(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181132
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】出力装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/46 20060101AFI20221130BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
F16H1/46
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087994
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣川 剛士
【テーマコード(参考)】
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FB40
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD14
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD19
5H607EE33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数段の遊星歯車機構を有するとともに、円滑な回転力を出力する出力装置を提供する。
【解決手段】上下に延びる中心軸J1に沿って延びるモータシャフト21を有するモータ部20と、モータ部の上部に配置されてモータシャフトにつながる減速機構30と、を有する。減速機構は、中心軸に沿って上下に並んで配置される複数の遊星歯車機構を有する。上下に隣り合う前記遊星歯車機構において、上側の遊星歯車機構70の太陽歯車71を有するシャフト76は、下端面に軸方向に凹む凹部763を有する。下側の遊星歯車機構60の太陽歯車61を有するシャフトの上端は、軸受77を介して凹部に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸に沿って延びるモータシャフトを有するモータ部と、
前記モータ部の上部に配置されて前記モータシャフトにつながる減速機構と、
を有し、
前記減速機構は、前記中心軸に沿って上下に並んで配置される複数の遊星歯車機構を有し、
上下に隣り合う前記遊星歯車機構において、
上側の遊星歯車機構の太陽歯車を有するシャフトは、下端面に軸方向に凹む凹部を有し、下側の遊星歯車機構の太陽歯車を有するシャフトの上端は、軸受部材を介して前記凹部に配置される出力装置。
【請求項2】
前記減速機構の最上部の前記遊星歯車機構は、軸方向の上方に配置されるとともに中心が前記中心軸と重なる最終キャリアを有し、
前記最終キャリアは、下端面に軸方向に凹む最終凹部を有し、
最上部に配置される前記太陽歯車を有する前記シャフトの上端は、最終軸受部材を介して前記最終凹部に配置される請求項1に記載の出力装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記遊星歯車機構において、
前記シャフトは
前記太陽歯車を有する上柱部と、
前記上柱部の軸方向下端から軸方向下方に延びる下柱部と、を有し、
前記下柱部は、前記上柱部よりも外径が大きい請求項1又は請求項2に記載の出力装置。
【請求項4】
上下に並んだ前記遊星歯車機構において、
下側の前記遊星歯車機構は遊星歯車を支持するキャリアを有し、
下側の前記キャリアの径方向中央には、前記中心軸に沿う方向に貫通し、上側の前記遊星歯車機構の前記下柱部が配置されるキャリア貫通孔が形成され、
前記下柱部の径方向外面が前記キャリア貫通孔の径方向内面と接触し、
前記キャリアの前記遊星歯車を支持する接触面の軸方向の長さよりも、前記貫通孔の径方向内面と前記下柱部の径方向外面との接触面の軸方向の長さが長い請求項3に記載の出力装置。
【請求項5】
前記下柱部の径方向外面から前記凹部の径方向内面までの径方向の長さは、前記凹部の径方向内面の半径よりも大きい請求項3又は請求項4に記載の出力装置。
【請求項6】
前記下柱部の径方向外面から前記凹部の径方向内面までの径方向の長さは、前記凹部の径方向内面の半径よりも小さい請求項3又は請求項4に記載の出力装置。
【請求項7】
前記下柱部の軸方向の長さは、前記上柱部の長さよりも短い請求項4から請求項6のいずれかに記載の出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを用いた駆動装置が知られている。この種の駆動装置は、モータと、ギヤボックスを有する。このギヤボックスは、第1遊星歯車を有する第1遊星歯車列と、第2遊星歯車を有する第2遊星歯車列を有する、2段のギヤボックスである。第1遊星歯車列の太陽歯車と、第2遊星歯車列の太陽歯車とは、同軸的に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した駆動装置では、第2段の太陽歯車が第1段の太陽歯車と離れて形成されている。そのため、伝達されるトルクによって、第2段の太陽歯車の中心が中心軸からずれる虞がある。これにより、出力される回転の振動及び出力されるトルクのむらが発生する恐れがある。
【0005】
本発明は、複数段の遊星歯車機構を有するとともに、円滑な回転力を出力する出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な出力装置は、上下に延びる中心軸に沿って延びるモータシャフトを有するモータ部と、モータ部の上部に配置されてモータシャフトにつながる減速機構と、を有する。減速機構は、中心軸に沿って上下に並んで配置される複数の遊星歯車機構を有する。上下に隣り合う前記遊星歯車機構において、上側の遊星歯車機構の太陽歯車を有するシャフトは、下端面に軸方向に凹む凹部を有する。下側の遊星歯車機構の太陽歯車を有するシャフトの上端は、軸受を介して凹部に配置される。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、複数段の遊星歯車機構を有するとともに、円滑な回転力を出力する出力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4は、下側の遊星歯車機構を中心軸と直交する面で切断した断面図である。
【
図5】
図5は、上側の遊星歯車機構を中心軸と直交する面で切断した断面図である。
【
図6】
図6は、下側の遊星歯車機構の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書では、出力装置10の説明に際して、
図2に示す出力装置10の状態を基準として説明する。出力装置10において、中心軸J1が上下方向に延びる。そして、中心軸J1が延びる方向を「軸方向」と称する。中心軸J1に直交する方向を「径方向」、中心軸J1を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。なお、上述の方向は、説明を容易にするために定義したものであり、実際に使用される出力装置10の方向と一致しない場合もある。
【0010】
図1は、本発明にかかる出力装置10の斜視図である。
図2は、
図1に示す出力装置10の分解斜視図である。
図3は、
図1に示す出力装置10の断面図である。
図1から
図3に示すように、出力装置10は、モータ部20と、減速機構30と、を有する。
【0011】
<モータ部20>
モータ部20は、直流のブラシレスモータである。モータ部20は、モータシャフト21と、ロータ22と、ステータ25と、を有する。モータシャフト21の一部、ロータ22及びステータ25は、ベース部40の下部に配置される。さらに詳しく説明すると、モータ部20は、ベース部40の後述する軸受保持部43に固定される。モータ部20は、ステータ25の径方向外方に、ロータ22が配置されたアウターロータ型モータである。なお、モータ部20は、アウターロータ型モータに限定されず、インナーロータ型モータであってもよい。
【0012】
<モータシャフト21>
モータシャフト21は、略円柱状である。
図1~
図3に示すように、モータシャフト21は、上下方向に延びる中心軸J1に沿って延びる。すなわち、モータ部20は、上下に延びる中心軸J1に沿って延びるモータシャフト21を有する。モータシャフト21は、中心軸J1周りに回転可能である。
図3に示すように、モータシャフト21の上端は、ベース部40の上方に突出する。
【0013】
モータシャフト21は、ベース部40の後述する軸受保持部43の径方向内面に、シャフト軸受211を介して回転可能に支持される。シャフト軸受211は、軸方向に離れた2か所に配置され、モータシャフト21の軸方向に離れた2か所を回転可能に支持する。シャフト軸受211は、ここでは、玉軸受であるが、それに限定されない。モータシャフト21を円滑かつ正確に支持できる軸受構造を広く採用することができる。
【0014】
<ロータ22>
ロータ22は、モータシャフト21の外周に固定される。ロータ22は、ロータヨーク23と、ロータマグネット24と、を有する。ロータ22は、上下方向に延びる中心軸J1を中心として回転する。
【0015】
ロータヨーク23は、鋼板等の磁性材料で形成される。ロータヨーク23は、ロータ蓋部231と、ロータ筒部232とを有する。ロータ蓋部231は、円環状であり、中心軸J1と直交する方向に広がる。ロータ蓋部231の中央には、中心軸J1に沿って貫通する貫通孔230が形成される。貫通孔230には、モータシャフト21が固定される。つまり、ロータヨーク23は、モータシャフト21と一体的に回転する。
【0016】
ロータ筒部232は、ロータ蓋部231の径方向外縁から上方に延びる筒体である。ロータ筒部232の内面にロータマグネット24が固定される。ロータマグネット24は、筒状である。ロータマグネット24の径方向内面は、周方向に異なる磁極が交互に並ぶ。なお、ロータマグネット24として、筒状の構成を採用しているがこれに限定されない。例えば、平板状又は曲面状のマグネットを、ロータ筒部232の径方向内面に周方向に並んで固定してもよい。
【0017】
<ステータ25>
ステータ25は、ステータコア26と、コイル27と、インシュレータ28とを有する。ステータ25は、ベース部40の軸受保持部43の径方向外面に保持される。ステータコア26は、コアバック261と、複数のティース262とを有する。コアバック261は、円環状である。コアバック261の径方向内側面は、ベース部40の保持部筒部431に固定される。ティース262は、コアバック261の径方向外側面から中心軸J1から遠ざかる方向に突出する。複数のティース262は、周方向に等間隔で配置される。コイル27は、ティース262に導線を巻きつけることで形成される。
【0018】
<ベース部40>
図2、
図3に示すように、ベース部40は、ベースプレート41と、軸受保持部43と、を有する。ベースプレート41は、中心軸J1と直交する方向に広がる環状である。ベースプレート41の中央には軸方向に貫通するベース貫通孔42が形成される。モータシャフト21は、ベース貫通孔42を貫通する。
【0019】
軸受保持部43は、保持部筒部431と、保持部フランジ部432とを有する。保持部筒部431は、中心軸J1に沿って延びる円筒状である。保持部フランジ部432は、円環状である。保持部フランジ部432は、保持部筒部431の軸方向上端から径方向外方に広がる。保持部フランジ部432は、ベースプレート41の下面に固定される。このとき、ベースプレート41の中心線と、保持部フランジ部432の中心線とは中心軸J1と重なる。
【0020】
なお、軸受保持部43の保持部フランジ部432と、ベースプレート41とは、例えば、ねじ等の締結具で固定される。締結具はねじに限定されず、保持部フランジ部432とベースプレート41とを強固に固定できる構成を広く採用することができる。保持部フランジ部432がベースプレート41に対して、分離可能に固定できる固定具を用いることが好ましい。
【0021】
保持部筒部431の径方向内面には、シャフト軸受211が軸方向に間隔をあけて配置される。つまり、保持部筒部431には、シャフト軸受211が取り付けられる。シャフト軸受211は、モータシャフト21を回転可能に支持する。また、保持部筒部431の径方向外面には、ステータ25のステータコア26が固定される。
【0022】
<モータ部20のその他の構成>
図3等に示すように、保持部フランジ部432の下面には、回路基板Bdが配置される。回路基板Bdには、コイル27に供給される電流を制御する制御回路が実装される。
【0023】
モータ部20は、不図示の電源から供給される電力によって駆動される。つまり、電源から供給される電流が、コイル27に供給されることで、コイル27は、励磁される。コイル27が励磁されることで、ロータ22のロータマグネット24との間に磁力が発生する。複数のコイル27を適切なタイミングで励磁することで、ロータ22に中心軸J1を中心とする周方向のトルクが発生する。このトルクによってモータシャフト21が中心軸J1周りに回転する。
【0024】
<減速機構30>
図2、
図3に示すように、減速機構30は、中心軸J1に沿って配置される。さらに詳しく説明すると、減速機構30は、モータ部20の上部に配置され、モータシャフト21につながる。なお、ここで、モータシャフト21と、減速機構30とが「つながる」とは、モータシャフト21と減速機構30とが機械的に「接続」又は「連結」されることを意味し、モータシャフト21と減速機構30とが電気的に接続されることを意味するものではない。以下、「つながる」と記載する場合、同様である。
【0025】
減速機構30は、中心軸J1に沿って上下に並んで配置される複数の遊星歯車機構60、70を有する。さらに詳しく述べると、減速機構30は、上下二段に配置される遊星歯車機構60、70を有する。なお、本実施形態における減速機構30において、遊星歯車機構60と、遊星歯車機構70とを区別するため、下側の遊星歯車機構60、上側の遊星歯車機構70として区別する。また、上側の遊星歯車機構70は、最上部の遊星歯車機構である。
【0026】
<下側の遊星歯車機構60>
図4は、下側の遊星歯車機構60を中心軸J1と直交する面で切断した断面図である。
図5は、上側の遊星歯車機構70を中心軸J1と直交する面で切断した断面図である。
図6は、下側の遊星歯車機構60の拡大断面図である。
図2、
図3に示すように、下側の遊星歯車機構60は、下側の太陽歯車61と、下側の遊星歯車62と、下側の内歯歯車63と、下側のキャリア64と、下側のケース65と、を有する。
【0027】
<下側の太陽歯車61>
図2、
図3に示すように、下側の太陽歯車61は、モータシャフト21の上端に配置される。下側の太陽歯車61は、モータシャフト21の径方向外面に配置される。下側の太陽歯車61は、モータシャフト21と一体的に回転する。そのため、下側の太陽歯車61は、モータシャフト21と単一の部材で形成されてもよいし、モータシャフト21に装着し、接着、溶接、ねじ止め、かしめ、圧入等の固定方法で固定してもよい。また、このような固定方法以外にも、下側の太陽歯車61をモータシャフト21と一体的に回転可能に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0028】
下側の太陽歯車61は、モータシャフト21に固定されている。そのため、下側の遊星歯車機構60において、モータシャフト21は、下側の太陽歯車61が取り付けられるシャフトである。
【0029】
<下側の遊星歯車62>
図4に示すように、下側の遊星歯車機構60は、3つの下側の遊星歯車62を有する。3つの下側の遊星歯車62は、周方向に等間隔で並んで配置される。なお、下側の遊星歯車62の周方向の配列は、等間隔に限定されない。そして、下側の遊星歯車62は、下側の太陽歯車61と噛み合う。なお、本実施形態の下側の遊星歯車機構60では、3つの下側の遊星歯車62を有するが、3つに限定されない。2つ以上の下側の遊星歯車62を有していればよい。しかしながら、安定した動作を行うため、下側の遊星歯車62は、3つ以上であることが好ましい。
【0030】
下側の遊星歯車62は、下側の遊星シャフト621に回転可能に支持される。そして、下側の遊星シャフト621の上端部は、下側のキャリア64に設けられた遊星貫通孔642に挿入される。なお、下側の遊星歯車62は、下側の遊星シャフト621に回転可能に支持されて、下側の遊星シャフト621が下側のキャリア64に固定される構成であるが、これに限定されない。例えば、下側の遊星歯車62が下側の遊星シャフト621に固定されて、下側の遊星シャフト621が下側のキャリア64の遊星貫通孔642に回転可能に支持されてもよい。すなわち、上下に並んだ遊星歯車機構60、70において、下側の遊星歯車機構60は遊星歯車62を支持するキャリア64を有する。
【0031】
<下側の内歯歯車63>
図4に示すように、下側の内歯歯車63は、環状の歯車である。下側の内歯歯車63は、径方向内面に形成された内歯を有する。下側の内歯歯車63は、下側の遊星歯車62と噛み合う。下側の内歯歯車63は、下側のケース65に固定される。後述するとおり、下側のケース65は、ベース部40に固定される。下側のケース65に固定される下側の内歯歯車63は、固定である。このことから、下側の遊星歯車機構60は、キャリアが出力となる、いわゆる、プラネタリ型の遊星歯車機構である。なお、下側のケース65の詳細については、後述する。
【0032】
<下側のキャリア64>
下側のキャリア64は、下側の遊星歯車機構60の上部に配置される。下側のキャリア64は、中央筒部640と、支持翼部641と、遊星貫通孔642と、キャリア貫通孔643と、を有する。
【0033】
中央筒部640は、中心軸J1に沿って延びる。中央筒部640は、ここでは、円筒状である。しかしながら、円筒状に限定されない。中央筒部640は、径方向中央にキャリア貫通孔643を有する。キャリア貫通孔643は、中心軸J1に沿って延びる円筒状の貫通孔である。すなわち、下側のキャリア64の径方向中央には、中心軸J1に沿う方向に貫通するキャリア貫通孔643が形成される。キャリア貫通孔643には、下側の遊星歯車機構60の上方に配置される上側の遊星歯車機構70の後述する上側のシャフト76が固定される。
【0034】
なお、上側のシャフト76は、キャリア貫通孔643に圧入することで固定される。しかしながら、固定方向は圧入に限定されず、ねじ止め、接着、溶接等の固定方法を採用してもよい。上側のシャフト76を下側のキャリア64に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0035】
支持翼部641は、中央筒部640の径方向外面から径方向外方に延びる。下側のキャリア64では、3つの支持翼部641を有する。各支持翼部641には、それぞれ、遊星貫通孔642が設けられる。遊星貫通孔642は、支持翼部641を中心軸J1に沿う方向に貫通する。上述したとおり、遊星貫通孔642には、下側の遊星シャフト621が固定される。なお、遊星貫通孔642には、下側の遊星シャフト621が固定されればよく、貫通していない形状であってもよい。
【0036】
<下側のケース65>
下側のケース65は、円環部651と、下筒部652と、上筒部653とを有する。円環部651は、中心軸J1と交差する。円環部651は中央に円環貫通孔654を有する。円環貫通孔654には、下側のキャリア64が配置される。さらに説明すると、下側のキャリア64は、円環貫通孔654を貫通して配置される。
【0037】
下筒部652は、円環部651の径方向外縁から下方に延びる円筒状である。下筒部652は、ベース部40のベースプレート41に固定される。上筒部653は、円環部の上面から中心軸J1に沿って上方に突出する。上筒部653の径方向外面は、円筒状である。上筒部653の径方向外面には、後述の出力軸受Brの内輪が固定される。出力軸受Brの外輪には上側の遊星歯車機構70に設けた後述の出力部75が固定される。つまり、上筒部653には、出力部75が出力軸受Brを介して回転可能に取付られる。
【0038】
<上側の遊星歯車機構70>
図2、
図3に示すように、上側の遊星歯車機構70は、上側の太陽歯車71と、上側の遊星歯車72と、上側の内歯歯車73と、上側のキャリア74と、出力部75と、上側のシャフト76と、を有する。減速機構30は,二段の遊星歯車機構を有する。そのため、上側の遊星歯車機構70は、最上部の遊星歯車機構である。
【0039】
<上側の太陽歯車71及び上側のシャフト76>
図2、
図3に示すように、上側の太陽歯車71は、上側のシャフト76の上部に配置される。上側の太陽歯車71は、上側のシャフト76と一体的に回転する。上側の太陽歯車71は、最上部に配置される太陽歯車である。上側の太陽歯車71は、上側のシャフト76と単一の部材で形成されてもよいし、上側のシャフト76に装着し、接着、溶接、ねじ止め、かしめ、圧入等の固定方法で固定してもよい。また、このような固定方法以外にも、上側の太陽歯車71を上側のシャフト76と一体的に回転可能に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0040】
上側のシャフト76は、上柱部761と、下柱部762と、凹部763とを有する。上柱部761は、中心軸J1を中心とする円柱である。少なくとも1つの遊星歯車機構70において、上側のシャフト76は、上側の太陽歯車71を有する上柱部761を有する。
【0041】
下柱部762は、上柱部761の下端部とつながる。上柱部761と下柱部762とは、一体成型体である。
図3等に示すように、下柱部762の外径は、上柱部761の外径よりも大きい。上柱部761には、上側の太陽歯車71が配置される。
【0042】
すなわち、少なくとも1つの遊星歯車機構70において、上側のシャフト76は、上側の太陽歯車71を有する上柱部761と、上柱部761の軸方向下端から軸方向下方に延びる下柱部762と、を有する。そして、下柱部762は、上柱部761よりも外径が大きい。
【0043】
このように構成することで、上側のシャフト76の剛性を保ちつつ、上側の太陽歯車71の有効径を小さくすることができ、上側の太陽歯車71の歯数を減らすことが可能である。これにより、上側の遊星歯車機構70においてギヤ比を維持する場合、有効径の小さい上側の遊星歯車72を使用することができる。これにより、減速機構30を小型化できる。また、上側の遊星歯車72の有効径を大きくすることもできる。これにより、減速機構30の大きさを変化することなく、ギヤ比を大きくすることができる。
【0044】
下側の遊星歯車機構60のキャリア64のキャリア貫通孔643には、上側の遊星歯車機構70のシャフト76の下柱部762が配置される。下柱部762の径方向外面がキャリア貫通孔643の径方向内面と接触する。
【0045】
これにより、下側のキャリア64が回転することで、上側のシャフト76が回転する。
【0046】
図6に示すように、キャリア貫通孔643の径方向内面と下柱部762の径方向外面との接触面の軸方向の長さを長さL1とする。また、下側のキャリア64の下側の遊星歯車62を支持する接触面の軸方向の長さを長さL2とする。長さL1と長さL2戸には、L1>L2の関係が成り立つ。すなわち、下側のキャリア64の下側の遊星歯車62を支持する接触面の軸方向の長さL2よりも、キャリア貫通孔643の径方向内面と下柱部762の径方向外面との接触面の軸方向の長さL1が長い。
【0047】
このように構成することで、下側のキャリア64と、上側の太陽歯車71が取り付けられるシャフト76の接触面積を大きくすることができる。これにより、より大きなトルクを伝達することができる。
【0048】
凹部763は、上側のシャフト76の下端面に形成される。凹部763は、上側のシャフト76の下端面から軸方向上方に凹む。すなわち、上下に隣り合う遊星歯車機構60、70において、上側の遊星歯車機構70の太陽歯車71を有するシャフト76は、下端面に軸方向に凹む凹部763を有する。
【0049】
そして、凹部763には、下側の遊星歯車機構の太陽歯車を有するシャフト、つまり、モータシャフト21の上端が、軸受部材77を介して配置される。すなわち、上下に隣り合う遊星歯車機構60、70において、下側の遊星歯車機構60の太陽歯車61を有するモータシャフト21の上端は、軸受部材77を介して凹部763に配置される。なお、軸受部材77は、すべり軸受であるが、これに限定されない。例えば、流体動圧軸受、ボールベアリング等を採用することができる。また、軸受部材77を用いずに、潤滑剤のみで摩擦を抑制してもよい。
【0050】
図6に示すように、下柱部762の径方向外面から凹部763の径方向内面までの径方向の長さを長さw1とする。また、凹部763の径方向内面の半径を半径r1とする。このとき、長さw1と半径r1との間には、w1>r1の関係が成り立つ。すなわち、下柱部762の径方向外面から凹部763の径方向内面までの径方向の長さw1は、凹部763の径方向内面の半径r1よりも大きい。
【0051】
このように構成することで、下柱部762の剛性を高めることができる。これにより、上側のシャフト76のずれを抑制する効果をより高めることができ、上側の太陽歯車71の回転を安定させることができる。
【0052】
また、長さw1と半径r1とは、w1<r1であってもよい。すなわち、下柱部762の径方向外面から凹部763の径方向内面までの径方向の長さw1は、凹部763の径方向内面の半径r1よりも小さくてもよい。
【0053】
このように構成することで、下柱部762の径方向外端の位置を中心軸に近づけることができるため、下側のキャリア64を大きくできる。これにより、下側の遊星歯車62を支持する遊星シャフト621の径を大きくすることができる。そのため、下側の遊星歯車62の傾きを抑制できる。
【0054】
さらに、
図6に示すように、上柱部761の軸方向の長さを長さL3とし、下柱部762の軸方向の長さを長さL4とする。このとき、長さL3と長さL4とは、L3>L4である。すなわち、上下に並んだ遊星歯車機構60、70において、下柱部762の軸方向の長さL4は、上柱部761の長さL1よりも短い。
【0055】
このように構成することで、上側のシャフト76の上端と最終凹部745との隙間によって、上側のシャフト76の中心が中心軸J1に対して振れた場合でも、振れを小さくすることができる。これにより、上側のシャフト76の回転精度を高めることができ、より円滑にトルクを伝達することができる。
【0056】
<上側の遊星歯車72>
図5に示すように、上側の遊星歯車機構70は、3つの上側の遊星歯車72を有する。3つの上側の遊星歯車72は、周方向に等間隔で並んで配置される。なお、上側の遊星歯車72の周方向の配列は、等間隔に限定されない。そして、上側の遊星歯車72は、上側の太陽歯車71と噛み合う。なお、本実施形態の上側の遊星歯車機構70では、3つの上側の遊星歯車72を有するが、3つに限定されない。2つ以上の上側の遊星歯車72を有していればよい。しかしながら、安定した動作を行うため、上側の遊星歯車72は、3つ以上であることが好ましい。
【0057】
上側の遊星歯車72は、上側の遊星シャフト721に回転可能に支持される。そして、上側の遊星シャフト721の上端部は、上側のキャリア74に設けられた遊星貫通孔743に挿入される。なお、上側の遊星歯車72は、上側の遊星シャフト721に回転可能に支持されて、上側の遊星シャフト721が上側のキャリア74に固定される構成であるが、これに限定されない。例えば、上側の遊星歯車72が上側の遊星シャフト721に固定されて、上側の遊星シャフト721が上側のキャリア74の遊星貫通孔743に回転可能に支持されてもよい。
【0058】
<上側のキャリア74>
上側のキャリア74は、上側の遊星歯車機構70の上部に配置される。上側のキャリア74は、支持部741と、3つの脚部742と、キャリアシャフト部744と、最終凹部745と、を有する。
【0059】
上側のキャリア74は、最終キャリア74である。すなわち、減速機構30の最上部の遊星歯車機構70は、軸方向の上方に配置されるとともに中心が中心軸J1と重なる最終キャリア74を有する。
【0060】
支持部741は、中心軸J1と直交する方向に広がる円板状である。3つの脚部742は、支持部741の径方向外縁に接続する。3つの脚部742は、軸方向下方に延びる。そして、3つの脚部742は、周方向に等間隔に配置される。3つの脚部742は、下側のケース65に固定される。なお、固定方法は、ねじ止めを採用するが、これに限定されない。例えば、溶接、接着等の固定方法を採用してもよい。脚部742を下側のケース65に強固に固定できる固定方法を広く採用できる。つまり、上側の遊星歯車機構70は、キャリア74が固定された、いわゆる、スター型の遊星歯車機構である。
【0061】
キャリアシャフト部744は、支持部741の上面の中央部から軸方向上方に延びる。キャリアシャフト部744は、中心軸J1を中心とする円柱状である。キャリアシャフト部744の径方向外面には、出力部75を回転可能に支持する出力軸受Brの内輪が固定される。つまり、キャリアシャフト部744には、出力部75が出力軸受Brを介して回転可能に取付られる。
【0062】
最終凹部745は、上側のキャリア74の支持部741の下端面から軸方向上方に凹む。すなわち、最終キャリア74は、下端面に軸方向に凹む最終凹部745を有する。最終凹部745には、最終軸受部材78を介して上側のシャフト76の上端部が配置される。すなわち、最上部に配置される太陽歯車71を有するシャフト76の上端は、最終軸受部材78を介して最終凹部745に配置される。
【0063】
さらに説明すると、上側のシャフト76の上端部は、最終軸受部材78を介して上側のキャリア74に回転可能に支持される。なお、最終軸受部材78は、すべり軸受であるが、これに限定されない。例えば、流体動圧軸受、ボールベアリング等を採用することができる。また、最終軸受部材78を用いずに、潤滑剤のみで摩擦を抑制してもよい。
【0064】
<上側の内歯歯車73及び出力部75>
図5に示すように、上側の内歯歯車73は、環状の歯車である。上側の内歯歯車73は、径方向内面に形成された内歯を有する。上側の内歯歯車73は、上側の遊星歯車72と噛み合う。上側の内歯歯車73は、出力部75の径方向内面に固定される。
【0065】
出力部75は、有蓋筒状である。出力部75は、蓋部751と、筒部752とを有する。蓋部751は、中心軸J1と直交する方向に広がる円板状である。蓋部751は、中央に中心軸J1に沿って貫通する貫通孔753を有する。上側のキャリア74のキャリアシャフト部744は貫通孔753を貫通している。貫通孔753には、出力軸受Brの外輪が固定される。つまり、出力部75は、上側のキャリア74のキャリアシャフト部744に出力軸受Brを介して回転可能に支持される。
【0066】
<出力装置10の動作>
上述のとおり、出力装置10のモータ部20には、不図示の電源からの電流が供給される。つまり、詳しくは、モータ部20のコイル27に電流が供給される。これにより、コイル27は、励磁され、ロータ22及びロータ22に固定されたモータシャフト21が中心軸J1周りに回転する。
【0067】
モータシャフト21が回転することで、モータシャフト21に配置された下側の太陽歯車61も回転する。モータシャフト21のトルクは、下側の太陽歯車61から下側の遊星歯車62に伝達される。これにより、下側の遊星歯車62は下側の遊星シャフト621に支持されて回転する。そして、下側の遊星歯車62は、下側の内歯歯車63とも噛み合っている。下側の内歯歯車63は下側のケース65に固定されている。そのため、下側の遊星歯車62が回転することで、下側のキャリア64が、中心軸J1周りに回転する。
【0068】
下側のキャリア64には、上側のシャフト76が固定されている。そのため、下側のキャリア64が回転することで、上側のシャフト76が回転する。モータシャフト21に対する上側のシャフト76の減速比は、下側の太陽歯車61及び下側の内歯歯車63の歯数比によって決定される。
【0069】
上側のシャフト76には、上側の太陽歯車71が固定されている。そして、上側の太陽歯車71は、上側の遊星歯車72と噛み合っている。そのため、上側の太陽歯車71から上側の遊星歯車72にトルクが伝達される。これにより、上側の遊星歯車72が回転する。そして、上側の遊星歯車72は上側の内歯歯車73とも噛み合っている。上側のキャリア74は、固定されているため、上側の遊星歯車72が回転することで、上側の内歯歯車73が回転する。これにより、上側の内歯歯車73が固定されている出力部75が回転する。上側の遊星歯車機構70において、上側のシャフト76に対する出力部75の減速比は、上側の太陽歯車71及び上側の内歯歯車73の歯数比によって決定される。
【0070】
上側のシャフト76に形成された凹部763には、軸受部材77を介してモータシャフト21の上端が配置される。これにより、上側のシャフト76の下端部が、シャフト軸受211に支持されたモータシャフト21に支持される。これにより、上側の遊星歯車機構70の太陽歯車71が取り付けられる上側のシャフト76の芯ずれを抑制できる。また、下側の太陽歯車61を有するモータシャフト21の一部を、上側のシャフト76の凹部763に挿入するため、出力装置10の軸方向の長さを短くすることができる。つまり、出力装置10を小型化することができる。
【0071】
最上部に配置される遊星歯車機構70のシャフト76の上端部が、出力部75に回転可能に支持されるため、上側の遊星歯車機構70において、上側の太陽歯車71が取り付けられるシャフト76の上下端部が、回転可能に支持される。これにより、上側の太陽歯車71が取り付けられる上側のシャフト76のずれを抑制できる。
【0072】
上側のシャフト76の下端及び上端が、それぞれ、中心軸J1に対する位置ずれが抑制された、モータシャフト21及び上側のキャリア74に支持される。そのため、上側のシャフト76が回転するときに、上側のシャフト76の中心がずれにくい。そのため、歯車同士が正確に噛み合うため、出力装置10の出力部75から滑らかな回転を出力することが可能である。
【0073】
本実施形態にかかる出力装置10では、2つの遊星歯車機構60、70を軸方向に並べ、多段化している。これにより、出力装置10の外径を大きくすることなく、大きな減速比を得ることができる。
【0074】
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば電動ジャッキ等の電力によって作業を行う装置の動力源として利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 出力装置
20 モータ部
21 モータシャフト
211 シャフト軸受
22 ロータ
23 ロータヨーク
230 貫通孔
231 ロータ蓋部
232 ロータ筒部
24 ロータマグネット
25 ステータ
26 ステータコア
261 コアバック
262 ティース
27 コイル
28 インシュレータ
30 減速機構
40 ベース部
41 ベースプレート
42 ベース貫通孔
43 軸受保持部
431 保持部筒部
432 保持部フランジ部
60 下側の遊星歯車機構
61 下側の太陽歯車
62 下側の遊星歯車
621 下側の遊星シャフト
63 下側の内歯歯車
64 キャリア
640 中央筒部
641 支持翼部
642 遊星貫通孔
643 キャリア貫通孔
65 下側のケース
651 円環部
652 下筒部
653 上筒部
654 円環貫通孔
70 上側の遊星歯車機構
71 上側の太陽歯車
72 上側の遊星歯車
721 上側の遊星シャフト
73 上側の内歯歯車
74 キャリア
741 支持部
742 脚部
743 遊星貫通孔
744 キャリアシャフト部
745 最終凹部
75 出力部
751 蓋部
752 筒部
753 貫通孔
76 上側のシャフト
760 上端部
761 上柱部
762 下柱部
763 凹部
77 軸受部材
78 最終軸受部材
Bd 回路基板
Br1、Br2 出力軸受
J1 中心軸