距装置の相対位置の特定方法を示す模式図である。
図13】上記キャリブレーション処理部による、第1測距装置と第2測距装置の相対角度の特定方法を示す模式図である。
図14】上記キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理のフローチャートである。
図15】上記キャリブレーションシステムによる第1測距装置及び第2測距装置と他のセンサのキャリブレーション処理を示す模式図である。
図16】本技術の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムのブロック図である。
図17】上記キャリブレーションシステムが搭載された自動車の模式図である。
図18】上記キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理を示す模式図である。
図19】上記キャリブレーションシステムにおける対象物の移動を示す模式図である。
図20】上記キャリブレーションシステムにおける、対象物の位置と第1受信波の位相変化及び第2受信波の位相変化を示す模式図である。
図21】上記キャリブレーションシステムが備えるキャリブレーション処理部による、第1受信波及び第2受信波に対する逆合成開口処理の処理結果を示す模式図である。
図22】上記キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理のフローチャートである。
図23】上記キャリブレーションシステムによる第1測距装置及び第2測距装置と他のセンサのキャリブレーション処理を示す模式図である。
図24】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図25】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
本技術の第1の実施形態に係るキャリブレーションシステムについて説明する。
【0024】
[キャリブレーションシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るキャリブレーションシステム100の構成を示すブロック図である。同図に示すように、キャリブレーションシステム100は第1測距装置110、第2測距装置120及びキャリブレーション処理装置130を備える。
【0025】
キャリブレーションシステム100は、筐体に搭載される。筐体は移動可能なものであればよく、例えば自動車である。以下、筐体は自動車であるものとして説明する。図2は自動車150に搭載されたキャリブレーションシステム100を示す模式図である。また、図2には、自動車150の近傍に位置し、第1測距装置110及び第2測距装置120の測定対象物である対象物Pを示す。対象物Pはポイントターゲット(点状の物体)として近似できる反射面積を持つ物体が好適である。
【0026】
第1測距装置110は、第1送信部111、第1受信部112、第1距離情報算出部113及び第1位相変化算出部114を備え、第1測距装置110に対する対象物Pの距離を測定する。
【0027】
第1送信部111は、自動車150に設置され、送信波を送信する。以下、図1及び図2に示すように、第1送信部111から送信される送信波を第1送信波T1とする。第1送信部111は第1送信波T1の送信と共に第1送信波T1の信号を第1距離情報算出部113に供給する。
【0028】
第1受信部112は、自動車150に設置され、第1送信波T1が対象物Pによって反射された受信波を受信する。以下、図2に示すように、第1送信波T1が対象物Pによって反射され、第1受信部112によって受信される受信波を第1受信波R1とする。第1受信部112は第1受信波R1の信号を第1距離情報算出部113に供給する。第1測距装置110は複数の第1受信部112を備えるものであってもよい。
【0029】
第1距離情報算出部113は、第1受信波R1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出する。第1位相情報を含む第1距離情報については後述する。第1距離情報算出部113は第1受信波R1及び第1送信波T1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出してもよい。第1距離情報算出部113は、算出した第1位相情報を含む第1距離情報を第1位相変化算出部114に供給する。
【0030】
第1位相変化算出部114は、自動車150の移動に応じて発生する、第1位相情報の位相変化を算出する。第1位相情報の位相変化については後述する。第1位相変化算出部114は、算出した第1位相情報の位相変化をキャリブレーション処理装置130に供給する。
【0031】
第1測距装置110はこのような構成を有する。第1測距装置110はミリ波レーダであり、第1送信波T1及び第1受信波R1はミリ波、第1送信部111及び第1受信部112はミリ波帯アンテナとすることができる。また、第1測距装置110はミリ波レーダに限られず、上記第1測距装置110の構成を実現できるものであればよい。具体的には第1測距装置110は、超音波を用いる測距装置やLIDAR(Light Detection and Ranging)であってもよい。
【0032】
第2測距装置120は、第2送信部121、第2受信部122、第2距離情報算出部123及び第2位相変化算出部124を備え、第2測距装置120に対する対象物Pの距離を測定する。
【0033】
第2送信部121は、自動車150に設置され、送信波を送信する。以下、図1及び図2に示すように、第2送信部121から送信される送信波を第2送信波T2とする。第2送信部121は第2送信波T2の送信と共に第2送信波T1の信号を第2距離情報算出部123に供給する。
【0034】
第2受信部122は、自動車150に設置され、第2送信波T2が対象物Pによって反射された受信波を受信する。以下、図2に示すように、第2送信波T2が対象物Pによって反射され、第2受信部122によって受信される受信波を第2受信波R2とする。第2受信部122は第2受信波R2の信号を第2距離情報算出部123に供給する。第2測距装置120は複数の第2受信部122を備えるものであってもよい。
【0035】
第2距離情報算出部123は、第2受信波R2に基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出する。第2位相情報を含む第2距離情報については後述する。第2距離情報算出部123は第2受信波R2及び第2送信波T2に基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出してもよい。第2距離情報算出部123は、算出した第2位相情報を含む第2距離情報を第2位相変化算出部124に供給する。
【0036】
第2位相変化算出部124は、自動車150の移動に応じて発生する、第2位相情報の位相変化を算出する。第2位相情報の位相変化については後述する。第2位相変化算出部124は、算出した第2位相情報の位相変化をキャリブレーション処理装置130に供給する。
【0037】
第2測距装置120はこのような構成を有する。第2測距装置120はミリ波レーダであり、第2送信波T2及び第2受信波R2はミリ波、第2送信部121及び第2受信部122はミリ波帯アンテナとすることができる。また、第2測距装置120はミリ波レーダに限られず、上記第2測距装置120の構成を実現できるものであればよい。具体的には第2測距装置120は、超音波を用いる測距装置やLIDARであってもよい。
【0038】
キャリブレーション処理装置130はキャリブレーション処理部131を備える。キャリブレーション処理部131は、第1位相情報の位相変化と第2の位相情報の位相変化に応じて、第1測距装置110と第2測距装置120の間のキャリブレーション処理を実行する。具体的にはキャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1受信部112の相対位置と対象物Pに対する第2受信部122の相対位置を特定する。さらに、キャリブレーション処理部131はこれらの相対位置を用いて第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度を特定する。キャリブレーション処理部131は第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度を用いて第1測距装置110と第2測距装置120のキャリブレーション処理を行うことができる。
【0039】
キャリブレーションシステム100は以上のような構成を有する。なお、キャリブレーションシステム100の構成のうち、第1送信部111、第1受信部112、第2送信部121及び第2受信部122を除く構成は情報処理装置によって実現することが可能な機能的構成である。図1において、この情報処理装置161を示す。同図に示すように、情報処理装置161は、第1距離情報算出部113、第1位相変化算出部114、第2距離情報算出部123、第2位相変化算出部124及びキャリブレーション処理部131を備える。
【0040】
[キャリブレーションシステムによる位置検出について]
キャリブレーションシステム100による対象物Pの位置検出について説明する。図2に示すように、第1測距装置110では第1送信部111が対象物Pに対して第1送信波T1を送信し、第1受信部112が第1受信波R1を受信する。図3は、第1送信波T1と第1受信波R1の時刻と周波数の関係を示すグラフである。同図に示すように、第1送信波T1は時刻によって周波数が異なる波であり、周波数連続変調波(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave)と呼ばれる波である。第1受信波R1は、第1送信波T1が対象物Pによって反射された波であるので、図3に示すように、第1送信波T1から一定の時間tだけ遅延した波である。
【0041】
第1距離情報算出部113は、第1送信部111から第1送信波T1を取得し、第1受信部112から第1受信波R1を取得すると、第1送信波T1と第1受信波R1の差分を算出する。図4は、第1送信波T1と第1受信波R1の差分を示すグラフである。第1送信波T1と第1受信波R1の差分は中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号と呼ばれ、一定の周波数を有する正弦波となる。この周波数(以下、IF周波数)は第1測距装置110と対象物Pの距離に応じた周波数となるため、IF周波数から第1測距装置110と対象物Pの距離を算出可能である。以下このIF周波数を「第1位相情報」とし、IF周波数から算出される第1測距装置110と対象物Pの距離を「第1距離情報」とする。
【0042】
第2測距装置120においても同様に、第2距離情報算出部123は、第2送信部121から取得した第2送信波T2と第2受信部122から取得した第2受信波R2の差分(IF信号)を算出し、IF周波数から第2測距装置120と対象物Pの距離を算出する。以下このIF周波数を「第2位相情報」とし、IF周波数から算出される第2測距装置120と対象物Pの距離を「第2距離情報」とする。
【0043】
さらに、キャリブレーションシステム100では第1距離情報と第2距離情報に基づいて、第1測距装置110及び第2測距装置120のそれぞれに対する対象物Pの角度を特定することができる。これにより、第1測距装置110及び第2測距装置120に対する対象物Pの位置が検出され、即ち自動車150に対する対象物Pの位置が検出される。
【0044】
キャリブレーションシステム100では、以上のようにして対象物Pの位置検出が実行される。上記の測定原理から、対象物Pの位置を正確に検出するためには、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度が正確に特定されている必要がある。以下、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度の特定及びキャリブレーションについて説明する。
【0045】
なお、上記説明において第1距離情報算出部113は、第1送信波T1と第1受信波R1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出するとしたが、対象物Pが電波を発信し、その情報を取得可能な場合等には、第1受信波R1のみに基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出することも可能である。第2距離情報算出部123も同様に、第2受信波R2のみに基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出することが可能である。
【0046】
[キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理]
キャリブレーションシステム100による、第1測距装置110と第2測距装置120のキャリブレーション処理について説明する。
【0047】
キャリブレーションシステム100は第1測距装置110と第2測距装置120に対して、6軸を対象としてキャリブレーション処理を行うことができる。図5はこの6軸を示す模式図であり、第1測距装置110及び第2測距装置120についての相対位置(X軸/Y軸/Z軸)と相対角度(ピッチ/ヨー/ロール)を示す。
【0048】
キャリブレーションシステム100では、自動車150が移動することによる第1受信波R1と第2受信波R2の位相変化を用いてキャリブレーション処理を実行する。図6は、自動車150の移動を示す模式図であり、自動車150の移動を矢印Mで示す。自動車150の移動は等速直線運動とする。以下、自動車150の移動方向をY軸方向とし、Y軸方向に直交する方向をX軸方向とする。X軸方向及びY軸方向は自動車150の載置面に平行な方向であり、この載置面に垂直な方向をZ軸方向とする。
【0049】
キャリブレーションシステム100では、自動車150を移動させながら第1送信部111が第1送信波T1を対象物Pに送信し、第1受信部112が第1受信波R1を受信する。また、第2送信部121が第2送信波T2を対象物Pに送信し、第2受信部122が第2受信波R2を受信する。図7は、第1送信部111、第1受信部112、第2送信部121及び第2受信部122と対象物Pの位置関係を示す模式図である。
【0050】
同図において、第1送信部111及び第1受信部112の位置を位置S1(S1、S1、S1…)として示し、第2送信部121及び第2受信部122の位置を位置S2(S2、S2、S2…)として示す。自動車150の移動開始時の第1送信部111及び第1受信部112の位置を位置S1とし、自動車150の移動開始時の第2送信部121及び第2受信部122の位置を位置S2とする。
【0051】
自動車150の移動開始から一定時間が経過すると、自動車150の移動により第1送信部111及び第1受信部112は位置S1に移動し、第2送信部121及び第2受信部122は位置S2に移動する。以下、同様に第1送信部111及び第1受信部112は位置S1、S1、S1…と移動し、第2送信部121及び第2受信部122は位置S21、S2、S2…と移動する。第1送信部111は位置S1の各位置で第1送信波T1を送信し、第2送信部121は位置S2の各位置で第2送信波T1を送信する。
【0052】
なお、各位置S1間の距離と各位置S2間の距離は、第1送信波T1及び第2送信波T2の波長の1/4以下が好適である。この距離とすることにより、第1受信波R1及び第2受信波R2に虚像が発生せず、対象物Pに対する第1測距装置110及び第2測距装置120の相対位置が一意に定まるためである。ただし、第1送信波T1及び第2送信波T2の波長や自動車150の移動速度によっては上記条件を満たすことが難しい場合もあるため、条件付けや計算による虚像の抑制、または除去が可能であれば位置S1間及び位置S2間の距離を上記1/4波長を超える距離とすることも可能である。
【0053】
第1距離情報算出部113は、各位置S1における第1送信波T1及び第1受信波R1に基づいて、第1位相情報を含む第1距離情報を算出する。上述のように第1位相情報は第1送信波T1と第1受信波R1の差分であるIF周波数であり(図4参照)、第1距離情報は第1測距装置110と対象物Pの距離である。また、第2距離情報算出部123は、各位置S2における第2送信波T2及び第2受信波R2に基づいて、第2位相情報を含む第2距離情報を算出する。上述のように第2位相情報は第2送信波T2と第2受信波R2の差分であるIF周波数であり(図4参照)、第2距離情報は第2測距装置120と対象物Pの距離である。
【0054】
第1位相変化算出部114は、第1距離情報算出部113によって算出された第1位相情報の位相変化を算出する。図8は、第1送信部111及び第1受信部112と対象物Pの位置関係と、第1位相情報の位相変化イメージを示す模式図である。位相変化イメージは、第1送信部111及び第1受信部112が所定の位置S1の近傍に位置する場合、位相変化が小さく、第1送信部111及び第1受信部112が位置S1から離間するにしたがって位相変化が大きくなることを示している。これは、位置S1は対象物Pに近接しているため、位置S1の近傍における自動車150の移動による位相への影響が小さく、位置S1から離間すると自動車150の移動による位相への影響が大きくなることを意味する。
【0055】
第2位相変化算出部124は、第2距離情報算出部123によって算出された第2位相情報の位相変化を算出する。図9は、第2送信部121及び第2受信部122と対象物Pの位置関係と、第2位相情報の位相変化イメージを示す模式図である。位相変化イメージは、第2送信部121及び第2受信部122が所定の位置S2の近傍に位置する場合、位相変化が小さく、第2送信部121及び第2受信部122が位置S2から離間するにしたがって位相変化が大きくなることを示している。これは、位置S2は対象物Pに近接しているため、位置S2の近傍における自動車150の移動による位相への影響が小さく、位置S2から離間すると自動車150の移動による位相への影響が大きくなることを意味する。
【0056】
キャリブレーション処理部131は、第1位相情報の位相変化に応じて、対象物Pに対する第1受信部112の相対位置を特定する。キャリブレーション処理部131は第1位相情報の位相変化と、第1受信部112に対して任意の距離及び角度に対象物Pが位置する場合の位相変化の理想値を畳み込むことで第1受信波R1に対して合成開口処理を実行する。この合成開口処理は、移動する第1受信部112を仮想的な大径レーダとして扱う合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)と同様の計算処理である。
【0057】
図10は合成開口処理の処理結果を示す模式図である。同図に示すように、対象物Pの位置に対する第1受信部112の相対位置L1が合成開口処理結果のピークとして算出される。なお、キャリブレーション処理部131は自動車150の移動速度を自動車150から取得し、合成開口処理において自動車150の移動による第1受信波R1のドップラー成分を補正することができる。
【0058】
キャリブレーション処理部131は、第1測距装置110が備える第1受信部112毎に対象物Pと第1受信部112の相対位置を算出することにより、対象物Pに対する第1測距装置110の相対位置L1(図12参照)及び相対角度A1(図13参照)を算出することができる。なお、相対位置L1は、第1測距装置110が1つの第1受信部112を備える場合でも算出可能である。一方、相対角度A1は、第1測距装置110が複数の第1受信部112を備える場合に、各第1受信部112と対象物Pの距離を用いて算出可能である。
【0059】
また、キャリブレーション処理部131は、第2位相情報の位相変化に応じて、対象物Pに対する第2受信部112の相対位置を特定する。キャリブレーション処理部131は第2位相情報の位相変化と、第2受信部122に対して任意の距離及び角度に対象物Pが位置する場合の位相変化の理想値を畳み込むことで第2受信波R2に対して合成開口処理を実行する。この合成開口処理は、移動する第1受信部122を仮想的な大径レーダとして扱う合成開口レーダ(SAR)と同様の計算処理である。
【0060】
図11は合成開口処理の処理結果を示す模式図である。同図に示すように、対象物Pの位置に対する第2受信部112の相対位置L2が合成開口処理結果のピークとして算出される。なお、キャリブレーション処理部131は自動車150の移動速度を自動車150から取得し、合成開口処理において自動車150の移動による第2受信波R2のドップラー成分を補正することができる。
【0061】
キャリブレーション処理部131は、第2測距装置120が備える第2受信部122毎に対象物Pと第2受信部122の相対位置を算出することにより、対象物Pに対する第2測距装置120の相対位置L2(図12参照)及び相対角度A2(図13参照)を算出することができる。なお、相対位置L2は、第2測距装置120が1つの第2受信部122を備える場合でも算出可能である。一方、相対角度A2は、第2測距装置120が複数の第2受信部122を備える場合に、各第2受信部122と対象物Pの距離を用いて算出可能である。
【0062】
キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1測距装置110の相対位置と、対象物Pに対する第2測距装置120の相対位置に基づいて、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置を特定することができる。図12は、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置の特定方法を示す模式図である。同図に示すように、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1測距装置110の相対位置L1と対象物Pに対する第2測距装置120の相対位置L2を、対象物Pの位置を基準として変換し、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置L3を算出することができる。
【0063】
さらに、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1測距装置110の相対角度と、対象物Pに対する第2測距装置120の相対角度に基づいて、第1測距装置110と第2測距装置120の相対角度を特定することができる。図13は、第1測距装置110と第2測距装置120の相対角度の特定方法を示す模式図である。同図に示すように、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1測距装置110の相対角度A1と、対象物Pに対する第2測距装置120の相対角度A2を、対象物Pの方向を基準として変換し、第1測距装置110と第2測距装置120の相対角度A3を算出することができる。
【0064】
このようにしてキャリブレーション処理部131は、第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置(X軸/Y軸/Z軸(図5参照))と相対角度(ピッチ/ヨー/ロール(図5参照))を特定することができる。キャリブレーション処理部131は第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度を用いて、第1測距装置110及び第2測距装置120の測定結果にキャリブレーション処理を実行することができる。
【0065】
図14は、キャリブレーションシステム100によるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。キャリブレーション処理が開始されると、図6に示すように自動車150の移動が開始される(St101)。続いて、キャリブレーション処理部131は対象物Pを選定する(St102)。キャリブレーション処理部131は、第1受信部112及び第2受信部122の受信結果に基づいて対象物Pを選定することができ、第1受信部112及び第2受信部122の受信可能範囲に存在する物体のうち、ポイントターゲットとして近似できる反射面積を持つ物体を対象物Pとして選定することができる。
【0066】
続いて、第1送信部111は第1送信波T1を送信し、第2送信部121は第2送信波T2を送信する。第1受信部112は、第1送信波T1が対象物Pで反射された第1受信波R1を受信し、第2受信部122は、第2送信波T2が対象物Pで反射された第2受信波R2を受信する(St103)。さらに、自動車150が移動する(St104)と、キャリブレーション処理部131は、X軸、Y軸及びZ軸の各距離及び各角度毎に位相変化(図8及び図9参照)の理論値を算出する(St105)。
【0067】
また、キャリブレーション処理部131は、自動車150から移動速度を取得し、自動車150の移動による位相変化の補正値を算出する(St106)。続いて、自動車150の移動距離が指定値以上の場合(St107;Yes)、第1距離情報算出部113が第1受信波R1から第1距離情報を算出し、第2距離情報算出部123が第2受信波R2から第2距離情報を算出する(St108)。さらに、第1位相変化算出部114が第1距離情報に含まれる第1位相情報の位相変化(図8参照)を算出し、第2位相変化算出部124が第2距離情報に含まれる第2位相情報の位相変化(図9参照)を算出する(St109)。なお、自動車150の移動距離が指定値未満の場合(St107;No)、第1受信波R1及び第2受信波R2の受信ステップ(St103)から位相変化の補正値算出ステップ(St106)が繰り返し実行される。
【0068】
続いて、キャリブレーション処理部131は、合成開口処理を実行(St110)する。本処理によりキャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1受信部112の相対位置と対象物Pに対する第2受信部122の相対位置を特定する。本処理においてキャリブレーション処理部131は、位相変化の補正値算出ステップ(St106)において算出した補正値を利用することができる。
【0069】
続いて、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1受信部112の相対位置に基づいて、対象物Pに対する第1測距装置110の相対位置及び相対角度を算出する(St111)。また、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第2受信部122の相対位置に基づいて、対象物Pに対する第2測距装置120の相対位置及び相対角度を算出する(St111)。
【0070】
続いて、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第1測距装置110の相対位置及び相対角度と対象物Pに対する第2測距装置110の相対位置及び相対角度に基づいて、第1測距装置110と第2測距装置120の間の相対位置及び相対角度を算出する(St112)。キャリブレーションシステム100は、第1測距装置110と第2測距装置120の間の相対位置及び相対角度を用いて第1測距装置110と第2測距装置120のキャリブレーション処理を実行することが可能である。
【0071】
なお、上記説明において、キャリブレーション処理部131は、自動車150の移動による位相変化の補正値を算出する(St106)としたが、これは自動車150が一定速度で移動を継続している場合にドップラー成分を補正するためである。自動車150が一定距離移動毎に停止し、停止中に第1送信波T1及び第2送信波T2の送信を行う場合、ドップラー成分が生じないため、本ステップ(St106)は省略することができる。
【0072】
[キャリブレーションシステムによる効果]
キャリブレーションシステム100では、上記のように対象物Pに対して移動する自動車150において、第1測距装置110及び第2測距装置120の測定結果に基づいて第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度を高精度に特定することが可能である。これにより、第1測距装置110及び第2測距装置120の測定結果を組み合わせることで高精度の物体検出が可能となる。
【0073】
また、キャリブレーションシステム100では第1測距装置110と第2測距装置120の相対位置及び相対角度の特定に対象物Pの位置や地図データといった事前情報を必要としない。したがって、自動車150の製造工場等の決められた場所でなくても、任意の場所でキャリブレーションの実施が可能であり、自動車150の振動や経年劣化により、第1測距装置110と第2測距装置120の位置にずれが生じても、任意の場所でキャリブレーションによる精度の回復が可能である。
【0074】
[他のセンサとのキャリブレーションについて]
キャリブレーションシステム100では、第1測距装置110及び第2測距装置120と他のセンサのキャリブレーションを実行することも可能である。図15は第1測距装置110及び第2測距装置120と他のセンサのキャリブレーション方法を示す模式図である。他のセンサの例として撮像装置140を示す。撮像装置140のように、自動車150の移動に伴う位相変化を検出できないセンサの場合、位相変化を利用したキャリブレーションは実行できない。
【0075】
図15に示すように、自動車150を移動させながら、撮像装置140が対象物Pを撮像し、撮像画像を生成する。対象物Pはチェッカー模様等の既定の表示Qが施されているものが好適である。図15において、撮像装置140から見た対象物Pの方向を線Gで示す。キャリブレーション処理部131は撮像装置140が撮像した撮像画像に対して画像処理を実行し、撮像画像に含まれる表示Q等に基づいて対象物Pに対する撮像装置140の相対位置及び相対角度を算出する。
【0076】
対象物Pに対する第1測距装置110及び第2測距装置120の相対位置及び相対角度は上記のように位相変化を利用して特定可能である。したがって、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する撮像装置140、第1測距装置110及び第2測距装置120の相対位置及び相対角度を特定することができ、これら相互間の対位置及び相対角度に基づいてキャリブレーション処理を実行することが可能である。
【0077】
なお、対象物Pの表示Qは一般的に撮像装置のキャリブレーションに使用される2次元のチェッカーボードのように2次元の平面表示ではなく、縞模様のポールのように自動車150の移動方向に対し垂直な方位の距離差分が検出可能なものであれば十分である。これは、撮像装置140を第1測距装置110及び第2測距装置120のような位相変化を検知するセンサと連動して移動させるため、対象物Pとの視差により、2次元の平面表示と同様のデータを得られるためである。
【0078】
キャリブレーションシステム100が第1測距装置110及び第2測距装置120に対してキャリブレーション処理を実行可能なセンサは撮像装置に限られず、何らかの手法により対象物Pに対して自己の相対位置及び相対角度を特定可能なセンサであればよい。
【0079】
[変形例]
キャリブレーションシステム100の変形例について説明する。上述したキャリブレーションシステム100の構成では単体でX軸、Y軸及びZ軸についての検出が可能な測距装置を例にとっているが、検出可能な座標軸が少ない測距装置間でもキャリブレーションは可能である。その場合にはキャリブレーション対象の軸を測距装置に合わせて減らすことが必要となる。
【0080】
また、上記説明においてキャリブレーション時の自動車150の移動は等速直線運動としたが、これに限られない。キャリブレーション時の自動車150の移動は第1測距装置110に対する対象物Pの方向と第2測距装置120に対する対象物Pの方向に角度差分が発生し、かつ、第1測距装置110と対象物Pの距離と第2測距装置120と対象物Pの距離に距離差分が発生するものであればよい。
【0081】
さらに、キャリブレーションシステム100は第1測距装置110と第2測距装置120の2つの測距装置を備えるとしたが、3つ以上の測距装置を備えるものであってもよい。この場合も上記手法により、キャリブレーションシステム100が備える各測距装置の間でキャリブレーションを実行することが可能である。自動車150における測距装置の配置場所も特に限定されず、上記手法が実行可能な配置であればよい。
【0082】
(第2の実施形態)
本技術の第2の実施形態に係るキャリブレーションシステムについて説明する。
【0083】
[キャリブレーションシステムの構成]
図16は、本実施形態に係るキャリブレーションシステム200の構成を示すブロック図である。同図に示すように、キャリブレーションシステム200は第1測距装置210、第2測距装置220及びキャリブレーション処理装置230を備える。
【0084】
キャリブレーションシステム200は、筐体に搭載される。筐体は特に限定されず、移動可能なものであってもよく、移動可能なものでなくてもよい。以下、筐体は自動車であるものとして説明する。図17は自動車250に搭載されたキャリブレーションシステム200を示す模式図である。また、図17には、自動車250の近傍に位置し、第1測距装置210及び第2測距装置220の測定対象物である対象物Pを示す。対象物Pはポイントターゲット(点状の物体)として近似できる反射面積を持つ物体が好適であり、例えば三角コーナーである。
【0085】
第1測距装置210は、第1送信部211、第1受信部212、第1距離情報算出部213及び第1位相変化算出部214を備え、第1測距装置210に対する対象物Pの距離を測定する。
【0086】
第1送信部211は、自動車250に設置され、送信波を送信する。以下、図16及び図17に示すように、第1送信部111から送信される送信波を第1送信波T1とする。第1送信部211は第1送信波T1の送信と共に第1送信波T1の信号を第1距離情報算出部213に供給する。
【0087】
第1受信部212は、自動車250に設置され、第1送信波T1が対象物Pによって反射された受信波を受信する。以下、図17に示すように、第1送信波T1が対象物Pによって反射され、第1受信部212によって受信される受信波を第1受信波R1とする。第1受信部212は第1受信波R1の信号を第1距離情報算出部213に供給する。第1測距装置210は複数の第1受信部212を備えるものであってもよい。
【0088】
第1距離情報算出部213は、第1受信波R1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出する。第1位相情報を含む第1距離情報については後述する。第1距離情報算出部213は第1受信波R1及び第1送信波T1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出してもよい。第1距離情報算出部213は、算出した第1位相情報を含む第1距離情報を第1位相変化算出部214に供給する。
【0089】
第1位相変化算出部214は、対象物Pの移動に応じて発生する、第1位相情報の位相変化を算出する。第1位相情報の位相変化については後述する。第1位相変化算出部214は、算出した第1位相情報の位相変化をキャリブレーション処理装置230に供給する。
【0090】
第1測距装置210はこのような構成を有する。第1測距装置210はミリ波レーダであり、第1送信波T1及び第1受信波R1はミリ波、第1送信部211及び第1受信部212はミリ波帯アンテナとすることができる。また、第1測距装置210はミリ波レーダに限られず、上記第1測距装置210の構成を実現できるものであればよい。具体的には第1測距装置210は、超音波を用いる測距装置やLIDAR(Light Detection and Ranging)であってもよい。
【0091】
第2測距装置220は、第2送信部221、第2受信部222、第1距離情報算出部223及び第1位相変化算出部224を備え、第2測距装置220に対する対象物Pの距離を測定する。
【0092】
第2送信部221は、自動車250に設置され、送信波を送信する。以下、図16及び図17に示すように、第2送信部221から送信される送信波を第2送信波T2とする。第2送信部221は第2送信波T2の送信と共に第2送信波T2の信号を第2距離情報算出部223に供給する。
【0093】
第2受信部222は、自動車250に設置され、第2送信波T2が対象物Pによって反射された受信波を受信する。以下、図17に示すように、第2送信波T2が対象物Pによって反射され、第2受信部222によって受信される受信波を第2受信波R2とする。第2受信部222は第2受信波R2の信号を第2距離情報算出部223に供給する。第2測距装置220は複数の第2受信部222を備えるものであってもよい。
【0094】
第2距離情報算出部223は、第2受信波R2に基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出する。第2位相情報を含む第2距離情報については後述する。第2距離情報算出部223は第2受信波R2及び第2送信波T2に基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出してもよい。第2距離情報算出部223は、算出した第2位相情報を含む第2距離情報を第2位相変化算出部224に供給する。
【0095】
第2位相変化算出部224は、対象物Pの移動に応じて発生する、第2位相情報の位相変化を算出する。第2位相情報の位相変化については後述する。第2位相変化算出部224は、算出した第2位相情報の位相変化をキャリブレーション処理装置230に供給する。
【0096】
第2測距装置220はこのような構成を有する。第2測距装置220はミリ波レーダであり、第2送信波T2及び第2受信波R2はミリ波、第2送信部221及び第2受信部222はミリ波帯アンテナとすることができる。また、第2測距装置220はミリ波レーダに限られず、上記第2測距装置220の構成を実現できるものであればよい。具体的には第2測距装置220は、超音波を用いる測距装置やLIDARであってもよい。
【0097】
キャリブレーション処理装置230はキャリブレーション処理部231を備える。キャリブレーション処理部231は、第1位相情報の位相変化と第2の位相情報の位相変化に応じて、第1測距装置210と第2測距装置220の間のキャリブレーション処理を実行する。
具体的にはキャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1受信部212の相対位置と対象物Pに対する第2受信部222の相対位置を特定する。さらに、キャリブレーション処理部231はこれらの相対位置を用いて第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置及び相対角度を特定する。キャリブレーション処理部231は第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置及び相対角度を用いて第1測距装置210と第2測距装置220のキャリブレーション処理を行うことができる。
【0098】
キャリブレーションシステム200は以上のような構成を有する。なお、キャリブレーションシステム200の構成のうち、第1送信部211、第1受信部212、第2送信部221及び第2受信部222を除く構成は情報処理装置によって実現することが可能な機能的構成である。図16において、この情報処理装置261を示す。同図に示すように、情報処理装置261は、第1距離情報算出部213、第1位相変化算出部214、第2距離情報算出部223、第2位相変化算出部224及びキャリブレーション処理部231を備える。
【0099】
[キャリブレーションシステムによる位置検出について]
キャリブレーションシステム200による対象物Pの位置検出について説明する。図17に示すように、第1測距装置210では第1送信部211が対象物Pに対して第1送信波T1を送信し、第1受信部212が第1受信波R1を受信する。第1の実施形態と同様に第1送信波T1は時刻によって周波数が異なる波であり、周波数連続変調波(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave)と呼ばれる波である(図3参照)。第1受信波R1は、第1送信波T1が対象物Pによって反射された波であるので、図3に示すように、第1送信波T1から一定の時間tだけ遅延した波である。
【0100】
第1距離情報算出部213は、第1送信部211から第1送信波T1を取得し、第1受信部212から第1受信波R1を取得すると、第1送信波T1と第1受信波R1の差分(IF信号)を算出する(図4参照)。IF信号の周波数(以下、IF周波数)は第1測距装置210と対象物Pの距離に応じた周波数となるため、IF周波数から第1測距装置210と対象物Pの距離を算出可能である。以下このIF周波数を「第1位相情報」とし、IF周波数から算出される第1測距装置210と対象物Pの距離を「第1距離情報」とする。
【0101】
第2測距装置220においても同様に、第2距離情報算出部223は、第2送信部221から取得した第2送信波T2と第2受信部222から取得した第2受信波R2の差分(IF信号)を算出し、IF周波数から第2測距装置220と対象物Pの距離を算出する。以下このIF周波数を「第2位相情報」とし、IF周波数から算出される第2測距装置220と対象物Pの距離を「第2距離情報」とする。
【0102】
さらに、キャリブレーションシステム200では第1距離情報と第2距離情報に基づいて、第1測距装置210及び第2測距装置220のそれぞれに対する対象物Pの角度を特定することができる。これにより、第1測距装置210及び第2測距装置220に対する対象物Pの位置が検出され、即ち自動車250に対する対象物Pの位置が検出される。
【0103】
キャリブレーションシステム200では、以上のようにして対象物Pの位置検出が実行される。上記の測定原理から、対象物Pの位置を正確に検出するためには、第1測距装置210と第2測距装置220の相対距離及び相対角度が正確に特定されている必要がある。以下、第1測距装置210と第2測距装置220の相対距離及び相対角度の特定及びキャリブレーションについて説明する。
【0104】
なお、上記説明において第1距離情報算出部213は、第1送信波T1と第1受信波R1に基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出するとしたが、対象物Pが電波を発信し、その情報を取得可能な場合等には、第1受信波R1のみに基づいて第1位相情報を含む第1距離情報を算出することも可能である。第2距離情報算出部223も同様に、第2受信波R2のみに基づいて第2位相情報を含む第2距離情報を算出することが可能である。
【0105】
[キャリブレーションシステムによるキャリブレーション処理]
キャリブレーションシステム200による、第1測距装置210と第2測距装置220のキャリブレーション処理について説明する。
【0106】
キャリブレーションシステム200は第1測距装置210と第2測距装置220に対して、6軸を対象としてキャリブレーション処理を行うことができる(図5参照)。図5に示すように6軸は測距装置についての相対位置(X軸/Y軸/Z軸)と相対角度(ピッチ/ヨー/ロール)を含む。
【0107】
キャリブレーションシステム200では、対象物Pが移動することによる第1受信波R1と第2受信波R2の位相変化を用いてキャリブレーション処理を実行する。図18は、対象物Pの移動を示す模式図であり、対象物Pの移動を矢印Mで示す。同図に示すように対象物PはレールFに係合し、レールFに沿って移動可能である。対象物Pの移動方法は一定距離移動した後、静止することを繰り返すものとする。以下、対象物Pの移動方向(即ち、レールFの延伸方向)をY軸方向とし、Y軸方向に直交する方向をX軸方向とする。X軸方向及びY軸方向は自動車250の載置面に平行な方向であり、この載置面に垂直な方向をZ軸方向とする。
【0108】
キャリブレーションシステム200では、対象物Pを移動させながら第1送信部211が第1送信波T1を対象物Pに送信し、第1受信部212が第1受信波R1を受信する。また、第2送信部221が第2送信波T2を対象物Pに送信し、第2受信部222が第2受信波R2を受信する。図19は、第1送信部211、第1受信部212、第2送信部221及び第2受信部222と対象物Pの位置関係を示す模式図である。
【0109】
図19において、4つの第1受信部212を示し、それぞれ第1受信部212a、第1受信部212b、第1受信部212c及び第1受信部212dとする。また、図19において4つの第2受信部222を示し、それぞれ第2受信部222a、第2受信部222b、第2受信部222c及び第2受信部222dとする。
【0110】
図19において、対象物Pの位置を位置S(S、S、S…)として示す。対象物Pの移動開始時の位置を位置Sとし、対象粒Pの移動開始から一定時間が経過すると、対象物Pは位置Sに移動する。以下、同様に対象物Pは位置S、S、S…と移動する。第1送信部111は各位置Sにおいて対象物Pに第1送信波T1を送信し、第2送信部121は各位置Sにおいて対象物Pに第2送信波T2送信する。対象物Pは各位置Sにおいて短時間静止し、第1送信波T1及び第2送信波T1が送信されると再度移動する。
【0111】
なお、各位置S間の距離は、第1送信波T1及び第2送信波T2の波長の1/4以下が好適である。この距離とすることにより、第1受信波R1及び第2受信波R2に虚像が発生せず、対象物Pに対する第1測距装置210及び第2測距装置220の相対位置が一意に定まるためでる。ただし、第1送信波T1及び第2送信波T2の波長によっては上記条件を満たすことが難しい場合もあるため、条件付けや計算による虚像の抑制、または除去が可能であれば各位置S間の距離を、上記1/4波長を超える距離とすることも可能である。
【0112】
第1距離情報算出部213は、各位置Sにおける第1送信波T1及び第1受信波R1に基づいて、第1位相情報を含む第1距離情報を算出する。上述のように第1位相情報は第1送信波T1と第1受信波R1の差分であるIF周波数であり(図4参照)、第1距離情報は第1測距装置210と対象物Pの距離である。また、第2距離情報算出部223は、各位置Sにおける第2送信波T2及び第2受信波R2に基づいて、第2位相情報を含む第2距離情報を算出する。上述のように第2位相情報は第2送信波T2と第2受信波R2の差分であるIF周波数であり(図4参照)、第2距離情報は第2測距装置220と対象物Pの距離である。
【0113】
第1位相変化算出部214は、第1距離情報算出部213によって算出された第1位相情報の位相変化を算出する。図20は、第1送信部211、第1受信部212、第2送信部221及び第2受信部222と対象物Pの位置関係と、第1位相情報及び第2位相情報の位相変化イメージを示す模式図である。同図において、第1送信部211及び第1受信部212の送受信範囲を範囲H1で示し、第2送信部221及び第2受信部222の送受信範囲を範囲H2で示す。
【0114】
図20に示すように第1位相情報の位相変化イメージは、対象物Pが所定の位置Sの近傍に位置する場合、位相変化が小さく、対象物Pが位置Sから離間するにしたがって位相変化が大きくなることを示している。これは、位置Sは第1送信部111及び第1受信部112に近接しているため、位置Sの近傍における対象物Pの移動による位相への影響が小さく、位置Sから離間すると対象物Pの移動による位相への影響が大きくなることを意味する。
【0115】
第2位相変化算出部224は、第2距離情報算出部223によって算出された第2位相情報の位相変化を算出する。図20に示すように第2位相情報の位相変化イメージは、対象物Pが所定の位置Sの近傍に位置する場合、位相変化が小さく、対象物Pが位置Sから離間するにしたがって位相変化が大きくなることを示している。これは、位置Sは第2送信部221及び第2受信部222に近接しているため、位置Sの近傍における対象物Pの移動による位相への影響が小さく、位置Sから離間すると対象物Pの移動による位相への影響が大きくなることを意味する。
【0116】
キャリブレーション処理部231は、第1位相情報の位相変化に応じて、対象物Pに対する第1受信部212の相対位置を特定し、第2位相情報の位相変化に応じて、対象物Pに対する第2受信部222の相対位置を特定する。
【0117】
具体的にはキャリブレーション処理部231は、第1位相情報の位相変化と、事前に算出した各距離及びレールF上の各位置毎に、レールF上を対象物Pが移動した場合に発生する位相変化量の理論値を畳み込むことで第1受信波R1に対して逆合成開口処理を実行する。この逆合成開口処理は、移動する対象物Pに対して第1受信部212を仮想的な大径レーダとして扱う逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)と同様の計算処理である。
【0118】
また、キャリブレーション処理部231は第2位相情報の位相変化と、事前に算出した各距離及びレールF上の各位置毎に、レールF上を対象物Pが移動した場合に発生する位相変化量の理論値を畳み込むことで第2受信波R2に対して逆合成開口処理を実行する。この逆合成開口処理は、移動する対象物Pに対して第2受信部222を仮想的な大径レーダとして扱う逆合成開口レーダと同様の計算処理である。
【0119】
図21は逆合成開口処理の処理結果を示す模式図である。同図に示すように、逆合成開口処理によって、対象物Pの位置に対する第1受信部212の相対位置をピークE1として得られ、象物Pの位置に対する第2受信部222の相対位置をピークE2として得られる。
【0120】
キャリブレーション処理部231は、第1測距装置210が備える第1受信部212毎に対象物Pと第1受信部212の相対位置を算出することにより、対象物Pに対する第1測距装置210の相対位置及び相対角度を算出することができる。なお、対象物Pに対する第1測距装置210の相対位置は、第1測距装置210が1つの第1受信部212を備える場合でも算出可能である。一方、対象物Pに対する第1測距装置210の相対角度は、第1測距装置210が複数の第1受信部212を備える場合に、各第1受信部212と対象物Pの距離を用いて算出可能である。
【0121】
また、キャリブレーション処理部231は、第2測距装置220が備える第2受信部222毎に対象物Pと第2受信部222の相対位置を算出することにより、対象物Pに対する第2測距装置220の相対位置及び相対角度を算出することができる。なお、対象物Pに対する第2測距装置220の相対位置は、第2測距装置220が1つの第2受信部222を備える場合でも算出可能である。一方、対象物Pに対する第2測距装置220の相対角度は、第2測距装置220が複数の第2受信部222を備える場合に、各第2受信部222と対象物Pの距離を用いて算出可能である。
【0122】
キャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1測距装置210の相対位置と、対象物Pに対する第2測距装置220の相対位置に基づいて、第1の実施形態と同様の手法で第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置を特定することができる(図12参照)。また、キャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1測距装置210の相対角度と、対象物Pに対する第2測距装置220の相対角度に基づいて、第1の実施形態と同様の手法で第1測距装置210と第2測距装置220の相対角度を特定することができる(図13参照)。
【0123】
このようにしてキャリブレーション処理部231は、第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置(X軸/Y軸/Z軸(図5参照))と相対角度(ピッチ/ヨー/ロール(図5参照))を特定することができる。キャリブレーション処理部231は第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置及び相対角度を用いて、第1測距装置210及び第2測距装置220の測定結果にキャリブレーション処理を実行することができる。なお、キャリブレーションシステム200では、レールFの数を複数とし、延伸方向を平行(Y軸方向)または垂直(X軸方向)等として上記動作を行うことにより、キャリブレーションの精度向上が可能である。
【0124】
図22は、キャリブレーションシステム200によるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。キャリブレーション処理が開始されると、図18に示すように対象物PがレールFにセットされる(St201)。続いて第1送信部211は第1送信波T1を送信し、第2送信部221は第2送信波T2を送信する。第1受信部212は、第1送信波T1が対象物Pで反射された第1受信波R1を受信し、第2受信部222は、第2送信波T2が対象物Pで反射された第2受信波R2を受信する(St202)。さらに、対象物Pが移動する(St203)と、キャリブレーション処理部231は、X軸、Y軸及びZ軸の各距離及び各角度毎に位相変化(図20参照)の理論値を算出する(St204)。
【0125】
続いて、対象物Pの移動距離が指定値以上の場合(St205;Yes)、第1距離情報算出部213が第1受信波R1から第1距離情報を算出し、第2距離情報算出部223が第2受信波R2から第2距離情報を算出する(St206)。さらに、第1位相変化算出部214が第1距離情報に含まれる第1位相情報の位相変化(図20参照)を算出し、第2位相変化算出部224が第2距離情報に含まれる第2位相情報の位相変化(図20参照)を算出する(St207)。なお、対象物Pの移動距離が指定値未満の場合(St205;No)、第1受信波R1及び第2受信波R2の受信ステップ(St202)から理論値の算出ステップ(St204)が繰り返し実行される。
【0126】
続いて、キャリブレーション処理部231は、逆合成開口処理を実行(St208)する。本処理によりキャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1受信部212の相対位置と対象物Pに対する第2受信部222の相対位置を特定する。続いて、キャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1受信部212の相対位置に基づいて、対象物Pに対する第1測距装置210の相対位置及び相対角度を算出する(St209)。また、キャリブレーション処理部131は、対象物Pに対する第2受信部222の相対位置に基づいて、対象物Pに対する第2測距装置220の相対位置及び相対角度を算出する(St209)。
【0127】
続いて、キャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する第1測距装置210の相対位置及び相対角度と対象物Pに対する第2測距装置210の相対位置及び相対角度に基づいて、第1測距装置210と第2測距装置220の間の相対位置及び相対角度を算出する(St210)。以上のようにしてキャリブレーションシステム200は、第1測距装置210と第2測距装置220のキャリブレーションを実行することが可能である。
【0128】
なお、上記フローでは、対象物PがレールF上で一定距離移動毎に停止し、停止中に第1送信波T1及び第2送信波T2の送信を行う場合を想定している。対象物PがレールF上において等速直線運動をし、連続的に移動している場合には、キャリブレーション処理部231は対象物Pの移動速度を取得し、対象物Pの移動速度に基づいて対象物Pの移動によるドップラー成分を補正する必要がある。
【0129】
[キャリブレーションシステムによる効果]
キャリブレーションシステム200では、上記のように自動車150に対して移動する対象物Pに対して、第1測距装置210及び第2測距装置220の測定結果に基づいて第1測距装置210と第2測距装置220の相対位置及び相対角度を高精度に特定することが可能である。これにより、第1測距装置210及び第2測距装置220の測定結果を組み合わせることで高精度の物体検出が可能となる。
【0130】
また、キャリブレーションシステム200では第1測距装置210及び第2測距装置220と対象物Pの相対位置が未知の場合でも、第1測距装置210及び第2測距装置220の角度推定精度以上の精度でキャリブレーションを実施することが可能である。さらに、キャリブレーションシステム200では第1測距装置210及び第2測距装置220と対象物Pの距離が短い場合でもキャリブレーションを実施することが可能である。
【0131】
[他のセンサとのキャリブレーションについて]
キャリブレーションシステム200では、第1測距装置210及び第2測距装置220と他のセンサのキャリブレーションを実行することも可能である。図23は第1測距装置210及び第2測距装置220と他のセンサのキャリブレーション方法を示す模式図である。他のセンサの例として撮像装置240を示す。撮像装置240のように、対象物Pの移動に伴う位相変化を検出できないセンサの場合、位相変化を利用したキャリブレーションは実行できない。
【0132】
図23に示すように、対象物Pを移動させながら、撮像装置240が対象物Pを撮像し、撮像画像を生成する。対象物Pはチェッカー模様等の既定の表示Qが施されているものが好適である。図23において、撮像装置240から見た対象物Pの方向を線Gで示す。キャリブレーション処理部231は撮像装置240が撮像した撮像画像に対して画像処理を実行し、撮像画像に含まれる表示Q等に基づいて対象物Pに対する撮像装置240の相対位置及び相対角度を算出する。
【0133】
対象物Pに対する第1測距装置210及び第2測距装置220の相対位置及び相対角度は上記のように位相変化を利用して特定可能である。したがって、キャリブレーション処理部231は、対象物Pに対する撮像装置240、第1測距装置210及び第2測距装置220の相対位置及び相対角度を特定することができ、これら相互間の対位置及び相対角度に基づいてキャリブレーション処理を実行することが可能である。
【0134】
なお、対象物Pの表示Qは一般的に撮像装置のキャリブレーションに使用される2次元のチェッカーボードのように2次元の平面表示ではなく、1次元の距離差分が検出可能なものであれば十分である。これは、表示Qは対象物Pと連動して移動するため、2次元の平面表示と同様のデータを得られるためである。
【0135】
キャリブレーションシステム200が第1測距装置210及び第2測距装置220に対してキャリブレーション処理を実行可能なセンサは撮像装置に限られず、何らかの手法により対象物Pに対して自己の相対位置及び相対角度を特定可能なセンサであればよい。
【0136】
[変形例]
キャリブレーションシステム200の変形例について説明する。上述したキャリブレーションシステム200の構成では単体でX軸、Y軸及びZ軸についての検出が可能な測距装置を例にとっているが、検出可能な座標軸が少ない測距装置間でもキャリブレーションは可能である。その場合にはキャリブレーション対象の軸を測距装置に合わせて減らすか、レールを複数に増やし、取得可能なデータの次元数を増やすことが必要となる。
【0137】
また、キャリブレーションシステム200は第1測距装置210と第2測距装置220の2つの測距装置を備えるとしたが、3つ以上の測距装置を備えるものであってもよい。この場合も上記手法により、キャリブレーションシステム200が備える各測距装置の間でキャリブレーションを実行することが可能である。自動車250における測距装置の配置場所も特に限定されず、上記手法が実行可能な配置であればよい。
【0138】
(応用例)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0139】
図24は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図24に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0140】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図24では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0141】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0142】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0143】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0144】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0145】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0146】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0147】
ここで、図25は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0148】
なお、図25には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0149】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0150】
図24に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0151】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0152】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0153】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0154】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0155】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0156】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0157】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0158】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0159】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0160】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0161】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0162】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0163】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図24の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0164】
なお、図24示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0165】
なお、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る情報処理装置161及び図16を用いて説明した第2の実施形態に係る情報処理装置261の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0166】
以上説明した車両制御システム7000において、情報処理装置161及び情報処理装置261は、図24に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。例えば、情報処理装置161の第1距離情報算出部113、第1位相変化算出部114、第2距離情報算出部123、第2位相変化算出部124、キャリブレーション処理部131は統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610、記憶部7690、車載ネットワークI/F7680に相当する。また、例えば、情報処理装置261の第1距離情報算出部213、第1位相変化算出部214、第2距離情報算出部223、第2位相変化算出部224、キャリブレーション処理部231は統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610、記憶部7690、車載ネットワークI/F7680に相当する。
【0167】
また、情報処理装置161及び情報処理装置261の少なくとも一部の構成要素は、図24に示した統合制御ユニット7600のためのモジュール(例えば、一つのダイで構成される集積回路モジュール)において実現されてもよい。あるいは、情報処理装置161及び情報処理装置261が、図24に示した車両制御システム7000の複数の制御ユニットによって実現されてもよい。
【0168】
(本開示について)
本開示中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。上記の複数の効果の記載は、それらの効果が必ずしも同時に発揮されるということを意味しているのではない。条件等により、少なくとも上記した効果のいずれかが得られることを意味しており、本開示中に記載されていない効果が発揮される可能性もある。また、本開示において説明した特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を任意に組み合わせることも可能である。
【0169】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)
第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する第1の距離情報算出部と、
上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出する第1の位相変化算出部と、
第2の測距装置が備え、上記筐体に設置された第2の受信部が受信した、上記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する第2の距離情報算出部と、
上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出する第2の位相変化算出部と、
上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理部と
を具備する情報処理装置。
(2)
上記(1)に記載の情報処理装置であって、
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定し、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記キャリブレーション処理を実行する
情報処理装置。
(3)
上記(2)に記載の情報処理装置であって、
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と、上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対位置を特定し、上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対位置に基づいて上記キャリブレーション処理を実行する
情報処理装置。
(4)
上記(2)又は(3)に記載の情報処理装置であって、
上記キャリブレーション処理部は、上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置と上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置に基づいて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対角度を特定し、上記第1の測距装置と上記第2の測距装置の相対角度に基づいて上記キャリブレーション処理を実行する
キャリブレーションシステム。
(5)
上記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の情報処理装置であって、
上記第1の位相変化算出部は、上記筐体の移動に応じて発生する上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
上記第2の位相変化算出部は、上記筐体の移動に応じて発生する上記第2の位相情報の位相変化を算出する
情報処理装置。
(6)
上記(5)に記載の情報処理装置であって、
上記キャリブレーション処理部は、上記第1の受信波に対して合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置を特定し、上記第2の受信波に対して合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定する
情報処理装置。
(7)
上記(1)から(4)のうちいずれか1つに記載の情報処理装置であって、
上記第1の位相変化算出部は、上記対象物の移動に応じて発生する上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
上記第2の位相変化算出部は、上記対象物の移動に応じて発生する上記第2の位相情報の位相変化を算出する
情報処理装置。
(8)
上記(7)に記載の情報処理装置であって、
上記キャリブレーション処理部は、上記第1の受信波に対して逆合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第1の受信部の相対位置を特定し、上記第2の受信波に対して逆合成開口処理を実行して上記対象物に対する上記第2の受信部の相対位置を特定する
情報処理装置。
(9)
上記(1)から(8)のうちいずれか1つに記載の情報処理装置であって、
上記第1の受信波は第1の送信波が上記対象物によって反射された波であり、
上記第2の受信波は第2の送信波が上記対象物によって反射された波であり、
上記第1の距離情報算出部は、上記第1の送信波と上記第1の受信波に基づいて上記第1の距離情報を算出し、
上記第2の距離情報算出部は、上記第2の送信波と上記第2の受信波に基づいて上記第2の距離情報を算出する
情報処理装置。
(10)
筐体に設置され、対象物で反射された第1の受信波を受信する第1の受信部と、
上記第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出する第1の距離情報算出部と、
上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出する第1の位相変化算出部と
を備える第1の測距装置と、
上記筐体に設置され、上記対象物で反射された第2の受信波を受信する第2の受信部と、
上記第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出する第2の距離情報算出部と、
上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出する第2の位相変化算出部と
を備える第2の測距装置と、
上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理装置と
を具備するキャリブレーションシステム。
(11)
上記(10)に記載のキャリブレーションシステムであって、
上記第1の測距装置は、上記筐体に設置され、上記対象物に第1の送信波を送信する第1の送信部をさらに具備し、
上記第1の受信部は、上記第1の送信波が上記対象物によって反射された波である上記第1の受信波を受信し、
上記第1の距離情報算出部は、上記第1の送信波と上記第1の受信波に基づいて上記第1の距離情報を算出し、
上記第2の測距装置は、上記筐体に設置され、上記対象物に第2の送信波を送信する第2の送信部をさらに具備し、
上記第2の受信部は、上記第2の送信波が上記対象物によって反射された波である上記第2の受信波を受信し、
上記第2の距離情報算出部は、上記第2の送信波と上記第2の受信波に基づいて上記第2の距離情報を算出する
キャリブレーションシステム。
(12)
上記(10)又は(11)に記載のキャリブレーションシステムであって、
上記対象物を撮像した撮像画像を生成する撮像装置をさらに具備し、
上記キャリブレーション処理装置は、上記第1の位相情報の位相変化、上記第2の位相情報の位相変化及び上記撮像画像に応じて、上記第1の測距装置、上記第2の測距装置及び上記撮像装置のキャリブレーション処理を実行する
キャリブレーションシステム。
(13)
上記(10)から(12)のうちいずれか1つに記載のキャリブレーションシステムであって、
上記第1の受信波及び上記第2の受信波はミリ波であり、
上記第1の受信部及び上記第2の受信部はアンテナである
キャリブレーションシステム。
(14)
上記(10)から(13)のうちいずれか1つに記載のキャリブレーションシステムであって、
上記筐体は自動車である
キャリブレーションシステム。
(15)
第1の測距装置が備え、筐体に設置された第1の受信部が受信した、対象物で反射された第1の受信波に基づいて第1の位相情報を含む第1の距離情報を算出し、
上記対象物または上記筐体のうちの一方の移動に応じて発生する、上記第1の位相情報の位相変化を算出し、
第2の測距装置が備え、上記筐体に設置された第2の受信部が受信した、上記対象物で反射された第2の受信波に基づいて第2の位相情報を含む第2の距離情報を算出し、
上記対象物または上記筐体のうちの上記一方の移動に応じて発生する、上記第2の位相情報の位相変化を算出し、
上記第1の位相情報の位相変化及び上記第2の位相情報の位相変化に応じて上記第1の測距装置と上記第2の測距装置のキャリブレーション処理を実行する
情報処理方法。
【符号の説明】
【0170】
100、200…キャリブレーションシステム
110、210…第1測距装置
111、211…第1送信部
112、212…第1受信部
113、213…第1距離情報算出部
114、214…第1位相変化算出部
120、220…第2測距装置
121、221…第2送信部
122、222…第2受信部
123、223…第2距離情報算出部
124、224…第2位相変化算出部
130、230…キャリブレーション処理装置
131、231…キャリブレーション処理部
140、240…撮像装置
150、250…自動車
161、261…情報処理装置
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