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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022181164
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】変成器及び変成器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20221130BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221130BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F30/10 E
H01F41/04 A
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014399
(22)【出願日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021087585
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】下村 好亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
【Fターム(参考)】
5E043BA03
5E062EE02
(57)【要約】
【課題】複数のコイルを簡易に並設することができる変成器及び変成器の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る変成器は、環状の枠体2と、導線3aが周方向に巻き付けられることによって前記枠体2の外周に夫々形成されており、前記枠体2の軸長方向に並ぶ複数のコイルと、前記外周に立設され、隣り合う前記コイルを全周にわたって隔てる絶縁壁4とを備える変成器において、前記複数のコイルは1本の連続した前記導線3aからなり、前記絶縁壁4の一面の側の前記外周に形成されている一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線3aは、前記絶縁壁4を乗り越えて、前記絶縁壁4の他面の側の前記外周に形成されている他のコイルの巻き始め部分に連続していることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の枠体と、
導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に夫々形成されており、前記枠体の軸長方向に並ぶ複数のコイルと、
前記外周に立設され、隣り合う前記コイルを全周にわたって隔てる絶縁壁と
を備える変成器において、
前記複数のコイルは1本の連続した前記導線からなり、
前記絶縁壁の一面の側の前記外周に形成されている一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線は、前記絶縁壁を乗り越えて、前記絶縁壁の他面の側の前記外周に形成されている他のコイルの巻き始め部分に連続していることを特徴とする変成器。
【請求項2】
前記絶縁壁には、前記絶縁壁を乗り越える前記導線を案内する案内部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の変成器。
【請求項3】
前記案内部は、前記絶縁壁の前記一面の先端部から前記絶縁壁の前記他面の基端部に向けて前記導線の巻き付け方向の下流側に延びるガイドスロープを有することを特徴とする請求項2に記載の変成器。
【請求項4】
前記絶縁壁の前記他面は、
前記案内部に前記軸長方向に隣り合い、前記周方向に対して傾斜した第1の傾斜部分と、
前記案内部から前記周方向に適長離隔し、前記周方向に対して傾斜した第2の傾斜部分と、
前記第1の傾斜部分と前記第2の傾斜部分との間にあり、前記周方向に対して平行な平行部分と
を有し、
前記第1の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の下流端は、上流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、
前記第2の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の上流端は、下流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、
前記案内部は、前記他のコイルの巻き始め部分が前記他面に接するように前記導線を案内し、
前記枠体は、前記絶縁壁の前記他面の側に隣り合い、前記絶縁壁との間の前記軸長方向の内法が前記周方向に一定な壁部を有し、
前記絶縁壁と前記壁部との間に前記他のコイルが配されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の変成器。
【請求項5】
前記複数のコイル夫々を構成する前記導線は前記外周に複数層整列巻きされており、
前記他のコイルの1層目の1巻き目の巻き終わり部分と前記第1の傾斜部分との間にスペーサが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の変成器。
【請求項6】
前記スペーサの前記第1の傾斜部分からの長さは前記導線の半径以下であることを特徴とする請求項5に記載の変成器。
【請求項7】
環状の枠体と、導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に夫々形成されており、前記枠体の軸長方向に並ぶ複数のコイルと、前記外周に立設され、隣り合う前記コイルを全周にわたって隔てる絶縁壁とを備える変成器を製造する方法であって、
軸心を中心に前記枠体を回転させつつ、前記絶縁壁の一面側の前記外周に前記導線を巻き付けることにより、一のコイルを形成し、
該一のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記絶縁壁の他面側に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線が前記絶縁壁を乗り越えるようにし、
前記枠体を回転させつつ、前記絶縁壁を乗り越えた前記導線を前記絶縁壁の他面側の前記外周に巻き付けることにより、他のコイルを形成することを特徴とする変成器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変成器及び変成器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧又は変流を目的として、変成器が用いられている。
変成器は、環状の枠体と枠体の外周に形成された複数のコイルとを備えることがある。複数のコイルは枠体の軸長方向に並び、互いに隣り合うコイルの間には、全周にわたって絶縁壁が介在する。この種の変成器は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-188213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各コイルは導線が枠体に周方向に巻き付けられることによって個別に形成される。互いに隣り合うコイルの形成後、一方のコイルの巻き終わり部分から延びる導線と他方のコイルの巻き終わり部分から延びる導線とが互いに接続される。故に、導線同士を確実に接続するために作業者が煩雑な接続手順を強いられる。
【0005】
本開示の目的は、複数のコイルを簡易に並設することができる変成器及び変成器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る変成器は、環状の枠体と、導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に夫々形成されており、前記枠体の軸長方向に並ぶ複数のコイルと、前記外周に立設され、隣り合う前記コイルを全周にわたって隔てる絶縁壁とを備える変成器において、前記複数のコイルは1本の連続した前記導線からなり、前記絶縁壁の一面の側の前記外周に形成されている一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線は、前記絶縁壁を乗り越えて、前記絶縁壁の他面の側の前記外周に形成されている他のコイルの巻き始め部分に連続していることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、複数のコイルが1本の連続した導線からなる。故に、導線同士を接続する作業が不要である。従って、導線同士を確実に接続するために作業者が煩雑な接続手順を強いられることがないので、複数のコイルを簡易に並設することができる。
【0008】
本開示に係る変成器は、前記絶縁壁には、前記絶縁壁を乗り越える前記導線を案内する案内部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本開示にあっては、絶縁壁に設けられている案内部が、絶縁壁を乗り越える導線を案内するので、導線が円滑に絶縁壁を乗り越えることができる。
【0010】
本開示に係る変成器は、前記案内部は、前記絶縁壁の前記一面の先端部から前記絶縁壁の前記他面の基端部に向けて前記導線の巻き付け方向の下流側に延びるガイドスロープを有することを特徴とする。
【0011】
本開示にあっては、案内部がガイドスロープを有する。
絶縁壁を乗り越える際、導線はガイドスロープに案内されて絶縁壁の一面の先端部から絶縁壁の他面の基端部に向かう。ガイドスロープは導線の巻き付け方向に延びるので、例えば枠体の回転による導線の巻き付け中に、枠体の回転を継続させつつ導線に絶縁壁を乗り越えさせる場合に特に有用である。
【0012】
本開示に係る変成器は、前記絶縁壁の前記他面は、前記案内部に前記軸長方向に隣り合い、前記周方向に対して傾斜した第1の傾斜部分と、前記案内部から前記周方向に適長離隔し、前記周方向に対して傾斜した第2の傾斜部分と、前記第1の傾斜部分と前記第2の傾斜部分との間にあり、前記周方向に対して平行な平行部分とを有し、前記第1の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の下流端は、上流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、前記第2の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の上流端は、下流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、前記案内部は、前記他のコイルの巻き始め部分が前記他面に接するように前記導線を案内し、前記枠体は、前記絶縁壁の前記他面の側に隣り合い、前記絶縁壁との間の前記軸長方向の内法が前記周方向に一定な壁部を有し、前記絶縁壁と前記壁部との間に前記他のコイルが配されていることを特徴とする。
【0013】
本開示にあっては、絶縁壁の他面が、周方向に対して傾斜した第1の傾斜部分及び第2の傾斜部分を有する。各傾斜部分の上流端と下流端との位置ずれは導線1本分である。
他のコイルは、絶縁壁と壁部との間の空間に配されている。この空間について、枠体の軸長方向の内法は枠体の周方向に一定である。故に、導線が絶縁壁の他面又は壁部の絶縁壁に対向する面に沿うようにして、他のコイルを整列巻きすることができる。
【0014】
絶縁壁を乗り越える際、導線には絶縁壁の一面側から他面側に向かう方向の外力が加えられる。故に、他のコイルの巻き始め部分には絶縁壁の他面から離れるような湾曲が部分的に生じやすい。しかしながら、他のコイルの巻き始め部分は、導線が案内部に案内されることにより、絶縁壁の他面に接する。
また、巻き始め部分から延びる導線は、枠体を1巻きする途中で第2の傾斜部分に接することにより、絶縁壁の他面におけるコイルの巻き始め部分が接しているところから導線1本分だけ離れる方向に導かれる。故に、絶縁壁を乗り越えた後の2巻き目の巻き始め部分と1巻き目の巻き始め部分とが互いに干渉し合うことを防止することができる。
【0015】
本開示に係る変成器は、前記複数のコイル夫々を構成する前記導線は前記外周に複数層整列巻きされており、前記他のコイルの1層目の1巻き目の巻き終わり部分と前記第1の傾斜部分との間にスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0016】
本開示にあっては、各コイルが導線の複数層整列巻きによって形成されている。
変成器の製造時に他のコイルの1層目を形成する際、枠体を1周した導線は次の1周の巻き始めまでに絶縁壁の他面から離隔する方向に導かれる。第1の傾斜部分は周方向に対して絶縁壁の一面の側に傾斜しているので、1層目の1巻き目の巻き終わり部分は絶縁壁の他面の第1の傾斜部分から離隔する。しかしながら、1層目の1巻き目の巻き終わり部分と絶縁壁の他面の第1の傾斜部分との間にはスペーサが存在するので、両者間に隙間が生じる虞はない。
【0017】
1層目を構成する導線は枠体に直接的に巻き掛けられ、2層目を構成する導線は1層目に直接的に巻き掛けられる。1層目の1巻き目の巻き終わり部分と絶縁壁の他面の第1の傾斜部分との間にはスペーサが存在するので、両者間に隙間が生じる虞はない。故に、1層目に生じる隙間に2層目を構成する導線が脱落することが防止される。従って、2層目を構成する導線が1層目に脱落することによって生じる隙間に3層目を構成する導線が脱落することが防止される。4層目以上の層を構成する導線についても同様である。以上の結果、導線の下層への脱落による整列巻きの乱れを防止することができる。
【0018】
本開示に係る変成器は、前記スペーサの前記第1の傾斜部分からの長さは前記導線の半径以下であることを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、スペーサの寸法が適切に設定されるので、スペーサがコイルの整列巻きを乱す虞がない。仮に、スペーサの、絶縁壁の他面の第1の傾斜部分からの寸法が導線の半径よりも長い場合、スペーサが1層目の導線に干渉して整列巻きを乱す虞がある。
【0020】
[付記]
本開示に係る変成器は、前記スペーサの前記第1の傾斜部分からの長さは前記導線の巻き付け方向の下流側ほど長いことを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、導線の巻き付け方向に見て、スペーサが枠体の軸方向に大きくなる。他のコイルの1層目の1巻き目の巻き終わり部分は絶縁壁の他面の第1の傾斜部分から徐々に離隔するので、両者の間隙をスペーサで適切に埋めることができる。
【0022】
本開示に係る変成器の製造方法は、環状の枠体と、導線が周方向に巻き付けられることによって前記枠体の外周に夫々形成されており、前記枠体の軸長方向に並ぶ複数のコイルと、前記外周に立設され、隣り合う前記コイルを全周にわたって隔てる絶縁壁とを備える変成器を製造する方法であって、軸心を中心に前記枠体を回転させつつ、前記絶縁壁の一面側の前記外周に前記導線を巻き付けることにより、一のコイルを形成し、該一のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記絶縁壁の他面側に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線が前記絶縁壁を乗り越えるようにし、前記枠体を回転させつつ、前記絶縁壁を乗り越えた前記導線を前記絶縁壁の他面側の前記外周に巻き付けることにより、他のコイルを形成することを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、絶縁壁の一面側における一のコイルの形成後、導線が絶縁壁を乗り越えて絶縁壁の一面側から他面側に移動し、絶縁壁の他面側における他のコイルの形成が行なわれる。この結果、複数のコイルが1本の連続した導線からなる変成器を製造することができる。しかも、導線を枠体に巻き付けてコイルを形成するために枠体を回転させ、導線に絶縁壁を乗り越えさせる際にも枠体の回転を止めないので、コイルの並設の自動化を図ることができる。
【0024】
[付記]
本開示に係る変成器の製造方法は、前記絶縁壁を乗り越える前記導線を案内する案内部を前記絶縁壁が備える前記枠体を回転させ、前記一のコイルの形成後、前記枠体を回転させつつ前記導線を前記絶縁壁の他面側に向けて前記軸長方向に移動させることにより、前記一のコイルの巻き終わり部分から延びる前記導線が前記案内部に案内されつつ前記絶縁壁を乗り越えるようにすることを特徴とする。
【0025】
本開示にあっては、絶縁壁に設けられている案内部により、枠体を回転させながら導線に絶縁壁を円滑に乗り越えさせることができる。
【0026】
[付記]
本開示に係る変成器の製造方法は、前記絶縁壁の前記他面が、前記案内部に前記軸長方向に隣り合い、前記周方向に対して傾斜した第1の傾斜部分と、前記案内部から前記周方向に適長離隔し、前記周方向に対して傾斜した第2の傾斜部分と、前記第1の傾斜部分と前記第2の傾斜部分との間にあり、前記周方向に対して平行な平行部分とを有し、前記第1の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の下流端が、上流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、前記第2の傾斜部分の前記導線の巻き付け方向の上流端が、下流端よりも前記導線の外径の長さだけ前記一面の側に位置しており、前記絶縁壁が、前記コイルの巻き始め部分が前記他面に接するように前記導線を案内する前記案内部を備え、前記絶縁壁の前記他面の側に隣り合い、前記絶縁壁との間の前記軸長方向の内法が前記周方向に一定な壁部を有する前記枠体を回転させ、前記他のコイルの形成時に、前記他面に沿うように前記導線を巻き付けることによって、前記絶縁壁と前記壁部との間に前記他のコイルを形成することを特徴とする。
【0027】
本開示にあっては、他のコイルの形成時に、絶縁壁の他面に沿うように導線が巻き付けられることによって、絶縁壁と壁部との間に他のコイルが形成される。絶縁壁と壁部との間の枠体の軸長方向の内法は一定なので、導線が絶縁壁の他面又は壁部の絶縁壁に対向する面に沿うようにして、コイルを整列巻きすることができる。
【0028】
他のコイルの巻き始め部分は、導線が案内部に案内されることにより、絶縁壁の他面に接する。絶縁壁の他面は、周方向に対して傾斜した第1の傾斜部分及び第2の傾斜部分を有する。各傾斜部分の上流端と下流端との位置ずれは導線1本分である。他のコイルの巻き始め部分から延びる導線は、第2の傾斜部分に接することにより、巻き始め部分よりも導線1本分だけ絶縁壁の一面から離れる方向に導かれる。故に、絶縁壁を乗り越えた後の2巻き目の巻き始め部分と1巻き目の巻き始め部分とが互いに干渉し合うことを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の変成器及び変成器の製造方法によれば、複数のコイルを簡易に並設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施の形態1に係る変成器の分解斜視図である。
図2】枠体の上辺部の斜視図である。
図3】枠体の絶縁壁の斜視図である。
図4】枠体の平面図である。
図5】枠体の底面図である。
図6】コイルの形成手順を説明するための平面図である。
図7】コイルの形成手順を説明するための平面図である。
図8】実施の形態2に係る変成器が備える枠体の拡大斜視図である。
図9】スペーサの機能を説明するための模式的な平面図である。
図10】スペーサの幅及び高さについて説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0032】
実施の形態 1.
図1は、実施の形態1に係る変成器の分解斜視図である。
図中1は変成器であり、変成器1はコイルボビン11、2つの二次コイル12,13、カバー14、及び図示しない2つの巻鉄心を備える。
コイルボビン11は枠体2とコイル31~34とを備える。コイル31~34は一次コイルである。
【0033】
枠体2は矩形環状をなす。枠体2の四隅は円弧形に湾曲している。枠体2は絶縁体であり、例えば合成樹脂製である。
枠体2の左辺部及び右辺部は枠体2の2つの長辺部であり、枠体2の上辺部及び下辺部は枠体2の2つの短辺部である。枠体2の長辺部に平行な方向は上下方向に対応し、枠体2の短辺部に平行な方向は左右方向に対応する。枠体2の軸長方向は前後方向に対応する。
以下では、枠体2の周方向を単に周方向という。
【0034】
枠体2の外周には溝21が設けられている。溝21は枠体2の全周にわたる。
枠体2の上辺部及び下辺部夫々において、溝21の前側壁21aには窓部22が設けられている。窓部22は、前側壁21aを頂部から底部に向けて切り欠いたような矩形状をなす。同様に、溝21の後側壁21bにも、枠体2の上辺部及び下辺部夫々において窓部22が設けられている(後述する図2図4、及び図5参照)。
溝21の前側壁21aと後側壁21bとの間には、3つの絶縁壁4が前後方向に並設されている。各絶縁壁4は枠体2の全周にわたり、溝21の底面から枠体2の径方向の外向きに立ち上がっている。
【0035】
コイル31~34は溝21の内側にあり、前から後に向けてこの順に並んでいる。コイル31~34夫々は、導線3a(後述する図4図6、及び図7参照)が溝21の底面に周方向に巻き付けられることによって形成されている。コイル31~34夫々を構成する導線3aは整列巻きされている。
導線3aの枠体2への巻き付け方向は、枠体2の上面、左面、下面、及び右面をこの順に通る方向である。以下では、枠体2への巻き付け方向の上流側/下流側を、単に上流側/下流側という。枠体2の上辺部において、上流側/下流側は右側/左側であり、枠体2の下辺部において、上流側/下流側は左側/右側である。
【0036】
コイル31は前側壁21aと最前の絶縁壁4との間に配されている。コイル31とコイル32との間には最前の絶縁壁4が介在している。コイル32とコイル33との間には中央の絶縁壁4が介在している。コイル33とコイル34との間には最後の絶縁壁4が介在している。コイル34は最後の絶縁壁4と溝21の後側壁21bとの間に配されている。
コイル31~34は1本の連続した導線3aからなる。即ち、コイル31~34は互いに直列接続されている。コイル31~34夫々は前後方向に小さいので、何れかのコイルを構成する導線3aの整列巻きが部分的に乱れた場合であっても、コイル31~34の電圧が大きく変化する虞はない。
【0037】
コイル31の巻き終わり部分は最前の絶縁壁4の前面に接している。コイル31から延びる導線3aは、最前の絶縁壁4を乗り越えて、コイル32の巻き始め部分に連続している。コイル32の巻き始め部分は最前の絶縁壁4の後面に接している。
同様に、コイル32の巻き終わり部分は中央の絶縁壁4の前面に接している。コイル32から延びる導線3aは、中央の絶縁壁4を乗り越えて、コイル33の巻き始め部分に連続している。コイル33の巻き始め部分は中央の絶縁壁4の後面に接している。
また、コイル33の巻き終わり部分は最後の絶縁壁4の前面に接している。コイル33から延びる導線3aは、最後の絶縁壁4を乗り越えて、コイル34の巻き始め部分に連続している。コイル34の巻き始め部分は最後の絶縁壁4の後面に接している。
【0038】
コイル31を構成している導線3aは枠体2の周方向に概ね平行である。一方、コイル32~34夫々を構成している導線3aは、枠体2の上辺部にて枠体2の周方向に対し前側に傾斜しており、枠体2の下辺部にて枠体2の周方向に対し後側に傾斜している。
【0039】
二次コイル12は矩形環状をなし、コイルボビン11の径方向の内側に収められる。二次コイル13は矩形環状をなす。二次コイル13の径方向の内側にコイルボビン11が収められる。二次コイル12,13夫々は、例えば平角線を折り曲げることによって形成されている。
【0040】
カバー14は2つのカバー部材141を備える。各カバー部材141は、互いに左右に隣り合う2つの半円筒を一体に有し、各半円筒の軸長方向は上下に延びる。2つのカバー部材141を組み合わせることによって、2つの円筒を有するカバー14が形成される。
カバー14の左側の円筒は、二次コイル12の内側を通るようにしてコイルボビン11及び二次コイル12,13夫々の左辺部を覆う。同様に、カバー14の右側の円筒は、コイルボビン11及び二次コイル12,13夫々の右辺部を覆う。
カバー14の2つの円筒夫々の外周面に、円筒状の巻鉄心(不図示)が設けられる。
【0041】
図2は、枠体2の上辺部の斜視図である。
図3は、枠体2の絶縁壁4の斜視図である。図3には絶縁壁4が1つだけ示してある。
図4は、枠体2の平面図である。図4には導線3aが二点鎖線で示してある。
各絶縁壁4には傾斜溝5が設けられている。
傾斜溝5は、枠体2の上辺部における絶縁壁4の周方向の中央部にて概ね左右方向に延びる。傾斜溝5の深さ方向は下向きである。傾斜溝5の長さ方向の一側は、絶縁壁4の前面の先端部にて開口している。傾斜溝5の長さ方向の他側は、絶縁壁4の後面の基端部にて開口している。
【0042】
傾斜溝5は、絶縁壁4を乗り越える導線3aを案内する案内部である。傾斜溝5はガイドスロープ51及び2つの内側面52,53を有する。
ガイドスロープ51は傾斜溝5の底面であり、右端部から左端部に向けて下降する傾斜面である。
内側面52,53はガイドスロープ51の幅方向の両端から夫々立ち上がる。内側面52,53は前後方向に互いに隣り合う。内側面52,53夫々は、右端部から左端部に向かうほど前側に位置する傾斜面である。
【0043】
前側の内側面52の左端部から左向きに案内面521が延出している。案内面521は、導線3aを傾斜溝5の内側面52,53間から左向きに絶縁壁4の後面へ導く機能を有する。最前の絶縁壁4における案内面521は、コイル32の巻き始め部分が傾斜溝5の左隣にて最前の絶縁壁4の後面に接するように導線3aを案内する。同様に、中央(最後)の絶縁壁4における案内面521は、コイル33(コイル34)の巻き始め部分が傾斜溝5の左隣にて中央(最後)の絶縁壁4の後面に接するように導線3aを案内する。
【0044】
後側の内側面53の右端部から右向きに案内面531が延出している。案内面531は、導線3aを絶縁壁4の前面から左向きに傾斜溝5の内側面52,53間へ導く機能を有する。最前の絶縁壁4における案内面531は、コイル31の巻き終わり部分から延びる導線3aを傾斜溝5の内側に導く。同様に、中央(最後)の絶縁壁4における案内面531は、コイル32(コイル33)の巻き終わり部分から延びる導線3aを傾斜溝5の内側に導く。
【0045】
各絶縁壁4の後面は、2つの傾斜部分41,42と平行部分43とを有する(図3図4、及び後述する図5参照)。
図3及び図4に示すように、傾斜部分41(第1の傾斜部分)は枠体2の上辺部にある。傾斜部分41は傾斜溝5の後側に隣り合い、周方向に対して傾斜している。傾斜部分41の左端は、傾斜部分41の右端よりも導線3aの外径の長さだけ前側に位置している。即ち傾斜部分41は下流側ほど前側に位置する傾斜面である。傾斜部分41の左端部には傾斜溝5の左側の開口が位置している。
【0046】
図5は、枠体2の底面図である。
図3及び図5に示すように、傾斜部分42(第2の傾斜部分)は枠体2の下辺部にある。傾斜部分42は周方向に対して傾斜している。傾斜部分42の右端は、傾斜部分42の左端よりも導線3aの外径の長さだけ後側に位置している。即ち傾斜部分42は下流側ほど後側に位置する傾斜面である。
なお、傾斜部分42は枠体2の左辺部又は右辺部にあってもよい。
【0047】
図3図5に示すように、平行部分43は、傾斜部分41の下流側と傾斜部分42の上流側との間、及び傾斜部分42の下流側と傾斜部分41の上流側との間にある。平行部分43は、周方向に対して平行である。
【0048】
図2図4、及び図5に示すように、前側壁21aの後面及び最前の絶縁壁4の前面は、何れも周方向に対して平行である。故に、前側壁21aと最前の絶縁壁4との間の前後方向の内法は周方向に一定である。
【0049】
図4及び図5に示すように、中央及び最後の絶縁壁4夫々の前面は、傾斜部分41,42に対向し、且つ傾斜部分41,42に平行な2つの傾斜部分411,421と、平行部分43に対向し、且つ平行部分43に平行な平行部分431とを有する。故に、一の絶縁壁4と一の絶縁壁4の後側に隣り合う他の絶縁壁4(壁部)との間の前後方向の内法は周方向に一定である。
後側壁21bの前面も、傾斜部分41,42に対向し、且つ傾斜部分41,42に平行な2つの傾斜部分と、平行部分43に対向し、且つ平行部分43に平行な平行部分とを有する。故に、最後の絶縁壁4と後側壁21b(壁部)との間の前後方向の内法は周方向に一定である。ただし、後側壁21bの傾斜部分の中途には窓部22が位置している。
【0050】
図6は、コイルの形成手順を説明するための平面図である。図6には中央(又は最後)の絶縁壁4及び溝21の底面みが模式的に示されている。図の見易さのために、絶縁壁4には右上がりのハッチングが施されている。
作業者は、リール61及びトラバース62を備えるコイル形成装置6に枠体2をセットする。コイル形成装置6にセットされた枠体2は、コイル形成装置6が備える図示しないモータに駆動されることにより、軸心を中心に、図3に白抜き矢符で示す方向に回転する。
【0051】
ここで、図1図5に示す枠体2の上面、左面、下面、及び右面をA面、B面、C面、及びD面と呼ぶ。図6に示すコイル形成装置6にセットされた枠体2は、A面、B面、C面、D面、A面…がこの順に上向きになるようにして回転する。
図6A図6DはA面~D面が上向きになった状態を示しており、図6Eは枠体2が1周して再びA面が上向きになった状態を示している。コイル形成装置6は図6Aにのみ模式的に示されている。
【0052】
リール61は、枠体2に巻き付けるべき導線3aを供給する。作業者は、リール61から導線3aを引き出し、まだ回転していない枠体2の前側壁21aと最前の絶縁壁4との間の空間に導き入れる。次に、作業者は、導線3aを前側壁21aの後面に接触させ、前側壁21aにある窓部22を通して溝21の外部に引き出す。更に、作業者は、溝21から引き出した導線3aの始端部分を、コイル形成装置6が備える図示しない治具に一時的に固定する。
【0053】
導線3aの固定後、枠体2が回転することにより、導線3aはリール61から連続的に引き出され、A面、B面、C面、D面、A面、…の順に周方向に巻き付けられる。A面における上流側/下流側は、D面側/B面側であり、C面における上流側/下流側は、B面側/D面側である。
【0054】
トラバース62は、軸長方向が前後に向くローラであり、前後方向に往復移動可能に設けられている。トラバース62の周面には全周にわたる係合溝が設けられており、リール61と枠体2との間に位置している導線3aがトラバース62の係合溝に係合している。トラバース62の係合溝が枠体2の外周に対向した状態でトラバース62が前後方向に往復移動することにより、導線3aが枠体2に巻き付く位置が前後方向に調整される。トラバース62の動作は、コイル形成装置6が備える図示しない制御部によって制御される。
【0055】
コイル31~34は、この順に形成される。説明を簡単化するために、コイル31~34夫々はM層の整列巻きにより形成され、1層当たり導線3aがN巻きされるものとする(M,Nは自然数)。図6A図6Eにおいて、絶縁壁4の右側にはコイル33の第1層の1巻き目が示されているが、コイル32,34夫々の第1層の1巻き目も同様である。図の見易さのために、コイル33の第1層の1巻き目の巻き始め部分には右下がりのハッチングが施されている(図6A及び図6E参照)。
【0056】
ここで、コイル31の形成手順について説明する。
コイル31の奇数層目を形成する場合、導線3aは前側壁21aの後面に接触しつつA面~D面の順に1巻きされる。巻き付けられる導線3aが再びA面に到達したときに、トラバース62は導線3aの外径分だけ後側に向けて移動する。この結果、奇数層2巻き目の導線3aは奇数層1巻き目の導線3aの右側に隣接する。
A面においてトラバース62が導線3aの1本分だけ後側へ移動しつつ導線3aが所定のN回だけ巻き付けられることにより、コイル31の奇数層が形成される。
【0057】
コイル31の偶数層目を形成する場合、導線3aは最前の絶縁壁4の前面に接触しつつA面~D面の順に1巻きされる。巻き付けられる導線3aが再びA面に到達したときに、トラバース62は導線3aの外径分だけ前側に向けて移動する。この結果、偶数層2巻き目の導線3aは偶数層1巻き目の導線3aの右側に隣接する。
A面においてトラバース62が導線3aの1本分だけ前側へ移動しつつ導線3aが所定のN回だけ巻き付けられることにより、コイル31の偶数層が形成される。
【0058】
M層目が形成されることにより、コイル31は巻き終わる。
コイル31の巻き終わりの際、トラバース62は所定の長さだけ後側に向けて移動する。トラバース62の後側への移動に伴い、導線3aには後向きの外力が加わる。この外力により、導線3aは最前の絶縁壁4の前側から後側に移動する共に最前の絶縁壁4を乗り越える。絶縁壁4の乗り越えの際、導線3aは傾斜溝5に案内される。
【0059】
具体的には、コイル31の巻き終わり部分から延びる導線3aが案内面531に案内されて傾斜溝5の内側面52,53間に導かれ、ガイドスロープ51に案内されて最前の絶縁壁4の先端部側から基端部側に向かう。その後、導線3aは案内面521に案内されて傾斜溝5の内側面52,53間から最前の絶縁壁4の後面に導かれる(図4参照)。
導線3aが傾斜溝5から枠体2の軸長方向に脱落することは傾斜溝5の内側面52,53により阻止される。
以上のようにして最前の絶縁壁4を乗り越えた導線3aにより、コイル32が形成される。
【0060】
コイル32の奇数層目を形成する場合、導線3aは最前の絶縁壁4の後面に接触しつつA面~D面の順に1巻きされる(図6A図6D参照)。
絶縁壁4の後面が有する傾斜部分42は後向きに傾斜している。これに導線3aを沿わせるために、巻き付けられる導線3aがC面に到達したときに、トラバース62は導線3aの外径分だけ後側に向けて移動する。
この結果、D面を通過する導線3aは、B面を通過した導線3aよりも導線3aの外径分だけ後側の位置にある。また、巻き付けられる導線3aが再びA面に到達したとき、奇数層2巻き目の導線3aが奇数層1巻き目の導線3aの右側に隣接する(図6E参照)。
【0061】
C面においてトラバース62が導線3aの1本分だけ後側へ移動しつつ導線3aが所定のN回だけ巻き付けられることにより、コイル32の奇数層が形成される。
【0062】
図7は、コイルの形成手順を説明するための平面図である。図7には中央(又は最後)の絶縁壁4及び溝21の底面のみが模式的に示されている。図7A図7DはA面~D面が上向きになった状態を示しており、図7Eは枠体2が1周して再びA面が上向きになった状態を示している。図7A図7Eにおいて、絶縁壁4の右側にはコイル33の第2層の1巻き目が示されているが、コイル32,34夫々の第2層の1巻き目も同様である。図の見易さのために、コイル33の第2層の1巻き目の巻き始め部分には右下がりのハッチングが施されている(図7A及び図7E参照)。
【0063】
コイル32の偶数層目を形成する場合、導線3aは中央の絶縁壁4の前面に接触しつつA面~D面の順に1巻きされる(図7A図7D参照)。
中央の絶縁壁4の前面における傾斜部分411は前側に傾斜している(図4参照)。これに導線3aを沿わせるために、1巻き目の開始の際にトラバース62は導線3aの外径の2倍分だけ前側に向けて移動する。
中央の絶縁壁4の前面における傾斜部分421は後側に傾斜している(図5参照)。これに導線3aを沿わせるために、巻き付けられる導線3aがC面に到達したときに、トラバース62は導線3aの外径分だけ後側に向けて移動する。
【0064】
以上の結果、偶数層2巻き目の導線3aが偶数層1巻き目の導線3aの右側に隣接する。
A面においてトラバース62が導線3aの2本分だけ前側へ移動し、C面においてトラバース62が導線3aの1本分だけ後側へ移動しつつ導線3aが所定のN回だけ巻き付けられることにより、コイル32の偶数層が形成される。
【0065】
M層目が形成されることにより、コイル32は巻き終わる。
コイル32の巻き終わりの際、コイル31の巻き終わりの際と同様に、トラバース62は所定の長さだけ後側に向けて移動する。この結果、コイル32の巻き終わり部分から延びる導線3aが傾斜溝5に案内されて中央の絶縁壁4を乗り越える。その後、中央の絶縁壁4を乗り越えた導線3aにより、コイル32の場合と同様にしてコイル33が形成される。
【0066】
コイル33の巻き終わりの際、コイル31の巻き終わりの際と同様に、トラバース62は所定の長さだけ後側に向けて移動する。この結果、コイル33の巻き終わり部分から延びる導線3aが傾斜溝5に案内されて最後の絶縁壁4を乗り越える。その後、中央の絶縁壁4を乗り越えた導線3aにより、コイル32の場合と同様にしてコイル34が形成される。
コイル34が巻き終わった後で、枠体2の回転が停止する。作業者は、コイル形成装置6から枠体2を取り外す。
【0067】
以上のような変成器1の製造方法によれば、導線3a同士を接続する作業が不要である。従って、導線3a同士を確実に接続するために作業者が煩雑な接続手順を強いられることがないので、複数のコイル31~34を簡易に並設することができる。しかも、傾斜溝5が導線3aの枠体2への巻き付け方向に延びるので、コイル31~34の形成中に枠体2の回転を止める必要がない。
また、絶縁壁4に設けられている傾斜溝5が、絶縁壁4を乗り越える導線3aを案内するので、導線3aが円滑に絶縁壁4を乗り越えることができる。
【0068】
絶縁壁4を乗り越える際、トラバース62によって導線3aに後向きの外力が加えられる。故に、コイル32~34夫々の巻き始め部分には絶縁壁4の後面から離れるような湾曲が部分的に生じやすい。とはいえ、傾斜溝5の内側面52,53夫々が右上端部から左下端部に向かうほど前側に位置するようにして傾斜しているので、コイル32~34夫々の巻き始め部分は、導線3aが傾斜溝5に案内されることにより、絶縁壁4の他面に接する。
【0069】
また、巻き始め部分から延びて枠体2を1巻きした導線3aは、その途中で絶縁壁4の傾斜部分42に接することにより、絶縁壁4の他面における巻き始め部分が接しているところから導線3a1本分だけ離れる方向に導かれる。故に、絶縁壁4を乗り越えた後の2巻き目の巻き始め部分と1巻き目の巻き始め部分とが互いに干渉し合うことを防止することができる。
【0070】
実施の形態 2.
図8は実施の形態2に係る変成器1が備える枠体2の拡大斜視図である。
枠体2の各絶縁壁4には、傾斜溝5の後側に隣り合うようにしてスペーサ44が設けられている。図9には最後の絶縁壁4に配されたスペーサ44が示されているが、他の絶縁壁4に配されたスペーサ44も同様の構成である。
【0071】
スペーサ44は枠体2に一体に形成されている。スペーサ44は絶縁壁4の傾斜部分41から後向きに突出し、且つ、溝21の底面から枠体2の径方向の外向きに立ち上がっている。スペーサ44は、傾斜部分41の上流端から傾斜部分41の下流端よりも適長下流まで、導線3aの巻き付け方向に延びる。ただし、スペーサ44の下流側の端部が傾斜溝5から下流側に延びる導線3aに干渉することはない。
【0072】
スペーサ44の後面は枠体2の軸長方向に直交し、且つ周方向に平行である。以下では、スペーサ44の傾斜部分41からスペーサ44の後面までの長さをスペーサ44の幅という。スペーサ44の幅は下流側ほど大きく、最大幅は導線3aの半径の長さに等しい。
スペーサ44の上面は枠体2の径方向に直交し、且つ周方向に平行である。以下では、スペーサ44の溝21の底面からスペーサ44の上面まで長さをスペーサ44の高さという。スペーサ44の高さは導線3aの直径未満の所定値である。
【0073】
図9はスペーサ44の機能を説明するための模式的な平面図である。図9には隣り合う2つの絶縁壁4が示されている。以下では、2つの絶縁壁4が最初の絶縁壁4及び中央の絶縁壁4である場合を例に説明する。図10Aにはコイル32の第1層が示されており、図10Bにはコイル32の第2層が示されている。第1層を構成する導線3aは溝21の底面に直接的に巻き掛けられ、第2層を構成する導線3aは第1層に直接的に巻き掛けられる。
【0074】
傾斜溝5に案内されて最初の絶縁壁4を超えた導線3aは、絶縁壁4の後面に接触した状態で1巻きされた後、1巻き目の導線3aに後側から隣接するようにして更に1巻きされる。1巻き目の巻き終わり部分は、周方向に平行に延びながら傾斜部分41の後側に隣り合う。
【0075】
一方、傾斜部分41は下流側ほど前側に位置するように傾斜している。故に、1巻き目の巻き終わり部分は下流側に向けて傾斜部分41から徐々に離隔する。しかしながら、1巻き目の巻き終わり部分と傾斜部分41との間にはスペーサ44が存在する。しかも、スペーサ44の幅は下流側に向けて徐々に大きくなる。従って、1巻き目の巻き終わり部分と傾斜部分41との間に隙間が生じる虞はない。
【0076】
故に、1層目に生じる隙間に2層目を構成する導線3aが脱落することが防止される。従って、2層目を構成する導線3aが1層目に脱落することによって生じる隙間に3層目を構成する導線3aが脱落することが防止される。4層目以上の層を構成する導線3aについても同様である。以上の結果、導線3aの下層への脱落による整列巻きの乱れを防止することができる。
【0077】
図10はスペーサ44の幅及び高さについて説明するための模式的な断面図である。
図中実線で示す導線3aの内、右上がりのハッチングが施されているものは、コイル32の1層目を構成する1巻き目及び2巻き目の導線3aの巻き終わり部分である。1層目を構成する1巻き目(及び2巻き目)の導線3aの巻き終わり部分の前後方向の位置は、1層目を構成する2巻き目(及び3巻き目)の導線3aの巻き始め部分の前後方向の位置と等しい。
【0078】
図中実線で示す導線3aの内、右下がりのハッチングが施されているものは、コイル32の2層目を構成するN巻き目及び{N-1}巻き目の導線3aの巻き終わり部分である。
図中破線で示す導線3aは、コイル32の1層目を構成する1巻き目の導線3aの巻き始め部分である。
【0079】
本実施の形態においては、1層目の1巻き目の導線3aの巻き終わり部分の中心位置は、巻き始め部分の中心位置よりも、導線3aの直径の長さだけ後側である。故に、スペーサ44の幅は導線3aの半径以下の長さである。
仮に、スペーサ44の最大幅が導線3aの半径の長さよりも大きい場合、スペーサ44が1層目を構成する導線3aに干渉して1層目の整列巻きを乱す虞がある。
スペーサ44の高さは、2層目を構成する導線3aに干渉しない程度の高さでなければならない。また、スペーサ44の高さは、2層目を構成するN巻き目の導線3aに当接して当該導線3aを支持することができる程度の高さであることが望ましい。
【0080】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 変成器; 2 枠体; 21b 後側壁(壁部); 31~34 コイル; 3a 導線; 4 絶縁壁(壁部); 41,42 傾斜部分(第1の傾斜部分); 43 平行部分; 44 スペーサ; 5 傾斜溝(案内部); 51 ガイドスロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10